商標異議申立
2023-900019
ツーエルシイデイ、ニエルシイデイ、エルシイデイ
- 審判番号
- 2023-900019
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2022-042989
- 登録番号
- 6642509
- 請求日
- 2023年01月20日
- 審決日
- 2023年08月08日
- 公報発行日
- 2024年01月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】深▲せん▼市椿景貿易有限公司
- 【異議申立人】セイコーエプソン 株式会社
- 【異議申立人代理人】弁理士法人不二商標綜合事務所
- 【異議申立人代理人】木村 吉宏
- 【異議申立人代理人】伊東 美穂
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 雅也
- 審判官 渡邉 あおい
- 審判官 山田 啓之
- 分類
- T1651.22 -Y (W09) / T1651.222-Y (W09) / T1651.261-Y (W09) / T1651.262-Y (W09) / T1651.263-Y (W09) / T1651.271-Y (W09)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項7号商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法4条1項19号商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第19号、商標法第43条の2、商標法第43条の3第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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登録第6642509号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6642509号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6642509号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和4年4月13日に登録出願、第9類「映写装置,映写用スクリーン,ビデオプロジェクター,プロジェクターリモコン,ミニビームプロジェクター,オートフォーカスプロジェクター,LCDプロジェクター」を指定商品として、同年8月23日に登録査定され、同年11月18日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議の申立ての理由において引用する登録第4907700号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、2004年(平成16年)12月28日にアメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張して、平成17年5月27日に登録出願、第9類「液晶プロジェクター,液晶プロジェクションテレビ,高温ポリシリコン液晶パネル,液晶プロジェクター用プリズム,液晶プロジェクションテレビ用光学エンジン,液晶プロジェクター用光学エンジン,液晶プロジェクター用映写スクリーン,液晶リアプロジェクションテレビ用スクリーン,液晶プロジェクター用マルチレンズアレー,液晶プロジェクター用レンズ及びランプ,液晶プロジェクター制御用コンピュータソフトウェア」を指定商品として、同年11月11日に設定登録されたものであり、その商標権は、現に有効に存続しているものである。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証から甲第30号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標
ア 外観
本件商標は、黒色で、図形を表した上段の部分(以下「本件図形部分」という。)と、数字・文字を表した下段の部分(以下「本件文字部分」という。)を二段に表した構成よりなるものである。
本件図形部分は、略同大の右傾した平行四辺形及び左傾した平行四辺形を上下対称に配し、先端にかけて尖らせた三方向に延伸する線のうち、二本の線を上記平行四辺形にそれぞれ重ね合わせるように配してなるところ、図形全体として、何らか特定のイメージを表したものではない、一種の幾何学的図形のような印象を受けるものである。
また、本件文字部分は、数字の「2」と欧文字の「L」「C」「D」を、極太の一般的な書体により黒色で横書きしてなり、一見して容易に「2LCD」の文字を表したものと認識できるものの、多少のデザイン要素も感じられることから、一種のロゴとして捉えることができるものである。
イ 称呼
本件図形部分からは称呼が生じないところ、本件文字部分からは、これに相応して「トゥーエルシーディ」ほどの称呼が生じる。
ウ 観念
本件図形部分からは特定の意味合いが理解されないところ、広辞苑(第七版)によれば、本件文字部分における「LCD」の欧文字につき、「液晶表示ディスプレー(liquid crystal display)」を意味するとされている(甲3)。そうすると、「2LCD」全体としては特定の意味合いが理解されないものの、「「数字の2」及び「液晶表示ディスプレー」の意味合いが組み合わさったもの」ほどの観念が生じるといえる。
