商標無効審判
2023-890043
ワンスイートザテラスホテルアンドリゾート、ワンスイートザテラスホテルリゾート、ワンスイートザテラス、ワンスイート、スイート、ザテラス、テラス、テイ
- 審判番号
- 2023-890043
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 商願2021-129129
- 登録番号
- 6514011
- 請求日
- 2023年06月01日
- 審決日
- 2023年12月01日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ザ・テラスホテルズ 株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人 竹内国際知財事務所
- 【請求人代理人】杭田 恭二
- 【被請求人】合同会社 One Suite
- 【被請求人代理人】石渡 広一郎
- 審判長/審判官
- 審判長 大橋 良成
- 審判官 小林 裕子
- 審判官 阿曾 裕樹
- 分類
- T112 .251-Y (W43) / T112 .252-Y (W43) / T112 .253-Y (W43) / T112 .261-Y (W43) / T112 .262-Y (W43) / T112 .263-Y (W43) / T112 .271-Y (W43)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項10号商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法46条1項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第10号、商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第6514011号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6514011号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和3年10月18日に登録出願、同4年2月7日に登録査定され、第43類「宿泊施設の提供,キャンプ場施設の提供,ホリデイキャンプ用宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,業務用加熱調理機械器具の貸与,業務用調理台の貸与,業務用流し台の貸与,可搬式建築物の貸与」を指定役務として、同月16日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
請求人が、本件審判の請求の理由(商標法第4条第1項第10号及び同項第15号関連)において引用する商標は、請求人の役務「宿泊施設の提供」を表示するものとして需要者の間に広く認識されていると主張されている、別掲2から別掲5のとおりの構成からなる4件の商標(以下「引用商標1」から「引用商標4」という。)である。
また、請求人が、本件審判の請求の理由(商標法第4条第1項第11号及び同項第15号関連)において引用する登録商標は、以下のとおりである。
1 登録第4444991号商標(以下「引用商標5」という。)は、「THE TERRACE HOTELS」の欧文字と「ザ・テラスホテルズ」の片仮名を二段に横書きしてなり、平成11年6月23日に登録出願、第42類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として、同13年1月12日に設定登録されたものである。
2 登録第4475187号商標(以下「引用商標6」という。)は、「TERRACE HOTELS」の欧文字と「テラスホテルズ」の片仮名を二段に横書きしてなり、平成11年6月23日に登録出願、第42類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として、同13年5月18日に設定登録されたものである。
なお、引用商標1から引用商標6は、以下まとめて「引用商標」という場合がある。
第3 請求人の主張
1 請求の趣旨
請求人は、本件商標の指定役務中、「宿泊施設の提供,キャンプ場施設の提供,ホリデイキャンプ用宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」(以下「本件請求役務」という。)についての登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由(商標法第4条第1項第10号、同項第11号及び同項第15号)を要旨次のように延べ、証拠方法として甲第1号証から甲第17号証(枝番号あり。以下「甲○」と表記する。)を提出した。
2 請求の理由(要旨)
(1)本件商標及び被請求人について
ア 本件商標
本件商標を構成する英文字のうち「THE TERRACE」は最も大きく表示されており、加えて、英単語の「suite」は我が国では「スイートルーム」の略称と認識される語であり(甲6の1~3)、本件商標の構成中の「ONE SUITE」部分からは「一つのスイートルーム」という意味合いが把握されるので、該部分は本件商標の指定役務のうち「宿泊施設の提供、キャンプ場施設の提供、ホリディキャンプ用宿泊施設の提供、宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」との関係において識別力を発揮するものではなく、さらに「Hotel&Resort」についても、前記役務の内容又は質を理解させるにすぎない付記的な部分である。
以上を考慮すれば、本件商標の構成の英文字のうち最も大きく表示され看者の注意を最も惹きつける部分である「THE TERRACE」は、当該役務の需要者及び取引者に対し役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであり、この「THE TERRACE」部分が本件商標の要部として分離抽出されるものである。
したがって、本件商標は、「THE TERRACE」の文字部分より「ザテラス」又は「テラス」の称呼が生じ、この部分から「段丘、壇」などの観念が把握される。
イ 被請求人
被請求人は、2016年(平成28年)6月1日に、「ホテル、ロッジ、ペンション等宿泊施設の開発、経営、建設、販売」、「飲食店、宿泊施設及び売店の経営並びにこれらに関する経営コンサルティング」等を事業目的として設立登記された法人であり(甲7)、2019年(平成31年4月)に沖縄県国頭郡今帰仁村古宇利においてホテル(以下「被請求人ホテル」という。)を開業し、被請求人ホテルに係る業務について本件商標及び商標「THE TERRACE」を使用している(甲8の1~3)。
(2)請求人について
請求人は、1985年(昭和60年)12月14日に、「ホテル、海水浴場及びプールの経営」、「ホテル内の売店、レストラン、喫茶店、クラブ等の経営」等を事業目的として設立登記された法人である。請求人の設立当初の名称は名護国際観光株式会社であったが、2002年(平成14年)6月24日に現在のザ・テラスホテルズ株式会社に改称した(甲9の1)。
請求人は、我が国を代表する観光地であり国内外から多くの観光客が来訪する沖縄県において、「自然との調和、自然への回帰」をコンセプトとした独自のリゾートライフを提供するホテルを経営しているほか、2000年の九州・沖縄サミットのメイン会場として使用された名護市の部瀬名岬に所在する「万国津梁館」の管理事業、映画館事業、飲食店事業、食品の製造販売事業、飲料の製造販売事業、ガソリン等の燃料供給事業、発破工事・打ち上げ花火請負などの火薬取り扱い事業、損害保険・生命保険などの保険代店事業、ゴルフ場の運営など、多角的な経営を展開している(甲9の2)。
また、請求人は、関連会社と共同で2021年4月1日に沖縄県北谷町美浜に開業した新たなライフスタイルホテル「MBギャラリーチャタン by ザ・テラスホテルズ」をプロデュースするなど、ホテルのプロデュース事業も行っている(甲9の3、4)。
(3)請求人ホテルについて
請求人が沖縄県の各地で経営するリゾートホテル(甲2の1~6。以下、請求人のホテルを個別に又はまとめて「請求人ホテル」という。)は、全てその名称中に「テラス(TERRACE)」の語を含むものであり、請求人は請求人ホテルについて引用商標1から引用商標4、引用商標5及び引用商標6と社会通念上同一の商標を使用している。
