商標異議申立
2023-900007
メゾンエリー、メゾン、エリー
- 審判番号
- 2023-900007
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2022-054313
- 登録番号
- 6634014
- 請求日
- 2023年01月10日
- 審決日
- 2023年10月19日
- 公報発行日
- 2023年11月24日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】橋本 三佳
- 【権利者代理人】福島 三雄
- 【異議申立人】アシェット フィリパキ プレス ソシエテ アノニム
- 【異議申立人代理人】達野 大輔
- 【異議申立人代理人】竹中 陽輔
- 【異議申立人代理人】中山 真理子
- 審判長/審判官
- 審判長 豊田 純一
- 審判官 杉本 克治
- 審判官 小田 昌子
- 分類
- T1651.261-Y (W25) / T1651.262-Y (W25) / T1651.263-Y (W25) / T1651.271-Y (W25)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項15号商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6634014号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6634014号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6634014号商標(以下「本件商標」という。)は、「MAISON ELLIE」の文字を標準文字で表してなり、令和4年5月13日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下留め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊靴,運動用特殊衣服」を指定商品として、同年9月26日に登録査定、同年10月28日に設定登録されたものである。
第2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において引用する登録商標は、以下の1ないし6のとおりであり、いずれの商標権も、現に有効に存続しているものである。
1 登録第633578号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、昭和36年5月24日に登録出願、第17類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同39年1月10日に設定登録され、その後、平成16年12月22日に指定商品を第25類「被服」及び第16類、第20類ないし第22類並びに第24類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされたものである。
2 登録第1008267号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲2のとおり構成よりなり、昭和46年3月25日に登録出願、第24類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同48年4月9日に設定登録され、その後、平成16年10月6日に指定商品を第9類「ウエイトベルト,ウエットスーツ,浮袋,運動用保護ヘルメット,エアタンク,水泳用浮き板,レギュレーター」、第25類「運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。),乗馬靴」及び第28類「運動用具,釣り具」とする指定商品の書換登録がされたものである。
3 登録第1793479号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲3のとおりの構成よりなり、昭和54年7月17日に登録出願、第21類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同60年7月29日に設定登録され、その後、平成18年1月4日に指定商品を第25類「ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」及び第3類、第8類、第10類、第14類、第18類、第21類並びに第26類「腕止め」を含む第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされたものである。
4 登録第2131069号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲4のとおりの構成よりなり、昭和57年5月17日に登録出願、第17類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、平成元年4月28日に設定登録され、その後、同21年8月19日に指定商品を第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,帽子,防暑用ヘルメット」及び第20類ないし第22類並びに第24類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされたものである。
