審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
商標無効審判

2023-890038

キジョウシュ、キジョウ

審判番号
2023-890038
法域
商標
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
商願1976-002382
登録番号
1980784
請求日
2023年05月09日
審決日
2024年06月20日
公報発行日
2024年12月27日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】株式会社 JFIT-Link
  • 【被請求人】榎酒造 株式会社
  • 【被請求人代理人】苫米地 正啓
審判長/審判官
  • 審判長 鈴木 雅也
  • 審判官 馬場 秀敏
  • 審判官 小田 昌子
分類
T111 .11 -Y (X33) / T111 .12 -Y (X33) / T111 .13 -Y (X33) / T111 .21 -Y (X33)
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第3条第1項第1号、商標法第4条第1項第6号、商標法第3条第1項第3号、特許法第135条、商標法第4条第1項第11号、商標法第3条第2項、商標法第3条第1項第2号、商標法第47条、商標法第3条、商標法第56条第1項、商標法第47条第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の登録第1980784号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求中、商標法第3条第1項第1号、同項第2号及び同項第3号を理由とする請求は却下する。その余の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 本件商標 本件登録第1980784号商標(以下「本件商標」という。)は、「貴醸酒」の文字を横書きしてなり、昭和51年1月22日に登録出願、第28類「清酒」を指定商品として、同62年3月30日に登録審決、同年8月19日に設定登録されたものであり、その後、指定商品については、平成20年4月9日に、第33類「清酒」とする指定商品の書換登録があった。 なお、本件商標の権利者は、設定登録時は、榎酒造株式会社を含む31の権利者による共有であったが、平成6年1月24日に本権の持分移転の登録があった結果、最終的に榎酒造株式会社のみが本件商標の権利者となったものであり、その商標権は、現に有効に存続しているものである。 そして、本件審判の審判請求日は、令和5年5月9日である。 第2 請求人の主張 請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第5号証を提出した。 以下、証拠の記載に当たっては、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載する場合がある。 1 無効事由 (1)本件商標は、商標法第3条第1項第1号、同項第2号及び同項第3号に該当し、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効にすべきものである。 (2)本件商標は、商標法第4条第1項第6号に該当し、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効にすべきものである。 2 審判請求の主体 (1)請求人が出願した商願2022-46810(甲1)の「貴醸造酒」の標準文字に対して、理由1として、仕込みの水に代えて日本酒を用いた日本酒を「貴醸酒」と称し、穀物、芋類、果実などを原料として発酵させて造った酒を「醸造酒」と称すること、本願商標は全体として「水の代わりに日本酒で醸造したお酒」の意味合いを理解させるとして、商標法第3条第1項第3号に該当する。理由2として、本件商標と同一又は類似として、同法第4条第1項第11号に該当するとして拒絶査定となった。 (2)請求人が出願した商願2022-130748(甲2)の「貴醸酒」の製法を用いて醸造した清酒のラベルヘの「貴醸酒」の明記に対して、本件商標と同一又は類似として、商標法第4条第1項第11号に該当すると拒絶された。 したがって、請求人は、本件商標を無効とすることについて利害関係を有する。 3 本件商標を無効とすべき理由 (1)「貴醸酒」の名称は、清酒醸造法の一体不可分の固有名称である。 ア 請求人が出願した商願2022-046810の拒絶理由として、「貴醸造酒」は「貴醸酒」と「醸造酒」の普通名称の組合せで商標法第3条第1項第3号に該当するとした中で、「仕込みの水に代えて日本酒を用いた日本酒を「貴醸酒」と称し、」として、審査官は本件商標全文を仕込みの水に代えて日本酒を用いた日本酒に普通に用いられるとしていることからも、本件商標自体が商標法第3条第1項第3号に該当する。 