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商標無効審判

2023-890002

ホーネギ、タカラネギ

審判番号
2023-890002
法域
商標
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
商願2020-091951
登録番号
6423601
請求日
2023年01月12日
審決日
2024年12月02日
公報発行日
2025年03月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】宝ホールディングス 株式会社
  • 【請求人代理人】弁理士法人みのり特許事務所
  • 【被請求人】竹原物産 株式会社
  • 【被請求人代理人】芝野 正雅
審判長/審判官
  • 審判長 大森 友子
  • 審判官 清川 恵子
  • 審判官 白鳥 幹周
分類
T111 .261-Y (W31) / T111 .262-Y (W31) / T111 .263-Y (W31) / T111 .264-Y (W31) / T111 .271-Y (W31)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法46条1項
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号、商標法第64条、商標法第46条第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の登録第6423601号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 本件商標 本件登録第6423601号商標(以下「本件商標」という。)は、「宝葱」の漢字を標準文字で表してなり、令和2年(2020年)7月27日に登録出願、第31類「生鮮のたまねぎ」を指定商品として、同3年(2021年)7月21日に登録査定、同年8月2日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 1 請求人が、本件商標の登録の無効の理由において商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録商標は、次のとおりであり(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)、いずれも現に有効に存続しているものである。 (1)商標登録第2312832号(以下「引用商標1」という。) 商標の構成:宝 登録出願日:昭和58年3月3日 設定登録日:平成3年6月28日 書換登録日:平成16年5月26日 指定商品:第29類「冷凍野菜」及び第31類「しめじ,その他の野菜」を含む第29類ないし第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 (2)商標登録第2312833号(以下「引用商標2」という。) 商標の構成:タカラ 登録出願日:昭和58年3月3日 設定登録日:平成3年6月28日 書換登録日:平成16年5月26日 指定商品:第29類「冷凍野菜」及び第31類「しめじ,その他の野菜」を含む第29類ないし第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 (3)商標登録第2312834号(以下「引用商標3」という。) 商標の構成:TAKARA 登録出願日:昭和58年3月3日 設定登録日:平成3年6月28日 書換登録日:平成16年5月26日 指定商品:第29類「冷凍野菜」及び第31類「しめじ,その他の野菜」を含む第29類ないし第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 (4)商標登録第2430759号(以下「引用商標4」という。) 商標の構成:TAKARA 登録出願日:昭和50年2月17日 設定登録日:平成4年6月30日 書換登録日:平成18年9月20日 指定商品:第29類「冷凍野菜」及び第31類「野菜」を含む第29類ないし第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 (5)商標登録第2430761号(以下「引用商標5」という。) 商標の構成:宝 登録出願日:昭和50年2月17日 設定登録日:平成4年6月30日 書換登録日:平成18年9月6日 指定商品:第29類「冷凍野菜」及び第31類「野菜」を含む第29類ないし第32類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 (6)商標登録第2491034号(以下「引用商標6」という。) 商標の構成:タカラ 登録出願日:昭和57年4月22日 設定登録日:平成4年12月25日 書換登録日:平成17年2月2日 指定商品:第29類「冷凍野菜」及び第31類「野菜」を含む第29類ないし第31類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 (7)商標登録第3161895号(以下「引用商標7」という。) 商標の構成:別掲1のとおり 登録出願日:平成5年6月29日 設定登録日:平成8年5月31日 指定商品:第31類「野菜(「茶の葉」を除く。)」を含む第31類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 (8)商標登録第5229915号(以下「引用商標8」という。) 商標の構成:TaKaRa(標準文字) 登録出願日:平成19年7月2日 設定登録日:平成21年5月15日 指定役務:第35類「野菜及び果実の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を含む第35類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務 (9)商標登録第5229916号(以下「引用商標9」という。) 商標の構成:宝(標準文字) 登録出願日:平成19年7月2日 設定登録日:平成21年5月15日 指定役務:第35類「野菜及び果実の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を含む第35類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務 (10)商標登録第5229917号(以下「引用商標10」という。) 