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商標無効審判

2023-890014

ライカ

審判番号
2023-890014
法域
商標
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
商願2019-083331
登録番号
6264161
請求日
2023年02月28日
審決日
2024年07月25日
公報発行日
2025年04月25日
結論
請求成立(無効)
当事者
  • 【請求人】ライカ マイクロシステムズ アイアール ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
  • 【請求人代理人】達野 大輔
  • 【請求人代理人】竹中 陽輔
  • 【請求人代理人】中山 真理子
  • 【請求人代理人】山頭 めぐみ
  • 【被請求人】深▲せん▼市莱伊▲か▼科技有限責任公司
審判長/審判官
  • 審判長 山田 啓之
  • 審判官 杉本 克治
  • 審判官 渡邉 あおい
分類
T111 .271-Z (W0921)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
商標法4条1項15号商標法46条1項
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第4条、商標法第4条第1項第10号、商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第11号、商標法第1条、商標法第4条第1項第19号、商標法第4条第1項第7号、商標法第46条第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の登録第6264161号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 登録第6264161号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 本件商標 本件登録第6264161号商標(以下「本件商標」という。)は、「LAIKA」の文字を標準文字で表してなり、令和元年6月12日に登録出願、第9類「アンテナ,全地球測位装置(GPS),データ処理装置,事故防止のための光を反射する衣類,コンピュータプログラム(記憶されたもの),コンピュータ用プログラム(電気通信回線を通じてダウンロードにより販売されるもの),犬笛,動物の訓練用電子式首輪」及び第21類「動物用くし,水生動植物の室内飼育観賞用水槽,かいばおけ,水飼い用おけ,箱形のペット用トイレ,ペット用トイレ,家きん用リング」を指定商品として、同2年6月15日に登録査定、同月29日に設定登録がされたものである。 第2 請求人が引用する商標 請求人が、本件商標の登録の無効の理由において引用する商標は、次のとおりである。 1 登録第673825号商標(以下「引用商標1」という場合がある。) 商標の構成:別掲1のとおり 指定商品:第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」 登録出願日:昭和35年12月31日 設定登録日:昭和40年4月20日 書換登録日:平成18年10月4日 2 登録第2381286号商標(以下「引用商標2」という場合がある。) 商標の構成:別掲2のとおり 指定商品:第9類「電気磁気測定器,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」 登録出願日:昭和63年7月22日 優先権主張:1988年3月22日 ドイツ連邦共和国 設定登録日:平成4年2月28日 書換登録日:平成14年8月21日 3 請求人が、請求人を表示し、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、また、請求人が商標権を管理するカメラ、デジタルカメラ、スマートフォン、各種ソフトウェア事業、アンテナ、GPS等を表示するものとして、取引者、需要者の間で広く認識されてきた周知、著名な商標であると主張する片仮名「ライカ」からなる商標(以下「使用商標1」という場合がある。)、欧文字「LEICA」からなる商標(以下「使用商標2」という場合がある。)、欧文字「Leica」からなる商標(以下「使用商標3」という場合がある。)、別掲3のとおりの商標(以下「使用商標4」という場合がある。)及び別掲4のとおりの商標(以下「使用商標5」という場合がある。)。 以下、引用商標1及び引用商標2をまとめて「引用各商標」といい、使用商標1ないし使用商標5をまとめて「各使用商標」という場合があり、引用各商標及び各使用商標を総称して「引用商標」という場合がある。 第3 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を審判請求書において、要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第372号証(枝番号を含む。なお、枝番号を有する証拠において、枝番号の全てを引用する場合には、枝番号を省略して記載する場合がある。また、括弧内に記載する場合は、甲○のように省略して記載する。)を提出した。 1 請求の理由 本件商標は、その指定商品中、第9類「アンテナ,全地球測位装置(GPS),データ処理装置,コンピュータプログラム(記憶されたもの),コンピュータ用プログラム(電気通信回線を通じてダウンロードにより販売されるもの)」(以下、「本件指定商品」という。)について、商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号、同項第19号及び同項第7号に該当するものであるから、その登録は、同法第46条第1項第1号によって無効とされるべきである。 