イ 本件商標は、国税庁のホームページ(甲3)にも掲載があるように「貴醸酒は、仕込水の全部あるいは一部に清酒を使用して発酵させることを特徴とした清酒です。この製法は現在の「独立行政法人酒類総合研究所」の前身である「国税庁醸造試験所」が開発したもので、~以下略~(国税庁ホームページより抜粋)」と記述されていることから、本件商標は、清酒醸造法を示す固有名称であり、商標法第3条第1項第1号の「その商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」に該当する。 ウ 本件商標は、前記の国税庁のホームページに記載されているとおり、国の研究機関である国税庁醸造試験所が昭和49年6月10日に特許を出願し、昭和53年(1987年)10月27日に特許第0942694号として登録された清酒醸造法の固有名称である。 その特許製法の酒を「貴醸酒」と命名したのは、日本酒専門のWEBメディア「SAKE TIMES」(甲4)によれば、その研究に携わった国税庁醸造試験所の故S氏(特許の出願代理人)であり、製法と名称は一体不可分な関係である。 エ この特許製法に関して、被請求人が所属する貴醸酒協会が、当時、国税庁醸造試験所とパテント契約を結び、製造を会員に限定して許可し、パテント料を支払っていた。その特許も登録から20年を経過し、平成19年(2007年)に期間満了し、現在は「貴醸酒」を製造するのに制約はなく、清酒の酒造免許を有している酒造所は、どこでも製造可能となっている。 オ 商標登録された昭和62年当時は、国税庁醸造試験所との特許のパテント契約上、「貴醸酒」の製造を許可されていたのは、被請求人が所属する貴醸酒協会のみであったかもしれないが、特許期間の先行者利益を得た後の現在に至ってもなお、国の機関の開発した清酒醸造法の固有名称を商標として独占し、会員外の名称使用を排斥し、既得権益を得続けることは社会通念上も許容されるものではない。 平成19年の特許期間満了でパテント契約も終了し、パテント料の支払いもなくなり、「貴醸酒」の製造が貴醸酒協会に限定されなくなり、実質的な意味においても本件商標は商標法第3条第1項第2号の「その商品又は役務について慣用されている標章」にも該当することとなったことから、その時点で、本件商標は無効となるべきものであった。 それが今も継続されていることは、商標法に違反しているから、直ちに、無効にすべきものである。 カ 本件商標は、国税庁醸造試験所が国賓を招いた晩餐会でワインやシャンパンが使われるのを見て、「このような場面に相応しい高級な日本酒を造ろう」というコンセプトで開発されたものであり、国の研究機関が、日本酒の新たな需要展開を目的として開発した酒造産業の発展に寄与するための研究事業であり、商標法第4条第1項第6号に該当する。 (2)普通名称である本件商標の存在が、需要者に混乱を招いている。 ア 請求人が出願した商願2022-130748の「貴醸酒」の製法を用いて醸造した清酒用ラベルヘの「貴醸酒」の明記に対して、商標法第4条第1項第11号に該当すると拒絶された件では、本来なら普通名称として同法第3条第1項第1号に該当し、本件商標は登録されないはずのものが登録されてしまっていることで、広く一般に慣用されている製法名称が清酒ラベルに明記できない状況となっている。 イ 請求人の商願2022-130748の清酒ラベルに製法が明記できない問題は酒造業界における一例にすぎず、本件商標の問題はフリー百科事典ウィキペディアの「貴醸酒」の項目(甲5)にも記述されている。普通名称であるはずの製法名称「貴醸酒」が長期にわたり商標登録されているため、名称使用できない酒造所が「貴醸酒」を示す手段として「再醸仕込み」「醸醸」「三累醸酒」など、それぞれ独自の名称を付けて販売を行っており、その状況は「貴醸酒」を求める需要者に対して商品を識別することを困難にしている。 ウ 上記ア及びイでも記述したように、商標法第3条第1項第1号、同項第2号及び同項第3号に該当する本件商標が商標登録されている問題は深刻である。 2019年末に起こった新型コロナウィルス感染症のパンデミックで、酒の需要は激減し、清酒の在庫が大量に発生した。その在庫を生かす手段として、水の代わりに清酒を使用する清酒醸造法「貴醸酒」の製造を、これまで行っていなかった酒造所も始めた。一般的な清酒は、慣習として醸造1年以内の新酒が重宝され、1年を越すと古くなったものと敬遠されるようになるが、一方の「貴醸酒」は、熟成させて経年とともに珍重がられて価格も高くなる。貴腐ワインのような味わいから、日本酒の苦手な人や女性のニーズも高く、「貴醸酒」にコロナ禍の救済と今後の期待を込めて製造されたが、その商品が、消費者に正しく製法を伝えられない問題は、今後に影を落とす。 エ 請求人は、地方の小規模酒造所数社と業務提携して共通銘柄の商標で、日本酒の販売を行っている。請求人は、上記アに記述したように、清酒の醸造法の違いでラベルのデザインを変え、需要者が日本酒の種類を正しく識別しやすいように努めているが、商願2022-130748の「貴醸酒」用のラベルに醸造法の固有名称「貴醸酒」を明記できないことに困惑する。