商標の構成:タカラ(標準文字) 登録出願日:平成19年7月2日 設定登録日:平成21年5月15日 指定役務:第35類「野菜及び果実の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を含む第35類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務 (11)商標登録第6050524号(以下「引用商標11」という。) 商標の構成:たから(標準文字) 登録出願日:平成29年9月5日 設定登録日:平成30年6月8日 指定商品:第31類「野菜」を含む第31類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品 2 本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する商標は、次のとおりであり(以下、これらをまとめて「15号引用商標」という。)、いずれも現に有効に存続しているものである。 (1)商標登録第57800号(以下「引用商標12」という。) 商標の構成:別掲2のとおり 登録出願日:大正元年12月30日 設定登録日:大正2年3月5日 書換登録日:平成16年7月21日 指定商品:第5類「薬用酒」、第32類「ビール」、第33類「日本酒(「清酒、合成清酒及びみりん」を除く。),洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」 (2)商標登録第85292号(以下「引用商標13」という。) 商標の構成:別掲3のとおり 登録出願日:大正6年2月25日 設定登録日:大正6年4月27日 書換登録日:平成20年9月24日 指定商品:第33類「みりん」 (3)商標登録第462127号(以下「引用商標14」という。) 商標の構成:別掲4のとおり 登録出願日:昭和28年9月15日 設定登録日:昭和30年3月10日 書換登録日:平成18年8月30日 指定商品:第33類「洋酒,果実酒,中国酒,虎骨酒,にんじんきなてつぶどう酒」 (4)商標登録第980690号(以下「引用商標15」という。) 商標の構成:タカラ 登録出願日:昭和38年9月4日 設定登録日:昭和47年9月18日 書換登録日:平成16年6月2日 指定商品:第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」 第30類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品について防護標章登録されている。 (5)商標登録第1610421号(以下「引用商標16」という。) 商標の構成:宝 登録出願日:昭和50年12月3日 設定登録日:昭和58年8月30日 書換登録日:平成15年12月17日 指定商品:第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」 (6)商標登録第3129606号(以下「引用商標17」という。) 商標の構成:別掲1のとおり 登録出願日:平成5年6月29日 設定登録日:平成8年3月29日 指定商品:第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」 (7)商標登録第4348726号(以下「引用商標18」という。) 商標の構成:別掲5のとおり 登録出願日:平成10年11月18日 設定登録日:平成12年1月7日 指定商品:第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」 (8)商標登録第5896400号(以下「引用商標19」という。) 商標の構成:別掲6のとおり 登録出願日:平成27年12月17日 設定登録日:平成28年11月11日 指定商品:第33類「アルコール飲料(ビールを除く。),泡盛,合成清酒,焼酎,白酒,清酒,直し,みりん,にごり酒,濁酒,柳陰,発泡性清酒,発泡性焼酎,発泡性濁酒,マッコリ,ソジュ,洋酒,果実酒,酎ハイ,中国酒,薬味酒」 (9)商標登録第6137565号(以下「引用商標20」という。) 商標の構成:別掲7のとおり 登録出願日:平成30年7月2日 設定登録日:平成31年4月12日 指定商品:第33類「泡盛,合成清酒,焼酎,白酒,清酒,直し,みりん,にごり酒,濁酒,柳陰,マッコリ,ソジュ,発泡性清酒,発泡性焼酎,発泡性濁酒,洋酒,果実酒,酎ハイ,中国酒,薬味酒,アルコール飲料(ビールを除く。)」 第3 請求人の主張 請求人は、本件商標についての登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書及び審判弁駁書において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第76号証(枝番号を含む。以下、枝番号のすべてを示すときは、枝番号を省略する。)を提出した。 1 請求の理由 本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。 (1)商標法第4条第1項第11号について ア 本件商標 本件商標は、「宝」と「葱」の二語を結合したものと解されるところ、構成全体として特定の意味合いを認識させる既成語ではなく、また、「宝」と「葱」の文字の間の意味の関連性も全く見出せないから、その結合の程度は強いとはいえず、構成全体を常に一体不可分のものとしてみなければならない特段の事情は存しない。 当該構成中「葱」の文字は、「ヒガンバナ科(旧ユリ科)ネギ属の多年草。」(広辞苑第七版)及び「ネギ属」の作物を表す「ねぎ」「ネギ」の漢字表記として日常良く親しまれた語であって、本件指定商品の「生鮮のたまねぎ」との関係においては、「たまねぎ」は「ネギ属」の作物であるから、商品について普通に使用される文字または商品の品質を表示する文字にすぎないことは明らかである。 そうとすれば、本件商標中「葱」の文字部分からは、出所識別標識としての称呼・観念は生じないといえる。 これに対し、構成中の「宝」の文字は、商品の品質とは全く関係のない語であって、それ自体強い識別力を有することに加え、後述のとおり、「宝」商標は、請求人及び請求人のグループ会社のハウスマーク・商標として食品分野において周知・著名なものである。 