5 登録第5051956号商標(以下「引用商標5」という。)は、別掲5のとおりの構成よりなり、平成17年6月30日に登録出願、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具,げた,草履類,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。),乗馬靴」、第8類「水中ナイフ,水中ナイフ保持具」を含む第8類及び第4類並びに第9類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同19年6月1日に設定登録されたものである。
6 登録第5443818号商標(以下「引用商標6」という。)は、「ELLE」の文字を標準文字で表してなり、平成20年11月7日に登録出願、第35類「被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,幼児用被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,幼児用履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,幼児用身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,衛生帽子の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,運動具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を含む第35類、第16類「紙製よだれかけ」を含む第16類及び第9類、第38類並びに第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同23年10月14日に設定登録されたものである。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第78号証(枝番号を含む。)を提出した。
なお、甲第60号証、甲第62号証、甲第65号証の19及び甲第65の24は欠番である。
また、証拠の記載については、以下、「甲第1号証」を「甲1」のように省略して記載する場合があり、枝番号の全てを示すときは、枝番号を省略する。
1 申立人及びその商標「ELLE(エル)」について
申立人は、フランス最大の複合企業体Lagardere(決定注:7文字目の「e」にはアクサン記号がある。) SCA(ラガルデール)の傘下で、女性向けファッション雑誌「ELLE(エル)」を始め各種雑誌を発行し、同時にファッション関連商品その他各種生活用品の製造販売や紹介を行う企業である(甲3)。
「ELLE(エル)」は、1945年に、フランスの女性向けファッション雑誌のために、Helene Gorden Lazareff(エレーヌ ゴードン ラザレフ)氏により独自に採択された標章である(甲3)。
雑誌「ELLE(エル)」は、衣料品・身の回り品・化粧品・家具・食器等の多種多様な商品、とりわけ世界的に有名なファッションブランドの商品に関する記事を多数掲載する女性向けファッション雑誌であり、フランスでは第二次世界大戦前から発行されてきたところ、現在では、我が国を含む世界46か国において、ライセンス契約又は合弁事業を通じて雑誌「ELLE(エル)」が発行され、当該雑誌に掲載されるファッションは、現代感覚にあふれた「ELLE(エル)」ファッションと呼ばれ、全世界の女性の間で広く支持を得ている(甲4、甲5)。
2 商標「ELLE(エル)」の著名性について
(1)我が国における「ELLE(エル)」の継続的使用
申立人は、我が国において、1970年から、略半世紀にわたり、「ELLE(エル)」を一貫して自らの業務に係るファッション関連及び各種生活関連の商品及び役務を示すものとして、継続的に使用してきた。
1970年3月、株式会社マガジンハウス(以下「マガジンハウス社」という。)が、申立人の許諾の下で、雑誌「an・an(アンアン)」を日本版「ELLE(エル)」誌と位置付けて創刊し、毎号、本国フランス版「ELLE(エル)」誌上の記事を一部そのまま掲載するなど、「ELLE(エル)」ファッションの紹介・普及を図り、その表紙には「ELLE japon(エル・ジャポン)」の標章を付してきた(甲6)。
なお、雑誌「アンアン」は若い女性を中心に爆発的な支持を得、我が国で最も人気のある雑誌の一つとなった。
そして、1982年4月以降は、マガジンハウス社が、日本版として雑誌「ELLE japon(エル・ジャポン)」を発行したが(甲7)、その後、株式会社タイム アシェット ジャパン(現在の商号は株式会社ハースト婦人画報社(以下「ハースト婦人画報社」という。)がこれを継承し(甲8)、現在では、「エル・ジャポン」(創刊1989年、月刊)に加え、「エル・デコ」(創刊1992年、年間5回)、「エル・グルメ」(創刊2002年、年間5回)、「エル・マリアージュ」(創刊2008年、年2回)を発行している(甲9~甲12、甲73)。