(2)引用商標
ア 外観
引用商標は、濃灰色で図形を表した左側の部分(以下「引用図形部分」という。)と、黒色で数字・文字を表した右側の部分(以下「引用文字部分」という。)を左右に並列させて表した構成よりなるものである。
引用図形部分は、略同大の右傾した平行四辺形及び左傾した平行四辺形を上下対称に配し、下方の平行四辺形には、これと左右対称にして端部を少し重ね合わせた略同大の右傾した平行四辺形を配してなる。そして、先端にかけて尖らせた四方向に延伸する線のうち、三本の線を上記平行四辺形にそれぞれ重ね合わせるように配してなるものである。
また、引用文字部分は、数字の「3」と欧文字の「L」「C」「D」を、極太の一般的な書体により黒色で横書きしてなるところ、一見して容易に「3LCD」の文字を表したものと認識できるものの、多少のデザイン要素も感じられることから、一種のロゴとして捉えることができるものである。
イ 称呼
引用図形部分からは称呼が生じないところ、引用文字部分からは、これに相応して「スリーエルシーディ」ほどの称呼が生じる。
ウ 観念
引用図形部分からは特定の意味合いが理解されないところ、引用文字部分における「LCD」の文字につき、「液晶表示ディスプレー(liquid crystal display)」を意味する旨は上述したとおりであるから、「3LCD」全体としては特定の意味合いが理解されないものの、「「数字の3」及び「液晶表示ディスプレー」の意味合いが組み合わさったもの」ほどの観念が生じるといえる。
(3)本件商標と引用商標が類似すること
ア 外観
まず、本件図形部分と引用図形部分を観察するに、用いられている平行四辺形の数については、本件図形部分が2個であるのに対し引用図形部分は3個で異なるものの、僅かな間隙を設けて上下対称に略同大の平行四辺形を配した点はまったく同じといえる。加えて、これら平行四辺形に重ね合わさり、先端を尖らせて複数方向に延伸する線につき、本件図形部分が三方向であるのに対し引用図形部分は四方向で異なるものの、それぞれ平行四辺形の中央付近を必ず貫くように重ねて配した点もまったく同じといえる。さらに、両図形部分が黒あるいは濃灰という互いに近似した暗色のみを用いて表されている点も共通する。
次に、本件文字部分と引用文字部分を観察すると、本件文字部分は数字が「2」であるのに対し引用文字部分は「3」で異なるものの、一文字の数字に続いて「LCD」の欧文字を表した点はまったく同じといえる。加えて、本件文字部分と引用文字部分は、端部のデザイン処理やセリフ(文字のストロークの端にある小さな飾り)の有無といった細部における差異はあるものの、全体をやや右に傾斜させ、極太の一般的な書体で表した点もまったく同じである。さらに、両文字部分が黒一色のみを用いて表されている点も共通している。
イ 称呼
本件商標から生じる「トゥーエルシーディ」と、引用商標から生じる「スリーエルシーディ」ほどの称呼は、語頭の「トゥー」と「スリー」に差異はあるものの、全体が7音から8音という短い構成の中にあって「エルシーディ」という過半以上を占める音が共通している。そうすると、両商標を発音・聴音した場合、語頭における「トゥー」や「スリー」の音よりも、「エルシーディ」という音の方が耳に長く残存して記憶されることになる。すなわち、両商標の称呼は、聞き誤りやすく、類似性は高いといえる。
ウ 観念
本件商標から生じる「「数字の2」及び「液晶表示ディスプレー」の意味合いが組み合わさったもの」と、引用商標から生じる「「数字の3」及び「液晶表示ディスプレー」の意味合いが組み合わさったもの」ほどの観念は、数字の「2」と「3」において差異があるが、互いに一文字の数字のみであり、「2あるいは3の液晶表示ディスプレー」というように互いに相紛らわしく、観念においても類似性は高いといえる。
(4)指定商品が類似すること
本件商標の指定商品は、第9類「映写装置,映写用スクリーン,ビデオプロジェクター,プロジェクターリモコン,ミニビームプロジェクター,オートフォーカスプロジェクター,LCDプロジェクター」であり、引用商標の指定商品は、第9類「液晶プロジェクター,液晶プロジェクションテレビ,高温ポリシリコン液晶パネル,液晶プロジェクター用プリズム,液晶プロジェクションテレビ用光学エンジン,液晶プロジェクター用光学エンジン,液晶プロジェクター用映写スクリーン,液晶リアプロジェクションテレビ用スクリーン,液晶プロジェクター用マルチレンズアレー,液晶プロジェクター用レンズ及びランプ,液晶プロジェクター制御用コンピュータソフトウェア」であるから、両商標に係る指定商品は同一又は類似といえる。
(5)小括
以上述べたとおり、本件商標と引用商標は、これらを構成する図形部分及び文字部分がいずれも互いに極めて似通っているため全体として外観が類似し、称呼及び観念においても類似しているから、両商標は類似と判断されるべきものである。また、両商標は同一又は類似の商品を指定している。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)本件商標とその他人の標章との類似性の程度
本件商標は、引用商標との関係にあって、創作の自由度が高い図形部分において偶然に一致したとは考えられない共通点があり、文字部分についても同様である。したがって、類似性の程度は高いといえる。
(2)その他人の標章の周知度
引用商標に係る申立人のプロジェクター製品は、我が国を含む世界各国で長きに渡って広く継続的に販売されている。
ア 引用商標の使用開始及び継続的な使用
