商標無効審判
2023-890009
タートオプティカルエフデイアアル、タルトオプティカルエフデイアアル、タートオプティカル、タルトオプティカル、オプティカルエフデイアアル、タート、タルト、オプティカル、エフデイアアル
- 審判番号
- 2023-890009
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 商願2016-125181
- 登録番号
- 6019948
- 請求日
- 2023年02月15日
- 審決日
- 2024年02月29日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】タート オプティカル エンタープライゼズ エルエルシー
- 【請求人代理人】深井 俊至
- 【被請求人】株式会社 プライム
- 【被請求人代理人】垣木 晴彦
- 審判長/審判官
- 審判長 山田 啓之
- 審判官 鈴木 雅也
- 審判官 渡邉 あおい
- 分類
- T111 .261-Y (W09) / T111 .262-Y (W09) / T111 .263-Y (W09) / T111 .271-Y (W09)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法46条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号、商標法第46条第1項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第6019948号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6019948号商標(以下「本件商標」という。)は、「TART OPTICAL F.D.R.」の欧文字を標準文字で表してなり、平成28年10月26日に登録出願、第9類「眼鏡,サングラス」を指定商品として、同30年1月30日に登録査定され、同年2月16日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
請求人が引用する登録第5427549号商標(以下「引用商標」という。)は、「TART」の欧文字を標準文字で表してなり、平成23年1月18日に登録出願、第9類「眼鏡,眼鏡の部品及び附属品」を指定商品として、同年7月22日に設定登録されたものであり、その商標権は現に有効に存続しているものである。
第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第87号証(枝番号を含む。)を提出した。
なお、証拠の表記に当たっては、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載する。また、枝番号全てを表示する場合は、枝番号を省略することがある。
1 請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当し、その登録は商標法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。
2 具体的な理由
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標と引用商標の類似性について
(ア)本件商標は、「TART OPTICAL F.D.R.」である。「TART」と「OPTICAL」の間及び「OPTICAL」と「F.D.R.」の間にそれぞれ空白が置かれており、「TART」(タート)の部分と「OPTICAL」(オプティカル)の部分と「F.D.R.」(エフディーアール)の部分は、分離して観察できる(甲63、甲64)。
「OPTICAL」の部分は、「目の」、「視力の」、「視覚の」、「視力を助ける」、「光学(上)の」などの意味である(甲8、甲9)。本件商標の指定商品(眼鏡,サングラス)との関係において、「OPTICAL」の部分は、商品の種類、用途ないし機能を示すにすぎず、識別力がないか少なくとも識別力がほとんどない(甲62)。
「F.D.R.」の部分は、本件商標の出願時点及び登録査定時において、特定の観念を有するものとして需要者に認識されるものではなく、欧文字の「F」(エフ)「D」(ディー)「R」(アール)と認識されるにとどまる。
(イ)本件商標の「TART」の部分及び引用商標「TART」は、本件商標の指定商品の分野(眼鏡関係分野)においては、1948年にアメリカ合衆国ニューヨーク州で設立された「Tart Optical Enterprises,Inc.(タート オプティカル エンタープライゼズインク)」(以下「タート社」という。)の創立者であり眼鏡フレームの伝説的職人である「Julius Tart(ジュリアス・タート)」氏(以下「タート氏」という。)又はタート社を想起させる(甲5、甲6、甲10~甲49、甲59、甲60、甲65~甲87)。
タート社の創立者の氏名(「Julius」がファースト・ネーム、「Tart」がラーストネーム)中、ファースト・ネームの「Julius」(ジュリアス)は、欧米系の人のファースト・ネームとして特別なものではなく、一般的な男性のファースト・ネームであり(甲7)、このファースト・ネームはそれほど注意をひかない。
タート氏が創立したタート社もタート氏のラーストネームを冠して、「Tart Optical Enterprises,Inc.」との名称であり、「Tart」ないし「TART」が重要部分である。
本件商標中の「TART」の部分と引用商標「TART」がタート氏のラーストネームであることも請求人と被請求人の間で争いのないことである(甲4、甲10)。
(ウ)請求人は、タート社の事業承継者であり、「TART」ブランドの保有者である(甲5、甲6、甲10、甲20~甲25、甲47~甲50、甲59、甲60)。