なお、「エル・ジャポン」は、主にファッション・美容・ライフスタイル関連記事を取り扱い、現在の発行部数(日本雑誌協会印刷証明付部数)は、約10万部となっている(甲9の2、甲55)。
また、「エル・デコ」は、インテリア・建築・デザイン関連の記事を、「エル・グルメ」は、食(食材・キッチン用品・国内外のショップ及びレストラン等)に関わる記事を、「エル・マリアージュ」は、結婚情報(ドレス・リング・ヘアメイク・結婚式場・新婚生活)に関連する記事を主に取り上げ、それぞれ発行部数は、公称7万部、6万部、7万部となっている(甲9の2、甲55)。
さらに、ハースト婦人画報社は、ウェブマガジンの日本版として、ファッション・美容・健康等の各種情報を内容とする「エル・オンライン」(サイト設立1996年、毎日更新)も開設しているところ、同社による2017年10月現在の集計によれば、月刊アクセス件数は、約4,690万回、ユニークユーザー数は、約369万人となっている(甲9の2、甲53)。
以上のように、「ELLE(エル)」誌は、世界のファッション業界の中心地であるフランスで発行され、世界各国へ輸出され、我が国でも、1970年以来、略半世紀の長期にわたり、幅広く衣料品・身の回り品・化粧品・家具・食器等のファション関連商品の紹介・広告を掲載してきた「ELLE(エル)」誌を通じて、「ELLE(エル)」が申立人の業務に係る商品及び役務を示すブランドとして、本件商標の登録出願日以前から、実際に使用され、我が国の需要者の間で広く知られるに至っていた。
(2)商標「ELLE(エル)」を付して販売される商品
申立人は、「ELLE(エル)」ファッションの普及を図るため、「ELLE(エル)」ブランドを用いたファッション関連商品その他各種生活用品をライセンシーに商品化させるといった活動も積極的に行ってきた。
我が国において、1964年から、帝人株式会社(以下「帝人社」という。)に対し、「ELLE」の独占的使用権を許諾し、「ELLE(エル)」ブランドの商品化を推進し(甲6)、帝人社は、自ら「ELLE(エル)」ファッションに係る衣料品を製造販売する一方で、その独占的使用権に基づき、国内6社企業に商標「ELLE(エル)」の再使用権を許諾し、協同して商標「ELLE(エル)」を付したファッション関連商品その他各種生活用品を開発し、「ELLE(エル)」ブランドの広告宣伝・製造販売及び普及に努めた(甲15、甲16)。
その後、申立人は、1984年7月に、帝人社とのライセンス関係を解約し、申立人の子会社である東洋ファッション開発株式会社(後のELLE PARIS株式会社。現商号は、ラガデール アクティブ エンタープライズ ジャパン。以下「申立人子会社」という。)を設立し(甲17)、自ら「ELLE(エル)」ファッションの市場開発・調査及び企画を行い、我が国における「ELLE(エル)」ブランドの利用・普及を推進してきた。
甲第18号証は、2004年9月に申立人が発行したニューズレターであるが、ここには、申立人子会社が「ELLE(エル)」を用いたブランドビジネスを行っている事実が記載されている。
また、甲第19号証は、2004年に申立人子会社のELLE PARIS株式会社が発行した「ELLE(エル)」ブランド製品のカタログであり、販売促進活動において利用されたものである。
さらに、甲第20号証は、料理全般に関する記事を扱う雑誌「オレンジページ」(2004年9月17日発行)上で、「ELLE(エル)」を付した衣料品・食器類・バッグ・家庭用リネン製品に関する記事が掲載されたものの写しである。
申立人子会社作成のライセンシー一覧(甲21)から、複数のライセンシーを通じ、「ELLE(エル)」を付したファッション関連商品その他各種生活用品は、本件商標の登録出願日以前に、婦人服、紳士服、子供服、ベビー服、毛皮、肌着、ナイトウェア、ハンカチ、タオル、靴下、エプロン、水着、浴衣、スキーウェア、手袋、帽子、ネクタイ、マフラー、スカーフ、履物、ベルト、アクセサリー、身飾品、時計、陶器、金属製食器、ガラス食器、刃物、ランチボックス、傘、バッグ、革小物、家庭用リネン製品、化粧用具、眼鏡、ゴルフ用品、自転車、ベビーカー、ガーデニング用品、家具、クッション、バス用品、トイレ用品、せっけん、化粧雑貨、健康グッズ、レイングッズ、喫煙具、文房具まで、広がっていたことが分かる。
なお、2015年ないし2019年における申立人子会社が作成した「ライセンシーメンバー表」及び最新の情報を含む2019年の「ライセンシーメンバー表」(甲61、甲66~甲69)を提出する。
また、2015年から2017年における各年代の商標「ELLE」及び「ELLE」を含む商標を付した商品の各売上高を確認できる証拠として、各ライセンシー又は申立人の関連会社が作成したライセンス計算書、ロイヤリティ計算書、ロイヤリティ及びマーケティング拠出金計算報告書及びロイヤルティに関する請求書の写し(甲63~甲65)を提出する。
