商標無効審判
2023-890051
ケンタウロス、ケントーロス
- 審判番号
- 2023-890051
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 商願2002-062046
- 登録番号
- 4651308
- 請求日
- 2023年06月27日
- 審決日
- 2025年03月19日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社 ユナイテッドエフォート
- 【請求人代理人】泉 克文
- 【被請求人】株式会社 青龍寺
- 【被請求人代理人】小林 宜延
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 雅也
- 審判官 馬場 秀敏
- 審判官 小田 昌子
- 分類
- T111 .271-Y (Y16) / T111 .222-Y (Y16)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項15号商標法4条1項19号商標法46条1項商標法56条1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第19号、商標法第4条第1項第15号、商標法第47条第1項、商標法第29条、商標法第4条第1項、商標法第4条第1項第8号、商標法第35条、特許法第98条、特許法第135条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第4651308号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求中、商標法第4条第1項第15号を理由とする請求は却下する。その余の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第4651308号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成14年7月23日に登録出願、第16類「文房具類,事務用又は家庭用ののり及び接着剤,封ろう,印刷用インテル,活字,マーキング用孔開型板,装飾塗工用ブラシ,紙製包装用容器,家庭用食品包装フィルム,紙製ごみ収集用袋,プラスチック製ごみ収集用袋,型紙,裁縫用チャコ,紙製のぼり,紙製旗,観賞魚用水槽及びその附属品,衛生手ふき,紙製タオル,紙製テーブルナプキン,紙製手ふき,紙製ハンカチ,荷札,印刷したくじ(おもちゃを除く。),紙製テーブルクロス」を指定商品として、同15年2月6日に登録査定され、同年3月7日に設定登録され、本件商標の閉鎖登録原簿によれば、その後、令和5年1月18日に商標権の取消し審判が請求され、同年2月3日に同審判の請求の予告登録がされ、同年9月4日に本件商標の登録を取り消す旨の審決の確定登録がされ、同年10月12日に本商標権の登録の抹消の登録がされているものである。
そして、本件審判の請求は、令和5年6月27日にされたものである。
第2 引用商標
請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、引用する登録商標は以下の1ないし4のとおりであり、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
1 登録第1776712号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、昭和57年9月8日に商標登録出願、第21類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同60年6月25日に設定登録され、その後、平成18年3月1日に指定商品を別掲3のとおりの商品とする指定商品の書換登録がされたものである。
2 登録第2073760号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、昭和59年7月17日に商標登録出願、第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同63年8月29日に設定登録され、その後、平成21年10月28日に指定商品を第6類「金属製彫刻」、第9類「映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画済ビデオディスク及びビデオテープ」、第16類「印刷物,書画,写真,写真立て」、第19類「石製彫刻,コンクリート製彫刻,大理石製彫刻」及び第20類「額縁,石こう製彫刻,プラスチック製彫刻,木製彫刻」とする指定商品の書換登録がされたものである。
3 登録第2110912号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、昭和59年7月17日に商標登録出願、第23類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成元年2月21日に設定登録され、その後、同21年10月28日に指定商品を第9類「眼鏡」及び第14類「時計」とする指定商品の書換登録がされたものである。
4 登録第2116135号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、昭和61年2月18日に商標登録出願、第17類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成元年2月21日に設定登録され、その後、同21年10月28日に指定商品を別掲4のとおりの商品とするとする指定商品の書換登録がされたものである。
引用商標1ないし引用商標4をまとめていう場合は、以下「引用商標」という。
第3 請求人の主張
1 請求の趣旨
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書、上申書及び弁駁書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第89号証(枝番号を含む。)を提出した。
なお、証拠の表記に当たっては、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載する場合がある。また、枝番号全てを表示する場合は、枝番号を省略することがある。
2 請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同項第19号に該当し、その登録は同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。
(1)本件商標
本件商標は、「KENTAUROS」の欧文字を、その中央にある「A」の欧文字の位置で屈曲させるとともにその周囲を枠で囲むことで、その全体を逆V字状(「へ」の字状)に形成した構成であり、その指定商品は、第16類に属する商品である(甲1)。
(2)引用商標
引用商標は、全て同一の構成であり、中央にある「A」の欧文字の位置で逆V字状(「へ」の字状)に屈曲させてその周囲を枠で囲んだ英文字「KENTAUROS」を上部に配置し、その下部に、ギリシア神話に登場する半人半獣のケンタウロス像(馬の首から上が人間の上半身に置き換わったような姿をしている)をデフォルメして配置するとともに、前記ケンタウロス像の頭部にモーターサイクル用ヘルメットを被せ、さらに、前記ケンタウロス像に重なるようにモーターサイクル用チェーンをほぼ円形に配置した構成である(甲2~甲9)。
(3)引用商標の所有者(商標権者)
引用商標は、株式会社ケンタウロス(以下「ケンタウロス社」という。)が、昭和57年から同61年(1982年~1986年)に特許庁に出願して登録を受け、引用商標に係る商標権の当時の所有者(商標権者)は、ケンタウロス社であり(甲2~甲5)、その後、平成27年(2015年)に、ケンタウロス社が所有する引用商標に係る商標権は、請求人がケンタウロス社から正当に譲り受けた(甲6~甲9)。
(4)引用商標の使用者
引用商標が出願された当時から現在に至るまで、引用商標の使用者はケンタウロス社であり、請求人がケンタウロス社から引用商標に係る商標権を譲り受けた後も、請求人とケンタウロス社の間で締結された専用使用権設定契約に基づく専用使用権(甲12)により、引用商標の使用者は、ケンタウロス社のみである。
なお、ケンタウロス社の履歴事項全部証明書及び同社の決算報告書によれば、ケンタウロス社は、昭和48年(1973年)7月18日に設立登記され、現在に至るまで活動を継続しており、同社の業務は、引用商標の広範囲にわたる指定商品をカバーしている(甲10、甲11)。
(5)本件商標が商標法第4条第1項第19号に該当する理由
ア 引用商標の周知性
(ア)引用商標とそれを付された商品に係る事情
a 引用商標は、遅くとも1980年代から、著名であり、かつ社会的評価も高いモーターサイル・クラブ「KENTAUROS/ケンタウロス」を表示する標章あるいはシンボルマークとして、日本国内で全国的に知られており、著名である。モーターサイクル・クラブ「KENTAUROS/ケンタウロス」(以下「ケンタウロスクラブ」という。)は、(故)A氏(とその仲間)により、昭和39年(1964年)に設立されたものであり、現在に至るまで長きにわたり、神奈川県横浜市を拠点として途切れなく活動を続けている。
同クラブの活動範囲は、モーターサイクル関係の活動にとどまらず多分野にわたっており、単なるモーターサイクル・クラブではないことも著名であり、能舞台公演、劇場用アニメ映画など種々の分野で同クラブが活躍してきた(甲14、甲15)。
ケンタウロスクラブの創設者であるA氏は、ケンタウロス社の創業者かつ代表者でもあった。ケンタウロス社は、設立以来およそ50年にわたり、同社が運営する「KENTAUROS/ケンタウロス」と称するショップ(店舗)(以下「ケンタウロスショップ」という。)において(甲25、甲26)、引用商標を付した商品(衣料品、日用雑貨品、モーターサイクル装飾品等)(甲24)の販売を行っており、現在も行っているが、平成28年(2016年)1月以降、ケンタウロス社の代表者はB氏(同クラブの二代目のリーダー)に変わっている(甲10)。
したがって、引用商標は、遅くとも1980年代から、ケンタウロスクラブの名称とともに、同クラブを表示する標章あるいはシンボルマークとして、また、ケンタウロス社の業務に係る商品を表示する商標としても、さらに、同社が運営するケンタウロスショップを表示する標章あるいはシンボルマークとしても、日本国内において全国的に著名であり、特に、モーターサイクル愛好者の間では、知らない者はいない程度に著名なものであった。
b 引用商標が付された商品(以下「使用商品」という。)は、遅くとも1980年代から、ケンタウロスクラブに係る者、例えば、同クラブのメンバー(族員)や運営会員(クラブ員)、又は、同クラブの熱心なファンであることを表示するグッズ(ケンタウロス・グッズ)として、日本国内において全国的に著名である(甲15、甲17、甲18、甲21、甲23)。
他方、使用商品は、著名ではあるが、大量生産・大量販売を目指して製造されたものではなく、入手が容易ではない、という特徴があり、これは、使用商品は、ケンタウロスクラブ「KENTAUROS/ケンタウロス」のメンバー(族員)や運営会員(クラブ員)、又は、同クラブの熱心なファンに限定して販売したい、という、ケンタウロス社とケンタウロスショップの販売姿勢に起因する(甲29の14)。
したがって、使用商品は、遅くとも1980年代から、日本国内において全国的に著名であるのに入手が困難で高い希少性を有しており、「レア物」であった。
c 商標的使用
引用商標は、皮革製のジャケットやジャンパーやベストの背面、ワッペンの表面(甲17、甲23)、Tシャツの前面、トートバッグの側面、ジーンズ(デニム製ズボン)のラベルの表面(甲24)に付されたりしているが、引用商標のこのような使用形態は、「デザイン・装飾」としての使用であると同時に、自他商品識別機能を発揮する商標的使用でもあるから(「NBA事件」 大阪地判平成5年1月13日)、引用商標の使用形態が商標的使用ではない、として問題になることはない。
イ 使用商品の販売形態
(ア)使用商品の販売状況
使用商品は、ケンタウロス社が設置・運営するケンタウロスショップで実際に販売されており商品に付された引用商標を来店者に見える形で、展示ケースの外部に陳列して販売されている(甲25)。
なお、前記店舗で展示されている商品は、使用商品の全てではなく、使用商品の告知資料(広告等)には掲載されているが、同店舗では展示・販売されていない商品も存在し、引用商標の上部のみが付された商品も、一緒に展示・販売されている。
ケンタウロスショップの様子や、同店舗の営業日報、入荷票、棚卸報告書から理解されるように、使用商品を販売するケンタウロス社の店舗は、現実に営業活動を行っているが、店舗は非常に小規模であり、同店舗で販売される商品数も少数である(甲24~甲28)。
さらに、ケンタウロス社は、いわゆるネット販売も行っていないため、購入希望者は、前記店舗に足を運ばなければ、その商品を購入することができない。
しかも、前記店舗の営業日報には、当該営業日に販売された個々の商品について、「購入者の氏名(又は氏)」が記載されている(甲27の1、甲28)が、これは特筆すべきことであり、同種の商品を販売する通常の店舗では、ほとんど見ることができない。
前記店舗での販売形態に関するこれらの特徴は、使用商品が、いわゆる大量生産・大量販売を目指して製造されたものではないことに起因する。
ケンタウロス社が、使用商品の購入者として考えているのは、ケンタウロスクラブ「KENTAUROS/ケンタウロス」のメンバーや同クラブの運営会員と、同クラブの熱心なファン、少なくとも、同クラブの創設者でありリーダーでもあった(故)A氏による同クラブの設立趣旨や、同氏の思考・行動の哲学、行動指針等に共感・共鳴する人々である。
(イ)遅くとも1980年代から、ケンタウロスクラブを表示する標章あるいはシンボルマークとして、また、ケンタウロス社の業務に係る商品であることを表示する商標として、さらに、同社が運営するケンタウロスショップを表示する標章として、引用商標が日本国内で全国的に著名であることに比べると、使用商品の販売は小規模の店舗で、かつ、一か所に限られており、また、同商品の販売数も少数であるが、それは、使用商品を、同クラブのメンバー(族員)や同クラブの運営会員(クラブ員)と、同クラブの熱心なファンにだけ購入してほしい、との考えを、ケンタウロス社(前記店舗)が持っているからであり、これは、前記店舗の営業日報(甲27の1、甲28)において、当該営業日に販売された個々の商品について、「購入者の氏名」が記載されており、ケンタウロス社が購入者を記録・管理する仕組みを持っていることからも容易に理解される。
したがって、使用商品の販売が小規模で地味なビルの一室にある小さな店舗で行われていること、使用商品の販売数が少数であり、大量生産・大量販売の商品ではないことは、引用商標が日本国内で広く知られていないことには直結していない。