それに加えて、提携する酒造所各社が上記ウの対策で醸造した「貴醸酒」に対して、本件商標を事由に「貴醸酒」の名称が使用できず、製法表記がそれぞれ異なり、需要者に一層の混乱を与えている。 オ 商標法第3条第1項第1号、同項第2号及び同項第3号、同法第4条第1項第6号に該当する本件商標の存在が、需要者に対して正確な情報を伝えたいのに伝えられないという請求人の誠実な業務履行に障害をもたらしている。 商品が「貴醸酒」であることを需要者に伝えられない状況は、国の研究機関が開発した製法を用いて醸した日本酒に対して、平等であるべき需要機会の阻害となっており、損失を生じさせている。 3 むすび 本件登録は、商標法第3条第1項第1号、同項第2号及び同項第3号、同法第4条第1項第6号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定により、無効とすべきものである。 第3 被請求人の主張 被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べた。 1 無効事由(1)商標法第3条第1項第1号、同項第2号及び同項第3号について 本件商標は、昭和51年1月22日に登録出願され、同62年8月19日に設定登録を受けたものである。 商標法第47条によれば、「商標登録が第3条・・・(中略)・・・の規定に違反してされたとき・・・(中略)・・・又は商標登録が第46条第1項第4号に該当するときは、その商標登録についての同項の審判は、商標権の設定の登録の日から5年を経過した後は、請求することができない。」とされているところ、本件商標は、その設定の登録の日から5年を優に経過している。 したがって、商標法第3条を根拠とする無効事由(1)は、不適法なものであって、その補正をすることができないものであるから、商標法第56条第1項において準用する特許法第135条の規定により、却下されるべきものである。 なお、請求人が提出した甲第5号証中にも「「貴醸酒」という名称は榎酒造により商標登録されており、同社を中心とした貴醸酒協会の加盟蔵しか使用できない」と記載されているとおり、本件商標は、被請求人及び被請求人から使用許諾を受けた事業者により、長い間「商標」として使用され、被請求人らの商品を識別してきた(現に今日も識別している)ものであるから、これが普通名称であるとか慣用商標・品質等表示であるなどという請求人の主張には何ら根拠のないものであり、無効事由(1)は、いずれにしても失当といわざるを得ない。 2 無効事由(2)商標法第4条第1項第6号について 請求人は、無効事由(2)に関して、甲第3号証ないし甲第5号証を提出して縷々述べているが、要するに、「貴醸酒」は国税庁醸造試験所のS氏により命名されたものであるから、商標法第4条第1項第6号に該当する、と主張するようである。 「貴醸酒」がS氏により命名されたとの記述は、「SAKETIMES」というウェブサイトの記事中(甲4)に含まれているものであるが、そもそも、当該記述部分に係る内容が、どのような公的資料・記録に基づいているのか全く不明である上、当該記事以外にそのようなことを述べる証拠は提出されていない。 また、国税庁のウェブページの記事(甲3)で述べられているのは、「貴醸酒」が国税庁により命名されたということではなく、あくまで、その製法が国税庁醸造試験所により開発された、ということのみである。 よって、請求人の主張を信ずるに足る客観的な証拠は存しないというべきであり、請求人の主張は失当といわざるを得ない。 また、仮に「貴醸酒」が、S氏により命名されたものであるとしても、そもそも、商標法第4条第1項第6号にいう「国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であって営利を目的としないもの又は公益に関する事業であって営利を目的としないもの」(以下「国等」ということがある。)が、「貴醸酒」を国等の事業を表示する標章として使用していたという事実は一切なく、「貴醸酒」が国等の事業を表示するものとして著名に至っていたという事情も全く存在しない。請求人は、「貴醸酒」が国等の事業の表示として使用されていたという状況や、その著名性の程度について一切主張・立証を行っていない。 したがって、本件商標が、商標法第4条第1項第6号、すなわち「国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であって営利を目的としないもの又は公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であって著名なものと同一又は類似の商標」に該当するという主張は、その要件事実について何一つ立証されていないから、無効事由(2)には全く理由がない。 3 結語 以上のとおり、無効事由(1)に基づく請求は、不適法なものであって、その補正をすることができないものであるから却下されるべきものであり、無効事由(2)についても請求人の主張には全く理由も根拠もないから、本件商標が無効とされるべき事由は存在しない。 