商標無効審判
2023-890074
アフリ
- 審判番号
- 2023-890074
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 商願2022-050962
- 登録番号
- 6609896
- 請求日
- 2023年09月21日
- 審決日
- 2025年05月28日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】吉川醸造 株式会社
- 【請求人代理人】浅野 響
- 【請求人代理人】高瀬 亜富
- 【請求人代理人】市橋 景子
- 【被請求人】AFURI 株式会社
- 【被請求人代理人】橘 哲男
- 【被請求人代理人】佐藤 大輔
- 審判長/審判官
- 審判長 高野 和行
- 審判官 板谷 玲子
- 審判官 高橋 幸志
- 分類
- T111 .13 -ZC (W3233) / T111 .21 -ZC (W3233) / T111 .22 -ZC (W3233) / T111 .23 -ZC (W3233) / T111 .261-ZC (W3233) / T111 .262-ZC (W3233) / T111 .263-ZC (W3233) / T111 .272-ZC (W3233)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法3条1項3号商標法4条1項6号商標法4条1項7号商標法4条1項8号商標法4条1項11号商標法4条1項16号商標法46条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号、商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項第8号、商標法第4条第1項第16号、商標法第4条第1項第6号、商標法第4条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第6609896号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
登録第6609896号の指定商品中、第32類「ビール」、第33類 「全指定商品」についての登録を無効とする。
その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。
審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6609896号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおり「AFURI」の欧文字及び「阿夫利」の漢字を上下二段に横書きした構成からなり、令和4年5月6日に登録出願、第32類「ビール,清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,ビール製造用ホップエキス,乳清飲料」及び第33類「清酒,焼酎,合成清酒,白酒,直し,みりん,洋酒,果実酒,酎ハイ,中国酒,薬味酒」を指定商品として、同年8月19日に登録査定、同年9月2日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
本件審判請求人(以下「請求人」という。)が、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録第4651814号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおり「阿夫利大山」の漢字を縦書きした構成からなり、平成14年7月10日に登録出願、第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」を指定商品として、平成15年3月7日に設定登録されたものであり、現に有効に存続しているものである。
第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は本件審判被請求人(以下「被請求人」という。)の負担とする、との審決を求め、その理由を審判請求書及び弁駁書において、要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第80号証(枝番号を含む。以下、枝番号の全てを引用するときは、枝番号を省略して記載する。甲第42号証、甲第58号証及び甲第63号証は欠番。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、商標法第3条第1項第3号、及び同法第4条第1項第16号、同項第6号、同項第11号、同項第7号及び同項第8号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定により、無効とすべきである。
2 商標法第3条第1項第3号又は同法第4条第1項第16号の該当性
(1)商標法第3条第1項第3号に該当するものであること
ア 本件商標は、「阿夫利」の漢字部分と、その読みをローマ字表記した「AFURI」の部分とで構成されているものであること
本件商標は、「AFURI」のローマ字と「阿夫利」の漢字が二段に分けて表記されている。
「AFURI」のローマ字の称呼は「アフリ」であり、「阿夫利」の漢字も普通に読めば「アフリ」、「アブリ」との称呼が生じる。そして、我が国では、漢字の読みを記載する場合、当該漢字の上に同一の称呼が生じるローマ字又は平仮名を記載することが通常の取引において行われている。そのため、本件商標に接した取引者・需要者は、上段の「AFURI」が下段の「阿夫利」の読み方を記載したものであると認識することが自然である。
また、被請求人は、本件商標の出願の前後において、「AFURI」及び「阿夫利」を構成要素とする商標を出願し(甲2)、本件商標の出願前から、自身の経営するラーメン店において、「阿夫利」を「AFURI」のローマ字とともに使用している(甲3、甲4)。
これらの事情から、本件商標のうち、「AFURI」のローマ字は「阿夫利」の漢字の読み方を表記したものであることは明らかである。
したがって、本件商標は、「阿夫利」の漢字部分と、その読み方を表記した「AFURI」のローマ字部分とで構成されるものである。
イ 「阿夫利」は、神奈川県伊勢原市に位置する大山の近郊地域の通称であること
(ア)神奈川県伊勢原市の大山に創建された大山阿夫利神社への信仰が集まり、同神社が著名となっていったこと
神奈川県伊勢原市に位置する大山(おおやま)は、山上によく雲や霧が生じたことから、「あめふりやま」とも呼ばれていたところ、2200年以上前に、「あめふりやま」という言葉が転じた「阿夫利(あふり)」という名称を付した大山阿夫利(あふり)神社(旧名:阿夫利神社)が創建された(甲5)。大山阿夫利神社には大山近郊の地域住民の信仰が集まるとともに、江戸時代には「大山詣り」(鳶などの職人たちが巨大な木太刀を江戸から担いで運び、滝で身を清めてから奉納と山頂を目指すといった庶民参拝のこと。日本遺産に登録されている。)の一部として全国各地から年間20万人が参拝に訪れるようになり、信仰の対象として、著名となっていった(甲6。現在も大山阿夫利神社が著名であることは下記3及び5参照)。
(イ)「阿夫利」が大山の近郊地域の通称として定着していること
日本では、古来より人々の神社や仏閣への信仰が厚いことから、ある特定の神社が地域の信仰を集めはじめるとともに、地名として定着していくことがある。大山阿夫利神社についても同様であり、同神社が著名となっていくとともに、大山の近郊地域が「阿夫利」との通称で呼ばれるようになり、それが定着していった。また、大山の近郊地域に所在する学校の校歌、伊勢原市の市歌、PRソング等にも「阿夫利」の言葉が使用されている。そして、これらの使用は本件商標の登録査定日以前からである(甲8~甲10、甲26~甲30、甲69、甲70)。
(ウ)「阿夫利」の語は日常的に使用されていること
伊勢原市には、行政が建設した建造物、並びに、行政が管理する施設及び道路に、「阿夫利」の名称が付されたものが存在する。伊勢原市において株式会社中央不動産が管理するマンションには「ビューハイツ阿夫利」との名称が付されている(甲11の20、甲11の22、甲11の25、甲11の28、甲11の31)。
また、神奈川県厚木市在住のラッパーSALUは、「AFURI」との表題を付した楽曲を作成している(甲31)。
(エ)「阿夫利」の語の取引の場面における使用