ケンタウロス社は、あえて、購入希望者が、前記店舗にわざわざ足を運ばないと、使用商品を入手できない状況を作り、同商品の希少性を高めてきたともいえ、前記店舗を拡張せず、支店を他の場所に設置せず、委託販売等も行わず、大規模な広告を打たず、便利なネット販売も行わない。
(ウ)まとめ
以上より、以下の事実a及び事実bがあったといえる。
事実a:引用商標は、遅くとも1980年代から、ケンタウロスクラブの名称とともに、同クラブを表示する標章あるいはシンボルマークとして、また、ケンタウロス社の業務に係る商品を表示する商標としても、さらに、同社が運営するケンタウロスショップを表示する標章あるいはシンボルマークとしても、日本国内において全国的に著名であり、特に、モーターサイクル愛好者の間では、知らない者はいない程度に著名なものである。
事実b:使用商品は、遅くとも1980年代から、日本国内において全国的に著名であるのに入手が困難で高い希少性を有し、「レア物」であり、そのことは遅くとも1980年代から、日本国内において全国的に著名であった。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号の適用の第1要件である「引用商標の周知性」を満たしている。
ウ 本件商標と引用商標の類似性
(ア)引用商標の構成
引用商標の構成(デザイン)は、昭和39年(1964年)に(故)A氏と数名の仲間によって結成されたケンタウロスクラブを表示する標章あるいはシンボルマークとして、同クラブのメンバーであったデザイナーによって創作された(甲15)。
引用商標に含まれている「KENTAUROS」の欧文字は、ケンタウロスクラブの名称に対応する欧文字である。中央にある「A」の欧文字の位置で逆V字状(「へ」の字状)に屈曲させてその周囲を枠で囲んだ「KENTAUROS」の欧文字を上部に配置し、その下部に、ギリシア神話に登場する半人半獣のケンタウロス像をデフォルメして配置するとともに、前記ケンタウロス像の頭部にモーターサイクル用ヘルメットを被せ、さらに、前記ケンタウロス像に重なるようにモーターサイクル用チェーンをほぼ円形に配置した構成になっている。
引用商標の上位部分と下位部分は、いずれも、特徴的な構成であって、上位部分と下位部分の一方だけでも自他商品識別力があると解されるから、いずれも引用商標の要部をなしている。
したがって、上位部分は引用商標の「上位要部」、下位部分は引用商標の「下位要部」といえる。
引用商標の構成(デザイン)は、ケンタウロスクラブのイメージにふさわしい標章あるいはシンボルマークとして、創作者が強いこだわりを持って創作したものであり、非常に特徴的、かつ、独創的なものである。
(イ)本件商標の構成
本件商標は、「KENTAUROS」の欧文字を中央の「A」の位置で逆V字状に屈曲させてその周囲を枠で囲んだ構成を有している。
(ウ)本件商標と引用商標との対比
本件商標を引用商標と比較すれば、本件商標の外観は、引用商標の上位要部の構成の外観に酷似しており、屈曲部の「A」の頭部の両側に対称的に配置された短い直線群のみが異なる程度であり、それ以外の構成は同一といえる。
また、本件商標を構成する「KENTAUROS」の欧文字中の「E」の欧文字上端には、グレーブアクセントが付されているが、これが引用商標の上位要部においても同様になっていること、本件商標を構成する「KENTAUROS」の欧文字の字体(フォント)も、引用商標の上位要部のそれと同一となっているから、本件商標の外観は、引用商標の上位要部の外観と酷似しており、実質的に同一といえる。
さらに、本件商標は、「KENTAUROS」の欧文字を含んでいるから、「ケンタウロス」という称呼が生じ、これに対し、引用商標の上位要部も、本件商標と同一の「KENTAUROS」の欧文字を含んでいるから、引用商標からも、本件商標と同一の「ケンタウロス」の称呼が生じる。
さらに、本件商標は、「KENTAUROS」の欧文字を含んでいるから、「ギリシア神話に登場する半人半獣の種族であるケンタウロス」という観念を生じるのに対し、引用商標の上位要部も、本件商標と同一の「KENTAUROS」の欧文字を含んでいるから、引用商標からも、本件商標と同一の「ギリシア神話に登場する半人半獣の種族であるケンタウロス」という観念を生じる。
このように、本件商標と引用商標の上位要部とは、外観については実質的同一であり、称呼及び観念については同一であるから、本件商標と引用商標の上位要部とは実質的に同一といえる程度に酷似しているから、本件商標は、引用商標と類似している。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号の適用の第2要件である「本件商標と引用商標の類似性」を満たしている。
エ 本件商標の使用の不正目的性
(ア)本件商標のひょう窃性
本件商標の構成は、引用商標の上位要部と実質的に同一といえる程度に酷似しているが、当該構成は本件商標の所有者である被請求人による独自の創作の結果、本件商標の構成が引用商標の上位要部のそれに偶然に一致したものとは到底考えられない。
引用商標がオリジナルであり、本件商標が出願された頃、日本国内で全国的に著名となっていた引用商標の上位要部と、実質的に同一の構成を盗用(ひょう窃)することで、本件商標としたものと考えざるを得ないことは、引用商標の出願日が、本件商標の出願日の約20年前であることを考えても明らかである。
また、平成13年(2001年)3月8日に開催された「第5回横浜飛天双〇能」のパンフレットの写し(甲31)と、ヨコハマ経済新聞の2006年8月2日に掲載された記事の写し(甲32)により、本件商標の登録出願日は、第5回横浜飛天双○能が開催された平成13年3月8日の約1年4か月後であり、登録査定日は、その約2年後であるから、本件商標が登録出願され、登録査定を受けた頃には、ケンタウロスクラブの名称とともに、引用商標及び引用商標の上位要部は、いずれも、日本国内において著名になっていた。
特に、本件商標を構成する「KENTAUROS」の欧文字中の「E」の上端に付されたグレーブアクセントも、引用商標の上位要部と同一であること、本件商標を構成する「KENTAUROS」の字体(フォント)も、引用商標の上位要部のそれと同一にされていることを考えれば、本件商標は引用商標の上位要部をほぼそのままコピー(盗用)したものであると確信をもっていえる。
よって、本件商標は、引用商標の上位要部を盗用(ひょう窃)したものである点で、不正の目的をもって使用をするものに該当する。
(イ)本件商標の図利目的性
被請求人の取締役であるC氏は、遅くとも1982年頃から現在に至るまで、モーターサイクル・クラブ「KENTAUROS/ケンタウロスの熱心なファンであって、1982年頃に同クラブの横浜のクラブハウスを訪問して雑談した経験があり(甲30の4)、2000年頃に同クラブが主催するイベントに参加した経験がある(甲30の6、甲30の7)ことが判明しており、C氏は、本件商標が出願された当時には、使用商品が「レア物」として高い金銭的価値を有することを知っていたと考えられる。
また、C氏が同クラブの熱心なファンであったことから、引用商標の上位要部のみを付された商品も、ケンタウロス社が運営する前記店舗で販売されており(甲23、甲25の2、甲25の6)、これらの商品も、使用商品と同様に「レア物」として高い金銭的価値を有することも知っていたと考えられる。
したがって、平成14年(2002年)当時において、本件商標の登録出願前に、C氏は、ケンタウロス社が運営する前記店舗で販売する、引用商標を付された商品及び引用商標の上位要部のみを付された商品以外の任意の物品に、引用商標と類似する本件商標を付せば、容易に非真正商品を製造・販売することが可能となる、と容易に気付いたはずである。この場合、前記非真正商品は、C氏の意向に沿って、前記真正商品と同等の高価格で、ケンタウロス社が運営する前記店舗以外の店舗において、又は、個人間の直取引によって、又は、いわゆるネット販売、ネットオークション、フリマサービス等を用いて、随時販売できるから、C氏が上記気付きに続いて、「本件商標を商標権として持てば、労せずして高い収益を上げられる」と考えるに至ったであろうことは、至極当然に考えられる。
なお、C氏は、長年の同クラブの熱心なファンではあるが、今まで、同クラブのメンバー(族員)であったことはないし、同クラブの運営会員(クラブ員)であったこともない。
(ウ)ケンタウロスクラブの公式ウェブサイトの「事務局からのお知らせ」として掲載された2020年4月6日付けの表題を「族員への公示」とする記事には、平成30年(2018年)7月に、同クラブの創立者である(故)A氏により同クラブの次のリーダー(二代目として「ミスターチャーリー」)が指名され、(故)A氏が持っていた全ての権限が「ミスターチャーリー」に移譲されたこと、同記事の掲載時には、当該継承を証する「継承証」が、クラブハウスである夜坐蔵に掲示されていた(甲29の1)。
「ミスターチャーリー」の実名は不明であるが、(故)A氏により行われた2019年2月3日に行われた児廻り隊主催の「太陰暦元旦横濱村鎮守参詣コース」第7回に関する記事には、「二代目B氏には筒森までの送りをしてもらった。」との文言があるから、(故)A氏により同クラブの次のリーダー(二代目)として指名されたミスターチャーリーはB氏であることが明らかであり(甲29の2、甲29の6)、B氏は、平成30年(2018年)7月にリーダー権限が同氏に移譲された時から、ケンタウロス社の代表取締役を務めており、権限移譲の前は、(故)A氏がケンタウロス社の代表取締役を務めていた。
なお、同クラブのウェブサイトの各ページを見ると、「クラブ員専用ページ(工事中)」と「族員専用ページ(工事中)」との記載があり、「クラブ員」と「族員」とが区別されていることが分かる。
前記「族員」とは、2018年7月にB氏がリーダーの地位を引き継ぐまでは、創設者兼初代リーダーである(故)A氏が同クラブのメンバーと認めた人であり、B氏がリーダーの地位を引き継いだ後は、B氏が同クラブのメンバーと認めた人を指し、この二人のリーダー以外がメンバー認定を行うことはない。
(エ)同クラブの創立者である(故)A氏により、同クラブの次のリーダー(二代目)として指名されたB氏(ミスターチャーリー)により行われた、同クラブのメンバー全員に宛てた告知の記事により、同記事の掲載時には既に、B氏が二代目のリーダー(族長)として実際に活動していたことが明らかであり、現在も同様である(甲29の3)。
(オ)同クラブの公式ウェブサイトの2020年9月16日付けの表題を「今のメンバーに伝えたいこと」とする同クラブのメンバーによる記事には、「二代目を用意した。」との言葉が創立者(大将)である(故)A氏により発せられた後、詳しい説明がないままA氏が倒れてしまい、A氏の声が聴けないまま1年が経過したことと、「このような状況において同クラブのメンバーの多くが戸惑っているが、はっきり言えることは、大将であるA氏が二代目を用意したことであり、同クラブに憧れていた時期があったのであれば、新体制の同クラブから脱退するか否かは、誰が二代目のリーダー(族長)となるのか、新体制になって同クラブが今後どのようになるのかを知ってからでも遅くはないだろう?」という趣旨の発言をしたことが示されている(甲29の4)。
(カ)同クラブの公式ウェブサイトの2021年7月30日付けの「クラブからのお知らせ」との表題の記事には、<重要なお知らせ>という小見出しの下、同クラブの活動方針について「尚、各地域内で仲間同士お集まりになるのは、何ら問題はありませんが、先代時代からの不文律として「横浜ケンタウロスの名前やマークを冠した物事一切を、本部の許可なく行った場合は、クラブ及び法的にも厳罰の対象になる」とありますので、厳にご注意いただき、安易にネット等での呼びかけにケンタウロスの名前やマークをご使用にならない様お願い致します。」「本部の許可が下りた催事等は、当ホームページに掲載させていただきます。許可に関しては、クラブハウス夜坐蔵・・・へお問い合わせ下さい。」と明示されており、ケンタウロスクラブには、(故)A氏がリーダーをしていた時期から現在まで、上記のような暗黙の約束事(不文律)があるのであり、それに反する行動をすることは厳に禁止されており、同クラブのメンバー(族員)は、この活動方針を了承しているものと解される。
被請求人の取締役であるC氏は、長年にわたって同クラブの熱心なファンであって、1982年頃には同クラブの横浜のクラブハウスを訪問して雑談した経験(甲30の4)があるし、2000年頃には同クラブが主催するイベントに参加した経験(甲30の6、甲30の7)があるから、本件商標が出願された以前から、「使用商品や引用商標の上位要部のみを付した商品は、ケンタウロスショップを訪問しなければ購入できないこと」を知っていたはずであり、このことは、最近になって、改めて、同クラブの公式ウェブサイトでも周知されている(甲29の14)。
また、本件商標が出願された以前に、「引用商標をジャンパーの背面に付すには、ボスのA氏の許可が必要であること」(甲19)や、「ジャンパーの背中にケンタウロスのロゴ(引用商標)を入れている人は、大将であるA氏が許可を与えたメンバーだけであること」(甲20)が、刊行物によって広く周知されているから、長年にわたって同クラブの熱心なファンであったC氏は、本件商標が出願された以前から、背中にケンタウロスのロゴ(引用商標)を入れているジャンパーやチョッキ等の金銭的価値が非常に高いことを知っていたはずである(甲29の5)。
(キ)同クラブの公式ウェブサイトに掲載された2020年12月14日付けの「大将を見舞う瞬間(とき)」という表題の記事には、同クラブの二代目リーダーであるB氏が、2020年11月28日にA氏を見舞ったときの状況が書かれており、B氏の言葉から、同クラブの創立者であるA氏により正当な承継人として選任されたB氏が、A氏の意向に沿って新体制を構築しようとしていること、また、「A氏の意向」と称して他人に言葉や指示を伝えるメンバーがいることが明らかであり(甲29の7)長年にわたって同クラブの熱心なファンであるC氏は、後者の「A氏の意向と称して他人に言葉や指示を伝えるメンバー」に該当すると考えざるを得ない(甲30)。
(ク)同クラブの公式ウェブサイトに掲載された2019年2月26日付けの「3月のショップ営業日」という表題の記事からは、同記事が掲載された当時、ケンタウロスショップ(甲25、甲26)が、クラブハウスのある夜坐蔵店(横浜)に加えて、A氏の転地療養先である大喜多店(千葉)にも設けられていたことが認められる(甲29の8)。
(ケ)同クラブの公式ウェブサイトの2021年4月6日付け記事と2022年4月18日付け記事中、前者の記事には、同クラブの2021年度のメンバーの募集要項が示されており、当該募集要項には、運営会員(クラブ員)になった場合の会員特典として、「イベントなどのDM案内」「クラブハウス(横浜)の優先使用」「ショップ夜坐蔵の割引売(一部割引不可)」、「ワッペンの進呈「イベントなどのDM案内」「クラブハウス(横浜)の優先使用」「ショップ夜坐蔵の割引販売(一部割引不可)」が挙げられており、会費の振込先としてケンタウロス社の銀行口座が指定されている(甲29の9、甲29の10)。