第4 当審の判断 1 商標法第3条第1項第1号、同項2号及び同項3号に該当するとの無効理由(無効事由(1))について 商標法第47条第1項は、商標登録が同法第3条の規定に違反してされたとの理由により、同法第46条第1項に基づき、当該商標登録の無効審判を請求するときは、当該商標登録に係る商標権の設定の登録の日から5年を経過した後は、その請求をすることができない旨規定している。 そして、本件商標は、上記第1のとおり、昭和62年8月19日に設定登録されたものであって、本件審判の審判請求日である令和5年5月9日は、既に設定登録から5年以上が経過していることが明らかであるから、本件商標の登録が商標法第3条第1項第1号、同項第2号及び同項第3号に違反してされたことを理由とする本件審判の請求は、その請求をすることができないものである。 そうすると、無効事由(1)に係る商標法第3条第1項第1号、同項第2号及び同項第3号を理由とする本件審判の請求は、同法第47条第1項に規定する期間経過後になされた不適法なものといわざるを得ず、その補正をすることができないものであるから、同法第56条第1項において準用する特許法第135条の規定により却下すべきものである。 2 商標法第4条第1項第6号に該当するとの無効理由(無効事由(2))について 請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについては、当事者間に争いがなく、また、当審は請求人が本件審判を請求する利害関係を有するものと認める。 以下、本案に入って審理する。 (1)「貴醸酒」の名称について ア 請求人が提出した甲各号証及び同人の主張並びに職権調査によれば、以下のとおりである。 (ア)「国税庁」のウェブサイトにおいて、「日本酒(清酒)に関するもの」の見出しの下、「【貴醸酒】(きじょうしゅ)」の項には、「貴醸酒は、仕込水の全部あるいは一部に清酒を使用して発酵させることを特徴とした清酒です。この製法は現在の「独立行政法人酒類総合研究所」の前身である「国税庁醸造研究所」が開発したもので、一般酒に比べて味が濃く甘口であることから、食前酒として好まれています。」の記載がある(甲3)。 (イ)「SAKETIMES」のウェブサイト(2021年11月4日付け)において、「水の代わりに清酒で仕込んだ濃厚で甘いお酒「貴醸酒」【専門用語を知って日本酒をもっと楽しく!】」の見出しの下、「貴醸酒(きじょうしゅ)」とは、仕込み水の代わりに清酒を使って発酵させて造った清酒のこと。」の記載があり、「貴醸酒の確立」の項には、「「貴醸酒」と名付けられた製法は、1973年に国税庁醸造試験所(現:独立法人酒類総合研究所)で開発されました。・・・「貴醸酒」の名前は、「貴腐ワインに比較されるタイプの高級日本酒」として、研究に携さわった国税庁醸造試験所の故S博士によって名付けられました。「貴醸酒」の製法は、1974年(昭和49年)に特許として申請され、1978年(昭和53年)に公告されます。1976年(昭和51年)、貴醸酒の製造研究と普及を目的に、榎酒造(広島県)や豊島屋酒造(東京都)など酒蔵5社によって設立されたのが、貴醸酒協会です。現在は、特許権の存続期間は終了していますが、商標は貴醸酒協会が管理し、加盟企業の商品のみが「貴醸酒」と名乗ることができます。」の記載があり、「貴醸酒協会の活動」の項には、「貴醸酒協会に所属する酒蔵は、国税庁醸造試験所を管轄する大蔵省と製造パテント契約を結び、製造量の報告とパテント料の支払いを行うほか、それぞれが造った貴醸酒を持ち寄って、国税庁醸造試験所の研究室とともに、さまざまな情報交換を行っていました。期間満了により特許権が消滅してからは、技術指導は国税局鑑定官室が行い、貴醸酒協会は商標の管理と加盟各社に対して販売のアドバイスを行っています。」の記載がある(甲4)。 (ウ)「ウィキペディア」のウェブサイトにおいて、「貴醸酒」の見出しの下、「由来」の項には、「貴醸酒は、国立醸造試験所が、・・・開発したものであるが、・・・貴醸酒の製法には特許が取得されていたが、すでに失効している。一方で、「貴醸酒」という名称は榎酒造により商標登録されており、同社を中心とした貴醸酒協会の加盟蔵しか使用できないため、非加盟の蔵では同様の製法による酒について、「再醸仕込み」・「醸醸」・「三累醸酒」などのように別の呼び方をしている。」の記載がある(甲5)。 (エ)本件商標は、昭和55年4月25日に商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号により拒絶査定、同年5月26日に拒絶査定不服審判が請求され(査定不服審判昭55-9500)、同法第3条2項の適用を受けて同62年3月30日に登録審決、同年8月19日に、榎酒造株式会社を含む31の酒造会社を権利者として、設定登録されたものであり、その後、3回の存続期間の更新登録を経て、現に有効に存続しているものである。