上記の証拠はいずれも、申立人がライセンシーに対し使用許諾を行っている製品に関する売上高だけではなく、ブランド名(使用対象の商標)、使用許諾の対象商品及び使用許諾期間が明記されている。
したがって、本件商標の登録出願時前である2015年ないし2017年における各年代別の商標「ELLE」を付した商品の各売上高を確認できる証拠として、十分なものであると考える。
上記の商品のうち、具体的な商品の一例として、甲第15号証及び甲第16号証並びに甲第22号証ないし甲第39号証を提出する。
さらに、2014年ないし2015年の使用例として、ライセンシー企業のウェブサイトより該当ページのプリントアウトを提出する(甲40~甲44)。
また、最近の使用例として、一部のライセンシー企業のウェブサイトより該当ページのプリントアウト(2018年7月4日現在)(甲13、甲14、甲53、甲54)及び2015年以降に発行されている商品カタログの写し(甲57、甲70~甲72)を提出する。
加えて、雑誌「ELLE」においても、「ELLE(エル)」を付したファッション関連商品その他各種生活用品等の広告を掲載し、「ELLE(エル)」ブランドの広告宣伝・製造販売及び普及に継続的に努めている。その一例として、雑誌「ELLE japon(エル・ジャポン)」に掲載された「ELLE(エル)」を付したファッション関連商品その他各種生活用品等の広告ページの写し(甲52、甲56)を提出する。
これらの書証からも明らかなように、雑誌「ELLE」のみならず、申立人及びライセンシーにより製造販売される各種商品、また、これらの商品に関する販売カタログには、ほぼ統一的に商標「ELLE」が付されており、一貫して「エル」の称呼をもって取引されている。
以上の事実に鑑みれば、申立人の商標「ELLE(エル)」を付した商品は日常生活のあらゆる分野に及んでおり、それゆえ、「ELLE(エル)」は、各種商品の需要者、つまり若い女性のみならず、男性・子供・孫を持つ男女を含む老若男女幅広い世代に広く知られているということができる。
したがって、申立人の商標「ELLE(エル)」は、本件商標の登録出願日前から、各種生活関連用品の取引者・需要者の間で、「ELLE(エル)」といえば申立人の業務に係る商品・役務を容易に想起させるものとして、広く知られるに至っており、その状態が本件商標の登録査定時においても継続していたことは明らかである。
(3)「ELLE(エル)」の著名性を認めた審決等について
商標「ELLE(エル)」の著名性は、顕著な事実であり、商標「ELLE(エル)」の著名性を認定した審決が複数出されている(甲45~甲49、甲58)。
そして、申立人の所有する登録第1978527号の商標「ELLE」を基本商標として、防護標章が、平成12年(2000年)6月2日以降、様々な区分に属する商品・役務を指定して合計7件の登録が認められ、そのうち4件が現在も存続しており(甲50)、特許電子図書館の「日本国周知・著名商標検索」リストにも掲載されている(甲51)。
(4)小括
以上述べた事実から、申立人の商標「ELLE(エル)」が、本件商標の登録出願日以前から、すでに衣料品・履物等を始めとするファッション関連商品やその他各種生活用品の分野において周知著名となっており、その状態が本件商標の登録査定時においても継続していた。
3 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標と引用商標について
本件商標は、「MAISON ELLIE」の文字を標準文字で表してなり、これに対し、引用商標1ないし引用商標3、引用商標5及び引用商標6は、いずれも「ELLE」の欧文字で構成される商標であり、引用商標4は、「ELLE」の欧文字と「エル」の片仮名を2段に横書きした構成の商標である。
引用商標に含まれる「ELLE」の欧文字は、フランス語で、「彼女」、「(女性名詞をうけて)それ」という意味を有し(甲59)、仮に、フランス語が、我が国で英語に比べて馴染みのない外国語であるとしても、引用商標若しくは「ELLE」ブランドを知る取引者・需要者であれば、引用商標の著名性を考慮し、指定商品・指定役務との関係において、「ファッションブランドのELLE」という観念を看取するといえる。
(2)指定商品・指定役務の類似性について
本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品・指定役務と同一又は類似である。
(3)本件商標について
本件商標は、「MAISON ELLIE」の文字を標準文字で表してなるところ、中間にスペースが設けられていることから、「MAISON」と「ELLIE」の2つの構成要素からなることが容易に理解される。
また、「MAISON」の語は、本件商標の指定商品を取り扱うファッションの分野では、「会社」及び「店」ほどの意味合いで一般に使用されており(甲74)、自他商品識別力が極めて弱いものであり、このことは、審決例、審査例(甲75、甲76)でも述べられていることからも明らかである。
