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商標無効審判

2023-890064

オービックファン、オルビックファン、オービック、オルビック、ファン、エフユウエヌ

審判番号
2023-890064
法域
商標
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
商願2021-144689
登録番号
6528526
請求日
2023年08月15日
審決日
2025年04月14日
公報発行日
2025年10月31日
結論
請求成立(無効)
当事者
  • 【請求人】株式会社 オービック
  • 【請求人代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
  • 【被請求人】リライアンス・コミュニケーションズ、エルエルシー
  • 【被請求人代理人】▲桑▼原 史生
  • 【被請求人代理人】浅見 浩二
  • 【被請求人代理人】山田 一範
審判長/審判官
  • 審判長 大橋 良成
  • 審判官 山田 啓之
  • 審判官 渡邉 あおい
分類
T111 .261-Z (W09) / T111 .262-Z (W09) / T111 .263-Z (W09) / T111 .271-Z (W09)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
商標法4条1項8号商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法46条1項
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第4条第1項第8号、商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号、商標法第46条第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の商標登録第6528526号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 商標登録第6528526号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 本件商標 本件登録第6528526号商標(以下「本件商標」という。)は、「ORBIC FUN」の文字を標準文字で表してなり、2021年(令和3年)5月20日にアメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条の規定による優先権を主張して令和3年11月19日に登録出願、第9類「スマートフォン」を指定商品として、同4年2月9日に登録査定、同年3月15日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 請求人が、本件商標の登録の無効の理由において引用する商標は、次の1から6のとおりであり(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)、これらの商標権は、いずれも現に有効に存続しているものである。 1 登録第2267160号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、昭和62年9月3日に登録出願、第11類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として平成2年9月21日に設定登録され、その後、指定商品については、同22年12月1日に第9類「電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具」を含む第7類から第12類、第17類及び第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされたものである。 2 登録第2267161号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、昭和62年9月3日に登録出願、第11類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として平成2年9月21日に設定登録され、その後、指定商品については、同22年12月1日に第9類「電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具」を含む第7類から第12類、第17類及び第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされたものである。 3 登録第3254140号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲3のとおりの構成からなり、平成6年4月8日に登録出願、「電気通信機械器具,電子応用機械器具およびその部品」を含む第9類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として同9年1月31日に設定登録されたものである。 