請求人が保有する、眼鏡類、眼鏡フレーム等を指定商品とする商標「TART」に係る米国商標登録(甲23、甲59)及び眼鏡類、眼鏡フレーム等を指定商品とする商標「TART OPTICAL ENTERPRISES」に係る米国商標登録(甲60)においても、使用主義の米国において1948年12月31日を最初の商業使用日として登録されている。つまり、1948年設立のタート社の使用に係る「TART」及び「TART OPTICAL ENTERPRISES」の商標の権利を請求人が承継していることがタート社及びタート氏の母国である米国で認められている。
請求人の名称は、「Tart Optical Enterprises,LLC」(タート オプティカル エンタープライゼズ エルエルシー)である。これもタート社の名称を引き継いだものである(なお、LLCはリミテッド・ライアビリティー・カンパニーの略であり会社形態を示す部分である。)。2017年に、請求人は権利保有会社となり、タート氏のTart Optical Enterprises,Inc.と同じ名称のTart Optical Enterprises,Inc.(タート オプティカル エンタープライゼズインク)を事業会社(以下「請求人事業会社」という。)とし、以降は、請求人事業会社が「TART」ブランドの眼鏡関係商品を製造、販売している(甲47)。タート氏又はタート社の承継者である請求人と請求人事業会社がそれらの会社名称に「Tart」を冠して、「TART」ブランドの眼鏡関係商品を製造、販売しているのである。
請求人及び請求人事業会社の名称中の「Optical」は、前記のとおり、「目の」、「視力の」、「視覚の」、「視力を助ける」、「光学(上)の」などの意味である(甲8、甲9)。本件商標の指定商品及び引用商標の指定商品との関係において、「Optical」の部分は、商品の種類、用途ないし機能を示すにすぎず、識別力がないか少なくとも識別力がほとんどない。
また、請求人及び請求人事業会社の名称中の「Eterprises」は、「事業」、「企業」、「会社」などの意味である(甲8、甲9)。企業、会社ないし事業者がその事業に商標を使用するのであるから、「Eterprises」の部分は、識別力がないか少なくとも識別力がほとんどない。
(エ)1948年設立のタート社ないしタート氏の「TART」ブランドの眼鏡フレーム及びその眼鏡フレームを使用した眼鏡は、眼鏡関係商品の分野において、優れたデザインを有し、高品質で価値が高いビンテージ商品として、日本を含めて世界的に需要者の間によく知られてきた。需要者の間ではあこがれの商品となっていた。
請求人は、タート社ないしタート氏の眼鏡フレーム事業(「TART」ブランドも含む。)を承継し、日本を含む世界において、請求人及び請求人事業会社又はそのライセンシーによって、「TART」ブランドの眼鏡フレームを製造、販売してきた。
よって、眼鏡関係商品の分野における請求人の引用商標の知名度は、単に請求人及び請求人事業会社の製造、販売に係るものだけでなく、1948年からタート社によって製造、販売されてきた眼鏡フレームの知名度も含めるべきことになる。
請求人の「TART」ブランドの眼鏡フレーム及び眼鏡は、タート社の「TART」ブランドの眼鏡フレームを受け継ぎ、優れたデザインを有し、高品質で価値が高いビンテージ商品としての商品性を継承するため、米国そしてイタリアにおいて手作りされている(甲10)。このようなビンテージ商品の知名度は、単に日本における販売数量や眼鏡分野におけるシェアという基準で量るべきものではない(甲12、甲35の6、甲82、甲84の2)。
タート社、請求人ないし請求人事業会社の「TART」の眼鏡フレームを使用した眼鏡は、日本を含めて世界的に知られた映画スターやエンターテイナーといった著名人にも使用され、その広告効果は極めて大きく、眼鏡関係商品の分野において「TART」は日本を含めて世界的によく知られたブランドとなり、需要者のあこがれの商品となった(甲10~甲19、甲26~甲46、甲65~甲69、甲70~甲87)。
請求人の「TART」ブランドの眼鏡フレームないしその眼鏡は、度々、日本の雑誌にも紹介された(甲12、甲26~甲31、甲82、甲83)。
(オ)被請求人は、タート社について、被請求人ウェブページ(甲4)において、業界におけるレジェンドとなって今なお語り継がれていること及びタート社の眼鏡商品が映画スターで世界的に知られたJames Dean(ジェームス・ディーン)やJohnny Depp(ジョニー・デップ)にも愛用されていたことを述べている。
被請求人は、タート氏又はタート社から何らタート社のブランド(「TART」を含む。)ないし権利(眼鏡事業の資料に関する権利を含む。)を取得していない。本件商標ないし被請求人は、タート社又は「TART」を含むタート社のブランドにフリーライドをして眼鏡商品の広告をしているのである。
被請求人のウェブページである甲4、3枚目には、「1940年台後半、ニューヨークで創業を開始し、特に1950年代から60年代に掛けて数多くの著名人たちの御用達となっておりました。その顧客リストには第32代アメリカ合衆国大統領であるフランクリン・ルーズベルトや当時の人気俳優など、有名な人たちが名を連ねておりました。」と記載され、「TART OPTICAL EX-MAN」が記載された被請求人のウェブページである甲4、4枚目には、「同ブランドはニューヨーク老舗タート社で、1960年代人気モデルとして、一世を風靡した商品です。」と記載され、本件商標である「TART OPTICAL F.D.R.」が記載された被請求人のウェブページである甲4、5枚目には、「TART OPTICAL F.D.R.(R)は1940年代において、フランクリンルーズベルト(Franklin Delano Roosevelt)が愛用していたメガネに由来するものです。」と記載されている。