「阿夫利」(大山) の近郊地域では、各種の土産物や特産品が生産・販売され、また各種の役務が提供されているところ、事業者は、同地域で生産・販売・提供等されていることを宣伝するために、商品名・サービス名等に「阿夫利」「あふり」又は「AFURI」の語を使用している(甲11の1~7、甲11の9、甲11の10、甲11の13、甲11の15、甲11の16、甲11の19、甲11の38、甲33、甲34、甲36)。
ウ 本件商標の指定商品においても、阿夫利山(大山)の近郊地域を表示するために「阿夫利」の文字が使用されていること
(ア)日本酒(第32類)
阿夫利山(大山)の近郊地域に存する有限会社遠州屋酒店(以下「遠州屋酒店」という。)では、約30年前から、「阿夫利」を含む名称を付した日本酒を、数多く販売している(甲37~甲39、甲40の1、甲41、甲80)。
(イ)ビール(第33類)
阿夫利山(大山)に位置する大山阿夫利神社が運営する「茶寮石尊」では、遅くとも2020年3月1日には、大山の近郊地域で生産されたビールを、「地ビール」として販売している(甲11の13、甲43の3)。
エ 「阿夫利」の欧文字表記が「AFURI」であること
(ア)「阿夫利」の欧文字表記が「AFURI」であることは広く知られていること
「阿夫利」の語の由来である大山阿夫利神社では、当該神社の英語名とし
て「OYAMA AFURI SHRINE」との語を使用している。すなわち、同神社は、「阿夫利」を「アフリ」と称呼するため、その欧文字表記として「AFURI」の語を使用している(甲44~甲46)。
そして、大山阿夫利神社の当該表記にならって、行政によるガイドブックでも、大山阿夫利神社(阿夫利神社)の欧文字表記を「Afuri」として
いる(甲47~甲50)。
さらに、阿夫利山(大山)の近郊地域の事業者も、「阿夫利」の欧文字表記として「AFURI」「afuri」又は「Afuri」の文字を使用しており、被請求人自身も、「阿夫利」の漢字とともに、その欧文字表記として「AFURI」を使用している(甲3、甲4、甲11の1、甲11の5、甲51)。
(イ)本件商標の指定商品において「阿夫利」の欧文字表記として「AFURI」の文字が使用されていること
大山の近郊地域に存する遠州屋酒店では、ラベルに「阿夫利」と付した日本酒を販売しており、その中には、「阿夫利」の読み方を「AFURI」と欧文字表記したものも存在する(甲40の1)。また、阿夫利山(大山)に位置する大山阿夫利神社が運営する「茶寮石尊」では、「阿夫利ビール」との名称の地ビールを販売しているところ、当該ビールのラベル側面では「AFURI」の欧文字を記載している(甲43の1)。
オ 指定商品の取引の実情を鑑みると、指定商品に「阿夫利」と付されている場合、取引者又は需要者は、同地域を産地、販売地等とする商品であると認識するにとどまること
(ア)日本酒取引においては、取引者又は需要者に産地又は販売地を訴求するために、産地又は販売地を表す名称を商品名とし、ラベルに表示することが広く行われていること
日本酒取引においては、「地酒」と呼ばれる日本酒が多く存在するように、取引者又は需要者の産地又は販売地への関心が高いことから、事業者は、取引者又は需要者に対してその産地又は販売地を訴求するために産地又は販売地を表す名称を商品名とし、ラベルに表示することを広く行っている(甲52)。
そのため、日本酒の取引者又は需要者は、商品名が特定の地域を意味する名称であり、ラベルにおいて表記されている場合、当該地域を生産地、販売地等とする日本酒であると認識する。
(イ)阿夫利山(大山)の近郊地域では、実際に日本酒の生産・販売が盛んに行われており、かつ、大山阿夫利神社の酒祭りが広く知られていること
「阿夫利」が示す阿夫利山(大山)の近郊地域は、水がきれいなことで知られており、数多くの日本酒(地酒)が生産され、また販売されている(甲37~甲40、甲53、甲54)。
そして、阿夫利山(大山)に位置する大山阿夫利神社が祭る「大山(おおやま)祇(つみの)大神(おおかみ)」は、酒造の神「酒解神(さけどけのかみ)」としても知られており、同神社では、1957年ころから毎年5月中旬~下旬ごろに、酒祭りを開催し、利酒会や日本酒試飲会を行っているところ、当該酒祭りは、伊勢原市の観光ガイドブックでも紹介されており、地域のイベントとして広く知られている(甲55~甲57、甲59)。
カ 本件商標に接した取引者又は需要者は、本件商標は「阿夫利」の文字の読み仮名を上段に記載しただけのものと認識するにとどまること
取引において、取引者又は需要者に商品名を訴求するため、商品名である漢字の読みを、当該漢字の上段又は近傍に、ひらがな、カタカナ又は欧文字で記載することは、通常良く行われていることである。そして、日本酒取引においても例外ではなく、商品のラベルにおいて、商品名となる漢字の上段又は近傍に当該漢字の読み仮名を欧文字表記している例が数多く存在する(甲52の1~甲52の8)。
キ 本件商標は、その指定商品又は指定役務が、「阿夫利」の地域において生産若しくは販売されている商品又は提供されている役務であることを普通に用いられる方法で表示するものであること
本件商標は「阿夫利」の漢字部分と、その読み方を表記した「AFURI」のローマ字部分とで構成されているものである。そして、「阿夫利」とは、大山の近郊地域での通称である。そうすると、本件商標に接した取引者・需要者は、本件商標が付された商品又は役務を、「阿夫利」の地域で生産若しくは販売されている商品又は提供されている役務と認識するものである。
被請求人においても、本件商標のもとで提供する商品(ラーメン)を、「阿夫利」の地域に由来する商品又は役務であることを宣伝している(甲4の2)。
したがって、本件商標は、大山の近郊地域「阿夫利」において生産若しくは販売されている指定商品又は提供されている指定役務に用いられている場合、当該地域が産地、販売地又は提供場所であることを普通に用いられる方法で表示するものである。
ク 仮に、「阿夫利」が専ら「阿夫利山」を表す語であるとしても、本件商標が商標法第3条第1項第3号に該当することは変わらない。また、観光名所・山岳等の名称についても商標法第3条第1項第3号該当性が認められる(甲60)。
ケ 小括
よって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものである。
(2)商標法第4条第1項第16号に該当するものであること
ア 本件商標が「阿夫利」地域で生産若しくは販売されていない指定商品に使用された場合、その品質を誤認するものであること
本件商標は「阿夫利」の漢字部分と、その読み方を表記した「AFURI」のローマ字部分とで構成されるものであり、「阿夫利」とは、大山の近郊地域の通称であるため、本件商標に接した取引者・需要者は、本件商標が付された商品又は役務を、「阿夫利」の地域で生産若しくは販売されている商品又は提供されている役務であると認識するものである。
そのため、本件商標が「阿夫利」の地域で生産若しくは販売されていない商品又は提供されていない役務に使用された場合、当該標章に接した取引者・需要者は、当該地域で生産若しくは販売されている商品であると誤認する。
イ 小括
したがって、本件商標は、「阿夫利」の地域で生産若しくは販売されていない指定商品又は提供されていない指定役務に使用された場合、「商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標」に該当し、その登録商標は商標法第4条第1項第16号に該当するものである。
3 商標法第4条第1項第6号の該当性
(1)大山阿夫利神社が「公益に関する団体であって営利を目的としないもの」に該当すること
大山阿夫利神社は、2200年以上前に創建された神奈川県伊勢原市の大山に鎮座する神社であり(甲5)、宗教の教義をひろめ、儀式行事を行い、及び信者を強化育成することを主たる目的とするもので、礼拝の施設を備える団体である宗教団体であり、営利を目的とするものではない。
したがって、大山阿夫利神社は「公益に関する団体であって営利を目的としないもの」に該当する。
(2)「阿夫利神社」の標章が、大山阿夫利神社を表示する「著名」な標章であること
大山阿夫利神社は、旧名を「阿夫利神社」といい、2200年以上前に創建され、延長5年(927年)に作成された延喜式神名帳に記載されているほど、歴史が長く社格の高い神社である(甲12)。同神社は、遅くとも、延長5年(927年)から「阿夫利神社」と呼ばれており、現在も、同神社は、境内で販売する御守りに「阿夫利神社」と付し(甲13)、ウェブサイトにも「阿夫利神社の神楽舞」と表記し(甲5)、同神社の公式Instagramにおいて、その投稿に「#(ハッシュタグ)阿夫利神社」と付すなどして、「阿夫利神社」の標章を、大山阿夫利神社を表示するものとして積極的に使用している(甲14)。