4 登録第4585946号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲3のとおりの構成からなり、平成13年2月22日に登録出願、「電気通信機械器具,電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器むを含む)及びその他の電子応用機械器具及びその部品」を含む第9類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として同14年7月19日に設定登録されたものである。 5 登録第5252765号商標(以下「引用商標5」という。)は、別掲3のとおりの構成からなり、平成19年6月29日に登録出願、「電気機械器具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を含む第35類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として同21年7月31日に設定登録されたものである。 6 登録第5252768号商標(以下「引用商標6」という。)は、別掲4のとおりの構成からなり、平成19年6月29日に登録出願、「電気機械器具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を含む第35類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として同21年7月31日に設定登録されたものである。 第3 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証から甲第21号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同項第11号及び同項第15号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定によりその登録を無効とすべきものである。 2 本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する (1)本件商標の構成について 本件商標は、欧文字「ORBIC FUN」の標準文字からなるものであり、「ORBIC」と「FUN」との間には1文字分の空白がある。 「ORBIC」は、もともと特段の意味を有しない造語である(甲2-1)。 「FUN」は「楽しみ」等を意味する英語である(甲2-2)。 そして、本件商標全体として、まとまった意味合いが認識される熟語等ではない(甲2-3)。 引用商標「オービック」又は「OBIC」も造語であるが、「コトバンク」によれば「正式社名「株式会社オービック」。英文社名「OBIC Co.,Ltd.」。情報・通信業」という認識がされている(甲2-4)。 (2)本件商標の称呼について 本件商標全体「ORBIC FUN」からは「オービックファン」の称呼が生ずるが、「ORBIC」部分からは「オービック」の称呼が生ずる。 (3)引用商標の著名性について 「OBIC」及び「オービック」の文字からなる引用商標は、商品「コンピューターソフトウェア」等について、本件商標の出願時及び査定時において著名である。 ア 請求人による引用商標に関する宣伝等 (ア)テレビコマーシャル 2009年10月1日から2023年5月26日まで、「オービック」のロゴを表示し、著名なプロゴルファー青木功が出演するテレビコマーシャルを継続的に行ってきた(甲6)。 (イ)オービックシーガルズ 2003年からアメリカンフットボールチーム「オービックシーガルズ」として、全国リーグでの活動を続けていて、2021年「ライスボウル」で7年ぶりの日本一、2023年には4年ぶりのパールボウルで4連覇、9度目の優勝を果たしている。 多数の観客が来場する駅や、スタジアム看板、ユニフォーム等に「オービック」「OBiC7」が使用されている(甲7)。 (ウ)球場等の広告看板 東京ドーム、甲子園球場、横浜スタジアムのフェンス等に「オービック」の看板が掲げられている(甲8)。 (エ)新聞・雑誌広告 読売・朝日・毎日・日経等新聞、日経ビジネス等雑誌に「オービック」「OBIC」の広告を継続的に行っている(甲9)。 (オ)駅広告・自動車教習所関係広告 京橋駅(東京都)等で「オービック」の広告を行っている(甲10)。 雑誌「自動車学校」でも広告を行っている(甲11)。 (カ)御堂筋ビル 大阪市のオービック御堂筋ビルは、イベント等を開催し、地域ではよく知られた存在である(甲12)。 イ 紹介記事等 本件商標の出願日(優先日)から登録査定日までについて、引用商標「オービック」及び「OBIC」に関して、「コンピューターソフトウェア」等について、業界紙・一般紙でも「オービック」及び「OBIC」の文字を表示した商品が数多く露出し、それらの商品は好評を博し、ウェブ等の各種ランキングで上位を占める等、幅広い取引者・需要者に知られている。よって、本件商標の出願時点から登録査定時に至るまで、「オービック」及び「OBIC」は信用が蓄積されたブランドとして認められており、その商品に表示されている「オービック」及び「OBIC」の文字からなる商標は著名商標であるということができる(甲13)。 