被請求人は、本件商標を、眼鏡商品に関して、タート社又は「TART」を含むタート社のブランドにフリーライドをして広告をしていることは明らかである。
被請求人のウェブページである甲4は、「TART」を使用した被請求人の眼鏡商品の広告であるが、タート社及びタート社の眼鏡を愛用していた映画スターなどの著名人の記載がされており、被請求人は、眼鏡商品に関して、タート社又は「TART」を含むタート社のブランドにフリーライドをして広告をしている。
本件商標の「TART」の部分は、タート社の創立者であるタート氏又はタート社を想起させる。
被請求人が、タート社の創立者であるタート氏のラーストネーム又はタート社の「TART」ないしタート社の社名(及びタート社の承継人である請求人の社名)中の「TART OPTICAL」を本件商標中に入れたことは明らかである。
そして、被請求人は、「TART OPTICAL ARNEL」、「TART OPTICAL EX-MAN」、「TART OPTICAL F.D.R.」、「TART OPTICAL BRYAN」といった眼鏡商品を販売しており(甲4)、「TART」又は「TART OPTICAL」の部分を主商標としていることは明らかである。前記のとおり、「OPTICAL」の部分は、商品の種類、用途ないし機能を示すにすぎず、識別力がないか少なくとも識別力がほとんどないため、「TART」の部分を主商標として使用しているといえる。
なお、「ARNEL」、「Ex-Man」、「F.D.R.」、「BRYAN」も、被請求人の使用又は商標登録出願前から請求人が使用してきた商標である(甲49~甲52、甲57、甲58)。
以上のとおり、被請求人自身も「TART」が主商標として、主要部分であると認識しており、需要者も「TART」の部分が主要部分であると認識する。
前記のとおり、「OPTICAL」の部分は、識別力がないか少なくとも識別力がほとんどない部分である。
(カ)以上のとおり、本件商標中、「TART」(タート)の部分が要部である。
(キ)引用商標は、「TART」(タート)である。
本件商標と引用商標とは、「TART」の部分が同一である。
本件商標と引用商標とは、「TART」の部分において、外観、称呼、観念が同一又は少なくとも類似である。
したがって、本件商標と引用商標とは類似する。
イ 商品の類似性について
本件商標の指定商品と引用商標の指定商品が同一(少なくとも類似)であることは明らかである。
ウ 結論
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号について
上記(1)の予備的主張とするものである。
ア 本件商標と引用商標の類似性について
上記(1)アに記載のとおりである。
イ 商品の類似性について
上記(1)イに記載のとおりである。
ウ 本件商標は請求人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標であること
前記のとおり、「TART」は、眼鏡関係商品の分野においては、1948年にアメリカ合衆国ニューヨーク州で設立されたタート社の創立者であり眼鏡フレームの伝説的職人であるタート氏、タート社若しくはその承継者である請求人若しくは請求人事業会社又はそれらのブランドとしての「TART」を想起させる。
請求人は、タート社の承継者であり、「TART」ブランドの保有者で、日本を含む世界において、請求人の「TART」ブランドの眼鏡フレーム及び眼鏡が、請求人、請求人事業会社又はそのライセンシーによって、製造、販売され、映画スターを含む著名人にも使用され、眼鏡関係商品において「TART」は日本を含めて世界的によく知られてきたブランドであることは前記のとおりである。
一方、被請求人は、タート氏又はタート社から何らタート社又はタート氏のブランド(「TART」を含む。)ないし権利や眼鏡フレーム事業(眼鏡フレーム事業の資料に関する権利を含む。)を取得していないにもかかわらず、被請求人が製造、販売する眼鏡商品に本件商標「TART OPTICAL F.D.R.」を使用し、被請求人がタート氏又はタート社を承継するかのような説明をし(甲4、2枚目~6枚目)、又は被請求人があたかもタート氏、タート社又は請求人からライセンスを受けているかのように需要者を誤認させている、又は少なくともそのおそれが十分ある。
前記のとおり、1948年に眼鏡フレームの伝説的職人であったJulius Tart(ジュリアス タート)がタート社を設立し、「TART」ブランドの眼鏡フレームを製造、販売し、「TART」ブランドの眼鏡フレームは、優れたデザインを有し、高品質で価値が高いビンテージ商品として、日本を含めて世界的に需要者の間によく知られ、請求人は、タート社ないしタート氏の承継者として「TART」を眼鏡商品について日本でも商標登録して、眼鏡フレーム及び眼鏡について使用していた。「F.D.R.」もタート社ないし請求人の「TART」ブランドの眼鏡フレームのモデル名であった。
ところが、被請求人が、正に、タート社ないし請求人が本件商標の出願前から使用してきたといえる「TART OPTICAL F.D.R.」を商標として、眼鏡又はサングラスに使用するならば、需要者が、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれが発生することは、その商標登録出願の時点において容易に推測ないし予測できたのであり、また、被請求人もそのことを意図して本件商標登録出願をしたのである。
以上により、被請求人が、本件商標をその指定商品(眼鏡、サングラス)に使用すると、需要者は、被請求人の商品が、タート社の承継者である請求人の商品と混同を生ずるおそれ(ライセンスを受けているとの誤認を生ずるおそれを含む。)がある。
エ 結論
