商標無効審判
2023-890087
アイコムギケン、イコムギケン、コムギケン、コム、シイオオエム、ギケン、アイ
- 審判番号
- 2023-890087
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 商願2022-043745
- 登録番号
- 6621155
- 請求日
- 2023年12月06日
- 審決日
- 2024年07月02日
- 公報発行日
- 2024年09月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アイコム 株式会社
- 【請求人代理人】小谷 昌崇
- 【請求人代理人】川瀬 幹夫
- 【請求人代理人】並川 鉄也
- 【被請求人】iCOM技研 株式会社
- 【被請求人代理人】柿沼 太一
- 【被請求人代理人】山城 尚嵩
- 【被請求人代理人】石田 怜夢
- 審判長/審判官
- 審判長 大島 勉
- 審判官 小林 裕子
- 審判官 阿曾 裕樹
- 分類
- T111 .251-Y (W070937404142) / T111 .252-Y (W070937404142) / T111 .253-Y (W070937404142) / T111 .255-Y (W070937404142) / T111 .261-Y (W070937404142) / T111 .262-Y (W070937404142) / T111 .263-Y (W070937404142) / T111 .271-Y (W070937404142)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項10号商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法46条1項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第10号、商標法第4条第1項第11号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第6621155号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6621155号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和4年4月2日に登録出願、同年8月24日に登録査定され、第7類「工業用ロボット,金属加工機械器具,荷役機械器具,塗装機械器具,繊維機械器具,食料加工用又は飲料加工用の機械器具,パルプ製造用・製紙用又は紙工用の機械器具」、第9類「教育支援用ロボット(産業用・医療用・遊戯用のものを除く。),配電用又は制御用の機械器具」、第37類「配電用又は制御用の機械器具の修理又は保守,荷役機械器具の修理又は保守,金属加工機械器具の修理又は保守,塗装機械器具の修理又は保守,医療用機械器具の修理又は保守,繊維機械器具の修理又は保守,食料加工用又は飲料加工用の機械器具の修理又は保守,印刷用又は製本用の機械器具の修理又は保守」、第40類「製造に用いるための工業用ロボットの貸与,金属加工機械器具の貸与,繊維機械器具の貸与,パルプ製造用・製紙用又は紙工用の機械器具の貸与,食料加工用又は飲料加工用の機械器具の貸与,金属の加工」、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催」及び第42類「機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」を指定商品及び指定役務として、同年9月29日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
請求人が、本件審判の請求の理由において引用する登録商標は、以下のとおりの商標(以下の1から35を引用商標1から引用商標35といい、これらをまとめて「引用商標」という場合がある。)であり、それらの指定商品及び指定役務、登録出願日並びに設定登録日は、商標登録原簿に記載のとおりであって、いずれも現に有効に存続しているものである。
商標登録番号: 商標の構成
1 登録第912916号商標:別掲2のとおり
2 登録第1163099号商標:別掲3のとおり
3 登録第1323051号商標:別掲4のとおり
4 登録第2269852号商標:アイコム
5 登録第2269853号商標:AICOM
6 登録第2269854号商標:別掲5のとおり
7 登録第2431297号商標:Icom Inc.
8 登録第2431298号商標:アイコム株式会社
9 登録第2536191号商標:別掲6のとおり
10 登録第2634003号商標:別掲7のとおり
11 登録第2698382号商標:別掲8のとおり
12 登録第2698383号商標:IKOM
13 登録第3010296号商標:アイコム
14 登録第3020537号商標:別掲5のとおり
15 登録第3046104号商標:アイコム
16 登録第3078255号商標:別掲5のとおり
17 登録第3084933号商標:別掲5のとおり
18 登録第3091905号商標:別掲5のとおり
19 登録第3124663号商標:アイコム
20 登録第3129020号商標:アイコム
21 登録第4062397号商標:ICOM
22 登録第4071826号商標:AI-COM
23 登録第4094707号商標:別掲9のとおり
24 登録第4497036号商標:i-com(標準文字)
