特許異議申立
2023-701310
洗車装置
- 審判番号
- 2023-701310
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-097290
- 登録番号
- 7297717
- 請求日
- 2023年12月12日
- 審決日
- 2024年11月25日
- 公報発行日
- 2025年03月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】エムケー精工株式会社
- 【異議申立人】中筋 崇浩
- 【異議申立人】河合 淳至
- 審判長/審判官
- 審判長 筑波 茂樹
- 審判官 小岩 智明
- 審判官 草野 顕子
- 分類
- P1651.121-YAA(B60S) / P1651.537-YAA(B60S) / P1651.55 -YAA(B60S)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項第1号、特許法第44条、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7297717号発明「洗車装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7297717号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び図面のとおり、訂正後の請求項〔1、2、4~9〕について、訂正することを認める。
特許第7297717号の請求項1~9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7297717号(以下「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、平成26年9月22日に出願した特願2014-192394号の一部を、平成31年2月1日に新たな特許出願とした特願2019-16829号の一部を、令和2年6月3日に新たな特許出願としたものであって、令和5年6月16日に特許権の設定登録がされ、同年6月26日に特許掲載公報が発行された。
本件特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年12月12日 :特許異議申立人中筋崇浩(以下「申立人1」
という。)による特許異議の申立て
同年12月25日 :特許異議申立人河合淳至(以下「申立人2」
という。)による特許異議の申立て
令和6年 4月18日付け:取消理由通知書
同年 6月 3日 :特許権者による訂正請求書の提出
同年 6月21日 :特許権者による手続補正書(方式)の提出
同年 8月 9日 :申立人1による意見書の提出
同年 8月13日 :申立人2による意見書の提出
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和6年6月3日にされた訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、4~9について訂正することを求めるものであり、その内容は以下のとおりである(下線部は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「停車位置に自動車がいることを検出する停車検出手段と、前記停車位置に停車した自動車の長さを検出する車長検出手段と、前記停車位置の床面に自動車の車種の長さに応じて車長方向に複数に区分けされ、自動車の下面に向かうノズルを有するユニットと、前記停車位置で停車される自動車のスペースの外で分岐した給水路により分水して各前記ユニットに給水する給水系統と、を備え、前記ユニットが、前記停車位置の床面で車長方向に延在する溝部に設けられ、前記溝部内を通る前記給水路により給水され、前記給水系統において、分岐してから遠くに給水される前記ユニットに通じる前記給水路が、分岐してから近くに給水される前記ユニットを前記車長方向に通り越しており、前記停車検出手段で検出された前記停車位置に停車した自動車に対して、前記車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる、ことを特徴とする洗車装置。」と記載されているのを、「停車位置に自動車がいることを検出する停車検出手段と、前記停車位置に停車した自動車の長さを検出する車長検出手段と、前記停車位置の床面に自動車の車種の長さに応じて車長方向に複数に区分けされ、自動車の下面に向かうノズルを有するユニットと、前記停車位置で停車される自動車のスペースの外で分岐した給水路により分水して各前記ユニットに給水する給水系統と、車長方向に移動自在に前記車長検出手段と設けられ、自動車をブラッシング洗浄可能な処理装置を備え、前記ユニットが、前記停車位置の床面で車長方向に延在する溝部に設けられ、前記溝部内を通る前記給水路により給水され、前記給水系統において、分岐してから遠くに給水される前記ユニットに通じる前記給水路が、分岐してから近くに給水される前記ユニットを前記車長方向に通り越しており、前記停車検出手段で検出された前停車位置に停車した自動車に対して、前記処理装置の移動と共にブラッシング洗浄を行う際に、前記車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる、ことを特徴とする洗車装置。」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、8、9も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4に「停車位置に自動車がいることを検出する停車検出手段と、前記停車位置に停車した自動車の長さを検出する車長検出手段と、前記停車位置の床面に自動車の車種の長さに応じて車長方向に複数に区分けされ、自動車の下面に向かうノズルを有するユニットと、給水源を備え、各前記ユニットの外で前記給水源から分岐した給水路により分水して各前記ユニットに給水する給水系統と、を備え、前記ユニットが、前記停車位置の床面で車長方向に延在する溝部に設けられ、前記溝部内を通る前記給水路により給水され、前記停車検出手段で検出された前記停車位置に停車した自動車に対して、前記車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる、ことを特徴とする洗車装置。」と記載されているのを、「停車位置に自動車がいることを検出する停車検出手段と、前記停車位置に停車した自動車の長さを検出する車長検出手段と、前記停車位置の床面に自動車の車種の長さに応じて車長方向に複数に区分けされ、自動車の下面に向かうノズルを有するユニットと、給水源を備え、各前記ユニットの外で前記給水源から分岐した給水路により分水して各前記ユニットに給水する給水系統と、車長方向に移動自在に前記車長検出手段と設けられ、自動車をブラッシング洗浄可能な処理装置を備え、前記ユニットが、前記停車位置の床面で車長方向に延在する溝部に設けられ、前記溝部内を通る前記給水路により給水され、前記停車検出手段で検出された前記停車位置に停車した自動車に対して、前記処理装置の移動と共にブラッシング洗浄を行う際に、前記車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる、ことを特徴とする洗車装置。」