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第35号証を提出した。
なお、証拠の表記に当たっては、「乙第○号証」を「乙○」のように省略して記載する。
1 請求人が、タート氏が創立したタート社の事業承継者であるとの主張について
(1)請求人は、タート社の事業承継者であると主張し、甲第5号証、甲第6号証、甲第10号証、甲第20号証ないし甲第25号証、甲第47号証ないし甲第50号証、甲第59号証及び甲第60号証を提出している。
しかしながら、以下の理由により請求人がタート社の事業承継者であることは、甚だ疑わしく、請求人は事業承継者ではなく、1970年代に廃業したタート社の意思を引き継いだかのように発信することを宣伝広告の手段として眼鏡を新しく復刻した一つの会社にすぎない。
ア タート社は、乙第1号証及び乙第2号証に示されるように、1950年頃にアメリカ合衆国のニューヨーク州にて設立された会社であり、セルロイドの眼鏡フレームを自社で製造販売していた眼鏡製造販売会社であるが、既に1970年代にその事業を廃業している。すなわち、この時に、タート社はこのセルロイドの眼鏡フレームの製造販売を完全に中止し、法人としても解散したものと考えられる。
現在では、前記廃業の前に製造販売されたタート社のセルロイドの眼鏡フレームは希少価値のあるビンテージ商品として我が国でも販売されている例がある。
イ 甲第10号証は、単に自社の宣伝広告用に作成した英語のウェブページであり、その説明は主観的なものである。また、甲第20号証ないし甲第22号証は、単に自社で使用するパッケージが示されているにすぎず、さらに、甲第24号証及び甲第25号証は、何を立証するためのものであるのか不明なものであり、請求人が何らタート社の承継者であることを客観的に示すものではない。さらに、甲第23号証及び甲第59号証は、「TART」の米国での商標登録であるが、これも米国特許商標庁での商標登録出願では単に主観的な宣誓書が出されるだけであり、請求人が何らタート社の事業承継者であることを客観的に示すものではない。すなわち、これらは、請求人がタート社の事業承継者である事実を何ら客観的に示すものとはいえない。
ウ 請求人は、甲第47号証として、請求人のmanager(マネージャー)であるAndrew C. Bagnall(アンドリュー シー バグナル)(以下「バグナル氏」という。)が署名した供述書(以下「マネージャー供述書」という。)を提出している。
このマネージャー供述書では、あたかも請求人がタート氏の承継者であるかのような記載がある。
すなわち、2000年10月25日に、David Hart氏(以下「デイビッドハート氏」という。)がTARTのコモンロー上の権利をタート氏から獲得し、その後、その権利はカリフォルニア州においてZoila Hart氏とのcommunity property(夫婦共有財産)となり、2009年8月11日にカリフォルニア州で設立されたTART OPTICAL ENTERPRISES,LLC(以下「TOE社」という。)にその権利をTOE社に出資される最初の対価の一部として譲渡したとの記載がある。
ところで、米国は日本でも周知のとおり契約社会であり、日本のように契約書なしで商取引が行われることはなく、いろいろな条項を明示した契約書が締結されるものである。特に、事業に関わる知的財産権等を第三者に譲渡などする場合には、後の紛争を回避するために契約書を作成することが当たり前である。
このマネージャー供述書は、単にマネージャーのバグナル氏が私的に主観的に供述したにすぎないものであり、証拠能力に乏しいものである。
それにも関わらず、請求人は、タート氏からデイビッドハート氏へのTARTのコモンロー上の権利の譲渡に関する契約書を明示していない。
また、デイビッドハート氏がTOE社に出資したことを示す契約書も明示していない。なおかつ、TARTのコモンロー上の権利がZoila Hart氏とのcommunity property(夫婦共有財産)となっているのであれば、Zoila Hart氏の承諾も必要である。
エ さらに、請求人は、甲第48号証として、タート氏からデイビッドハート氏への書簡を示している。
しかしながら、この書簡は、そもそも様々な箇所が不鮮明であり、特に英文の文章において、どのような内容の権利であるかの肝心な箇所が明らかに不鮮明であって判読できない。また、この書簡には、出荷日(2000年10月25日)、請求日(2000年10月25日)や請求書番号などが記載されるとともに英文の文章の前に商品の金額のような「2.00」と読めるような記載がある。
このことからすると、この書簡は何らかの商品取引の請求書などではないかと考えられ、普通に考えれば、事業にとって重要なTARTのコモンロー上の権利の譲渡がこのような簡易な書簡で許諾されることはない。
さらに、この書簡の上側に「TART OPTICAL ENTERPRISES INC」のように読めそうな会社名の記載があるが、タート社は、前述のように1970年代に廃業していることから、廃業後20年以上が経過しており、この書簡の日付時点においてタート社が存続していること自体が疑わしく、この書簡自体がねつ造であるものと考えられる。
オ その上、マネージャー供述書でも述べられており、乙第2号証にも示されるように、現に、我が国では、株式会社The Light(以下「The Light社」という。)がタート氏の甥であるRichard Tart氏とともに新たに創設した「JULIUS TART OPTICAL」が商標登録を取得するとともに我が国で展開されており、事業承継者であることについて争いもあることから、請求人がタート社の事業承継者であるとはいえない。