請求人ホテルは「テラス」の略称でも特定されており、雑誌等では例えば「5つの“テラス”はなぜ私たちをかくも惹きつけるのか」(甲10の1)、「“テラス”がいざなう本物の非日常」(甲10の2)、「第5のテラスが読谷村宇座に誕生・・・」と紹介されている(甲10の3)。
以下、請求人ホテルの概要を説明する。
ア ザ・ブセナテラス(THE BUSENA TERRACE)
1997年(平成9年)7月10日に請求人のフラッグシップホテルとして開業した「ザ・ブセナテラス(THE BUSENA TERRACE)」は、2000年九州・沖縄サミットのメイン会場として国内外で広く知られるようになった沖縄県名護市喜瀬の部瀬名岬で四半世紀以上にわたり営業している。
客室は392室、コテージ18室であり、7つのレストラン、6つのバーやカフェなど、7つのショップを備える規模のリゾートホテルとして(甲2の1、2)、日本国内のみならず世界各国からの観光客を受け入れ、高い評価を受けている。
名護市が2018年12月に実施した、同市を訪れた来訪客の行動や消費実態、満足度等を把握することを目的とした観光客アンケート調査では、「ザ・ブセナテラス(THE BUSENA TERRACE)」は「旅行の一番の目的地」の第8位(日本人観光客の回答では第7位)にランクインしている。宿泊施設として唯一のランクインである(甲11の1)。また、同アンケートでは、名護市内で宿泊した施設として「ザ・ブセナテラス(THE BUSENA TERRACE)」が最も多い回答を得た(甲11の1)。
2012年8月25日株式会社ダイヤモンド社発行の雑誌「週刊ダイヤモンド」は、満足度の高い日本のホテルを特集しており、「ザ・ブセナテラス(THE BUSENA TERRACE)」は同誌が行ったアンケート調査のうち「もっとも満足したリゾートホテル」で第1位となっている(甲11の2)。翌2013年の同誌の同様のアンケート調査では、「一万人が評価した「最も満足したホテル」」部門で第15位にランクインし、「いつか泊まりたいホテル」部門では第11位にランクインした。また、性別、年代別にみた「満足したホテル」部門でも、「ザ・ブセナテラス(THE BUSENA TERRACE)」は30代の男女で第7位、40代女性で第5位にランクインした(甲11の3)。同誌の2015年8月1日号で特集された「プロが選ぶベストホテル」のリゾートホテルランキングでは第1位を獲得したが、これは、第2位のホテルが16ポイント、第3位のホテルが15ポイントであるのに対して「ザ・ブセナテラス(THE BUSENA TERRACE)」は33ポイントであり、圧倒的な評価を得ての第1位の獲得である(甲11の4)。
コロナ禍第7波のさなかであった2022年7月に実施された同様のアンケートでも「ザ・ブセナテラス(THE BUSENA TERRACE)」は根強く、かつ、安定して高い評価を受けており、「「休暇」で泊まりたいホテルランキング」では全国第8位(九州・沖縄地方の宿泊施設に絞ったランキングでは第3位)、「リピーター支持率が高いホテルランキング」では全国第2位を獲得している。「「100万円あったら」泊まりたいホテルランキング」では、九州・沖縄の宿泊施設のランキングで第5位となっている(甲11の5)。
「ザ・ブセナテラス(THE BUSENA TERRACE)」のロゴマークは引用商標4をその構成中に含むものであり、請求人はこれを当該ホテルに係る役務について使用している(甲2の1、2)。
イ ザ・テラスクラブ アット ブセナ(THE TERRACE CLUB AT BUSENA)
請求人は2011年(平成23年)4月1日に、名護市喜瀬の部瀬名岬に「ザ・テラスクラブ アット ブセナ(THE TERRACE CLUB AT BUSENA)」を開業した。穏やかに澄んだ名護湾を臨むこのホテルは68の客室を備え、ウェルビーイングを目的とした本格的なタラソテラピーを提供するという、これまでにないコンセプトのリゾートホテルとして(甲2の3)、国内外から宿泊客を受け入れている。
前出の名護市のアンケート調査(甲11の1)の「名護市内で宿泊した施設の名称」では「ザ・テラスクラブ アット ブセナ(THE TERRACE CLUB AT BUSENA)」は7位にランクインしている(甲11の1)。
「ザ・テラスクラブ アット ブセナ(THE TERRACE CLUB AT BUSENA)」の宿泊客の満足度は非常に高く、2016年10月8日発売の雑誌「週刊ダイヤモンド」(株式会社ダイヤモンド社発行)に掲載される、日本のリゾートホテルの総合力を調べたアンケート結果(「ニッポンのリゾート」総合&満足度ランキング)では、第15位にランクインしており(甲12の1)、2017年10月30日発売の同誌に掲載された記事では、宿泊客が満足したホテルランキングが全国で11位、沖縄県では1位であった。また、同ホテルは「泊まってみたい憧れホテル」としても、全国で19位にランクインし、ホテルで働いているホテルマンが満足した他社のホテルとしては全国で8位にランクインしている(甲12の2)。
「ザ・テラスクラブ アット ブセナ(THE TERRACE CLUB AT BUSENA)」のロゴマークは引用商標4をその構成中に含むものであり、請求人はこれを当該ホテルに係る役務について使用している(甲2の3)。
ウ ジ・ウザテラス ビーチクラブヴィラズ(THE UZA TERRACE BEACH CLUB VILLAS)
請求人は、沖縄独自の古き良き伝統文化に彩られた沖縄県本島中部の読谷村に、「ジ・ウザテラス ビーチクラブヴィラズ(THE UZA TERRACE BEACH CLUB VILLAS)」を2016年(平成28年)3月18日に開業した。48のヴィラタイプの客室すべてにプライベートプールが備え付けられているこのホテルは、一泊10万円以上の高級リゾートとして話題となり、このホテルの開業は各種のメディアで取り上げられた(甲10の3、甲13の1~6)。
「ジ・ウザテラス ビーチクラブヴィラズ(THE UZA TERRACE BEACH CLUB VILLAS)」は、その卓越したサービスが世界基準であると認められ、ホテルとレストランの世界的な会員組織である「ルレ・エ・シャトー(RELAIS&CHATEAUX)」への加盟が2017年に認められた。沖縄県の施設として初めての加盟である。日本国内の施設としては他に伊豆の旅館「あさば」、西麻布のフレンチレストラン「レ・フェルヴェソンス(L’Effervescence)」などの一流の施設のみが加盟を認められている(甲13の7~9)。
「ジ・ウザテラス ビーチクラブヴィラズ(THE UZA TERRACE BEACH CLUB VILLAS)」のロゴマークは引用商標4をその構成中に含むものであり、請求人はこれを当該ホテルに係る役務について使用している(甲2の4)。
エ ジ・アッタテラス クラブタワーズ/THE ATTA TERRACE CLUB TOWERS
請求人は、2005年(平成17年)6月10日に、沖縄県国頭郡恩納村安富祖で請求人が経営するジ・アッタテラス ゴルフリゾート(2002年6月10日開業、甲2の7)に隣接する場所に「ジ・アッタテラス クラブタワーズ(THE ATTA TERRACE CLUBTOWERS)」を開業した。「ジ・アッタテラス クラブタワーズ(THE ATTA TERRACE CLUB TOWERS)」は74の客室、4つのヴィラタイプ客室、レストラン、屋外プールなどを備えている(甲2の5)。
「ジ・アッタテラス クラブタワーズ(THE ATTA TERRACE CLUB TOWERS)」は、株式会社JTBが同社の協定旅館ホテル連盟の宿泊者アンケートに基づいて選定する「サービス優秀旅館・ホテル表彰」を3回(2007年、2010年、2014年)受賞している(甲14の1~3)。
「ジ・アッタテラス クラブタワーズ(THE ATTA TERRACE CLUB TOWERS)」のロゴマークは引用商標4をその構成中に含むものであり、請求人はこれを当該ホテルに係る役務について使用している(甲2の5)。
オ ザ・ナハテラス/THE NAHA TERRACE
請求人が那覇市内に1999年(平成11年)8月1日に開業した「ザ・ナハテラス(THE NAHA TERRACE)」は、145の客室、3つのレストラン、4つの宴会場、屋外プールなどを備えたシティリゾートホテルであり(甲2の6)、観光目的の宿泊客のみならず、ビジネス目的の宿泊客からも、その利便性と高品質なサービスが高く評価されている。
「ザ・ナハテラス(THE NAHA TERRACE)」に隣接する土地には、請求人が経営する長期滞在型宿泊施設の「ザ・ナハテラス クラブレジデンス(THE NAHA TERRACE CLUB RESIDENCE)」(甲15の1)及びスポーツジムや飲食店を備えた施設「アネックス棟」(甲15の2)が併設されており、「ザ・ナハテラス(THE NAHA TERRACE)」の付加価値を大きく高めている。