25 登録第4662614号商標:i_com
26 登録第4728223号商標:i.com(標準文字)
27 登録第5117519号商標:別掲5のとおり
28 登録第5117520号商標:ICOM(標準文字)
29 登録第5117521号商標:アイコム(標準文字)
30 登録第5117525号商標:アイコム情報機器(標準文字)
31 登録第5443952号商標:ICOM(標準文字)
32 登録第5848308号商標:アイコム(標準文字)
33 登録第5853059号商標:別掲5のとおり
34 登録第5914487号商標:ICOM(標準文字)
35 登録第5914488号商標:アイコム(標準文字)
第3 請求人の主張
1 請求の趣旨
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由(商標法第4条第1項第10号、同項第11号及び同項第15号)を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証から甲第20号証(枝番号を含む。以下「甲○」と表記する。)を提出した。
2 請求の理由
(1)請求人の商号商標(ハウスマーク)の周知著名性
ア 請求人の歴史
請求人は、前身の「井上電機製作所」を経て1964年7月に設立され、1964年末にアマチュア無線機の第一号機を開発し、販売を開始した。請求人は、日本の無線機メーカーの草分け的存在で、当初はアマチュア無線機で非常に有名となった。
以来、企業努力を重ね、無線通信機器の開発にまい進し、当該商品の製造販売を拡大してきた。そして、今では日本のみならず、北米、欧州、アジア及びオセアニア等世界各地に販売網を作り上げるとともに、陸上用、海上用、航空機用等の業務用無線機、さらに無線LAN機器、IP電話システム、IoT機器といったネットワーク機器の製造、販売へと事業を拡大している。請求人は、今や、アマチュア無線では世界トップクラスの売上を、業務用無線機においても世界上位クラスの売上を誇る企業へと成長を続けている(甲3、甲4)。
また、請求人は、無線通信機器の製造、販売のみならず、無線通信機器を用いた仮想移動体通信事業者(MVNO)として、通信サービス事業をも行っている。
よって、現在、アマチュア無線愛好家及び通信業界内で、請求人を知らない者はいないといっても過言ではない。
なお、請求人は上記のような継続的な実績と信頼を評価され、2001年に東証一部上場、2022年4月より東証プライム市場に上場している。
イ 請求人のハウスマークについて
請求人は、1978年に現在の「アイコム株式会社」に社名変更を行い、以来、「ICOM」及び「アイコム」等、ハウスマークの訴求に努めてきた。請求人が製造販売する通信機器には、必ずハウスマークが付されている(甲5の1~7)。
上述のごとく、請求人は、少なくとも、アマチュア無線愛好家及び通信業界内で周知、著名であるが、それに伴い、ハウスマークも日本国内のアマチュア無線愛好家及び通信業界内で周知、著名となっている。
そして、請求人が所有する、引用商標1(甲2の1)は、特許庁等において、日本国での周知、著名商標として認定されている(甲6の1~3)。
また、甲2の1から35以外にも、請求人は、ハウスマークの登録商標を多数所有している(甲7の1~21)。
ウ 宣伝広告活動
請求人のハウスマークがアマチュア無線愛好家及び通信業界内で周知著名である原因事実を以下に例示する。
(ア)新聞記事、新聞広告
請求人に関する記事や広告が、日本経済新聞といった一般紙や、電波新聞、日刊工業新聞等の業界紙において、継続して掲載されている(甲8の1~11)。
(イ)雑誌広告
請求人は、アマチュア無線愛好家の愛読誌である「CQ ham radio」において、継続して自社製品の宣伝広告を行っている(甲9の1~8)。当該雑誌は、1946年(昭和21年)9月に創刊されて以来、70年以上の長きにわたり発行されているアマチュア無線の月刊専門誌である。また、他にも、アマチュア無線誌「HAM world」(甲9の9)、ヨット・モーターボートの雑誌「Kazi」(甲9の10)、「機械技術」別冊の「防災ハンドブック」(甲9の11)、「航空無線のすべて」(甲9の12)、「航空無線のすべて総集編」(甲9の13)、「おもしろ無線受信ガイド」(甲9の14)、「周波数手帳ワイド」(甲9の15)への広告宣伝も行っている。
(ウ)テレビ番組
テレビ東京系の経済ドキュメンタリー番組「知られざるガリバー/エクセレントカンパニーファイル」の2023年4月15日放送回にて、請求人が取り上げられた。
当番組は、各業種のなかで大きな存在感を示す企業にスポットを当て、その実像に迫っていく内容となっている。
番組内では、総合無線機器メーカーである請求人が、無線機を通じて、あらゆる現場のコミュニケーションを支えていることに触れ、開発現場では、過酷な環境を想定した製品試験を実施し、どのような環境でもコミュニケーションを絶やさないことを使命として、モノづくりに励んでいることを紹介している。
さらに、昨今ではネットワーク分野に進出し、無線機とネットワーク技術を駆使した独自の製品作りにも力を入れ、無線技術の新たな可能性がさらに広がっていることを伝えている(甲10の1~3)。
(エ)ウェブサイト記事
IT系情報サイトの最大手「IT media」や夕刊フジのウェブサイト「zakzak」にて請求人の紹介記事が掲載されている(甲12の1、2)。
(オ)その他
請求人は、毎年8月に開催される日本アマチュア無線連盟が主催する「アマチュア無線フェスティバル(ハムフェア)」のほか、全国で開催される多数の展示会に出展している(甲11、甲13)。
