商標無効審判
2023-890075
オリーブソムリエ、ソムリエ
- 審判番号
- 2023-890075
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 商願2022-079384
- 登録番号
- 6683675
- 請求日
- 2023年09月22日
- 審決日
- 2024年08月19日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】一般社団法人 日本オリーブオイルソムリエ協会
- 【請求人代理人】塩川 泰子
- 【請求人代理人】平塚 翔太
- 【被請求人】山本 津貴子
- 【被請求人代理人】小林 浩
- 【被請求人代理人】広瀬 史乃
- 【被請求人代理人】岡田 貴子
- 【被請求人代理人】瀧澤 文
- 【被請求人代理人】森田 健二
- 審判長/審判官
- 審判長 大橋 良成
- 審判官 大島 康浩
- 審判官 小林 裕子
- 分類
- T112 .261-Y (W3541) / T112 .262-Y (W3541) / T112 .263-Y (W3541) / T112 .271-Y (W3541)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法46条1項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第6683675号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6683675号商標(以下「本件商標」という。)は、「オリーブソムリエ」の文字を標準文字で表してなり、令和4年7月8日に登録出願、第35類及び第41類に属する商標登録原簿に記載の役務を指定役務として、同5年3月10日に登録査定され、同年3月24日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
請求人が、本件審判の請求の理由において引用する登録第5683081号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲1のとおり、「オリーブオイルソムリエ」及び「Olive Oil Sommelier」の文字を二段に横書きしてなり、平成25年9月27日に登録出願、第35類及び第38類ないし第43類に属する商標登録原簿に記載の役務を指定役務として、同26年7月4日に設定登録されたものである。
第3 請求人の主張
1 請求の趣旨
請求人は、本件商標の指定役務中、別掲2の指定役務(以下「本件請求役務」という。)についての登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第97号証を提出した。
2 請求の理由(要旨)
ア 商標法第4条第1項第11号の該当性について
(ア)商標の類似
a 外観について
本件商標は、その構成中に「オリーブソムリエ」の標準文字で片仮名を横書きしてなるのに対し、引用商標は一般に多用される字体で片仮名による「オリーブオイルソムリエ」とアルファベットによる「Olive Oil Sommelier」を二段に横書きしてなるものである。引用商標の各段は、アルファベット表記の英語(ソムリエについてはフランス語に由来するが英語としても使用される)を片仮名表記したものにすぎない。本件商標は、「オイル」を除き、語頭と語尾という主要部分において「オリーブ」及び「ソムリエ」の文字をすべて含み、その語順も一致するものであるから、両商標の商標全体における主たる印象は、非常に近似したものである。他方、本件商標及び引用商標はいずれも美容や健康食品に関する関心が高い層であるところ、こういった需要者にとって意義をもつのは、特定の健康イメージをもつオリーブという食材と、専門性の高さをイメージするソムリエであって、「オイル」という部分は、需要者、取引者に対して商品の出所識別標識として強い機能を有するものではない。実際に、後述のとおり、本件商標の構成文字に「オイル」の語はないが、引用商標に含まれる「オイル」の語は当然のものとして省略されることがある。本件商標は、著名性、周知性が認められるものであり、それらを考えると、需要者、取引者に対して強く特徴的な印象を与え、本件商標は、引用商標の需要者、取引者に対して強く特徴的な印象を与える語頭の11文字中8文字全てを含み、その配置、配列も一致するから、両商標は外観上類似するというべきである。
b 称呼について
本件商標からは、その構成文字に相応して「オリーブソムリエ」の称呼が生じ、引用商標からは、各構成文字に相応して「オリーブオイルソムリエ」の称呼が生ずる。しかるに、両称呼は、現実の取引において、称呼を識別する上で最も重要な要素となる語頭部分における「オリーブ」の音が一致する。
先述のとおり、本件商標及び引用商標はいずれも美容や健康食品に関する関心が高い層であるところ、こういった需要者にとって意義をもつのは、特定の健康イメージをもつオリーブという食材と、専門性の高さをイメージするソムリエであって、「オイル」という部分は、需要者、取引者に対して商品の出所識別標識として強い機能を有するものではない。後述のとおり、本件商標は、著名性、周知性が認められるものであり、それらを考えると、本件商標は、引用商標の需要者、取引者に対して強く特徴的な印象を与える語頭の11文字中8文字全てを含み、その配置、配列も一致するから、両商標は称呼上も類似するというべきである。また、実際に、後述のとおり、本件商標の構成文字に「オイル」の語はないが、引用商標に含まれる「オイル」の語は当然のものとして省略されることがある。したがって、各商標を称呼した場合、全体の称呼は完全に同一のものとして聴取されることがあるものである。
c 観念について
両商標の構成文字列である「オリーブ」は、油分が多いことを最大の特徴とする果実であり、古代ギリシャ時代から油糧作物として知られている(甲1)。また、オリーブは主要な食用油としてオリーブオイルの原料であり、その輸入量は、2022年実績値で、オリーブが4,220トン(約16億円)、オリーブオイルが60,084トン(約388億円)であって、オリーブ市場はオリーブオイル市場の20分の1程度の市場規模である(甲2、甲3)。そのため、食品としてオリーブの実よりオリーブオイルとして売られることが圧倒的に多い。そもそもOilの語源はOlive(いずれもギリシャ語由来であり、オイルとオリーブオイルが同一語、ラテン語では、Oleumと言えば、オイル及びオリーブオイル両方で使われる)ことからも需要者、取引者に対して商品又は役務の出所識別標識として強い機能を有するものではない(甲4)。
一方で、「ソムリエ」とは、フランス料理店などで、ワインの仕入れ・管理を担当し、また客の相談を受けてワインを選定・提供する専門職のことをいう(甲5)。「オリーブ」に「ソムリエ」を組み合わせる理由はオリーブオイルという液体をワインに見立てている側面が強い。したがって、前記の販売実態と併せて、現実の取引においては、需要者において「オリーブ」と「ソムリエ」の語の組み合わせから、直ちに「飲食店等で、オリーブオイルの仕入れ・管理を担当し、一般消費者の相談を受けてオリーブオイルを選定・提供する専門職」の観念を想起せしめるものである。
また、「オリーブ」と「ソムリエ」の語の組み合わせを用いていたのはもともと日本国内では請求人だけであり、後述のように「オリーブオイルソムリエ」がオリーブに関する資格として定着していることからすれば、「オリーブ」に関する「ソムリエ」というだけで、請求人による「飲食店等で、オリーブオイルの仕入れ・管理を担当し、一般消費者の相談を受けてオリーブオイルを選定・提供する専門職」の資格の意味合いを想起させるのが取引の実情である。
以上より、本件商標は「飲食店等で、オリーブオイルの仕入れ・管理を担当し、一般消費者の相談を受けてオリーブオイルを選定・提供する専門職」の観念が生ずる点で、飲食店等で、オリーブオイルの仕入れ・管理を担当し、一般消費者の相談を受けてオリーブオイルを選定・提供する専門職」の観念を有する引用商標とは、観念が類似するばかりでなく、現実の取引において、直ちに「飲食店等で、オリーブオイルの仕入れ・管理を担当し、一般消費者の相談を受けてオリーブオイルを選定・提供する専門職」の観念を想起せしめる本件商標は、請求人又はその製品であることを想起させる引用商標と観念上相紛らわしいものである。
(イ)取引の実情
a 概要
我が国で、「オリーブ」と「ソムリエ」の文字を構成することで知られる資格は、請求人の「オリーブオイルソムリエ」以外に存在せず、「オリーブオイルソムリエ」は次に述べるとおり、需要者の間で著名・周知であった。
本件商標及び引用商標はいずれも美容や健康食品に関する関心が高い層であるところ、こういった需要者にとって意義をもつのは、特定の健康イメージをもつオリーブという食材と、専門性の高さをイメージするソムリエであって、「オイル」という部分は、需要者、取引者に対して商品又は役務の出所識別標識として強い機能を有するものではない。実際に、本件商標の構成文字に「オイル」の語はないが、引用商標に含まれる「オイル」の語は当然のものとして省略されることがある。
b 引用商標の著名性・周知性
(a)引用商標に関する請求人の業務の概要
請求人の業務は主としてオリーブオイルについての普及啓蒙並びに資格認定及びスクール運営であり(甲6~10)、請求人は、遅くとも2005年1月2日頃から、「オリーブオイルソムリエ」の文字列を使用している(甲11)。そして、2009年9月、「オリーブオイルソムリエ」講座の前段階のコースであるジュニア「オリーブオイルソムリエ」コースを開講した(甲10)。このジュニア「オリーブオイルソムリエ」は「オリーブオイルソムリエ」コースの開講を前提とするものである(甲12、甲13)。そして、2010年1月16日から「オリーブオイルソムリエ」コースを開構した(甲14)。
請求人は、請求人の開講する「オリーブオイルソムリエコース」の講座受講を修了し、所定の「オリーブオイルソムリエ資格認定試験」に合格した者に対して合格通知書、学位記及びバッジを交付している(甲15、甲16)。これによって、合格者は「オリーブオイルソムリエ」を名乗ることができる。これは、引用商標を請求人がライセンシングして使用しているものと評価できる。
この引用商標を冠した請求人の講座は、食用油脂業界の二強のひとつである株式会社Jオイルミルズにおいて、「人財育成」の一環として従業員のオリーブオイルソムリエ資格の取得を支援されており、それを同社の広報にも利用されている(甲17)。
(b)引用商標の使用頻度(講座について)
引用商標を冠した講座は、東京開催のほか、出張的に開催される場合もあり、たとえば、請求人は、2014年2月8日から10日の間、香川県小豆島において、オリーブオイルソムリエ講座を実施し、最終日の試験に合格した者に「オリーブオイルソムリエ」学位記とバッジを授与している(甲18)。その結果、引用商標を冠したオリーブオイルソムリエ講座は67期、引用商標に「ジュニア」と付したジュニアオリーブオイルソムリエ講座は、369期を迎えている。
また、請求人は、国外においても同様の講座を開講している。たとえば、請求人と中華民国(台湾)の法人であるE社とは、2018年12月1日、オリーブオイルソムリエに関し、講座開講に関する業務委託契約書を締結し(甲19)、同月中に台湾において同講座を開講した。同社に対しては、同契約書に基づき、「オリーブオイルソムリエ」の商標につき、台湾における通常実施権が設定している。
(c)イベントにおける使用
請求人は、日本最大級のオリーブをテーマにしたイベントOlive Japanを、2012年からコロナ禍を除いて、毎年開催している。同イベントでは、世界最大規模の国際的なオリーブオイルのコンテスト(OLIVE JAPAN International Extra Virgin Olive Oil Competition)及びコンテスト受賞オリーブオイルの生産者やオリーブに関連した商品を取り扱う販売者が商品紹介や展示即売を行う「OLIVE JAPAN SHOW」を中核イベントにしており、各種セミナーやワークショップ、日本一の「オリーブオイルソムリエ」を決める「オリーブオイルソムリエコンクール」などを行っている(甲20)。このイベント開催にあたっては、例年、アルゼンチン共和国大使館、スペイン大使館経済商務部、熊本県、香川県、天草市、小豆島町、江田島市等から、Olive Japanの後援承認を得ている(甲21~甲34)。その結果、日本国内外から多くの人が集い、初年度でも来場者は5万人、翌年度以降は10万人後半、2018年には開催日も3日に延びて来場者数約24万人、2019年には6日間に延びて来場者数約30万人を記録した(甲35~甲42)。