なお、本件商標の権利者は、持分移転により、現在は「榎酒造株式会社」となっている(登録日:平成6年1月24日)。(職権調査:独立行政法人 工業所有権情報・研修館「特許情報プラットフォーム」https://www.j-platpat.inpit.go.jp/h0000「審判情報」参照)。 イ 上記ア(ア)ないし(エ)によれば「貴醸酒」は、「独立行政法人酒類総合研究所」の前身である「国税庁醸造研究所」において開発された、水の代わりに清酒で仕込んだ酒の名称であり、その名称は同研究所の故S博士によって名付けられたものである。 そして、「貴醸酒」の製法は1974年(昭和49年)に特許として申請され、1978年(昭和53年)に公告され、現在は、特許権の存続期間は終了しているが、「貴醸酒」の名称については、昭和62年8月19日に被請求人である榎酒造株式会社を含む31の酒造会社を権利者(以下「被請求人ら」という。)として、商標法第3条第2項の適用を受け、商標登録されていることが確認でき、また、被請求人を含む貴醸酒協会が同商標を管理し、同協会の加盟企業(酒蔵)が商標として長年使用してきたことがうかがえる。 一方で、上記の甲各号証の記載からは、「貴醸酒」の名称が「国税庁醸造試験所」又は「独立行政法人酒類総合研究所」の団体自身やその事業を表示するものとして使用されたこと認めるに足りる客観的事実は見いだせず、ほかに、当該名称が国等若しくはこれらの機関、公益に関する団体であって営利を目的としないもの又は公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章として使用されていたことを認めるに足りる証拠は見いだせない。 また、「貴醸酒」の名称が、「国税庁醸造試験所」又は「独立行政法人酒類総合研究所」の業務に係る商品を表示するものとして、日本国内で著名であったことを客観的に示す証左も見いだせない。 (2)本件商標の商標法第4条第1項第6号該当性について 商標法第4条第1項第6号は、「国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であって営利を目的としないもの又は公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であって著名なものと同一又は類似の商標」と規定されているところ、上記(1)の事実認定によれば、「貴醸酒」については、酒造会社の事業に係る特定の清酒を表示する名称であって、被請求人ら酒造会社によって商品「清酒」に使用されてきた商標というべきであり、たとえ、国税庁醸造試験所により開発され、同所のS博士により命名されたものであったとしても、同号にいう「国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であって営利を目的としないもの又は公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章」と認めることはできないものである。 また、「貴醸酒」が「国税庁醸造試験所」又は「独立行政法人酒類総合研究所」の業務に係る商品を表示するものとして、日本国内で著名であったことを示す証拠は見いだせないばかりでなく、本件商標が、商標法第3条第2項の適用を受け、被請求人らを権利者として登録審決された経緯を併せみれば、本件商標の登録審決時において、「貴醸酒」の名称が、当時の「国税庁醸造研究所」の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたともいい難いところである。 そうすると、本件商標「貴醸酒」は、「国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であって営利を目的としないもの又は公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であって著名なもの」とは認められないというべきである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第6号に該当しない。 3 むすび 以上のとおり、本件審判の請求は、その無効理由中、商標法第3条第1項第1号、同項第2号及び同項第3号を理由とする請求については、不適法なものであって、その補正をすることができないものであるから、同法第56条第1項において準用する特許法第135条の規定により却下すべきものであり、また、その余の無効理由については、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第6号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべきでない。 よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2023-890038

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存