また、2015年(平成27年)8月以来、請求人は、「アイコム」及び「iCOM」と大きく記載した看板を、東京駅、秋葉原、羽田空港、大阪国際空港(伊丹空港)、大阪日本橋、加美駅(大阪)に設置している。
いずれの設置場所も、一日に数万人から数十万人という国内外の多くの人々が利用する場所であり、大きく記載した「iCOM」と、「無線はアイコム」の文字は非常に目を引き、アマチュア無線愛好家や無線通信関連の業界ではない一般の人々も、「アイコム」及び「iCOM」が無線関連の企業を表すものであると十分に認識し得る(甲14)。
さらに、請求人の無線機は、全国ネットの地上波のテレビ番組やBS放送、インターネット配信番組、劇場公開映画等の劇中において数多く使用されている実績がある(甲11)。視聴者は、ドラマや映画の中で、請求人の無線機を頻繁に目にする機会があり、「アイコム」「iCOM」を認識することとなる。
また、実際に、請求人の製品は、官公庁、公益団体、流通、空港、船舶、警備業、小売業など様々な分野で使用されているため、アマチュア無線愛好家や無線通信関連の業界ではない一般の人々にとっても、業務において手にする機会は十分にあるといえる。
エ 販売実績
アマチュア無線機では世界トップクラス、業務用無線機でも世界上位クラスの売上を誇っていると上述したが、これは種々の新商品が開発され、ビジネスの範囲が広がり、海外への進出も目覚ましい、請求人の地道な努力の結果である。2019年から2023年までの直近5年間の請求人の売上高は、約297億円から341億円の間で推移している(甲15)。
オ 請求人のハウスマークの外国における著名性について
請求人の「ICOM」及び「iCOM」等の商標は、国際登録をはじめ、アジア、欧州、北米、中南米、中東諸国等、世界各国で登録されている(甲16)。請求人のアマチュア無線機及び業務用無線機の世界への進出状況に鑑みると、請求人のハウスマークが、世界においてもトップブランドであることは明らかである。
かくのごとく、請求人のハウスマークは、本件商標の登録出願前より請求人の業務に係る商品及び営業を表示するものとして、世界的にも周知、著名なものとなっている。
(2)本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当する理由
ア 本件商標及び引用商標の称呼の特定
(ア)本件商標の称呼の特定
本件商標(甲1)は、黒く塗り潰された円と、その下に3本の縦線で構成された欧文字「i」と思しきロゴと、その右側には、上段に欧文字「com」、下段には「giken」が配された外観からなる。
本件商標中「i」のように、欧文字を幾何図形の組み合わせで表現する手法は特に珍しいことではなく、本件商標に接した需要者は、直ちに「i」であると容易に認識でき、右に位置する「com」「giken」と併せて称呼を模索しようとすることは想像に難くない。
「com」部分は上段に記載されており、下段の「giken」よりもやや大きく表されていること、また、「giken」からは、「技研(=技術研究所)」を直感させ、単に業務内容や施設名を表す品質表示語であると認識できることからも、「icom」部分こそが要部であり、そこから「アイコム」なる称呼が生じるとするのが自然である。
(イ)引用商標の称呼の特定
引用商標は、それぞれの構成に則して、「アイコム」なる称呼が生じる。
イ 本件商標と引用商標が類似する理由
上述のように、本件商標からは「アイコム」の称呼が生じ、引用商標からも「アイコム」の称呼が生じるため、これらは称呼を共通にする。
そして、本件商標と引用商標は、共通する類似群コードを含んでおり、本件商標と引用商標の指定商品及び指定役務はそれぞれ抵触関係にある。
また、上述のごとく、本件商標には、商標全体を一体視すべき特段の事情はなく、構成要素の一部である「i/com」部分が分離抽出され看取される。そして、その構成要素の一部が、引用商標と同一又は類似する関係にある。
請求人のハウスマークは、上述のごとく著名となっており、請求人の引用商標の指定商品と本件商標の指定商品は抵触関係にあるため、本件商標は、審査基準にいう商標法第4条第1項第11号に該当する商標である。
以上より、本件商標は、引用商標と「アイコム」なる称呼を共通にし、その指定商品は、引用商標の指定商品及び指定役務と抵触関係にある。
よって、本件商標は、引用商標とは類似し、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(3)本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当する理由
ア 請求人商標の周知度、独創性、ハウスマークであるかどうか
上述したように、請求人の商標「アイコム」、「ICOM」等は、ハウスマークとして、少なくとも我が国におけるアマチュア無線愛好家及び通信業界内で広く認識されるに至っており、周知、著名となっている。これらハウスマークは、請求人が、採択した造語であり、独創性を有する。
イ 企業における多角経営の可能性
請求人は、無線通信機器の製造販売業者ではあるものの、ちまたにおける情報通信技術の発達と相まって、例えばIPトランシーバーや無線LANトランシーバーの販売を開始し、KDDI株式会社(au)や株式会社NTTドコモ(docomo)と提携し、無線通信機器を用いた仮想移動体通信事業者(MVNO)として、通信事業サービスを行うなど、ビジネスの幅が広がっている。さらに、5G対応通信機器の発売も予定し、情報通信技術の発達に伴って、今後一層、ビジネスの範囲は広がる可能性がある。