「ザ・ナハテラス クラブレジデンス(THE NAHA TERRACE CLUB RESIDENCE)」のロゴマークは引用商標4をその構成中に含むものであり、請求人はこれを当該ホテルに係る役務について使用している(甲2の6)。
(4)引用商標等の使用と統一された請求人ホテルのイメージの創出のための取り組み
前項で掲げた各請求人ホテルのロゴマークのデザインの共通性からも明らかなとおり、請求人は請求人ホテルについて統一したブランドイメージを創出するための取り組みを続けている。
例えば、請求人ホテルのホームページ(甲16の1)や予約サイト(甲16の2)では引用商標1と請求人ホテルのロゴマークの最上部に配された図形を組み合わせた商標を表示している。
また、すべての請求人ホテルで使用するアメニティ類(部屋着、タオル、せっけん類など)の包装にも上掲の商標又は引用商標3を表示し(甲16の3~5)、請求人ホテルのメンバーズカードには引用商標2を表示している(甲16の6、7)。
このような、請求人ホテルの統一されたブランドイメージを創出するために商標を効果的に活用している請求人の取り組みは、マーケティングやブランディングの専門家からも高く評価されており、例えばウジトモコ著2014年10月1日株式会社クロスメディア・パブリッシング発行の書籍「問題解決のあたらしい武器になる視覚マーケティング戦略」では、請求人による統一したブランドイメージを創出する戦略が「・・・このザ・テラスホテルズは、ロゴやVIを使ったビジュアルイメージの統一とデザインのバリエーション展開がとても上手なホテルです。」と紹介されている(甲17)。
(5)請求人ホテルの評価
上記の請求人ホテルは、26年前に名護市喜瀬の部瀬名岬で営業を開始した「ザ・ブセナテラス(THE BUSENA TERRACE)」(甲2の1、2)を筆頭に、国内外で高い評価を受けている。
2015年1月に旅行予約サイト「楽天トラベル」を運営する楽天株式会社と株式会社ダイヤモンド社が共同で実施した、全国規模で調査したホテルと旅館に関するアンケート調査(有効回答数3,466人)では、「ザ・ブセナテラス(THE BUSENA TERRACE)」が、「泊まってみて良かったホテル」ランキングで全国15位であり、沖縄県内の宿泊施設では2位であった(甲10の4)。
2017年(平成29年)3月28日株式会社ハースト婦人画報社発行の雑誌「Richesse(リシェス)No.19」では、「The Busena Terrace 自然を感じる究極のラグジュアリーリゾート 20周年を迎えるザ・ブセナテラスへ」との見出しのもと、「ザ・ブセナテラス(THE BUSENA TERRACE)」が、「沖縄本島北部、部瀬名岬という最高のロケーションに、1997年に開業。以来、沖縄のリゾートシーンをけん引してきたザ・ブセナテラス・・・」などと紹介されている(甲10の5)。
2017年6月9日株式会社文藝春秋発行の雑誌「CREA Traveller(クレアトラベラー)2017 Summer NO.50」では、「5つのリゾートが紡ぐ楽園の物語 ザ・テラスホテルズという美しきサンクチュアリ」との見出しのもと、請求人ホテルが「国内外から訪れる数多くのVIPをもてなし、そのホスピタリティを時代とともに常に進化させてきた沖縄を代表するラグジュアリーブランド「ザ・テラスホテルズ」・・・」と、写真とともに詳しく紹介されている(甲10の6)。
世界最大の旅行サイト「TripAdvisor」が2018年に発表した、トリップアドバイザー上に投稿された世界中の旅行者からのロコミ評価が高かった宿泊施設をランキング化した「トラベラーズチョイス ホテルアワード2018」の日本のランキングでは、「ラグジュアリー部門」で「ジ・アッタテラス クラブタワーズ(THE ATTA TERRACE CLUB TOWERS)」が第24位、「小規模ホテル部門」では「ザ・テラスクラブ アット ブセナ(THE TERRACE CLUB AT BUSENA)」が第10位にランクインしており、「ザ・テラスクラブ アット ブセナ(THE TERRACE CLUB AT BUSENA)」は「「ロマンティック」部門」でも第6位にランクインしている(甲10の7)。
以上のとおり、請求人ホテルは広く全国的に高い評価を受けており、請求人ホテルに係る事業を展開する請求人は長年にわたり沖縄のホテル業界をけん引してきた。
(6)請求人ホテルに係る事業の規模
請求人のホテル事業の売り上げは、2008年度と2009年度の九州・沖縄地方のホテル旅館業の売上ランキングで第1位であり、以後7年連続で第1位を獲得している。2015年度には2位以下に圧倒的な差をつけた第1位であった(甲10の8~10)。
請求人ホテルに係る事業の請求人の売り上げは全国でも上位であり、株式会社東洋経済新報社発行の雑誌「適刊東洋経済2018年7/28日号」で同社がまとめた2017年1月~2018年3月に決算期を迎えた売上高5億円以上かつ当期純利益1億円以上の全国のホテルの増益率ランキング(甲10の11)に掲載されている売上高によれば、請求人の売り上げは全国第15位であり、純利益についても全国で第23位につけている。
(7)引用商標の周知性
請求人は、請求人ホテルのリーフレット(甲2の1~6)をはじめ、インターネットホームページ(甲16の1)、宿泊予約サイト(甲16の2)、宿泊客が利用する部屋着、タオル、シャンプー、せっけん類、ポーチ、かばん、風呂用ラグマットなどの役務の提供の用に供する物(甲16の3~5)、メンバーズカード(甲16の6、7)など、請求人ホテルに係る事業の自他役務識別標識として引用商標1から引用商標4を含む態様の商標、並びに引用商標5及び引用商標6と社会通念上同一と判断されるべき商標をそれぞれ使用している。
そして、請求人は四半世紀以上の長きにわたり請求人ホテル(甲2の1~6)を沖縄県各地で展開しており、いずれのホテルも国内外で高く評価されている人気のホテルとして様々なメディアで広く紹介されている(甲10の1~7、甲11~甲15)。また、請求人ホテルの事業に係る請求人の売上は、沖縄県の宿泊施設では常にトップクラスであり、全国的にも上位に位置している(甲10の8~11)。
かくのごとく、請求人ホテルは国内外で高い評価を得ている著名なホテルであり、請求人がそのホテル事業について広く使用する引用商標1及び引用商標2は、役務「宿泊施設の提供」及び「宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」について、遅くとも本件商標の登録出願日には、我が国の需要者及び取引者間において広く知られた商標となるに至っていた。
また、長年にわたる請求人のホテル事業の展開の結果、請求人ホテルは、「5つの“テラス”はなぜ私たちをかくも惹きつけるのか」、「“テラス”がいざなう本物の非日常」、「第5のテラスが読谷村宇座に誕生・・・」と、「テラス」の略称で特定されている(甲10の1~3)ことから明らかなとおり、請求人ホテルの略称である引用商標3及び引用商標4も、請求人が提供する役務「宿泊施設の提供」及び「宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」について、遅くとも本件商標の登録出願日には我が国の需要者及び取引者間において広く知られた商標となるに至っていた。
引用商標5及び引用商標6は、請求人ホテルの略称として広く知られる「TERRACE/テラス」の文字を含むものであり、かつ、沖縄県の宿泊施設事業者として常にトップクラスの売上を維持している請求人の略称であるから、少なくともその指定役務中の「宿泊施設の提供」及び「宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」については、遅くとも本件商標の登録出願日には我が国の需要者及び取引者間において広く知られた商標となるに至っていた。
以上のとおり、すべての引用商標は、請求人ホテルについて請求人が提供する「宿泊施設の提供」及び「宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」について我が国の需要者及び取引者間において広く知られた商標である。
(8)商標の類似について