2 請求人の「Leica」ブランドの独創性と周知・著名性 (1)請求人の歴史 請求人の歴史は、数学者カール・ケルナーがドイツに光学研究所を創設した1849年に遡り(甲3の1、甲3の2)、その志はエルンスト・ライツに受け継がれ、1870年に初の実用顕微鏡を世に送り出し、1907年には10万台目の顕微鏡を、ノーベル賞受賞者のロベルト・コッホに進呈し、ライツ/ライカの顕微鏡を使って研究活動をしている姿がジャーナリズムで紹介され、これが世界中の話題を集め(甲3の2)、さらに、1913年頃、エルンスト・ライツ社(ライカの当時の社名)の光学技術者だったオスカー・バルナックが、顕微鏡レンズの技術を応用して小型カメラの開発に成功し、これが後のライカカメラ誕生へとつながっていった(甲3の3、甲12の6)。 (2)「ライカ」の独創性の程度の高さ 「ライカ」という語は、請求人の前身であるエルンスト・ライツ(Leiz)社が開発したカメラの名称、すなわち「Leiz(ライツ)」と「Camera(カメラ)」の2語を結合させた唯一無二の造語として生まれたものであり(甲4の1~3)、我が国のファッション雑誌や百貨店のウェブサイトにも、そのことが紹介された(甲4の1~3)。 つまり、引用商標の独創性の程度は、相当に高いものである。 (3)「多種多様な商品」の製造・販売 請求人は、ライカブランドが強みとする高精度の精密レンズを軸に、デジタルカメラ(甲17~甲43)、超解像顕微鏡システム(甲44、甲45)、画像処理システム(甲47~甲49、甲52)、画像センサーや画像処理エンジン(甲47~甲49、甲51、甲52)、顕微鏡類(甲53~甲63号証)、スマートフォン(共同開発)(甲64~甲152)、スマートフォン(自社開発)(甲153~甲181)、GPSシステム(甲334)、GNSS(全地球衛星測位システム)(甲338)、GNSS受信アンテナ(甲340~甲343、甲345、甲346)各種コンピュータソフトウェア(甲8の1~15、甲335、甲348)、アプリケーションソフトウェア(甲16の1、2)、双眼鏡(甲349、甲351)、他社と共同開発での4Kビデオカメラ(甲350)、他社とコラボしたカメラバッグ(甲352)、インスタントカメラ(甲353、甲355、甲356)、カメラ用ストラップ(甲354)、時計(甲357)、しゃちほこモデルのカメラ(甲31)、くまもんとのコラボカメラ(甲32、甲33)など、多種多様な商品を開発し、販売している。 (4)我が国のカメラ会社がライカの背中を追って成長してきたこと カメラのライカブランドは、1925年に生産された市販一号機のカメラの「ライカI型」、次いで1930年頃には「ライカII型」など、数々の卓越したカメラを世に送り続け(甲5の4、5)、1954年には、現在でも名機と称えられる「ライカM3」が生まれたが、この頃まで我が国のカメラメーカーは、「ライカ」を目標にして小型カメラの開発を行っていたといわれる(甲4の3)。また、我が国の会社がライカの背中を追って成長してきたことが、2015年12月20日付け朝日新聞及び2016年1月12日付け日経産業新聞の記事にも報じられている(甲4の4、5) (5)画像処理からソフトウェア開発まで 精密レンズの用途は広く、スマートフォンやカメラなどのほか、医療や試験研究、宇宙科学、測量、画像処理等の分野で用いられる高精度・高性能の電子機器類、双眼鏡まで多岐に及ぶ(甲7の1~3、甲64~甲152、甲153~甲181、甲349、甲351)。また、他社と協業して、「カメラに搭載するセンサーやソフトウェア、画像処理技術を強化する。ノウハウを掛け合わせて新技術を開発」することも請求人は行っている(甲324)。 請求人は、精密レンズに加えて、最先端の超解像システムを実現する多種多様なソフトウェア・アプリケーションソフトウェアも開発している(甲8、甲16の1、2、甲335、甲348)。 請求人は、それらの画像解析やデジタル技術等に関して、個人ユーザーや研究者向けのセミナー、ワークショップを積極的に開催し、2017年から本件商標の登録年の2020年に至るまでのセミナー、ワークショップの開催数は、100回以上に上る(甲9の1)。我が国においては、東京のほか、大阪、名古屋、福岡に日本オフィスを展開し、更には仙台デスクや横浜の物流センターで、日本全国の顧客ニーズに応えている(甲9の2)。 (6)我が国及び世界中での「ライカ」の周知・著名性 我が国において「ライカ」が広く知られていることは、国立国会図書館のウェブサイトで片仮名「ライカ」で文献検索すると、相当数の文献が請求人の文献として検出されることからも明らかである(甲10の1、2)。また、Goog1eの検索エンジンにて本件商標の登録時の2020年に「ライカ」で検索した最初の100件についても、ほぼ全て(95件)が請求人の「ライカ」ブランドに関する記事である(甲10の3)。 さらに、全国紙、地方紙において「ライカ」が非常に多く取り上げられていることからも、「ライカ」の周知、著名性が優に推認できる(甲17~甲360)。 また、我が国におけるライカカメラの直営店の数は、18に上り(甲11の1)、東京銀座ギャラリーは世界初の「ライカ」の直営店であることからも(甲11の11、2、甲358~甲360、甲362、甲364、甲365)、我が国における「ライカ」の高い人気と顧客ニーズの高さがうかがえる(甲11の2)。 さらに、ライカは、築100年の町家建築を改造してライカギャラリー京都を出店し、出店の様子は各紙でも報じられ、新たなライカブティックや福岡初のライカ直営店が新たにオープンした際にも各紙で報じられている(甲11の3~10、甲11の12~21)。 また、ライカカメラジャパンの代表取締役のインタビューでも、「数年前、iPhone4のプレス発表の際、スティーブ・ジョブズ氏が「新しいiPhone4は、クラッシック・ライカのように優美で美しい」」とコメントしたことも記事の中で報じられている(甲11の11)。 ライカは、我が国のみならず、世界中において知られているブランドである。そのことは各地方新聞紙上において、「高級ブランドとして世界的に知られるライカ」との表現からも推認できる(甲259~甲266)。 (7)我が国での「ライカ」のデジタルカメラの売上げ、総売上高等 我が国及び世界で周知・著名な「ライカ」商標のうち、デジタルカメラに関する我が国での売上げ(デジタルカメラ販売額及び括弧内がマーケットシェア率)は、2012年が11億9千5百万円(0.7%)、2013年が17億3百万円(1.0%)、2014年が15億2千百万円(1.1%)、2015年が19億3千6百万円(1.6%)、2016年が14億6千8百万円(1.6%)、2017年が19億8千2百万円(1.9%)、2018年が19億2千3百万円(2.2%)、2019年が24億3千6百万円(2.2%)、2020年が17億8千7百万円(3.7%)、2021年が22億9千3百万円(4.9%)であり、金額はデジタルカメラに限ったものであるが、ライカカメラのショフ社長への2014年10月24日付け日経産業新聞のインタビューに、「ライカは販売台数を追うような典型的なマスマーチャンダイジングとは異なるので、理解してもらえる場所で売りたい(省略)。」(甲12の7)とあるように、上記デジタルカメラの低いシェア率は、デジタルカメラの品質と販売場所に徹底的なこだわりを持つライカらしい数字であるといえる。 我が国での直近5年の総売上高は、2018年が35億7千6百82万268円、2019年が37億7千6百82万268円、2020年が39億2千9百9万1千696円、2021年が29億7千2百76万7千550円、2022年が38億6千7百2万1千444円であり、さらに、2013年10月17日付け愛媛新聞の「ライカ」の[用語解説]によると、ライ力はドイツの高級カメラメーカーであり、2012年3月期連結決算の売上高は2億9千6百80万ユーロ(約395億円)に上ると報じられている(甲370)。 (8)手術用顕微鏡の分野でも世界のリーディングカンパニーである「ライカ」 「ライカ」ブランドの起源でもある「顕微鏡」は、請求人がそのビジネスを承継し、現在も「世界4大メーカー」の一つとして数えられている(甲12の1)。このうち、手術用顕微鏡の世界市場は、独カール・ツァイスが6割程度、請求人のライカマイクロシステムズが3割程度の世界シェアを占めている(甲12の2、3、甲57)。つまり、請求人は、手術用顕微鏡の分野においても世界のリーディングカンパニーとしての地位を築いている。 (9)「ライカ」ブランドと提携する企業 ライカと提携している企業は、富士通セミコンダクター、パナソニック、シャープ、ソフトバンク、シグマ等多数あり(甲47~甲52等)、そのうち、スマートフォン事業でライカと提携した中国企業のファーウェイは、「ライカ」と提携することでヒットを飛ばし、2018年にはスマートフォン出荷世界2位を記録するまでに至っている(甲108、甲109)。 (10)小括 以上のとおり、「ライカ」ブランドは、「デジタルカメラ」(ライカカメラ社)や「顕微鏡類」(請求人)を軸として、「アンテナ」(ライカジオシステムズ)、「GPS」(ライカマイクロシステムズ)、GPSや画像処理システムを搭載した「スマートフォン」(ライカカメラ社)等、多種多様な「ライカ」ブランド商品を開発し製造、販売している。 そのブランド力は、新聞紙上で、例えば、「憧れの「ライカ」生産追いつかず」(甲248)、「高級ブランドとして世界的に知られる」(甲250~甲266)などのように記載されていることからも分かるように、「ライカ」ブランドは世界及び日本全国の需要者にとって、周知・著名な商標である。 3 商標法第4条第1条第10号の該当性 (1)「ライカ」の周知・著名性 上記2のとおり、「ライカ」は、カメラ、顕微鏡類のみならず、GNSS受信アンテナ(甲340~甲343、甲345、甲346)、GPSシステム(甲334)、GNSS(全地球衛星測位システム)(甲338)、画像処理システム(甲47~甲49、甲52)、画像センサーや画像処理エンジン(甲47~甲49、甲51、甲52)、顕微鏡類の画像解析や画像処理、測量及びモニタリング等に必要不可欠なアプリケーシンソフトウェア(甲8)、各種コンピュータソフトウェア(甲335、甲348)及びスマートフォン(甲153~甲181)についても使用されており、各商品の取引者の間で周知・著名である。 上記の商品は、本件指定商品とほぼ同一又は密接に関連する商品である。また、上記の商品は、取引形態が非常に特殊なものであり、商標法第4条第1項第10号の商標審査基準に照らせば、特定の市場においてのみ流通する商品であるがゆえに、周知・著名性の判断に当たっては、これらの商品は、「取引者の間で」のみ広く認識されているものを含むと読むべきである。 上記の商品は、新聞紙上又は申立人のホームページに記載されている商品であり、各商品の取引者の間では十分に周知・著名な商標ということができる。 また、2016年頃から最新のスマートフォンにはGPS機能が付いており(甲73)、本件指定商品中の「全地球測位装置(GPS)」やその電波を受信する「アンテナ」は、請求人が現に使用しているスマートフォン(甲153~甲181)とも密接に関連する商品となる。 そして、「ライカ」のスマートフォンには、「高画質の写真を撮影できる」カメラ機能や、また「高性能のイメージセンサー」が搭載されている(甲174、甲175、甲177、甲179)。 日本のシャープ社は、「独ライカカメラと共同開発した新たなイメージセンサーにより、オートフォーカス速度が同社従来機比約2倍に向上」(甲142)している。 さらに、2018年11月19日付け日経産業新聞に記載されているとおり、「ファーウェイは、旗艦モデルの「P20」がけん引したことでシェアを11ポイント伸ばした。独ライカとの共同研究を進めるほか、日本では品川に画像処理に特化した研究拠点も持つ。」(甲106)とあるように、スマートフォンにとって「画像処理」の技術は、「高画質の写真を撮影」又は保存するためには必要不可欠の技術である。そしてその高画質を誇る「カメラの性能を高めた」からこそ、中国のファーウェイ社のスマホのヒットにつながり、スマートフォン事業においてファーウェイが世界第2位の位置を占めるほど重要なものとなるのである(甲109)。 そうすると、本件指定商品中の「データ処理装置」も「ライカ」商標が現に使用されているスマートフォンに搭載された「高性能のイメージセンサー」と密接な関連性を持つ(甲153~甲158、甲160~甲172、甲174~甲177、甲179)。 