C氏は、単なるファンであって、同クラブのメンバーや運営会員(クラブ員)になったことはないが、クラブハウスで、あるいは、イベント等で、同クラブのメンバーや運営会員や他のファンと交流した経験があったと思われる(甲30の1~甲30の7)。
(コ)同クラブの公式ウェブサイト2021年8月7日付け記事と、2022年4月28日付け記事には、「2021年度会員の皆さんへ」という表題が付されてり、今年も(例年通り)夜坐蔵入口扉の鍵の交換を行うこと、その合鍵が個々の運営会員に送られること、その合鍵には同クラブのマーク(引用商標の上位要部)が刻印されることが記載されており、これは、同クラブのクラブハウスである夜坐蔵の入口扉が施錠されている時でも、当該年度の運営会員であれば、自己の合鍵で解錠して入室できるようにする措置であり、遅くとも1986年当時から、年度ごとに、同クラブのクラブハウスの入口扉の鍵の交換が行われてきたとともに、その合鍵が個々の運営会員に送られてきたこと、合鍵には同クラブのマーク(引用商標の上位要部)が刻印されていたことが認められ、同クラブでは、合鍵に刻印されるオリジナルのマークが、大切に取り扱われてきた(甲29の11、甲29の12)。
(サ)ケンタウロスクラブの公式ウェブサイトの2021年3月13日付け記事と、同年6月5日付け記事には、ケンタウロスショップで近日中に販売開始となる黒色トレーナーの新商品を案内する文が書かれ、当該トレーナーの前面と背面には、それぞれ、同クラブのマーク(引用商標の上位要部と同一であり、本件商標ともほぼ同一)がプリントされている。
また、ケンタウロスショップで近日中に販売開始となるワッペンと反射ステッカーの新商品を案内する文が書かれており、当該ワッペンと反射ステッカーには、それぞれ、同クラブのマークがプリントされており、同記事には、「例外も、無くは無いが、うちのオリジナル商品の入手方法は、ショップでの対面販売が基本となってます。大事な、ウチのしるしが、付いたグッズ。どんな奴が、売ってるのか?どんな奴が、買おうとしてるのか?お互いに顔を合わして、売り買いしたいと思っています。通販はやっていません。是非、横浜のショップヘ来て、手に入れてください。商品の在庫状況などは、ショップ営業時に、・・・に電話ください。それから、決済方法も、現金のみです。カードは、使えません。」の文章があり、当該文章は、ケンタウロスショップにおける使用商品に対する販売姿勢を明確に表明するものである。
使用商品は、同ショップにおいて、その販売当初から50年以上にわたって、このような姿勢で販売されてきたため、1980年代に同クラブが日本国内において著名になってからは、使用商品は、日本国内において全国的に需要者(特にモーターサイクル愛好者)に知られていて、ケンタウロスクラブヘの憧れ等から同商品の入手を希望する人は多かったと思われるが、横浜にある同ショップまで足を運ばなければ、同商品の購入はできなかった。
つまり、本件商標が出願された当時においても、使用商品は、著名であるが入手が困難な「レア物」となっており、同商品が「レア物」であるということ自体も、日本国内において全国的に需要者(特にモーターサイクル愛好者)に知られていた(甲29の13、甲29の14)。
(シ)同クラブの公式ウェブサイトの2023年4月29日付けの記事には、(故)A氏の娘であるD氏により、(故)A氏のお別れの会への参加に対する返礼に係るお知らせと、同クラブの運営に係るハガキを発送した旨、当該ハガキ上にあった誤記は「A氏一周忌の集い(仮称)」が正しい旨のお知らせと、2023年7月15日にサマーパーティが開催される予定である旨のお知らせとが書かれている。
これによっても、D氏は、(故)A氏により指名されたB氏をケンタウロスクラブの二代目リーダー(族長)として認めており、また、同クラブが現在も活動を継続中であることが明らかである(甲29の15)。
(ス)被請求人の取締役であるC氏がフェイスブック(Facebook)に投稿した写真及びコメントの写しの写真(甲30の1)には、「令和4年10月15日午前0時7分 MC KENTAUROSの創始者 A氏 国替えしました(鬼籍に入りました)」とのコメントが付されており、「MC KENTAUROS 創始者 A氏の本葬を四日市光倫会館で、令和4年11月27日(日)に行います。」とのコメントが付されている(甲30の2)。
前記写真では、C氏が(故)A氏の棺の前に着座して、引用商標が背面に付されたチョッキを着用しているとともに、正面の本棚にも、引用商標が背面に付されたチョッキを係止しており、このような引用商標が背面に付されたチョッキやジャンパー等は、同クラブでは、リーダーによってメンバーとして認定された人しか着用できないルールがある(甲19)から、同クラブのメンバーではないC氏が着用することはできないはずであり、事実、現在のリーダーであるB氏は、C氏に引用商標が背面に付されたチョッキの着用の許可を与えていないし、前記店舗においてC氏に前記チョッキを販売した記録も残っていない。
C氏の上記行動は、「同クラブの後継者となることで、労せずして高い収益を上げよう」との考えに基づくものといえ、この考えは、「本件商標の図利目的性」に強く関係していることになる。
(セ)C氏がフェイスブックに投稿した写真及びコメントの写しの写真には、「ボスの80歳の誕生日から、ひと月が経ちました。傘寿を迎え5日で、国替えされましたが、黄泉の国での「武運長久」と御冥福をA氏家菩提寺よりお祈りしております。」とのコメントが付されており、当該コメントも、「同クラブの後継者となることで、労せずして高い収益を上げよう」との考えに基づくものといえる(甲30の3)。
(ソ)C氏がフェイスブック(Facebook)に投稿した、2022年10月18日付け写真及びコメントの写しのコメントから、C氏が(故)A氏の顔を見たのは、前記写真が投稿された2022年10月18日の前後であると推測されるが、A氏の命日が同年10月15日であることから、同氏の亡くなる直前、又は、亡くなった直後であったと考えられ、A氏の顔を見たのが10年ぶりとのことであるから、それ以前にC氏が(故)A氏と会ったのは、2012年頃と考えられ、前記コメント中の記載からは、C氏が同クラブのクラブハウスを訪問したり、同クラブのイベント等に参加したりしたのは約40年前の1982年頃ではないかと考えられる(甲30の4)。
(タ)C氏がフェイスブックに投稿した写真及びコメントからは、C氏が亡くなる直前のA氏とおそらく病院にて面会し、A氏から種々の指示・命令を受けたことが推測されるから、C氏は、B氏が述べていた、「A氏の意向」と称して他人に言葉や指示を伝えるメンバー、又は、「A氏の意向」と称して自分で何らかの言葉を発したり行動をしたりするメンバーに該当する。
また、前記写真と前記コメントを投稿したのは、亡くなる直前のA氏の頭は正常な判断ができる状況であったこと、そして、そのようなA氏から受けた種々の指示・命令は、A氏の意向に沿ったものであったことを、C氏が、外部に表示したいからではないか。また、前記コメント中の「姐さん」とは、後妻のE氏であると思われるが、E氏のコメントもわざわざ併記しているのは、A氏から種々の指示・命令を受けたことの証人としてE氏が同席していたことを示したいためではないか。
しかし、亡くなる直前のA氏は、非常に弱々しい字しか書けない状態、かつ、声も出せない状態であったから、A氏の頭が正常な判断ができる状況であったと強弁することは無理があるように思われる(甲30の5)。
(チ)C氏がフェイスブックの写真及びコメントを投稿したのは、おそらく、C氏が、元気な頃のA氏と親しい関係にあったことを印象付けるとともに、そのような関係にあったA氏から受けた指示・命令を身命を賭してやる、との決意を示すことで、C氏が誠実で責任感のある人物であるとの印象を、閲覧者に与えたいとの考えがあったからではないか。
しかし、C氏はケンタウロスクラブのファンであるにすぎず、同クラブのリーダーであった生前のA氏と親しい関係にあったことはなく、C氏がクラブハウスやイベント等で生前のA氏の顔を見たことはあったとしても、同氏が生前のA氏に何度も会って親しく付き合いをしたといった状況はなかったと思われる(甲30の6)。
(ツ)C氏がフェイスブックに投稿した写真及びコメント(甲30の7)から、前記写真は2000年10月に何らかのイベントで撮影されたものと思われるが、これは、本件商標が出願された年の約2年前であり、本件商標が登録査定を受けた約3年前である。
したがって、2000年10月に、ケンタウロスクラブのイベントに参加したC氏であれば、本件商標の登録出願及び登録査定時においても、引用商標が、同クラブの名称とともに、同クラブを表示する標章あるいはシンボルマークとして、また、ケンタウロス社の業務に係る商品を表示する商標として、さらに、同社が運営するケンタウロスショップを表示する標章あるいはシンボルマークとしても、日本国内において全国的に著名であったことを知っており、さらに、使用商品が著名であるのに入手が困難で高い希少性を有する「レア物」であったことを知っていたのは間違いない。
前記写真及び前記コメントも、2022年10月18日付けで投稿された前記写真及び前記コメント(甲30の6)を前提として投稿されたものと思われ、これらも、おそらく、元気な頃のA氏と親しい関係にあったとの印象を閲覧者に与えたい、とのC氏の考えに基づくものと思われる。
(テ)C氏がフェイスブックに投稿した写真及びコメントの写しには、日本メイスン財団の宿泊に対する礼状と思われる便箋及び封筒と本件商標が外面に付されたお守り又はお守り入れが写っており、当該お守り又はお守り入れは、C氏の所有物と思われるが、本件商標の指定商品ではない商品に対して本件商標が使用をされた実例と考えられ、本件商標がお守り又はお守り入れに対して使用されると、当該お守り又はお守り入れに接した需要者は、ケンタウロス社の業務に係る商品であると誤認し、商品の出所について混同を生じた可能性が非常に大きい(甲30の8)。
(ト)まとめ
本件商標は、引用商標の上位要部を盗用(ひょう窃)したものであるから、「ひょう窃性」において、不正の目的をもって使用をするものに該当する。
さらに、被請求人の取締役であるC氏は、本件商標が出願された当時には、引用商標が付された商品及び引用商標の上位要部を付された商品が、「レア物」として高い金銭的価値を有することを知っており、「前記使用商品の真正商品以外の任意の物品に、引用商標と類似する本件商標を付した非真正商品を製造して随時販売すれば、労せずして高い収益を上げられる」と考えるに至ったC氏が、日本国内において著名な引用商標の名声・信用に便乗して、不正に利益を得ようとするものである。
したがって、本件商標は、上記「ひょう窃性」に加えて、図利目的性においても、不正の目的をもって使用をするものに該当する。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号の適用の第3要件である「本件商標の使用の不正目的性」を満たしているから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(4)本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当する理由
ア 除斥期間
本件商標は、不正の目的で商標登録を受けた場合に該当するから、本件商標に対し、商標法第47条第1項の除斥期間の適用はない。
イ 引用商標の周知性
本件商標は、上記2(5)ア及び同イから、商標法第4条第1項第15号の適用の第1要件である「引用商標の周知性」を満たしている。
本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標は、ケンタウロスクラブの名称とともに、同クラブを表示する標章あるいはシンボルマークとして、また、ケンタウロス社の業務に係る商品を表示する商標としても、さらに、ケンタウロスショップを表示する標章あるいはシンボルマークとしても日本国内において全国的に著名であって、特に、モーターサイクル愛好者の間では、知らない者はいない程度に著名なものである。
また、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、ケンタウロス社の業務に係る使用商品は、日本国内において全国的に著名であるのに入手が困難で高い希少性を有する「レア物」であり、このことも、日本国内において全国的に著名であった。
ウ 本件商標と引用商標の類似性
本件商標は、上記2(5)ウから、商標法第4条第1項第15号の適用の第2要件である「本件商標と引用商標の類似性」を満たしている。
本件商標と引用商標の上位要部とは、外観、称呼及び観念のいずれについても同一であるから、本件商標と引用商標は互いに類似している。
エ 出所の混同
本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標は、ケンタウロス社の業務に係る商品を表示する商標として、日本国内において全国的に著名であった。
また、ケンタウロス社の業務に係る使用商品は、日本国内において全国的に「レア物」であったし、そのことも日本国内において全国的に著名であった。
さらに、本件商標と引用商標は互いに類似しており、本件商標は、上記「ひょう窃性」及び「図利目的性」の両面において、不正の目的をもって使用をするものに該当する。
したがって、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、本件商標が引用商標の指定商品とは非類似の商品について使用されたとすれば、その商品に接した需要者は、使用商品や引用商標の上位要部のみを付された商品の販売者であるケンタウロス社の業務に係る商品であると誤認し、商品の出所について混同を生じた可能性が非常に大きかったであろう。
特に、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が付された商品や引用商標の上位要部のみを付された商品が、著名かつ希少性の高い「レアグッズ」であり、需要者のそれに対する購買欲求が強い商品であったこと、さらに、そのことも日本国内の需要者の間で全国的に著名であったことを考慮すると、商品の出所について混同を生じるおそれは、いっそう大きかったであろう。
本件商標が、お守り又はお守り入れ(甲30の8)に使用をされた場合、当該お守り又はお守り入れに接した需要者、特にケンタウロス・グッズには、使用商品だけではなく、引用商標の上位要部のみを付された商品もあることを知っている需要者は、ほぼ間違いなく、ケンタウロス社の業務に係る商品であると誤認し、又は、同社の業務に係る商品の「新商品」、「派生商品」等であると誤認し、商品の出所について混同を生じる。
オ むすび