(2)以上に鑑みると、タート社からの事業承継者であるとの主張は甚だ疑わしく、請求人はタート社からの事業承継者ではなく、The Light社と同じく1970年代に廃業したタート社の意思を引き継いだかのように発信することを宣伝広告の手段として復刻させた商品を製造販売するにすぎない者である。
2 請求人の「TART」が眼鏡関係商品において我が国を含む世界的に知られてきたブランドであるとの主張について
(1)請求人は「TART」が眼鏡関係商品において我が国を含む世界的に知られてきたブランドと主張しているが、米国及び我が国において眼鏡を購入する需要者をして周知又は著名であるものとはいえない。
ア 乙第3号証に示されるように、2015年頃において米国の眼鏡市場規模は、約2兆3,800億円である。
一方、乙第4号証ないし乙第7号証に示されるように、我が国の眼鏡市場規模は、2014年では4,798億円、2015年では4,939億円、2016年では5,045億円、2017年では5,023億円となっている。
このように米国及び我が国での眼鏡市場規模はかなり大きな市場規模であるといえる。
また、これらの市場規模の中で特定の商標が米国及び我が国において周知又は著名であるというためには、かなり大きな売上規模が必要であり、例えば、乙第8号証に示されるように、我が国でいえば、2016年において売上高が693億円(シェアが13%)の「眼鏡市場」、同461億円(シェアが9.1%)の「ジンズ」及び同498億円(シェアが9.8%)の「パリミキ」などの売上高規模が必要である。
さらに、その宣伝広告もテレビ、新聞、雑誌などの宣伝広告媒体において頻繁かつ継続的になされていることなどが必要である。
イ ところで、請求人は、タート社の既に製造販売が中止された眼鏡に関して、種々の証拠をあげて周知又は著名であると主張しているが、この眼鏡はタート社が販売した「ビンテージ商品」であり、以前にジョニー・ディップなどが掛けていたことから、取り上げられていたものにすぎず、米国又は我が国の眼鏡を購入する需要者をして周知又は著名になっているものではない。
また、請求人は、甲第12号証、甲第26号証ないし甲第31号証などに示されるように、我が国において、雑誌及び店舗のホームページに請求人の眼鏡が取り上げられていると主張しているが、単に数種の雑誌及び20社程度の店舗のホームページに取り上げられているにすぎず、さらに米国及び我が国における本件商標の登録査定時より前の請求人の眼鏡の販売数又は売上額が全く示されていないことからすると、米国及び我が国において、請求人の引用商標「TART」が周知又は著名であるとはいえない。
すなわち、米国及び我が国において周知又は著名であれば、数多くの新聞・雑誌などの広告媒体や、数多くの店舗での販売や数多くの店舗のホームページで取り上げられているはずである。
また、前述のように、米国及び我が国における眼鏡市場の規模は年間で5,000億円以上の売上規模であることに鑑みると、単に広告宣伝だけではなく、その販売数又は売上額も相当なものになることに疑いがない。
しかしながら、請求人はこれらについて何ら主張及び立証できていない。
ウ 請求人は、あたかも請求人の製造販売する眼鏡が米国の著名人によって購入されたかのような主張をしているが、彼らによって購入されて掛けられている眼鏡は全てタート社が販売した「ビンテージ商品」であると考えられ、請求人の製造販売した眼鏡が掛けられているものではない。すなわち、請求人の甲第12号証において、前記米国での著名人が請求人の眼鏡を掛けているかのような画像が見られるが、いずれの画像及びその画像に関する英文でのコメントにおいても各米国の著名人が請求人の製造販売する眼鏡を掛けていることが示されておらず、かつ、請求人の眼鏡を推奨するとの明示がなされている記載もない。これらの請求人のフェイスブックに掲載された画像は、例えばインターネットから入手した画像に基づいて作成することが可能であり、これに請求人が広告宣伝のためのコメントを加えることも簡単にできることから、前記画像が画像に写された米国の著名人の承諾の下に使用されているかどうかも疑わしく、その承諾の下に掲載されている証拠は一切示されていない。
エ さらに、乙第9号証及び乙第10号証に示されるように、検索エンジン「Yahoo!」にて「tart 眼鏡」及び「タート 眼鏡」を検索したところ、この検索結果に表れるのは、被請求人の「TART OPTICAL ARNEL」又はThe Light社の「Julius Tart Optical」ばかりで、その他ではタート社のビンテージ商品が表れるだけであり、請求人の「TART」は見当たらない。「TART」が我が国で周知又は著名であればこの検索結果の大部分を占めるべきであるが、そのような事実がないことからも、「TART」は我が国では眼鏡を購入する需要者をして周知又は著名であるとはいえない。
(2)以上に鑑みると、請求人の「TART」は、米国及び我が国において眼鏡を購入する需要者をして周知又は著名であるとは到底いえない。
3 本件商標は請求人の「TART」にフリーライドしていないことについて
(1)前記2で詳述したように、請求人の「TART」は、米国及び我が国において眼鏡を購入する需要者をして周知又は著名であるとはいえないことから、我が国の眼鏡を購入する需要者をして、請求人が主張するように、タート社及び請求人を想起させるものとはいえない。
(2)一方、本件商標は、以下の経緯により採用されて商標登録されている。
すなわち、被請求人が本件商標とは別個に商標登録している「TART OPTICAL ARNEL」(乙11)は、タート社が1970年代に廃業した後に「ビンテージ商品」として今なお販売がなされているタート社が製造販売した品質の高かった商品を尊重し、被請求人が我が国において眼鏡フレームの品質が高いとして著名な鯖江の技術に基づいて、過去のタート社のビンテージ商品と同じような品質の高い眼鏡を日本国内で眼鏡を購入する需要者に提供するために、新たに採用した商標である(甲4)。