このイベント自体がオリーブをテーマにしたイベントとして日本最大級のものであるところ、このイベントにおいて、本件商標を冠した「オリーブオイルソムリエコンクール」を実施している(甲43、甲44)。これは、本件商標をライセンシングした資格である「オリーブオイルソムリエ」自体にブランド力がなければ、実施できないコンクールといえる。このコンクールに参加するには「コンクールエントリー料金」として、「日本オリーブオイルソムリエ協会会員のジュニアソムリエ以上の方」がエントリー料を支払って参加するものであるが、このコンクールにも出場者が後を絶たない。
(d)広告における使用
前述のとおり、請求人は、遅くとも2012年頃から「オリーブオイルソムリエ」の文字列をイベントにおいて使用しており、その後、現在に至るまで10年以上もの間、「オリーブオイルソムリエ」の語をメディアやイベント等で使用してきた。
先述のとおり、オリーブジャパンはオリーブ業界において最大級のイベントであり、請求人は、そこで「オリーブオイルソムリエ」の語を指定役務に関連して使用してきている。
たとえば、現在残っている資料としてもOlive Japan 2012イベントパンフレット(甲45)、同2013のイベントパンフレット(甲46)に見られるように、請求人は「オリーブオイルソムリエ」の語を用いている。Olive Japan 2016のチラシ(甲47)においては「オリーブオイルソムリエ」の記載がある。Olive Japan 2020においては引用商標をライセンシングした資格保有者としての「オリーブオイルソムリエ」用のデスクが用意され、オリーブオイルソムリエの資格を持った者が応対している(甲48)。
また、オリーブジャパンでは「オリーブオイルソムリエ」コンクールを実施しており、「オリーブオイルの販売に関する助言・指導・情報の提供,オリーブオイルに関する市場調査,オリーブオイルの販売に関する情報の提供,オリーブオイルの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,オリーブオイルに関する広告の企画又は助言,テレビジョン放送・ケーブルテレビジョン放送・ラジオ放送・オンライン放送によるオリーブオイルに関する広告及びプロモーション,オリーブオイルに関する記事情報の提供、オリーブオイルに関するセミナー・研修会・講習会・会議の企画・運営又は開催,オリーブオイルに関するイベント(パーティー)の企画・運営又は開催」に関連して「オリーブオイルソムリエ」の語が使用されている(甲44、甲49)。
また、請求人は、これまで、「日本オリーブオイルソムリエ協会」又は「日本オリーブオイルソムリエ協会理事長」の名義により、「そのオリーブは偽物です」(甲50)、「オリーブオイルの至福」(甲51)、「オリーブオイルで絶品!肉料理」(甲52)、「決定版!本物のオリーブオイルはこれを選びなさい」(甲53)といった著作を公表してきた。これらの著作では、引用商標を冠したオリーブオイルソムリエ講座等の広告や、引用商標をライセンシングした資格保有者としての「オリーブオイルソムリエ」がいる店舗一覧の記載がある。「オリーブオイルで絶品!肉料理」(甲53)においては、引用商標をライセンシングした資格保有者としての「オリーブオイルソムリエ」の肩書が明記された者がオリーブオイル等に関する知識の授受をするコーナーが存在する。
さらに、請求人のウェブサイトでは、引用商標を冠した講座、引用商標をライセンシングした資格保有者としての「オリーブオイルソムリエ」によるオリーブオイルに関する知識の授受やイベントの告知等がなされている(甲6~甲11)。
(e)メディアにおける取り上げられ方
請求人の引用商標を冠した役務は、各種メディアで取り上げられてきた。
たとえば、請求人は、「ワインとグルメの資格と教室2014」(甲54)の記事、外食業界誌「ぐるなび通信」(甲55)において、「まだある!使える!飲食系資格ガイド」と題されたコーナーにて「フード系」の資格紹介欄に「オリーブオイルソムリエ」の資格が掲載され、「オリーブオイルについて深い知識をもち、オリーブオイルを取り巻く関連分野についても語ることができる人を目指す資格。」と記載されている。すなわち、2010年時点で、引用商標(商標登録出願前)を冠した請求人の講座により与えられる資格が「使える」ものとして認知されていたということである。
女性向けファッション&ライフスタイル誌「Domani」(甲56)の記事において、「可能性が広がる注目の新資格」として引用商標をライセンシングした資格保有者としての「「オリーブオイルソムリエ」の勉強」の見出しがある。なお、この記事では、「高校時代、オリーブ消費国であるギリシャに住んでいたこともあり、自然とオリーブおたくに。だからこそ、この資格を知ったときは、コレだ!と飛び込みました。歴史や栄養学といった座学と共に、毎回テイスティングが。オイルはワインのように生産地によって味や香りが異なるんです。違いがわかるようになると、料理と組み合わせる楽しみ方もわかるように。和食とも合うんだな、なんて普段の生活でも試しています。まだ新しい資格で、日本のオリーブ市場も発展期。極めることで新たな世界が広がりそうな予感がしています」といった記載があることからもわかるとおり、「オリーブ」と「オリーブオイル」はほぼ同意義語のように扱われている。
「ワインと食とSakeとヴィノテーク」(甲57)では、「世界のオリーヴオイルの動向」という見出しの下で「日本オリーブオイルソムリエ協会」の名称とともに「オリーブオイルソムリエ」の資格や養成等について記載されている。また、同記事では、ワインを専門的に取り扱う会社の経営者が「オリーブオイルソムリエ」の資格を取得し、オリーブオイルに関して解説する記載もある。
読売家庭版(甲58)の「特集オリーブオイル」の記事において、「食べるだけじゃない。」との見出しの下でオリーブオイルの使い方が紹介され、その中で請求人である「日本オリーブオイルソムリエ協会」の紹介欄が設けられ、さらにそこで「オリーブオイルの特徴や魅力を把握し、その品質を鑑定してアドバイスできる専門家として引用商標をライセンシングした資格保有者としての「オリーブオイルソムリエ」の記載がされている。
アメリカン・エキスプレス・プラチナ・カードの会員向け情報誌「DEPARTURE」(甲59)の記事において、「一般社団法人日本オリーブオイルソムリエ協会代表理事・理事長」の肩書の請求人の理事長によるインタビュー記事が掲載され、そこで同人は、オリーブオイルの産地、品種、品質等につき、「こうしたことをきちんと消費者にアドバイスできる人が日本では本当に少ないなあと感じ、専門家を養成する「オリーブオイルソムリエ」資格制度を創設し、カリキュラムやテキストも整備して、6年前から本格的にソムリエの養成に取り組みはじめました。」、「今まで以上に「オリーブオイルソムリエ」が求められるのではないでしょうか。」、「そんなオリーブオイルを日々の生活に取り入れる最適なアドバイザーが「オリーブオイルソムリエ」です。」などと引用商標をライセンシングした資格保有者としてのオリーブオイルソムリエの資格について語っている。
フードビジネス応援マガジン雑誌「ほっと TIMES」(甲60)の記事では、「良いオイルの買い方、選び方」との見出しの下で「国際規格が世界的に守られていないため、オリーブオイルソムリエなど専門家のいる店や、コンテクストの受賞リストなどを参考に選ぶのがおすすめです」との記載があり、引用商標をライセンシングした資格保有者としての「オリーブオイルソムリエ」の言及がある。
さらに、請求人の理事長は、テレビ番組「林先生が被く初耳学」(甲61)、2016年7月17日(日曜日)放送)に、日本のオリーブオイルの紹介者として出演して引用商標をライセンシングした資格保有者としての「オリーブオイルソムリエ」を紹介するなど、オリーブ関連分野の需要者・取引者に限らず、分野を超えて広く一般需要者間においても定着するに至っている。
「日本オリーブオイルソムリエ協会」が著者であることが明記された「世界のオリーブオイルベスト180」(甲62)において、国際オリーブオイルコンテストで受賞したオリーブオイルの紹介と併せて引用商標を冠した「オリーブオイルソムリエ」の資格取得コースが紹介されている。
雑学バラエティ番組「モヤモヤさまぁ~ず2」(甲63、甲64)においても、引用商標をライセンシングした資格保有者としての「オリーブオイルソムリエ」が紹介されている。
また、マスメディアではないが、西部池袋本店の催事場において、2019年7月頃、Olive Japan 2019で受賞したオリーブオイルが販売された(甲65)。
(f)Wikipediaにも「オリーブオイルソムリエ」の項に引用商標である旨が記載されていること
現在、「オリーブオイルソムリエ」の語は、請求人の登録商標としてWikipediaでも紹介されている(甲66)。
現在、インターネット上の検索エンジンGoogleで「オリーブオイルソムリエ」のクエリにより検索した場合、1,170,000件がヒットし(甲67)、上記意味合いにおいて広く使用されている記事が膨大な数にのぼることがわかる。また、「オリーブオイルソムリエ」の文字の意味内容を逐一説明しているわけではなく、既にその定着した語として使用されていることからすれば、当該語が、既に前記観念をもって需要者の間に定着し、親しまれていることがわかる。
(g)ライセンシングによる使用
「オリーブオイルソムリエ」の資格は、長年にわたって、様々な人物が有資格者として肩書等に用いており、現時点において、協会認定資格者として「オリーブオイルソムリエ」の会員は2062名がいる(甲68)。また、週刊現代(甲69)の記事、「週刊文春」の記事において、「オリーブオイルソムリエ」のいる店が紹介され、オリーブオイルを購入することが推奨されている(甲70)。さらに、雑誌等のオリーブオイル特集では「オリーブオイルソムリエ」の肩書の者がコラムを執筆するなど、「オリーブオイルソムリエ」の有資格者はその肩書を前面に出して様々なメディアで活動が記載されている。
ホーローを活用した料理を紹介するA氏「ホーローで作るとかんたん!おいしい!」(甲71)にて、著者である料理家のA氏のプロフィール欄に「オリーブオイルソムリエの資格を持ち、飛騨高山アンバサダーとしても活躍している」との記載がある。
神戸オリーブ園を紹介するB氏、C氏「「神戸阿利襪園」~日本最初の国営オリーブ園~」(甲72)と題された冊子において、著者のひとりであるC氏が、表紙及びプロフィール欄において肩書として「オリーブオイルソムリエ」の記載をしている。
山口県の地方情報誌である「トライアングル」338号(甲73)のオリーブオイルのスペシャリストの紹介記事において、D氏が肩書として「オリーブオイルソムリエ」を用いており、同記事中では「「これしかない!」と思った資格」という見出しの下で「資格取得のため、Dさんは週末を利用して東京へ。集中講義を受け、まずはオリーブオイルの基本を学び、ジュニアソムリエの資格を取得。その後さらにオリーブオイルに関する深い専門的な知識と技術を身につけた佐鳥さんは、オリーブオイルソムリエ資格認定試験に見事合格!山口県で唯一のオリーブオイルソムリエとなったのです。」と記載されている。
パンづくりの書籍であるE氏「シンプルでおいしいこねないパン」(甲74)において、著者のE氏がプロフィール欄において「食に関する多くの資格を取得し、とくにオリーブオイルソムリエとして、そのおいしさ、楽しさを伝えている。」と記載している。
F氏「おいしいピッツァ生地が作りたい、とおもったら」(甲75)において、著者であるF氏がプロフィール欄において「イタリア家庭料理研究家」とともに「オリーブオイルソムリエ」の肩書を用いていること。
北海道などの寒冷地におけるガーデニングに関する情報新聞「花新聞ほっかいどう」(甲76)において、記事の著者の一人であるG氏がプロフィール欄において「オリーブオイルソムリエ」と記載している。同記事は、「オリーブオイルを暮らしに取り入れる」との見出しの下で、「「オリーブオイルソムリエ」のGさんに話を蘭きました。」との前置きで、香り高く美容と健康に役立つ人気のオリーブオイルについて解説されている。