また、同神社は、日本遺産に登録されている「大山詣り」の構成要素の一部であり、江戸時代には全国各地から年間20万人が参拝に訪れるようになるほど著名な神社であり(甲6)、あらゆる祭事等において「阿夫利神社」の標章を使用して、同標章の広告を行っている。また、神社仏閣に関する雑誌、書籍、ウェブサイト等において紹介された回数は、数えきれないほどである(甲15、甲16)。その中には、大山阿夫利神社を「阿夫利神社」と記載して紹介する書籍、SNS等も多数存在する(甲17~甲20、甲65、甲66)。
その結果、「阿夫利神社」の標章は、大山の近郊地域の住民だけでなく、「大山阿夫利神社」を表示する標章として、全国的に広く知られることとなった。
したがって、「阿夫利神社」の標章は、大山阿夫利神社を表示する「著名」な標章である。
(3)本件商標は、「阿夫利神社」の標章と類似すること
ア 本件商標と「阿夫利神社」標章の要部
本件商標は、「阿夫利」の漢字部分と、「AFURI」のローマ字部分とが二段に分けて記載されているところ、上段の「AFURI」は下段の「阿夫利」の読み方を記載したものであるとして分離して観察されることが自然であるため、両者は不可分一体に結合しているものではない。さらに、「AFURI」のローマ字部分は「阿夫利」の漢字の読み方をローマ字表記しただけのものであるから出所識別機能としての称呼、観念が生じない一方で、「阿夫利」の漢字部分は、他に類をみない漢字であり、「アフリ」との称呼を有する単語として通常用いられているものは存在しないため(甲25)、本件商標のうち「阿夫利」の漢字部分を要部として抽出して類否を判断することが相当である。
また、「阿夫利神社」の標章において、「神社」の部分は神を祀る建物・団体等を示す一般的な名称であるため、出所識別標識としての称呼、観念が生じない。その一方で、「阿夫利」の部分は、上記同様の理由により、出所識別機能として強く支配的な印象を与える。そのため、「阿夫利神社」の標章は、「阿夫利」を要部として抽出して類否を判断することが相当である。
したがって、本件商標の要部である「阿夫利」の漢字部分と、「阿夫利神社」の標章の要部である「阿夫利」とを比較して類否判断を行うべきである。
イ 本件商標と「阿夫利神社」標章が類似すること
本件商標の要部である「阿夫利」の漢字部分と、「阿夫利神社」の標章の要部である「阿夫利」は、同一の漢字で構成されており、称呼はどちらも「アフリ」である。また、「阿夫利」は大山阿夫利神社の著名な標章の一部であることから、どちらからも大山阿夫利神社という観念が生じる点で共通する。
したがって、本件商標の要部である「阿夫利」の漢字部分と「阿夫利神社」の標章の要部とは、外観、称呼及び観念が一致しているため、本件商標は、「阿夫利神社」の標章と類似する商標である。
(4)小括
よって、本件商標は、大山阿夫利神社という「公益に関する団体であって営利を目的としないもの」を表示する「阿夫利神社」という著名な標章と類似する商標に該当するから、商標法第4条第1項第6号に該当するものである。
4 商標法第4条第1項第11号の該当性
(1)本件商標は引用商標と類似する商標であること
ア 引用商標の要部
引用商標は、「阿夫利」の部分と「大山」の部分とで構成されるところ、どちらも筆文字での連続した縦書き表記であることから、外観上は一体のものともいえるが、「大山(おおやま)」の部分は、「大きな山。また、山の美称」という意味の単語、「神奈川県中部にある山」の名称、又は「姓氏の一つ」であり、また、「大山」から始まる語も多く存在することから(甲24)、取引者・需要者において、商品・役務を問わず、通常よく用いられる単語であるため、独立して自他商品の出所識別標識としての称呼、観念が生じない。
一方、「阿夫利」の部分は、他に類をみない漢字で構成されており、「アフリ」との称呼を有する単語として通常用いられているものは存在せず(甲25)、本件商標の指定商品の取引においても用いられていないため、取引者、需要者に対して出所識別標識として強く支配的な印象を与える部分である。
したがって、本件商標と引用商標との類否判断を行う際には、引用商標の要部である「阿夫利」の部分を抽出して類否判断することが相当である。
イ 本件商標と引用商標の要部は外観、称呼及び観念が共通すること
本件商標の要部である「阿夫利」の漢字部分と、引用商標の要部である「阿夫利」は、同一の漢字で構成されており、称呼はどちらも「アフリ」である。また、「阿夫利」は大山阿夫利神社の著名な標章の一部又は著名な略称であることから、どちらからも大山阿夫利神社という観念が生じる点で、共通する。仮に、「阿夫利」が大山阿夫利神社の著名な標章の一部でもなく、その著名な略称でもない場合は、特段の観念が生じない点で共通する。
したがって、本件商標の要部である「阿夫利」の漢字部分と引用商標の要部とは、外観、称呼及び観念が共通するため、本件商標は、引用商標と類似する商標である。
(2)本件商標の指定商品と引用商標の指定商品は同一又は類似であること
本件商標の指定商品中、第33類の指定商品と引用商標の指定商品とは、いずれもアルコール飲料であり、同一又は類似であることは明らかである。
そして、本件商標の指定商品中、第32類の指定商品は、いずれも飲料であるところ、アルコール飲料を製造又は販売する事業者がその他の飲料も製造又は販売することは通常の取引において行われているものであり、アルコール飲料とその他の飲料に同一又は類似の商標を使用した場合、同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがある。そのため、本件商標の指定商品中、第32類の指定商品と引用商標の指定商品とは、類似する商品である。
したがって、本件商標の指定商品は引用商標の指定商品と同一又は類似である。
(3)小括
よって、本件商標は、その出願日前に登録された引用商標と類似する商標であって、引用商標に係る指定商品と同一又は類似する商品に使用するものに該当し、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
5 商標法第4条第1項第7号の該当性
(1)本件商標は、登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないものである。
ア 「阿夫利」の地名、及び「大山阿夫利神社」ないし「阿夫利神社」の名称を独占する目的での出願であること
本件商標は、「阿夫利」の漢字部分と、その読み方をローマ字表記した「AFURI」の部分とで構成される。そして、被請求人は、「AFURI」(商標登録第6245408号)や「阿夫利」(商標登録第6646765号)など、「阿夫利」という漢字、又は、これをローマ字表記した「AFURI」をその構成に含む商標権を、きわめて多くの指定商品・指定役務を対象にして、取得している(甲2)。
この「阿夫利」とは、上記2(1)イのとおり、神奈川県伊勢原市に位置する大山の近郊地域の通称であり、「大山阿夫利神社」を表示する標章の一部(要部)であり、また、同神社の指し示すものとして一般に受け入れられている略称である。そして、被請求人は、神奈川県伊勢原市に存する「大山(阿夫利山)」及び「大山阿夫利神社」の存在を知っている(甲4の2)。
それにもかかわらず、極めて多くの指定商品・指定役務を対象にして「阿夫利」に関する商標権を取得しようとする被請求人の行為は、実質的には、わが国において広く国民に親しまれてきた「阿夫利」の地名、及び「大山阿夫利神社」ないし「阿夫利神社」の名称を独占せんとするものといわざるを得ない。
さらに、被請求人は、本件商標の出願時から現在に至るまでの約2年の間、ラーメン店の経営、カップラーメンの販売、自社ECサイトでのオリジナル商品の販売というラーメンに関連する事業・業種しか行っておらず、その他の事業・業種を一切行っていない。そのため、本件商標の出願時に、被請求人が「AFURI」ブランドに基づく事業・業種の拡大を具体的に見据えていたとは到底考えられない。本件商標以外の商標登録及び商標登録出願についても同様である。
被請求人は、事業・業種の拡大を具体的に見据えていたわけではないにもかかわらず、被請求人以外の事業者による「阿夫利」又は「AFURI」を構成要素とする商標の出願を阻止し、これを独占せんとする目的で、これまでの出願を行ったものである。
イ 他の事業者の事業活動を妨げる目的での出願であること