本件商標を構成する英文字のうち「THE TERRACE」は最も大きく表示されており、加えて、英単語の「suite」は我が国では「スイートルーム」の略称と認識される語であり(甲6の1~3)、本件商標の構成中の「ONE SUITE」部分からは「一つのスイートルーム」という意味合いが把握されるので、該部分は本件商標の指定役務のうち「宿泊施設の提供、キャンプ場施設の提供、ホリディキャンプ用宿泊施設の提供、宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」との関係において識別力を発揮するものではなく、さらに「Hotel&Resort」についても、前記指定役務の内容又は質を理解させるにすぎない付記的な部分である。これより本件商標の「THE TERRACE」部分は、当該役務の需要者及び取引者に対し役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであり、この「THE TERRACE」部分が本件商標の要部として分離拍出されるものである。よって、本件商標からは「ザテラス」又は「テラス」の称呼が生じ、「段丘、壇」などの観念が把握される。
一方で、引用商標1及び引用商標2の構成中の「HOTELS」は「宿泊施設の提供」及び「宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」との関係において役務の内容等を表す語であり自他役務識別力を有さないので、引用商標1の要部は「THE TERRACE」であって、また、同様に引用商標2の要部は「THE TERRACE」である。これより引用商標1及び引用商標2からは「ザテラス」又は「テラス」の称呼が生じ、「段丘、壇」などの観念が把握される。
請求人ホテルの略称として広く知られる引用商標3及び引用商標4からも「ザテラス」又は「テラス」の称呼が生じ、「段丘、壇」などの観念が把握される。
引用商標5及び引用商標6については、請求人の略称として広く知られていると同時に、その構成中の「HOTELS/ホテルズ」の文字は「宿泊施設の提供」及び「宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」との関係において役務の内容等を表す語であるので、これらの引用商標の要部はそれぞれ「THE TERRACE/ザ・テラス」、「TERRACE/テラス」と捉えられ得るものである。これより引用商標5及び引用商標6からも「ザテラス」又は「テラス」の称呼が生じ、「段丘、壇」などの観念が把握される。
以上のとおり、本件商標と引用商標は称呼及び観念が同一である。
したがって、本件商標は、すべての引用商標と類似の商標である。
(9)商標法第4条第1項第10号該当性
本件商標は、請求人の業務に係る「宿泊施設の提供」及び「宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」を表示するものとして、本件商標の登録出願の時点において既に需要者の間に広く認識されていた引用商標1、引用商標2、引用商標3及び引用商標4と類似の商標であって、当該役務と類似の役務について使用されるものである。
したがって、本件商標は、その指定役務中、本件請求役務については、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(10)商標法第4条第1項第11号該当性
本件商標は、請求人が保有する引用商標5及び引用商標6と類似の商標であり、その指定役務中第43類の「宿泊施設の提供,キャンプ場施設の提供,ホリデイキャンプ用宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」は、引用商標5及び引用商標6の指定役務のうち「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」と同一又は類似の関係にある。
そして、引用商標5及び引用商標6は本件商標の先願商標である。
したがって、本件商標は、その指定役務中、本件請求役務については、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(11)商標法第4条第1項第15号該当性
引用商標1、引用商標2、引用商標3及び引用商標4は、請求人ホテルに関する事業について長年にわたり使用されているものであり、いずれも、本件商標の登録出願の時点において、請求人ホテルを表示するものとして全国の需要者、取引者間において広く知られていた著名な商標であり、また、引用商標3及び引用商標4については請求人ホテルの略称(甲10の1~3)の英語表記であって、請求人ホテルを表示する著名な商標といえる。
そして、請求人は2021年4月1日に沖縄県中頭郡北谷町美浜に開業したホテル「MBギャラリーチャタン by ザ・テラスホテルズ」のプロデュースを行っており(甲9の3、4)、当該ホテルは需要者間において「沖縄の「テラス」がプロデュースするハイセンスなホテル」と認識されている。
かかる状況のなか、被請求人が「THE TERRACE」の文字を含む本件商標を「宿泊施設の提供,キャンプ場施設の提供,ホリデイキャンプ用宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」について使用した場合には、当該役務が請求人の業務に係る役務であるか、又は請求人の関連会社の業務に係る役務であると誤認し、役務の出所について混同を生ずるおそれがある。
したがって、本件商標はその指定役務のうち上記役務について、商標法第4条第1項第15号に該当する。
第4 被請求人の答弁
1 答弁の趣旨
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証から乙第6号証(枝番号あり。以下「乙○」と表記する。)を提出した。
2 答弁の理由(要旨)
(1)前提
ア 「One Suite THE TERRACE」の由来
被請求人は、2019年4月から沖縄県国頭郡今帰仁村古宇利島内にて「One Suite THE TERRACE」というホテルの運営を行っている。
当ホテルの立地は、沖縄県今帰仁村にある古宇利大橋と海が綺麗に見えるロケーションのため、ホテル建設当時の計画で、各客室から見える景観を売りにして、部屋の“テラス”でバーベキューができるよう設計している(乙1)。また、客室数を確保しようとするとすべての部屋にテラスを付けるのは難しいが、当ホテルでは全ての部屋に“テラス”を設けることにこだわっている(乙2)。
このように“テラス”を売りにしたホテルであることがホテル名からも一目でわかるように、被請求人のグループ名である「One Suite」と「THE TERRACE」という語を結合したホテル名を採用している。
被請求人は、「One Suite THE TERRACE」を皮切りに、古宇利島内にて2021年7月にフラッグシップホテルとなる「One Suite THE GRAND」を開業。レストラン事業として、「Restaurant L LOTA」、「La BOMBANCE 古宇利島」の運営を行なっており、さらに同島内にOne Suiteブランドのリゾートホテルの展開を計画している。
イ 「TERRACE」の意味
「TERRACE」とは、「建物の外部にあって地面より一段高く、床が人工物でできたスペース」の意味として広く一般的に使用される語である。「バルコニー、ベランダ」などの同意語としても使用されている(乙3の1~6)。
つまり、「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」等の役務との関係において、「TERRACE」という語は「テラスのあるホテル」、「テラスのあるホテルの契約の媒介又は取次ぎ」、程の意味合いとして認識されるものであり、これらの役務との関係で強い識別力を有する語ではない。
ウ 「TERRACE(テラス)」の市場における使用例について
「TERRACE(テラス)」や「THE TERRACE(ザ テラス)」を名称に含む宿泊施設の一覧(乙4の1~60)、飲食店の一覧(乙5の1~53)を提出する。
公衆に利用可能な限定的な手法に基づいた検索だけでも、「TERRACE(テラス)」や「THE TERRACE(ザ テラス)」を含む名称は多岐にわたり使用されていることが確認でき、「TERRACE(テラス)」や「THE TERRACE(ザ テラス)」の語が、これらの役務との関係で強い識別力を有する語でないことがわかると同時に、このように一般的に使用される語のみで、識別力を獲得するのは非常に困難であることもわかる。
エ 称呼内に「テラス」の音が含まれる商標登録出願・商標登録について
称呼内に「テラス」の音が含まれ、かつ「宿泊施設の提供,飲食物の提供」と同一・類似の役務をいずれも指定した商標登録及び商標登録出願を検索したところ、288件確認できた(乙6)。
