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商標無効審判

2023-890032

マルバイトーキョービジネスクリニック、マル、バイトーキョービジネスクリニック、トーキョービジネスクリニック、ビジネスクリニック、ビジネス

審判番号
2023-890032
法域
商標
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
商願2020-093990
登録番号
6342569
請求日
2023年03月31日
審決日
2023年11月08日
公報発行日
2024年01月26日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】株式会社 MARU
  • 【請求人代理人】池田 直文
  • 【被請求人】医療法人 社団クリノヴェイション
  • 【被請求人代理人】駒津 啓佑
審判長/審判官
  • 審判長 大橋 良成
  • 審判官 小林 裕子
  • 審判官 馬場 秀敏
分類
T111 .25 -Y (W44) / T111 .222-Y (W44)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
商標法4条1項7号商標法4条1項10号商標法4条1項19号商標法46条1項
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項第19号、商標法第4条第1項第10号、商標法第10条第1項、商標法第46条第1号、商標法第4条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の登録第6342569号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 1 本件商標 本件登録第6342569号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1の構成からなり、上部に6色の円を、中心をずらしてリング状に配置した図形を表し、この図形の下部に「MARU」の英文字を横書きに大きく表し、その下部に「BY TOKYO BUSINESS CLINIC」の英文字を横書きで小さく表してなるものであり、令和2年7月30日に登録出願、同年12月24日に登録査定、第44類「美容,理容,医業,医療情報の提供,健康診断,歯科医業,調剤,栄養の指導,動物の飼育,動物の治療,動物の美容,医療用機械器具の貸与」を指定役務として、同3年1月19日に設定登録されたものである。 2 請求人が引用する商標 本件審判請求人(以下「請求人」という。)が、本件商標の登録の無効の理由において、本件商標が商標法第4条第1項第7号、同項第10号及び同項第19号に該当するとして、請求人が使用中の未登録周知・著名商標と主張する商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2の構成よりなるものである。 3 請求人の主張 請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第24号証(枝番号を含む。なお、枝番号を全て含むときには、枝番号の記載を省略する。)を提出した。 (1)請求の理由 本件商標登録は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号及び同項第19号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定により無効とされるべきである。 (2)無効原因の要旨 ア 本件商標と甲号証との対比について (ア)本件商標と甲第1号証との対比 本件商標の図形部分の構成は、請求人が商標デザインの創作を委託し、創作した図形デザイン(引用商標)と酷似している(甲1)。 (イ)本件商標と甲第2号証との対比 請求人が商標デザインの創作を委託し、創作したデザインパターンを表している。該デザインの基本パターンは、生物が生きる三大要素で配色したリング状の図形の下部に「MARU」の英大文字を横書きで大きく表し、その下部に「anything you want」の英小文字を横書きで小さく表している(甲2)。 本件商標の上段の図形部分は6色の円を、中心をずらしてリング状に配置しており、請求人のリング状の図形部分とリング状図形という点で共通しており、外観が類似している。 本件商標の中段の文字部分はリング状の図形の下部に「MARU」の英大文字を横書きで大きく表している点で、引用商標の中段の「MARU」の英大文字と字体が異なるものの、「MARU」の横書き英大文字という点で共通しており、外観が類似している。