被請求人は、日本国内の16店舗(そのうち12店舗が東京都内に存在。甲4の1)において、「ラーメン」の販売、又は「ラーメンの提供」を行っているが、他の事業を行っていない。しかし、被請求人は、「AFURI/阿夫利」(商標登録第5607839号)など、「阿夫利」という漢字、又は、これをローマ字表記した「AFURI」をその構成に含む商標権を、きわめて多くの指定商品・指定役務を対象にして取得している。
さらに、被請求人は、自身が展開していない事業、かつ、既に他の事業者が展開している事業であるにもかかわらず、きわめて多くの指定商品・指定役務について、「AFURI」や「阿夫利」を対象とする商標登録出願を繰り返している(甲2の7、甲2の10、甲11の10、甲11の13)。
この点に鑑みると、被請求人は、「阿夫利」の名称を独占しようという不当な意図とともに、他の事業者の事業展開を妨げる目的に基づき本件商標権を含む多数の商標権に関する登録出願を行ったものであると解さざるをえない。
なお、被請求人は、「被告以外の事業者に対してこれまで権利行使をした事実がないこと、先行の登録商標について何ら異議申立て等を行っていないことから、「阿夫利」商標を独占しようとする意図はないことは明らかである」と主張するが、今後、権利行使や異議申立て等を行う可能性は十分に存在する。
(2)小括
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。
6 商標法第4条第1項第8号の該当性
(1)本件商標は、大山阿夫利神社の著名な略称を含む商標であること
ア 「阿夫利」とは、大山阿夫利神社の著名な略称であること
上記3のとおり、大山阿夫利神社は、歴史が長く社格の高い神社であり(甲12)、日本遺産に登録されている「大山詣り」の構成要素の一部であり(甲6の2)、数多くの神社仏閣に関する書籍、業界紙やウェブサイト等において紹介され(甲15、甲16)、一般の需要者に著名な神社である(甲18~甲20)。
そして、「阿夫利(あふり)」という名称は、「あめふりやま」から由来するものであるが、非常に特殊な名称であり、他に類を見ない。
また、全国には、大山阿夫利神社の祭神を勧請した(分祀した)分社が存在し、これらの分社は「阿夫利」の語を名称に付すことによって、大山阿夫利神社の分社であることを示しており(甲21、甲22、甲67)、需要者も、大山阿夫利神社の分社であることを認識する。
したがって、「阿夫利」とは、大山阿夫利神社を指し示すものとして一般に受け入れられている略称であり、大山阿夫利神社の著名な略称に該当する。
イ 本件商標は「阿夫利」を含むものであること
本件商標は「阿夫利」の漢字部分と「AFURI」のローマ字部分から構成される商標であるところ、これは大山阿夫利神社の著名な略称である「阿夫利」と同一の漢字で構成されるものである。
(2)小括
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当するものである。
7 本件商標は被請求人の業務に係る商品・役務を表すものとして取引者・需要者の間で周知著名性を獲得していないこと
(1)被請求人の主張の位置づけが不明であること
本件商標は、第32類及び第33類を指定商品とする商標であり、「ラーメンの提供」という役務とは無関係である。
そのため、被請求人の述べる「ラーメンの提供」に関する本件商標の使用の主張は、本件無効審判においての法的な位置づけが不明である。
(2)本件商標の指定商品の取引において本件商標は周知著名ではないこと
ア 被請求人は、2023年8月ごろに、本件商標を付した日本酒について、被請求人の国内4店舗においてのみ提供し、2023年9月から被請求人の運営するECサイトにおいてのみ小売販売を始めたものであり、それ以前には国内において一切の取引を行っていない。
そのため、本件商標について、指定商品の取引者・需要者の信用が化体しているということはありえない。
イ ラーメン業界においても周知著名性を獲得していないこと
(ア)被請求人の日本国内の店舗数は僅かであり、シェアは極めて少ないこと
日本全国におけるラーメン店は2016年時点で18,041店舗であるところ(甲61)、同年度の被請求人がラーメンを提供する店舗(以下「被請求人店舗」という。)は3店舗であり、2016年時点の国内における被請求人の店舗が占める割合(シェア)は0.016%である。また、仮に、本件商標の登録査定時に日本全国のラーメン店の母数が変わらずに、被請求人店舗が15店舗に至ったとしても、その割合(シェア)は、わずか0.08%である。多数の競合企業が日本全国に存在するラーメン業界において、0.08%のシェアの店舗しか有さない被請求人及び被請求人店舗が使用する本件商標が周知著名であるはずがない。
(イ)外国の店舗数に関する主張にも理由がないこと
外国の店舗数に関する主張については、日本国内における引用商標の周知著名性の根拠となるのかが不明である。
この点は措くとしても、2018年時点でアメリカのラーメン店のみを見ても5000店舗を超えているところ(甲62)、同年度のアメリカにおける被請求人店舗の店舗数は3店舗であり、アメリカにおいて被請求人店舗が占める割合(シェア)は0.06%である。また、仮に、本件商標の登録査定時にアメリカでのラーメン店の母数が変わらなかったとしても、同時点での被請求人店舗の店舗数は変わらないため、その割合は0.06%である。
(ウ)以上のとおり、被請求人が主張する店舗数は、本件商標が周知著名性を獲得したことの根拠となりえない。
(エ)売上高・宣伝広告費は僅かであり、シェアも極めて少ないこと
日本全国におけるラーメン店の年間売上高は2016年の時点で約6千億円であるところ(甲61)、同年度の被請求人の売上高は約18億円であり、日本全国のラーメン店の売上高において被請求人店舗が占める割合(シェア)は0.3%である。また、仮に、本件商標の登録査定時に日本全国のラーメン店の売上高が変わらずに、被請求人の売上高(2020年で11億円)に至ったとしても、被請求人店舗の売上高(約10億円)が占める割合は、わずか0.18%程度である。多数の競合企業が日本全国に存在するラーメン業界において、0.3%ないし0.18%のシェアの売上高しか有さない被請求人が、周知著名であるはずがない。
また、宣伝広告費については、日本国内・外国いずれでの広告宣伝費であるのか、広告の方法・内容・数量などといった事情は明らかにならない。さらにいえば、実際に支払いがなされているのかも明らかでない。
(オ)テレビ番組等における紹介は、被請求人の主張にかかる事項のうち本件で考慮できるものはないこと
a 被請求人が主張するテレビ番組(乙8~乙12)は、本件商標の登録査定日前のものであるため、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、本件商標が周知著名であることの根拠となりえない。
b 被請求人の主張する、ウェブメディアやSNS等における被請求人店舗の紹介のほとんどは本件商標の登録査定日後のものであり、しかも何の証拠にも基づかないものである。
c 以上のとおり、被請求人が主張するテレビ番組やSNS等における紹介も、本件商標の周知著名性を基礎づける根拠にはなり得ない。
(カ)他業種とのコラボレーション等の事業の多角化
被請求人が共同開発したカップラーメンの販売数量、売上高、カップラーメンマーケットでのシェア等は全く不明であり、周知著名性の根拠とはなり得ない。
また、ECサイトにおける販売数量、売上高等についても全く不明である。
むしろ、上記(エ)の被請求人のシェアの低さからすると、極めて少数の販売数量、シェアしかない可能性が高い。
したがって、ここでの被請求人の主張も、周知著名性の根拠とはなりえない。
(キ)小括
よって、ラーメン業界においても、本件商標は被請求人の業務に係る商
品・役務を表すものとして周知著名性を獲得していない。
第4 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は、成り立たない、審判費用は請求人の負担とする旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第45号証を提出した。
1 商標法第3条第1項第3号及び同第4条第1項第16号の該当性
(1)本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当しないこと
ア 「阿夫利」は、神奈川県伊勢原市に位置する大山の近郊地域の通称ではないこと
(ア)神奈川県伊勢原市の大山に創建された大山阿夫利神社への信仰が集まり、同神社が著名となっていたとはいえないこと