申立人は、3LCD方式(以下、単に「3LCD」という場合がある。)のプロジェクターにつき、1989年に液晶プロジェクターの発売を開始しており、引用商標については、2004年10月発売の製品から使用を開始し(甲4)、継続的に使用している(甲8~甲20)。
イ 申立人ウェブサイトにおける情報
申立人の手掛けるプロジェクターは、全て3LCD方式である旨が示されており(甲21)、同社のプロジェクター製品等には、引用商標が付されている(甲22)。
ウ 3LCDプロジェクターの世界累積販売台数
申立人による3LCDプロジェクターの世界累積販売台数は、2016年8月において2000万台(甲23)、2020年10月においては3000万台を達成している(甲24)。
エ 我が国における市場シェア
第三者調査機関である富士キメラ総研の調査資料によれば、申立人のビジネスプロジェクターは、我が国市場において2018年に62.7%、2019年に63.2%、2020年に62%及び2021年には62.2%と、直近数年においても継続的かつ安定的に62%以上という市場の過半を大きく超えるシェアを維持し続けている(甲25)。
また、申立人のプロジェクター製品は、我が国のみならず世界中で広く販売され、例えば我が国においては、2001年から2021年までの20年間にわたり、500ルーメン以上のプロジェクター市場においてトップシェアを獲得し続けている(甲26)。
オ 上述のアないしエを踏まえれば、引用商標の周知度は極めて高いといえる。
(3)その他人の標章が造語よりなるものであるか、又は構成上顕著な特徴を有するものであるか
引用商標の構成における文字部分は、申立人による造語であって、関連業界において一般的に使用されている実情はうかがえない。また、図形部分についても他に見られないユニークかつ顕著な特徴を有するものである。
(4)その他人の標章がハウスマークであるか
引用商標は、申立人のハウスマークではないものの、プロジェクターという同社の主要製品カテゴリーにおいて、製品本体にも付されるほどに用いられているから、ハウスマークと肩を並べるほどに重要な出所表示機能を果たすものである。
(5)企業における多角経営の可能性
申立人は、プリンターや複合機等の他にも、時計や会計ソフトといったように幅広い製品ラインアップを持つ我が国を代表する企業であって(甲27証)、既に多角的な経営がなされており、今後も広がる可能性が高いといえる。
(6)商品間、役務間又は商品と役務間の関連性
本件商標と引用商標の指定商品は、プロジェクターや映写装置関連といったように、具体的な商品のほとんどが共通しており、ゆえに、高い関連性があることは明白である。
(7)商品等の需要者の共通性その他取引の実情
本件商標と引用商標が指定するプロジェクターや映写装置等の製品は、主に一般消費者が需要者であると考えられるところ、そもそも、具体的な商品のほとんどが共通しているから、需要者についても当然に共通する。
(8)上記(1)ないし(7)に係る事由を総合的に検討すれば、本件商標は、他人である申立人の業務に係る商品であると誤認させ、その商品の需要者が商品の出所について混同するおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 商標法第4条第1項第7号について
申立人は、プロジェクターが映像を投影する際の仕組みの一つである「液晶方式」のうち、3枚の液晶ディスプレイ(LCD)を使って精緻に映像を再現する独自技術を「3LCD方式」と名付け、引用商標を採用し、出願・登録を行ったものであり、実際、同社のプロジェクター製品に係る「3LCD方式」を紹介するウェブサイトにおいて引用商標が使用されている(甲29)。このプロジェクター製品が、我が国のみならず世界中で広く販売され、我が国においてもプロジェクター市場においてトップシェアを獲得し続けていることは上に述べたとおりである。
ところで、引用商標については文字部分と図形部分を上下二段の構成とした態様も使用されており、この構成態様は、本件商標が採用したものと合致しているから、本件商標は、引用商標の周知性・著名性に便乗する意図、不当な利益を得る目的が強く推認される。
「3LCD方式」による申立人のプロジェクター製品は世界中で販売を行っているため、同社は、引用商標に関して相当に早い時期から世界各国で出願・登録を済ませているが、本件商標の商標権者と同一人と考えられる「Shenzhen Chunjing Trading Co.,ltd.」名義によって、本件商標と同一の商標につき、昨年(2022年)に入ってから各国で出願されており、指定商品は、いずれも本件商標と同様である。各国においてなされた出願商標に対して、申立人は異議申立てや情報提供を行い、現在も審理が係属しているところ、既にイギリスでは取り消す旨の決定が出されている(甲30)。
このように、商標権者は、引用商標と極めて類似する本件商標と同じ商標を、第9類のプロジェクターなど引用商標と同一又は類似の指定商品について、2022年以降、我が国を含む各国で出願を開始しているから、引用商標の周知性・著名性に便乗する意図、不当な利益を得る目的を秘めつつ、商標権として権利化することにより使用の正当化を謀る動きであることは疑いようないほどに明らかである。かような背景を持つ本件商標の出願の経緯には社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることは我が国商標法の予定する秩序に反している。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
4 商標法第4条第1項第19号について