また、係る文字部分からいずれも「マル」という称呼及び「まる」、「円」、「丸」という観念が生じる。 本件商標の下段の文字部分は「BY TOKYO BUSINESS CLINIC」の英大文字を横書きで表しており、引用商標の下段の文字部分は「anything you want」の英小文字を横書きで表している点で、外観・称呼・観念が異なっているが、いずれも英文字を横書きで中段の文字部分よりも小さく表しており、商標全体から受ける印象が共通する。 したがって、本件商標は引用商標の構成の一部を改変しているが、図形部分及び文字部分の構成・配置を全体として観察すると、引用商標と印象を共通にし、両商標は類似している。 (ウ)本件商標と甲第3号証との対比 引用商標(審決注:「本件登録商標」と記載されているが、「引用商標」の誤記と認める。)の創作者(著作者)は、MARUのロゴデザイン(絵・文字)について、請求人との間で2020年7月15日に著作権譲渡契約書を締結し、該契約書の第2条(本件著作物)によれば、当該著作物の創作者(著作者)は、2015年9月9日に請求人に引用商標を提案し、同年10月5日にロゴデザインを完成している。 (エ)本件商標と甲第4号証との対比 甲第4号証は請求人のホームページの抜粋であり、多くの頁に引用商標が掲載されている。本件商標は、請求人がホームページの製作を委託した製作会社がホームページに掲載した引用商標と酷似している。甲第4号証の1~14の作成日は2020年12月11日であるが、当該ホームページは2015年9月に製作されている(甲4の15)。 (オ)本件商標と甲第5号証との対比 本件商標は、請求人がユニフォームの製作を委託した製作者がユニフォームに付したロゴデザイン(甲5の3及び7)と酷似している。当該ユニフォームの初回発注は、2015年9月にされている(甲5の1)。なお、ユニフォームの合計発注枚数は、377枚である(甲5の1~9)。 (カ)本件商標と甲第6号証との対比 本件商標は、請求人の訪問介護事務所の外観・内観サイン(甲6の1~5、甲6の7~8)と酷似している。請求人は、2017年11月に甲第1号証及び上記甲第2号証のロゴデザインの創作者(著作者)に店頭サインのデザイン創作を依頼した(甲6の1~6)。当該デザインに基づき、施工業者は2017年12月に訪問介護事務所の外観・内観サインを施工した(甲6の7~9)。外観・内観サインの施工場所は、東京都墨田区である。 (キ)本件商標と甲第7号証との対比 本件商標は、請求人が発行したA4サイズ2つ折りのリーフレットに記載のロゴデザインと酷似している。当該リーフレットは2020年6月に作成され、その発行部数は錦糸町事務所:2,000部、調布サテライト:2,000部、台東サテライト:2,000部、デイサービス:1,500部であり、合計発行部数は7,500部である(甲7)。 (ク)本件商標と甲第8号証との対比 本件商標は、請求人の配布したノベルティ商品(手ぬぐい)に付されたロゴマークのデザインと酷似している。当該ノベルティ商品は、平成29年(2017年)9月に作成された(甲8)。 (ケ)本件商標と甲第9号証との対比 本件商標は、請求人が発行したトレーニング会員募集のパンフレット及びメンバーズカードに付されたロゴマークのデザインと酷似している。当該メンバーズカードは、2016年4月に作成された(甲9)。 (コ)本件商標と甲第10号証との対比 本件商標は、請求人が発行したデイサービス開始のチラシに掲載されたロゴマークのデザイン、及びデイサービスの看板に付されたロゴマークのデザインと酷似している。当該デイサービス開始のチラシ及びデイサービスの看板は、2016年1月に作成された(甲10)。 (サ)本件商標と甲第11号証との対比 本件商標は、請求人の持ち運び式サインパネルに付されたロゴマークのデザインと酷似している。当該持ち運び式サインパネルは、2016年5月に作成された(甲11)。 (シ)本件商標と甲第12号証との対比 本件商標は、請求人が配布した名刺に掲載されたロゴマークのデザインと酷似している。当該名刺は2015年11月に初回作成された(甲12の2~3)。その後、2016年1月から2020年7月までの名刺の合計発注枚数は、31,600枚である(甲12の4~41)。 (ス)本件商標と甲第13号証との対比 本件商標は、請求人の配布したノベルティ商品(手ぬぐい)に付されたロゴマークのデザインと酷似している。当該ノベルティ商品は、2017年9月に作成され、その作成枚数は地染め:100枚、クレア染:100枚の合計200枚である(甲13)。 (セ)本件商標と甲第14号証との対比 本件商標は、請求人が発行した旧パンフレットに記載のロゴマークのデザインと酷似している。