請求人は、大山阿夫利神社について、その著名性の立証に必要な書証を一切提出していない。請求人が提出した甲第5号証、及び、甲第6号証からは大山阿夫利神社が著名であるとはいい難い。
(イ)「阿夫利」が大山の近郊地域の通称として定着していないこと
請求人が提出する甲各号証には、大山の近郊地域を「阿夫利」の通称で表現している箇所は一切見当たらない。そればかりか、「阿夫利」の語自体が「阿夫利山」や「阿夫利神社」などのように「山」や「神社」の語と結合して表記されているもの、「阿夫利山」を間接的に暗示するもの(甲8の2~甲8の6、甲9の2~甲9の4)、「大山(阿夫利山)の守り神」を意味するもの(甲9の1)であり、また、単にバンド名、楽曲名、歌詞の一部に「AFURI」や「あふり」、「阿夫利山」の語が表記されているに止まるもの(甲10)であって、どう善解しようともこれらの表記から「大山の近郊地域を意味する」ものであると読み取ることはできず、「阿夫利」が大山の近郊地域の通称として定着しているとすることはできない。
さらに、「阿夫利」の語自体は、「大山の近郊地域の通称」を表すものではなく、あくまで「阿夫利山」を間接的に暗示するとして表記されているものと認識、理解することが可能である。
なお、甲第11号証は、本件商標の登録査定日以降の書証であるため(甲3)、本件商標が自他商品識別力を有するとの特許庁の判断に影響を与えるものではない。
(ウ)「阿夫利」の語はあくまで「阿夫利山」を表す語であって、「大山の近郊地域の通称」を表す語ではないこと
日本全国の地名、山名、河川名等を収録した三省堂コンサイス日本地名辞典には、「阿夫利」の語について説明する箇所はなく、単に「あふり-やま」の欄に「雨降山・阿夫利山=おおやま(神奈川県)」の説明が付されているのみである(乙3)。さらに、岩波書店版広辞苑第7版によれば、「阿夫利」の語はそもそも掲載すらされていない(乙4)。
このような事実からも、上記(イ)のとおり「阿夫利」の語は「大山の近郊地域の通称」を指称する語ではなく、単に「阿夫利山」を間接的に暗示する語として用いられ、大山の周囲の地域在住の人々に理解されている語である、ということである。そもそも「近郊地域」とはどの地域を指称するのか必ずしも一義的な表現とはいい難く、位置関係が漠然、かつ、曖昧としている。
さらに、わが国の学校教育において使用されている地図には、「大山の近地域の通称」を指称するものとして「阿夫利」の語が掲載されているものは存在しない(乙5~乙7)。さらに、「阿夫利」の語は、原則的には「阿夫利山」や「阿夫利神社」といった他の語と結合した状態で用いられるのであって、仮に「阿夫利」の語単独で用いられる場合があったとしても、それは「阿夫利山」を間接的に暗示する語として用いられているものにすぎない。本件商標は、「阿夫利」のみならず「AFURI」のアルファベット文字も併記されていることを考慮すると、当該アルファベット文字及び漢字の各文字が「大山の近郊地域の通称」を指称する語として一般の取引者、需要者に対して理解、把握されるような事態はまずもって起こり得ない。
(エ)本件商標は、被請求人の業務に係る商品・役務を表すものとして取引者、需要者の間に広く用いられ、その結果周知著名性を獲得するに至っており、本件商標には商標法上保護されるべき多大な業務上の信用、グッドウィルが化体していること
a 被請求人及び被請求人が運営するラーメン店について
被請求人は、ラーメンを提供する店舗(被請求人店舗)を運営することを主な目的として、平成7年(1995年)11月に設立されたものである。
被請求人店舗は、平成13年(2001年)に被請求人店舗の総本店となる「ZUND-BAR」を神奈川県厚木市に出店したことを皮切りに、国内外で合計28店舗もの店舗数を数え、我が国におけるラーメン愛好家や老若男女を問わずあらゆる世代で被請求人が提供するラーメン(以下「被請求人ラーメン」という。)が受け入れられている。この点、我が国の市場のみならず海外市場においても一定の成功を収めているラーメンチェーンは極めて少数であり、このような事実から被請求人及び被請求人店舗は、日本を代表する有数のラーメンチェーンの一角を担っているものといわなければならない。特に近時は、被請求人が積極的な海外出店を展開したことも相侯って、被請求人に対する外国人観光客(インバウンド)の認知度が飛躍的に高まったことで外国人観光客からの絶大な支持を得るに至っている。
b 売上高及び宣伝広告費
次に、国内外の被請求人店舗における、平成29年ないし令和4年の売上高は、11億円ないし19億円、宣伝広告費は、680万円ないし2300万円である。
直近4年は新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けているものの、それにもかかわらず依然として常時安定的に10億円以上の売上を計上するものである。さらに、広告宣伝費についても、常時数百万円から昨年度は2000万円をゆうに超える宣伝広告費を計上しており、国内外における被請求人店舗の飛躍的な認知度拡大に多大な貢献をするものである。
c テレビ番組等における紹介
さらに、被請求人店舗は、近時のテレビ番組内における特集として紹介されている(乙8~乙12)。
これに加えて、テレビ局やもとより近年勢いが増すウェブメディアやSNSにおいても注目を集め、各方面のメディア露出を飛躍的に高めている。
このように、被請求人及び被請求人店舗は、各方面のメディア露出を飛躍的に高めており、その名声や高い評判が広く知れ渡っている。このことは、被請求人店舗がラーメン業界内を牽引するトップランナーであり、常に同業界を牽引する存在であることを端的に示す証左である。
そうすると、被請求人及び被請求人店舗の屋号を表す本件商標は、我が国におけるラーメン愛好家や老若男女を問わず、あらゆる年齢層の需要者や取引者の間で常に高い評価を得ており、その結果周知著名性を獲得するものであることは、もはや動かしようのない事実である。
d 他業種とのコラボレーション等事業の多角化
これまで述べたように、本件商標は周知著名性を獲得するものであるところ、その周知著名性を形成する業務上の信用やグッドウィル、ブランド資産を他の事業分野に展開すべく、平成27年(2015年)3月より日清食品株式会社との間でカップラーメンの共同開発を行い、現在に至るまで定期的に販売されている(乙13)。
さらに、被請求人は、自身が運営するECサイト上や他の事業者が運営するECサイト内に出店し、被請求人ラーメンの販売を行っており、このことは、業界内外で高い評価を得ている一因となっている。
e 小括
以上に述べたように、被請求人の長年の営業努力によって、本件商標は、多くの取引者、需要者から高い評価、絶大な支持を得るに至ったものである。そのため、本件商標は、我が国のみならず世界各国の取引者、需要者の間に広く認識されており、この周知著名性は現在もなお継続しているものといわなければならない。そのため、本件商標には商標法上保護されるべき多大な業務上の信用、グッドウィルが化体しているものといわなければならない。
イ 本件商標は、指定商品が「阿夫利」の地域において生産若しくは販売されている商品又は提供されている役務であることを普通に用いられる方法で表示するものではないこと
「AFURI」のアルファベット文字及び「阿夫利」の文字は、被請求人が提供する役務(主にラーメンの提供)を表示するものとして、取引者、需要者の間に広く知られている。すなわち、本件商標は周知著名性を獲得したものである。その結果、「AFURI」のアルファベット文字及び「阿夫利」の文字は、単に阿夫利山を間接的に暗示すると立ち位置を超越して、もはや被請求人が20数年間の営業努力や信用形成によって蓄積した「AFURI(阿夫利)」ブランドとして確立したものである。本件商標に接する取引者、需要者は、被請求人が確立した「AFURI(阿夫利)」ブランドを想起することは明らかである。さらに、「阿夫利」は「大山の近郊地域の通称」を指称するものではないため、請求人商品に接する取引者、需要者は、「阿夫利」の文字のみならず、「AFURI」のアルファベット文字をも産地表示であると直接的、かつ、一義的に看取させ得るものではない。
ここで、日本酒においては、日本酒そのものの産地ではなく、とかく原料となる米の産地が商品に表示される(乙14~乙18)。「阿夫利」の語が地名表示であるとするならば、「使用米」の産地表示としているはずである。
しかしながら、神奈川県海老名市、又は、同厚木市所在の酒造会社においては、自社が製造販売する日本酒に産地表示として「阿夫利産」なる標章を表示しておらず、自社商品の原料となる米には「神奈川県産」や「海老名市産」の表示を行っている点に鑑みれば、本件商標に接する取引者、需要者は、「阿夫利」の文字のみならず「AFURI」のアルファベット文字をも日本酒の産地表示であると認識、理解する余地はない。