スマートフォンにはありとあらゆるアプリケーションソフトウェア(アプリ)が使用されており、そうすると、本件指定商品のうち「コンピュータプログラム(記憶されたもの),コンピュータ用プログラム(電気通信回線を通じてダウンロードにより販売されるもの)」は、「ライカ」のスマートフォンに採用されているアプリ(甲16)とも、密接に関連する商品といわざるを得ない。 (2)「ライカ」(使用商標1)と本件商標の類似性 過去10年間の全国各紙によれば(甲17~甲370)、欧文字のブランド名「Leica」は、我が国の報道において、片仮名の「ライカ」で紹介され使用され続けており、片仮名の「ライカ」ではなく「Leica」とのみ記した新聞記事は、数件である(甲276、甲278、甲280、甲283~甲285、甲319等)。 よって、我が国の需要者において周知・著名な商標は、「ライカ」(使用商標1)ということができる。 ここで、本件商標「LAIKA」の称呼は、我が国で最も親しまれている英語で「LAND」を「ランド」と発音する例に倣って、「ライカ」のみの称呼が生じる。 一方で、各使用商標の称呼を「ライカ」で認識している需要者が、その「ライカ」のつづりを、正しく「Leica」と記憶している事実を示す資料はなく、この場合、本件商標が各指定商品に使用された場合に、「あの有名な「ライカ」のつづりは、「LAIKA」である」と誤って認識され、その商品の出所につき誤認、混同を引き起こす可能性がある。なぜならば、「LEICA」は造語(甲4の1)であり、我が国で最も親しまれている英語からは想像できないつづりからなる言葉だからである。 (3)誤認・混同を生じるおそれ 本件商標が使用された場合には、「ライカ」の称呼が同一なこともあいまって、本件商標と使用商標1の商品の出所につき、需要者、取引者との間で誤認、混同を生じることは必至である。そのような事態が生じれば、100年以上の歴史を持つ「ライカ」ブランドに化体した業務上の信用が大きく崩れてしまう可能性がある。 (4)小括 よって、本件商標の登録が維持されれば、商品の出所につき混同が生じるのは必至であり、したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。 4 商標法第4条第1条第11号の該当性 (1)本件商標と引用各商標の類似性 ア 称呼 本件商標は、「LAIKA」の欧文字からなるところ、該文字は、特定の意味を有する成語とは認められないものであるから、これを称呼する場合には、我が国において最も親しまれている英語の「LAND」を「ランド」と読む発音の例に倣って「ライカ」の称呼が生じる。 引用各商標は、「LEICA」又は「Leica」の欧文字からなるところ、これらの語は、上述のとおり、世界的に周知・著名なライカブランドとして知られるものであるから、その欧文字からは自然と「ライカ」の称呼が生じる。 よって、本件商標と引用各商標は、いずれも「ライカ」の称呼を生じるものであるから、称呼上、同一である。 イ 外観 本件商標「LAIKA」と引用各商標「LEICA」又は「Leica」は、ともに横書きの「L」から始まり「A」で終る欧文字5文字からなり、単語構成の要となる第1、3、5文字目の「L」、「I(i)」、「A(a)」の3文字をそれぞれ共通にする。 商標の識別上最も重要な語頭が同一であること、また、中間の「I」と語末の「A」において同一であり、これらの3文字に挟まれた第2、4文字目にのみに差異がある構成は、商標全体の外観上極めて近似した印象を与える。 簡易迅速を旨とする取引の経験則に照らせば、共通する3文字に挟まれた2文字の欧文字の相違を、英語や西洋語を母国語としない我が国の需要者、取引者が、都度確認することは一般的であるとはいえず、称呼が完全に同一であることもあいまって、時と所を異にして本件商標と引用各商標に接した際に、通常の需要者、取引者が外観上明確に区別できるとはいい難い。 よって、本件商標と引用各商標は、外観上も、極めて相紛らわしいものである。 ウ 観念 本件商標「LAIKA」は、英和辞典において「「犬」ライカ・・・」(甲371)とあるが、この英語の意味を一般的に知る者は我が国においては皆無であるといってよく、よって、特定の観念は生じないというのが自然である。 一方、引用各商標からは、上記したとおりの周知・著名な請求人のブランド「ライカ」が自然と想起されるから、ライカブランドの観念が生じる。広辞苑にも「ライカ」は「ドイツのライツ社製カメラの商標名。1925年から製造されている35ミリカメラの祖」との紹介がある(甲372)。 しかしながら、有名なライカブランドの「ライカ」のつづりを正確に把握していない需要者もいると考えられ、そうすると、ライカブランドの「ライカ」を、英諾のつづりで最も近い「LAIKA」と誤って認識する可能性がある。 そうすると、観念上比較し得ない両商標が、時と所を異にした場合に、そもそも「ライカ」のつづりを正確に把握していない需要者が、本件商標の「LAIKA」を「ライカ」ブランドの「ライカ」と認識する可能性があることは否定できない。 エ 小括 以上を総合すると、本件商標と引用各商標とは、称呼において完全に同一であり、外観も互いに相紛らわしく、観念上も相紛らわしく認識される可能性があるものであるから、本件商標と引用各商標は、類似する商標である。 (2)本件商標の指定商品と引用商標の指定商品の同一・類似性 本件指定商品は、引用各商標の指定商品のうち「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」と類似するものである。 (3)商品の出所について誤認混同を生じさせるおそれがあること 上述のとおり、本件商標と引用各商標の称呼は同一であり、商品の出所について誤認混同を生じさせるおそれのある類似の商標である。「Leica」が、極めて高い独創性を持つ造語であることは上述のとおりである。本件商標が、我が国の需要者、取引者の間で、「ライカ」の称呼でのみ親しまれてきた長い歴史に鑑みれば、本件指定商品の市場において、需要者、取引者がその称呼を頼りに取引に当たると考えるのは極めて自然なことである。 また、本件指定商品は、引用各商標の指定商品に類似するものであり、本件商標が本件指定商品に指定された場合に、その商品の出所につき混同が生じる可能性が極めて高いといわざるを得ない。 (4)取引の実情 請求人の「ライカ」ブランドに係る引用各商標は、上述のとおり、100年以上の歴史を誇る世界的に周知、著名な商標である。請求人は、既に、アンテナ(甲340~甲343、甲345、甲346)、GPS関連事業(甲334、甲338)、顕微鏡類の画像解析や画像処理等に必要不可欠なアプリケーシンソフトウェア(甲8、甲335、甲348)、GPSや画像処理機能を搭載するスマートフォン(甲64~甲152、甲153~甲181)カメラやスマホに搭載可能なアプリケーションソフトウェア(甲16)を事業として展開している。本件指定商品の需要者、取引者は、アンテナやGPS、データ処理装置やコンピュータプログラムやアプリを利用する企業や個人ユーザーであるから、需要者の範囲も完全に一致する。 また上述のとおり、請求人のオフィスが日本に複数存在すること(甲9の2)や、ライカカメラ社の直営店も複数存在すること(甲11の1)、更には請求人が積極的に個人ユーザーや企業向けのセミナーやワークショップを開催していること(甲9の1)から、請求人が使用する引用各商標の指定商品が、口頭では一切取引されていないと判断することはできない。本件指定商品についても、電話等の口頭による商取引が全く行われていないという特殊な取引の実情も見当たらない。また、商標の称呼よりも、むしろ外観や観念を重視して取引されるべき特殊な事情も見当たらない。そうとすれば、「ライカ」の周知・著名性に鑑みて、称呼が同一であることを理由に本件商標が類似すると判断することは決して不合理ではない。 ここで、本件指定商品と引用各商標の指定商品は安価な商品ではないため、商品を購入する際にその需要者・取引者が相当の注意を払うだろうから、本件商標と引用各商標との間で商品の出所につき混同が生じるおそれはない、との反論が予想されるので、この点についてあらかじめ申し述べる。 たとえ本件指定商品に接する取引者、需要者が高度な識別能力を有すると仮定しても、商品を購入する際に、電話等の口頭での取引でその商品を特定する場合がないとはいえないばかりでなく、時と所を異にして取引を行うのが通常であることをも併せ考慮すれば、引用各商標と同一の「ライカ」の称呼が生じる本件商標が、本件指定商品に使用された場合に、出所の混同を生じるおそれがあると考えるのは極めて自然である。 (5)小括 以上より、本件商標は、引用各商標に類似する商標であり、かつ引用各商標の指定商品に類似する商品に使用されるものであるから商標法第4条第1項第11号に該当するものであり、よって、本件指定商品について取り消されるべきものである。 5 商標法第4条第1条第15号について (1)各使用商標の周知、著名性 請求人が、「ライカ」ブランドについて使用している商標は、片仮名からなる「ライカ」、欧文字からなる「LEICA」と「Leica」、及び筆記体の欧文字からなる「Leica」やロゴの5種類がある(甲15の1、2)。 「ライカ」ブランドには、上述のとおり、1849年から170年以上続く顕微鏡事業、1920年代に35mmフィルムを用いた世界初のコンパクトカメラを開発して世界的に周知、著名となったカメラ事業がある。その高い品質と積極的なブランディング戦略により、今日に至るまで、請求人の顕微鏡事業及び請求人が商標権を管理するカメラ事業、デジタルカメラ事業、スマートフォン事業、アンテナ事業、GPS事業、ソフトウェア事業は、世界中で支持される周知、著名なブランドとしての地位を守り続けている(甲3の1~甲12の8、甲17~甲370)。 したがって、「ライカ」ブランドに係る各使用商標は、本件商標の登録出願時(2019年6月12日)及び登録査定時(2020年6月15日)においても、需要者の間で周知・著名であったことは明らかである。 (2)商標の類似性 本件商標は「ライカ」のみの称呼を生じる。本件商標の称呼は、請求人の「ライカ」ブランドを示すものとして、我が国の市場において頻繁に使用される片仮名の使用商標「ライカ」の称呼と同一である(甲17~甲370)。 また、上述のとおり、本件商標は、欧文字の使用商標「LEICA」、「Leica」及び筆記体の「Leica」とも、外観上、互いに極めて近似した印象を与える類似の商標である。称呼も「ライカ」において同一である。 したがって、本件商標と請求人の引用各商標及び各使用商標とは、互いに相紛らわしい類似の商標というべきである。 (3)使用商標の独創性 請求人の各使用商標は、上述のとおり、造語の程度が非常に高く、唯一請求人の事業に係る独創的な標章である。 (4)取引者・需要者の共通性、商品間の関連性 請求人の各使用商標が使用されている「顕微鏡類」や「カメラ」「スマートフォン」のうち、特に「カメラ」や「スマートフォン」は、一般需要者が購入する製品であり、カメラ店や家電量販店、オンラインショップ等の小売店で一般的に販売されている商品である。 そして、本件指定商品中、「コンピュータプログラム(記憶されたもの),コンピュータ用プログラム(電気通信回線を通じてダウンロードにより販売されるもの)」も一般需要者が購入するものであり、インターネット回線を介して利用者の電子情報端末にダウンロードすることにより流通し、又は記録媒体に記憶させた商品として家電量販店等の小売店で販売されている。 事実、「ライカ」は、「LIECA FOTOS」というデジタルカメラ用のアプリケーションソフトウェア(アプリ)を製造、販売している(甲16の1)。このアプリを使用すれば、Wi-Fi接続又はBluetooth接続により、カメラをスマートフォンやiPadに接続し、画像を転送したり、カメラを遠隔操作できるほか、写真の確認、編集、共有も簡単に行え(甲16の1)、更にはライカのスマホにも連携できるアプリである(甲16の2)。 また、本件指定商品中の「アンテナ」や「全地球測位装置(GPS)」は、請求人のライセンシーであるライカジオシステムズが、GNSS受信アンテナ(甲340~甲343、甲345、甲346)、GPSシステム(甲334)、GNSS(全地球衛星測位システム)(甲338)など、密接に関連する商品について製造、販売している。 よって、本件指定商品と各使用商標が使用されている商品の販売場所や需要者層、取引者層は一致する。 