ウ 商品役務間の関連性
請求人が製造販売している無線通信機器は、本件商標の指定商品及び指定役務である「工業用ロボット,金属加工機械器具,配電用又は制御用の機械器具,金属の加工,機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計」等とは、機器の設計、加工等において重複する部分がある。
請求人は、2020年6月10日に発表した「中期経営計画2023」において、「受託修理、自動化技術知見蓄積の社外提供」を経営基盤の強化策として挙げており、具体的な取り組みとして、生産部門における「自動化技術の社外提供」を行うことを表明している(甲17の1)。
また、2023年5月11日発表の「中期経営計画2026」においては、「ロボット生産やスマートファクトリー化によるモノづくりの改革と進化を継続」することを表明しており、これらの取り組みは継続的に実施されるものである(甲17の2)。
具体的には、2018年12月17日付けの電波新聞において、無線機組立てを3年以内に完全自動化する計画を発表後(甲17の3)、2019年5月に、携帯型無線機の最終組み立てを双腕ロボットなどで自動化するラインを稼働させており(甲17の4)、2019年7月29日付けの日刊工業新聞社が配信する日刊工業ビデオニュースにおいても、中小型無線機器の製造の全面自動化に向けて、複数の産業用ロボットを導入すると伝えている(甲17の5)。
さらに、2020年5月21日付けの電波新聞においても、ロボットによる完全自動組み立てラインを20年度(21年3月期)末には計3ラインにするとの記載があり、請求人による無線機器の製造過程においては、ロボットが必要不可欠となっている(甲17の6)。
一方、被請求人は、2018年より協働ロボットシステム開発事業を行っており、制御機器のソフトウェア・ハードウェアの設計・製造販売、配電盤・各種自動制御盤・電気制御装置の設計・製造販売、機械装置その他各種プラントの設計等の事業内容を考慮すれば、請求人の商品役務と被請求人の商品役務は、密接な関連性を有している。
事実、請求人と被請求人は、いずれも第4回関西物流展という同じ展示会にも出展している。多くの企業が参加するため、業種毎に建物やフロア等で区分けされている中で、請求人と被請求人は、僅か通路を二本挟んだ非常に近い場所にブースが割り当てられており、このことからも両者が比較的近い業種であると認識されたことがうかがえるとともに、商品役務の関連性を裏付けるものといえる(甲18)。
また、甲12の1の「同社(請求人)のトランシーバーは工場でよく使われている。」、「工場ではまだまだトランシーバーを使うケースが多い。」との記載があるとおり、請求人の製品が工場で使用されていることがうかがえる。一方の被請求人は、その事業内容からも、工場で使用される機器等を開発設計し、製造販売を行っていることはいうまでもなく、請求人と被請求人の製品の使用場所も同じである。
エ 本件商標と引用商標の出所混同のおそれ
引用商標に見られるように、請求人は、現在に至るまで、複数のハウスマーク関連の商標を採択し、使用してきたという事情がある。そして、請求人の商品役務と被請求人の商品役務は密接な関連性を有する。
とすれば、本件商標が使用されることにより、被請求人による商品役務はあたかも請求人の業務に関わる商品であるかのごとく商品の出所を誤認混同させるおそれがある。例えば、被請求人が、請求人の関連会社であるかのごとく、少なくとも、本件商標が使用された商品が、請求人と組織的、経済的に何らかの関係性があると誤認させるおそれがある。
オ 特許庁の判断例
請求人は、これまでに「ICOM」「アイコム」を含む被請求人以外の他人の登録商標について異議申立(異議2005-90447、異議2007-900194)を行っている(甲19の1、2)。
さらに、他人の出願商標「Icom」(商願2005-46356、第18類及び第25類)について、一見、請求人との関連性が薄い分野であるにもかかわらず、出所混同を生じさせるおそれがあるとして、商標法第4条第1項第15号に該当するとして拒絶査定となった事案も存在する(甲20)。
カ 以上より、本件商標は、周知、著名商標「アイコム」、「ICOM」等との関係において、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4)本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当する理由
本件商標は、アマチュア無線愛好家及び通信業界内で広く知られている請求人商標「アイコム」、「ICOM」等と類似する「icom」を含む商標であって、当該「icom」は分離して看取されるものである。
そして、本件商標は、請求人商標の商品又はこれに類似する商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。
第4 被請求人の答弁
1 答弁の趣旨
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙1から乙8(枝番号あり。以下「乙○」と表記する。)を提出した。
2 答弁の理由
(1)商標法第4条第1項第11号に該当しないこと
ア 本件商標の構成
(ア)本件商標の外観は、各複数の欧文字部と図形部から構成されること