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当し、本件商標に対し、商標法第47条第1項の除斥期間の適用はない。
3 上申書(令和6年6月11日付け)における主張
(1)「本件商標が商標法第4条第1項19号に該当する理由」における「引用商標の周知性」と「引用商標を付した商品の販売形態」について
ア ケンタウロスクラブの「KENTAUROS」や「ケンタウロス」という名称と、(故)A氏の氏名は、同クラブをモデルとして1980年代に刊行された「ケンタウロスの伝説」と称する漫画と、同漫画に基づいて制作・公開された同名の劇場用アニメーション作品とによって、日本国内において広く知られるようになった(甲14、甲33、甲72)が、その後も、2011年~2013年、2018年、2020年~2021年に、複数回にわたってテレビ放送(NHK、テレビ東京、テレビ愛知)で紹介されている(甲39、甲41、甲45、甲47、甲48、甲69)。
そして、「横浜飛天双〇能」の公演が2001年をはさんで前後少なくとも10年にわたって継続して開催され(甲31、甲32、甲46)、さらに、1992年発行の雑誌(甲19)、1995年発行の雑誌(甲20)、2005年公開のブログ記事(甲46)、2008年公開のブログ記事(甲43)、2011年公開のブログ記事(甲45、甲47、甲68、甲71)、2014年公開のブログ記事(甲67)、2015年発行の雑誌(甲18、甲70)、2016年公開のブログ記事(甲74)、2018年公開のブログ記事(甲44、甲69)、2020年公開のブログ記事(甲73、甲75)、2022年発行のウェブ雑誌(甲15~甲17)、2022年公開のブログ記事(甲50)、2023年公開のブログ記事(甲40、甲42、甲72)、2024年公開のブログ記事(甲49、甲64)で紹介されている。
また、ケンタウロスクラブは、(故)A氏(とその仲間)により、昭和39年(1946年)に設立されたものであり、現在に至るまで約60年の長きにわたり、神奈川県横浜市を拠点として途切れなく活動を続けている(甲14~甲18、甲40、甲65)。
さらに、同クラブの活動範囲は、モーターサイクル関係の活動にとどまらず多分野にわたっており、単なるモーターサイクル・クラブではないことも、広く知られている。
例えば、同クラブは以前、満月ツーリングと哲学セミナーを催し、能舞台公演「横浜飛天双〇能」を立ち上げ(甲31、甲32)、独自メディアとして新聞「ペーパー・ケンタウロス」を発行した(甲21)。さらに、巨匠・十文字美信(写真家)による写真集の発行、俗に“300キロ公道ビデオ”と呼ばれた映像作品「VISION HIGH」、劇画「ケンタウロスの伝説」を原作とした劇場用アニメ映画の実現など、同クラブは種々の分野で活躍している(甲14、甲15、甲40、甲43、甲72、甲73)。
また、ケンタウロスクラブのメンバー(族員)は、同クラブの活動に参加する際には、常に、引用商標を背中に付けたベスト(チョッキ)、ブルゾン(ジャンパー)等のオリジナル服を着用している(甲15~甲22、甲23、甲39、甲47、甲49、甲64)。そして、同メンバーは、引用商標を付した種々のオリジナル商品(例えば、ティーシャツ、ワッペン、ステッカー、ベルト、バックル等)を着用・所有し、人目につくところで使用している。さらに、ケンタウロス社の使用商品が、インターネット上の種々の販売サイト、オークションサイト等でも展示販売されている(甲23~甲25、甲51~甲58、甲75)。
さらに、ケンタウロス社は、設立以来およそ60年にわたり、同社が運営するケンタウロスショップにおいて(甲25、甲26)、引用商標を付した同社のオリジナル商品の販売を行っている(甲23、甲24、甲51~甲58)が、平成28年(2016年)1月以降、ケンタウロス社の代表者はB氏に変わっている(甲10)。
このように、引用商標は、遅くとも1980年代から現在に至るまで、同メンバーの背中や同メンバーのモーターサイクルのボディ・ヘルメット等に表示されたり、ステッカー、ワッペン等の同社のオリジナル商品(ケンタウロス・グッズ)それ自体に表示されたり、ケンタウロスショップやインターネットのオークションサイト上で展示販売されたり、前記能舞台公演や前記新聞等の広告に使用されたりして、多くの人の目に触れてきたことにより、ケンタウロスクラブの評判・名声の高まりとともに、同クラブの名称「KENTAUROS/ケンタウロス」と(故)A氏の氏名が、日本国内において(海外も含む)広く知られるようになった。
そして、それに伴って、引用商標と、使用商品と、当該商品を販売するケンタウロスショップも同様に、日本国内において(海外も含む)広く知られるようになった。
また、そのようにして日本国内において(海外も含む)広く知られていく際に、引用商標は、ケンタウロスクラブを表示する標章あるいはシンボルマークとして認識されるとともに、また、ケンタウロス社の業務に係る商品を表示する商標として、さらに、ケンタウロスショップを表示する標章あるいはシンボルマークとしても認識されるようになった。
以上のことから、引用商標は日本国内において広く知られていたことが裏付けられる。
イ 使用商品は、遅くとも1980年代から現在に至るまで、日本国内において広く知られているが、いわゆる大量生産・大量販売を目指して製造されたものではなく、入手が容易ではない、という特徴がある(甲29の14、甲51~甲58、甲75)。
これは、使用商品は、ケンタウロスクラブのメンバー(族員)や運営会員(クラブ員)、又は、同クラブの熱心なファンに限定して販売したい、という、ケンタウロス社と同社が運営するケンタウロスショップの販売姿勢に起因する(甲29の14)。
以上のことから、使用商品は、遅くとも1980年代から、日本国内において広く知られていたことが裏付けられる。
ウ 本件商標の登録出願時及び登録査定時について、これらの時期は、ケンタウロスクラブの存在が日本国内に広く知られるようになった1980年代から、10年から15年程度が経過した時期であり、また、(故)A氏も存命で、大きなイベントも種々、実施されていた(甲31、甲32、甲40、甲46ほか)。
したがって、本件商標の登録出願時及び登録査定時においても、引用商標は、同クラブの名称「KENTAUROS/ケンタウロス」や「ケンタウロス」とともに、日本国内に広く知られるようになっていた。
以上から、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標とともに、引用商標の上位部分のみからなる標章も、日本国内に広く知られるようになっていた。
エ 使用商品は、小規模販売のレア物(希少品)であり、いわゆる大量生産・大量販売を目指して製造されたものではないし、これらの商品の広告宣伝もほとんど行っていない、という特徴があるが、この特徴は、ケンタウロス社のオリジナル商品及び引用商標が日本国内において広く知られていることとは矛盾しない。
知財高裁平成28年6月23日判決(平成28年(行ケ)第10003号)は、「ある商品がその希少性ゆえに世間の注目を集めたという事情がある場合は、同商品の販売量(出荷量)の少なさは、同商品の周知性及び同商品に対して使用された商標の周知性を否定する理由にはならない」と判示しており、この観点からみると、使用商品は、小規模販売のレア物(希少品)であり、欲しくてもなかなか手に入らないゆえに需要者に注目されているという特徴を持っている。
したがって、使用商品の販売数の少なさは、その周知性を否定することにはならない。
オ 以上から、本件商標は、商標法第4条第1項第19号の適用の第1要件である「引用商標の周知性」を満たしている。
(2)「本件商標が商標法第4条第1項19号に該当する理由」における「本件商標と引用商標の類似性」について
本件商標と引用商標は、いずれも、「ギリシア神話に登場する半人半獣の種族であるケンタウロス」という観念とともに、「モーターサイクル・クラブのケンタウロス又は「ケンタウロスというモーターサイクル・クラブ」という観念も生じるから、本件商標と引用商標は、観念も互いに同一又は類似である。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号の適用の第2要件である「本件商標と引用商標の類似性」を満たしている。
(3)「本件商標が商標法第4条第1項第19号に該当する理由」における「本件商標の使用の不正目的性」について
ア 本件商標のひょう窃性
本件商標の構成は、引用商標の上位部分と実質的に同一といえる程度に酷似しているが、本件商標の構成は、本件商標の所有者である被請求人による独自の創作の結果、偶然に、引用商標の上位部分の構成に一致したものとは到底考えられず、引用商標がオリジナルであり、本件商標が出願された頃、日本国内で全国的に知られていた引用商標の上位部分と実質的に同一の構成を盗用(ひょう窃)することで、本件商標としたものと考えざるを得ない。
よって、本件商標は、引用商標の上位部分を盗用(ひょう窃)したものである点で、不正の目的をもって使用をするものに該当する。
イ 本件商標の図利目的性
(ア)本件商標の図利目的性について、被請求人の取締役であるC氏が代表理事を務める一般社団法人「MC KENTAUROS」が出願した商標「MC KENTAUROS」(商願2022-130899)の審査段階で発行された拒絶理由通知(甲37)に対し、出願人が提出した意見書において、C氏が同クラブの創設者であり初代リーダーでもあった(故)A氏と40年以上のつきあいがあったと述べていること、C氏が(故)A氏の2番目の妻であるE氏とも付き合いがある事実がある(甲38の2)。
被請求人の取締役であるC氏が代表理事を務める一般社団法人「MC KENTAUROS」の名義や「株式会社青龍寺」の名義を用いたC氏の行動(甲30、甲37、甲38、甲62、甲63)は、「自己の行う活動が、同クラブの創設者であり初代リーダーでもあった(故)A氏の意向を受けたものであることを何らかの形で表示することで、同クラブや(故)A氏の信用や名声を借用しよう」との考えに基づくものと解されるから、同氏の前記行動は、「本件商標の図利目的性」に強く関連している。
この根拠として、前記のC氏が代表理事を務める一般社団法人「MC KENTAUROS」が出願した商標「MC KENTAUROS」の意見書において、ケンタウロスクラブの2代目リーダー(族長)の地位は、それを誰が継承したかが明確でない状況では、(故)A氏の2番目の妻であるE氏に継承されていると解すべきである、との主張(反論)をし、あたかも、同クラブの2代目リーダー(族長)の地位がE氏に継承されているかのように述べている。
(イ)ケンタウロスクラブの創立者(故)A氏により、同クラブの次のリーダー(二代目)として「ミスターチャーリー」が指名され、(故)A氏が持っていた全ての権限が「ミスターチャーリー」に移譲されたこと(甲29の1)を証する「継承書」がクラブハウスである夜坐蔵に掲示されていた(甲34~甲36、甲61)。
(ウ)被請求人の取締役であるC氏がフェイスブックに投稿した、C氏が(故)A氏の棺の前に着座して、引用商標が背面に付されたチョッキを着用しているとともに、正面の本棚にも、引用商標が背面に付されたチョッキを係止している写真(甲30)は、正規の葬儀(本葬)が行われた2022年10月18日の直前に、(故)A氏の千葉県の自宅で撮影されたものと思われる(甲76)。
(エ)本件商標権者の代表を務めるC氏が取締役を務める「株式会社青龍寺」は、「寺」を指しているように見えるが、営利企業である株式会社の名称である(甲63)。
「株式会社青龍寺」の履歴事項全部証明書によれば、同社の行う事業に関し、令和4年(2022)6月14日に変更があり(その登記は令和4年9月26日)、1.神社、仏閣に納めるお守り、お札等の販売あっせん、2.念誦、輪袈裟、腕輪念珠、金襴織物、ワッペン、お守り、ステッカー、お札、シール等の販売が追加されている。
(オ)2022年10月17日付けのブログの記事には、ケンタウロスクラブの初代リーダー(族長)であった(故)A氏の葬儀が2022年10月18日に行われ、同氏は同日午前10時に荼毘に付されるとの予定が記載されており、同葬儀は、実際にその日程で実施されたから、同葬儀が同氏の葬儀(本葬)である。(故)A氏の本葬は、2022年10月18日に同氏の自宅があった千葉県で行われたから、本件商標の所有者が、2022年11月27日に三重県四日市市で行われたと主張している「本葬」は、2022年10月18日に千葉県で行われた前記本葬とは別に同氏の後妻であるE氏とC氏が独自に行ったものである(甲76)。
(カ)本件商標は、引用商標の上位部分を盗用(ひょう窃)したものであるから、「ひょう窃性」において、不正の目的をもって使用をするものに該当する。
ケンタウロスクラブの活動方針に明らかに違反しているという事実と、同クラブの承認を得ることなく、同クラブが大切に取り扱ってきた引用商標の上位部分のみからなる標章に酷以する本件商標に係る商標権を取得したという事実だけでも、「本件商標の不正目的性」を肯定するに十分な事実であると考えるが、C氏には本件商標の不正目的性(信義則違反)を肯定するに足る事実が認められる。
(キ)宗教法人の「お寺」と紛らわしい会社名(株式会社青龍寺)を使用していること(甲1の1、甲63)、ケンタウロスクラブとは無関係の一般社団法人に同クラブの別称である「MC KENTAUROS」を設定していること(甲38、甲63)、同クラブでは、引用商標が背面に付されたチョッキやジャンパー等は、リーダー((故)A氏又はB氏)によってメンバーとして認定された人しか着用できないルールがあるにも関わらず、同クラブのメンバーではないC氏が着用し、その状況を撮った写真をSNSに投稿していること(甲30)、紛らわしい表現を含む写真やコメントをSNSに投稿していること(甲30)、SNSへの投稿の表現を意図的に調整していること(甲30の6)などから、C氏が黙示的に同クラブと関係があることを訴求している、同クラブのメンバーであって同氏に威厳があるかのような印象を閲覧者に与えようとしている、閲覧者の誤解を引き起こして、閲覧者がC氏の意向に沿った解釈をするように仕向けている、自己を誠実で責壬感のある人物であるとの印象をSNSの閲覧者に与えたいなどの意向をC氏が持っているのではないかとのC氏の人柄と考え方が推測できる。
本件商標が登録出願後に生じたものであるが、請求人は、C氏の人柄と考え方を推測することが可能となる事項であるから、本件商標の不正目的性を肯定する際の参考になり得ると考える。
(ク)本件商標は、「ひょう窃性」に加えて、「図利目的性(信義則違反)」においても、不正の目的をもって使用をするものに該当する。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号の適用の第3要件である「本件商標の使用の不正目的性」を満たしている。
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第19号の適用の第1要件から第3要件を満たしており、同号に該当する。