さらに、本件指定商品中、「データ処理装置」は、「データ(画像や情報)」を「処理(検索、加工、修正、複製、解析、収集等)」するための「装置」であるところ、顕微鏡類、デジタルカメラやスマートフォンで撮影した画像を解析したり、データを処理(編集、加工等)するためには、それらのデータを取り込むデータ処理システムや、専用のコンピュータプログラムが必要不可欠である。 そうすると、請求人の各使用商標が使用されている「顕微鏡類」(甲53~甲63)、「デジタルカメラ」(甲17~甲43)、「スマートフォン」(甲64~甲181)と本件指定商品は、互いに極めて強い関連性を有する商品である。 (5)本件指定商品の特徴 今日の高度にデジタル化した社会において、本件指定商品の「アンテナ」や「全地球測位装置(GPS)」、「データ処理装置」や「コンピュータープログラム」は、一般消費者向けの商品のみならず、あらゆる産業分野における専門的な商品まで、極めて幅広く展開される汎用性の高い商品である。 そうすると、少なくとも、「ライカ」ブランドが既に事業を展開している分野において、各使用商標と同一の称呼「ライカ」を生じる本件商標が本件指定商品に使用された場合、商品の出所の混同を引き起こすことは必至である。 加えて、上述の「ライカ」ブランドの周知・著名性に鑑みれば、本件商標の称呼「ライカ」に接する取引者、需要者が、請求人の業務に係る商標を連想、想起する可能性が極めて高い。 (6)取引の実情 請求人が商標権を保有し管理するカメラ事業において、例えば、ライカカメラ社は、スマートフォンやiPadに接続してカメラの画像を転送するためのアプリケーションソフトウェアを需要者に提供している(甲16)。また、請求人により、画像処理を含む各種ソフトウェアも販売し(甲8の1~15)、高性能のイメージセンサーを搭載したスマートフォンも現に販売している(甲153~甲181)。 (7)請求人の各使用商標に化体した信用を害されるおそれ 請求人は、その各使用商標のブランドイメージを維持し、より一層発展させるために、顕微鏡事業及びカメラ事業、デジタルカメラ事業、スマートフォン事業、アンテナ事業、GPS事業、ソフトウェア事業のブランド管理を行っている。請求人の各使用商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、日本を含む世界中において、需要者の間に広く認識されている周知、著名商標であり、請求人の提供する商品、サービスに絶大な信用が化体した重要な財産である(甲17~甲370)。 また、全国各紙の新聞記事の過去10年分を見ても、「Leica」は、ほぼ「ライカ」という片仮名で表記され、「Leica」と表記されている記事は数件に満たない(甲276、甲278、甲280、甲283~甲285、甲319等)。 したがって、万が一にも、本件商標の登録が維持されると、請求人と何ら関係のない者により、請求人の意図とは無関係に、請求人が現にその商標を付して使用している商品とその需要者層、取引者層を共通にする関連性の高い商品について、請求人の商標の称呼と同一の商標、すなわち本件商標が自由に使用されてしまうことになる。 その結果として、本件商標の称呼「ライカ」に接する需要者、取引者が、たとえ、請求人の業務に係る商品であると認識しなくても、請求人と経済的又は組織的に何らかの関係がある関連会社の業務に係る商品であると誤認し、商品の出所について混同を生ずるおそれがある。 このような事態が生じた場合、請求人が長年にわたり多大なる企業努力を費やして築き上げた、請求人の各使用商標に化体したライカブランドのイメージと、請求人が170年以上の年月を重ねて獲得した業務上の信用及び既得の利益が著しく毀損されることは明白である。また、このような事態が生じた場合、需要者の利益をも保護する商標法第1条の立法趣旨に反する結果となることも明白である。 さらに、本件商標の使用は、需要者、取引者に対し請求人の周知・著名な「ライカ」ブランドを連想させて、その商品の出所につき誤認を生じさせるものである。 (8)誤認・混同を生じるおそれ 以上のとおりの各使用商標の周知・著名性及び独創性、各使用商標と本件商標との類似性、両商標に係る商品の密接な関連性、取引者・需要者の共通性、本件指定商品の汎用性の高さ、及び取引の実情を考慮すれば、本件商標の商標権者が本件商標を本件指定商品に使用した場合、それがあたかも請求人の業務に係る商品であるかのように認識され、あるいは請求人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように誤認され、その出所について混同を生じるおそれがあることは明らかである。 (9)小括 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 6 商標法第4条第1条第19号の該当性 (1)「ライカ」の周知性、著名性 本件商標の登録出願時及び登録査定時における、「ライカ」の周知・著名性は上述のとおりである。 (2)使用商標の独創性 請求人の各使用商標は、上述のとおり、造語の程度が非常に高く、構成上顕著な特徴を有するものであり、唯一請求人の事業に係る独創的な標章である。 (3)商標の類似性 上記5(2)のとおり、本件商標は、引用各商標及び各使用商標と極めて相紛らしい類似の商標である。 (4)「ライカ」ブランドに化体した信用、名声、顧客吸引力等を毀損させるおそれがあること 「ライカ」ブランドは、上述のとおり我が国の需要者、取引者の間に広く知られており、かつ商標「ライカ」はその構成上顕著な特徴を有する造語である。 よって、本件商標が本件指定商品に使用された場合には、「ライカ」ブランドに化体した信用、名声、顧客吸引力等を毀損させるおそれがある。 また、本件商標が偶然にも、周知・著名な「ライカ」と称呼を同一とする商標を採択したとは考えられず、日本国内で全国的に知られている商標と同一又は類似の商標について、その周知・著名性にあやかって、又は出所表示機能を希釈化させたり、その名声等を毀損させる目的をもって出願したものであると十分に推認できる。 (5)小括 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。 7 商標法第4条第1条第7号の該当性 本件商標の称呼は、「ライカ」である。