そのため、本件商標は、その登録査定時において、日本酒の産地、販売地又は提供場所を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標に該当するものとは到底いい難く、自他商品識別力を有するものであるものといわなければならない。
ウ 以上に述べたとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第3号には該当しない。
(2)本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しないこと
ア 本件商標が「阿夫利」地域で生産若しくは販売されていない指定商品又は提供されていない指定役務に使用された場合、その品質を誤認するおそれはないこと
本件商標に接する取引者、需要者は、本件商標を日本酒の産地表示であると認識、理解する余地はない。「阿夫利」の文字は「大山の近郊地域の通称」を表す語ではなく、本件商標は「AFURI」も併記されていることから、本件商標の上記各文字に接する取引者、需要者は、「大山の近郊地域の通称」を想起することなど簡易迅速を旨とする現実の取引においては想定し難い。
そのため、本件商標は、仮に「阿夫利」地域で生産若しくは販売されていない指定商品又は提供されていない指定役務に使用された場合、その品質を誤認するおそれは全く無い。
イ 以上に述べたとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第16号には該当しない。
2 商標法第4条第1項第6号の該当性
(1)「阿夫利神社」の標章が、大山阿夫利神社を表示する「著名な標章」ではないこと
請求人が提出する甲各号証からは「大山阿夫利神社」は周知著名性を獲得しているものとはいい難い。さらに、正式名称「大山阿夫利神社」ではなく、その略称に過ぎない「阿夫利神社」の標章であれば、より一層一般の取引者、需要者における認知とはかけ離れているものといわざるを得ない。
(2)本件商標は、「阿夫利神社」の標章と類似しないこと
「阿夫利神社」の標章は、「阿夫利」の文字部分、及び、「神社」の文字部分を結合させた結合商標といえるものであるところ、本願商標の構成各部分においては特に軽重があるものとはいえないため、構成中の一部分である「阿夫利」の文字部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであると認められるともいい難く、また、構成中の他の部分である「神社」の文字部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められるような特段の事情が存在するともいい得ない。
そのため、本件商標と「阿夫利神社」標章の類否判断に際しては、「阿夫利神社」標章の構成中の一部である「阿夫利」の文字部分を抽出し、この一部だけを本件商標と比較してその類否を判断することは許されるべきではない。
そうすると、本件商標は「A」「F」「U」「R」「I」のアルファベット5文字及び「阿」「夫」「利」の漢字3文字よりなるものであり、一方、「阿夫利神社」標章は、「阿」「夫」「利」「神」「社」の漢字5文字よりなることから、両者が外観上において顕著に相違するものであることは明らかである。
さらに、本件商標より生ずる称呼は「アフリ」の3音であるのに対して、「阿夫利神社」標章より生ずる称呼は「アフリジンジャ」の6音であることから、音数や語韻語調が大きく異なるため、これらに接する取引者、需要者は、両者を明瞭、かつ、容易に聴別し得る。
また、本件商標は、「被請求人店舗の屋号である「AFURI」」及び「丹沢山系大山の通称「阿夫利山(雨降山)」の意味合いが生ずる。これに対して、「阿夫利神社」標章よりは「大山阿夫利神社」の意味合いが生ずることとなり、両者は観念上区別可能であることは明らかである。
したがって、本件商標と「阿夫利神社」標章とは、外観・称呼・観念のいずれの観点からも相紛れるおそれはなく、互いに類似する関係にはない。
(3)以上に述べたとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第6号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第11号の該当性
(1)「大山」(オオヤマ)の語は、「大きな山」、「姓氏の一つ」、「神奈川県中部にある山」の意味合いが生ずる(甲24)他、「大山」の語を(ダイセン)と称呼する場合には、「鳥取県西部にある複式火山」の意味合いが生ずる(乙33)。そのため、引用商標に接する取引者、需要者は、引用商標構成中の「大山」の文字部分については、「大きな山」程度の漠然、かつ、曖昧な意味合いを理解、認識することはあっても、当該部分を商品の産地表示であると直接的、かつ、一義的に理解、認識する余地はないものとするのが取引上自然である。
(2)引用商標は、「阿夫利」の文字部分、及び、「大山」の文字部分を結合させた結合商標といえるものであるところ、本願商標(審決注:「引用商標」の誤記と認める。)の構成各部分においては特に軽重があるものとはいえないため、構成中の一部分である「阿夫利」の文字部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであると認められるともいい難く、また、構成中の他の部分である「大山」の文字部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められるような特段の事情が存在するともいい得ない。
そうすると、これに接する取引者、需要者は、取り立てて引用商標の構成中の「阿夫利」の文字部分について要部と認識、理解するものではなく、あくまで原則どおり「阿夫利大山」の商標全体として認識、理解した上で取引に資するものといわなければならない。
(3)本件商標と引用商標とは互いに類似する関係にはないこと
このように、本件商標と引用商標の類否判断に際しては、引用商標の構成中の「阿夫利」の文字部分を抽出し、この部分だけを本件商標と比較してその類否を判断することは許されるべきではない。
そうすると、本件商標は「A」「F」「U」「R」「I」のアルファベット5文字及び「阿」「夫」「利」の漢字3文字よりなるものであり、一方引用商標は、縦書きで「阿」「夫」「利」「大」「山」の漢字5文字よりなることから、両者が外観上において顕著に相違するものであることは明らかである。
さらに、本件商標より生ずる称呼は「アフリ」の3音であるのに対して、引用商標より生ずる称呼は「アフリオオヤマ」又は「アフリダイセン」の7音であることから、音数や語韻語調が大きく異なるため、これらに接する取引者、需要者は、両者を明瞭、かつ、容易に聴別し得る。
また、本件商標は、「被請求人店舗の屋号である「AFURI」」及び「丹沢山系大山の通称「阿夫利山(雨降山)」」の意味合いが生ずる。これに対して、引用商標よりは何ら特定の観念が生ずるものではない。
したがって、本件商標と引用商標とは、外観・称呼・観念のいずれの観点からも相紛れるおそれはなく、互いに類似する関係にはない。
4 商標法第4条第1項第7号の該当性
(1)本件商標は、登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないものではないこと
ア 「阿夫利」の地名、及び、「大山阿夫利神社」ないし「阿夫利神社」の名称を独占する目的での出願ではないこと
そもそも、「阿夫利」の語は、「阿夫利山」を間接的に暗示する語であって、地名を表すものではなく、さらに、「阿夫利神社」の要部などではなく、「大山阿夫利神社」の略称でもない。
そればかりか、被請求人は、現在に至るまで20数年以上大切に培ってきた「AFURI(阿夫利)」ブランドを広く取引者、需要者に受け入れられるよう地道に努力を積み重ねてきたものである。そのため、本件商標に接する取引者、需要者は、第一次的には被請求人が20数年来大切に培ってきた「AFURI(阿夫利)」ブランドを想起、認識するものである。
被請求人が多くの指定商品・役務を含む商標登録を保有している理由は、「AFURI(阿夫利)」ブランドに基づく事業の拡大を見据えて、当該事業分野において、登録主義及び先願主義を採用するわが国における商標制度の下、必要に応じて登録出願を行い、商標登録を行った結果である。そのため、被請求人に「大山阿夫利神社」ないし「阿夫利神社」の名称を独占する目的があったものではない。