ウ ブランドランキング・ブランドシェア等 矢野経済研究所によれば、OBIC7は、年商500億円の中堅・中小企業向けERP(経営資源管理)パッケージのライセンスについて、2017、18、19年の売上高がそれぞれ13,929;14,196;15,456百万円、シェアが22.4;21.8;22.5%とトップである(2019年は見込)(甲14-1)。 ミック経済研究所によれば、中堅企業向けERPパッケージの出荷金額・シェアについて、「オービック」の2017~20年の売上高がそれぞれ38,440;42,600;46,200(見込);49,000(推定)百万円で、2017~19年のシェアが24.8,24.9,25.1%とトップである(2019年は見込)(甲14-2)。 エ 防護標章登録 片仮名「オービック」の文字からなる登録第3017459号商標について最初の防護標章登録が令和2年に認められ(甲15-1)、著名商標としての地位をゆるぎないものとしている。 オ 不正競争事件に係る裁判所の認定 不正競争防止法に係る民事訴訟で、東京地方裁判所は、「オービック」及び「OBiC」の文字からなる標章を著名なものと認め、類似し、混同のおそれがあるものを使用する被告の行為を不正競争行為とし(平成19年5月31日判決。平成18(ワ)17357。甲16-1)、知的財産高等裁判所も同様に判断して控訴を棄却している(平成19年11月28日判決。平成19(ネ)10055。甲16-2)。これらの表示が著名であるという状態は、請求人が事業を継続しつつ業績を上げていることからも、現在まで続いていることは明らかである。 (4)本件商標の分離観察について 著名商標である「オービック」と同一の称呼を生じる「ORBIC」を一部に含む「ORBIC FUN」については、「ORBIC」部分が著名商標「オービック」「OBIC」を想起せしむるため、「FUN」部分に比べて極めて強い印象を与えるから、分離観察が許される。 (5)本件商標と引用商標との類否 本件商標については、「ORBIC」と「FUN」とに分離観察することが許される。 外観について、欧文字「OBIC」と「ORBIC」とは類似する。片仮名「オービック」と「ORBIC」とは外観が異なる。もっとも本件商標、引用商標とも記憶に残るような特徴のある外観を有するものではない。 称呼については「オービック」の称呼を共通にする。 観念について、「OBIC」「オービック」「ORBIC」はいずれも造語であって特段の観念を有さず、「FUN」は「楽しみ」程度の観念を有するものということができる。 以上により、本件商標の要部と引用商標とは、観念については比較することができず、外観において一部近似し、称呼において紛らわしいものである。 そして、「オービック」又は「OBIC」の文字からなる引用商標は著名であるが、印象的な外観を有するものとまではいえないから、需要者に与える印象や記憶については称呼によるものが大きい。 そうすると、「オービック」又は「OBIC」の文字からなる引用商標と、標準文字からなる本件商標とは、少なくとも外観の相違が称呼の類似性を凌駕するものとはいえない。 よって、本願商標は、引用商標の指定商品又は指定役務に類似する商品「スマートフォン」に使用した場合、商品の出所につき混同を生じるおそれのある類似の商標と判断するのが相当である。 (6)商品等の類否 本件商標の指定商品「スマートフォン」と引用商標の指定商品・指定役務とは同一又は類似するものである。 スマートフォンとこれらの商品・役務とは、「商品に同一または類似の商標を使用するとき同一営業主の製造または販売にかかる商品と誤認混同されるおそれのある商品」等であるからである(甲18)。 現に、スマートフォンを販売する企業は、売上台数順にアップル、シャープ、京セラ、FCNT、サムソン電子、ソニーグループ等であるが(甲20-1)、いずれも何らかのコンピューターソフトウェアを販売しているから、スマートフォンとコンピューターソフトウェアとは、同一又は類似の商標を使用するとき、同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認混同されるおそれがあることは明らかである。(甲20-2~甲20-7)。 (7)商標法第4条第1項第11号に関するまとめ 以上のとおり、本件商標は引用商標と類似する商標であり、かつ、その指定商品は、引用商標の指定商品及び指定役務と同一又は類似のものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当し、登録を無効とすべきものである。 3 本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する (1)引用商標の著名性について 商標「オービック」及び「OBIC」は「コンピューターソフトウェア」等について著名なハウスマークである。 (2)本件商標と引用商標との類似性 本件商標と引用商標は「オービック」の称呼を生ずる点が共通し、少なくとも類似性がないとまではいえない。 (3)商品等の類似性 本件商標の指定商品は引用商標の指定商品等と類似する。 また、本件商標の指定商品である「スマートフォン」を取り扱う企業において、コンピューターソフトウェアを取り扱う企業(グループ会社を含む)が少なからず存在する。 (4)請求人の国内グループ会社 請求人の国内グループ会社として、商号の一部に「オービック」を含むものが存在する(甲4-2)。よって、本件商標を需要者が目にした場合には、それが「株式会社オービック」及びその著名な「オービック」及び「OBIC」の文字からなるブランドに関連するものであると認識する。 (5)商標法第4条第1項第15号に関するまとめ 本件商標は「コンピューターソフトウェア」等につき著名な商標「オービック」及び「OBIC」と称呼において共通する「ORBIC」、及び相対的に識別力の弱い「FUN」からなる。 よって、本件商標を商標権者が使用すれば、請求人と少なくともいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれがある。 以上により、本件商標は商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものであり、その登録を無効とすべきものである。 4 本件商標は商標法第4条第1項第8号に該当する 「オービック」及び「OBIC」は著名商標であり、請求人の社名「株式会社オービック」及び英文社名「OBIC Co.,Ltd.」(甲4-2)の著名な略称に該当する。本件商標は、請求人の名称の著名な略称「オービック」及び「OBIC」に酷似するものを含む商標であるが、その使用について請求人の承諾を得ていない。 以上により、本件商標は商標法第4条第1項第8号の規定に違反して登録されたものであり、その登録を無効とすべきものである。 第4 被請求人の答弁 被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証を提出した。 1 商標法第4条第1項第11号該当の無効理由について 本件商標「ORBIC FUN」中の「ORBIC」は、請求人が主張するような「もともと特段の意味を有しない造語」ではなく、「球状の、輪状の、円形の」といった意味を持つ英単語である(乙1)が、本件商標の指定商品「スマートフォン」との関連においては特段の意味・観念を有しない。「FUN」についても、「楽しみ」などの意味を持つ英単語であるが、同様に、本件商標の指定商品「スマートフォン」との関連においては特段の意味・観念を有しない。本件商標全体としては、「球状の楽しみ」といった意味を想起させるとしても、同様に、本件商標の指定商品「スマートフォン」との関連において特段の意味・観念を有するものではない。してみれば、本件商標は、その指定商品「スマートフォン」との関連においては、「ORBIC FUN」全体として、特段の意味・観念を持たない一種の造語商標であると解すべきである。 本件商標からは、比較的短音数である「オービックファン」と一連によどみなく称呼され、本件商標は、その指定商品「スマートフォン」との関連においては、「ORBIC FUN」全体として、特別の意味・観念を持たない一種の造語商標であると解すべきであることからしても、いわゆる分離観察すべき理由は存在しない。したがって、分離観察を前提として本件商標の「ORBIC」部分から「オービック」の称呼が生ずるとの請求人の主張は失当である。 請求人は、甲第4号証から甲第16号証を挙げて、「引用商標は、商品「コンピューターソフトウェア」等について、本件商標の出願時及び査定時において著名である」ことを立証しようとしているが、その多くは、請求人が長い歴史の中で優れた業績を上げるまでに成長し、長い期間にわたって宣伝広告等を行ってきたこととあいまって、一般によく知られる企業になったことを示すにすぎず、必ずしも特定の商品との関連において引用商標が著名化していることを示すものではない。また、仮に著名化が認められるとしても、あくまでも会計を中心とするERPコンピューターソフトウェアについてであって、それ以外の商品について著名化していることを示す証拠は何ら提示されていない。すなわち、請求人による「コンピューターソフトウェア等」の「等」は、何ら証拠や根拠なくして著名性の対象商品を拡張しようとするものにすぎない。 なお、「スマートフォンとコンピューターソフトウェアとは、同一又は類似の商標を使用するとき、同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認混同される恐れがあることは明らかである」との請求人の主張は失当である。アップル社を筆頭とする大手スマートフォンメーカーが何らかのコンピューターソフトウェアをも販売していることが事実であるとしても、スマートフォンとコンピューターソフトウェアとでは一般に流通ないし販売経路が異なるから、必ずしも誤認混同を生ずる関係にあるとはいえない。また、請求人がコンピューターソフトウェアの製造販売を主たる業務内容とするものと認められるが、請求人がスマートフォンの分野に進出している事実は確認できないし、本件の審判請求に際して何ら証明もされていない。 請求人は、本件商標について、「「ORBIC」部分が・・・「FUN」部分に比べて極めて強い印象を与えるから、分離観察が許される」と主張するが、既述したように、本件商標は、その指定商品「スマートフォン」との関連においては、「ORBIC FUN」全体として、特別の意味・観念を持たない一種の造語商標として一体不可分であると解すべきであり、また、その構成や語感からして「ORBIC FUN」全体としてよどみなく一連に称呼されるから、分離観察すべき特段の事情は存在しない。 