このように「TERRACE」や「テラス」が含まれた商標が多数重複して商標登録されていることからも、特許庁の審査においても「TERRACE」、「テラス」部分に強い識別力がないと判断されていることは明らかである。また、このように「TERRACE(テラス)」が含まれる多くの商標に接する需要者、取引者にとっても、「TERRACE(テラス)」部分のみをもって、役務提供者を特定するのではなく、「TERRACE(テラス)」以外の他要素も含めて役務提供者を特定していることがわかる。
(2)商標法第4条第1項第10号
ア 争いのない事実
請求人と被請求人は他人であり、本件商標に係る本件請求役務は、請求人役務と同一又は類似の役務である点については、争わない。
イ 周知性について
請求人は、引用商標1から引用商標4が請求人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていると主張する。その根拠として、「ザ・ブセナテラス(THE BUSENA TERRACE)」、「ザ・テラスクラブアットブセナ(THE TERRACE CLUB AT BUSENA)」、「ジ・ウザテラスビーチクラブヴィラズ(THE UZA TERRACE BEACH CLUB VILLAS)」、「ジ・アッタテラスクラブタワーズ/THE ATTA TERRACE CLUB TOWERS」「ザ・ナハテラス/THE NAHA TERRACE」のそれぞれのホテルの周知性について説明がされているが、これらホテルの名称と引用商標1から引用商標4は異なる商標であり、それらが周知である根拠にはなり得ない。
この点、請求人は、それぞれのホテルのロゴマークは、引用商標4をその構成に含むと主張しているが、一体性の強いロゴマークに接する需要者等が、引用商標4の「terrace」部分のみに着目し、取引に資するとは考えられず、引用商標4のみで周知性を獲得しているとする根拠にはならない。
また、仮に請求人が主張するとおり、請求人ホテルのそれぞれの名称が周知商標であったとしても、そのことだけを持って引用商標1から引用商標4が当然に周知性を獲得しているということにはならない。
この点、請求人は引用商標1及び引用商標2は、ホテルのリーフレット、インターネットホームページや、宿泊客が利用する部屋着等のアメニティ等で使用していると主張しているが、実際に使用されているのは、クバの葉をモチーフにした請求人ホテルの図形ロゴと結合した状態であり、引用商標1及び引用商標2が単体で使用されているのは「リラックスウェア」の一部分のみである。このような状況において、引用商標1及び引用商標2のみで周知性を獲得しているとする根拠にはならない。
通常ホテルを利用する需要者等が一番に気にするのは、ホテルの名称それ自体であり、そのホテルの名称が周知であったとしても、そのホテルで使用されている他のブランド要素もホテルの名称と同じく当然に周知性を獲得しているという評価にはならないし、請求人は引用商標1及び引用商標2のみで周知性を獲得していると主張する根拠を示していない。
さらに、請求人は、引用商標3「TERRACE」及び引用商標4「Terrace」について、請求人ホテルの略称であり遅くとも2021年(令和3年)10月18日には我が国の需要者及び取引者間において広く知られた商標となるに至ったと主張するが、仮に請求人ホテルの名称自体が周知な商標であったとしても、その略称が当然に周知性を獲得しているという評価にはならないし、請求人は引用商標3及び引用商標4のみが周知であると主張する根拠を示していない。
なお、請求人は、請求人ホテルは雑誌等では「テラス」の略称で特定されていると主張するが、雑誌の内容をみるに、請求人ホテルの特集記事の中に、請求人ホテルを紹介する1つのキャッチ(タイトル)として、これらの文章が使用されているにすぎず、このことをもって、請求人ホテルが「テラス」の略称でも特定されていると評価することもできない。
そもそも、引用商標1から引用商標4に含まれる「THE TERRACE(ザ テラス)」や、「TERRACE(テラス)」は、「建物の外部にあって地面より一段高く、床が人工物でできたスペース」の意味として広く一般的に使用される語であり、同業界ではありふれて使用されている。
すなわち、「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」との関係において、「THE TERRACE(ザ テラス)」や、「TERRACE(テラス)」のみの語を持って役務提供者を特定することは極めて困難である。
以上より、請求人の主張は失当である。
ウ 本件商標と引用商標1から引用商標4の類否判断
本件商標は、「Tをモチーフにした図形ロゴ」、「ONE SUITE」、「THE TERRACE」及び「Hotel&Resort」の4つの構成要素を有する結合商標である。
請求人は、本件商標を構成する英文字のうち「THE TERRACE」は最も大きく表示されており、「ONE SUITE」部分は識別力を発揮せず、「Hotel&Resort」部分は役務の内容又は質を付記的に表示しているにすぎないから、本件商標の要部が「THE TERRACE」と主張し、引用商標1から引用商標4と類似すると主張する。
確かに、本件商標の構成文字のうち「THE TERRACE」部分は大きく表示されているが、「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」との関係にて、そもそも識別力が乏しい部分である。とすれば、本件商標中「THE TERRACE」部分のみをもって、これに接する需要者等が取引に資することは考えられず、他の構成要素も含めて、役務提供者を特定する。
この点、請求人は本件商標「ONE SUITE」部分についての識別力を否定するが、「ONE SUITE」が「一つのスイートルーム」の意味を表す語として一般的に使用されているということはなく、十分に識別力を発揮する部分である。事実「one suite」の語をGoogle検索にて完全一致検索した結果、宿泊施設の情報については、被請求人が運営するグループホテルの情報のみがヒットし、識別力を有していることがわかる(乙6)。
また、最上段に配置される「Tをモチーフにした図形ロゴ」もデザイン性が高く十分に識別力を発揮する部分である。
以上より、たとえ本件商標中識別力の弱い「THE TERRACE」部分と引用商標1から引用商標4の一部が共通していたとしても、これらに接する需要者等は本件商標を構成する他の要素「ONE SUITE」や「Tをモチーフにした図形ロゴ」部分を含め役務提供者を区別するのであり、「ONE SUITE」や「Tをモチーフにした図形ロゴ」を有する本件商標と引用商標1から引用商標4は、外観、称呼及び観念いずれもが混同するおそれのない非類似の商標である。
また、そもそも請求人は「TERRACE」や「THE TERRACE」のみの商標権を有していない。仮に「TERRACE」や「THE TERRACE」の文字のみで商標登録出願を行ったとしても、「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」との関係にて、識別力が乏しいことを理由に商標登録を受けることができないものと思料する。
仮に請求人が主張するとおり、引用商標1及び引用商標2の「THE TERRACE HOTELS」が需要者等において広く知られた商標であったとしても、このような識別力の弱い語の結合からなる商標の特性上、それは「THE TERRACE HOTELS」の「HOTELS」まで含めた形で初めて請求人を特定できるものであり、その中に含まれる「THE TERRACE」や「TERRACE」まで類似する商標との主張は成り立たない。
したがって、いずれにしても本件商標と引用商標1から引用商標4は類似するものでない。
エ 小括
以上より、請求人の引用商標1から引用商標4が請求人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているとの主張は失当であり、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当しない。
仮に引用商標1及び引用商標2が周知商標であったとしても、このような識別力の弱い語の結合からなる商標の特性上、その類似の範囲は極めて狭いものであり「THE TERRACE」まで類似する商標との主張は成り立たない。
また、請求人の本件商標と各引用商標は称呼及び観念が同一であり、類似の商標であるとの主張も失当であり、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第11号
ア 争いのない事実