請求人の有名なブランドの称呼もまた「ライカ」である。請求人の「ライカ」は上述のとおり、唯一無二の造語であり、その創作性の程度は非常に高く、またその認知度も相当程度に高いものである。そのような中で、被請求人が、偶然にも「ライカ」と称呼する「LAIKA」を商標として採択したことを立証する術はない。それほどまでに請求人のブランド名「ライカ」は、世界的に周知・著名であり、相当な顧客吸引力を有している。このことは我が国の企業に、「ライカとの連携はプランドイメージを変える点でも大きな意義がある」(甲323)といわしめることからも優に推認できる。 ここで「LAIKA」は、「ロシアの犬」の意味を持つ「LAIKA」(甲371)からとったものであるものの、一般の需要者、取引者が「LAIKA」に接した場合に、即座に「ロシアの犬」の意味を想起することはない。むしろ、「ライカ」ブランドの周知・著名性に鑑みれば、同じ称呼を持つ「ライカ」から、あの「ライカ」ブランドのことかな、と請求人の「ライカ」を思い浮かべるのが自然である。 被請求人は、「ライカ」ブランドの周知・著名性にあやかって、つづりの異なる「LAIKA」を採用したとみるのが妥当である。 請求人の「ライカ」の造語の程度の高さに鑑みれば、本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないものである。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。 8 結語 以上詳述したとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号、同項第19号及び同項第7号の規定に違反してなされたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定により取り消されるべきである。 第4 被請求人の答弁 被請求人は、何ら答弁していない。 第5 当審の判断 1 請求人の主張及び同人の提出した証拠によれば、以下の事実が認められる。 (1)請求人について 請求人は、ドイツの高級カメラメーカーであって(甲370)、1925年に市販一号機のカメラの「ライカI型」を生産・販売開始(甲4の1、3)して以来、数々のカメラを生産し続け、デジタルカメラ(甲17~甲43)や顕微鏡類(甲44、甲45)を軸として、アンテナ(甲340~甲343、甲345、甲346)、GPS関連事業(甲334、甲338)、顕微鏡類の画像解析や画像処理等に必要不可欠なアプリケーシンソフトウェア(甲8、甲335、甲348)、GPSや画像処理機能を搭載するスマートフォン(甲64~甲181)、カメラやスマホに搭載可能なアプリケーションソフトウェア(甲16)等、多種多様な「ライカ」ブランド商品を開発し製造、販売している。 また、請求人は、多数の我が国の企業(富士通セミコンダクター、パナソニック、シャープ、ソフトバンク、シグマ等)と提携している(甲47~甲52等)。 さらに、請求人は、我が国における「ライカ」ブランドのカメラを扱う直営店を18店舗有しており(甲11の1)、我が国に複数のオフィスを有し(甲9の2)、画像解析やデジタル技術等に関して、個人ユーザーや研究者向けのセミナー、ワークショップを開催し、2017年から2020年の間のセミナー、ワークショップの開催数は、100回以上に上る(甲9の1)。 (2)「ライカ」の独創性の程度の高さについて 「ライカ」という語は、請求人の前身であるエルンスト・ライツ(Leiz)社が開発したカメラの名称、すなわち「Leiz(ライツ)」と「Camera(カメラ)」の2語を結合させた造語として生まれたものであり、我が国のファッション雑誌や百貨店のウェブサイトにも、そのことが紹介された(甲4の1~3)。 (3)我が国における「ライカ」ブランドに関する報道及び同ブランドのカメラの売上げ等について 国立国会図書館のウェブサイトで片仮名「ライカ」で文献検索すると、相当数の文献が請求人の文献として検出される(甲10の1、2)。Goog1eの検索エンジンにて、本件商標の設定登録時の2020年に「ライカ」で検索した最初の100件についても、そのうちの95件が請求人の「ライカ」ブランドに関する記事である(甲10の3)。 さらに、我が国の新聞各紙において「ライカ」ブランドが多く取り上げられており(甲17~甲360)、我が国における請求人のギャラリーや新たな店舗の出店についても、各紙で報じられた(甲11)。 そして、過去10年間の新聞各紙によれば(甲17~甲370)、欧文字のブランド名「Leica」は、我が国の報道において、片仮名の「ライカ」で紹介され使用され続けている。片仮名の「ライカ」ではなく「Leica」とのみ記した新聞記事は、過去10年間で数件である(甲276、甲278、甲280、甲283~甲285、甲319等)。一方、需要者が、「ライカ」のつづりを、正しく「Leica」と記憶している事実を示す資料は見当たらない。 加えて、「ライカ」ブランドは、我が国の新聞各紙において、「高級ブランドとして世界的に知られるライカ」(甲259~甲266)、「憧れの「ライカ」生産追いつかず」といった説明がされている(甲248)。 「ライカ」ブランドのデジタルカメラの我が国での売上げ(販売額)及びマーケットシェア率は、2012年が11億9千5百万円(0.7%)、2013年が17億3百万円(1.0%)、2014年が15億2千百万円(1.1%)、2015年が19億3千6百万円(1.6%)、2016年が14億6千8百万円(1.6%)、2017年が19億8千2百万円(1.9%)、2018年が19億2千3百万円(2.2%)、2019年が24億3千6百万円(2.2%)、2020年が17億8千7百万円(3.7%)、2021年が22億9千3百万円(4.9%)である。 