本件商標「ORBIC FUN」は、既述したように、「ORBIC」の部分も「FUN」の部分も、本件商標の指定商品との関係においては特段の意味・観念を持たないと解すべきであって、「ORBIC」の部分が「FUN」の部分と比べて出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものではないから、例外的に分離観察が許される場合には該当せず、原則にのっとって全体観察により商標の類否を判断すべきである。 請求人の主張には理由がなく、本件商標は、商標法第4条第1項第11号該当の無効理由を有しない。 2 商標法第4条第1項第15号該当の無効理由について 請求人は、商標「オービック」及び「OBIC」は「コンピューターソフトウェア等について著名なハウスマークである」と主張するが、これらが請求人の名称の著名な略称であることは認められるとしても、あくまでも会計を中心とするERPコンピューターソフトウェアについて使用されてきたものであって、それ以外の商品について著名化している事実は認められない。 請求人は、分離観察を前提として本件商標と引用商標が類似すると主張するが、本件商標は、その指定商品「スマートフォン」との関連においては、「ORBIC FUN」全体として、特別の意味・観念を持たない一種の造語商標であると解すべきであって、いわゆる分離観察すべきものではないから、全体観察の原則からして、引用商標とは非類似であり、商品の非類似性ともあいまって、本件商標を指定商品「スマートフォン」に使用しても、引用商標に係る営業主の商品と出所混同を生ずるおそれはない。 本件商標の指定商品「スマートフォン」と引用商標の指定商品・役務とは同一又は類似する旨主張するが、スマートフォンとコンピューターソフトウェアとは販売取引経路が異なるから、商標の非類似性ともあいまって、本件商標を指定商品「スマートフォン」に使用しても、引用商標に係る営業主の商品と出所混同を生ずるおそれはない。 請求人の主張には理由がなく、本件商標は、商標法第4条第1項第15号該当の無効理由を有しない。 3 商標法第4条第1項第8号該当の無効理由について 請求人は、「本件商標は、請求人の名称の著名な略称「オービック」及び「OBIC」に酷似するものを含む商標」であると主張するが、同号は「・・・含む商標・・・」が登録を受けることができないものであることを規定する。 「オービック」及び「OBIC」が請求人の名称の著名な略称であるとしても、本件商標「ORBIC FUN」はこれらを含まないから、「・・・これらの著名な略称を含む商標」には該当しない。 「OBIC」は、正にその表記とおりの文字列である「OBIC」として著名性を得ているとしても、その著名性が故に、異なる表記である「ORBIC」とは関連性がないものと認識されるから、本件商標の「ORBIC」から請求人の名称が客観的に把握されることはなく、請求人を想起・連想させるものでもない。 請求人の主張には理由がなく、本件商標は、商標法第4条第1項第8号該当の無効理由を有しない。 第5 当審の判断 1 請求人商標の周知著名性について (1)請求人の提出に係る証拠によれば、次の事実が認められる。 ア 請求人は、中小企業向けの「統合業務ソフトウェア」に、別掲3のとおりの構成からなる、「オービック」の文字からなる商標(以下「請求人商標1」という。)及び「OBiC7」又は「OBIC7」の文字からなる商標(以下「請求人商標2」といい、請求人商標1及び2を併せて「請求人商標」という。)を使用している(甲9、甲14等)。 イ 請求人商標を使用した「統合業務ソフトウェア」(以下「請求人商品」という。)は、中堅・中小企業向けERPパッケージのライセンス売上高シェアについて、2017年(平成29年)、2018年(平成30年)及び2019年(令和元年)(予測)において、売上高及びシェアがいずれもトップである(甲14)。 なお、ERPとは、「enterprise resource planning」の略語であって、「統合業務ソフト。財務や人事・顧客情報など企業の業務をサポートするシステム。」を意味する語である(株式会社三省堂発行「コンサイスカタカナ語辞典 第5版」)。 ウ 請求人は、2009年(平成21年)10月1日から2023年(令和5年)5月26日までの間に、請求人商標を表示したテレビCMを継続的に放送した(甲6)。 エ 請求人は、2004年(平成16年)2月1日から2023年(令和5年)1月31日まで東京ドームの放送室前フェンスに、2005年(平成17年)3月1日から2023年(令和5年)2月28日まで阪神甲子園球場の3塁側内野フェンスに、2015年(平成27年)3月1日から2022年(令和4年)12月31日まで横浜スタジアムの3塁側カメラマン席下1面に、それぞれ請求人商標1を表示した看板広告を掲示した(甲8)。 オ 請求人は、2013年(平成25年)1月1日から2023年(令和5年)6月23日まで、日本経済新聞及び読売新聞などの全国紙並びに日経ビジネス及び日経コンピュータなどの雑誌に、請求人商標を表示した請求人商品の広告を継続的に掲載した(甲9)。 カ 請求人は、銀座線京橋駅看板(甲10)及び雑誌「自動車学校」(甲11)にも、請求人商標を表示した請求人商品の広告を掲示又は掲載した。 