イ 他の事業者の事業活動を妨げる目的での出願ではないこと
被請求人は「AFURI」のアルファベット文字や「阿夫利」の文字からなる登録商標を現状では9件保有し、2件を登録出願するものである(乙23)。
しかしながら、これは上記アのとおり、事業拡大を見据えて登録出願し、登録をすることで権利化を図ってきた結果である。
この点、被請求人に、請求人が指摘するような「他の事業者の事業活動を妨げる目的」など微塵もなく、被請求人に無断で本件商標と同一又は酷似する標章を付した日本酒を製造販売する請求人を除いて、神奈川県海老名市及び同厚木市周辺に所在する事業者に対しては、これら複数の商標権に基づいて権利を行使した事実は存在しない。
さらに、特許庁においては、「阿夫利」の文字を含む登録例が多数存在するものであり、このことから、決して被請求人のみがみだりに「阿夫利」商標を独占しようとする意図はないことは明らかである。
このように、被請求人以外の他事業者保有に係る「阿夫利」を含む商標登録は多数存在している又は存在していたが、被請求人はこれらの先行商標の存在を尊重しており、これらの先行商標に対して何ら異議申立、無効審判、不使用取消審判等の無効、取消に関する手続に及んだ事実はないことはいうまでもない。これらの登録例の存在からも、被請求人はみだりに「阿夫利」商標を独占しようとする意図はないことは明らかである。
被請求人が、多くの商標登録を保有しているのは、前述のとおり「AFURI(阿夫利)」ブランドに基づく事業の拡大を見据えて、当該事業分野において、登録主義及び先願主義を採用するわが国における商標制度の下、必要に応じて登録出願を行い、商標登録を行った結果である。このような事実と「他の事業者の事業活動を妨げる」意図とを結びつけることはできないことは明らかである。
(2)以上に述べたとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第8号の該当性
(1)本件商標は、大山阿夫利神社の著名な略称を含む商標ではないこと
甲各号証のいずれからも「阿夫利」が「大山阿夫利神社」の略称であることは見出し難い。請求人自らが提出する甲第12号証ないし甲第14号証からも明らかなように、「大山阿夫利神社」の略称として表記されるのは「阿夫利神社」である。
そうすると、単なる「阿夫利」の語は「大山阿夫利神社」の略称ではないのだから、著名性はおろか一定程度の認知すら獲得していない。そのため、「阿夫利」の文字は「大山阿夫利神社」の著名な略称とはいい難い。
また、「阿夫利」の語は、単に「阿夫利山」を間接的に暗示するものに過ぎない。
そうすると、本件商標は、他人の氏名等の著名な略称を含むものではない。
(2)以上に述べたとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。
第5 当審の判断
請求人が本件審判を請求するにつき、利害関係を有する者であることについては、当事者間に争いがなく、また、当審は請求人が本件審判を請求する利害関係を有するものと認めるものであるので、以下、本案に入って審理する。
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、「AFURI」の欧文字と「阿夫利」の漢字を上下二段に横書きした構成からなるところ、上段の「AFURI」の文字は下段の「阿夫利」の読みをローマ字で表したとみるのが自然である。
そうすると、本件商標は、「AFURI」の文字部分及び「阿夫利」の文字部分がいずれも商品の出所識別標識としての機能を有するといえるものであるが、上段が読みを表した文字部分であることを考慮すると、「阿夫利」の漢字がこれに接する者により強い印象を与えるといえるものである。
そして、本件商標は、上段の欧文字をローマ字読みし、「アフリ」と称呼されるものであり、上段及び下段の文字がいずれも一般の辞書には掲載されていないから造語として認識、理解されるものである。
したがって、本件商標からは、「アフリ」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。
(2)引用商標について
引用商標は、別掲2のとおり、「阿夫利大山」の漢字を筆文字体で縦書きした構成からなるところ、これより生ずる自然な称呼は「アフリオオヤマ」である。
そして、「阿夫利大山」の文字は、一般の辞書には掲載されていないから造語として認識、理解され得るものであるが、職権調査によると、その構成中の「大山」の文字は、「神奈川県中部にある山。雨降(あふり)山。阿夫利山。」(コトバンク デジタル大辞泉「おおやま」の項参照)の意味を有することが認められ、また、「雨降山・阿夫利山」の文字は、「神奈川県丹沢地東南端、大山(おおやま)の異称。あふりさん。」(コトバンク 精選版日本国語大辞典参照)の意味を有することが認められる。
それを踏まえて、「阿夫利大山」の文字についてみるに、該文字は、「阿夫利」と「大山」の2語からなるものと理解、認識され、上述した「大山」の文字の持つ意味合いと、「阿夫利」の漢字を併せ勘案すると、「阿夫利大山」の文字からは、神奈川県丹沢地東南端、大山の異称である「阿夫利山」を想起させるものである。
してみると、引用商標は、その構成中、「阿夫利」の文字部分から一義的には特定の観念を生じないとしても、「大山」の文字部分との関係から、全体として「(神奈川県中部にある山)阿夫利山」の観念を生ずるものというのが相当である。
(3)本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標の類否を検討すると、両商標は、別掲1及び別掲2のとおりの構成からなるところ、本件商標は下段に「阿夫利」の文字を有し、引用商標は「阿夫利大山」であることから、「大山」の文字の有無及び読みを表した欧文字の有無で相違する。
そして、本件商標の下段の漢字部分と引用商標の前半部の漢字「阿夫利」は、横書きと縦書き及び書体の相違はあるものの、同じ漢字から構成されていることからすると、両者の外観には共通する部分があるといえる。
加えて、「阿夫利」の文字は、一般に採択使用されることが想定し難い文字列であること及び本件商標の構成中「阿夫利」が強い印象を与えるといえる部分であることなどを踏まえると、本件商標と引用商標とは、互いに関連性があると想起される場合も少なくないといえるから、外観上、一定の類似性を有する。
次に、本件商標と引用商標から生ずる称呼について比較するに、両者は、「オオヤマ」の音の有無で相違するから、全体の称呼においては同一ではないとしても、称呼における識別上、極めて重要な語頭において、「アフリ」の称呼を共通にするものである。
さらに、本件商標と引用商標の観念についてみるに、本件商標は特定の観念を生じず、一義的には両者の観念を比較することはできないものであるが、構成中の「阿夫利」の文字が、大山の異称である「阿夫利山」の「山」を除いた部分にあたるものであり、他方、引用商標を構成する、「阿夫利大山」の文字からは、上述のとおり「阿夫利山」を想起させるものである。
そして、両商標に共通する「阿夫利」の文字が一般に採択使用されることが想定し難い文字列であることも考慮すると、「阿夫利」の文字より直ちに特定の意味合いが生じないとしても、両商標に接する者に、特徴的な「阿夫利」の文字を有する商標であるとの共通の印象を与え、該文字から漠然と「阿夫利山」を暗示的に看取し得るものといえる。
以上のことを踏まえ、本件商標と引用商標の取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考慮すれば、両商標は、互いに紛れるおそれのある類似の商標というのが相当である。
(4)本件商標に係る指定商品と引用商標に係る指定商品の類否について
本件商標の指定商品中、第32類「ビール」及び第33類「全指定商品」(以下「無効対象指定商品」という場合がある。)は、引用商標の指定商品である、第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」と同一又は類似の商品である。
しかしながら、本件商標の指定商品中、第32類「清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,ビール製造用ホップエキス,乳清飲料」は、引用商標の指定商品と同一又は類似の商品であるとは認められない。
(5)小括
以上のとおり、本件商標は、引用商標に類似する商標であり、かつ、本件商標の指定商品中「無効対象指定商品」は、引用商標の指定商品と同一又は類似の商品であるから、本件商標は、無効対象指定商品について、商標法第4条第1項第11号に該当する。
