商標無効審判
2023-890062
ノクトア、ノクチュア、ノクツア、ノックトア、ノックチュア、ノックツア
- 審判番号
- 2023-890062
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 商願2022-013892
- 登録番号
- 6628861
- 請求日
- 2023年08月04日
- 審決日
- 2024年06月05日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ラスコム コンピュータディストリビューション ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
- 【請求人代理人】加藤 朝道
- 【被請求人】株式会社 宮川製作所
- 審判長/審判官
- 審判長 大橋 良成
- 審判官 大島 康浩
- 審判官 小林 裕子
- 分類
- T112 .25 -Y (W09) / T112 .271-Y (W09)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項10号商標法4条1項15号商標法46条1項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第10号、商標法第4条第1項第15号、商標法第46条第1項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第6628861号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6628861号商標(以下「本件商標」という。)は、「NOCTUA」の文字を標準文字で表してなり、令和4年2月8日に登録出願、第9類「有線通信機械器具,無線通信機械器具,無線応用機械器具,遠隔測定制御機械器具,音声周波機械器具,映像周波機械器具,電気通信機械器具の部品及び付属品,携帯情報端末,電子応用機械器具,入退室監視装置,測定機械器具」及び第38類「移動体電話による通信,テレックスによる通信,電子計算機端末による通信,携帯情報端末による通信,電話による通信,ファクシミリによる通信,無線呼び出し,電話機・ファクシミリその他の通信機器の貸与」を指定商品及び指定役務として、同年8月30日に登録査定、同年10月18日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
請求人の引用商標は、別掲又は「noctua」、「Noctua」、「NOCTUA」の文字からなり、「パソコン用の冷却ファン、CPUクーラー、冷却ファン用ケーブル、電源変換アダプタケーブル、延長ケーブル」等(以下「請求人商品」という。)に使用して、我が国及び外国の取引者及び需要者の間に広く認識されていると主張するものである。
第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の第9類の全指定商品について商標登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第14号証(以下「甲○」という。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同項第15号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効とすべきである。
(1)商標法第4条第1項第10号該当性について
ア 本件商標の説明
本件登録商標は、「NOCTUA」の殴文字を標準文字で書してなるものであり「ノクチュア」の称呼を生じ、コキンメフクロウの学名であるAthene noctuaに由来する観念を生ずる。
イ 引用商標の説明
引用商標は「noctua」、「Noctua」、「NOCTUA」の欧文字より「ノクチュア」の称呼を生じ、コキンメフクロウの学名であるAthene noctuaに由来する観念を生ずる。
ウ 商標の類否
本件商標と引用商標とは、「ノクチュア」の称呼が共通であるとともに、コキンメフクロウの学名であるAthene noctuaに由来する観念も共通であるので、同一又は類似のものである。
エ 商品の類否
本件商標に係る指定商品中の第9類「有線通信機械器具、無線通信機械器具、無線応用機械器具、遠隔測定制御機械器具、音声周波機械器具、映像周波機械器具、電気通信機械器具の部品及び付属品、携帯情報端末、電子応用機械器具、入退室監視装置、測定機械器具」は、引用商標に係る商品中の「冷却ファン、CPUクーラー、冷却ファン用ケーブル、電源変換アダプタケーブル、延長ケーブル」及び内蔵部品が用いられるとともに、類似群コード「09G04」、「11B01」、「11C01」、「11C02」に属するので、同一又は類似のものである。
オ 他人
引用商標使用者は、本件商標権者と同一人でなく、本件商標権者との間で使用許諾関係がないので、他人である。
なお、引用商標使用者は、国際商標登録第900445号の商標権者(オーストラリア、イスラエル、アメリカ、ドイツ、スペイン、フランス、ウクライナを指定、日本指定なし)である(甲6)。
カ 引用商標の周知著名性
引用商標は、本件商標の出願前(2022年2月8日前)の2005年から引用商標使用者であるラスコム社によって世界的に使用されていることが取引者や需要者に広く認識されており、引用商標に係る冷却ファンは、優れた静粛性、卓越した性能、徹底的な品質で国際的に有名であることが取引者や需要者に認識されている(甲7、甲8)。
また、引用商標は、日本においてもラスコム社の業務に係る冷却ファン及びその関連商品(ケーブル類を含む)について多く使用されており、2023年7月29日時点で、インターネット小売りサイトで著名なアマゾンにおける引用商標に係る商品の検索ヒット件数は329件であり(甲9)、インターネット小売りサイトで著名な楽天市場における引用商標に係る商品の検索ヒット件数は682件であり(甲10)、それらの中で本件商標の出願前にアマゾンや楽天市場で取り扱いが開始されたものが多数存在する(甲2~甲5)。