本件商標は、欧文字部及び図形部から構成される。具体的には、「COM」(大文字)の文字から構成される欧文字部、「giken」の文字から構成される欧文字部、円状の図形部、互いに縦方向に平行関係にある3本の直線からなる図形部から構成される。
(イ)欧文字部のみに称呼が生じ、図形部には称呼が生じないこと
称呼とは、商標に接する需要者が、取引上自然に認識する音を指す。
本件商標に初めて接した需要者において自然に可読される構成部は、「COM」及び「giken」であって、その欧文字から第一義に導かれる称呼は「コムギケン」となる。
一方の図形部は、直ちに特定の称呼を持つものではない。
より具体的に図形部が欧文字「i」(アイ)と可読される可能性を検討するも、図形部が3本の直線からなることにより、ロゴデザインとしての象徴性を増しており、需要者が取引上自然に認識し得るものではない。
請求人は「欧文字を幾何図形の組み合わせで表現する手法は特に珍しいことではなく」とするものの、その根拠を掲げるものではなく、独自の見解にすぎない。
本件商標のように可読可能な欧文字部と並列して図形部が存在する場合には、需要者は、欧文字部と比較して象徴的な図形部に称呼を求めず、第一義には欧文字部に注目して称呼が生ずると解するのが自然である。
よって、本件商標においては欧文字部のみに称呼が生じ、図形部には称呼が生じない結果、その称呼は「コムギケン」となる。
(ウ)仮に図形部において「アイ」という称呼を生ずるとしても、本件商標の称呼は「アイコムギケン」であること
a 本件商標の称呼を「アイコムギケン」と認定した前決定の正当性
本件商標が図形部と欧文字部に大きく分けられることは前記のとおりであるところ、音節で見ると図形部「アイ」と、欧文字部「コムギケン」とが連接して、全体として無理なく一連に称呼し得る「アイコムギケン」という称呼が生じる。
換言すれば、本件商標に接した需要者は、図形部と欧文字部を不自然に分離抽出し、かつ欧文字部を「COM」及び「giken」とに分離し、さらに、「giken」をあえて無視して、図形部と「COM」とをことさらに結合させなければ本件商標を「アイコム」という称呼で認識、把握することができないものであり、この点において請求人の主張は的を射ない。
その証左として、請求人が過去に申立てた異議申立事件(乙4。異議2012-900026)における登録商標「共立アイコム」(標準文字)についても、特許庁は「その構成文字全体から生ずる「キョウリツアイコム」の称呼も、よどみなく一連に称呼し得るものである」旨認定している。
本件のように「アイコムギケン」という7音であって、かつ図形部と欧文字部を不自然に分離抽出しなければ「アイコム」という称呼で認識、把握することができない本件商標においては、「アイコムギケン」が一連の呼称であることは明らかであり、本件商標の一部分のみを取り出して「アイコム」という部分のみをもって称呼認定することはできない。
b 本件商標から「アイコム」なる称呼は生じないこと
この点、請求人は「com」部分が「giken」よりもやや大きく表されていること、また、「giken」からは「技研(=技術研究所)」を直感させ、単に業務内容や施設名を表す品質表示語であることが認識できることを理由に、「icom」部分こそが要部であり、そこから「アイコム」なる称呼が生じるとするのが自然と主張している。
まず、この主張は、前決定により退けられた繰り返しの主張である。
また、このような請求人の主張は、上述のような本件商標の構成や構成から生まれる音節を無視したものであり不自然なものである。
すなわち請求人は、「icom」を要部と主張するものの、図形部の称呼に相当する「i」と欧文字部「COM」が1セットとなることについて何らの根拠を示していない。しかしながら、あえて二段に配され可読容易な「COM」及び「giken」(コムギケン)を分離抽出して、図形部に相当する「i」と「COM」を1セットとして認識、把握することは、先述のように本件商標の構成や構成から生まれる音節からして極めて不自然である。
本件商標は、図形部は縦断的に配されており、その一部分である2段目において「COM」とのみ、3段目において「giken」とのみ接続している。かかる配置を前提とすると、2段目のみにおいて接続する欧文字部のみを分離抽出して、図形部と合わせて認識、把握するという請求人の主張は成り立たない。
c 本件商標から「アイコム」なる称呼が生ずるとする請求人の主張の根拠が薄弱であること
加えて、本件商標の構成を無視しているという上記の根本の点をおくとしても、請求人が掲げる理由はいずれも失当である。
すなわち、請求人の主張中、各欧文字部のサイズの違いをいう点については、そもそも需要者の視覚的に強調されるほどの違いはない。
また、そもそも「giken」が品質表示語という点についても、請求人の独自の理解に基づく前提である。加えて「giken」から直ちに「技研」という漢字を想起することはない。本件商標の構成に鑑みても、二段目に配された欧文字とセットで「comgiken」と可読されることから、欧文字「giken」部のみに着目して「技研」という漢字による認識がされるものではない。
よって、仮に本件商標中の図形部が「アイ」という称呼を生ずるとしても、本件商標の構成、及び構成から生まれる音節に照らせば、本件商標の称呼は「アイコムギケン」になる。
イ 引用商標の称呼
いずれも本件無効審判請求の手続において積極的に争うものではない。
ウ 本件商標と引用商標が非類似であること
(ア)称呼
前記のとおり、本件商標からは「コムギケン」又は「アイコムギケン」の称呼が生じる。