してみれば、本件商標は、強い識別力を有する「宝」の文字に、商品について普通に使用される文字または品質表示にすぎない「葱」の文字を付加してなるものであって、本件商標中、語頭部に位置する「宝」の文字部分が、商品の出所識別標識として圧倒的に強く支配的な印象を与えるといえ、それ以外の部分からは出所識別標識としての称呼・観念は生じないから、「宝」の文字部分が独立して取引に資される場合があるものとみるのが相当であり、本件商標は、「宝」の部分を商標の要部として抽出し分離観察した類否判断が妥当である(最高裁平成19年(行ヒ)第223号(平成20年9月8日第二小法廷判決))。 したがって、本件商標は、その要部である「宝」の文字部分から、これに相応した「タカラ(宝)」の称呼及び観念も生じるものといえる。 イ 引用商標 引用商標は、「宝」「タカラ」「TAKARA」「TaKaRa」の構成文字に相応して、「タカラ(宝)」の称呼及び観念を生じることは明らかである。 ウ してみれば、本件商標は、引用商標と、「タカラ(宝)」の称呼及び観念と「宝」の構成文字を共通にし、出所混同のおそれのある類似商標であるといえ、かつ、その指定商品も、引用商標の指定商品・指定役務と抵触するから、商標法第4条第1項第11号に該当する。 エ 過去の同様の審決・審査例 特許庁におけるこれまでの審決例や審査例をみても、「葱」の文字またはその平仮名表記である「ねぎ」や片仮名表記である「ネギ」の文字の有無の差を有する商標間の類否について、審決や審査において、互いに類似すると判断されている(甲56~甲61)。そのほか、食品分野では、商品の普通名称又は品質を表す文字の有無の差を有する商標等が互いに類似すると判断されている(甲62~甲72)。 本件商標は、これらと同様の条件下にあるといえ、これらの例に照らしてみても、本件商標が引用商標と類似するものであって商標法第4条第1項第11号に該当することは、明らかと確信する。 (2)商標法第4条第1項第15号について ア 15号引用商標の周知・著名性について (ア)請求人は、大正14年(1925年)9月に「寶酒造株式会社」として設立され、以来、我が国屈指の酒類及び調味料・飲料・食料品、並びに醗酵・醸造技術に裏付けられたバイオ関連製品の総合メーカーとして成長を遂げ、平成14年(2002年)4月1日付で、持株会社「宝ホールディングス株式会社」へと移行したものであり、「宝酒造株式会社」などを傘下に置き(以下、請求人の傘下の会社をまとめて「宝グループ」という。)、宝グループ全体の経営を統括するものである。 宝グループの会社数は、2021年3月31日現在、国内13社・海外47社の60社である(甲22、甲26)。 また、宝グループ全体の売上高(甲26~甲28)は、例えば2018年3月期はおよそ2,680億円(甲27)、2021年3月期はおよそ約2,784億円である(甲26、甲27)。 (イ)宝グループの製品にはいずれも、15号引用商標に代表される「寶(宝/タカラ)」印と称呼、観念される「寶(宝)」「タカラ」「TaKaRa」の文字からなる商標、あるいはこれらを要部とする商標が、ハウスマーク及びその業務に係る商品の商標として永年にわたって使用されており、これらの商標は、本件商標の出願前には既に、取引者・需要者において広く認識されるに至っていたものである(甲22~甲31)。 (ウ)例えば、「寶(宝)」商標は、設立以前の前身の個人経営・合名会社の時代から現在に至るまで、焼酎及び味醂について使用されているものであり、早くに著名性を獲得していることは、判決において確認されている(甲34~甲38)。 そして、上記判決においては、焼酎・味醂について、請求人の「寶(宝)」商標の著名性が認められているとともに、食料品および加味品は、酒類とともに酒類食料品店において販売されていることが多いという顕著な事実があるとして、調味料や生鮮食料品、乾物類、加工食品の所属する、旧々(大正10年法のこと、以下同じ。)第45類「他類に属せざる食料品及加味品」(又は、旧々第45類「他類に属しない食料品及び加味品」)の指定商品に使用する場合は、商品の出所について、誤認・混同を生ずるおそれがある旨、認定されている。 (エ)片仮名の「タカラ」商標も、前記「寶(宝)」商標と並んで、みりん、焼酎、料理用清酒、チューハイ等のソフトアルコール飲料等について永年使用され著名となり、第30類の指定商品について防護標章登録を受けた(甲33の2、甲33の3)。 (オ)英文字の「TaKaRa」商標は、チューハイ等のソフトアルコール飲料や梅酒・リキュール、タカラバイオ株式会社の業務に係る大多数の商品について、また、八稜鏡輪郭内に「寶」の文字を表した図形とともに、宝酒造インターナショナル株式会社、タカラバイオ株式会社等のハウスマークとして使用されているほか、請求人のハウスマークとしても使用され、国内外に広く知られている。 (カ)八稜鏡輪郭内に「寶」の文字を表した構成よりなる商標は、請求人及び宝グループ各社のハウスマークとして、また、みりんや焼酎・チューハイ等の商品について、大々的に使用されている。 (キ)「寶(宝/タカラ)」印と称呼観念される「寶(宝)」「タカラ」「TaKaRa」商標は、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)の「日本国周知・著名商標検索」データ(甲32、甲33の1)や、AIPPI・JAPAN発行「FAMOUS TRADEMARKS IN JAPAN/日本有名商標集」(甲39)にも収録されている。 (ク)宝酒造株式会社は、株式会社日刊経済通信社発行の「酒類食品産業の生産・販売シェア」の「2019年度版」の抜粋によれば、商品「清酒」の分野においては、2013年~2018年の出荷量は、全企業数1,594~1,684社中第2位、商品「焼酎甲類」の分野においては、2013年~2018年の出荷量(生産量)は、全企業数89社又は90社中常にトップの地位にあり、そのシェアは、26%ないし27%であり、商品「本格焼酎(焼酎乙類)」の分野においては、2012年~2017年の出荷量(生産量)は、全企業数802~810社中第8位であり、そのシェアは、2.1%ないし2.6%を占め、甲乙混和を加えると30%台を占めている。商品「みりん」(みりん一種)の分野においては、2013年~2018年の出荷量は、全企業数94~99社中常にトップの地位にあり、そのシェアは50%を超える(甲52)。 (ケ)その他、請求人の提出した証拠から、「寶(宝)」「タカラ」「TaKaRa」商標は、請求人及び宝グループ会社のハウスマークとして、また、その業務に係る商品の商標として永年使用され、殊に、酒類や、みりん・料理用清酒等の酒類調味料をはじめとする食品分野において、本件商標の登録出願前には、既に全国的に周知・著名なものとなっていた(甲22~甲55)。 イ 出所の混同のおそれについて (ア)前述のとおり、本件商標は、その構成中「宝」の文字部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであって、15号引用商標と「タカラ(宝)」の称呼及び観念と「宝」の文字を共通にし、類似性の高い類似の商標である。 また、15号引用商標は、殊に、酒類や、みりん・料理用清酒等の酒類調味料等の分野において、本件商標の登録出願前には既に、全国的に周知・著名なものとなっていたものといえる。 (イ)15号引用商標は、請求人及び宝グループ会社のハウスマークであり、請求人及び宝グループを称する「宝グループ」、「宝HD」及び「宝HLD」の表記からは「宝」の文字が独立して把握されることも少なくない。 (ウ)食品分野においては、企業の経営多角化により同一事業者によって多岐に渡る食品分野の商品が製造・販売されることも多いといえる。 実際に、請求人のグループ会社の業務範囲も、酒類にとどまらず、調味料やバイオ事業、また、酒かすや米・麦・飼料等を取り扱っているほか、これまでにも、キノコや、清涼飲料、健康食品等の食品分野に広く及んで業務を行ってきた実績がある。 また、現在でも、ノンアルコール飲料の分野への参入のほか、加工・業務用商品や海外日本食材卸事業に事業領域を拡大して地域的にも世界にネットワークを有するなど、食に纏わる事業を広く展開している(甲22~甲31)。 (エ)本件商標の指定商品は、酒類や酒類調味料と、食品分野の商品である点や用途において共通し、需要者も共通にする。 また、商品が販売される際には、近年のスーパーマーケットやコンビニエンスストア等の多品目を扱う小売業の発達により、食品の商品は同一店舗・同一取引業者において取り扱われることが多いことは周知の事実であり、このことは、前記判決においても示されている(甲34)。この点については酒類・酒類調味料と「生鮮のたまねぎ」を含む「野菜」との関係においても同様といえ、流通・小売業が発達した現在において、同一の売場で売られる頻度が当該判決時よりも高くなっていることは明らかである。 してみれば、本件商標の指定商品は、酒類や酒類調味料と、販売部門や用途、需要者・取引者の範囲が一致し、互いに密接な関連性を有するものといえる。 (オ)本件商標は、「宝」の文字部分が出所識別標識としての機能を果たし、15号引用商標と「タカラ(宝)」の称呼及び観念を共通にする類似の商標であるが、仮に、本件商標が外観上まとまりよく一体に表されたものとみることや観念上何らかの繋がりがあるものとみることがあったとしても、出所の混同を生ずるおそれのある商標であって、本号に該当するものといえる。 (カ)以上のとおり、本件商標が、その指定商品について使用された場合、これに接する取引者・需要者は、顕著に表された「宝」の文字部分から、周知・著名な請求人及び宝グループ会社の「寶(宝/タカラ)」印と称呼観念される15号引用商標を想起して、当該商品があたかも請求人及び宝グループ各社の業務に係る商品であるかの如く誤認して取引に当たる蓋然性が極めて高いといえ、商品の出所につき混同を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。 2 被請求人の答弁に対する弁駁 (1)商標法第4条第1項第11号該当性について ア 被請求人は、本件商標は全体としてまとまりのある一体不可分の商標であるから、全体観察により類否判断が行われるべきである旨主張するが、本件商標が外観上のまとまりが良いとしても、識別力を有しない文字との結合商標にあっては、構成中の一部を抽出した分離観察による類否判断を否定するものではない。 イ 被請求人は、たまねぎが「ネギ属」であることの証拠がないこと、「葱」と「たまねぎ」は別物であり、「葱」の部分は、指定商品「生鮮のたまねぎ」について普通に使用される文字又は品質を表示する文字ではない旨主張するが、たまねぎが「ネギ属」の作物であることは甲73ないし甲75に示すとおりである。これに見られるとおり、「葱」は「葱の仲間」の植物・野菜の意味を認識させる語といえ、「たまねぎ」はこれに含まれるから、「葱」の文字は、商品「たまねぎ」について普通に使用される文字または品質を表示する文字であって、自他商品識別力を有しないこと明らかである。そうとすれば、本件商標は、「宝」部分を商標の要部とするものである。 ウ また、上記に述べたとおり、「葱」の文字が商品について普通に使用される文字または品質表示にすぎず、自他商品を識別機能を有しないから、請求人提出の甲56ないし甲72の審決・審査例は本件商標と符号するものである。 (2)商標法第4条第1項第15号該当性について ア 被請求人は、商標法第4条第1項第15号の審査基準の考慮事由の一つ、「その他人の標章が造語よりなるものであるか、又は構成上顕著な特性を有するものであるのか」の事項を挙げ、この事項が出所混同が否定される要素として考慮される旨主張するが、上記審査基準では「本号に該当するか否かは、例えば、次のような事実を総合勘案して判断する。」とされており、7つの事項のうち6つの事項を満たすから、総合勘案すれば本号に該当するといえる。 イ また、商品間の関連性については「生鮮たまねぎ」と「焼酎、みりん」はともに食品分野の商品であって、用途や需要者を共通にするから、関連性を有するものである。そして、商品の需要者の共通性その他の取引の実情については、現在では、需要者が「焼酎、みりん」や「生鮮のたまねぎ」を購入する場合においては、スーパーマーケット等の多品目を扱う小売店を利用する場合が圧倒的に多く、同一店舗・同一取引業者において取り扱われることの方が多い(「2024年版 スーパーマーケット白書」一般社団法人全国スーパーマーケット協会発行)。そして、消費者は野菜、酒類、調味料の販売コーナーを買い回って、同時に購入するのが常であるから、需要者や販売場所の共通性を有するといえる。 