2 本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について (1)使用商標1の周知性について 上記1の事実を総合すると、請求人は、ドイツの高級カメラメーカーであって、1925年以来、デジタルカメラ等、多種多様な「ライカ」(Leica)ブランドの商品を開発し製造、販売していること、我が国において、カメラの直営店やオフィスを有し、画像解析やデジタル技術等に関して、個人ユーザーや研究者向けのセミナー、ワークショップを多数開催していること、請求人のカメラのブランド名「ライカ」(Leica)は、我が国の書籍や新聞各紙で多数取り上げられ、高級ブランドとして世界的に知られている旨の説明もされていること、当該「ライカ」ブランドのデジタルカメラの我が国における売上げ(販売額)及びマーケットシェア率は、2012年から2021年の間に、順調に増加しており、2021年の販売額は約22億であることから、当該「ライカ」ブランドは、請求人のカメラ(デジタルカメラを含む。)のブランドとして、上記期間において、我が国の需要者の間で周知であったと認められる。 そして、上記1(3)によれば、当該「ライカ」ブランドについては、我が国の報道において、片仮名の「ライカ」として紹介され続けており、「ライカ」のつづりを、「Leica」と記憶している事実を示す資料は見当たらないことから、片仮名「ライカ」からなる使用商標1は、請求人の業務に係るカメラ(以下「請求人商品」という。)を表示するものとして、本件商標の登録出願時(2019年6月12日)には、既に我が国において需要者の間に広く認識されていたものといえ、その状態は、本件商標の登録査定時(2020年6月15日)においても継続していたというのが相当であって、その周知、著名性の程度は高いものといえる。 (2)使用商標1の独創性の程度について 使用商標1は、上記第2の3のとおり、「ライカ」の片仮名からなるところ、当該「ライカ」の文字は、請求人が創造した語であって、そのことが我が国の雑誌やウェブサイトにおいても紹介されていることから、使用商標1の独創性は高いといえる。 (3)本件商標と使用商標1の類似性の程度について 本件商標は、上記第1のとおり、「LAIKA」の欧文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は、英和辞典において「「犬」ライカ・・・」の記載があるものの(甲371)、当該語義は我が国において知られているとは認められないものであるから、一種の造語というのが相当である。 そうすると、「LAIKA」は、我が国において親しまれた英語又はローマ字の読みに倣って「ライカ」の称呼が生じるところ、当該「ライカ」の称呼は、請求人商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている使用商標1「ライカ」から生じる称呼「ライカ」と同一であるから、これより、請求人商品を表示するカメラのブランドの「ライカ」ほどの観念が生じるものといえる。 そして、本件商標と使用商標1は、外観は異なるものの、いずれも特徴的な態様で表されたものではないから、その外観の差異が需要者に与える印象は、強くないものといえる。 してみれば、本件商標は、使用商標1と同一の称呼及び観念を生じ、外観の差異が与える印象が強くないものであるから、両商標の類似性の程度は高いものというのが相当である。 (4)請求人商品と本件商標の指定商品の関連性及び需要者の共通性について 請求人商品には、デジタルカメラも含まれるところ、デジタルカメラは、半導体素子を用いて光(画像)をデジタルデータに変換して記憶媒体に記録する装置であって、現代ではスマートフォンなどにその機能が統合されているものである(職権調査 https://e-words.jp/w/デジタルカメラ.html)。一方、本件指定商品である「アンテナ,全地球測位装置(GPS),データ処理装置,コンピュータプログラム(記憶されたもの),コンピュータ用プログラム(電気通信回線を通じてダウンロードにより販売されるもの)」も、それぞれ、電波を発射・受信したりするための装置(アンテナ)、衛星からの信号を受け取り、位置を特定するもの(GPS)、データを処理する装置や、データの処理のためのプログラムであって、スマートフォンなどにその機能が統合されているものであるから、請求人商品と本件指定商品とは、用途や機能が共通するところがあり、これらの商品は高い関連性を有し、取引者、需要者層が共通することが多いものといえる。 また、本件指定商品以外の本件商標の指定商品については、請求人商品とは、商品の関連性及び需要者の共通性は低いといえる。 (5)出所の混同のおそれ 上記(1)ないし(4)のとおり、使用商標1は、請求人商品を表示するものとして周知著名なものであり、その独創性も高いといえる。そして、本件商標と使用商標1は高い類似性を有し、また、請求人商品と本件指定商品とは関連性を有するものであって、取引者、需要者も共通するものであるが、請求人商品と本件指定商品以外の本件商標の指定商品とは、その関連性及び需要者の共通性が低いものである。 以上を踏まえ、本件商標の指定商品の取引者、需要者において普通に払われる注意力(需要者には一般消費者も含まれる。)を基準として、総合的に判断すれば、本件商標の商標権者が、本件商標を本件指定商品に使用したときはもとより、本件指定商品以外の本件商標の指定商品に使用しても、これに接する需要者は、その周知、著名性及び独創性の程度からして、使用商標1を想起、連想し、当該商品を他人(請求人)又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。 (6)小括 したがって、本件商標は、他人(請求人)の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるものであるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。 3 むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから、その登録は、同項の規定に違反してされたものである。 したがって、本件商標の登録は、その余の点について判断するまでもなく、商標法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-890014

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