料理本であるH氏「ピンチョスとアヒージョ」(甲77)において、著者のH氏がプロフィール欄において「オリーブオイルソムリエ」と記載している。
公開シンポジウム“Olive meets Wine in KANTO!~関東におけるオリーブ栽培の可能性を探る~”(甲78)のI氏(伊豆急ホールディングス株式会社)「オリーブによる地域活性化を目指して」について、登壇者のI氏は同シンポジウムの登壇者プロフィール欄に「日本オリーブオイルソムリエ協会認定オリーブオイルソムリエ資格を2015年9月に取得。」と記載している。
食と睡眠の隔月雑誌「クウネル」(甲79)の記事において、著者の一人であるJ氏が肩書として「フードアートクリエイター&スタイリスト」と併せて「オリーブオイルソムリエ」を記載している。同記事では「食べて健康になる、オリーブオイルの魅力を伝えたい。」との見出しの下で、「手始めに、休業中に日本オリーブオイルソムリエ協会の基礎コースのジュニアソムリエの資格を取得。」などとオリーブオイルソムリエの資格紹介が行われている。また、Jさんは日本オリーブオイルソムリエ協会で資格を取得したこと、オリーブオイルソムリエにはデプロマとバッジが授与されることについて同記事の画像キャプションで記載されている。
香川県内のオリーブオイル生産農園を紹介する香川県政策郎県産品振興課「KAGAWA OLIVE」の記事(甲80)において、「オリーブオイルソムリエ」の肩書のコラムニストが各農園のオリーブオイルを用いた料理に関する助言を行うコーナーが設けられており、また、生産事業者がインタビューにおいてオリーブ栽培のきっかけとして「日本オリーブオイルソムリエ協会でオリーブオイルジュニアソムリエになったことをあげている。
大手動画配信サイトYouTubeにおいても、「オリーブオイルYouTuberえーみー」が「オリーブオイルソムリエ」の肩書を記載して「えーみーの思いっきりオリーブオイルライフ」というチャンネル名で番組を放送している(甲81)。
バンドのK氏がオリーブオイルソムリエの上級コースであるオリーブオイルマスターソムリエの資格を取得しており、メディアにおいて引用商標をライセンシングした資格保有者としてのオリーブオイルソムリエについて発信をしている(甲82)。
(h)実際に引用商標に関して「オイル」の語が省略されることの例
前述のとおり、引用商標をライセンシングした資格保有者としての「オリーブオイルソムリエ」のインタビューにおいて「オリーブ」と「オリーブオイル」はほぼ同意義語のように扱われている(甲56)。
また、「オリーブオイルソムリエ」は、オリーブオイルの関連製品の識別標識に比しても、より強い出所表示機能を発揮しているとみることができる。そのため、本件商標が付されたオリーブオイル関連製品に接した需要者・取引者は請求人又は請求人と資本関係ないしは業務提携関係にある事業体の業務に係る商品又は役務と誤認混同を生ずるおそれが高い。実際、Google検索において「オリーブソムリエ」のクエリで検索すると請求人の公式ウェブサイトが上位に表示される(甲83、甲84)。
また、取引の実情において、「オリーブソムリエ」という語は「オリーブオイルソムリエ」の語を誤って、又は省略して用いられることが頻繁にあるため、「オリーブソムリエ」の語が「オリーブオイルソムリエ」を指すことがしばしば発生する。
たとえば、雑学バラエティ番組「モヤモヤさまぁ~ず2」(テレビ東京、2021年3月7日放送)において、出演者の一人が「わー、オリーブソムリエ協会って書いてある」との発言があった。また、同番組のナレーションにおいて「で、こちらの女将さんは、オリーブソムリエの技術を磨いてるうちにいろんな物の匂いに敏感になってとんでもない嗅覚を身に着けた、鼻大王的な匂いの達人らしいですよ。」との発言があった。また、公益財団法人日本刀文化振興協会が主催する明治天皇110年祭並びに明治天皇御生誕170年祭記念「日本刀の匠展」に請求人が協賛しているところ、請求人の名称が「日本オリーブソムリエ協会」と記載されていたこともあった(甲85)。
さらに、インターネット上では、オリーブオイルソムリエの有資格者について、需要者もライセンシーも「オリーブソムリエ」と略称することが頻繁に発生している。
たとえば、オリーブオイルソムリエ有資格者自身が「オリーブソムリエ」に表記したり(甲86)、ハッシュタグで「オリーブソムリエ」との略称を用いていたりする(甲87:「honzoyakuzenという名のインスタグラムアカウントページ」)。
また、オリーブオイルソムリエ体験のイベントページにおける画像キャプションに「オリーブソムリエ」の文字列が使われている(甲88)。
オリーブオイルソムリエ講座受講者もハッシュタグにて「オリーブオイルソムリエ」との略称を用いている(甲89)。
オリーブオイル専門店のウェブサイトでオリーブオイルソムリエ有資格者L氏の肩書が「オリーブソムリエ」となっている(甲90)。
オリーブオイルソムリエ有資格者の生産者の販売サイトにおいて「100%小豆島産 オリーブソムリエが作るこだわりのオリーブオイル「IS LIFE(イズライフ)」」との略称を用いている(甲91)。
オリーブ農園のウェブサイトにおいて、オリーブオイルソムリエ有資格者による品質確認のことを「オリーブソムリエによる品質確認」と略称を用いている(甲92)。
オリーブオイル販売サイトにおいて、オリーブオイルソムリエの選定のことを「オリーブソムリエ厳選」と略称で呼んでいる(甲93)。
株式会社すこやか工房のウェブサイトにおいて、同社のオリーブオイル販売事業につき、オリーブオイルソムリエが集まっている旨の表記に「オリーブソムリエの資格を取得した社員が集まり」と略称を用いている(甲94)。
天草市の市政だより「天草」(115号)において、オリーブオイルソムリエの資格が「オリーブ・ソムリエ」と略称表記されている(甲95)。
ぐんまアグリネットにおいて、オリーブオイルソムリエの資格のことを「オリーブソムリエの資格」と略称表記している(甲96)。
(ウ)指定役務の類似
本件請求役務は、35類として、オリーブオイルの販売に関する助言・指導・情報の提供、オリーブオイルに関する市場調査、オリーブオイルの販売に関する情報の提供、オリーブオイルの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、オリーブオイルに関する広告の企画又は助言、テレビジョン放送・ケーブルテレビジョン放送・ラジオ放送・オンライン放送によるオリーブオイルに関する広告及びプロモーション、オリーブオイルに関する記事情報の提供であり、また、41類として、オリーブオイルに関する出版物の企画・編集・制作、オリーブオイルに関するセミナー・研修会・講習会・会議の企画・運営又は開催、オリーブオイルに関するイベント(パーティー)の企画・運営又は開催、オリーブオイルに関する電子出版物の提供、オリーブオイルに関する本の翻訳であるなど、いずれもオリーブ及びオリーブオイルにかかわる情報提供等に関するものであって、引用商標の指定役務と互いに同一又は類似の関係にあることは明らかである。
(エ)結論
以上のとおり、本件商標は、引用商標と外観、称呼及び観念において類似のものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
イ 商標法第4条第1項第15号の該当性について
(ア)判断基準について
「混同を生じるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品又は指定役務と他人の業務に係る商品又は役務との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品又は指定役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきものである(最高裁平成12年7月11日第三小法廷判決・民集54巻6号1848頁)。
(イ)両商標の類似性について
前述のとおりである。
(ウ)引用商標の周知著名性について
前述のとおりである。
(エ)引用商標の独創性について
オリーブ生産、加工、流通、販売に関連する分野において、「オリーブオイルソムリエ」の文字を使用する者は、請求人以外に存在しないばかりか、語頭に「オリーブ」及び語尾に「ソムリエ」の文字を用いることで知られる当該分野におけるブランドすら、請求人以外に存在しないことは前述のとおりであることからすれば、引用商標の独創性は極めて高いものである。
(オ)役務の性質、用途、目的における関連性の程度、役務等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情等について
引用商標の指定役務との関係において、本件商標は、同一又は類似の関係にある第35類及び第41類に属する役務を指定するものであるから、それらの関連性の程度は極めて高いものである。
したがって、本件請求役務と引用商標の指定役務とは、互いに極めて密接な関連を有するものといわざるを得ない。
(カ)混同を生ずるおそれについて
前述のとおりである。
(キ)結論
以上を総合的に勘案すれば、本件商標と引用商標とは、互いに同一又は特徴的部分(「オリーブ」及び「ソムリエ」)が完全に一致する類似性の程度が極めて高い商標であって、ともにオリーブ関連分野において使用されるものであることのほか、引用商標が、請求人の業務に係る各指定役務を表示するものとして、取引者・需要者の間において、極めて広く認識されている事情の下で、本件商標が、請求人の製品を対象とするものと推認される態様により使用されていることからすれば、本件商標が付された各指定役務に接した需要者・取引者は、請求人又は請求人と資本関係ないしは業務提携関係にある事業体の業務に係る役務と誤認混同を生ずるおそれが高いから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 答弁に対する弁駁
(1)商標法第4条第1項第11号に関する弁駁
ア 両商標の類似性について
(ア)外観の比較
本件商標と引用商標を比較したとき、視覚的にみて、総文字数、英文字の有無、配置が異なる箇所があるとしても、総合的にみれば大きく異なるものではない。被請求人が答弁書で認めるように、引用商標は、本件商標の主要な構成要素である「オリーブ」と「ソムリエ」をそのまま含んでおり、この2つの要素は両商標の中心的かつ主要な部分である以上、類似性は認められる。
(イ)称呼の比較
本件商標と引用商標との間に「オイル」の3音の差異があっても、既に証拠を提出しているとおり、需要者においてその3音が省略され、又は省略されたように聞こえることが取引上自然なこととしてありうるため、称呼上相紛れるおそれがある。被請求人は、「オリーブ」と「ソムリエ」に分けて需要者が認識すると考えるべき理由は全くもって見当たらない旨述べるが、請求人の主張は、需要者がそれらの音を別々のものとして認識するというものではなく、関連性のない弁明である。請求人が引用するように、商標審査基準では「称呼とは、商標に接する需要者が、取引上自然に認識する音をいう。」と定義しているのであるから、まさに請求人の主張するとおり、両商標は称呼上相紛れるおそれがある。
(ウ)観念の比較
オリーブの実自体とオリーブから圧搾して得られるオイルは密接に関連しており、両商標の需要者はこれらを明確に区別することなくオリーブオイルに関する専門家を想起する。実際、被請求人が引用するデジタル大辞泉でも「油がとれる。」と要点が明記されている。これは、需要者の関心が、古来より油分に存在するためである。オリーブからオリーブオイルヘの加工の工程も抽出に尽きるものであり、ぶどう酒の発酵過程のようにオリーブの実の成分が別のものに変化しているわけではまったくない。このように、「オリーブ」と「オリーブオイル」との密接性があまりにも大きいことから、オリーブの実はわざわざ「テーブルオリーブ」として「オリーブオイル」と区別して表記されるのである。この用語の使い分けは、被請求人自身も弁明書において無自覚的に用いているところであり、さらに言えば、請求人も「オリーブソムリエ」の観念の中にオリーブオイルの専門家の観念を含むことを争っていない(含まないのであれば指定役務から除外するべきである。)。
また、被請求人は、オリーブの実に含まれる油分とはまったく関係なくオリーブの実が用いられる広く世間に受けいれられた実例を示す証拠をひとつも提出していない。さらに、被請求人は答弁書で「ラテン語の知識」と「語源としてのラテン語」を混ぜて捉えており、それに基づいて関連性のない弁明を展開している。このように、被請求人の主張は、ほかに弁明する内容がないためか、机上の言葉遊びの域を出ないものとなっている。