当該パンフレットは2017年9月に作成され、その発行部数は書類ホルダータイプの表紙が3000部で、両面印刷の中面紙ペラ8頁が3,000×8である(甲14)。 (ソ)本件商標と甲第15号証との対比 本件商標は、請求人が行ったセミナーの資料に記載のロゴマークのデザインと酷似している。甲第15号証の作成日付は2020年12月16日であるが、当該セミナーは平成29年(2017年)2月24日に開催されている。 甲第15号証の17の下段の「代表取締役経歴・株式会社MARUの歩み」によれば、2011年に株式会社MARUを設立し、2012年に訪問看護ステーションMARUを開設し、2014年に訪問看護ステーションMARU調布サテライトを開設し、2016年にデイサービスMARUを開設すると共に、トレーニングMARUを開設している。 (タ)本件商標と甲第16号証との対比 請求人は被請求人に対して、2020年7月7日に電子メールにて、被請求人のロゴデザインが請求人のロゴデザインと酷似していると告知した(甲16)。本件商標に係る商標登録出願は、令和2年(2020年)7月30日に出願されているが、これは上記電子メールの告知を受けて出願されたものであることが判る。 甲第16号証は自動返信メールであるが、請求人が使用している商標(ロゴマーク)の存在を知っていたことの証左として、本件商標に係る商標登録出願の[第44類]の指定役務から請求人の事業である「介護」が除かれている。 (チ)本件商標と甲第17号証との対比 本件商標は、請求人が「日本空手道身学館」の創流45周年記念大会のパンフレットに掲載した広告に記載のロゴマークのデザインと酷似している。当該パンフレットは平成30年(2018年)6月24日に同45周年記念大会において配布された(甲17)。 (ツ)本件商標と甲第18号証との対比 本件商標は、請求人が発行した情報誌「MARU NEWS」の各号に記載のロゴマークのデザインと酷似している。当該NEWSvol.1からvol.5はそれぞれ、は2019年5月、8月、11月、2020年3月及び同年6月に作成され、その発行部数は、それぞれ1,000部である(甲18)。 (テ)甲第19号証の説明 甲第19号証は、「通所介護の利用者集計表」である。デイサービスMARUは2016年1月にオープンしたが、2016年1月1日~2020年7月30日までの登録利用者数は合計157名である。上記期間の月毎の利用人数(実人数)は合計2,805名であり、利用回数(通所された回数)は合計18,478回である。 (ト)本件商標と甲第20号証との対比 本件商標は、請求人が掲載した錦糸町事務所の求人広告に記載のロゴマークのデザインと酷似している(甲20の1~4)。当該求人広告は2018年10月に掲載開始され(甲20の5)、2021年3月まで掲載された(甲20の1)。当該求人広告の閲覧回数は15,683回であり(甲20の3)、MARUホームページのクリック数は175回である(甲20の4)。 本件商標は、請求人が掲載した調布サテライトの求人広告に記載のロゴマークのデザインと酷似している(甲20の8~11)。当該求人広告は2018年10月に掲載開始され(甲20の12)、2021年3月まで掲載された(甲20の8)。当該求人広告の閲覧回数は15,930回であり(甲20の9)、MARUホームページのクリック数は113回である(甲20の11)。 請求人は平成24年(2012年)2月に東京都墨田区錦糸町に訪問看護ステーションMARUを開設し、平成26年(2014年)4月から訪問看護ステーションMARU調布サテライト、平成28年(2016年)1月に東京都墨田区にデイサービスMARU、及び平成30年(2018年)9月にケアマネージメントMARUを開設した(甲20の2、8)。 (ナ)本件商標と甲第21号証との対比 請求人の商標出願(甲21)は、本件商標に係る商標登録出願の出願日(令和2年7月30日)の後の令和2年8月7日に出願されているが、これは上述のとおり、請求人が被請求人に対して、電子メール(甲16)にて、被請求人のロゴデザインが請求人のロゴデザインと酷似していると告知した後に、当該電子メールに対して何ら回答することなく、被請求人が請求人よりも先回りして本件商標に係る商標登録出願をしたものであることが判る。 請求人の商標出願(甲21)に係る商標は、光(黄色)、木/酸素(緑)、水(水色)の生物が生きる三大要素で配色したリング状の図形の下部に「MARU」の英大文字を横書きで大きく表し、その下部に「anything you want」の英小文字を横書きで小さく表してなり、第36類「介護保険に関する助言及び情報の提供,介護保険契約の締結の媒介・取次ぎ又は代理,医療保険に関する助言及び情報の提供,医療保険契約の締結の媒介・取次ぎ又は代理」、第44類「訪問看護,通所介護,在宅介護,訪問看護に関する助言及び情報の提供,介護に関する助言及び情報の提供,要介護者・要養護者・高齢者へのリハビリテーションの提供・指導及び助言,要介護者・要養護者・高齢の提供・指導及び助言,要介護者・要養護者・者の栄養に関する指導」を指定役務としている。 (ニ)甲第22号証の説明 請求人は、令和2年8月7日に出願した商標登録出願を親出願として、令和3年9月27日に、第44類「訪問看護,通所介護,在宅介護,訪問看護に関する助言及び情報の提供,介護に関する助言及び情報の提供,要介護者・要養護者・高齢者へのリハビリテーションの提供・指導及び助言,要介護者・要養護者・高齢の提供・指導及び助言,要介護者・要養護者・者の栄養に関する指導」の指定役務について、商標法第10条第1項の規定による商標登録出願(商願2021-119847)を行うと共に(甲22の1~2)、当該分割出願と同日に親出願から第44類を削除する手続補正を行った(甲22の3)。 (ヌ)甲第23号証の説明 請求人は、令和4年7月11日に上記分割出願(商願2021-119847)について拒絶査定を受け(甲23の1、2)、拒絶査定に対する審判(不服2022-16236)を請求した(甲23の3~6)。 (ネ)甲第24号証の説明 請求人は、平成23年(2011年)10月5日に北岡秀朗を代表取締役として、「株式会社MARU」の会社設立登記を行った。 イ 商標法第4条第1項第7号について 上記ア(ア)ないし(カ)、(タ)及び(ナ)ないし(ヌ)の主張及び事実があるところ、特に(タ)によれば、すなわち、本件商標に係る商標出願の出願行為は、他人の採択した創作物(著作物)をひょう窃的に出願する行為である。 してみれば、他人が採択した創作物(著作物)をひょう窃的に出願する行為は商標法が目的とする公正な取引秩序を乱すものであり、かかる商標は公序良俗を害するものである。健全な法感情に照らして考えて、他人が採択した創作物(著作物)を先回りして出願する行為は、条理上許されるべきではない。また、公正な取引秩序の維持を究極の法目的とする商標法の精神から考えても、かかる行為は認められるべきではない。 ウ 商標法第4条第1項第10号について 上記アよりすれば、特に、上記(タ)については、すなわち、被請求人の行為は、他人の周知商標と類似する商標を先取り的に登録し、無断で使用しようとする行為である。 してみれば、請求人は、平成23年(2011年)10月5日に、「株式会社MARU」の会社設立登記を行い、平成24年(2012年)2月に東京都墨田区錦糸町に訪問看護ステーション(錦糸町事務所)を開設し、2015年9月以来、商標登録出願(甲第21号証)に係る標章と同一の商標を長年使用して墨田区、台東区及び江東区を中心として訪問介護業務を広く営んでおり、請求人の使用商標は、本件商標の出願日(令和3年7月30日)前に訪問介護・医療関係者の間で周知に至っていた。 本件商標は、請求人の周知商標と酷似しており、本件商標に係る商標登録出願は、他人の周知商標と類似する商標を同一又は類似する指定役務(第44類:42V01 42V02 42V03 42W02)を指定して出願したものである。 したがって、本件商標は、訪問介護関係者・医療関係者の間で周知となっている商標を先取り的に出願したものであることは明らかであり、他人の周知商標に化体した信用を保護するため、商標法第4条第1項第10号を適用すべきである。 エ 商標法第4条第1項第19号について 上記アよりすれば、特に、(タ)については、すなわち、請求人が使用している周知商標(ロゴマーク)の存在を知っていたことは明らかであり、請求人の周知商標にあやかって利益を得ようとする意思が推察され、不正の目的が推認される。 してみれば、請求人は、平成23年(2011年)10月5日に、「株式会社MARU」の会社設立登記を行い、平成24年(2012年)2月に東京都墨田区錦糸町に訪問看護ステーション(錦糸町事務所)を開設し、2015年9月以来、商標登録出願(甲第21号証)に係る標章と同一の商標を長年使用して墨田区、台東区及び江東区を中心として訪問介護業務を広く営んでおり、請求人の使用商標は、本件商標に係る商標登録出願の出願日(令和3年7月30日)前に訪問介護・医療関係者の間で周知に至っていた。 本件商標の構成は、請求人の周知商標の構成と酷似しており、本件商標に係る商標登録出願は、他人の周知商標と類似する商標を同一又は類似する指定役務(第44類)を指定して出願したものである。 また、本件商標権者は、請求人のロゴデザインの創作者(著作者)のデザインを模倣したうえで、請求人が長年使用している周知商標が商標登録出願されていないことを奇貨として先取り的に本件商標を出願しており、請求人の周知商標にあやかって利益を得ようとする意思が推察され、不正の目的が推認される。