引用商標5及び引用商標6は、本件商標の登録出願日前の登録商標であり、請求人と被請求人は他人である。また、本件商標に係る本件請求役務は、引用商標5及び引用商標6に係る指定役務と同一又は類似の役務である。
この点については、争わない。
イ 本件商標と引用商標5及び6の類否判断
本件商標は「Tをモチーフにした図形ロゴ」、「ONE SUITE」、「THE TERRACE」及び「Hotel&Resort」の4つの構成要素を有する結合商標である。
請求人は、引用商標5及び引用商標6については、請求人の略称として広く知られていると主張するが、「THE TERRACE HOTELS/ザ・テラスホテルズ」、「TERRACE HOTELS/テラスホテルズ」のみで周知性を獲得していると主張する根拠が乏しい。
また、請求人は、引用商標5及び引用商標6の構成中の「HOTELS/ホテルズ」の文字は「宿泊施設の提供」及び「宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」との関係において役務の内容等を表す語であるので、これらの引用商標の要部はそれぞれ「THE TERRACE/ザ・テラス」、「TERRACE/テラス」と捉えられ得ると主張する。
しかしながら、引用商標5及び引用商標6を構成する「THE」、「TERRACE」及び「HOTELS」は、いずれの語も指定役務との関係で識別力が高いと評価されるものではなく、「THE TERRACE HOTELS/ザ・テラスホテルズ」、「TERRACE HOTELS/テラスホテルズ」全体の構成や組み合わせも含めて、識別力が認められ商標登録されているものと思料する。
とすれば、「THE TERRACE HOTELS/ザ・テラスホテルズ」、「TERRACE HOTELS/テラスホテルズ」中、「THE TERRACE/ザ・テラス」、「TERRACE/テラス」部分のみが商標の要部であるとの主張は成り立たない。
そもそも、本件商標中「THE TERRACE」部分は、「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」との関係にて、識別力が乏しい部分であるからこの部分が引用商標5及び引用商標6と一部共通していたからといって、これらに接する需要者等が混同するおそれはなく、他の要素を含めて、役務提供者を区別するものと確信する。
このことは、「TERRACE」や「テラス」が含まれた商標が多数重複して商標登録されていることからも明らかである(乙5)。
以上より、たとえ本件商標中「THE TERRACE」部分が引用商標5及び引用商標6の一部と共通していたとしても、これらに接する需要者等は本件商標を構成する他の要素「ONE SUITE」や「Tをモチーフにした図形ロゴ」部分を含め役務提供者を区別するのであり、「ONE SUITE」や「Tをモチーフにした図形ロゴ」を有する本件商標と引用商標5及び引用商標6は、外観、称呼及び観念いずれもが混同するおそれのない非類似の商標である。
ウ 小括
以上より、請求人の主張は失当であり、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第15号
ア 争いのない事実
請求人と被請求人は他人であり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号から同項第14号に該当するものではない。この点については、争わない。
イ 混同の有無
本件商標と引用商標は非類似の商標である。
また、引用商標自体が、請求人ホテルを表示する周知な商標であると主張する根拠が示されていない。
そして、「TERRACE(テラス)」の語が、「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ」等の役務との関係において「テラスのあるホテル」、「テラスのあるホテルの契約の媒介又は取次ぎ」程の意味合いとして認識され、「TERRACE(テラス)」や「THE TERRACE(ザ テラス)」を含む宿泊施設や飲食店が複数存在し(乙4の1~60)、これらと混同が生じていない状況に照らせば、本件商標にたとえ「THE TERRACE」の語が含まれていたとしても、これらに接する需要者等は他の要素「One Suite」や「Tをモチーフにした図形ロゴ」部分まで含めて、役務提供者を区別するものであり、これらに接する需要者等が混同を生ずるおそれはない。
ウ 小括
以上より、請求人の「THE TERRACE」の文字を含む本件商標をその指定役務に使用した場合には、当該役務が請求人の業務に係る役務であるか、または、請求人の関連会社の業務に係る役務であると誤認し、役務の出所について混同を生ずるおそれがあるとの主張は失当であり、本件商標は、請求人の業務に係る役務と混同を生ずるおそれはなく、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
第5 当審の判断
1 利害関係について
請求人が本件審判を請求することの利害関係の有無については、当事者間に争いがなく、当審は請求人が本件審判の請求について利害関係を有すると認める。
2 引用商標の周知著名性について
(1)請求人の提出証拠及び主張によれば、以下の事実が認められる。
ア 請求人は、ホテル、ビーチ及びプールの経営、ホテル内のショップ、レストラン等の事業を事業内容としている会社であり、平成14年6月から商号を「ザ・テラスホテルズ株式会社」としている(甲9の1、2)。
イ 請求人の経営するホテルには、「ザ・ブセナテラス」(THE BUSENA TERRACE)、「ザ・テラスクラブ アット ブセナ」(THE TERRACE CLUB AT BUSENA)、「ザ・ナハテラス」(THE NAHA TERRACE)、「ジ・アッタテラス クラブタワーズ」(THE ATTA TERRACE CLUB TOWERS)、「ジ・ウザテラス ビーチクラブヴィラズ」(THE UZA TERRACE BEACH CLUB VILLAS)がある(甲2の2~6、甲9の2)。
ウ 請求人の経営するホテルのパンフレット(甲2の1、2)、ウェブサイト(甲3、甲16の1、2)、アメニティや備品(甲16の3~5)、メンバーズカード(甲16の6)には、「THE TERRACE HOTELS」の文字を含むロゴを表示するものがある。
エ 請求人の売上高は、2015年度に230億円あり、九州・沖縄のホテル旅館業の中では8年連続のトップであった(甲10の9)。
オ 請求人又はその経営するホテルを紹介する雑誌の記事情報において、「5つの“テラス”はなぜ私たちをかくも惹きつけるのか」(甲10の1)、「ザテラスホテルズ 4つのレジェンダリー・リゾート “テラス”がいざなう本物の非日常」(甲10の2)、「ジ・ウザテラスビーチクラブヴィラス 第5のテラスが読谷村宇座に誕生」(甲10の3)のように記載するものがある。
(2)上記認定事実によれば、請求人は、複数のホテルの経営に関与し、その売上高も相当の規模に及ぶから、その会社の名称又はそれに相当する「THE TERRACE HOTELS」の標章が同業者の間においてある程度認知されることがあるとしても、一般の需要者の目につきやすいと考えられる各ホテルの名称は引用商標とは異なるため、当該名称を一般の需要者が認知する機会は限定的であると考えられるから、請求人の事業規模や各ホテルの評価や評判を根拠に、請求人の名称に相当する「THE TERRACE HOTELS」(及び「TERRACE HOTELS」)の文字からなる標章が、我が国の一般需要者の間において広く知られているとは直ちに評価し難い。
また、請求人の名称に相当する「THE TERRACE HOTELS」の文字からなるロゴが、請求人のホテルのパンフレットやウェブサイト、アメニティや備品などに表示されているとしても、それら情報に接するのは宿泊者が中心になると考えられるから、それらロゴ使用による一般の需要者に対する広告宣伝効果は極めて限定的であると考えられる。
さらに、請求人又はその経営するホテルを「テラス」と略称する雑誌記事情報が存在するとしても、文脈上略称であることが明らかな状態における数件の記事情報にすぎず、当該略称が我が国の需要者の間において広く親しまれていることを示す証拠としては十分ではない。加えて、「TERRACE」の文字は、以下5(2)で詳述するとおり、宿泊施設に係る役務との関連においては、店名中に多く採択、採用されているような、独創性の乏しい語であるから、「テラス」の語や当該語が名称中に含まれるホテルをして、請求人又はその経営するホテルであると一般需要者が認知できること自体が考えにくい。