ウ これまで述べたとおり、本件商標は識別力を有する「宝」と識別力を有しない「葱」の文字の結合商標であり、引用商標と類似性の高い商標であり、商品間の関連性を有し、需要者や販売場所の共通性を有するものであるから、出所の混同を生じるおそれがあるものと推認され得るものである。 また、商標法第64条の考慮事由は、同法第4条第1項第15号の混同範囲を同一とするものと解釈されており、原登録商標の指定商品である「調味料」等についての周知性により、他人が「野菜」について使用すると混同を生じるおそれがあると判断されて防護標章登録が受けた例がある(甲76)。 (3)その他 被請求人は、請求人が本件商標との関係において利害関係を有するとは考えにくく請求人としての当事者適格がないと主張するが、請求人は、本件商標について、請求人の所有する引用商標と類似の商標であると認識していること、また、請求人の使用する周知・著名な引用商標とも類似すると認識していることから、請求人は、本件審判を請求するにつき利害関係を有するものである。 第4 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨以下のように述べた。 1 商標法第4条第1項第11号に係る請求人主張に対する反駁 (1)本件商標について 本件商標に係る「宝葱」は、「宝」の文字と「葱」の文字との間に、これらを分離するスペースや記号等が含まれるものではなく、また、文字の大きさや字体の差異等、何れか一方が強調して表示されるものでもない。本件商標は、僅か2文字の同じ文字種(漢字)からなる、同じ字体の単調な文字列で構成される。このため、取引者ないし需要者は、何れか一方の文字を特に区別することはなく、これらを1つの纏まった文字列として把握する。また、「宝葱」の称呼「タカラネギ」は、格別冗長なものでなく、一体不可分としてよどみなく称呼され得る。したがって、本件商標に係る「宝葱」は、全体としてまとまりのある一体不可分の商標である。 よって、本件商標に係る「宝葱」について、「構成全体を常に一体不可分のものとしてみなければならない特段の事情は存在しない」とする請求人の主張は妥当ではなく、本件商標は、原則どおり全体観察により類否判断が行われるべきものである。 (2)「葱」の文字について 本件商標に係る「宝葱」のうち「葱」は、本件商標に係る指定商品「生鮮のたまねぎ」について普通に使用される文字または商品の品質を表示する文字ではない。 ア 請求人は、広辞苑(第7版)において、「葱」が「ヒガンバナ科(旧ユリ科)ネギ属の多年草」と記載されていると主張する。しかし、被請求人が所有する広辞苑(第5版)では、「葱」は「ユリ科の多年草」と記載され、その例として「ねぶか」及び「ながねぎ」が示されているのみで、特に「ネギ属の」との記載はない。 また、請求人は、「「たまねぎ」は「ネギ属」の作物であるから」と主張し、「ネギ属」として共通することを根拠に「葱」と「たまねぎ」とを包括ないし同一視しようとしているが、「葱」と「たまねぎ」がともに「ネギ属」であることについては、十分な証拠を示していない。 イ 「葱」は、「葉鞘の白色部を食用とする根深葱と緑色部を主として用いる葉葱とに分ける。前者は主に関東、後者は関西で栽培。ねぶか、長ねぎ」と記載されているところ、「たまねぎ」は、「ユリ科の多年草の作物。・・・地下の鱗茎はよく発達して球形または偏球形で食用とする。オニオン」(いずれも「広辞苑第5版」)と記載されており、両者は明確に区別されている。 ウ 「ねぎ」と「たまねぎ」は、いずれも、日本に古くから用いられる代表的な食材として把握されている。取引者は、「ねぎ」と「たまねぎ」を別物として取引し、需要者は、自身が作ろうとする料理の食材として「ねぎ」と「たまねぎ」を個別に購入して使用する。このように、「葱」と「たまねぎ」は、取引者及び需要者において明確に区別されるものであり、請求人が主張するように、「ネギ属」で包括ないし同一視され得るものではない。 上記のように、「葱」の部分は本件商標に係る指定商品「生鮮のたまねぎ」について普通に使用される文字又は商品の品質を表示する文字ではない。 したがって、「「たまねぎ」は「ネギ属」の作物であるから、「葱」は、商品について普通に使用される文字又は商品の品質を表示する文字に過ぎない」との請求人の主張は失当である。 (3)過去の審決、審査例について 請求人は、過去の審決、審査例として、甲第56号証ないし甲第72号証を指摘し、これらと同様の条件下にある本件商標も引用商標に類似するとして、商標法第4条第1項第11号に該当すると主張するが、甲第56号証ないし甲第72号証では、いずれの標章も、指定商品の名称や品質に対応する部分を含んでおり、その他の部分が引用商標に対応しているために、商標登録出願等が拒絶又は無効となっている。 これに対し、本件商標の「葱」は上記のように、指定商品「たまねぎ」について普通に使用される文字又は商品の品質を表示する文字ではない。 したがって、請求人が提示したこれらの審決、審査例は、本件商標に符合するものではない。 (4)まとめ 本件商標に係る「宝葱」は、僅か2文字の同じ文字種(漢字)からなる、同じ字体の単調な文字列で構成され、一体不可分としてよどみなく称呼され得る。したがって、本件商標は、全体としてまとまりのある一体不可分の商標である。また、本件商標のうち「葱」の文字は、指定商品「生鮮のたまねぎ」について普通に使用される文字又は商品の品質を表示する文字ではない。よって、本件商標「宝葱」は、原則どおり、全体観察により類否の判断がなされるべきものである。 したがって、本件商標は、「宝」、「タカラ」、「TAKARA」、「TaKaRa」又は「たから」からなる引用商標とは類似せず、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。 2 商標法第4条第1項第15号に係る請求人主張に対する反駁 (1)請求人は、15号引用商標が、ア 出願商標とその他人の標章との類似性の程度、イ その他人の標章の周知度、ウ その他人の標章がハウスマークであるか、エ 企業における多角経営の可能性の要件について、甲第22号証ないし甲第31号証並びに甲第40号証ないし甲第55号証に基づき、該当する旨主張している。 しかし、請求人はあえて以下の考慮事項を省略している。 (2)その他人の標章が造語よりなるものであるか、又は構成上顕著な特徴を有するものであるかについて 請求人が示した15号引用商標において、請求人が本件商標と重複すると主張する部分は「寶(宝/タカラ)」であって、造語でも構成上顕著な特徴を有するものでもないから、出所の混同が否定される要素として考慮されるものである。 (3)商品間、役務間又は商品と役務間の関連性について 請求人は、「本件商標の指定商品「生鮮のたまねぎ」は、酒類や酒類調味料と、食品分野の商品である点や用途において共通し、需要者も共通にする」と主張する。 しかし、請求人が著名性を取得したと主張する「焼酎、味醂」と、本件商標に係る指定商品「生鮮のたまねぎ」とは、前者が酒類の嗜好飲料及び調味料であり(広辞苑第5版)、後者が生鮮の野菜であって、商品の属性及び用途において大きく異なる。 したがって、本件商標に係る「生鮮のたまねぎ」と「焼酎、味醂」との間には、これらの商品にそれぞれ本件商標と15号引用商標とが付された場合に出所の混同のおそれが生じ得るといった程度までの大きな関連性はない。 (4)商品等の需要者の共通性その他取引の実情について 「生鮮のたまねぎ」と「焼酎、味醂」の需要者は、ともに一般消費者ではあるものの、取引の実情は異なっている。 すなわち、「焼酎、味醂」は酒類販売店(所謂、酒屋)で販売されるところ、「生鮮のたまねぎ」は野菜販売店(所謂、八百屋)で販売される。一方の販売店で他方の販売店の商品が販売されることはまずない。スーパーマーケットやコンビニエンスストア等の多品目を扱う店舗では、多品目を扱うが故に、商品の種類ごとに販売コーナーが設けられ、それぞれの販売コーナーにおいて、該当の商品が陳列されて販売される。周知のとおり、これらの店舗では、野菜売り場に「生鮮のたまねぎ」が置かれ、酒類・調味料のコーナーの陳列台に「焼酎、味醂」が陳列される。これらの売り場は、当該店舗において、明確に区別されている。 このように、「生鮮のたまねぎ」と「焼酎、味醂」の取引の実情は、酒類販売店と野菜販売店との間で明確に区別され、また、多目的商品を扱う店舗においても明確に区別されている。 したがって、請求人の商標が「焼酎、味醂」において著名性を獲得しており、著名性に関する考慮事項上記(1)アないしエに該当するとしても、上記(2)には該当せず、「生鮮のたまねぎ」と「焼酎、味醂」とは上記(3)及び(4)に該当しない。このため、本件商標は、15号引用商標との間で出所の混同を生じるおそれのあるものではなく、商標法第4条第1項第15号の規定には該当しない。 (5)請求人が挙げる裁判例(甲34~甲37)は、食料品および加味品の全てが一律に出所の混同を生じさせ得ると認定したのではなく、商品の種別やその取引状態を考慮して、請求人の15号引用商標との間で出所の混同を生じさせ得る商品が、「食料品および加味品」に含まれ得ることを判示したものである。 したがって、その商品の出所の混同を生じさせるおそれの有無は、両者の商品の種別、その商品の取引状態を考慮してなされるべきである。 そうすると、上記のように、「生鮮のたまねぎ」と「焼酎、味醂」とは商品の種別が大きく異なっており、かつ、両商品の取引実情も明確に区別されるため、本件商標が付された「生鮮のたまねぎ」と15号引用商標が付された「焼酎、味醂」との間に出所の混同が生じるおそれはない。 (6)本件商標「宝葱」は、原則どおり、全体観察により類似・非類似が判断されるべきものであって、本件商標と15号引用商標とは非類似であるから、出所の混同は生じ得ず、生じるおそれもない。 また、「生鮮のたまねぎ」と「焼酎、味醂」とは商品の種類が大きく異なっており、かつ、両商品の取引実惰も明確に区別される。したがって、本件商標が付された「生鮮のたまねぎ」と15号引用商標が付された「焼酎、味醂」との間に出所の混同が生じるおそれはない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。 3 その他 被請求人と請求人との間に係争や交渉等の法的な利害関係は一切ない。 被請求人は、淡路島でたまねぎ農園を経営する農業法人である。被請求人は、自身が生産した「生鮮のたまねぎ」に本件商標を付して、各地でこれを販売している。周知のとおり、淡路島産の玉ねぎは、味見の良い高級たまねぎとして、全国的に著名である。飲食を提供する店舗でも、提供する食料品に淡路島産の玉ねぎを使用する場合には、そのことを顧客へのアピールとして活用している。 こうした真摯な事業活動の中、今回、唐突に、請求人から商標登録無効審判の請求を受けた。確かに、審判便覧には、利害関係人として、「当該登録商標により出所の混同による不利益を被る可能性を有する者」が含まれている。しかし、請求人が現在販売する商品と「生鮮のたまねぎ」との間には、商品の種別や取引形態において余りに乖離があって、被請求人による本件商標の使用により、請求人に何ら、出所の混同による不利益を与える可能性はない筈である。 被請求人としては、本件商標を用いながら上述の事業活動を真摯に継続できればそれでよいのであって、請求人が現在の商品販売を行うことを本件商標により阻害することを一切望むものではない。 被請求人は、請求人が本件商標との関係において利害関係を有するとは考えにくく、請求人としての当事者適格を有するものであるのか疑問であり、被請求人は、請求人に当事者適格がないとして、本件審判請求は審決により却下されるべきであるとも考える。 第5 当審の判断 1 利害関係 本件審理に関し、当事者間に利害関係についての争いがあるので、まず、この点について判断する。 商標法第46条第1項に基づく商標登録の無効審判の請求は、同条第2項の規定のとおり、利害関係人に限り請求することができる。 そして、ある商標の登録が存在することによって、直接不利益を被る関係にある者は、それだけで利害関係人としてのその商標の登録の無効審判を請求する利害関係を有するといえる(東京高裁昭和35年(行ナ)第106号、昭和36年4月27日判決参照)。 請求人は、引用商標の商標権者であり、引用商標を使用する者であって、本件商標が請求人の所有する引用商標と類似し、指定商品も同一又は類似するとの理由と、本件商標の存在によって請求人の業務に係る商品と混同するおそれがあるとの理由により本件審判を請求していることは、前記第3のとおりである。 そうすると、請求人は、本件商標の商標登録が存在することによって、直接不利益を被る関係にあるものといえ、法律上、経済上直接の利害を受ける地位にある者ということができる。 したがって、請求人は、本件審判の請求について利害関係を有すると認められる。 