商標法第4条第1項第19号の趣旨は、「不正の目的」をもってなされる商標登録出願及び登録商標を排除することにある。したがって、周知性がやや弱くても、不正の目的が強ければ、他人の周知商標の無断利用を防止するという観点から、商標法第4条第1項第19号の適用を認めるべきである。 したがって、本件商標は、訪問介護関係者・医療関係者の間で周知となっている商標が商標登録出願されていないことを奇貨として、当該周知商標と酷似する構成の商標を先取り的に不正の目的で出願したものであることは明らかである。 (3)結び したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号及び同項第19号に該当し商標登録を受けることができないものであるから、本件商標登録は商標法第46条第1号の規定により、無効にされるべきものである。 4 被請求人の主張について 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証を提出した。 (1)商標法第4条第1項第7号について 請求人は、被請求人の登録商標がひょう窃的な出願によって登録されたものであることから商標法第4条第1項第7号に違反である旨を主張し、その根拠として、以下を挙げている。 ア 登録商標にかかるロゴが著作権侵害のおそれがあることについて 請求人は、登録商標にかかるロゴが著作権侵害のおそれがあることについて、請求人が委託して創作された甲第1号証に記載された図形デザインと酷似している旨を主張し、甲第3号証において、「「他の企業による著作権侵害のおそれがある事案」が発生したため著作権の内容を確認しておく」旨が記載された契約書を添付している。 たしかに、著作権侵害が起きていればひょう窃的な出願である可能性がなくはないが、そもそも著作権が侵害されているか否かについて具体的な証拠もなく、当該主張は失当である。 なお、著作権違反であるとして、複製権の侵害であると主張していると仮定すると、依拠性が問題になると考えられるが、被請求人の登録商標にかかるロゴが、請求人のロゴに依拠した証拠もない上に、比較的よく使われる図形である円形のロゴマーク、比較的よく使われるMARUの文字、円形のロゴマークとMARU(もしくは、まる、マルの文字の組み合わせ)、及び上段中央に配置されたロゴマークの下に文字を組み合わせた全体としてのロゴの配置のいずれにおいても個別要素としては一般的であり、依拠したと推認される要素もない。 もし仮に、本件が依拠したと推認されるとするならば、請求人ロゴもそれ以前からある、例えば乙第1号証に記載されたロゴに依拠していると言わざるを得ないということとなり、論理が矛盾する。 したがって、結果として似たロゴとなったとしても論理が逆であっていずれも主張は失当である。 イ 被請求人のロゴを見た請求人が、被請求人に対して通知を行ったことについて 被請求人に対する通知は、被請求人のロゴを見た請求人が行っている。つまり、時系列として、被請求人のロゴが作成され、作成されたロゴを見た請求人が通知を行ったということである。このことから、被請求人が、請求人からの通知の際にはすでに被請求人にかかる登録商標のロゴは完成しており、上記依拠性の問題にもならない。 なお、請求人からの通知によってひょう窃的に出願をした旨を主張しており、その根拠として指定役務から「介護」を外している旨を主張しているが、被請求人が介護事業をやる予定がないために指定役務から「介護」を外したにすぎない。 ウ 商標法第4条第1項第7号の適用について 商標法第4条第1項第7号は、商標の構成に着目した公序良俗違反と主体に着目した公序良俗違反を理由に権利付与をしないことを目的とする。 しかし、商標法は、出願人からされた商標登録出願について、当該商標について特定の権利利益を有する者との関係ごとに、類型を分けて、商標登録を受けることができない要件を、商標法第4条各号で個別的具体的に定めているから、これらの条項の該当性の有無と密接不可分とされる事情については、専ら、当該条項の該当性の有無によって判断すべきである。 また、当該出願人が本来商標登録を受けるべき者であるか否かを判断するに際して、先願主義を採用している日本の商標法の制度趣旨や、国際調和や不正目的に基づく商標出願を排除する目的で設けられた商標法第4条第1項第19号の趣旨に照らすならば、それらの趣旨から離れて、同項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」を私的領域にまで拡大解釈することによって商標登録出願を排除することは、商標登録の適格性に関する予測可能性及び法的安定性を著しく損なうことになるので、特段の事情のある例外的な場合を除くほか、許されない。」