被請求人は、「TART OPTICAL ARNEL」について、2015年2月12日に商標登録出願し、2015年6月19日に商標登録を受けるとともに、この新たなブランド「TART OPTICAL ARNEL」を立ち上げ、2017年頃から眼鏡について製造販売して使用を開始し、現在にまで至っている(甲1)。
なお、被請求人のメインブランドである商標「TART OPTICAL ARNEL」に関しては、2019年10月開催の国際眼鏡展示会IOFTに出展し、その会場にて現大阪市長の松井一郎氏から感謝状を頂く(乙12)とともに、元経産省官僚でよくテレビに出演している岸博幸氏からも感謝状を頂いており(乙13)、さらに、我が国で著名な雑誌「Safari」2021年2月号(乙14)及び同「monoマガジン」2022年1月2月合併号(乙15)などにおいても広告記事が掲載され、乙第16号証ないし乙第20号証に示されるオンラインショップなどにおいても商標「TART OPTICAL ARNEL」が付された眼鏡が多数販売されている。
したがって、本件商標は、被請求人においてタート社が製造販売した品質の高かった商品を尊重し、鯖江の技術により我が国で復刻させた被請求人のオリジナルの眼鏡に採用したものであり、請求人の「TART」にフリーライドしたものではない。
4 本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当しない理由について
(1)本件商標について
ア 本件商標は、標準文字であり、「TART」「OPTICAL」「F.D.R.」との3つの英語の言葉を各言葉の間にスペースを空けて横一連に同書、同大、同間隔にて構成された全体として一連一体のものである。
すなわち、本件商標の構成中の真ん中の「OPTICAL」との英語の言葉は、我が国の眼鏡を購入する需要者をして英語で「目の」「視力の」「視覚の」などの意味合いを有すると認識・理解できる可能性があることから、その指定商品「眼鏡,サングラス」との関係では、自他商品識別力に乏しい言葉として認識される可能性はある。
しかしながら、前記「OPTICAL」の前後の言葉である「TART」と「F.D.R.」は、いずれも本件商標の指定商品「眼鏡,サングラス」との関係では自他商品識別力を有する言葉であり、前記「OPTICAL」が自他商品識別力を有する言葉により挟まれていることによってこれに接した前記需要者をして全体として一連一体の造語的なものと認識・理解されるものというべきである。
すなわち、本件商標のように「TART OPTICAL F.D.R.」と真ん中に「OPTICAL」が配置されている場合には、需要者をしてどこで分断してよいかが解らず、全体として一連一体の造語として認識・理解され、これから生じる称呼である「タートオプティカルエフディーアール」も淀みなく一気に称呼されるものである。
また、本件商標からは特定の観念は生じない。
イ 被請求人は、請求人の「TART」は、タート社の創立者のタート氏又は請求人を想起させると主張するが、前記2に詳述したとおり、米国及び我が国において周知又は著名であるとはいえないことから、本件商標に「TART」が含まれているからといって、眼鏡を購入する需要者をして請求人の主張するような想起はなされず、本件商標に接する眼鏡を購入する需要者をして前記アのように認識・理解されるものである。
ウ 請求人は、登録商標「TART OPTICAL」及び「TART OPTICAL ENTERPRISES」に関する無効審決では「TART」部分が出所識別標識として機能を有する要部であると認識・理解されると認定されるとして、本件商標も同様であるかのような主張をしている。
しかし、本件商標と前記2つの登録商標では、全く構成が異なっており、これらの無効審決での認定は、本件商標の要部が「TART」部分であるとの論拠にはなり得ない。
エ むしろ、登録商標「JULIUS TART OPTICAL」に関する無効審判の審決(乙21)及び登録商標「Ju1ius Tart」に関する無効審判の審決(乙22)において、これらの各登録商標は全体として一連一体として認識・理解されるものであると認定されていることから、本件商標も同様に、本件商標に接する眼鏡を購入する需要者をして全体として一連一体のものとして認識・理解されることが補強されるものである。
(2)引用商標について
ア 請求人の「TART」が眼鏡関係商品において世界的によく知られたブランドであるとの主張に関しては、前記2で詳述したとおり、米国及び我が国における眼鏡を購入する需要者をして周知又は著名であるとはいえないことは明確である。
したがって、本件商標と引用商標との類否を判断する場合、引用商標が眼鏡を購入する需要者をして周知又は著名であることを前提に判断すべきではない。
イ 引用商標は、標準文字であり、「TART」との英語の言葉を横一連に同書、同大、同間隔にて構成されている。
引用商標からは、普通に発音できる「タート」との称呼のみが生じる。
また、引用商標は、眼鏡を購入する需要者をして周知又は著名ではなく、なじみのある英語の言葉ではないことから、特定の観念を生じない言葉であると認識・理解されるものである。
(3)本件商標と引用商標との類否について以下に検討する。
本件商標は、真ん中に「OPTICAL」が配置されていることによって前後の英語の言葉を結合させて全体として一連一体の造語的なものとして認識・理解されるものであることから、「TART」だけが取り出されて類否を判断されることはない。これを前提として以下に外観、称呼、観念を対比する。
ア 外観について
本件商標「TART OPTICAL F.D.R.」は全体として一連一体のものであるのに対し、引用商標は「TART」だけであり、その外観において著しく相違している。
イ 称呼について