なお、被請求人は、請求人が本件審判を請求することについて利害関係がない旨主張しているが、たとえ被請求人が主張するような事情があるとしても、前述のとおり、請求人は、本件審判を請求することについて利害関係を有するというべきであるから、被請求人の主張は採用することができない。 以下、本案に入って判断する。 2 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標 本件商標は、上記第1のとおり、「宝葱」の漢字2字を標準文字で表してなり、外観上まとまりよく一体的に表されているものである。そして、構成中の「宝」の文字は、「貴重な品物。大切な財物。宝物。」を、「葱」の文字は「ヒガンバナ科(旧ユリ科)ネギ属の多年草。・・・ねぶか。長ねぎ。」(出典「広辞苑 第七版」)を意味する語として、それぞれ一般に広く親しまれているものである。 また、本件商標は僅か2文字からなるものであり、その構成態様も同書、同大でまとまりよく表されているものであって、その構成において、いずれかの構成文字が自他商品の識別標識として強く支配的な印象を与えるものではない。また、本件商標の構成中「葱」の文字部分は、上記意味を有するところ、その指定商品との関係において、自他商品の識別標識としての機能が比較的弱い語であるとしても、本件商標のようなまとまりの良い構成においては、「宝」の文字部分と結合して不可分一体の造語を表してなるものと認識、把握されるとみるのが自然である。 そうすると、本件商標は、その構成文字全体をもって一体不可分のものとして把握されるというのが相当であり、その他、本件商標の構成中の「宝」の文字部分が、取引者、需要者に対し、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認めるに足りる事情は見いだせない。 そして、観念については、「宝葱」の文字は、辞書に掲載されておらず、構成する「宝」及び「葱」の各漢字の有する上記意味に相応し「貴重な品物の長ネギ」ほどの漠然とした意味合いを想起させるものの、具体的な意味合いを生ずるというものではないから、特定の観念を生じない造語と判断するのが相当である。 そうすると、本件商標は、その構成中の文字から「タカラネギ」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものである。 (2)引用商標 引用商標は、上記第2の1のとおり、引用商標1、引用商標5及び引用商標9は、「宝」の漢字から、引用商標2、引用商標6及び引用商標10は、「タカラ」の片仮名から、引用商標3及び引用商標4は、「TAKARA」の欧文字から、引用商標7及び引用商標8は、「TaKaRa」の欧文字から、引用商標11は、「たから」の平仮名から、それぞれ構成されるものであるから、引用商標よりは「タカラ」の称呼及び「貴重な品物。大切な財物。」の観念を生じるものである。 (3)本件商標と引用商標との類否 ア 本件商標と引用商標1、引用商標5及び引用商標9との類否について 本件商標と引用商標1、引用商標5及び引用商標9を比較するに、外観において、両者は、「宝」の文字を共通にするものの、いずれも1文字及び2文字の短い文字構成において、「葱」の文字の有無という差異を有するものであり、互いに異なる語を表してなると容易に理解できるから、判別は容易である。 そして、称呼においては、語頭の「タカラ」の3音を共通にするものの、「ネギ」の音の有無という差異を有し、それぞれ3音と5音からなる短い音構成において当該差異音が全体の語調、語感に与える影響は小さいものとはいえないから、聴別は容易である。 さらに、観念においては、本件商標は特定の観念が生じないのに対し、引用商標1、引用商標5及び引用商標9よりは「貴重な品物。大切な財物。」の観念を生じるから、相紛れるおそれはない。 そうすると、本件商標と引用商標1、引用商標5及び引用商標9は、外観及び称呼において判別及び聴別は容易であり、観念において相紛れるおそれはないから、これらを総合して考察すれば、同一又は類似の商品について使用しても、それに接する需要者をして、出所の混同を生じるおそれはなく、類似する商標とは認められない。 イ 本件商標と引用商標2ないし引用商標4、引用商標6ないし引用商標8、引用商標10及び引用商標11との類否について 本件商標と引用商標2ないし引用商標4、引用商標6ないし引用商標8、引用商標10及び引用商標11(以下、これらをまとめて「引用商標2等」という。)を比較するに、外観においては、「葱」の文字の有無という差異を有するものであり、また、漢字と片仮名、平仮名又は欧文字という文字種の差異も有するものであって、全体として互いに異なる語を表してなると容易に理解できるから、判別は容易である。 そして、称呼においては、語頭の「タカラ」の3音を共通にするものの、「ネギ」の音の有無という差異を有し、それぞれ3音と5音からなる短い音構成において当該差異音が全体の語調、語感に与える影響は小さいものといえないから、聴別は容易である。 さらに、観念においては、本件商標は特定の観念が生じないのに対し、引用商標2等よりは「貴重な品物。大切な財物。」の観念を生じるから、相紛れるおそれはない。 そうすると、本件商標と引用商標2等は、外観及び称呼において判別及び聴別は容易であり、観念において相紛れるおそれはないから、これらを総合して考察すれば、同一又は類似の商品について使用しても、それに接する需要者をして、出所の混同を生じるおそれはなく、類似する商標とは認められない。 ウ なお、請求人は、本件商標は「宝」の文字部分が商品の出所識別標識として強く支配的な印象与え、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼・観念は生じないから、「宝」の文字部分が独立して取引に資される場合がある旨主張する。しかしながら、本件商標構成中の「葱」の文字部分がその指定商品である「生鮮のたまねぎ」との関係において、自他商品識別標識としての機能が比較的弱い語であるとしても、本件商標のまとまりのよい構成態様からすれば、「宝」の文字部分が独立して看者の印象に残るものとはいえない。 そうとすれば、本件商標はまとまりよく一体的な構成であって、いずれかの文字が強く支配的な印象を与えるとすべき事情等も見いだせないから、上記(1)のとおり判断するのが相当である。 