ウ 本件商標が商標法第4条第1項第19号該当性の判断について、同号に係る審査基準の面からの検討について
(ア)引用商標は、遅くとも1980年代から現在に至るまで、日本国内で全国的に知られているものであることが明らかであり、引用商標の要部をなす上位部分のみからなる標章も、引用商標と同様である。
したがって、引用商標の要部をなす上位部分をほぼそのままコピー(盗用)したものと確信をもっていえるほどに酷似しており、上位部分と実質的に同一といえる本件商標は、審査基準の要件1(一以上の外国において周知な商標又は日本国内で全国的に知られている商標と同一又は極めて類似するものであること)を満たしている。
(イ)引用商標は非常に特徴的・独創的な構成であり、引用商標の要部をなす上位部分も、引用商標の要部をなす下位部分も、引用商標と同様に、非常に特徴的・独創的な構成であることが明らかである。
本件商標は、このような非常に特徴的・独創的な構成を持つ引用商標の要部をなす上位部分と、実質的に同一といえるほど酷似している。
したがって、引用商標は、審査基準の要件2(その周知な商標が造語よりなるものであるか、又は、構成上顕著な特徴を有するものであること)も満たしている。
(ウ)本件商標は、審査基準に基づいて、商標法第4条第1項第19号の「不正の目的をもって使用するもの」と推認され、判断されるべきである。
エ 商願2022-130899の出願人(一般社団法人「MC KENTAUROS」)が、意見書(甲38の2)において行った主張(反論)について
(ア)ケンタウロスクラブのリーダー(族長)としての地位は、現実に後継者たる人間がいないためにその地位が空位になっている場合は、創設者兼初代リーダー(族長)であった(故)A氏の最後の未亡人であるE氏が預かっている、と解されるとしている。
そして、商願2022-130899の出願人(一般社団法人「MC KENTAUROS」)の代表を務めるC氏が、同クラブのリーダー(族長)としての地位を預かっているE氏の承諾を得ているから、また、(故)A氏の生前に同氏からの承諾も得ているから、商願2022-130899に係る商標「MC KENTAUROS」は商標法第4条第1項第8号には該当しない、と主張している。
(イ)商願2022-130899の出願人の代表であるC氏が、(故)A氏が設立した、特定非営利活動法人ケンタウロスの後継として、一般社団法人「MC KENTAUROS」を設立したことについては、事実であるか否かが請求人にとっては不明であるが、請求人は、前記主張が事実であると仮定しても、それが直ちに、一般社団法人「MC KENTAUROS」が商願2022-130899に係る商標登録出願をして商標登録を得ることの承諾につながるとはいえないと考える。
理由は、商願2022-130899に係る商標「MC KENTAUROS」について商標登録をしなくても、一般社団法人「MC KENTAUROS」が目的とする活動自体を行うことは可能であり、出願人は、必要があれば、ケンタウロスクラブの名称とは類似関係が全くない、同クラブとの関係を需要者に全く想起させることのない他の商標について、商標登録を受ければ足りるはずだからである。
(ウ)2018年7月以降は、(故)A氏の意向に基づき、B氏がケンタウロスクラブの2代目リーダー(族長)となっており、それ以後は、同クラブのリーダー(族長)としての全権限がB氏に継承されているから、2018年7月以降は、(故)A氏には、リーダー(族長)としての権限がない(甲34、甲35、甲36、甲39、甲61、甲65)。
したがって、「現実に後継者たる人間がいないために同クラブのリーダー(族長)たる地位が空位になっていることを前提とする、前記意見書(甲38の2)における商願2022-130899の出願人の前記主張は、その前提が事実とは異なっている。
(エ)商願2022-130899に係る商標登録出願をすることについて、(故)A氏の生前に同氏からの承諾も得ているとの主張については、前記主張が事実であるかどうか疑わしい。
理由は、(故)A氏のメモ(甲30の5)に書かれたものからも推測されるように、2014年から転地療養を続けていた(甲29の6)(故)A氏は、2022年当時、長期入院していたから、同氏の身体はかなり衰弱していたものと思われるから、同氏の判断能力も、正常な判断ができない程度まで低下しており、前記意見書(甲38の2)に添付された「辞令」及び「申述書」は、(故)A氏の判断能力がかなり低下している状況下で作成されたものと推測される。
また、前記「辞令」及び「申述書」の作成には、C生氏とともに、E氏が関わっているから、前記「辞令」及び「申述書」の内容が(故)A氏の意向のみを正確に反映している点についても、疑念が残る。
(オ)2018年7月以降は、同クラブのリーダー(族長)たる地位と全権限がB氏に移譲されていたのであるから、商願2022-130899に係る商標登録出願をすることについての承諾は、生前の(故)A氏ではなく、同クラブの2代目リーダー(族長)であるB氏から受ける必要があったことが明らかであるが、B氏が、商願2022-130899に係る商標登録出願をすることについて承諾をすることはない。
したがって、前記主張が事実であるか否かに関係なく、商願2022-130899が商標登録を受けることについて、同クラブの承諾を得ることはできない。
よって、商願2022-130899が商標法第4条第1項第8号に該当するという事実は、解消されることがない。
オ 一般社団法人の法人名としての「MC KENTAUROS」について
請求人は、ケンタウロスクラブに関する権限をいっさい持たず、同クラプとの関係も全く持たないC氏が、同クラブが約60年にわたって大切に管理し使用して来た引用商標及び引用商標の上位部分のみからなる標章のうち、前者に類似するとともに後者に酷似する本件商標に係る商標権を保有することは、信義則上、許容できないとの考えであり、C氏が「MC KENTAUROS」という法人名を使用することについても、同様に考えている。
請求人は、少なくとも道義上の観点からみて、「MC KENTAUROS」を法人名として採用する前に、そうすることについて同クラブの許諾(B氏の承諾)を打診する、その点について相談する機会や場を求める等、何らかの方策をとるべきであった。
(4)「本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当する理由」における「引用商標の周知性」、「本件商標と引用商標の類似性」及び「出所の混同」について
ア 引用商標の周知性
本件商標の登録出願時や登録査定時において、引用商標は、日本国内に広く知られるようになっていたことが明らかである。
イ 本件商標と引用商標の類似性
本件商標と引用商標は、外観が互いに類似し、かつ、称呼及び観念がいずれも互いに同一又は類似であることから、本件商標と引用商標とは、全体として類似している。
ウ 本件商標の不正目的性
1980年代から現在に至るまで40年以上にわたって(故)A氏及びケンタウロスクラブと関係があると主張する、被請求人の取締役であるC氏は、引用商標は、ケンタウロス社やケンタウロスショップにおいて、登録商標として大切に取り扱われ、管理されてきている事実、同クラブには、「同クラブの名称・別称やマークを冠した物事を行うには、必ず、本部の許可が必要である」という方針があるという事実、同クラブでは、引用商標の上位部分のみからなる標章も、引用商標と同様に大切に取り扱われてきているという事実を知っていたはずであるが、同氏は、同クラブの本部の承認を得ることなく、本件商標の出願を行って(図利目的性・信義則違反)、同クラブが大切に取り扱ってきた引用商標の上位部分のみからなる標章に係る商標権を取得した(剰窃性)ことが認められる。
したがって、本件商標については、使用の不正目的性が肯定されるから、本件商標に対し、同法第47条第1項の除斥期間の適用はない。
エ 出所の混同
本件商標は、「引用商標の周知性」及び「本件商標と引用商標の類似性」という、商標法第4条第1項第15号の適用の第1及び第2の要件を満たしている。
しかも、本件商標は、引用商標の上位部分のみからなる標章に酷似する構成を持つため、本件商標が付された非真正商品は、引用商標又は引用商標の上位部分のみからなる標章が付されたケンタウロス社の業務に係る真正商品と容易に誤認され、又は、ケンタウロスショップの業務に係る真正商品と容易に誤認される。
このため、本件商標は、ケンタウロス社の業務に係る真正商品、あるいは、ケンタウロスショップの業務に係る真正商品と、出所の混同を生じるおそれが高いものであり、商標法第4条第1項第15号の適用の第3要件をも満たしている。
したがって、本件商標は、同法第4条第1項第15号に該当する。
また、本件商標は、不正の目的で商標登録を受けたものに該当するから、本件商標に対し、同法第47条第1項の除斥期間の適用はない。
4 弁駁書における主張
(1)2014年頃から2022年頃までに起こった事象とその背景
ア 引用商標に係る商標権の移転登録日より少し前に、B氏はA氏から、「大切な引用商標に係る商標権を自分たちでは維持していくことができないが、他人に取られないようにしたいから、引用商標に係る商標権を引き継いで今後も維持してほしい」と依頼され、ケンタウロス社についても、同様に引き継いで今後も維持してほしい」との話もされ、A氏の依頼に応じる形で、B氏は、引用商標に係る商標権を譲り受け、引用商標をケンタウロス社に使用許諾することにし、A氏に代わって、B氏自身がケンタウロス社の代表取締役に就いた。
B氏が「A氏夫妻の生涯にわたって経済的援をする」との話をしたとするが、そのような事実はなく、E氏の性格や考え方を良く知っているB氏からすれば、E氏はB氏が生涯にわたって経済的援助をしてくれるとの強い期待を持っていた可能性が高い。
イ A氏を経済面で支援していたB氏は、古民家を確保し、請求人が購入した。譲渡契約の締結は2014年7月11日であり(甲77)、引っ越しは、同日の譲渡契約締結の後、まもなくに行われた。B氏は、当該古民家の毎月の家賃として20万円を請求しようとしたが、E氏に拒否されたので、家賃収入を断念して無償で貸与することにした。
ウ 2017年4月に、ケンタウロスの二代目としてB氏を指名した「告知書」が作成され、これには、A氏の記名・捺印がある(甲35)。
B氏は、2015年頃から、A氏より二代目就任の打診をされており、これは、クラブの将来をリードする二代目の族長、また、新しい時代にふさわしい二代目の族長として、B氏が適任であるとA氏が考えていたからである。
しかし、その後、二代目就任の決着がつかない状況が続く一方で、B氏が支出の負担を求められたり、E氏から誹謗中傷されたりし、2017年4月になって、状況を憂慮したB氏が、A氏と相談し、クラブの二代目としてのB氏の指名を確約するために「告知書」が作成された。
エ 「告知書」が作成された頃から、E氏によるB氏への誹謗中傷がさらに酷くなり、A氏も、E氏の影響を受け、E氏の意見を支持する意見や態度を示すことが多くなった。
そのような状況下で、2017年10月28日にA氏が倒れた(1回目)。
B氏は、2017年12月9日付けの手紙をA氏宛てに送り、E氏によるB氏への誹謗中傷と、それを支持するA氏の意見・態度について、不満を表明した(甲83)。
オ A氏が退院した後、ケンタウロスの二代目として、A氏がB氏を指名した「継承書」が作成され、その日付は、2018年7月吉日である(甲34)。
そして、2018年10月6日に開催予定のペリオン祭で、A氏本人から、B氏の二代目継承を公表することになった(甲82の3)。
B氏の二代目就任の発表後、B氏により、A夫妻への直接的な資金援助が始まったが、これは、B氏が代表を務める会社でA夫妻を社員として雇用して給与を払うという形で行われ、この資金援助は、2018年11月から2019年12月まで、14か月続いた(甲78~甲80)。
ペリオン祭でB氏の二代目継承が公表された後、間もなく、「継承書」が夜坐蔵に掲示された(甲61)。
カ A氏が退院して古民家で療養しているときに、B氏が、A夫妻に対して、「E氏よりもA氏の方が先に亡くなるだろうから、A氏が亡くなった後のE氏の生活をどうするか」ということについて、話をしたことがあり、その時のB氏の提案は、「ケンタウロスのグッズを販売する会社を別途立ち上げ、その販売益でE氏が生活する、というのはどうか」というものであり、設立する会社には、株主としてB氏は入らないで、同社の代表者はE氏とする、ということで、B氏は具体的に考えていたが、A氏はB氏の提案を受け入れなかった。この話は、2018年6月14日、18日又は30日のいずれかにおいて、A夫妻とB氏の3人のみで行われた。
キ B氏によるA夫妻への資金援助は、2018年11月から2019年12月まで、14か月続き(甲78~甲80)、資金援助をしている間も、E氏のB氏に対する誹謗中傷や、E氏の自己中心的な言動が変わらなかったため、B氏はA氏宛てに手紙を送り、実情を伝えるとともに、近日中に資金援助を停止する旨の予告をし、2019年年12月で資金援助を打ち切った。
A氏が2回目に倒れたのは、2019年5~6月頃である。
A氏は、前回と同じ病院に入院し、その頃から、B氏はA氏と面会できなくなったが、これは、E氏がB氏の面会を拒否したからであり、その頃から、B氏は、E氏と一切の連絡が取れなくなり、E氏が、B氏の電話に出なくなり、B氏のメールにもショートメッセージにも一切、返信しなくなり、2018年の後半頃から、B氏はA氏に会うことが全くできなくなった。
ク 2020年11月28日に、B氏が、A氏の長女D氏とともに病院へ出向き、入院中のA氏と会談をすることができた(甲84)。
そして、その場で、B氏は、A氏に、E氏によってB氏に対して長期間行われて来た誹謗中傷と、それを聞いた同氏の周囲にいるメンバーの話から判明したE氏の策略を訴え、「二代目返上の伺い」を立てたが、A氏は、B氏に対し「そのまま二代目を続けろ」との指示をし、「お前が二代目を継続するのが嫌であるなら、お前自身がケンタウロスを解散させろ」と、B氏に指示し、A氏は、自分からはっきりと、「俺はもうケンタウロスにはかかわらない。お前がリーダーだ。お前がすべて決めろ」と意思表示をしたとのことである。
ケ 2020年12月4日付けの手紙(甲85)には、A氏が、同病院から退院した後の生活を、B氏が気遣っていたこと、A氏が倒れて以降の経緯が書かれている。
コ A氏は、2022年10月15日に逝去した(甲16、甲76)。
A氏の本葬は、2022年10月18日に実施された(甲76)。
A氏を送る会(横浜)は、2022年11月19日に実施された(甲16)。
A氏を送る会(四日市)は、2022年11月27日に実施された(乙7、甲38の2)。
(2)答弁書における被請求人の主張に対して
ア 被請求人の「不正の目的」を主張する請求人への反論について
(ア)著作権譲渡契約書(乙3の1)に記載されたA氏の住所は、正しい住所から「田代」の文字が漏れており、当該住所の記載は誤記であるから、その真正性に疑いがある。