一方、「ELLIE」の語は、辞書等に特定の意味合いが掲載されていないため、一種の造語と評価できるのに加え、著名な引用商標「ELLE」に外観上極めて近似するものであるから、本件商標に接する取引者・需要者が、「ファッションブランドのELLE」と誤認して、本件商標の構成中の「ELLIE」の文字部分に着目することが少なくないものといえる。
したがって、本件商標は、その構成中「ELLIE」の文字部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであるから、当該文字部分を抽出し、引用商標と比較することが許されるべきものである。
よって、本件商標は、その構成中「ELLIE」の文字に相応して「エリー」の称呼が生じ、また、「ELLE」ブランドを知る取引者・需要者であれば、引用商標の著名性に起因して、当該文字列と外観上極めて類似する「ELLIE」を「ELLE」であると誤認し、指定商品との関係において、「ファッションブランドのELLE」という観念を想起するおそれがある。
(4)本件商標と引用商標の外観の類似性について
引用商標の欧文字部分は、「ELLE」を横書きしてなるものであり、引用商標4は、欧文字の読みを表す片仮名「エル」が含まれているものの、上段の「ELLE」が独立した要部として認識されるとみるのが自然である。
これに対し、本件商標の構成中、独立した出所識別標識として強く支配的な印象を与える「ELLIE」の文字は、全5文字中4文字が引用商標の欧文字と共通し、商標の識別において需要な前半の3文字のつづりも共通しており、4文字目の「I」は、横幅が狭く、その前後に配された「L」と「E」が接近することから、通常の使用態様においては他の文字が埋没して印象に残らない場合も少なくないといえる。
実際、本件商標の権利者(以下「本件商標権者」という。)が運営するECサイトにおいて、前面に本件商標が付された被服が掲載されているところ、見る角度によっては、「I」が埋没し、申立人の「ELLE」ブランドと紛らわしい表示となっている(甲77)。
よって、本件商標と引用商標は、その共通する文字の多さにより、視覚的に近似しており、外観上相紛らわしい類似の商標である(甲78)。
(5)本件商標と引用商標の称呼の類似性について
引用商標からは、その構成文字に相応して「エル」の称呼が生じ、これに対して、本件商標の構成中、独立した出所識別標識として強く支配的な印象を与える「ELLIE」の文字からは、「エリー」の称呼が生じるため、単純にこれらの称呼を比較した場合、両商標の称呼は類似しない。
(6)本件商標と引用商標の観念の類似性について
引用商標は、いずれも「ELLE」の欧文字を含むため、「彼女」、「それ」の意味を有するフランス語の代名詞(甲59)としての観念が生じるほか、「ELLE」ブランドを知る取引者・需要者であれば、引用商標の著名性を考慮し、引用商標の指定商品との関係において、「ファッションブランドのELLE」という観念を想起するといえる。
これに対し、本件商標の構成中、独立した出所識別標識として強く支配的な印象を与える「ELLIE」は、著名な辞書等にその意味合いが掲載されていない造語であるものの、申立人の著名なブランドである「ELLE」に極めて近似する外観を有することから、本件商標に接した取引者・需要者が、これを「ファッションブランドのELLE」と誤認するおそれがある。
そうすると、本件商標の要部である「ELLIE」は、「ファッションブランドのELLE」を想起させるものというべきであり、本件商標と引用商標は、観念上相紛らわしい類似の商標である。
(7)小括
以上より、本件商標に係る全ての指定商品は、引用商標に係る一部の指定商品・指定役務と同一又は類似する。
加えて、本件商標と引用商標は、称呼上類似しないものの、外観及び観念の類似性の高さも併せて総合的に考慮すれば、出所について誤認混同を生じるおそれがあるほど類似するものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
4 商標法第4条第1項第15号について
申立人は、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当し、その登録は認められるべきではないと確信している。
しかしながら、仮に本件商標の商標法第4条第1項第11号該当性が認められないとしても、申立人の著名な商標である「ELLE」と外観が極めて類似する「ELLIE」を含む本件商標は、申立人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標である。
(1)商標の類似性について
上記3(3)のとおり、本件商標の「ELLIE」の文字は、独立して識別標識として十分に機能するものであるとともに、外観・称呼・観念を総合的に勘案すれば、本件商標と引用商標は類似する。
(2)本件商標の指定商品と引用商標の指定商品等との関連性並びに商品の取引者・需要者の共通性について
上記3(2)のとおり、本件商標に係る指定商品は、引用商標に係る指定商品・指定役務と同一又は類似である。
よって、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品・指定役務の関連性は極めて高いとともに、その取引者・需要者は共通する。