被請求人は本件商標も引用商標も造語であるために観念上の類似の余地はありえない旨述べるが、たとえば、「アンパンマン」という造語が「アンパン」と「マン」を組み合わせた観念を生じさせることなどはしばしば見られることであり、被請求人の主張は、およそ短絡的な主張だと言わざるを得ない。また、被請求人は「オリーブ」と「オリーブオイル」は全く異なる語義であることを繰り返し述べるが、被請求人自身が「オリーブ」と「オリーブオイル」を密接関連し、重複するものとして論じており、およそ説得力に欠ける。
なお、両商標はいずれも特に料理に関連しており、繰り返しになるが、両商標とも需要者において「オリーブオイルを用いる専門家」の観念をもつことは被請求人も積極的に争っているわけではない。請求人は、被請求人は服部栄養学校等との繋がりが深いことは認めるが、そうした事実からしても、「オリーブソムリエ」の商標からオリーブの樹木のみを想起することがありえないことは明白である。そもそも、被請求人も争っていないが、オリーブオイルのほうがテーブルオリーブよりも圧倒的に市場規模が大きく、ぶどう市場とぶどう酒市場とは状況が明らかに異なるのである。ぶどうとぶどう酒はアルコールの有無で差異はあるが、テーブルオリーブとオリーブオイルとでは油分を特徴とするという点で何らの差異はない。
また、繰り返しになるが、被請求人においてさえ、オリーブの実を指す場合は「オリーブ」ではなく「テーブルオリーブ」の語を用いているのである。
このように、両商標の観念が類似していることは明白である。
(エ)取引の実情
審査基準につき「指定商品又は指定役務における一般的・恒常的な取引の実情を考慮するが、当該商標が現在使用されている商品又は役務についてのみの特殊的・限定的な取引の実情は考慮しないものとする。」とされていることは認めるが、引用商標との関係では請求人の存在が取引の実情にとって極めて大きいものであり、請求人の主張する内容は一般的・恒常的な取引の実情をも構成するものである。
(オ)小括
したがって、両商標が類似していることは明らかである。
(2)商標法第4条第1項第15号に関する弁駁
ア 引用商標に周知性・著名性があることについて
(ア)被請求人は、被請求人の役務提供開始時期について疑念があるかのように論じるが、単純なる印象操作である。「一般社団法人日本オリーブオイルソムリエ協会」の設立は被請求人の指摘するとおり、2009年7月である。しかし、甲9号証にあるとおり、それ以前から任意団体として「日本オリーブオイルソムリエ協会」として「オリーブオイルの専門知識の研究、専門家の要請と、消費者に必要な情報の提供」を目指して活動を始めた、ただそれだけのことである。創立時期について、対外的に、活動を開始した時期をもって説明するかは、法人を設立して活動を本格化させた時期をもって説明するかはいずれもありうることであるにもかかわらず、これを根拠に「請求人に都合よい形で公式サイトの設立(創立)年が修正されている」などという主張をすることは請求人の名誉をゆえなく毀損するものとすら思われ、甚だ遺憾である。そもそも、周知性は引用商標の使用開始時点で必要なものではなく、請求人自身がジュニアオリーブオイルソムリエコース及びオリーブオイルソムリエコースの開始時期は2009年以降と明らかにしているのであるから、事実に反して改ざんをする必要性などないのである。
また、請求人の開催する講座はAISOのような認定機関の協力を得ていない点で、信頼度が低く、被請求人の業績と比較して画期的なものではないとも主張し、その前提としてIOCなどの団体を挙げてAISOに公的性格があるかのように主張しているが、これは後述のとおり誤った前提に立っている。
(イ)被請求人は、請求人が提供した証拠は、多くが言い間違いや書き間違いを示すものであり、むしろ引用商標の周知性や著名性がないことを示すとも主張するが、最終的な基準は「当該商標の指定商品又は指定役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきものである」であり、需要者が「オリーブソムリエ」の商標を「オリーブオイルソムリエ」の商標だと誤認混同することは、需要者が普通に払われる注意力を基準としても確実に起こりうることである。「オリーブソムリエ」と「オリーブオイルソムリエ」の3音の称呼の違いをもって需要者が絶対に誤認混同しないとでも言うような被請求人の弁明はおよそ無理があるし、被請求人においても言い間違いや書き間違いの水準では誤認混同が多発することを争っているわけではない。周知商標だからといって言い間違いや書き間違いが発生しないということはおよそありえないのであって、こうした言い間違いや書き間違いが発生するのは、両商標の類似性の程度が極めて高いからであり、それ以外の理由はありえない。
また、被請求人は証拠とされる資格取得者数や教育活動の規模が引用商標の著名性を十分に証明するものではないとも主張するが、そもそも被請求人が少ないと論じる会員数とは、受請者とは異なり、合格後、会費を支払い、「オリーブオイルソムリエ」という商標について使用権を設定している先といえる。自己研鑽目的のみで受講する者は、受講後、会員になるとは限らない。これは、たとえば日本におけるオリーブオイル販売最大手であるJーオイルミルズの従業員研修(甲17)などにおいて顕著である。また、ワインとは異なり、オリーブオイルについて「ソムリエ」のような専門資格を取得するという直接の需要者自体が比較的少ない取引の実情をも考慮すると請求人の規模は、広告のみならずテレビ番組等でも取り上げられ、会員数としても多いというべきである(被請求人は会員数の「減少」についても周知性を否定する根拠として主張するようであるが、オリーブオイルソムリエの資格取得のための請座は、香りも取り扱うため、対面での講義が必須であり、2020年以降は新型コロナウイルス感染症拡大防止のため事業自体が困難だったという要因がある)。むしろ、オリーブオイルソムリエが店舗や講習等で働いている人数はある程度の希少性が価値を上げるのであって、多くのオリーブオイル販売取り扱いのある店舗等には「オリーブオイルソムリエ」が存在しないからこそ、オリーブオイルソムリエのいる店舗として店舗等自体の価値を上げるために広く宣伝に「オリーブオイルソムリエ」の肩書が使われているのである(甲69~甲81)。そして請求人が「オリーブオイルソムリエ」という商標を使用許諾している個別の「オリーブオイルソムリエ」の活動は、全国にまたがり(甲50~甲53、甲70)ネットショップも多数存在する(甲51~甲53)。加えて芸能人による露出もあることから、「オリーブオイルソムリエ」は一般消費者にまで広く知れ渡っている周知性のある商標というべきである。
(ウ)被請求人は、あたかもこれまで国際的な活動をしてきたかのように言うが、実際にはそのような広汎な活動実態は存在せず、ほとんど活動してきていない。被請求人の主張によっても、被請求人は、1997年から2001年までの4年間、2001年から2006年までの5年間、2018年から2023年までの5年間、合計14年間は何も活動をしていない。また、被請求人はP氏やIOC、AISO等との関係から自己の活動の方が周知であるかのように主張するようであるが、それら他者との関係でオリーブオイルソムリエという名称の下に活動が認められるわけではない。また、IOC等のイベントヘの出演は広告代理店を介した関係であることが多く、IOC、AISO等との関係で特殊な関係をもっているという証にはならない。しかもAISOについていえば、被請求人はAISOからの認定を信頼の証であるかのように主張するが、AISO自体が際立った公的性格をもっているわけではない。IOCについても国際的公的団体である前提で強調しているが、オリーブの産出国が中心となっており、消費国の視点が欠けているという点で問題をはらんでいるというのが当業者の認識である。むしろ請求人は、このIOCに対しても、日本オリーブオイルソムリエ協会として「関係強化に向けて前進している」とIOCの報告書に取り上げられる等している(甲97)。そのほかにも、請求人は、アルゼンチン大使館、イタリア大使館、スペイン大使館、熊本県、香川県、天草市、小豆島町、江田島市といったオリーブオイルとゆかりの深い各種公的団体と共催イベントをしており(甲21~甲34)、被請求人が当業者の中でリードしているということはあり得ない。
イ 引用商標の独創性が高いことについて
各構成要素が需要者にとって既知であるからといって、それを組み合わせた引用商標に独創性がないとするのは、あまりにも論理が飛躍しており短絡的に過ぎる。また、前述のとおり、請求人が「オリーブオイルソムリエ」の語を用いたのは2005年であり、被請求人より請求人のほうが「オリーブオイルソムリエ」の語を用いるのは早かった。
したがって、被請求人の弁明は何らの理由もない。
ウ 役務の性質、用途、目的における関連性の程度、役務等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情、混同を生ずるおそれが極めて高いこと等について
前述のとおり、本件商標と引用商標との類似性は低く、引用商標の周知・著名性は認められず、引用商標の独創性の程度も低いなどとする被請求人の弁明には何らの理由もない。また、被請求人自身も頻繁に間違いが多発することを争っていない。また、オリーブの実とオリーブオイルは語義が異なると言いつつ、「オリーブソムリエ」にオリーブオイルの専門家の観念を含むことも積極的に争っていない。現に周知・著名であるのは引用商標であることについて、それを覆す証拠の提出もない。そのため、両商標につき、誤認混同するおそれが極めて高いことは明らかであり、本件商標は商標法第4条第1項第15号の無効理由に該当する。
第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を審判事件答弁書において、要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第36号証を提出した。
1 令和5年9月22日付けの審判請求書について、以下のとおり答弁する。
(1)商標法第4条第1項第11号に該当することについて
ア 商標の類似について
(ア)外観について
本件商標は、「オリーブソムリエ」の標準文字からなる商標であることは認める。本件商標は「オリーブ」の語(文字)と、「ソムリエ」の語(文字)との二語により構成される造語である。引用商標は、ゴシック体のフォントにより横書きで表してなる片仮名文字の「オリーブオイルソムリエ」の語(文字)と、ゴシック体のフォントにより全角表示かつ横書きで表してなる英文字の「Olive Oil Sommelier」の語(文字)とを、上下二段に配置してなるものである。
本件商標と引用商標の外観を比較した場合、本件商標は片仮名文字8文字からなる「オリーブソムリエ」であり、片仮名文字11文字からなる「オリーブオイルソムリエ」の語(文字)と、スペース含め19文字英文字の「Olive Oil Sommelier」の語(文字)とを、上下二段に配置した引用商標とを比較した場合に、外観上の相違は明らかである。「オリーブ」と「ソムリエ」の文字が本件商標と引用商標に含まれてはいるが、その他の請求人の主張は認めることができない。請求人は、「両商標の商標全体における主たる印象は、非常に近似したものである」と申し述べているが、総文字数が異なること、英文字を使用していること、及び、片仮名文字と英文字とで上下二段の配置をしていることにおいて、本件商標は引用商標と視覚的に大きく異なり、外観において相紛れることはあり得ない。
また、請求人は、「「オイル」という部分は、需要者、取引者に対して商標の出所識別標識として強い機能を有するものではない」と述べているが、引用商標に含まれる「オリーブオイル(Olive Oil)」の語改字)からあえて「オイル(Oil)」の語(文字)のみを分離して外観上の類否判断を行う必要性がないことは明らかである。
(イ)称呼について