本件商標からは「タートオプティカルエフディーアール」との称呼が生じるのに対し、引用商標「TART」からは「タート」との称呼が生じることから、その称呼において著しく相違している。
ウ 観念について
本件商標「TART OPTICAL F.D.R.」及び引用商標「TART」からのいずれからも特定の観念は生じないことから、観念において対比することはできない。
エ 類否判断
以上のとおり、本件商標と引用商標とを対比すると、その外観及び称呼において著しく相違していることから、本件商標に接した眼鏡を購入する需要者をして、引用商標とは明確に別異のものとして認識・理解されるものであり、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものではないことは明らかである。
(4)この判断が妥当なことは、請求人の「TART」を含んでいる商標であるにも関わらず請求人以外の者によって別個に商標登録されている状況に鑑みても明らかである(乙11、乙23~乙32)。
このように、既に多数の登録商標が引用商標「TART」を含むものであるが非類似として登録されている事実に鑑みると、もはや「TART」に関連する商標の類似の範囲は極めて狭いものとなっている。
また、前述のとおり、「TART」を含む商標における類似の範囲は極めて狭いものとなっていることに加えて、実際の取引実情を見ても、上記でも述べたように、被請求人が所有し使用するメインブランドの「TART OPTICAL ARNEL」とThe Light社が所有し使用する「JULIUS TART OPTICAL」とは十分に区別して取引されていることからすると、本件商標は被請求人のメインブランドの「TART OPTICAL ARNEL」のシリーズ商標であることから、引用商標との関係においても眼鏡を購入する需要者をして明確に区別されるものである。
なお、請求人は「ARNEL」「Ex-Man」「F.D.R.」「BRYAN」を使用してきたとの主張をするが、少なくとも我が国においては、請求人はこれらの商標について商標登録をしておらず、請求人以外のものが「Ex-Man」を除いて商標登録をしている(乙33~乙35)。
このような我が国での商標登録の状況からすると、前述の被請求人の登録第6238570号商標「TART OPTICAL BRYAN」(乙24)が、引用商標及び「Bryan」とが各々その権利者を異にするにも関わらず併存していることからも、本件商標は、全体として一連一体のものと認識・理解されて、本件商標を構成する言葉単独のものとの関係では非類似と判断することが妥当である。
5 本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当しない理由について
商標法第4条第1項第15号は、その括弧書きのとおり、同項第10号ないし同項第14号に該当しない場合に適用されるものであり、本件商標と引用商標との関係のように、その商標の一部に他人の商標を含むが、その指定商品が類似する場合には適用されないと考えられる。
しかしながら、念のため、以下に本件商標が商標法第4条第1項第15号の無効理由に該当していない理由について述べる。
請求人は、眼鏡商品関係において「TART」が世界的に知られてきたブランドであると主張するが、前記2のとおり、米国及び我が国において眼鏡を購入する需要者をして周知又は著名であるとはいえない。
また、前記2(1)エでも述べたとおり、検索エンジン「Yahoo!」にて「tart 眼鏡」及び「タート 眼鏡」を検索したところ、請求人の「TART」は見当たらないことからすると、本件商標の出願時及び査定時において、請求人の「TART」が我が国において周知又は著名であったとはいえない。
したがって、本件商標は、請求人の「TART」を一部に含むものであったとしても需要者をして誤認混同するおそれはなく、商標法第4条第1項第15号に該当しないことは明らかである。
第5 当審の判断
請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについては、当事者間に争いがなく、また、当審は請求人が本件審判を請求する利害関係を有するものと認める。
以下、本案に入って審理する。
1 商標「TART」の周知性について
(1)請求人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、米国カリフォルニア州ウッドランド・ヒルズに所在する請求人及びその関連会社「Tart Optical Enterprises,Inc.」(請求人事業会社)(以下、両者を合わせて「請求人等」という。)は、米国において、商標「TART」を使用した「眼鏡、眼鏡フレーム」(以下「請求人等商品」という。)を遅くとも2009年頃から販売等していたこと(甲12~甲19、甲38)、請求人は米国において2017年10月に商標「TART」について、指定商品を「第9類 眼鏡」などとする商標登録を受けていること(甲23)及び請求人等は2009年頃から2017年まで毎年、請求人等商品を含む商品を我が国に個別に輸出していたこと(甲38~甲46)、並びに、我が国において、商標「TART」を使用した「眼鏡、眼鏡フレーム」(以下「使用商品」という。)が販売されていること(甲11)及び2011年11月以降、雑誌やウェブページに使用商品を紹介等する記事が約20回程度掲載されていること(甲12、甲26~甲36、甲71、甲72)が認められる。
しかしながら、請求人等商品の我が国における販売数、売上高、シェアなど販売実績、広告宣伝の全体的な状況を具体的、客観的に示す主張はなく、その証左は見いだせない。
なお、使用商品が我が国において販売されていたり、雑誌に紹介等されているとしても、これが請求人等の業務に係る商品であることは確認できない。