また、引用商標に係るコンピュータ用冷却ファンは、本件商標の出願前において、世界的に著名なASUS社のオールインワン型水冷ユニット「ROG RYUJIN II 360」にも採用されている(甲11)。
さらに、引用商標に係るコンピュータ用冷却ファンは、大手のハードウェアウェブサイトや雑誌から6000以上の賞を受賞し、推薦を受けており、本件商標の出願前に受賞しているものが多数存在する(甲7、甲12及び甲13)。
したがって、引用商標は、本件商標の出願前から現在においても、引用商標使用者であるラスコム社の業務に係る商品を表示するものとして日本国内及び外国において需要者の間に広く認識されたもの(周知著名商標)である。
キ まとめ
以上のことから、本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって、その商品又はこれに類似する商品について使用をするものであるので、商標法第4条第1項第10号に該当し、商標法第46条第1項第1号の無効理由を有する。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性
ア 出所混同について
本件商標と引用商標とは、上記1(1)「エ 商品の類否」で説明したとおり、同一又は類似のものである。
また、引用商標は、上記1(1)「カ 引用商標の周知著名性」で説明したとおり、本件商標の出願前から現在においても、引用商標使用者であるラスコム社の業務に係る商品を表示するものとして日本国内及び外国において需要者の間に広く認識されたもの(周知著名商標)であり、引用商標使用者は、上記1(1)「オ 他人」で説明したとおり、本件商標権者は他人である。
そして、本件商標に係る指定商品「有線通信機械器具、無線通信機械器具、無線応用機械器具、遠隔測定制御機械器具、音声周波機械器具、映像周波機械器具、電気通信機械器具の部品及び付属品、携帯情報端末、電子応用機械器具、入退室監視装置、測定機械器具」は、いずれも発熱する電子部品を備えるものであり、安定した動作を確保するために、冷却ファン、クーラー等の冷却装置が一般的に搭載されている。そのため、本件商標に係る指定商品は、引用商標に係る商品「冷却ファン」と密接に関連し、それらの商品の取引者や需要者が共通するので、本件商標権者が指定商品「有線通信機械器具、無線通信機械器具、無線応用機械器具、遠隔測定制御機械器具、音声周波機械器具、映像周波機械器具、電気通信機械器具の部品及び付属品、携帯情報端末、電子応用機械器具、入退室監視装置、測定機械器具」に本件登録商標を使用すると、引用商標使用者又はその関連会社の業務に係る商品と誤認し、商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
なお、冷却ファン等の冷却装置が情報通信機器をはじめ制御盤、設備まで幅広い用途の機器を冷却するのに用いられることは、取引者や需要者にとってよく知られたことであり(甲14)、長時間使用するものや、高性能なものの多くは、安定した動作を確保するために、冷却装置を用いている。
また、引用商標に係る冷却ファンが家電製品や実験機器、医療用、産業用機器など幅広く使われていることは、取引者や需要者に広く認識されている(甲8)。
したがって、本件商標は、引用商標使用者であるラスコム社の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるものである。
イ まとめ
以上のことから、本件商標は、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるものであるので、商標法第4条第1項第15号に該当し、商標法第46条第1項第1号の無効理由を有する。
(3)むすび
結論として、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、又は同項第15号に違反してされたものであるから、無効とすべきものである。
第4 被請求人の主張
上記第3の請求人の主張に対して、被請求人は何ら答弁していない。
第5 当審の判断
請求人が本件審判を請求することについて利害関係を有している旨主張しているのに対し、被請求人はこの点につき何ら答弁していないものであるから、請求人が利害関係を有することについて争いがないものと認め、以下本案に入って審理する。
1 引用商標の周知著名性について
(1)請求人の主張及び同人の提出に係る証拠によれば、以下のとおりである。
ア 請求人及び請求人による引用商標の使用について
(ア)甲第7号証には、「Noctua(ノクチュア)について」の見出しの下、「オーストリアで設計された、Noctuaの冷却コンポーネントはその優れた静粛性、卓越した性能、そして徹底的な品質で国際的に有名です。Noctuaのファンとヒートシンクは、大手ハードウェアWebサイトや雑誌から6000以上の賞を受賞し、推薦を受けており、世界中の何十万もの・・・顧客にサービスを提供しています。」との記載がある。
また、「Noctuaの歴史と経歴」の見出しの下、「Noctuaは、オーストリアのRascom Computerdistribution Ges.mbHと台湾のKolink International Corporationとのコラボレーションから生まれ、ハイエンド冷却部品の開発・製造・販売における30年以上の経験を蓄積しています。2005年に設立されたNoctuaは、・・・最高品質の静音冷却製品の最も高い評価を得ているサプライヤの1つに成長しました。今日、Noctuaは世界中の30カ国以上に存在し、数百の販売パートナーと協力しています。」との記載がある。
(イ)甲第8号証には、「Noctuaとは」の見出しの下、「Noctua(ノクチュア)といえば茶色いファンが印象的です。」及び「冷却の技術は科学的なノウハウがあり、ノイズを抑える技術や自己安定型油圧ベアリングが優れています。また、家電製品や実験機器、医療用、産業用機器など幅広くNoctuaのファンが使われています。」との記載がある。