「本件商標からは、その構成文字に相応して「オリーブソムリエ」の称呼が生じ、引用商標からは、各構成文字に相応して「オリーブオイルソムリエ」の称呼が生じる」という請求人の主張については認める。請求人自ら認めているとおり、本件商標からは8音の称呼、引用商標からは11音の称呼が生じる。両称呼の違いを決定づける3音の有無は明瞭に需要者(取引者を含む、以下同じ)が聴別でき、称呼上相紛れるおそれはない。請求人は、「各商標を称呼した場合、全体の称呼は完全に同一のものとして聴取されることがあるものである」と述べているが、請求人自ら認定した本件商標の称呼「オリーブソムリエ」と引用商標の称呼「オリーブオイルソムリエ」は同一の称呼でないことは明らかである。
請求人は、「「オイル」という部分は、需要者、取引者に対して商標の出所識別標識として強い機能を有するものではない」、「「オイル」の語は当然のものとして省略されることがある」と述べている。しかしながら、引用商標に含まれる「オリーブオイル(Olive Oil)」の語(文字)から、あえて「オイル(Oil)」の語(文字)のみを分離し、引用商標の一部である「オリーブ(Olive)」と「ソムリエ(Sommelier)」の部分のみに着目し、「オリーブ」と「ソムリエ」に分けて需要者が認識すると考えるべき理由は全くもって見当たらず、そのような引用商標の称呼の認定は明らかに不自然である。
(ウ)観念について
本件商標を構成する「オリーブ」の語(文字)は、デジタル大辞泉(乙5)によれば、「モクセイ科の常緑高木。高さ7~18メートル。葉は細長く、表面が暗緑色、裏面が銀色で、対生する。5~7月ごろ、黄白色の香りのよい花を総状につける。黄緑色の実は熟すると黒紫色になり、油がとれる。」と定義され、「植物の一種」を指していることは明らかである。更に、栄養・生化学辞典における「オリーブ」の解説によれば「ゴマノハグサ目モクセイ科オリーブ属の[Olea europaea]という常緑樹の果実。」と定義され、オリーブの木から採取する「実」を指す場合もあることがわかる(乙6)。
また、本件商標を構成する「ソムリエ」の語(文字)は、デジタル大辞泉(乙5)によれば、「レストランで、客の相談にのってワインを選び、サービスをする専門職」と定義されており、さらに「近年、野菜ソムリエ・タオルソムリエなど、品質の判定能力や知識を有することなどを認定する資格の名称にも多く用いられる。」と補説されている(乙7)。
上記の日本語辞書の定義を踏まえて、本件商標に接した需要者(取引者を含む、以下同様)の観念を整理すると、「オリーブ」については、「植物のオリーブやその実」を、「ソムリエ」については「専門家」という個別の意味を把握するにすぎず、それらの語を組み合わせた「オリーブソムリエ」については造語と認識し、「オリーブソムリエ」の一連の称呼にて本件商標を認識するとみるのが妥当である。
引用商標を構成する「オリーブオイル」の語(文字)は、デジタル大辞泉においては「オリーブ油」に、「オリーブの果実から圧搾してとる不乾性油。」(乙8)と定義されており、「Olive Oil」の語(文字)も同義である。引用商標を構成する「ソムリエ」の語(文字)の語義については記述の乙第7号証に示すとおりであり、英文字の「Sommelier」も同義である。引用商標の構成要素である「オリーブオイル(Olive Oil)」の語(文字)は、辞書の定義からもオリーブの果実から圧搾してとる油のことを指すのであって、本件商標の構成要素「オリーブ」の語(文字)が指すところの「モクセイ科の常緑高木の植物又はその実」とは全く別の概念である。「ぶどう酒」が「ぶどう」の果実を原料とするからといって、「ぶどう酒」と「ぶどう」が観念上の混同を生じることはないのと同じである。引用商標に接した需要者は、「オリーブオイル(Olive Oil)」と「ソムリエ(Sommelier)」とのそれぞれの語義から「オリーブの果実から圧搾してとる油」や「専門家」という漠然とした意味を把握し、それらの語を組み合わせた「オリーブオイルソムリエ(Olive Oil Sommelier)」については具体的な観念を生じない造語と認識し、「オリーブオイルソムリエ」の一連の称呼にて引用商標を認識するとみるのが妥当である。
既に述べたとおり、日本語辞書の定義に照らし合わせれば、オリーブの果実から圧搾してとる油を意味する「オリーブオイル(Olive Oil)」の語(文字)と、植物の一種であるモクセイ科の常緑高木又はその実を意味する「オリーブ」の語(文字)とは、全くその語義において異なることは明らかである。請求人は、「「オイル」という部分は、需要者、取引者に対して商標の出所識別標識として強い機能を有するものではない」と述べているが、引用商標の構成要素である「オリーブオイル(Olive Oil)」の語(文字)は辞書にも掲載されている定義の明確な語であり、そこから「オイル(Oil)」語(文字)を除去した場合、「オリーブ(Olive)」の語は:字)は全く異なる意味になるため、需要者がそのような不自然な分離観察を行うことは想定できない。
近年、商品役務の選択の際に需要者がインターネットで検索することも多いことから、Googleサーチエンジンを例に「オリーブオイル」と「オリーブ」の検索結果の違いを比較する。「オリーブオイル」で検索した際には、瓶詰のオリーブオイルの商品の画像が多数表示され、植物油である旨のWikipediaの定義も表示され、需要者はオリーブオイルがオリーブの実を原料とした植物油であることを容易に理解可能である。「オリーブ」で検索した場合にはオリーブの木や実の画像が多数表示され、植物である旨のWikipediaの定義も表示され、需要者はオリーブが植物又はその実を指すことを容易に理解可能である。
次に、請求人は「「オイル」の語は当然のものとして省略されることがある」と繰り返し述べているので、この点についても反論する。オリーブオイルはオリーブとも略称されるといった記載のある辞書を被請求人は発見していない。請求人はラテン語「Oleum」の語義を引用しているが、本件商標は日本における登録商標であり、需要者は日本の居住者であり、このような場合に需要者がラテン語の知識を有することは想定されていない。植物やその果実を指す「オリーブ」と、オリーブの果実を圧搾して取る「オリーブオイル(Olive Oil)」とは、日本語辞書に示すとおり、異なる語義を以て日本の需要者に知られていると見るのが妥当である。
本件商標に接した需要者は、「オリーブ」の語(文字)と「ソムリエ」の語(文字)とを結合した商標であると容易に看取でき、「オリーブソムリエ」の一連の称呼のみを生じる造語と認識する。引用商標に接した需要者は、「オリーブオイル(Olive Oil)」の語(文字)と「ソムリエ(Sommelier)」の語(文字)とを結合してなることを容易に看取することができることから、「オリーブオイルソムリエ」の一連の称呼のみを生じる造語と認識するとみるのが妥当である。本件商標と引用商標はいずれも造語であり、観念上の類似の余地はあり得ない。請求人は、「「オリーブ」と「ソムリエ」の語の組み合わせから、直ちに「飲食店等で、オリーブオイルの仕入れ・管理を担当し、一般消費者の相談を受けてオリーブオイルを選定・提供する専門職」の観念を想起せしめるものである」と述べているが、既に述べたとおり植物又はその果実である「オリーブ」と、オリーブの果実を圧搾して取る「オリーブオイル」とは、日本語の辞書に示すとおり、全く異なる語義を以て日本の需要者に知られており、本件商標「オリーブソムリエ」より請求人の主張する観念は生じ得ない。なお、請求人は「「オリーブ」と「ソムリエ」の語の組み合わせを用いていたのは、もともと日本国内では請求人だけ」という点と、「後述のように「オリーブオイルソムリエ」がオリーブに関する資格として定着している」と主張しているが、この点は認めない。
(エ)取引の実情について
請求人は、実際に使用されている引用商標の具体的態様、方法等について説明しているが、特許庁の審査基準においては、商標法第4条第1項第11号該当性の判断にあたり「指定商品又は指定役務における一般的・恒常的な取引の実情を考慮するが、当該商標が現在使用されている商品又は役務についてのみの特殊的・限定的な取引の実情は考慮しないものとする。」と明記されているので、商標法第4条第1項第11号該当性の判断にあたっては、関係無い事項である。
イ 指定役務の類似について
本件商標と引用商標とは、外観、称呼、観念のいずれにおいても類似せず、非類似の商標であるので、商品役務の類否を判断するまでもないことは明らかである。
ウ 結論について
本件商標と引用商標とは、外観、称呼、観念のいずれにおいても類似せず、商品役務の類否を判断するまでもなく非類似の商標であり、本件商標は商標法第4条第1項第11号の無効理由には該当しない。
(2)商標法第4条第1項第15号に該当することについて
ア 判断基準について
請求人は、最高裁平成12年7月11日第三小法廷判決(「レールデュタン事件」判決、以下「最高裁判決」)に言及しており、被請求人も最高裁判決が存在することは認める。最高裁判決において、「「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである。」と判示されている点も認める。特に注目すべきは、「当該商標と他人の表示との類似性の程度」が最初に挙げられていることであり、上記判決において無効審判請求の対象となった登録商標は、他人である審判請求人の使用にかかる標章と称呼において同一と認定されたケースであり、本件とは全く異なる事案であることを指摘したい。また、「当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として」混同のおそれを判断すべきとしていることから、通常あり得ない商標の一部要素の省略を想定して混同のおそれの有無を論じている請求人の主張は、上記の判示事項に明らかに反するものであると考える。
イ 両商標が極めて類似していることについて
本件商標と引用商標とは、外観、称呼、観念のいずれにおいても類似しない、非類似の商標である。
ウ 引用商標の周知著名性が高いことについて
(ア)請求人は、「我が国で、「オリーブ」と「ソムリエ」の文字を構成することで知られる資格は、請求人の「オリーブオイルソムリエ」以外に存在せず」と述べているが、誤りである。イタリア ソムリエ財団(Fondazione Italiana Sommelier)のホームページ記載(乙9)によれば、イタリアオリーブオイルソムリエ協会(Associazione italiana sommelier dell’olio、以下「AISO」)の設立の経緯について「ケータリングの専門家、生産者、販売者、愛好家、一般の消費者がこの素晴らしい文化に対応できるよう準備することを目的として、2004年11月28日にローマで設立されました。」と記載されており、AISOは2004年11月28日にローマで設立されたとことがうかがえる。さらに、2009年7月3日付All About記事「イタリア留学でオリーブオイル・ソムリエに」(乙10)において、「今回紹介するコースは、通常イタリア本国では3~4ヶ月かかるものを、AISO認定のもと、Accademia dell’Olioが日本人に向けて1週間という短期集中、かつ効率的にカリキュラムを組み直したものです。」、「コース終了時にAISO公認ソムリエの資格取得試験が行われます。この試験に合格された人には「AISO認定オリーブオイルソムリエ」の称号が与えられ、オリーブオイル・ソムリエ認定書とバッチがAISO(イタリアオリーブオイルソムリエ協会)より授与されます。」との記載がある。これらの記載より、遅くとも乙第10号証の記事が掲載された2009年7月の時点で日本人向けのAISO認定オリーブオイル・ソムリエコースがイタリアにおいて提供されていたことは明らかである。つまり、イタリアに1週間短期留学して初めて取得できる日本人向けの資格として「オリーブオイル・ソムリエ認定書」がAISOにより発行されていたことがわかる。
(イ)引用商標の著名性・周知性について
a 請求人の主張に対する被請求人の反論
請求人は甲第11号証を根拠に遅くとも2005年1月2日頃から「オリーブオイルソムリエ」の文字列を使用している旨申し述べているが、これは誤りであり、甲第11号証ではなく甲第9号証を指しているものと思われる。