旨の判示がある(平成19年(行ケ)第10391号)。 本件について考察すると、甲第4号証ないし第6号証において、請求人のロゴを使用したホームページ、ユニフォーム、及び外観・内観サインの証拠が提出されているが、ロゴの通常の使用についての証拠にすぎず、上記裁判例で示されるように、商標法第4条第1項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」を私的領域にまで拡大解釈することによって商標登録出願を排除することは、商標登録の適格性に関する予測可能性及び法的安定性を著しく損なうことになるから本号の適用はされるべきではない。 さらに、上記判例で示されるように、本来先願主義を採用しており、2015年にロゴを作成し、ホームページ・ユニフォームも制作しており、続いて2017年に外観・内観サインを制作しており、商標登録出願を行う十分な時間があったにもかかわらず出願を行わなかったという事実を証拠が示している。このことからも本号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」を私的領域にまで拡大解釈することによって商標登録出願を排除すべきでない(甲4~甲6)。 以上より、商標法第4条第1項第7号の無効理由はないと言わざるを得ず、無効にされるべきものではない。 (2)商標法第4条第1項第10号について 商標法第4条第1項第10号にいう「広く認識されている」に該当するといえるための地理的範囲としては、必ずしも全国的に知られている必要まではないが、1都道府県内で知られているだけでは足りず少なくとも関西一円などの数県にわたる相当広い範囲で、取引者・需要者に知られていることを要するというべきであり、また、取引者・需要者の範囲としても、すべての取引者・需要者に知られている必要まではないが、相当程度の取引者・需要者に知られていることを要するとの判示がある(平成26年(行ケ)第101118号)。 ア 周知性について 請求人は、請求人ロゴの使用についての証拠を提出している(甲4~甲15、甲17、甲18、甲20)。しかし、当該証拠で示されているものは、ホームページ、ユニフォーム、外観・内観サイン、リーフレット、ノベルティ商品の手ぬぐい、パンフレット・メンバーズカード、チラシ、持ち運び式サインパネル、名刺、セミナー資料、自社で出していると思われる情報誌及び求人広告で請求人ロゴを使用している旨の証拠であり、通常のロゴの使用を示しているにすぎず、周知性を示す証拠はない。 したがって、請求人ロゴが需要者に広く認識されているとはいえない。 イ 商標法第4条第1項第10号の適用について 商標法第4条第1項第10号は、未登録の商標でありながら、その使用事実にかんがみ、後に出願される商標を排除するという規定であることから、「広く認識されている」ことを要件とする。 上記裁判例においては、「特定の店舗が新聞、雑誌やテレビ等で取り上げられたとしても、一般の消費者が、記事や番組で紹介された数多くの飲食店の中から当該店舗に注目し、その店舗名等を記憶にとどめることには直ちにつながらず、一般の消費者に飲食店名が広く知られるようになるためには宣伝広告を積極的に行う、店舗数が相当程度多い、あるいは、マスコミに数多くないし頻繁に取り上げられているなどの特段の事情を要するものというべきである。」とも判示している。上記裁判例は飲食店についてのものであり、もちろんそのまま本件に適用できるわけではないが、少なくとも、相当大量というわけではない量の自社で使用しているという証拠のみでは「広く認識されている」ことを認定することが難しいといわざるを得ない。 以上より、商標法第4条第1項第10号の無効理由はない。 (3)商標法第4条第1項第19号について 商標法第4条第1項第19号は、日本国又は外国で周知な商標と同一又は類似の商標を不正の目的で使用するものを不登録理由としているものである。 しかし、上記(2)で検討したように、不正の目的を論じる以前の問題として、国内はおろか外国で周知であるという証拠がないことから同号の適用がないといわざるを得ない。 以上より、商標法第4条第1項第19号の無効理由はない。 (4)むすび 以上より、被請求人の登録商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号及び同項第19号に該当しないことは明らかであり無効理由はない。 5 当審の判断 (1)利害関係について 請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについては、当事者間に争いがないものであり、請求人が本件審判を請求する利害関係を有するものと認められるから、本案に入って審理する。 (2)引用商標の周知性について ア 請求人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、次のとおりである。 (ア)引用商標のデザインは、2015年9月9日に創作者(著作者)が請求人に提案し、同年10月5日にロゴデザインを完成したとされるものである(主張、甲3)。 (イ)2015年9月に製作されたとされる請求人のホームページには、その多くの頁に引用商標が掲載されている(主張、甲4)。 (ウ)請求人が引用商標を付し委託製作したユニフォームについて、少なくとも2019年4月5日納期とされたものについては、発注及び納品があったことがうかがえる。(甲5の7、甲5の8)。 (エ)引用商標を付した、会員制トレーニングMARUのメンバーズカードが、2016年4月に作成されたとされる(甲9の3、甲9の4)。 (オ)請求人が配布したとする名刺には引用商標がデザインされており、当該名刺は2015年11月に初回作成されたとされる(主張、甲12の1、甲12の2)。 (カ)平成29年(2017年)2月24日に請求人が開催したセミナーの資料とする写しには、引用商標が記載されている(甲15)。 (キ)請求人は被請求人に対して、2020年7月7日に電子メールにて、ロゴデザインの酷似を指摘したことがうかがえる(甲16)。 (ク)平成30年(2018年)6月24日に開催された、「日本空手道身学館」の創流45周年記念大会において配布されたとする同大会のパンフレットに、引用商標を含む広告を掲載したことがうかがえる(甲17)。 (ケ)請求人が発行した情報誌「MARU NEWS」の各号(令和元年(2019年)~令和2年(2020年)発行)には引用商標の記載があり、一定の回数、一定の部数を作成したことはうかがえる(甲18)。 (コ)請求人が運営する、デイサービスMARUは2016年1月のオープン以降、2020年7月30日までの登録利用者数は合計157名、その、のべ利用人数の合計は2,805名、利用回数(通所された回数)は合計18,478回とされる(主張、甲19)。 イ 上記アによれば、その周知性については、以下のとおりである。 引用商標のデザインは、2015年9月頃から使用されはじめ、請求人のホームページには、引用商標が掲載され、役務提供時にスタッフが着用するとおぼしきユニフォームが存在し、メンバーズカードや名刺などにも利用されていることはうかがえる。 また、請求人が定期的に発行する印刷物やその他のイベント配布物における広告掲載などにおいて、引用商標を掲載した事実もうかがえる。 しかしながら、当該印刷物等についての、配布先、配布地域、配布数などを客観的に示す証拠の提出がないことから、引用商標の周知性について客観的に推し量ることはできない。 また、上記(コ)によれば、請求人の事業の一つである、デイサービスMARUについては、2016年1月のオープン以降、2020年7月30日までの登録利用者数は合計157名と、のべ利用人数の合計は、2,805名、利用回数(通所された回数)は合計18,478回とされるが、4年間の実績として、当該業種における規模やシェア率などの客観的指標がないことから、その寡占を推し量ることができないことに加え、当該事業について引用商標が使用されている事実も確認することができない。 したがって、請求人の主張及び提出された証拠からは、引用商標の周知性を認めることはできない。 (3)商標法第4条第1項第7号該当性について 商標法第4条第1項第7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は、商標登録を受けることができないと規定され、これに該当する商標には、「(a)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(b)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、(c)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(d)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(e)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである。」と判示されているところである(知財高裁平成17年(行ケ)第10349号 平成18年9月20日判決参照)。 これを本件についてみるに、本件商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるような構成態様ではないことは明らかである。 また、本件商標をその指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するということもできず、他の法律によってその使用が禁止されているものでもない。 