また、請求人は過去の審決例等を挙げ、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当する旨を主張しているが、本件商標との事情と相違するものであり、商標の類否の判断は、査定時又は審決時における取引の実情を勘案し、その指定商品の取引者・需要者の認識を基準に比較される商標について個別具体的に判断されるべきものであるから、それらをもって上記判断が左右されるものではない。 したがって、請求人の主張はいずれも採用できない。 エ 小括 以上のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標であるから、両商標の指定商品が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 2 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)15号引用商標の周知性について ア 請求人提出の甲各号証、及び同人の主張によれば、以下のとおりである。 (ア)請求人は、大正14年(1925年)9月に「寳酒造株式会社」として設立された酒類、調味料、飲料、食料品、バイオ関連製品の総合メーカーであり、平成14年(2002年)4月に持株会社(宝ホールディングス株式会社)に移行したもので、宝グループ全体の経営を統括している(甲22~甲26、請求人の主張)。 (イ)宝グループ全体の酒類・調味料・バイオ・健康食品事業の2021年3月期の売上高は、約2,784億円であり(甲27)、宝グループ会社のハウスマーク、宝グループの事業に係る商品「焼酎,調味料」等及びそれら商品の広告宣伝において、15号引用商標及びこれらを要部とする商標を永年使用している(甲22~甲29)。 (ウ)請求人に係る引用商標13は異議決定等に基づくものとして周知著名商標としてJ-Platpatに掲載され(甲32)、また、引用商標15は、第33類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、防護標章登録を受けている(甲33)。 (エ)昭和38年5月、昭和41年2月、昭和56年4月及び12月に言い渡された判決において「寶(宝)」商標が焼酎及び味醂について著名性を獲得していると判示された(甲34~甲37)。 (オ)請求人の業務に係る商品「みりん,焼酎」等には、引用商標12ないし引用商標19とほぼ同一の構成からなる商標(以下、これらをまとめて「請求人使用商標」という。)が表示されている(甲22、甲23、甲29)。 (カ)宝酒造株式会社は、その業界において、2013年~2017年における、商品「焼酎甲類」の出荷量は第1位、そのシェアは、26%ないし27%を占め、商品「本格焼酎(焼酎乙類)」の出荷量は第8位であり、そのシェアは2.1%ないし2.6%を占め、甲乙混和を加えるとシェアは30%台である。また、商品「みりん」(みりん一種)の出荷量は第1位であり、そのシェアは、51.9%ないし54.6%を占めるものである(甲52)。 イ 以上によれば、請求人使用商標は、請求人のハウスマークにも使用され、商品「みりん,焼酎」等を表示する標章として、100年以上にわたり使用、広告され、請求人による関連事業を含めた売上高も相当程度の規模に及んでいるから、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、需要者の間に広く認識されているものと認められる。 (2)請求人使用商標の独創性について 請求人使用商標は、「寶(宝)」、「タカラ」又は「TaKaRa」の文字からなるものであるところ、「宝(タカラ)」の語は、「貴重な品物。」等を意味する親しまれた語であるから、「宝」の漢字の旧字体である「寶」の漢字、また、当該語の音を欧文字で表し、大文字と小文字を交互に使用して表されてなるとしても、独創性が高いものとはいえない。 (3)本件商標と請求人使用商標との類似の程度 請求人使用商標は「宝(寶)」、「タカラ」及び「TaKaRa」の文字からなるものあるいは当該文字を構成中に含むものであるから、上記2(3)と同様の理由により非類似の商標であって、別異の商標と判断するのが相当である。 (4)本件商標の指定商品と請求人使用商標に係る商品との関連性 本件商標の指定商品は「生鮮のたまねぎ」であり、請求人使用商標に係る商品「みりん,焼酎」等とは、飲食料品であることや需要者が一般消費者であることにおいては共通するものの、生産者や流通経路、販売場所及び用途が異なるため、同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるような密接な関連性があるとはいえない。 (5)出所の混同のおそれ 以上よりすれば、請求人使用商標は、請求人及び宝グループ会社のハウスマークにも使用され、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の使用に係る商品「みりん,焼酎」等を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されているものである。 しかしながら、本件商標と請求人使用商標とは、非類似の商標であって、別異のものと認められること、かつ、請求人使用商標は高度の独創性を有するとまではいえないこと、本件商標の指定商品と請求人使用商標にかかる商品に密接な関連性があるとはいえないこと、を考慮すれば、本件商標は、これを本件商標権者がその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして、請求人又は請求人使用商標を連想又は想起させるものではなく、その商品が請求人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その出所について誤認混同を生じるおそれはないというべきである。 その他、本件商標が出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 (6)小括 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 3 むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-890002

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