本件商標は、引用商標の外観に係るユニークな特徴を巧妙に模倣しているものであって、同一又は類似である関連性の高い商品ばかりを指定しており、引用商標に係るプロジェクター製品が内外国で高い周知性を獲得していることを知った上で、これに便乗して不正の利益を得る目的をもって使用をするものであることが明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
5 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号の規定に違反してなされたものであることが明白であるから、取り消されるべきである。
第4 当審の判断
1 申立人商標の周知著名性について
(1)申立人の提出に係る証拠によれば、次の事実が認められる。
ア 申立人は、2004年(平成16年)10月に「EMP-7900」と称するプロジェクターを発売した(甲4)。当該プロジェクターの前面には、別掲3のとおりの構成からなる商標(色彩を異にするものも含む。以下「申立人使用商標」という。)が小さく表示されている(甲5)。
イ その後、申立人は、「EMP-7900」以外にも、その前面に申立人使用商標を小さく表示した各種のプロジェクターを発売するとともに(甲5、甲6、甲8~甲10、甲14~甲16、甲18、甲19、甲22)、プロジェクターに関する申立人のウェブサイト(甲8~甲10、甲21、甲29)、カタログ(甲11~甲15甲)及びYouTube動画(甲17)に申立人使用商標を表示している。
ウ 申立人は、プロジェクターについて引用商標(色彩を異にするものも含む。)も使用している(甲14、甲20、甲29)。
エ 申立人のプロジェクターは全て「3LCD方式」であり(甲21)、「3LCD方式」とは、液晶方式のうち、3枚の液晶ディプレイ(パネル)を使う方式である(甲19、甲29)。
オ 申立人の3LCD方式プロジェクターの世界累積販売台数は、2016年(平成28年)8月において2000万台(甲23)、2020年(令和2年)10月において3000万台を達成した(甲24)。
カ ビジネスプロジェクターの日本市場において、申立人のプロジェクターの2018年(平成30年)から2021年(令和3年)までの市場占有率は、約62から63%である(甲25)。
キ 「ITmedia」のウェブサイトにおいて、2005年(平成17年)6月9日付け、2014年(平成26年)11月11日付け及び2017年(平成29年)9月14日付けで申立人のプロジェクターに関する記事が掲載されている(甲18~甲20)。また、「週刊アスキー」のウェブサイトにおいて、2016年(平成28年)9月15日付けで申立人のプロジェクターに関する記事が掲載されている(甲23)。
(2)判断
前記(1)で認定した事実によれば、申立人は、平成16年10月から3LCD方式のプロジェクターに申立人使用商標を使用しており、申立人のプロジェクターの前面に申立人使用商標が表示されるとともに、プロジェクターに関する申立人のウェブサイト、カタログ及びYouTube動画に申立人使用商標又は引用商標が表示されており、また、申立人のプロジェクターの世界累積販売台数及び日本市場での市場占有率は相当程度あり、さらに、「ITmedia」又は「週刊アスキー」のウェブサイトにおいて、申立人のプロジェクターに関する記事が掲載されたことが認められる。
しかしながら、申立人使用商標は、申立人のプロジェクターの前面に小さく表示されていて、殊更目立つ態様で表示されているものではないこと、「ITmedia」又は「週刊アスキー」のウェブサイトにおける記事の掲載は僅か4回であること、その他に新聞、雑誌、テレビ等のメディアへの露出を示す証拠はないことからすると、申立人使用商標及び引用商標(以下、まとめて「申立人商標」という。)は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係るプロジェクターを表示するものとして我が国及び外国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、黒色の同じ大きさの右傾した平行四辺形と左傾した平行四辺形を上下対称に配し、先細りした三方向に延伸する線のうち、二本の線を該平行四辺形にそれぞれ重ね合わせるように配してなる図形(本件図形部分)と、その下に極太の書体で表した「2LCD」の文字(本件文字部分)からなるものである。
そして、本件図形部分は、全体として、何らか特定のイメージを表したものではなく、一種の幾何学的図形のような印象を受けるものであり、これよりは特定の称呼及び観念は生じない。
また、本件文字部分は、「2LCD」の文字からなるところ、その構成中の「LCD」の文字(語)は、「液晶表示ディスプレー」の意味を有するものであるが(甲3)、本件文字部分全体としては、特定の意味合いを理解、認識させるものではない。
そうすると、本件商標は、その構成中の「2LCD」の文字部分に相応して、「ツーエルシーディ」又は「ニエルシーディ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標
引用商標は、別掲2のとおり、灰色がかった紫色の同じ大きさの右傾した平行四辺形と左傾した平行四辺形を上下対称に配し、下方の平行四辺形には、これと左右対称にして端部を少し重ね合わせた同じ大きさの右傾した平行四辺形を配し、先端をぼやかした四方向に延伸する二重線のうち、三本の線を上記平行四辺形にそれぞれ重ね合わせるように配してなる図形(引用図形部分)と、その下に極太の書体で表された「3LCD」の文字(引用文字部分)からなるものである。