さらに、請求人が提出した証拠及び主張を考慮しても、本件商標の登録出願の経緯が、社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に当たるということもできない。 加えて、請求人が提出した証拠及び主張からは、特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合に当たるということもできない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 (4)商標法第4条第1項第10号該当性について 引用商標は、上記(2)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く知られていたとはいえないものであるから、商標の類否について述べるまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。 (5)商標法第4条第1項第19号該当性について 引用商標は、上記(2)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されていたということはできないものである。 また、請求人の提出の証拠からは、商標権者が不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的を持って本件商標を出願し、登録を受けたと認めるに足る具体的事実を見いだすこともできない。 そうすると、本件商標は、引用商標の周知著名性へのただ乗りをする等、不正の目的をもって使用されるものであるということはできない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 (6)請求人の主張について ア 本件商標に係る商標出願の出願行為は、他人の採択した創作物(著作物)をひょう窃的に出願する行為であり、かかる行為は商標法が目的とする公正な取引秩序を乱し、公序良俗を害するほか、健全な法感情に照らし、他人が採択した創作物(著作物)を先回りして出願する行為は、条理上許されるべきではなく、商標法の精神から考えても、かかる行為は認められるべきではないと主張する。 しかしながら、本件商標の出願及び登録の経緯については、上記(3)のとおり、請求人が提出した証拠及び主張を考慮しても社会的相当性を欠き、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に当たるものということもできないから、その主張は採用できない。 イ 被請求人の行為は、他人の周知商標と類似する商標を先取り的に登録し、無断で使用しようとする行為であると主張する。 しかしながら、上記(2)のとおり、請求人の主張及び提出された証拠からは、引用商標の周知性を認めることはできず、また、先取り的に登録しようとする明確な意図やこれを裏付ける証拠もないことから、その出願や登録の経緯について、無効とする合理的理由があるとはいえず、その主張は採用できない。 ウ 請求人に係る周知な引用商標の存在を知った上で、商標登録出願されていないことを奇貨として先取り的に本件商標を出願し、請求人の周知商標にあやかって利益を得ようとする意思が推察され、不正の目的が推認され、また、商標法第4条第1項第19号の趣旨からすれば、周知性がやや弱くても、不正の目的が強ければその適用を認めるべきであると主張する。 しかしながら、引用商標の周知性については、上記(2)のとおり、請求人の主張及び提出された証拠からは、引用商標の周知性を認めることはできず、また、上記(5)のとおり、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的を持って本件商標を出願し、登録を受けたと認めるに足る具体的事実を見いだすこともできず、引用商標の周知著名性へのただ乗りをする等、不正の目的をもって使用されるものであるとはいえないから、その主張も採用できない。 エ したがって、請求人が無効の理由とする主張は、いずれも採用することができない。 (7)むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえないから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録は無効にすべきではない。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-890032

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