イ 請求人商品について
我が国においては、2014年1月以降、アマゾンや楽天市場のウェブサイトにおいて、引用商標を使用した請求人商品が掲載されている(甲2~甲5、甲9、甲10)。
また、2021年9月9日配信のインターネット情報において、「ASUS、3.5型LCDウォーターブロックやNoctuaファン搭載のAIO水冷「ROG RYUJIN II 360」」の見出しの下、引用商標を使用した請求人商品が搭載されている(甲11)。
そして、請求人商品は、価格ドットコムのプロダクトアワード2019「CPUクーラー部門」において金賞を受賞し(甲12)、また、EUROPEAN HARDWARE COMMUNITY AWARDS2020「BEST CPU COOLERS(AIR)」を受賞している(甲13)。
(2)判断
ア 引用商標の周知著名性
上記1(1)イからすれば、引用商標を使用した請求人商品は遅くとも、2014年1月以降、我が国で主要なECプラットフォームを通じて販売されたことはうかがわれる。
しかしながら、我が国における引用商標を使用した請求人商品の売上高、市場シェアなどの具体的な販売実績を客観的に把握できない。加えて、我が国における引用商標を使用した請求人商品の広告宣伝についても、具体的な広告宣伝活動の内容は明らかではなく、また、広告宣伝規模を具体的に示す証拠は提出されていない。よって、請求人提出の証拠からは、引用商標を使用した請求人商品が、我が国の需要者にどの程度認識されているのか把握、評価することができない。
その他、本件商標の登録出願日において、引用商標が我が国の需要者に広く知られていたことを認めるに足りる証拠の提出はなく、引用商標の周知性を認め得る事情は見いだせない。
そうすると、提出された証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が請求人商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く知られていたということはできない。
イ 以上のとおり、引用商標は、請求人商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間で広く認識されていたものとは認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第10号該当性について
(1)引用商標の周知著名性について
引用商標は、上記1のとおり、請求人商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されているものとは認められないものである。
(2)本件商標と引用商標の類否について
本件商標及び引用商標は、上記第1及び第2のとおり、いずれも「NOCTUA」、「Noctua」、「noctua」の欧文字で構成されているところ、両商標から生じる観念は、成語として辞書等に掲載のない語であり、特定の意味を有しない一種の造語として理解される。
また、両商標は、外観において書体の違いはあるものの文字構成を共通にし、称呼において「ノクチュア」の称呼を共通にすることから、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において、相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。
(3)小括
そうすると、本件商標は、引用商標と類似する商標であるものの、引用商標が、我が国の需要者の間に広く認識されているものとは認められない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知著名性について
引用商標は、上記1のとおり、請求人商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
(2)本件商標と引用商標との類似性の程度について
上記2(2)のとおり、本件商標と引用商標は、相紛れるおそれのある類似の商標であるから、両商標の類似性の程度は高いものである。
(3)引用商標の独創性の程度について
引用商標は、成語として辞書等に掲載が認められないことから、独創性の程度は高いものといえる。
(4)本件商標の指定商品と請求人商品の関連性、需要者の共通性について
本件商標の指定商品中には、請求人が引用商標の著名性を主張する請求人商品「冷却ファン、CPUクーラー」が含まれており、商品の関連性は一定程度認められ、その需要者を共通にする場合がある。
(5)小括
上記(1)ないし(4)によれば、本件商標と引用商標の類似性の程度、引用商標の独創性の程度及び本件商標の指定商品中の一部の商品と請求人商品との関連性、需要者の共通性を考慮したとしても、なお、引用商標は、上記1のとおり、請求人商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができないものである。
そうすると、本件商標に接する取引者・需要者が、引用商標を想起又は連想することは考えにくいから、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、当該商品が請求人又はこれと組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれはない。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同項第15号のいずれにも該当するものではなく、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものではないから、同法第46条第1項第1号の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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