「コムギケン」と「アイコム」とを比較した場合におよそ称呼が非類似であることはいうまでもなく、また「アイコムギケン」と「アイコム」とを比較した場合にも、「ギケン」の音の有無に差異を有し、かつ音数において明らかな差異を有する。
よって、それぞれを一連に称呼しても、語調、語感が相違し、明瞭に聴別されるものであるから、本件商標と引用商標とは称呼上非類似である。
(イ)外観
本件商標の外観は前記のとおりである。引用商標に外観類似の商標がないことは明白であり、本件商標と引用商標は外観において非類似である。もとより請求人もこの点に関する主張を放棄している。
(ウ)観念
本件商標及び引用商標ともに辞書等に記載のない造語であり、特定の観念は生じず、両者は観念において比較できない。
請求人は外観同様、観念に関する類似主張をも行っていないが、請求人自身、過去の別件異議申立事件において特定の観念が生じないことを自認しており(乙5、乙6)、本件においても同様の認識であると考えられる。
(エ)小括
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、外観及び称呼において相紛れることのない非類似の商標である。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第15号に該当しないこと
ア 類似度の低さに照らせば出所混同のおそれはないこと
上記のとおり、本件商標と引用商標とはいずれも特定の観念は生じず、外観及び称呼において明らかに相違する別異の商標であり、その類似性も非常に低い。
そのため、本件商標に触れた取引者、需要者において、引用商標を連想又は想起することはなく、よってその商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれはない。
イ 過去の判断について
なお、請求人は、特許庁が請求人による異議を受け商標法第4条第1項第15号に違反して登録したものと認めた例や拒絶査定をされた例を挙げている(甲19の1、2、甲20)。
しかしながら、甲19の1及び2は、それぞれ平成18年(2006年)及び平成19年(2007年)になされた決定であり、いずれの事案についても取消通知に対する商標権者による意見は提出されなかった事案である(甲19の1、甲19の2)。
また、甲20の拒絶理由通知の対象となった出願に係る商標は「Icom」であり、その外観及び称呼において引用商標と類似であり、本件と事案を全く異にしている。甲20は、本件商標と引用商標とが非類似である本件において、参酌されるべきではない。
また、さらにその後、平成23年(2011年)、平成24年(2012年)及び平成29年(2017年)に、それぞれ乙4、乙5、乙6のような請求人らの異議申立てを認めない決定をしている。
このうち、乙4及び乙5については商標法第4条第1項第15号が問題となったところ、両決定では、「仮に請求人の引用商標が広く知られていたものであったとしても」という前提のもと、11号該当性の検討において本件商標と引用商標とが「十分に区別し得る別異の商標というべきものである」ことを理由に「出所について混同を生ずるおそれはない」と結論づけている。
ウ 本件における検討
本件においてもこれら乙4及び乙5と同様に、本件商標と引用商標とは、前記における検討結果と同様の理由により、十分に区別し得る別異の商標である。
したがって、被請求人が本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者をして、請求人がハウスマークとして使用していると主張する引用商標「アイコム」、「ICOM」等を想起又は連想させない。
よって、その商品が請求人又はそれと経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく、その商品について混同を生じさせるおそれはない。
さらに進んで検討するに、請求人は商品役務間の関連性を主張している。しかしながら、請求人が製造販売し、かつ周知、著名となっていると主張しているのは無線通信機器にすぎない。仮に請求人がハウスマークであると主張する引用商標「アイコム」、「ICOM」等が周知、著名であったとしても、無線通信機器については第9類に属し、その類似群コードは「電気通信機械器具」(11BO1)が該当する(乙7)。
しかしながら、被請求人の製造販売する対象は主に工場内の製造ラインをサポートする協働ロボットであり、これら類似群コードに含まれる性質のものではない。
同様に、商品等の需要者の共通性その他取引の実情に鑑みても、請求人が周知、著名性を獲得したと主張するアマチュア無線愛好家及び通信業界は、およそ被請求人の顧客層と重複するものではない。前述のとおり、被請求人は工場内の製造ラインをサポートする協働ロボットを製造販売するところ、その取引の実情も自社における直売や機械商社経由で工場の製造ラインに対して商品を販売するものである(乙8)。
したがって、請求人のように消費者を含む広く一般に対し、製品を販売するものではなく、その需要者を共通にしないことや、これら取引の実情等が大きく異なることに照らせば、仮に請求人がハウスマークであると主張する引用商標「アイコム」、「ICOM」等が周知、著名であったとしても、本件商標との間で需要者が出所を混同するということはない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第10号に該当しないこと
引用商標「アイコム」、「ICOM」等と本件商標とが非類似であることは前記において既に主張したとおりである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