に訂正する(請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8、9も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に「停車位置に自動車がいることを検出する停車検出手段と、前記停車位置に停車した自動車の長さを検出する車長検出手段と、前記停車位置の床面に車長方向に複数に区分けされ、自動車の下面に向かうノズルを有し、前記停車位置で停車される自動車のスペースの外から別々に給水路により給水されるユニットと、を備え、前記ユニットが、前記停車位置の床面で車長方向に延在する溝部に設けられ、前記溝部内を通る前記給水路により給水される、ことを特徴とする洗車装置。」と記載されているのを、「停車位置に自動車がいることを検出する停車検出手段と、前記停車位置に停車した自動車の長さを検出する車長検出手段と、前記停車位置の床面に車長方向に複数に区分けされ、自動車の下面に向かうノズルを有し、前記停車位置で停車される自動車のスペースの外から別々に給水路により給水されるユニットと、車長方向に移動自在に前記車長検出手段と設けられ、自動車をブラッシング洗浄可能な処理装置を備え、前記ユニットが、前記停車位置の床面で車長方向に延在する溝部に設けられ、前記溝部内を通る前記給水路により給水され、前記処理装置の移動と共にブラッシング洗浄を行う際に、前記車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる、ことを特徴とする洗車装置。」に訂正する(請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8、9も同様に訂正する。)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6に「停車位置に自動車がいることを検出する停車検出手段と、前記停車位置に停車した自動車の長さを検出する車長検出手段と、前記停車位置の床面に自動車の車種の長さに応じて車長方向に複数に区分けされ、自動車の下面に向かうノズルを有するユニットと、前記停車位置で停車される自動車のスペースの外で分岐した給水路により分水して各前記ユニットに給水する給水系統と、を備え、前記ユニットが、前記停車位置の床面で車長方向に延在する溝部に沿うプレート状であって前記ノズルと対面する位置で開口するカバーで覆われ、前記停車検出手段で検出された前記停車位置に停車した自動車に対して、前記車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる、ことを特徴とする洗車装置。」と記載されているのを、「停車位置に自動車がいることを検出する停車検出手段と、前記停車位置に停車した自動車の長さを検出する車長検出手段と、前記停車位置の床面に自動車の車種の長さに応じて車長方向に複数に区分けされ、自動車の下面に向かうノズルを有するユニットと、前記停車位置で停車される自動車のスペースの外で分岐した給水路により分水して各前記ユニットに給水する給水系統と、車長方向に移動自在に前記車長検出手段と設けられ、自動車をブラッシング洗浄可能な処理装置を備え、前記ユニットが、前記停車位置の床面で車長方向に延在する溝部に沿うプレート状であって前記ノズルと対面する位置で開口するカバーで覆われ、前記停車検出手段で検出された前記停車位置に停車した自動車に対して、前記処理装置の移動と共にブラッシング洗浄を行う際に、前記車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる、ことを特徴とする洗車装置。」に訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8、9も同様に訂正する。)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7に「車長方向に移動自在に前記車長検出手段と設けられ、自動車の側面をブラッシング洗浄可能なブラシを有する処理装置を備え、前記処理装置の移動と共に前記ブラシで自動車の側面のブラッシング洗浄を行う際に、前記車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる、請求項1~6のいずれか一項に記載の洗車装置。」と記載されているのを、「停車位置に自動車がいることを検出する停車検出手段と、前記停車位置に停車した自動車の長さを検出する車長検出手段と、前記停車位置の床面に自動車の車種の長さに応じて車長方向に複数に区分けされ、自動車の下面に向かうノズルを有するユニットと、各前記ユニットの外で分岐した給水路により分水して各前記ユニットに給水する給水系統と、車長方向に移動自在に前記車長検出手段と設けられ、自動車の側面をブラッシング洗浄可能なブラシを有する処理装置を備え、前記停車位置の床面で車長方向に延在する溝部に複数に区分けされた前記ユニットが自動車の車幅方向にも設けられ、前記給水系統において、前記車幅方向における隣接する前記ユニット間の外で分岐された前記給水路が、前記車幅方向における隣接する前記溝部の端部のそれぞれと繋がり、前記床面で前記車幅方向における隣接する前記ユニット間の外へ延在する連通溝内および前記溝部内を通り、前記停車検出手段で検出された前記停車位置に停車した自動車に対して、前記処理装置の移動と共に前記ブラシで自動車の側面のブラッシング洗浄を行う際に、前記車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる、ことを特徴とする洗車装置。」に訂正する(請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8、9も同様に訂正する。)。
2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1、2、7~9について、請求項2、7~9は、請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
本件訂正前の請求項4、7~9について、請求項7~9は、請求項4を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項2によって記載が訂正される請求項4に連動して訂正されるものである。
本件訂正前の請求項5、7~9について、請求項7~9は、請求項5を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項3によって記載が訂正される請求項5に連動して訂正されるものである。
本件訂正前の請求項6、7~9について、請求項7~9は、請求項6を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項4によって記載が訂正される請求項6に連動して訂正されるものである。