甲第9号証を参照すると、2005年1月2日付の「日本オリーブオイルソムリエ協会を設立しました」という記載のある請求人ホームページ(https://www.oliveoil.or.jp/)の写しが示されているが、不思議なことに、請求人ホームページがインターネットアーカイブ(「wayback machine」)に2009年10月05日時点で記録されたキャプチャデータ(乙11)を参照すると、一般社団法人日本オリーブオイルソムリエ協会は「設立 2009年7月」と記載されている。請求人の主張する2005年1月2日よりも4年6か月後の日付であり、日本人向けのAISO認定オリーブオイル・ソムリエコースがイタリアにおいて提供されていた時期と一致し、そして、後述のとおり被請求人がAISOとの共催で「イタリアオリーブオイルソムリエ養成講座」を開催する旨の記事が日本食糧新聞に掲載された2009年8月と相前後する時期である。請求人ホームページの記載が、2009年10月05日時点で記録されたキャプチャデータ(乙11)並びに2013年6月11日時点で記録されたキャプチャデータ(乙12)までは「設立2009年7月」となっているにも関わらず、2014年10月22日時点で記録されたキャプチャデータ(乙13)においては「創立:2005年1月 法人設立:2009年7月」と変更されており、請求人に都合よい形で公式サイトの設立(創立)年が修正されていることが推認される。2009年10月05日時点で記録されたキャプチャデータ(乙11)の記載「設立 2009年7月」と明らかに矛盾する甲第9号証が日付を遡って2005年1月2日付で公式サイトにアップロードされていたとは考え難く、甲第9号証及び甲第9号証に基づく請求人の主張は信用し難い。
なお、甲第57号証(「ヴィノテーク」2014年3月号)において、請求人の業務にかかる役務との関連で「2009年に日本オリーブオイルソムリエ協会を発足させた。」との記載があることも、元来は請求人自身が2009年7月を設立日と公表していたことを裏付けている。さらに、乙第14号証(請求人の法人登記筋の写し)より、請求人の法人成立の年月日は「平成21年7月1日」、すなわち2009年7月1日であると特定できる。
次に、請求人の主張する引用商標の周知・著名性について反論する。甲第11号証、甲第14号証及び甲第18号証の日付に基づけば、2009年9月に初級講座である「ジュニアオリーブオイルソムリエコース」を開講し、2010年1月に「オリーブオイルソムリエ」コースを開講、2014年2月にオリーブオイルソムリエ講座を小豆島で開講したと主張していると理解できる。甲第9号証と同様に、甲第11号証及び甲第14号証は請求人自身のウェブサイトであるので日付には疑義があるものの、仮に請求人自身が「ジュニアオリーブオイルソムリエコース」「オリーブオイルソムリエ」コースを上記のとおり実施していたとしても、AISOのような認定機関の協力を得ていない点で、信頼度も低く、後述の被請求人の事業と比較して画期的なものではない。甲第10号証は「日付がない」講座案内の写しであり、引用商標の周知・著名性を裏付ける証拠にはならない。甲第12号証も、令和5年8月6日付の「ジュニアソムリエコースを修了された皆様へ」というレターの写しであり、引用商標の周知・著名性を裏付ける証拠にはならない。甲第13号証は2009年8月31日初版第1版発行日とする「ジュニアオリーブオイルソムリエ」資格養成講座テキスト(103ページ)の写しであり、甲第11号証とあわせ考えれば2009年9月に初級講座である「ジュニアオリーブオイルソムリエコース」を開講した際に作成したことは伺えるが、仮にテキストが発行された事実があるとしても引用商標に関する周知・著名性を裏付ける証拠にはならない。
甲第15号証の合格通知書は「M氏(協会籍番号第23001号)」宛てで令和5年3月5日に発行されたものと推測され、甲第16号証の学位記も「M氏」宛てのため、同時期に発行されたものと推測される。本件商標の出願日は令和4年7月8日であり、本件商標の出願後に合格通知書、学位記が特定の個人に対して1通発行されたことを示すにすぎず、引用商標の周知・著名性を裏付ける証拠にはならない。甲第17号証は、株式会社Jーオイルミルズが従業員に資格取得を支援していること、一般社団法人日本惣菜協会の「惣菜管理士」と併記される形で、請求人の「ジュニアオリーブオイルソムリエ」「オリーブオイルソムリエ」が記載されていることは認めるが、請求人の「ジュニアオリーブオイルソムリエ」「オリーブオイルソムリエ」については、株式会社Jーオイルミルズがその従業員に取得することを支援していた民間資格の1つであることを示すのみであり、引用商標の周知・著名性を裏付ける証拠にはならない。甲第19号証は、台湾で引用商標と類似する商標「オリーブオイルソムリエ」の使用権を含むライセンス契約が存在することを示すにすぎず、実際に引用商標が台湾において使用されていることや、引用商標が台湾で周知・著名であることを示すものではない。
甲第20号証から甲第42号証、並びに甲第45号証から甲第49号証は請求人の実施するイベント「Olive Japan」に関するものであり、本件商標とも引用商標とも非類似である「Olive Japan」の標章の使用状況は、本件無効審判の判断とは何ら関係がない。甲第43号証及び甲第44号証は請求人の実施する「オリーブオイルソムリエコンクール」に関するものである。既に述べたとおり、本件商標と引用商標とは、外観、称呼、観念のいずれにおいても類似せず、非類似の商標であるうえ、上記のコンクールが実施されたことは甲第43号証及び甲第44号証から伺えるものの、引用商標の周知・著名性が証明されていないことは既に述べたとおりなので、請求人が「オリーブオイルソムリエコンクール」を仮に実施しているとしても、本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性の判断とは、何ら関係がない。
甲第50号証は2016年6月1日を初版第一刷発行日とする書籍の写しであるが、「オリーブオイルソムリエがいる全国のショップ」の一覧表があることは認める。全国で23件の店舗にオリーブオイルソムリエがいるとのことであり、通常「ソムリエ」は1つの店に1~2名しかいないことを考慮すると、店舗で働く資格保有者の総数は23名~多く見積もっても46名程度であったと推計できるが、周知・著名性の立証には役立つものではない。
同様に、甲第51号証は2016年7月6日を初版第一刷発行日とする書籍の写しであるが、全国で25件の店舗にオリーブオイルソムリエがいるとのことであり、通常「ソムリエ」は1つの店に数人しかいないことを考慮すると、店舗で働く資格保有者の総数は25名~多く見積もっても50名程度、21か所のネットショップも同様に積算して21名~多く見積もっても42名程度であったと推計でき、全国で100名以下であり、周知・著名性の立証には役立たない。同様に、甲第52号証は2017年7月4日を初版第一刷発行日とする書籍の写しであるが、全国で31件の店舗にオリーブオイルソムリエがいるとのことであり、通常「ソムリエ」は1つの店に数人しかいないことを考慮すると、店舗で働く資格保有者の総数は店舗で31名~多く見積もっても62名程度、23か所のネットショップも同様に積算して23~多く見積もっても46名程度であったと推計でき、全国で100名強であり、周知・著名性の立証には役立たない。甲第53号証は2018年3月20日を初版第一刷発行日とする書籍の写しであるが、「オリーブオイルソムリエがいる全国のショップ(受賞オリーブオイル取扱店)」の一覧表があることは認める。全国で32件の店舗にオリーブオイルソムリエがいるとのことであり、通常「ソムリエ」は1つの店に数人しかいないことを考感すると、店舗で働く資格保有者の総数は店舗で32名~多く見積もっても64名程度、7か所のネットのみの販売店も同様に積算して7名~多く見積もっても14名程度であったと推計でき、全国で78名程度に下がっており、周知・著名性の立証には役立たない。同様に、甲第62号証は2019年8月1日を発行日とする書籍の写しであるが、「オリーブオイルソムリエがいる全国のショップ(受賞オリーブオイル取扱店)」の一覧表があることは認める。全国で30件の店舗にオリーブオイルソムリエがいるとのことであり、通常「ソムリエ」は1つの店に数人しかいないことを考慮すると、店舗で働く資格保有者の総数は店舗で30名~多く見積もっても60名程度、7か所のネットのみの販売店も同様に積算して7名~多く見積もっても14名程度であったと推計でき、全国で74名程度に下がっており、周知・著名性の立証には役立たない。これらの資料から、2016~2017年には余裕をみて100名前後、請求人の付与した「オリーブオイルソムリエ」資格保有者が店舗・オンラインショップで働いていたと推計できるものの、その後は減少傾向にあり、2019年には推計74名に減少している。その後コロナ禍が起きて飲食業界が大きな打撃を受けたことは顕著な事実であり、上記の推計が2020年以降に増加したとは想像できず、むしろ減少傾向が加速したと推測できる。
請求人は、「オリーブオイルソムリエ」の会員は2062名と甲第68号証を根拠に申し述べているが、甲第68号証に示されたリストには「コース」の項目があり、「J」「S」などの記号が記載されている。請求人の主張によれば、「ジュニアオリーブオイルソムリエ」と「オリーブオイルソムリエ」の講座を提供しており、上位資格に「オリーブオイルマイスターソムリエ」があるとのことなので、記号で会員種別を分類しているという推測が成り立ち、そうなると「ジュニアオリーブオイルソムリエ」(記号:J)と「オリーブオイルソムリエ」(記号:S)、「オリーブオイルマイスターソムリエ」(記号:MS)の各人数の合計が2062名であるとしても、「オリーブオイルソムリエ」の数はその一部にすぎないと推測される。被請求人としては、「コース」に記載された記号の意味の説明と、「オリーブオイルソムリエ」の数について明確にすることを請求人に求める。また、甲第68号証に示された「会員番号」は上2桁が西暦の下2桁(2022年であれば「22」)、下3桁が年毎の通し番号で構成されていると推測でき、年毎の新規会員数の概算を把握することが可能である。また、甲第57号証(「ヴィノテーク」2014年3月号)において、請求人の業務にかかる役務との関連で「2009年に日本オリーブオイルソムリエ協会を発足させた。これまでに「ジュニアオリーブオイルソムリエ」を約1,000人、「オリーブオイルソムリエ」を約300人輩出した」との記載がある。甲第68号証に示された「会員番号」より把握できる年毎の新規会員数と、甲第57号証の記載とおりオリーブオイルソムリエの数がジュニアオリーブオイルソムリエの数の約30%、会員数全体の約23%とすれば、これらに基づく請求人の新規会員数の推計では、近年の請求人の新規会員数は減少傾向にあり、「オリーブオイルソムリエ」カテゴリの新規会員数の推計は20名前後であることから、請求人の引用商標が周知・著名であることの根拠にはなりえない。
請求人は、「(B7)実際に引用商標に関して「オイル」の語が省略されることの例」において、不明瞭な文脈での語句の使用(甲56)や言い間違い・書き間違い(甲63、甲85~甲96)などを挙げてあたかも「オリーブオイルソムリエ」が「オリーブソムリエ」と略称されるかのような主張を行っているが、これらの証拠は引用商標又は請求人の名称の周知・著名性のなさに由来し、引用商標について言い間違い、書き間違いが多発していることを示している。有資格者、講座受講者でさえ書き間違い等をしてしまう程度にしか引用商標が認識されていないのであれば、まして広く需要者に周知・著名でないことは明らかである。
b 被請求人が本件商標の出願に至るまでの経緯
ここで、被請求人であるN氏が本件商標の出願に至るまでの経緯について申し述べる。N氏は戸籍名であり、Oの氏名で服部栄養料理研究会会長・服部栄養専門学校理事・校長代理を務めている。学校法人服部学園及び服部栄養専門学校の理事長・校長を務めるP氏は被請求人であるO氏の兄である。被請求人は「HATTORI キュイジーヌクラブ ルナラパン」(以下、「ルナラパン」)を会長として主宰しており、服部栄養料理研究会の会長でもある(乙15)。
被請求人が理事・校長代理を務める服部栄養専門学校において、AISOと、被請求人が会長を務める服部栄養料理研究会との共催で、日本初のイタリアオリーブオイルソムリエ養成講座が2009年10月10日に開講される旨の2件の記事が、日本食糧新聞に2009年8月10日、同月17日付で掲載された(乙16、乙17)。