そうすると、請求人提出の証拠によっては、引用商標の構成文字に相当する「THE TERRACE HOTELS」、「TERRACE HOTELS」及び「TERRACE」の標章が、「宿泊施設の提供」の役務に係る商標として、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、我が国の一般需要者の間において広く認識されるに至り、高い周知、著名性を獲得したものとは認められない。
(3)請求人は、請求人ホテルの名称中には「テラス(TERRACE)」の語が含まれるから、引用商標と社会通念上同一の商標を使用しており、それらホテルが雑誌等のアンケート調査やランキングなどにおいて高い評価を受けていることを根拠に、引用商標が我が国の需要者及び取引者の間において広く知られた商標である旨を主張する。
しかしながら、請求人ホテルの名称は、いずれも「Terrace」(テラス)の語を含むとしても、名称全体としては引用商標に相当する「THE TERRACE HOTELS」、「TERRACE HOTELS」及び「TERRACE」の標章とは異なる構成文字からなるから、請求人ホテルそれぞれの評価や評判の程度は、引用商標に関する周知性や著名性に直接影響するものではない。
さらに、請求人又はその経営するホテルにしても、上記(2)のとおり、「テラス」の略称で我が国の需要者の間において広く親しまれているものではなく、また、当該語の独創性は乏しいことを考慮すれば、「テラス」の語や当該語が名称中に含まれるホテルをして、請求人又はその経営するホテルであると一般需要者が認知できること自体が考えにくい。
そうすると、引用商標は、請求人提出の証拠によっては、我が国の一般需要者の間において広く認識されるに至り、高い周知性、著名性を獲得したものとは認められない。
3 商標法第4条第1項第11号該当性
(1)本件商標と引用商標5及び引用商標6の類否
ア 本件商標について
(ア)本件商標は、別掲1のとおり、上部から下部にかけて段になるように、「T」の文字を図案化した図形、「ONE SUITE」の文字、点線の横線を介して、「THE TERRACE」の文字、「Hotel&Resort」の文字を配してなるところ、上部の図形部分と文字部分は、段を異にして、間隔を空けて配置されており、視覚上分離して認識されるものであって、称呼や観念における関連性もみられないから、それぞれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものではない。
(イ)そして、本件商標の構成中、「Hotel&Resort」の文字部分は、「ホテル」の意味を有する英語「Hotel」、「and(・・・と)」を意味する記号「&」、「行楽地。リゾート地。」の意味を有する英語「Resort」(参照:「ジーニアス英和辞典 第5版」大修館書店)を組み合わせてなるところ、当該文字部分は、付記的に小さな文字で表されていることもあって、その指定役務中「宿泊施設の提供」との関係においては、業種を表記する文字部分であることを想起させるもので、自他役務の出所識別標識としての機能が低い。
他方、本件商標の構成中、「ONE SUITE」及び「THE TERRACE」の文字部分は、中央部に比較的大きく目立つ態様で表記されているから、その下に配置された業種を表記したことを想起させる「Hotel&Resort」の文字部分との対比も相まって、「ONE SUITE THE TERRACE」なる一連一体の語を表してなると看取できる。そして、その構成中「ONE」の文字部分は「1つ」の意味を有する英語(参照:「ジーニアス英和辞典 第5版」大修館書店)、「SUITE」は「スイートルームの略」の意味を有する語(甲6の1)、「THE」の文字部分は「その」の意味を有する英語の定冠詞(前掲書参照)、「TERRACE」の文字部分は「テラス、ベランダ」の意味を有する英語(乙3の2)であるところ、各語の語義を結合した意味合いは漠然としており、当該文字部分全体として具体的な意味合いを想起させない造語を表してなると理解できる。
(ウ)そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して、「ワンスイートザテラスホテルアンドリゾート」又は「ワンスイートザテラス」の称呼を生じ得るが、特定の観念は生じない。
(エ)請求人は、本件商標の構成中「One Suite」の文字部分は「一つのスイートルーム」の意味合いが把握でき、「宿泊施設の提供」等の役務との関連において識別力を発揮するものではないから、また、「Hotel&Resort」の文字部分も役務の内容又は質を理解させるにすぎない付記的な部分であるから、その構成中「THE TERRACE」の文字部分が自他役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるもので、要部として分離抽出されるべき旨を主張する。
しかしながら、本件商標は、上記(イ)のとおり、「Hotel&Resort」の文字部分は、その指定役務中「宿泊施設の提供」との関係においては、業種を表記する文字部分であることを想起させるもので、自他役務の出所識別標識としての機能が低く、他方、当該文字より比較的目立つ態様で表記されている「ONE SUITE THE TERRACE」の文字部分は、一連一体の造語を表してなると看取できる。
また、本件商標の構成中「TERRACE」の文字部分は、以下5(2)で詳述するとおり、建物の構造の一部を指称する既成語であって、宿泊施設に係る役務との関連においては、店名中に多く採択、採用されているような、独創性の乏しい語であるから、自他役務の出所識別標識としての機能は比較的弱い。
そうすると、本件商標は、その構成中「THE TERRACE」の文字部分が、自他役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものではないから、当該文字部分を要部として分離抽出し、この部分だけを引用商標と比較して商標そのものの類否を判断することは適切ではない。
イ 引用商標5及び引用商標6について
(ア)引用商標5は、「THE TERRACE HOTELS」の欧文字と「ザ・テラスホテルズ」の片仮名を二段に横書きしてなるところ、その片仮名部分は欧文字部分の表音を表してなると理解できるもので、各段の文字部分は、同じ大きさ及び書体で、横一列にまとまりよく表してなるから、一連一体の語を表してなると認識できる。
そして、引用商標5の構成中、「THE」の文字部分は「その」の意味を有する英語の定冠詞(参照:「ジーニアス英和辞典 第5版」大修館書店)、「TERRACE」の文字部分は「テラス、ベランダ」の意味を有する英語(乙3の2)、「HOTELS」の文字部分は「ホテル」の意味を有する英語の複数形(参照:「ジーニアス英和辞典 第5版」大修館書店)であるところ、各語の語義を結合した意味合いは漠然としたもので、具体的な意味合いを想起させるものではない。
そうすると、引用商標5は、その構成文字に相応して、「ザテラスホテルズ」の称呼を生じるが、特定の観念は生じない。
(イ)引用商標6は、「TERRACE HOTELS」の欧文字と「テラスホテルズ」の片仮名を二段に横書きしてなるところ、その片仮名部分は欧文字部分の表音を表してなると理解できるもので、各段の文字部分は、同じ大きさ及び書体で、横一列にまとまりよく表してなるから、一連一体の語を表してなると認識できる。
そして、引用商標6の構成中「TERRACE」及び「HOTELS」の文字部分は、それぞれ上記(ア)のとおりの意味を有する英語であるところ、各語の語義を結合した意味合いは漠然としたもので、具体的な意味合いを想起するものではない。
そうすると、引用商標6は、その構成文字に相応して、「テラスホテルズ」の称呼を生じるが、特定の観念は生じない。
ウ 本件商標と引用商標5及び引用商標6を比較すると、外観においては、構成文字中に「TERRACE」の文字を含む点で共通するものの、語頭及び語尾の文字の明らかな差異により、全体としては異なる語になるから、判別は容易である。また、称呼においては、いずれも「テラス」の構成音を含む点で共通するものの、他の構成音の明らかな差異により、全体としての語調、語感は異なるものになるから、聴別は容易である。さらに、観念においては、いずれも特定の観念は生じないから、比較できない。
そうすると、本件商標と引用商標5及び引用商標6は、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において判別及び聴別は容易であり、互いの記憶に残る印象を異にする別異の商標であるから、同一又は類似の役務について使用されるときであっても、出所の混同を生じるおそれはなく、類似する商標とは認められない。
(2)小括