第5 当審の判断
1 利害関係について
請求人が本件審判を請求することの利害関係の有無については、当事者間に争いがなく、当審は請求人が本件審判の請求について利害関係を有すると認める。
2 請求人の使用に係る商標の周知性
(1)請求人の提出証拠及び主張によれば、以下のとおりである。
ア 請求人は、無線通信機器、ネットワーク機器等の製造、販売を業務内容とする会社であり、1978年から「アイコム株式会社」の社名を使用している(甲4)。
イ 請求人は、アマチュア無線機器、ネットワーク機器、トランシーバー、IP電話システム機器などを取扱商品としており、それら商品のカタログには、別掲5のとおりの構成からなる「iCOM」の文字(以下「使用商標」という。)が表示されている(甲5)。
ウ 請求人の売上高は、約249億円(2018年3月期)、約297億円(2019年3月期)、約305億円(2020年3月期)、約279億円(2021年3月期)、約283億円(2022年3月期)、約342億円(2023年3月期)である(甲15)。
エ 平成25年(2013年)から令和5年(2023年)にかけて発行された新聞において、請求人やその事業活動、関連商品などの紹介記事や広告記事などが掲載されており、その中には、請求人を「アイコム」と特定したり、使用商標を表示するものがある(甲8)。
オ 2015年から2022年にかけて発行された雑誌(CQ ham radio、HAM Worldなど)において、請求人の商品の広告記事などが掲載されており、その中には、使用商標や「ICOM」の文字などを表示するものがある(甲9)。
カ テレビ東京のテレビ番組(2023年4月15日放送回)において、請求人が「総合無線機器メーカー」として取り上げられて紹介された(甲10の2)。
キ 請求人は、展示会ブースののぼりや、鉄道駅、空港などの看板において、使用商標を表示した広告を設置している(甲13、甲14)。
(2)以上によれば、請求人は、無線機器、ネットワーク機器、トランシーバー、IP電話システム機器などの無線通信機器の製造、販売を行い、その販売実績は、最近5年間(2018年~2023年)において年間で約300億円前後の継続した売上高をあげており、広告宣伝実績としても、使用商標や「アイコム」、「ICOM」などの表示を伴う新聞や雑誌、テレビ番組などにおけるメディアでの露出や広告宣伝活動を継続して行っているから、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、使用商標及び「アイコム」の商標は、「無線通信機器」の商品分野における需要者の間においては、広く認識されるに至っている商標と認められる。
3 商標法第4条第1項第11号該当性
(1)本件商標と引用商標の類否
ア 本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、黒丸の下に縦長の3本の線を配してなる図形を、その右側に「com」及び「giken」の文字を二段に横書きして表してなるところ、図形部分と文字部分は左右に近接して、高さを揃えた態様で配置されており、構成全体としてまとまりよく一体的に表されている。
そして、本件商標の構成中、黒丸と縦線を組み合わせてなる図形部分は、欧文字「i」と共通する構成上の特徴を備えているから、構成全体としては、その右側の欧文字部分と結合した「icom giken」のような一連一体の造語を表してなることを連想させる。
また、本件商標のようなまとまりのよい構成においては、いずれかの構成部分(例えば「icom」の文字部分)だけが出所識別標識として分離、独立した強く支配的な印象を与えるものではない。
そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して、「アイコムギケン」の称呼を生じ得るが、特定の観念は生じない。
イ 引用商標について
引用商標は、上記第2の1から35のとおりの構成からなるところ、それぞれ「ICOM」、「アイコム」、「AICOM」、「IKOM」などの文字を構成文字に含むが、それらは一般的な辞書等に掲載された成語ではない。
そうすると、引用商標は、それぞれの構成文字に相応して、「アイコム」などの称呼を生じ得るが、特定の観念は生じない。
ウ 本件商標と引用商標の比較
本件商標と引用商標を比較すると、外観においては、「icom」の文字を含む場合には構成文字のつづりを共通にするとしても、それ以外の場合には構成文字や文字種を異にするものであり、そして、構成文字全体としては明らかに異なる語を表してなるから、図形要素の有無の差違なども相まって、判別は容易である。
また、称呼においては、語頭の「アイコム」の構成音を共通にする場合があるとしても、語尾の「ギケン」の3音の有無などにより、全体としての語調、語感は異なるものとなるから、聴別は容易である。
さらに、観念においては、いずれも特定の観念は生じないから、比較できない。
そうすると、本件商標と引用商標は、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において判別及び聴別は容易だから、それらが取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、同一又は類似の商品又は役務に使用された場合に、出所につき誤認混同を生じるおそれはなく、類似する商標とは認められない。