ここで「日本初」の言葉が使用されていることに特に注目したい。つまり、先に述べたとおり2009年7月の時点で日本人向けのAISO認定オリーブオイル・ソムリエコースがイタリアにおいて提供されていたことは乙第10号証から明らかであり、イタリアヘの短期留学をしなくてもAISOのオリーブオイル・ソムリエコースに準じた学びができる日本初の試みが2009年8月に少なくとも日本食糧新聞の記事に取り上げられ、2009年10月の実施予定が報じられたことが乙第16号証及び乙第17号証から理解できる。第2回目のイタリアオリーブオイルソムリエ養成講座が2010年6月19日から開講される旨の記事が日本食糧新聞に2010年5月7日付で掲載され、日本食糧新聞の同年7月14日付の記事によれば、実際には2010年6月21日~26日の日程で実施されたことがわかる(乙18、乙19)。AISO代表を講師の一人としており、更に乙第19号証の記事で紹介されているシチリアのパレルモ大学の園芸学教授、地中海性気候におけるオリーブ栽培と有機果実栽培に造詣が深いことから、植物のオリーブやその実にも着目して講義が行われたことが伺える(乙20)。
さらに、国際オリーブ協会と被請求人との関係についても、説明しておく。国際オリーブ協会(International Olive Council、以下「IOC」)は、公式ホームページの情報(乙21)によれば、オリーブオイルとテーブルオリーブの分野における世界唯一の国際政府間組織である。1959年、国連の後援のもと、スペインのマドリードで設立され、2006年に名称が変更されるまでは、国際オリーブオイル協会(IOOC)として知られていた。IOCの会員は、オリーブオイルとテーブルオリーブの主要な国際的生産者と輸出業者であり、IOCの生産者会員は、主に地中海地域に位置し、世界のオリーブオイル生産の約94%を占めている。IOCは、世界のオリーブ栽培の総合的かつ持続可能な発展に取り組んでおり、IOCは、このコミットメントを加盟国のみならず、オリーブの木の生産によって生計を立てている一般の人々のために、具体的な発展につなげようとしている。2006年に名称変更したこともあり、「オリーブオイル」のみならず、オリーブの木の生産、オリーブの実を加工したテーブルオリーブなど、広範な産業振興を視野に入れた政府間国際機関であることが伺える(乙21)。被請求人は、1995年6月27日~28日に国際オリーブオイル協会(IOOC)が開催した「イタリアの食卓~北から南まで」において講師を務め、演題「南イタリアの食材の日本的応用」を担当した(乙22)。遅くとも1995年の時点にて、IOCの前身IOOCの開催するイベントでの講師として被請求人を招へいするような密接な協力関係にあったことを乙第22号証は示している。国際オリーブオイル協会(IOOC)は1996年10月22日~23日に「スペインの食文化セミナー」を開催しているが、その際には被請求人が理事・校長代理を務める服部栄養専門学校にて「スペイン料理講習会」もあわせて開催された(乙23)。被請求人が会長を務める服部栄養料理研究会は1997年2月19日に「テーブルオリーブ料理講習会」を開催しているが、国際オリーブオイル協会(IOOC)のスポークスパーソンのQ氏が講師を務め、食材としてのテーブルオリーブの歴史、文化、食品化学などの観点から講義を行った(乙24)。1997年の段階では、被請求人とIOCの前身IOOCとの協力は、オリーブオイルの分野にのみ限定されたものではなく、オリーブの果実を加工したテーブルオリーブスにも広がっていることが第24号証から伺える。国際オリーブオイル協会(IOOC)は1997年4月22日~23日に「イタリアの食文化」セミナーを開催しているが、その際には被請求人が会長を務める服部栄養料理研究会が主催する「イタリア料理講習会」も開催された(乙25)。被請求人は、書籍「オリーブオイルおいしい食卓」(乙26)の著者の一人であり、共著者のQ氏は国際オリーブオイル協会(IOOC)のスポークスパーソンであった。被請求人は書籍「日本的な料理とオリーブオイル 服部流オリーブオイルとテーブルオリーブス」(乙27)において、国際オリーブオイル協会(IOOC)の依頼を受けてオリーブオイルとテーブルオリーブスを使った日本的な料理のレシピ提供を行っていることが記載されている。IOCは2006年3月16日、服部栄養専門学校で「日本料理とオリーブオイル」セミナーを開催し、被請求人が開発したメニューが披露されたことが報じられている(乙28)。2006年10月5日スペイン大使館経済商務部とスペインオリーブオイル輸出協会(ASOLIVA)が共催した「スペインオリーブオイルセミナー」において、被請求人は講師を務めた。その際、被請求人の略歴について「日本のオリーブオイル第一人者で、長年国際オリーブオイル理事会(IOOC)のアドバイザーを務める(学)服部学園のO会長。」と紹介されている(乙29)。
被請求人が会長を務める服部栄養料理研究会は、「オリーブオイルテイスティング&オイルと料理のマリアージュセミナー」(以下、「マリアージュセミナー」)を服部栄養専門学校において2012年3月11日に実施した(乙30)。マリアージュセミナーの第2回目は、「オリーブオイルと料理のマリアージュセミナー」として、2013年7月1日に開催され、IOC認定鑑定士を招いた旨が記載されている(乙31)。被請求人は、IOCとの協力関係のもと、2014年7月7日にも「日本料理と世界のオリーブオイル 七夕の夜の出会い」セミナーを開催し(乙32)、IOC認定オリーブ鑑定士、パネルリーダーのR氏を講師として招聘している。被請求人は2016年にもマリアージュセミナーを開催し(乙33)、IOC認定オリーブ鑑定士、パネルリーダーのR氏を講師として招へいしている。コロナ禍に入り中断したものの、2023年7月1日にマリアージュセミナーを再開している(乙34)。「O会長は、国際オリーブオイル協会(現国際オリーブ協会)が1989年から日本でプロモーションをスタートさせ、第一次オリーブオイルブームを巻き起こした時から、オリーブオイルアドバイザーとしてオリーブオイルの普及に尽力してきました。」と乙第34号証にあるとおり、被請求人のIOCとの協力は1989年より開始していることが読み取れる。
被請求人は、IOCや欧州連合(EU)が関わる国際的なオリーブオイルの啓発活動にも長年関わっている。2015年7月から2016年12月まで行われたIOC主催のキャンペーン「Believe in Olive Oil」の一環で行われた2015年10月20日のワークショップにおいて、オリーブオイルを使った和食を被請求人が提供する形で協力を行っている(乙35)。欧州連合(EU)がサポートする「ヨーロッパ産高品質エキストラバージン・オリーブオイルキャンペーン」では、2018年9月25日から27日にかけて、被請求人が理事・校長代理を務める服部栄養専門学校にてヨーロッパ産高品質エキストラバージン・オリーブオイルに関する講義と調理のデモンストレーションが行われた(乙36)。
被請求人の本件商標採択に至る過程を総括すると、概要以下のとおりである。IOCとの関係においては、IOCがIOOCであった時代の1989年より協力を開始し、遅くとも1995年には被請求人が密接な協力関係にあったことを乙第34号証並びに乙第22号証は示している。1997年の段階では、被請求人とIOCの前身IOOCとの協力は、オリーブオイルにのみ限定されたものではなく、オリーブの果実を加工したテーブルオリーブスにも広がっていることが乙第24号証から伺える。長年の協力関係にある国際機関であるIOCが「オリーブオイル」のみならず、オリーブの木の生産、オリーブの実を加工したテーブルオリーブなど、広範な産業振興を視野に入れた国際機関へと発展していく過程を長期間ともに歩んだ被請求人は、「オリーブオイル」の狭い範囲を対象とするのではなく、広くオリーブ全般に関わる食文化の発展と知識の啓もうを意図して、被請求人は本件商標「オリーブソムリエ」を採択したのである。AISOとの関係においては、被請求人は、日本初のイタリアオリーブオイルソムリエ養成講座をAISOとの共催で2009年10月に実施し、第2回目を2010年6月に実施している。従来はイタリアヘの短期留学が必要となるAISO認定オリーブオイル・ソムリエコースが日本で受講できるという点において、画期的な試みであり、また、AISOのカリキュラムに沿って行われるという点において、信頼度の高い講座であった。被請求人は、1990年以降、服部栄養専門学校の学生向けにも毎年オリーブとオリーブオイルの講義を行っており、オリーブ全般に関わる専門家の育成に携わっている。
被請求人の本件商標の採択に至るまでの経緯と比較しつつ、請求人の主張する引用商標の周知・著名性の根拠がないことを、以下に論じる。乙第14号証に基づけば、請求人の法人設立は2009年7月である。甲第11号証及び甲第14号証は請求人自身のウェブサイトであるので日付には疑義があるものの、仮に請求人自身が2009年9月に初級講座である「ジュニアオリーブオイルソムリエコース」を開講し、2010年1月に「オリーブオイルソムリエ」コースを開講、2014年2月にオリーブオイルソムリエ講座を小豆島で開講したことがあったとしても、AISOのような認定機関との協力もないという点で、信頼度も低く、被請求人の事業と比較して特に画期的ともいえない。2016~2017年には余裕をみて100名前後、請求人の付与した「オリーブオイルソムリエ」資格保有者が店舗・オンラインショップで働いていたと推計できるものの、その後は減少傾向にあり、2019年には推計74名に減少している。請求人は、「オリーブオイルソムリエ」の会員は2062名と甲第68号証を根拠に申し述べているが、「オリーブオイルソムリエ」の数はその一部にすぎないと推測され、近年の「オリーブオイルソムリエ」カテゴリの新規会員数の推計は年間20名前後に留まる。被請求人としては、「コース」に記載された記号の意味の説明と、「オリーブオイルソムリエ」の数について明確にすることを請求人に求める。さらに、請求人は「オリーブオイルソムリエ」が「オリーブソムリエ」と略称されるかのような主張を行っているが、失当である。請求人の挙げた証拠はいずれも言い間違い、書き間違いが生じたことを示すにすぎず、むしろ引用商標の周知・著名性のなさに由来し、「オリーブオイルソムリエ」有資格者、講座受講者でさえ書き間違い等をしてしまう程度にしか引用商標が認識されていないことを示唆している。そのような状況であれば、広く需要者に知られているはずがないことは明らかである。
エ 引用商標の独創性が高いことについて
引用商標に接した需要者は、「オリーブオイル(Olive Oil)」の語(文字)と「ソムリエ(Sommelier)」の語(文字)とを結合してなることを容易に看取することができ、いずれも日本の需要者にその語義がよく知られた構成要素である。遅くとも2009年7月の時点で日本人向けのAISO認定オリーブオイル・ソムリエコースがイタリアにおいて提供されていたことも考えあわせれば、引用商標の独創性は高いとはいえない。
オ 本件商標と引用商標との類似性は既に述べたとおり低く、引用商標の周知・著名性は認められず、引用商標の独創性の程度も低い。本件商標の指定役務の需要者において普通に払われる注意力を基準とすれば、本件商標の指定役務と引用商標の指定役務が仮に類似する場合であっても、本件商標をその指定役務へ使用した場合に、請求人の業務に係る役務であると需要者が誤認し混同を生じるおそれは極めて低い。特に、辞書の定義に照らし合わせればオリーブの果実から圧搾してとる油を意味する「オリーブオイル(Olive Oil)」の語(文字)と、植物の一種であるモクセイ科の常緑高木又はその果実を意味する「オリーブ」の語(文字)とは、全くその語義において異なること、1989年に被請求人との協力を開始し、遅くとも1995年には被請求人を講師に招へいするような密接な協力関係にあった国際機関であるIOCが「オリーブオイル」のみならず、オリーブの木の生産、オリーブの実を加工したテーブルオリーブなど、広範な産業振興を視野に入れた国際機関へと発展していくのに歩調をあわせ、広くオリーブ全般に関わる食文化の発展と知識の啓もうのために被請求人が行ってきた国際的な活動を考え合わせれば、本件商標「オリーブソムリエ」を被請求人がその指定役務へ使用したとしても、周知・著名性のない請求人の業務にかかる役務と需要者が誤認混同するおそれは極めて低いことは明らかである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号の無効理由に該当しない。
(3)結論
本件商標と引用商標とは、外観、称呼、観念のいずれにおいても類似せず、商品役務の類否を判断するまでもなく非類似の商標であり、本件商標は商標法第4条第1項第11号の無効理由に該当しない。