以上のとおり、本件商標は、引用商標5及び引用商標6とは類似する商標ではないから、本件請求役務と引用商標の指定役務を比較するまでもなく、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第10号該当性
(1)引用商標1から引用商標4の周知性について
引用商標1から引用商標4に相応する「THE TERRACE HOTELS」及び「TERRACE」の標章は、上記2(2)のとおり、「宿泊施設の提供」の役務に係る商標として、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の一般需要者の間において、広く認識されている商標とはいえない。
(2)本件商標と引用商標1から引用商標4の類否
ア 本件商標について
本件商標は、別掲1のとおりの構成からなるところ、上記3(1)ア(ウ)のとおり、その構成文字に相応して、「ワンスイートザテラスホテルアンドリゾート」又は「ワンスイートザテラス」の称呼を生じ得るが、特定の観念は生じない。
イ 引用商標1から引用商標4について
(ア)引用商標1は、別掲2のとおり、「THE」、「TERRACE」及び「HOTELS」の欧文字(「HOTELS」の文字は他の文字に比べて小さい。)を3段に横書きしてなるところ、その構成文字は、同種文字(欧文字)を、一部文字の大きさを異にしながらも、上下に近接して、まとまりよく表されているから、構成文字全体で「THE TERRACE HOTELS」なる一連一体の語を表してなると理解できる。
また、引用商標2は、別掲3のとおり、「THE TERRACE HOTELS」の欧文字を横書きしてなるところ、その構成文字は、同種文字(欧文字)を、同じ大きさ及び書体で、字間に1文字分の間隔を設けながらも、横一列にまとまりよく表されているから、構成文字全体で一連一体の語を表してなると理解できる。
そうすると、引用商標1及び引用商標2は、「THE TERRACE HOTELS」(ザ・テラスホテルズ)の文字を表してなる引用商標5と同様に、上記3(1)イ(ア)のとおり、その構成文字に相応して、「ザテラスホテルズ」の称呼を生じるが、特定の観念は生じない。
(イ)引用商標3は、別掲4のとおり、「TERRACE」の文字を横書きしてなり、引用商標4は、別掲5のとおり、「Terrace」の文字を、筆記体状の書体で横書きしてなるところ、その構成文字は、「テラス、ベランダ」の意味を有する英語(乙3の2)である。
そうすると、引用商標3及び引用商標4は、その構成文字に相応して、「テラス」の称呼を生じ、「テラス。ベランダ。」の観念を生じる。
ウ 本件商標と引用商標1から引用商標4の比較
(ア)本件商標と引用商標1及び引用商標2を比較すると、外観においては、構成文字中に「TERRACE」の文字を含む点で共通するものの、語頭及び語尾の文字の明らかな差異により、全体としては異なる語になるから、判別は容易である。また、称呼においては、いずれも「テラス」の構成音を含む点で共通するものの、他の構成音の明らかな差異により、全体としての語調、語感は異なるものになるから、聴別は容易である。さらに、観念においては、いずれも特定の観念は生じないから、比較できない。
そうすると、本件商標と引用商標1及び引用商標2は、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において判別及び聴別は容易であり、互いの記憶に残る印象を異にする別異の商標であるから、同一又は類似の役務について使用されるときであっても、出所の混同を生じるおそれはなく、類似する商標とは認められない。
(イ)本件商標と引用商標3及び引用商標4を比較すると、外観においては、構成文字中に「TERRACE」(Terrace)の文字を含む点で共通するものの、語頭及び語尾の文字の有無により、全体としては異なる語になるから、判別は容易である。また、称呼においては、語尾に「テラス」の構成音を含む点で共通するものの、語頭の構成音の有無により、全体としての語調、語感は異なるものになるから、聴別は容易である。さらに、観念においては、これら引用商標は「テラス。ベランダ。」の観念を生じるが、本件商標は特定の観念は生じないから、記憶される印象は相違する。
そうすると、本件商標と引用商標3及び引用商標4は、外観及び称呼において判別及び聴別は容易であり、観念における印象も相違する、互いの記憶に残る印象を異にする別異の商標であるから、同一又は類似の役務について使用されるときであっても、出所の混同を生じるおそれはなく、類似する商標とは認められない。
(3)小括
以上のとおり、引用商標1から引用商標4は、請求人の業務に係る役務「宿泊施設の提供」を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標とはいえず、また、本件商標とそれら引用商標は類似する商標ではないから、本件請求役務と引用商標の使用に係る役務を比較するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第15号該当性
(1)引用商標の周知性について
引用商標の構成文字に相当する「THE TERRACE HOTELS」、「TERRACE HOTELS」及び「TERRACE」の標章は、上記2(2)のとおり、「宿泊施設の提供」の役務に係る商標として、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の一般需要者の間において広く認識されるに至り、高い周知、著名性を獲得しているものではない。
(2)「TERRACE」の語の独創性
引用商標の構成文字に含まれる「TERRACE」(Terrace)の文字は、「テラス、ベランダ」の意味を有する英語(乙3の2)であるところ、ホテルの中にはテラスを設けた部屋を設置するものがある(乙2)。
そして、例えば「and SEA/The Terrace」(乙4の2)、「MIYAKO HOTEL HAKATA/THE TERRACE」(乙4の3)、「葉山 THE・TERRACE HOUSE」(乙4の4)、「海風テラス」(乙4の7)、「Suite Terrace ishigakijima」(乙4の11)、「TERRACE RESORT」(乙4の37)などのように、「TERRACE」(テラス)の文字を名称中に含む宿泊施設(乙4の1~60)が多数確認できる。
そうすると、「TERRACE」(Terrace)の文字は、建物の構造の一部を指称する既成語であって、宿泊施設に係る役務との関連においては、店名中に多く採択、採用されているような、独創性の乏しい語である。
(3)本件商標と引用商標の類似性の程度
本件商標は、別掲1のとおり、「ONE SUITE THE TERRACE Hotel&Resort」の構成文字を含むところ、引用商標の構成文字に相当する「THE TERRACE HOTELS」、「TERRACE HOTELS」及び「TERRACE」の文字と比較すると、全体としては異なる語を表してなるもので、また、構成文字中に「TERRACE」の文字を含む点で共通するとしても、当該文字は、上記(2)のとおり、宿泊施設の店名中に多く採択、採用されているような、独創性の乏しい語にすぎない。
そうすると、本件商標と引用商標は、構成文字全体としては互いに記憶に残る印象を異にする別異の商標といえる。
(4)検討
以上のとおり、引用商標に係る標章は、我が国の一般需要者の間において、高い周知、著名性を獲得しているものではなく、また、本件商標と引用商標は互いに記憶に残る印象を異にする別異の商標であることを踏まえると、本件請求役務が引用商標の使用に係る役務「宿泊施設の提供」と同一の役務を含み、需要者及び取引者を共通にする場合があるとしても、本件請求役務に係る取引者及び需要者において普通に払わされる注意力を基準とすれば、本件商標を本件請求役務に使用したときに、引用商標又は請求人の業務に係る役務との関連性を想起させることは考えにくく、他人(請求人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生ずるおそれはない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
6 結論
以上のとおり、本件商標の本件請求役務についての登録は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号及び同項第15号の規定に違反してされたものではないから、同法第46条第1項第1号の規定により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-890043