著作権譲渡契約書では、対象となる「著作権一式」とそれに対応する「著作物一式」、当該契約書の効力の及ぶ範囲が明確に記載されていないから、当該契約書には、その真正性に疑いがある。
著作権譲渡契約書が作成された日付は、令和4年(2022年)10月5日となっており、A氏が亡くなったのは、同月15日であるから、著作権譲渡契約書が作成されたのは、A氏が亡くなる10日前であり、当該著作権譲渡契約書(乙3の1)は、著作権の譲渡者であるA氏が正常に思考・判断できない状況で作成されたものであり、当該契約書がA氏の「自己の所有する著作権を譲渡するという意思」を正しく反映していない可能性が高いから、この点においても、その真正性に疑いがある。
また、著作権譲渡契約書に記載された「MC KENTAUROS」の紋章に関する全てに係る著作権一式を、A氏が真に所有していたのかは不明であり、その点を明確にすることなく作成され、提出された著作権譲渡契約書には、その真正性に疑いがある。
(イ)期限管理資料には、該当する登録商標のリストと当該登録商標に関する特許庁の情報が含まれているだけであるから、A氏が被請求人やC氏に本件商標の使用許諾を与えていた」という根拠を当該期限管理資料から見いだすことは不可能であるから、「当該期限管理資料がA氏の使用に係るものであった」との被請求人の主張には理由がない。
(ウ)「C氏がA氏から口頭で著作権の利用許諾を得て本件商標の登録を受けている」という主張が真実であると考えると、引用商標の上位要部のみからなるオリジナル図形に酷似しているが、引用商標とは構成が異なっている本件商標が、引用商標と併存する事態をA氏が許容したことになるが、それは明らかに不合理であるから、「被請求人が、A氏の許諾を得ずに本件商標を盗用し、同氏の許諾なしに出願し登録を受けた」との請求人の主張には、高度の信憑性があることが、本件商標と引用商標の構成に多くの差異があるという事実からもうかがえる。
イ 被請求人の本件商標の図利目的性への反論について
(ア)「C氏は、A氏とは40年以上のつきあいがあり、平成9年(1997年)10月までは横浜市中区・・・」の住民であった。」という主張と、「C氏は、四日市に戻った後も、A氏と電話等で近況連絡をし合い、時折、A氏に呼び出されてクラブの行事に参加したり、二人で食事したりしていた。」という主張は事実であると思われる。
B氏はケンタウロスクラブのメンバーであるが、C氏は同クラブのメンバーとは認められていない(甲81の11、12)。
(イ)「C氏は、A氏がB氏から借りていた古民家から引っ越した後、A氏から呼び出されて、解散した特定非営利活動法人ケンタウロスの後継組織や終の棲家の相談等を受け、A氏の依頼に応じて、一般社団法人MC KENTAUROSを設立し、その代表に就いた。」という主張は、請求人はほぼ事実であると考えている。
また、「C氏は、A氏の遺志を尊重して、菩提寺のある四日市市大僧正の導氏師により本葬を執り行い、菩提寺住職として弔辞を読んだ。」という主張は、請求人は事実であると考えている。
(ウ)「B氏から自分を後継者・二代目に指名するよう強要された」という部分も事実ではなく、A氏の方から二代目就任を打診されたというのが事実であり、「約束を反故にされた」という部分も事実とは異なる。
被請求人の主張の多くが、C氏がE氏から聞いたこと、あるいは、両者が相談して決めたことに基づいており、A氏の意向はほとんど入っていないことが想定される。
「B氏から自分を後継者・二代目に指名するよう強要されたが、約束(B氏がA夫妻の生涯にわたって経済的援助をする)を反故にされた経緯もあって、これを拒んできた。」旨の主張は、全くの虚偽であり、被請求人の思い込みにすぎない。
「逆に、A氏は、B氏を二代目から排除しており、A氏の死後、保管資料からメモ(乙11)が発見され、それにはB氏への「はもん」の文字記述もある」との主張は、全くの虚偽であり、被請求人の思い込みにすぎず、当該メモは、いつ、どのような場所・状況で、誰によって書かれたものかが不明であり、間違いなくA氏が書いたものであるかも証明されていないから、そこに書かれていることの信憑性は低い。
(エ)被請求人が求めているB氏の二代目継承を示す「継承証」は提出済みであり(甲34)、「継承書」の作成前に、B氏が2代目となる予定であることをメンバー全員に告知した書面も提出済みであり(甲35)、B氏の二代目継承を示す「継承証」が、クラブハウスとして使用されている休憩所「夜坐蔵(やざくら)」に掲示されている状況を示す写真も提出済みである(甲61)。
ウ 被請求人の「周知性」を主張する請求人への反論について
ケンタウロス・グッズそれ自体の写真(甲24)や、ケンタウロス・グッズの販売店舗における販売状況を示す写真(甲25) には、ワッペン(看板)以外の種々のグッズが展示されている状況が示されている。
引用商標を付した商品は、著名ではあるが、いわゆる大最生産・大輩販売を目指して製造されたものではなく、入手が容易ではないという特徴があり、換言すれば、引用商標を付した商品は、日本国内において広く知られているのに入手が困難で高い希少性を有する「レア物(希少品)」なのであるから、「クラブの入会要件を満たしたときにA氏から授与されるワッペン(看板)は、商標法上の商品には該当しない。」との主張は、失当である。
知財高裁平成28年6月23日判決(平成28年(行ケ)第10003号)では、「ある商品がその希少性ゆえに世間の注目を集めたという事情がある場合は、同商品の販売量(出荷量)の少なさは、同商品の周知性及び同商品に対して使用された商標の周知性を否定する理由にはならない」と判示しており、引用商標又は引用商標の上位要部のみからなる商標が付されて販売されるオリジナル商品の販売数の少なさは、それらの周知・著名性を否定することにはならず、それらの商品及び引用商標又は引用商標の上位要部のみからなる商標が日本国内において広く知られていることとは矛盾せず、両立する。
エ 被請求人の「周知性」を主張する請求人への専用使用権の設定に対する反論について
(ア)請求人は、契約書によってケンタウロス社に与えられる使用権は、いわゆる「独占的通常使用権」と解すべきであると考える、つまり、商標権者が特定の第三者(ケンタウロス社)に対してのみ引用商標の使用を許諾する通常使用権というべきであり、「引用商標に係る専用使用権は、商標権登録原簿に登録されていないから、商標法上の専用使用権としての効力を発生していない。」という被請求人の主張は、理由がない。
引用商標に係る商標権の移転登録日は、平成27年(2015年)5月25日であるのに対し、契約書(甲12)の日付は、2015年2月13日である。そして、契約書によってケンタウロス社に付与される使用権が「独占的通常使用権」であるとすれば、引用商標に係る商標権の移転登録日より前に当該契約書が作成されていても、それだけで契約書が無効になるとはいえない。
オ 被請求人の引用商標が著名であるとの主張への反論について
引用商標は、遅くとも1980年代から現在に至るまで、同メンバーの背中や同メンバーのモーターサイクルのボディ・ヘルメット等に表示されたり、ステッカー、ワッペン等の同社のオリジナル商品それ自体に表示されたり、ケンタウロスショップやインターネットのオークションサイト上で展示販売されたり、前記能舞台公演や前記新聞(小冊子)等の広告に使用されたりして、多くの人の目に触れてきた。これにより、同クラブの評判、名声の高まりとともに、同クラブの名称「KENTAUROS/ケンタウロス」とA氏の氏名が、日本国内において広く知られるようになった。
それに伴って、引用商標それ自体と、使用商品と、当該商品を販売するケンタウロスショップも同様に、日本国内において(海外も含む)広く知られるようになった。
また、そのようにして日本国内において広く知られていく際に、引用商標は、同クラブを表示する標章あるいはシンボルマークとして認識されるとともに、ケンタウロス社の業務に係る商品を表示する商標として、さらに、ケンタウロスショップを表示する標章あるいはシンボルマークとしても、認識されるようになった。
本件商標の登録出願時及び登録査定時は、ケンタウロスクラブの存在が日本国内に広く知られるようになった1980年代から、10~15年程度が経過した時期であり、A氏も存命で、大きなイベントも種々、実施されていた。
以上から、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標とともに、引用商標の上位部分のみからなる標章も、日本国内に広く知られるようになっていたことが明らかである。
カ 被請求人の本件商標の図利目的性への反論に対する反論について
引用商標の前記上位部分は、「その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合」に該当し、よって、本件商標と引用商標の類否判断では最高裁判決の判示事項の例外である「分離観察」を採用すべきである。
「分離観察」をすると、本件商標と引用商標は、外観が互いに類似し、称呼が互いに同一又は類似であり、観念も互いに同一又は類似であるから、本件商標と引用商標とは、全体として類似している。
キ 被請求人の本件商標の出所混同への反論に対する反論について
1980年代から現在に至るまで40年以上にわたってA氏及びケンタウロスクラブと関係があると主張する、被請求人の取締役であるC氏は、同クラブの本部の承認を得ることなく、本件商標の出願を行って、同クラブが大切に取り扱ってきた引用商標の上位部分のみからなる標章に係る商標権を取得した(ひょう窃性)ことが認められるから、本件商標については、使用の不正目的性が肯定されるから、本件商標に対し、同法第47条第1項の除斥期間の適用はない。
本件商標が付された非真正商品を、引用商標の上位部分のみからなる標章が付された真正商品と誤認し、ケンタウロス社の業務、又は、同社が運営するケンタウロスショップの業務に係る真正商品と極めて高い確率で混同を生じる。
本件商標は、「引用商標の周知性」及び「本件商標と引用商標の類似性」という、商標法第4条第1項第15号の適用の要件を満たしている。
したがって、本件商標は、同法第4条第1項第15号に該当し、本件商標は、不正の目的で商標登録を受けたものに該当するから、本件商標に対し、同法第47条第1項の除斥期間の適用はない。
第4 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第12号証(枝番号を含む。)を提出した。
なお、証拠の表記に当たっては、「乙第○号証」を「乙○」のように省略して記載する場合がある。
1 商標法第29条の著作権との抵触
(1)被請求人は、本件商標の著作権者であるA氏から許諾を得て出願し、商標登録を受けているから、本件商標は商標法第4条第1項第19号の「「不正の目的」をもって使用する」に該当せず、逆に引用商標に係る引用商標権(以下「引用商標権」という。)は、その商標登録出願日前に成立したA氏が所有の著作権に抵触する。
A氏は、1964年(昭和39年)にケンタウロスクラブを結成し(甲19)、昭和48年に、バイク販売等の自営業をケンタウロス社に法人化して(乙1)、平成28年1月5日まで代表取締役となり、自ら創作した著作物の複製図形を商標として出願し、引用商標権を維持してきた。
B氏から、(イ)A夫妻を生涯、経済的援助をして面倒をみていく、かつ夫婦の一方が先に亡くなり独りになっても生涯生活に困ることのないよう経済的援助をする、及び(ロ)住む住居を提供するとの話があり、A氏は、この約束と引換えに、平成27年にケンタウロス社からB氏と親交のある者が代表を務める請求人に引用商標権を譲渡し、平成28年にB氏へケンタウロス社の代表取締役を譲っているが、前記生活費の面倒は僅か1年程で打ち切られてしまった。
(2)一方、引用商標権に係る登録商標の図形は著作物の複製物であり、その著作者であるA氏は著作物の利用に関する契約等を、B氏側に対し一切行っていない。当該著作物の著作権は、現在、本件商標の権利者である被請求人が譲渡契約により所有しており(乙3の1)、「MC KENTAUROS紋章」の図形著作物(以下、「本件著作物」という。)の写しがある(乙3の2)。
引用商標権と当該著作権が抵触するときは、引用商標権に係る登録商標の図形は商標出願日前の本件著作物の複製物であることから、引用商標権が発生しても、商標法第29条により、本件著作物を複製した商標を指定商品に使用できず、引用商標権の効力がその商標出願日前に存在した本件著作物を商標として複製した著作権側の本商標権に及ぶことはない(ポパイ事件(最高裁平成2年7月20日第二小法廷判決)の判決)から、請求人が引用商標をもとに無効審判を請求する理由は、商標法第29条の規定により成り立たない。
(3)被請求人の取締役であるC氏が本件商標の著作権者であるA氏から口頭で著作権の利用許諾を得て、本件商標の登録を受けているだけだったが、令和4年にA氏が亡くなった後、A氏の保管書類から本件商標の2007年10月12日付け期限管理資料(乙4)が見つかったが、これはA氏が本件商標の使用許諾していた証となる。仮に、本商標権取得に商標法第4条第1項第19号の「不正の目的」があれば、2007年時にA氏は著作権侵害の訴え等を起こすだろうし、著作権譲渡などしないから、同号に基づく請求人の主張は明らかに失当であり、「不正の目的」に該当しないので、同法第47条の除斥期間が過ぎており、同法第4条第1項第15号の無効審判請求は成り立たない。
(4)モータークラブは、「パソコン通信で情報を発信する。」集団(甲19)であり、A氏が病床についた後、請求人側の支配下になり、情報発信により本件著作物を藤崎氏が創作したとしている(甲15等)が、本件著作物はA氏が独自に創作している。
A氏は、「ケンタウロス年表」や「看板」の記載等からも、本件著作物に関する才能を有し、自ら創作している(甲18、甲19)から、「引用商標の構成は、ケンタウロスクラブのイメージにふさわしい標章あるいはシンボルマークとして、創作者が強いこだわりを持って創作したもの」の記述内容は誤りである。
2 「本件商標の図利目的性」への反論
(1)「C氏は、・・・同クラブのメンバー(族員)であったことはない」との主張に対して
被請求人のC氏は、A氏とは40年以上のつきあいがあり、1997年(平成9年)10月までは横浜市中区・・・の住民となっており、A氏から看板を授与されている。
モータークラブは、会費や会則等の決め事がないモーターサイクリスト・クラブであり、A氏は、このモータークラブを結成し、さらにB氏に譲ったケンタウロス社とともに、特定非営利活動法人ケンタウロスを2000年(平成12年)に設立している(乙5)。
モータークラブの族員だけに留まる者がいれば、年会費を支払って(甲29の9)、ケンタウロス社に設けたクラブの優先使用ができる運営会員になる者、また、特定非営利活動法人ケンタウロスに所属する者もいる。
C氏は、四日市に戻った後もA氏と電話等で近況連絡し合い、時折、A氏に呼び出されてモータークラブの行事に参加したり二人で食事したりし、A氏がB氏から借りていた千葉県大多喜町の筒森から田代へ引っ越し後、A氏から呼び出されて、解散した特定非営利活動法人ケンタウロスの後継組織や終の棲家の相談等を受け、当初は断っていたが懇願され、最終的にA氏の強い望みに応じて「一般社団法人MC KENTAUROS」を設立した経緯がある(乙6)。