(3)出所混同のおそれについて
引用商標の著名性は、上記2のとおりである。
また、本件商標の指定商品の取引者層・需要者層と申立人の業務に係る商品の取引者層・需要者層は共通しているから、本件商標の指定商品の取引者・需要者が、引用商標及び申立人がその商標を付して提供している商品を知っている可能性は極めて高い。
そして、本件商標は、取引者・需要者において、世界的に著名な引用商標を想起・連想させるものである。
したがって、本件商標権者が、本件商標をその指定商品について使用した場合、本件商標に接する取引者・需要者は、本件商標と類似する著名な引用商標を容易に想起・認識し、申立人又はこれに関連する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同して認識するおそれは高いというべきである。
(4)引用商標に化体した信用を害されるおそれについて
申立人は自己のブランドイメージを維持し、より一層の発展をさせるため、世界中で展開するあらゆる事業においてその商品の品質、役務の質、ブランド戦略・運営等について厳重な管理を行っている。
すなわち、商標「ELLE(エル)」は、申立人に係る商品・役務を表示するものとして、我が国はもとより世界中で一般の取引者・需要者の間に広く認識されている著名商標であり、申立人の提供する商品・役務に係る信用が化体した重要な財産である。
現に、我が国において,申立人は、「ELLE」の欧文字のみからなる商標はもちろん、「ELLE」の欧文字及び「エル」の片仮名から構成される商標に加え、「ELLE(エル)」を一部に含む商標について、250件以上の商標登録を保有している。
したがって、本件商標の登録が維持されると、申立人と何ら関係のない者により、申立人の意図とは無関係に、申立人が現にその商標を付して使用している商品及び提供している役務とその取引者層・需要者層を同一にする商品にかかる小売等役務について、引用商標と類似する本件商標が自由に使用されてしまうことになる。
その結果として、劣悪な品質の商品が引用商標と類似する商標によって提供されるという事態が生じ得ることも否定できない。
このような事態が生じた場合、申立人が永年にわたり多大な努力を費やして培ってきた「ELLE(エル)」のブランドイメージが著しく毀損され、申立人が多大な損害を被ることは明白である。
(5)小括
以上の事情及び引用商標の著名性を総合的に勘案すれば、取引者・需要者に対し、引用商標が与える印象は非常に強い。
よって、そのために生じる連想作用等により、本件商標が使用された商品が、申立人の業務に係る商品であると誤認し、その商品の取引者・需要者が商品の出所について混同するおそれがあるのみならず、申立人又は申立人と経済的・組織的に関連するものにより提供される商品であるかのような誤認を生じさせ、結果として商品の出所に混同を生じさせるおそれがあることは明白である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
第4 当審の判断
1 引用商標の周知著名性について
申立人の主張及び同人から提出された証拠によれば、引用商標中の引用商標5は、本件商標の登録出願時前から、申立人の発行に係る女性向けファッション雑誌及びウェブマガジンの題号として、また、申立人がライセンシーを通じて婦人服、紳士服、子供服、アクセサリー、時計、バッグ、靴、眼鏡等のファッション関連商品、化粧雑貨、食器等の日用品、ゴルフ用具、自転車等の商標として使用されたものであるから、申立人の業務に係るこれらの商品等を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認めることができ、その状態は、本件商標の登録査定時を含め、現在も継続しているものといえる。
2 本件商標と引用商標の類似性及びその程度について
(1)本件商標について
本件商標は、上記第1のとおり、「MAISON ELLIE」の文字を標準文字で表してなるところ、本件商標の構成中、「MAISON」の文字と「ELLIE」の文字との間に、1文字分のスペースを有するものの、その構成文字は、同じ書体、同じ大きさで、構成全体がまとまりよく一体的に表されているというべきである。
また、本件商標は、その構成文字全体に相応して「メゾンエリー」の称呼が生じ、かつ、当該称呼は、無理なく一連に称呼し得るものである。
さらに、「MAISON ELLIE」の文字は、辞書等に特定の意味を有する語として載録されている等の事実は認められない。
したがって、本件商標は、その構成文字に相応して、「メゾンエリー」の称呼を生じるが、特定の観念を生じないものである。
なお、申立人は、本件商標の構成中「MAISON」の文字が、ファッションの分野では、「会社」、「店」の意味合いで一般に使用されており、自他商品の識別力が弱い旨主張するが、「MAISON」の文字より生じる当該意味合いが辞書に載録されているとしても、我が国において、これが当該意味を有する語として広く一般に親しまれているとする事情は見いだせないから、申立人の上記主張は採用することができない。
(2)引用商標について