エ 請求人は、本件商標の構成中、「giken」は「技研(=技術研究所)」を直感させ、単に業務内容や施設名を表す品質表示語であるから、「icom」部分こそが要部であり、そこから「アイコム」の称呼が生じるとして、本件商標と引用商標は「アイコム」の称呼を共通にし、類似する旨を主張する。
しかしながら、本件商標は、上記アのとおり、構成全体としてまとまりよく一体的に表されており、構成全体としては「icom giken」のような一連一体の造語を表してなることを連想させる。
また、本件商標のようなまとまりのよい構成においては、「icom」の構成文字だけが出所識別標識として分離、独立した強く支配的な印象を与えるものではなく、さらに、「giken」の文字部分も、直ちに出所識別標識としての機能を欠き、省略して称呼、観念されるというほどの理由は見出せない。
そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して、「アイコムギケン」の称呼を生じ得るというべきだから、引用商標より生じ得る「アイコム」などの称呼とは、聴別は容易であり、相紛れるおそれはない。
(2)小括
以上のとおり、本件商標は、引用商標とは類似する商標ではないから、その指定商品及び指定役務の類否について検討するまでもなく、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第10号該当性
(1)請求人の使用に係る商標の周知性
請求人が使用する使用商標及び「アイコム」の商標は、上記2のとおり、「無線通信機器」の商品分野における我が国の需要者の間においては、広く認識されている商標である。
(2)本件商標と請求人の使用に係る商標の類否
本件商標は、上記3(1)アのとおり、その構成文字に相応して、「アイコムギケン」の称呼を生じ得るが、特定の観念は生じない。
他方、使用商標及び「アイコム」の商標は、「iCOM」又は「アイコム」の構成文字よりなるから、引用商標と同様に上記3(1)イのとおり、それぞれの構成文字に相応して、「アイコム」の称呼を生じ得るが、特定の観念は生じない。
そうすると、本件商標と使用商標及び「アイコム」の商標は、上記3(1)ウと同様に、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において判別及び聴別は容易だから、それらが取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、類似性の程度は低く、同一又は類似の商品又は役務に使用された場合に、出所につき誤認混同を生じるおそれはなく、類似する商標とは認められない。
(3)小括
以上のとおり、本件商標は、請求人が使用する使用商標及び「アイコム」の商標とは類似する商標ではないから、それらが「無線通信機器」の商品分野における我が国の需要者の間においては広く認識されている商標であるとしても、その他の要件について検討するまでもなく、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第15号該当性
(1)請求人の使用に係る商標の周知性
請求人が使用する使用商標及び「アイコム」の商標は、上記2のとおり、「無線通信機器」の商品分野における我が国の需要者の間においては、広く認識されている商標である。
(2)本件商標と請求人の使用に係る商標の類似性
本件商標と使用商標及び「アイコム」の商標は、上記4(2)のとおり、類似性の程度は低い。
(3)本件商標の指定商品及び指定役務と請求人の使用に係る商品との関連性
請求人が使用商標及び「アイコム」の商標を使用する商品は、「無線通信機器」であり、比較的専門性が高い無線通信に係る事業分野に属する商品であって、無線通信機械器具製造業者が製造する商品である。
他方、本件商標の指定商品及び指定役務は、上記第1のとおり、ロボット、加工機械、機械器具の修理又は保守、機械器具の貸与、知識の教授、設備設計、プログラムの設計などの商品及び役務であり、無線通信に係る事業分野とは直接的な関連性はなく、無線通信機器器具製造業者が一般に製造、販売又は提供するような商品及び役務ではない。
そうすると、本件商標の指定商品及び指定役務と請求人の使用に係る商品は、同一営業主が製造、販売又は提供するような関連はなく、事業分野を異にするから、関連性の程度は低い。
(4)検討
以上のとおり、請求人の使用に係る商標が「無線通信機器」の商品分野における我が国の需要者の間においては広く認識されている商標であるとしても、本件商標とそれら商標の類似性の程度は低く、また、その指定商品及び指定役務と請求人の使用に係る商品との関連性の程度は低いことを踏まえると、本件商標は、その指定商品及び指定役務に使用したとしても、これに接する需要者は、請求人の使用に係る商標(使用商標又は「アイコム」の商標)又は請求人を連想、想起し、当該商品及び役務が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかのように、商品又は役務の出所について混同を生ずるおそれはない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
6 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号及び同項第15号の規定に違反してされたものではないから、同法第46条第1項第1号の規定により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-890087