A氏は令和4年10月に急逝し、故人の遺志を尊重し菩提寺のある四日市市にて大僧正の導師により本葬を執り行い(乙7)、菩提寺住職としてC氏が弔辞を読んだ。A氏は生前、C氏に対し、「2021年1月18日に解散した、特定非営利活動法人ケンタウロスの目的を受け継ぐ組織を作り、代表を務めるように命ずる。」とともに、「C氏には、本日付けで、代行も兼務するように命じる。」との辞令(乙8)を出している。未亡人E氏の申述書(乙9)も存在し、大将A氏の明確な指名によりC氏を代行に決定している。
被請求人の役員に、A氏とともにA氏から代行指名されたC氏が名を連ね、さらに本葬を四日市で執り行なったり、その弔辞を読んだ事実(乙10)によっても、「C氏は、・・・同クラブのメンバー(族員)であったことはない」との主張は失当である。
なお、B氏と請求人の代表者は、2010年(平成22年)以降にクラブ入会した族員なので、横浜市中区山下町・・・当時を全く知らないので、理解できないのであろう。
(2)「二代目Bには筒森までの送りをしてもらった。」の二代目に対して
ア モータークラブ二代目を継承させる重要事項について、A氏がこのようなメール公表などしない。B氏から自分を後継者二代目に指名するよう強要されたが、約束を反故にされた経緯もあってこれを拒んできた。A氏の未亡人E氏に尋ねればすぐに分かる事柄であり、A氏の直筆でないメール文であり、いかようにも編集できる。A氏はB氏を二代目から排除しており、A氏の死後、保管資料からメモが発見され、これによれば、B氏への「はもん」の文字記述もある(乙11)。
イ A氏が1964年に結成したモータークラブは、「週刊プレイボーイ」に連載され、劇場用アニメ作品にもなっている(甲14)。家父長的な強力的な統制権を有して大将と呼ばれたA氏の意思が最重要視され、例えばモータークラブ組織への入会はA氏が許可して初めて可能になる。イ)MC KENTAUROSに対して功績があるとA氏が認めた者、ロ)A氏から特別に必要な人物と認められた者等に、当クラブ組織員である証として、デニムジャケットの背部等に縫い付けられる本件著作物の複製物が付された三点のワッペン(看板)がA氏から授与される。
モータークラブ組織の在り方や運営の基本方針等、重要事項の決定にはA氏の意向が強く反映され、A氏は、対内的には当該クラブを統率する権限を有し、対外的には当該クラブを代表する権限を有している。このような強力な統制権がA氏の一手に集中するところは、家元制度の組織に似ている。
身体の弱っているA氏に向かって、B氏が自分の言うことに従えといって罵倒する様子を、A氏の住む古民家に呼び出されていた族員が隣の部屋で聴いたという証言もある。メモからは、B氏から古民家を無料で借りている手前もあり、引っ越してから思いを実行するしかないかとの苦悩が読み取れる(乙11)。B氏は手中に入れたホームページやメールを使って二代目を既成事実化しようとしており、同氏がA氏からの継承を主張するなら、その証拠書類の提出を求める。
3 「周知性」を主張する請求人への反論
(1)商標法の商品について
ア モータークラブ入会要件を満たして「本件著作物の複製物が付された三点のワッペンが大将から授与され」とあるワッペンは、デニムジャケットの背部等に縫い付け、モータークラブの一員になった証を示すものであるが、これらのワッペンは市場に流通する商標法上の商品ではない(甲17)。
商標法上の商品は定義規定がないが、一般に、有体物であること、動産であること、取引の対象となること、流通過程にのること等が、原則的要件とされている。
イ 商標法上の商品における流通性に関しては、引用商標権の指定商品「ワッペン」は商標法上の商品に該当せず、商品商標として周知にもなり得ず、無効審判の請求理由は成り立たない(中納言事件(大阪地裁、昭和59(ワ)5703号、天一事件(東京高裁、昭59(ワ)6476号判決)。
「デニムジャケットの背部等に縫い付けられる本件著作物の複製物が付された三点のワッペン(看板)」をショップで販売していると主張するならば、その価格と販売実績の提出を求める。
(2)引用商標の周知性
ア 請求人は、周知性の証明資料を示している(甲11、甲21~甲28)が、損益計算書の売上高(甲11)は、商標法上の商品とならないワッペンを含んでも433万円ほどで、商品売上高として少なすぎる額であり、「2021年度ケンタウロス運営会費の案内」として、ケンタウロスヘ社の会費4万円振込みの記事が掲載されており(甲29の9)、計上した売上高433万円のうち多くが会費と考えられ、損益計算書の売上高433万円に占める期末棚卸高(ワッペン分を含む)が45万円強しかないこともあり商品売上げが少なすぎる。さらに、「引用商標の使用者は、・・・ケンタウロス社であり、引用商標の使用をケンタウロス社以外の者が行なったことはない。」とあり、請求人は引用商標を付した商品販売等を行っておらず、請求人は資本金が100万円しかない。
このような状況下で、商品を流通させ、引用商標に係る商品商標の周知を獲得するのは困難である。
イ 請求人は、「つまり、使用商品の購入希望者は、前記店舗に足を運ばなければ、その商品を購入することができないようになっているのである。」とあり、前記店舗は、夜坐蔵店(横浜)(甲26の1)と、大多喜店(千葉)(甲29の8)の二箇所だけである。大多喜店とは房総半島山中の古民家であり(甲29の6)、この二箇所の店舗だけで、一般市場で流通に供して商品商標の周知性を獲得したと主張するのは失当である。
4 専用使用権の設定に対して
「・・・ケンタウロス社に専用使用権が設定されている(甲12)」とあるが、専用使用権の設定は、特許庁の商標登録原簿への登録が効力発生要件であり(商標法第35条、準用特許法第98条)、請求人の引用商標に係る専用使用権は、全て商標登録原簿に登録されておらず、契約が成立しても、契約の効力を主張できず、当該契約書の日付は、請求人への商標権移転受付年月日前になっており、契約書そのものが無効である。
5 引用商標が著名であるとの主張への反論
「(a)引用商標は、遅くとも1980年代から、著名でありかつ社会的評価も高いケンタウロスクラブを表示する標章あるいはシンボルマークとして、日本国内で全国的に知られており、著名である。」と主張するが著名を立証したことにならない。
第1に、著名の主張として資料(甲10、甲13~甲26、甲31、甲32)を挙げているが、ほとんどが請求人側から情報発信された資料であり、著名であるとの客観性に乏しく、立証したことにならず、A氏が亡くなってから件数増加した請求人側のホームページやメール記事に専ら頼っている。
第2に、請求人側のホームページやメール記事を除いた上記資料の多くが、A氏個人の活躍記載と彼の創設したモータークラブ「ケンタウロス」に関するものである(甲14、甲19、甲20、甲31)。
業務主体の請求人や専用使用権者と名乗るケンタウロス社によって、指定商品に付された引用商標が商品販売等で著名になっていると判明する証拠資料が全く存在せず、著名の証明にならない。ジャケットに引用商標1を縫い付けたワッペン(甲17、甲18)は、そもそも商標法上の商品とならない。
第3に、引用商標は、需要者がごく限られた特定のバイク愛好家に知られるだけに留まっており(甲13ほか)、モータークラブの名前が有名だからといって、請求人の図形と文字との結合商標である引用商標が、著名であることにいうことに結びつかない。
さらに、請求人は、モータークラブについて「これは、同クラブの著名性とともに、同クラブと同ショップの強い関連性(一体性)をも意味するものである。」と主張するが、両者は別組織であり失当である。会費や会則等の決め事がないモーターサイクリスト・クラブたるモータークラブと、ケンタウロス社の法人組織と、特定非営利活動法人ケンタウロスの組織とが、それぞれ別個独立して存在し、特定非営利活動法人ケンタウロス(乙5)は現在、被請求人側のC氏が代表理事を務める一般社団法人MC KENTAUROSが引き継いでいる(乙6、乙8)。
以上のごとく、引用商標を著名とする主張は、立証できていない。
6 「本件商標と引用商標が類似する」との主張への反論
(1)「したがって、上位部分は引用商標の「上位要部」、下位部分は引用商標の「下位要部」と言うことができる。」とし、「このように、本件商標と引用商標の上位要部とは、外観については実質同一であり、称呼及び観念については同一であるから、本件商標と引用商標の上位要部とは実質的に同一と言える程度に酷似している。したがって、本件商標は、引用商標と類似していることが明らかである。」と主張している。
つつみのおひなっこや事件(最高裁平成20年9月8日第二小法廷判決)の判決書では、「複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて、商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き、許されないというべきである」と記載している。
(2)請求人は、前記判決のその部分に該当する「上位要部」が「称呼及び親念については同一である」と主張しているが、非類似商品で登録を受けた本商標権と同じく、称呼及び観念が同一の商標「ケンタウロス」が引用商標権と非類似商品において第4054469号等で登録になっている。
そして、「下位要部」は、「引用商標の上位部分と下位部分は、いずれも、特徴的な構成であって、上位部分と下位部分の一方だけでも自他識別力がある」と主張しているが、つつみのおひなっこや事件の最高裁判決では、自他識別力のある当該下位部分を除いて類否商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、許されないとしているから、本件商標と引用商標とが類似すると主張するのは失当である。特に需要者が特定のバイク愛好家になる取引の実態があり、本件の需要者、とりわけバイク愛好者が購買層になる取引の実情において、本件商標と引用商標は混同のおそれはない。バイク愛好需要者にとって、「腰から下がオートバイ。エンブレム(看板)にはヘルメットをかぶり、チェーンを振り回す半人半馬をデザインした。」(甲19)とする重要な下位部分が在る引用商標とこれがない本件商標とは類似せず、両者に出所混同は生じない。
7 まとめ
(1)著作権者から利用許諾を受けた著作物を複製した本件商標は、商標法第29条に基づき、引用商標権の効力が及ぶことがなく、著作権を被請求人が譲り受けているので、本無効審判請求が成り立たない。
(2)商標法第4条第1項第19号の適用には、請求書記載の各項目を全て満たすことが必要であるが、本件審判請求は、「不正の目的」の主張が答弁した理由に基づき請求人の主張が失当であるばかりか、「引用商標の周知性」「引用商標が著名」「本件商標と引用商標の類似性」の主張も認められず、同号に基づく無効審判請求は成立しない。
(3)商標法第4条第1項第15号の適用には除斥期間が過ぎており、「不正の目的」で商標登録を受けた場合に限るところ、「不正の目的」は請求人の主張が失当で、本無効審判請求は成立しない。
さらに、周知性の主張は、引用商標の周知性を有するとは認められず、本件商標と引用商標とが類似するとの主張も認められない。引用商標の商品に対し非類似商品に使用する本件商標は、出所混同するおそれもなく、適法に商標登録を受けているから、商標法第4条第1項第15号に基づく無効審判請求も成立しない。
第5 当審の判断
1 利害関係について
請求人が本件審判を請求することの理解関係の有無については、当事者間に争いがなく、当審は請求人が本件審判の請求について利害関係を有するものと認める。
2 商標法第4条第1項第15号に係る無効理由について
(1)本件商標は、平成15年3月7日に設定登録されたものであり、本件無効審判の請求がされた令和5年6月27日には、既に設定登録の日から5年以上経過しているため、本件無効審判の請求の理由中、商標法第4条第1項第15号に該当することを理由とする請求は、「不正の目的で商標登録を受けた場合」に限られることから(商標法第47条第1項かっこ書き)、本件商標が「不正の目的」で商標登録を受けたものであるか否かについて、まず検討する。
(2)両当事者から提出された証拠及び主張によれば、以下の事実が認められる。
ア ケンタウロス社は、昭和48年(1973年)に「自動車、自動二輪車、自転車、モーターボート、ヨット等の卸、小売、及び整備並びに開発」、「衣料品、衣料雑貨品、日用雑貨品、アクセサリーその他生活雑貨の販売及び輸出入」などを目的として設立され、現在も存続している(甲10、甲11ほか)。
イ 昭和39年(1964年)にA氏がケンタウロスクラブを結成した(甲16、甲19)。
ウ 昭和48年(1973年)7月18日にケンタウロス社が設立され、A氏は、平成28年(2016年)1月5日まで同社の代表取締役であった(甲10、甲11、乙1の2)。
エ 昭和57年(1982年)から昭和61年(1986年)にケンタウロス社が引用商標を出願、登録した(甲2~甲5)。
オ 平成12年(2000年)1月4日にA氏が特定非営利活動法人ケンタウロスを設立した(甲86、乙5)。
カ 平成14年(2002年)7月23日に被請求人が本件商標を出願し、平成15年(2003年)3月7日に設定登録された(甲1)。
キ 平成26年(2014年)6月から8月頃にB氏及び請求人はA夫妻に対して、千葉の物件の仲介をした(甲29の6、甲77、甲81の1~3・5~10、請求人主張)。
ク 平成27年(2015年)4月13日に請求人とケンタウロス社との間で引用商標の商標権専用使用権設定契約がされ、当該契約書には、請求人代表者とケンタウロス社の代表取締役のB氏の署名(記名)、捺印がある(甲12)。
また、平成27年(2015年)5月25日に引用商標に関する商標権はケンタウロス社から請求人に移転された(甲2~甲9、乙12~乙14)。
ケ 平成28年(2016年)1月6日に、ケンタウロス社の代表取締役がB氏になった(甲10)。
コ 平成29年(2017年)4月付けのケンタウロスクラブの二代目としてB氏を指名した告知書とされるものには、ケンタウロス族長の署名がある(甲35)。
サ 平成29年(2017年)12月9日にA氏の自宅の修理の費用負担の要望を拒絶する旨を内容とするB氏からA氏宛の手紙が出された(甲83)。
シ 平成30年(2018年)7月にA氏がケンタウロスクラブの二代目としてB氏を指名したことを内容とする承継書が作成され(甲34、甲61の1)、同年10月6日に同クラブのイベントで上記事実が発表された(請求人主張)。
ス 平成30年(2018年)11月にB氏が代表を務める企業でA夫妻を社員として雇用し、給料を払うという形で資金援助が開始され、平成31年(2019年)1月から12月まで上記資金援助が継続されたが(甲78~甲80)、令和2年(2020年)1月にB氏からA夫妻への資金援助が終了した(請求人主張)。