(2)上記(1)のとおり、請求人等は、米国において請求人等商品を遅くとも2009年頃から販売等しており、2009年頃から2017年まで毎年、請求人等商品を含む商品を個別に我が国に輸出したことなどが認められるものの、我が国における請求人等商品の販売実績を全体的に示す証拠はない。
また、雑誌やウェブページにおける使用商品の紹介もさほど頻繁とはいえず、その他、我が国の取引者、需要者において、請求人等商品の認知度が高いことを認めるに足りる証左は見いだせないから、請求人等商品及びそれに使用されている商標「TART」は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人又は請求人等の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
したがって、「TART」の文字からなる引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人又は請求人等の業務に係る商品(眼鏡、眼鏡フレーム)を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているものとはいえない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
ア 本件商標は、上記第1のとおり、「TART OPTICAL F.D.R.」の欧文字を標準文字で表してなるところ、これらの構成文字全体としては、辞書等に載録されている語ではなく、また、特定の意味合いを有するものとして認識されているというような事情も見いだせないものであるから、一種の造語として認識されるものである。
そうすると、本件商標は、その構成文字に相応し「タートオプティカルエフディーアール」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
イ なお、請求人は、本件商標はその構成中に空白が置かれていること、「TART」は世界的に知られてきたブランドであること、「OPTICAL」は商品の種類、用途ないし機能を示す部分であって識別力がないか少なくともほとんどないことなどから、本件商標は「TART」の部分が要部である旨主張している。
しかしながら、引用商標「TART」は、上記1のとおり、請求人又は請求人等の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであること、本件商標の構成文字は同書同大でまとまりよく一体的に表されていること、及びこれから生じる「タートオプティカルエフディーアール」の称呼はやや冗長ではあるものの無理なく一連に称呼し得るものであることを合わせ考慮すれば、本件商標は、これに接する取引者、需要者をして、その構成文字全体をもって一体不可分のものとして認識、把握されるものとみるのが相当である。
また、他に、本件商標は、その構成中「TART」の文字部分を分離抽出し他の商標と比較検討すべきとする事情は見いだせない。
したがって、請求人のかかる主張は採用できない。
(2)引用商標
引用商標は、上記第2のとおり「TART」の欧文字を標準文字で表してなり、該文字に相応し「タート」の称呼を生じるものである。そして、観念については、該文字(語)は「すっぱい、タルト(果物、ジャムなどの甘いものが入った丸いパイ)」などの意味を有する英単語であるが、我が国で親しまれた語とはいえないから、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
(3)本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標の類否を検討すると、外観においては、本件商標と引用商標とは、構成文字数が明らかに異なり、容易に区別し得るものであって、相紛れるおそれのないものである。
次に、本件商標から生じる「タートオプティカルエフディーアール」の称呼と引用商標から生じる「タート」の称呼を比較すると、両者は構成音、構成音数が明らかに異なるものであるから、相紛れるおそれのないものである。
さらに、観念においては、両商標は共に特定の観念を生じないものであるから比較することができない。
そうすると、本件商標と引用商標は、外観、称呼において相紛れるおそれがなく、観念において比較できないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
その他、本件商標と引用商標が類似するというべき事情は見いだせない。
(4)小括
以上のとおり、本件商標は引用商標と非類似の商標であるから、両商標の指定商品が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものといえない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
上記1のとおり、引用商標は、請求人又は請求人等の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、上記2のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標であって別異の商標であるから、類似性の程度は低いものである。
そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(請求人若しくは請求人等)又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものといえない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえないから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-890009