キ 「株式会社YRK and」が発表した「昭和後期、平成、令和へと3時代を生き抜く企業の、ブランド力上昇ランキング」において、請求人は第4位に評価され(甲13-1)、「日経XTECH」のウェブサイトにおいてIT企業の収益力(売上高営業利益率)ランキングの首位として請求人が紹介され(甲13-2)、「日経業界地図2021年版」において請求人が「ERPソフト国内大手」として紹介されている(甲13-3)。 (2)判断 前記(1)で認定した事実によれば、請求人は、中小企業向けの「統合業務ソフトウェア」に請求人商標を使用しており、請求人商品は、中堅・中小企業向けERPパッケージのライセンス売上高シェアについて、2017年(平成29年)、2018年(平成30年)及び2019年(令和元年)(予測)において、売上高及びシェアがいずれもトップであり、また、2004年(平成16年)以降、請求人商標を表示した請求人商品の各種の広告が継続的に行われ、さらに、請求人のブランド力が高く評価されていることが認められる。 そうすると、請求人商標は、本件商標の登録出願時(優先権主張日)及び登録査定時において、請求人の業務に係る「統合業務ソフトウェア」を表示するものとして、需要者の間に広く認識されており、その周知著名性の程度は高いものと判断するのが相当である。 2 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標について 本件商標は、前記第1のとおり、「ORBIC FUN」の文字を標準文字で表してなるものであり、その構成からして、「ORBIC」の文字と「FUN」の文字とからなると容易に認識されるものである。 そして、「ORBIC」の文字(語)は、既存の語ではあるものの(乙1)、一般に親しまれた語とはいえず、他方、「FUN」の文字(語)は、「楽しみ」等を意味する一般に親しまれた語であるから(甲2-2)、両者に観念上のつながりはなく、他に両者を常に一体のものとして把握しなければならない特段の事情は見いだせない。 そうすると、本願商標の構成中「ORBIC」の文字部分と「FUN」の文字部分とは、これらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとは認められない。 また、前記1(2)のとおり、請求人商標は、請求人の業務に係る「統合業務ソフトウェア」を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものであるから、本件商標は、その構成中、請求人商標1及び請求人商標2の欧文字部分と同一の称呼を生じると認められる「ORBIC」の文字部分が取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものである。 してみると、本件商標は、その構成中「ORBIC」の文字部分を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することが許されるというべきである。 したがって、本件商標は、その構成中「ORBIC」の文字部分から「オービック」の称呼を生じるものであり、また、当該称呼は需要者の間に広く認識されている請求人商標1及び請求人商標2の欧文字部分と同一の称呼であり、当該称呼から請求人商標を認識させるから、請求人のブランドとしての観念を生じるものである。 (2)引用商標について 引用商標は、別掲1から4のとおり、「OBiC(OBIC)」若しくは「オービック」の文字又は両文字を2段に表した構成からなるものであり、それぞれの構成文字に相応して、「オービック」の称呼を生じるものであり、また、需要者の間に広く認識されている請求人商標1又は請求人商標2の欧文字部分からなるものであるから、請求人のブランドとしての観念を生じるものである。 (3)本件商標と引用商標との類否について 本件商標の構成中「ORBIC」の文字部分と引用商標とを比較すると、「ORBIC」の文字部分と「オービック」の文字からなる引用商標3から5との比較においては、欧文字と片仮名との文字種の違いから相違しているが、他の引用商標における「OBiC(OBIC)」の文字との比較においては、「O」及び「BIC(BiC)」の文字を共通にし、異なるところは2文字目の「R」の文字の有無のみであるから、外観において相紛らわしいものである。 また、称呼及び観念においては、本件商標の構成中「ORBIC」の文字部分と引用商標からは、いずれも「オービック」の称呼及び請求人のブランドとしての観念を生じるものであるから、称呼及び観念を共通にするものである。 そうすると、本件商標と引用商標との外観、称呼、観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合し、全体的に考察すれば、たとえ引用商標3から5との比較においては外観において相違するものの、他の引用商標との比較においては外観において相紛らわしいものであり、また、称呼及び観念においてはいずれも相紛らわしいことからすると、本件商標と引用商標とは商品の出所について誤認混同を生じるおそれのある類似する商標と判断するのが相当である。 (4)本件商標の指定商品と引用商標の指定商品との類否について 本件商標の指定商品は、前記第1のとおり「スマートフォン」であり、引用商標1及び2の指定商品中、第9類「電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具」、引用商標3の指定商品中「電気通信機械器具,電子応用機械器具およびその部品」、引用商標4の指定商品中「電気通信機械器具,電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器むを含む)及びその他の電子応用機械器具及びその部品」並びに引用商標5及び6の指定役務中「電気機械器具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と同一又は類似するものである。 (5)小括 以上により、本件商標は、引用商標に類似する商標であり、引用商標の指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品について使用をするものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。 3 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)本件商標と請求人商標との類似性の程度について 本件商標と請求人商標1とは、前記2(3)と同様の理由により、類似するものであるから、その類似性の程度は高いといえる。 また、請求人商標2は、前記1(1)アのとおり、「OBiC7」又は「OBIC7」の文字からなるものであり、「OBIC(OBiC)」の欧文字と「7」の数字とからなると容易に認識されるところ、数字それ自体は極めて簡単でかつありふれたものであるから、欧文字部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与え、出所識別標識としての要部となり得る。 そうすると、本件商標と請求人商標2との比較においても、前記2(3)と同様の理由により、類似するものであるから、その類似性の程度は高いといえる。 したがって、本件商標と請求人商標との類似性の程度は高いといえる。 (2)請求人商標の周知著名性及び独創性の程度について 前記1(2)のとおり、請求人商標の周知著名性の程度は高いものである。 また、請求人商標は、いずれも既存の語からなるものとは認められないから、その独創性の程度は高いといえる。 (3)本件商標の指定商品と請求人の業務に係る商品との間の関連性の程度並びに取引者及び需要者の共通性について 本件商標の指定商品は「スマートフォン」であり、請求人の業務に係る商品は「統合業務ソフトウェア」であるから、商品それ自体は異なるものの、いずれもコンピュータに関連する商品であるといえるため、その点において関連性があり、取引者及び需要者の共通性がある。 (4)混同のおそれについて 前記(1)から(3)によれば、本件商標と請求人商標との類似性の程度は高く、また、請求人商標の周知著名性及び独創性の程度は高く、さらに、本件商標の指定商品と請求人の業務に係る商品とは、いずれもコンピュータに関連する商品であるという点において関連性があり、取引者及び需要者の共通性がある。 そうすると、本件商標は、これを商標権者がその指定商品に使用するときは、請求人商標を連想又は想起し、当該商品が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係のある者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じるおそれのある商標というべきである。 (5)小括 したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標というべきであるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。 4 商標法第4条第1項第8号該当性について 請求人は、「オービック」及び「OBIC」は著名商標であり、請求人の社名「株式会社オービック」及び英文社名「OBIC Co.,Ltd.」の著名な略称に該当する旨主張している。 商標法第4条第1項第8号は、「・・・他人の・・・名称・・・又はこれらの著名な略称を含む商標・・・」と規定しているところ、仮に「オービック」又は「OBIC」が請求人の著名な略称であるとしても、本件商標は、「ORBIC FUN」の文字からなるものであるから、「オービック」又は「OBIC」の文字を含むものではない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。 5 まとめ 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第8号には該当しないが、同項第11号に該当し、仮に同号に該当しないとしても、同項第15号に該当するものであるから、その登録は、同項の規定に違反してされたものである。 したがって、本件商標の登録は、商標法第46条第1項により、無効とすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-890064

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