セ 令和2年(2020年)11月28日にB氏がD氏とともに入院中のA氏と会談し、B氏はE氏からの誹謗中傷について訴え、A氏はクラブには関わらない旨とA氏がB氏に二代目を続けるように指示し(甲29の7、請求人主張)、同年12月4日にA氏の療養生活へのB氏が気遣っていたことやE氏への同居生活を勧めない旨の提案を内容とするB氏からA氏宛の手紙が出された(甲85)。
ソ 令和3年(2021年)1月18日に、A氏が代表を務めていた特定非営利法人活動法人ケンタウロスが解散した(甲86)。
タ 令和4年(2022年)7月1日にA氏からC氏宛の特定非営利法人活動法人ケンタウロスの目的を継ぐ組織を作り、代表を務めるよう命じた辞令には、A氏の捺印があり(乙8)、同年10月5日にA氏を譲渡人、被請求人を譲受人とする「MC KENTAUROS」の紋章に関する全ての著作物に係る著作権一式の著作権譲渡契約がされた(乙3の1)。
チ 令和4年(2022年)10月15日にA氏が逝去し、同月18日にA氏の本葬が実施され(甲76)、その前後にC氏がA氏に面会していた(甲30の4、甲30の5)。
ツ 令和4年(2022年)11月9日に「一般社団法人MC KENTAUROS」が設立され、C氏が代表理事となっている(乙6)。
テ 令和4年(2022年)11月19日にA氏の長女D氏主催のA氏を送る会(横浜)の実施され(甲16)、同月27日にC氏及びE氏によるA氏を送る会(四日市)が実施された(甲30、甲38の2、乙7)。
ト 令和5年(2023年)9月11日、同月26日 一般社団法人MC KENTAUROSによって、「MC KENTAUROS」の商標出願がされている(甲38、甲63)。
(3)検討
上記(2)の認定事実によれば、A氏とB氏とは、A氏が平成28年(2016年)1月5日までは、ケンタウロス社の代表取締役であり、B氏は平成28年(2016年)1月以降の同社の代表取締役という関係にあり、同27年(2015年)5月25日に引用商標に関する商標権がケンタウロス社から請求人に移転されているところ、同26年(2014年)6月頃から8月頃にB氏はA夫妻に対して千葉の住居の仲介をし、同30年(2018年)7月にA氏が結成したケンタウロスクラブの二代目としてB氏がA氏から指名されたことや同31年(2019年)1月から12月までB氏からA夫妻への資金援助が継続されるなどのA夫妻とB氏との関係性を考えると、少なくとも引用商標に関する商標権がケンタウロス社から請求人に移転された当時は、A夫妻とB氏の関係に特段の争いは生じていなかったことが推認できる。
しかしながら、平成29年(2017年)12月9日にB氏がA氏の自宅の修理の費用負担の要望を拒絶する内容の手紙を出すなど、B氏がA夫妻に不満を表明するようになり、令和2年(2020年)1月にB氏からA氏への資金援助は終了したことからすれば、A夫妻とB氏の関係は徐々に問題が生じていったことが推認できる。
他方、A氏と被請求人の取締役であるC氏は、モーターサイクルクラブケンタウロスを通じた知り合いという関係にあり、昭和57年(1982年)から昭和61年(1986年)にケンタウロス社が引用商標を出願、登録した後、本件商標は、C氏が代表を務める被請求人により、平成14年(2002年)7月23日に出願され、同15年(2003年)3月7日に設定登録されたが、本件商標の登録後から本件無効審判請求がなされる令和5年(2023年)6月27日までの約20年間、本件商標に対して、商標権の取消し審判の請求以外に異議申立がなされた等の事実は確認できず、本件商標が登録された当時にケンタウロス社の代表取締役であったA氏及び平成28年(2016年)1月以降の同社の代表取締役であるB氏によっても容認されてきたことが推認でき、A氏が代表を務めていた特定非営利活動法人ケンタウロスの後継組織として、A氏の依頼に応じて、一般社団法人MC KENTAUROSが設立され、C氏がその代表に就いたこと、C氏がA氏を送る会を実施したこと、A氏を譲渡人、被請求人を譲受人とする「MC KENTAUROS」の紋章に関するすべての著作物に係る著作権一式の著作権譲渡契約書が存在する事実などを総合的に考慮すれば、A氏とC氏との関係に特段の争いは生じていなかったことが推認できる。
そうすると、C氏が代表を務める被請求人による本件商標の登録を維持することに特段の問題は見いだせない。
そして、請求人が提出した証拠からは、本件商標の買取りを迫るとか、請求人に損害を与え、被請求人において不正の利益を得る意図があったといった事実は見いだせず、そのほか、商標権者が本件商標を不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的、その他の不正の目的をもって使用をするものと認めるに足りる具体的事実は見いだせない。
他に、本件商標が不正の目的で商標登録を受けたというべき事情は見いだせない。
してみると、被請求人が不正の目的をもって本件商標の商標登録を受けたものであると認めることはできない。
(4)したがって、本件商標は、商標法第47条第1項の規定にいう「不正の目的」で商標登録を受けたものには該当しないというべきであるから、商標法第4条第1項第15号に違反する旨の本件審判の請求は、これを却下すべきものである。
次に、商標法第4条第1項第19号に係る無効理由につき本案に入り審理する。
3 商標法第4条第1項第19号に該当性について
(1)引用商標の周知著名性について
ア ケンタウロス社は、昭和48年(1973年)に「自動車、自動二輪車、自転車、モーターボート、ヨット等の卸、小売、及び整備並びに開発」、「衣料品、衣料雑貨品、日用雑貨品、アクセサリーその他生活雑貨の販売及び輸出入」などを目的として設立され、現在も存続しており(甲10、甲11ほか)、引用商標に係る商標権は、平成27年(2015年)5月25日にケンタウロス社から請求人に移転され(甲2~甲9、職権調査、引用商標に係る商標登録原簿)、請求人がケンタウロス社に対し同商標権について専用使用権を設定する旨の商標権専用使用権設定契約を締結した(甲12)。
イ 引用商標(色彩の異なるものを含む。)が付された使用商品(Tシャツ)が遅くとも昭和59年(1984年)に発行された雑誌に掲載されたことが認められ(甲33)、使用商品中、Tシャツ、トートバック、ジーンズなどがケンタウロスショップにおいて取り扱われていたこと(甲21、甲23~甲25、甲27、甲28、甲29の13、甲29の14ほか)、現在でもヤフオク等で使用商品(Tシャツ、ステッカーなど)が販売されていることがうかがえる(甲51~甲58)。
ウ ケンタウロスクラブは、昭和39年(1964年)に結成され、現在も活動していること(甲14、甲16、甲29、甲66ほか)、同クラブのメンバーは背中に引用商標の上部と同一視し得る標章(色彩の異なるものを含む。)が付されたジャケットやベスト等を着用し、オートバイでツーリングする場合があること(甲15、甲18、甲40、甲47ほか)、ケンタウロスクラブや同クラブが運営するケンタウロスショップのマークとして、引用商標の上部と同一視し得る標章を使用していたこと(甲18、甲21ほか)、ケンタウロスクラブをモデルとする漫画「ケンタウロスの伝説」が昭和56年(1981年)に、同漫画を原作とした劇場用アニメが昭和60年(1985年)に制作されたこと(甲14、甲15、甲40、甲65ほか)、ケンタウロスクラブは、平成13年(2001年)、平成18年(2006年)など複数回にわたり「横浜飛天双○能」と称する能舞台公演を行ったこと(甲31、甲32、甲46ほか)、ケンタウロスクラブ及び元リーダーA氏に係る記事が、平成4年(1992年)ないし令和5年(2023年)発行の雑誌に掲載され(甲18、甲19、甲40)、例えば、平成27年(2015年)2月頃に発行されたバイク雑誌に「日本一名の知れたモーターサイクルクラブ、ケンタウロス。」の記載があること(甲18)、2005年及び2022年のウェブサイト(甲15~甲17、甲46ほか)及び2008年ないし2024年のブログ等(甲42~甲47、甲49、甲50、甲64、甲67~甲72、甲74、甲75ほか)に掲載されたこと(甲42~甲45、甲47、甲49、甲50、甲64、甲67~甲73ほか)、ケンタウロスクラブが、2011年、2012年、2013年、2020年及び2021年にNHKBS4Kなどのテレビ放送(2番組)で紹介されたことがうかがえる(甲39、甲45、甲48)。
エ 前記アないしウからすれば、ケンタウロス社は、昭和48年(1973年)に設立され、同社は遅くとも昭和59年(1984年)頃から使用商品を取り扱っており、現在でもケンタウロスショップやヤフオク等を通じて使用商品が販売されていることはうかがえるものの、引用商標を使用した使用商品の市場におけるシェア、広告宣伝費については明らかでないから、請求人が主張する使用商品に係るケンタウロス社の使用商品の店舗のみでの小規模販売などの販売形態や手法等を考慮しても、使用商品に使用されている引用商標は、ケンタウロス社の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間はもとよりオートバイの愛好者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
また、ケンタウロスクラブは、昭和39年(1964年)に結成され、昭和50年代ないし平成初期において、オートバイの愛好者の間にある程度知られており、同クラブのメンバーは引用商標の上部と同一視し得る標章(色彩の異なるものを含む。)が付されたジャケット等を着用しツーリングするなどの活動を行っており、同クラブや同クラブが運営するケンタウロスショップのマークとして、引用商標の上部と同一視し得る標章を使用していたことがうかがえるとしても、提出された証拠からは、引用商標がケンタウロスクラブ及びケンタウロスショップを表示するものとして需要者及びオートバイの愛好家の間に広く認識されていると認めるに足りる証拠は見いだせない。
さらに、ケンタウロスクラブをモデルとする漫画や劇場用アニメが制作されたこと、ケンタウロスクラブが「横浜飛天双○能」と称する能舞台公演を複数回行ったことはうかがえるが、当該漫画の発行部数や劇場用アニメや能舞台公演の観客数は不明であり、ケンタウロスクラブ及び当該クラブの元リーダーA氏に係る雑誌、ウェブサイト及びブログ等の掲載回数はさほど多いとはいえず、ケンタウロスクラブが紹介されたテレビ放送についても、その放送回数は多いとはいえない。
そして、そのほか、ケンタウロスクラブ及びケンタウロスショップについてのメディアを通じた大規模な広告宣伝活動実績は確認できない。
そうすると、ケンタウロス社、ケンタウロスクラブ及びケンタウロスショップが使用する引用商標に対する需要者の認識を客観的に推し量ることができない。
その他、引用商標が、我が国及び外国の需要者の間において広く知られるに至っていることを、具体的かつ直接的に示す証拠は見いだせない。
以上よりすると、請求人が提出した証拠によっては、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、ケンタウロスクラブ及びケンタウロスショップを表示するものとして、また、ケンタウロス社の業務に係る商品を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間において広く認識されていたものと認めることはできない。
(2)本件商標の商標法第4条第1項第19号該当性について
商標法第4条第1項第19号は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもって使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)」と規定されている。
そこで検討するに、本件商標は引用商標と構成要素の一部が共通するから類似性の程度は高いといえるしても、引用商標は、上記3のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、ケンタウロスクラブ及びケンタウロスショップを表示するものとして、また、ケンタウロス社の業務に係る商品を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されているとは認めることはできず、上記2のとおり、請求人が提出した証拠からは、本件商標の買取りを迫るとか、請求人に損害を与え、被請求人において不正の利益を得る意図があったといった事実は見いだせず、そのほか、商標権者が本件商標を不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的、その他の不正の目的をもって使用をするものと認めるに足りる具体的事実は見いだせないものであり、被請求人が不正の目的をもって本件商標の商標登録を受けたものであると認めることはできないから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号を適用するための要件を欠くものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
5 請求人の主張について
請求人は、本件商標は、引用商標の上位要部と実質的に同一といえる程度に酷似しているが、当該構成は被請求人による独自の創作の結果、偶然に一致したものとは到底考えられず、C氏はクラブのメンバーではないが同クラブのファンであり、本件商標が出願された当時には、引用商標が付された商品は高い金銭的価値を有することを知っていたと考えられるなどを指摘して、本件商標は、引用商標が商標登録されていないことを奇貨として、ケンタウロス社のこれまでの努力によって、引用商標に化体した信用、名声、顧客吸引力にただ乗りし、引用商標の出所表示を希釈化させ、かつ、その名声を毀損させるという強い意志をもって、引用商標をひょう窃したのであり、不正な目的をもったひょう窃出願である旨主張する。
しかしながら、上記2のとおり、被請求人は、不正の目的をもって本件商標の商標登録を受けたものであると認めることはできないものであり、また、請求人が主張する上記事実を客観的に裏付ける証拠は確認できず、請求人の憶測に基づくものと考えられることから、当該主張をもって、被請求人が不正の目的をもって本件商標を登録出願したとはいえない。
そして、仮に被請求人が本願商標の登録出願時に引用商標を認識していたとしても、先願主義を採用する商標制度の下においては、そのように他人の商標を認識しながら先んじて出願すること自体が不正な行為とまで直ちに評価できないから請求人の上記主張を採用することはできない。
6 むすび
以上のとおり、本件審判の請求は、その無効理由中、商標法第4条第1項第15号を理由とする請求については、不適法なものであって、その補正をすることができないものであるから、同法第56条第1項において準用する特許法第135条の規定により却下すべきものである。その余の無効理由については、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-890051