引用商標1ないし引用商標3、引用商標5及び引用商標6は、いずれも「ELLE」の欧文字で構成される商標であり、また、引用商標4は、「ELLE」の欧文字と「エル」の片仮名を2段に横書きした構成よりなる商標である。
そして、上記1のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品に使用する商標として、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものであり、「申立人の業務に係るブランドとしてのELLE」を理解させることから、「(申立人のブランドとしての)ELLE」の観念を生じるものである。
したがって、引用商標は、その構成文字に相応して、「エル」の称呼を生じ、「(申立人のブランドとしての)ELLE」の観念を生じるものである。
(3)本件商標と引用商標の類似性及びその程度について
本件商標と引用商標の構成は、上記(1)及び(2)に記載のとおりであるから、両商標は、構成文字及び構成態様が異なり、外観上、相紛れるおそれはないものである。
そして、称呼においては、本件商標から生じる「メゾンエリー」の称呼と引用商標から生じる「エル」の称呼とは、その構成音及び構成音数において明らかな差異を有するものであるから、明瞭に聴別できるものである。
また、観念においては、本件商標は、特定の観念を生じないものであるのに対し、引用商標は、「(申立人のブランドとしての)ELLE」の観念を生じるから、観念において相紛れるおそれはない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきであり、別異のものであるから、本件商標と引用商標との類似性の程度は低いものである。
3 商標法第4条第1項第11号該当性について
上記2のとおり、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標である。
したがって、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品又は指定役務が類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知著名性について
上記1のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品等を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認めることができ、その状態は、本件商標の登録査定時を含め、現在も継続しているものといえる。
(2)本件商標と引用商標との類似性の程度について
上記2のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であって、別異のものであり、類似性の程度は低いといえる。
(3)「ELLE」の文字の独創性について
引用商標を構成する「ELLE」の欧文字は、「彼女(たちは)。それ(ら)は。」(「クラウン仏和辞典 第7版」株式会社三省堂)等の意味を有するフランス語であるから、その独創性は高いものとはいえない。
(4)本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品の関連性、需要者の共通性について
申立人は、婦人服、アクセサリー、時計、バッグ、靴、眼鏡等のファッション関連商品、化粧雑誌等の商品に引用商標を使用していることから、本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品とは、同一又は類似の商品であって、その需要者も共通する場合があり、商品の関連性を有するものといえる。
(5)出所の混同のおそれについて
上記(1)のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品等を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認めることができ、その状態は、本件商標の登録査定時を含め、現在も継続しているものといえ、上記(4)のとおり、本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品とは、同一又は類似の商品であって、その需要者も共通する場合があり、商品の関連性を有するものといえる。
しかしながら、上記(2)のとおり、本件商標と引用商標は、非類似の商標であって、別異のものであり、類似性の程度は低いものであり、また、上記(3)のとおり、引用商標を構成する「ELLE」の文字は、独創性が高いものとはいえない。
そうすると、本件商標権者が本件商標をその指定商品について使用をした場合、これに接する取引者、需要者が、引用商標を連想、想起し、申立人又は同人と経済的又は組織的に何らかの関係のある者の業務に係る商品であると誤認し、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項11号及び同項第15号に該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-900007