そして、本件商標と引用商標とが類似する商標であるとしても、本件商標の指定商品中、第32類「清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,ビール製造用ホップエキス,乳清飲料」と引用商標の指定商品とは同一又は類似の商品ではないから、本件商標はその指定商品中の第32類「清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,ビール製造用ホップエキス,乳清飲料」については、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
(1)請求人は、「本件商標は、大山の近郊地域「阿夫利」において生産若しくは販売されている指定商品又は提供されている指定役務に用いられている場合、当該地域が産地、販売地又は提供場所であることを普通に用いられる方法で表示するものであるから、その商標登録は商標法第3条第1項第3号に該当するものであり、また、本件商標は、「阿夫利」の地域で生産若しくは販売されていない指定商品又は提供されていない指定役務に使用された場合、「商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標」に該当し、その商標登録は商標法第4条第1項第16号に該当するものである旨主張している。
(2)しかしながら、本件商標は、別掲1のとおり「AFURI」の欧文字と「阿夫利」の漢字を上下二段に横書きした構成からなるところ、その構成中の「阿夫利」の文字が、神奈川県伊勢原市に所在する店舗等の名称の一部として使用されていたり、同市に所在する学校の校歌の歌詞の一部等に使用されていること等が認められるものの、単独で地名などを表すものとして用いられている事実、及びそれが商品の品質、内容などを表したものと認識させるというべき事実を示す証拠の提出はなく、また、それらを認めるに足る事情も見いだせない。
そうすると、本件商標は、これをその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者をして、商品の品質、内容などを表示したものと認識させることのないものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当しない。
また、本件商標は、上述のとおりその指定商品の品質、内容などを表示したものと認識させることのないものであるから、これをその指定商品に使用しても商品の品質の誤認を生ずるおそれのないものというべきである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第16号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第6号該当性について
請求人は、「本件商標は、大山阿夫利神社という「公益に関する団体であって営利を目的としないもの」を表示する「阿夫利神社」という著名な標章と類似する商標に該当し、その商標登録は商標法4条1項6号に違反する」旨主張している。
しかしながら、請求人が提出した証拠からは、「大山阿夫利神社」又は「阿夫利神社」の標章が、周知されるに至ったと認め得るような証拠は見いだせないから、本件商標は、公益に関する団体であって営利を目的としないもの又は公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であって著名なものということができない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第6号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第7号該当性について
商標法第4条第1項第7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は、商標登録を受けることができないと規定され、これに該当する商標には、「(a)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(b)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、(c)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(d)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(e)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである。」と判示されているところである(知財高裁平成17年(行ケ)第10349号 平成18年9月20日判決参照)。
これを本件についてみるに、本件商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるような構成態様ではないことは明らかである。
また、本件商標をその指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するということもできず、他の法律によってその使用が禁止されているものでもない。
さらに、請求人が提出した証拠及び主張を考慮しても、本件商標の登録出願の経緯が、社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に当たるということもできない。
加えて、請求人が提出した証拠及び主張からは、特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合に当たるということもできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第8号該当性について
(1)商標法第4条第1項第8号が、他人の肖像又は他人の氏名、名称、著名な略称等を含む商標は、その他人の承諾を得ているものを除き、商標登録を受けることができないと規定した趣旨は、人(法人等の団体を含む。以下同じ。)の肖像、氏名、名称等に対する人格的利益を保護すること、すなわち、自らの承諾なしにその氏名、名称等を商標に使われることがないという利益を保護することにあると解される(最高裁平成15年(行ヒ)第265号、最高裁平成16年(行ヒ)第343号参照)。
上記のとおり、他人の名称を含む商標について登録を受けることができないと規定する同号の趣旨は、当該他人の人格権を保護するという点にあるところ、同号が、他人の名称について著名性を要件としていないのに対し、他人の略称についてはこれを要件としているのは、略称については、これを使用する者がある程度恣意的に選択する余地があること、そして、著名な略称であって初めて名称と同様に特定人を指し示すことが明らかとなり、氏名と同様に略称が保護されるべきことによるものと解される。したがって、同号所定の他人の名称とは、使用する者が恣意的に選択する余地のない名称、すなわち、会社の商号など法令上の正式名称であるというべきである。(東京高裁平成13(行ケ)387、平成14年6月26日判決参照)
(2)これを本件についてみるに、請求人は、「本件商標は他人である大山阿夫利神社の著名な略称である「阿夫利」を含む商標に該当し、商標法4条1項8号に違反する。」旨主張しているが、「大山阿夫利神社」の正式名称については明らかにしていない。仮に、それが「宗教法人大山阿夫利神社」とすれば、「大山阿夫利神社」が、その略称ということになり、著名であることが必要となる。
しかし、請求人の提出した証拠からは、「大山阿夫利神社」が著名であると認めるに足りる証拠は見いだせず、また、「阿夫利」の文字が、「宗教法人大山阿夫利神社」の略称と認めるに足りる証拠、及び、該文字が著名であると認めるに足りる証拠も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。
6 まとめ
以上のとおり、本件商標は、その指定商品中、結論掲記の指定商品については、商標法第4条第1項第11号に該当することから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とし、その余の指定商品については、同法第3条第1項第3号、同法第4条第1項第6号、同項第7号、同項第8号、同項第11号及び同項第16号に該当しないことから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-890074