そして、引用図形部分は、全体として、何らか特定のイメージを表したものではなく、一種の幾何学的図形のような印象を受けるものであり、これよりは特定の称呼及び観念は生じない。
また、引用文字部分は、「3LCD」の文字からなるところ、その構成中の「LCD」の文字(語)は、「液晶表示ディスプレー」の意味を有するものであるが(甲3)、引用文字部分全体としては、特定の意味合いを理解、認識させるものではない。
そうすると、引用商標は、その構成中の「3LCD」の文字部分に相応して、「スリーエルシーディ」又は「サンエルシーディ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(3)本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標とを比較すると、外観においては、本件図形部分は、黒色の2つの平行四辺形と先細りした三方向に延伸する線を組み合わせた図形からなるのに対し、引用図形部分は、紫がかった灰色の3つの平行四辺形と四方向に延伸する二重線を組み合わせた図形からなるものであり、また、両商標の文字部分は、本件商標が「2LCD」の文字からなるのに対し、引用商標は「3LCD」の文字よりなるものであるから、両者は、図形部分の構成要素及び色彩の相違と文字部分の語頭における「2」と「3」の相違により、外観上、明確に区別できるものである。
次に、本件商標から生じる「ツーエルシーディ」又は「ニエルシーディ」の称呼と引用商標から生じる「スリーエルシーディ」又は「サンエルシーディ」の称呼とを比較すると、称呼における識別上、極めて重要な語頭において、「ツー」又は「ニ」の音と「スリー」又は「サン」の音の差異を有しており、それぞれを一連に称呼しても、全体の音感、音調が明らかに相違し、十分に聴別し得るものである。
さらに、観念については、本件商標と引用商標はいずれも特定の観念を生じないから、比較することはできない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、観念において比較することができないとしても、外観及び称呼において判然と区別し得るものであり、これらを総合的に勘案すると、両商標は、相紛れるおそれのない非類似の商標と判断するのが相当である。
(4)小括
以上のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、両商標の指定商品が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
前記1のとおり、申立人商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係るプロジェクターを表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されていたものとは認められないものである。
そして、前記2(3)のとおり、本件商標は、引用商標と非類似の商標であるから、同様に申立人使用商標とも非類似の商標である。
したがって、本件商標と申立人商標との類似性の程度は低いといえる。
そうすると、本件商標の指定商品と申立人の業務に係るプロジェクターとの間の関連性及び需要者の共通性並びに申立人商標の独創性を考慮したとしても、本件商標は、これを商標権者がその指定商品に使用しても、需要者、取引者が申立人商標を連想又は想起することはなく、その商品が申立人又は同人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じるおそれはないというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第19号該当性について
前記1のとおり、申立人商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係るプロジェクターを表示するものとして我が国及び外国の需要者の間に広く認識されていたものとは認められないものである。
また、本件商標が不正の目的をもって使用をするものであることを示す証拠の提出はない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第7号該当性について
申立人は、本件商標は、申立人商標の周知著名性に便乗する意図及び不当な利益を得る目的が強く推認されるなどと主張している。
しかしながら、前記1のとおり、申立人商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係るプロジェクターを表示するものとして我が国及び外国の需要者の間に広く認識されていたものとは認められないものであり、また、前記3のとおり、本件商標と申立人商標との類似性の程度は低いものであるから、申立人の主張は、その前提において失当である。
他に、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標であるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
6 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するとはいえず、その登録は同項の規定に違反してされたものとはいえない。
他に、本件商標の登録が商標法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-900019