また、本件商標をその指定役務へ使用した場合に、請求人の業務に係る役務であると需要者が誤認し混同を生じるおそれは極めて低く、本件商標は商標法第4条第1項第15号の無効理由に該当しない。
請求人の主張する無効事由のいずれにも本件商標は該当しないことは明らかであるため、答弁の趣旨に記載したとおりの審決を求める。
第5 当審の判断
1 利害関係について
請求人が本件審判を請求することの利害関係の有無については、当事者間に争いがなく、当審は請求人が本件審判の請求について利害関係を有すると認める。
2 引用商標の周知著名性について
(1)請求人の提出証拠及び主張によれば、以下の事実が認められる。
ア 請求人は、2009年8月10日付けの請求人ウェブサイト(お知らせ&新着情報)において、「日本初となる、「オリーブオイルソムリエ」になるための初級講座「ジュニアオリーブオイルソムリエ」コースを9月11日より開講いたします」(甲11)、また、2009年12月25日付けの請求人ウェブサイト(お知らせ&新着情報)において、「準備を進めてまいりました上級コース「オリーブオイルソムリエ」コースを、1月16日より開講いたします。」(甲14)として、引用商標を使用した講座が開講する事実を掲載している。
イ 請求人による講座案内によれば、「オリーブオイルソムリエ講座 2014年2月小豆島開講決定!」の見出しの下、「3日間の講座を修了し、最終日の試験に合格すると「オリーブオイルソムリエ」学位記とソムリエバッジが授与されます」の記載がある(甲18)。
ウ 請求人の主催にかかるオリーブをテーマにしたイベント「Olive Japan」は、2012年以降、コロナ禍を除き、毎年開催され、初年度の総来場者動員数は約5万人であったが、年々増加し、2019年には、約30万人となった(甲20、甲35~甲49)。当該イベントにおいて、国際的なオリーブオイルのコンテストをはじめ、日本一のオリーブオイルソムリエを決めるソムリエ技能コンクールが2019年、2022年及び2023年に開催された(甲20、甲43、甲44)。また、請求人は、イベントを開催するにあたり、例年、アルゼンチン共和国大使館、スペイン大使館経済商務部、熊本県、香川県などから後援承認を得ている(甲21~甲34)。
エ 請求人は、請求人又は請求人の協会理事長の名義により書籍を発行し(「そのオリーブは偽物です」、「オリーブオイルの至福」、「オリーブオイルで絶品!肉料理」、「決定版!本物のオリーブオイルはこれを選びなさい」)、その書籍において「オリーブオイルソムリエ」がいる店舗一覧を掲載している(甲50~甲53)。
オ 引用商標について、2010年ないし2019年の期間に発行された資格専門誌(「ワインとグルメの資格と教室2014」)(甲54)、情報誌(「ぐるなび通信」、「読売家庭版」、「DEPARTURE」、「ほっとTIMES」)(甲55、甲58~甲60)、女性向けファッション雑誌(「Domani」)(甲56)等に、「オリーブオイルソムリエ」に関する資格の取得又は紹介に関する内容が掲載されている。
カ 請求人にかかる「オリーブオイルソムリエ」の文字を資格名称に含む認定資格者は、約2,000名の会員が存在する(甲68)。また、「オリーブオイルソムリエ」の資格を有する者が、雑誌、情報誌等における掲載記事のプロフィール欄等に、「オリーブオイルソムリエ」を自身の肩書として使用している(甲71~甲82)。
(2)上記認定事実によれば、請求人は、2010年1月頃より「オリーブオイルソムリエ」に関する講座を開始し、引用商標は、当該講座及び当該講座を受講することにより取得できる資格の名称として使用されている。
また、請求人主催によるオリーブをテーマにしたイベント「Olive Japan」は、2019年には来場者数が約30万人に達し、当該イベントにおいて、日本一の「オリーブオイルソムリエ」を決めるコンクールも開催された。
そして、2010年から2019年の間に発行された情報誌、雑誌等において、引用商標に関連する記事が掲載されている。
他方、オリーブオイルに関心のある一般需要者が、我が国においてどれくらい存在するか不明であるところ、「オリーブオイルソムリエ」の資格名称の認識におけるその需要者の範囲は、オリーブオイル自体の有する効能や、引用商標が掲載されている雑誌媒体の分野等に照らせば、一部の美容や健康に関心の高い需要者等、限定的な範囲にとどまるものと推認される。
また、「オリーブオイルソムリエ」の資格を有する者が、日本国内に約2,000名存在し、オリーブをテーマにしたイベント「Olive Japan」が開催され、多数の来場者数であったとしても、請求人の提出証拠からは、「オリーブオイルソムリエ」に限定したイベントの規模や広告宣伝回数、売り上げ等の客観的な証拠の提出はなく、当該資格名称自体の一般需要者の間における認知度の程度が必ずしも明らかではないことからすれば、引用商標が我が国の需要者の間において、周知著名性を推し量ることはできない。
さらに、「オリーブオイルソムリエ」に関する記載が掲載された雑誌及び情報誌等についても、発行部数、販売範囲が不明であり、記事の掲載頻度も多いとはいえないことから、周知性の証拠として認めることはできない。
そうすると、請求人提出の証拠によっては、引用商標「オリーブオイルソムリエ」がオリーブオイルに関連した請求人役務に係る商標として、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、我が国の一般需要者の間において広く認識されるに至り、周知著名性を獲得したものとは認められない。
3 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標と引用商標の類否
ア 本件商標について
本件商標は、「オリーブソムリエ」の片仮名を標準文字で表してなるところ、その構成中、「オリーブ」の文字部分は、「モクセイ科の常緑小高木。」(広辞苑 第七版)の意味を、「ソムリエ」の文字部分は、「フランス料理店などで、ワインの仕入れ・管理を担当し、また客の相談を受けてワインを選定・提供する専門職。」(前掲書参照)の意味を有する語であるが、これらを結合してなる本件商標は、一般的な辞書等に掲載されている語ではなく、全体として何らかの意味合いを理解させるものでもないことからすれば、構成全体として一連の造語と把握されるものである。
そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して、「オリーブソムリエ」の称呼を生じ、特定の観念は生じない。
イ 引用商標について
引用商標は、別掲1のとおり「オリーブオイルソムリエ」の片仮名及び「Olive Oil Sommelier」の欧文字を二段に横書きしてなるところ、上段の「オリーブオイルソムリエ」の片仮名は、下段の「Olive Oil Sommelier」の欧文字の表音を表してなると理解できる。
そして、構成中の「Olive Oil(オリーブオイル)」の文字部分は、「オリーブ油」(新英和中辞典第7版)の意味を、「Sommelier(ソムリエ)」の文字部分は、「ソムリエ(レストランのワイン専門サービス係)」(前掲書参照)の意味を有する語であるが、これらを結合した「Olive Oil Sommelier(オリーブオイルソムリエ)」の文字は、一般的な辞書等に掲載されている語ではなく、全体として何らかの意味合いを理解させないことからすれば、構成全体で一連の造語と把握されるものである。
そうすると、引用商標は、その構成文字に相応して、「オリーブオイルソムリエ」の称呼を生じ、特定の観念は生じない。
ウ 本件商標と引用商標の比較
(ア)外観について
本件商標と引用商標は、上記ア及びイのとおりの構成からなるところ、本件商標は片仮名のみからなるのに対し、引用商標は、片仮名と欧文字の二段の構成よりなるから、本件商標とは欧文字を含む点において文字種も相違するものである。
さらに、本件商標と引用商標の片仮名部分を比較しても、両者は「オリーブ」及び「ソムリエ」の文字を前半部分と後半部分に有する点で共通するものの、中間部分における「オイル」の文字の有無において相違する。
そうすると、この差異が両商標の外観全体の視覚的印象に与える影響は小さいものとはいえず、これらを離隔的に観察しても、外観上、相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。
(イ)称呼について
本件商標より生じる「オリーブソムリエ」の称呼と、引用商標より生じる「オリーブオイルソムリエ」の称呼は、中間部分における「オイル」の音の有無において相違し、この差異が称呼全体に与える影響は少なくなく、これらをそれぞれ一連に称呼しても語調、語感が相違し、称呼上、相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。
(ウ)観念について
本件商標と引用商標は、いずれも特定の観念を生じないから、観念において比較することができない。
(エ)以上から、両商標は、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において判別及び聴別は容易であり、記憶される印象は異なるものとなるから、時と所を異にして離隔的に観察しても、出所の誤認を生じるおそれのない非類似の商標といえる。
(2)小括
以上のとおり、本件商標と引用商標は、互いに紛れるおそれのない非類似の商標であるから、本件請求役務と引用商標の指定役務が同一又は類似する役務であるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第15号について
(1)引用商標の周知性
上記2(2)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されていたと認めることはできないものであり、周知性が高いとはいえない。
(2)本件商標と引用商標の類似性の程度
本件商標と引用商標は、上記3(1)ウのとおり、外観、称呼及び観念を総合して考察すれば、記憶される印象において異なる別異の商標であるから、その類似性の程度は低い。
(3)引用商標の独創性の程度
引用商標は、成語である「オリーブオイル(Olive Oil)」と「ソムリエ(Sommelier)」の語を結合し、「オリーブオイルソムリエ」及び「Olive Oil Sommelier」と二段に表示したにすぎないことに加え、飲食料品等を取り扱う業界において、ワイン以外のソムリエについても、「○○ソムリエ」(「○○」の部分には、例えば、「野菜」、「味噌」等の普通名称が入る。)と称した民間資格が散見され、単に商品名称と「ソムリエ」の文字を結合したにすぎないものと認識されることからすれば、引用商標は独創性の程度が高いとはいえない。
(4)本件商標の指定役務と請求人の業務に係る役務との関連性並びに取引者及び需要者の共通性について
本件商標の指定役務中、本件請求役務と引用商標の指定役務は、役務の提供の手段、目的、業種等を一部同じくする同一又は類似の役務であり、その関連性は高いといえるとともに、取引者及び需要者の範囲も一致する。
(5)出所の混同のおそれについて
上記(1)ないし(4)を総合的にみれば、本件商標に係る指定役務中、本件請求役務と請求人の業務に係る役務の関連性は高く、その需要者等の範囲を共通にするものであるとしても、引用商標は、請求人の業務に係る役務を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者・需要者の間に広く認識されていたものとは認めることができず、本件商標と引用商標とは、類似性の程度が低いものであって、かつ、引用商標の独創性も高いとはいえない。
そうすると、本件商標権者が本件商標をその指定役務について使用しても、取引者、需要者は、その役務が他人(請求人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、役務の出所について混同を生ずるおそれはない。
(6)小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
5 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項第1号の規定により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-890075