本件訂正前の請求項7~9について、請求項8、9は、請求項7を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項5によって記載が訂正される請求項7に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1、2、4~9に対応する訂正後の請求項1、2、4~9は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、本件訂正請求は、一群の請求項〔1、2、4~9〕についてされたものである。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の発明特定事項について、「車長方向に移動自在に前記車長検出手段と設けられ、自動車をブラッシング洗浄可能な処理装置を備え」、「前記処理装置の移動と共にブラッシング洗浄を行う際に、前記車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる」と、洗車装置をより具体的に特定し、更に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の段落【0011】、【0029】及び【0031】の記載等に基づくものであるので、新規事項の追加に該当せず、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項4の発明特定事項について、「車長方向に移動自在に前記車長検出手段と設けられ、自動車をブラッシング洗浄可能な処理装置を備え」、「前記処理装置の移動と共にブラッシング洗浄を行う際に、前記車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる」と、洗車装置をより具体的に特定し、更に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、訂正事項2は、本件明細書の段落【0011】、【0029】及び【0031】の記載等に基づくものであるので、新規事項の追加に該当せず、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、本件訂正前の請求項5の発明特定事項について、「車長方向に移動自在に前記車長検出手段と設けられ、自動車をブラッシング洗浄可能な処理装置を備え」、「前記処理装置の移動と共にブラッシング洗浄を行う際に、前記車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる」と、洗車装置をより具体的に特定し、更に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、訂正事項3は、本件明細書の段落【0011】、【0029】及び【0031】の記載等に基づくものであるので、新規事項の追加に該当せず、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、本件訂正前の請求項6の発明特定事項について、「車長方向に移動自在に前記車長検出手段と設けられ、自動車をブラッシング洗浄可能な処理装置を備え」、「前記処理装置の移動と共にブラッシング洗浄を行う際に、前記車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる」と、洗車装置をより具体的に特定し、更に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
また、訂正事項4は、本件明細書の段落【0011】、【0029】及び【0031】の記載等に基づくものであるので、新規事項の追加に該当せず、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(5)訂正事項5について
訂正事項5は、本件訂正前の請求項7が請求項1~6の記載を引用する記載であるところ、請求項1、2、4~6を引用しないものとした上で、請求項3を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び同第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
また、訂正事項5は、引用する請求項の数を減少させ、かつ請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるものであるので、新規事項の追加に該当せず、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(6)異議申立人の意見について
ア 申立人の主張
申立人1は意見書において、以下の旨を主張する。
本件訂正前の請求項7において「自動車の側面をブラッシング洗浄可能なブラシを有する処理装置」となっていたものを、「自動車をブラッシング洗浄可能な処理装置」に変更して請求項1、4、5及び6に追加したことは新規事項の追加に該当する。
すなわち、特許権者が訂正の根拠とする本件明細書の段落【0009】、【0011】及び【0031】には、自動車のどの面に対してブラッシング洗浄するかについての記載が存在せず、一方、段落【0012】には、車体の上面、前後面、側面をブラッシングすることの記載はあるが、車体の下面をブラッシングすることの記載はない。
そして、本件訂正後の請求項1、4、5及び6に係る発明は、「自動車をブラッシング洗浄」と特定したことにより、車体の下面のみをブラッシング洗浄する構成も含むことになっており、新規事項を追加するものである。
イ 当審の判断
本件明細書の段落【0011】に、「フレーム8は、洗車処理装置を備え、フレーム8の走行に伴って車体面に水・洗剤・ワックス等を散布しながらブラッシングする洗浄処理・・・を行う」と記載されていることに鑑みると、本件訂正後の請求項1、4、5及び6の「自動車をブラッシング洗浄可能な処理装置」は、本件明細書に記載された範囲のものである。
申立人1は、本件訂正後の請求項1、4、5及び6に係る発明は、車体の下面のみをブラッシング洗浄する構成も含むことになると論難するが、段落【0011】の上記記載からみて、処理装置は自動車をブラッシングすることができればよいのであって、車体の側面などの特定の箇所をブラッシングするもののみが記載されていたとはいえない。そうすると、「側面を」との特定のない本件訂正後の請求項1、4、5及び6に係る訂正が、新たな技術的事項を導入するものであるとは認められない。
よって、申立人1の当該主張は採用できない。
4 訂正請求についてのむすび
以上のとおり、訂正事項1~5に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項〔1、2、4~9〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
第2で説示したとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1~9に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明9」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
【請求項1】
停車位置に自動車がいることを検出する停車検出手段と、
前記停車位置に停車した自動車の長さを検出する車長検出手段と、
前記停車位置の床面に自動車の車種の長さに応じて車長方向に複数に区分けされ、自動車の下面に向かうノズルを有するユニットと、
前記停車位置で停車される自動車のスペースの外で分岐した給水路により分水して各前記ユニットに給水する給水系統と、
車長方向に移動自在に前記車長検出手段と設けられ、自動車をブラッシング洗浄可能な処理装置を備え、
前記ユニットが、前記停車位置の床面で車長方向に延在する溝部に設けられ、前記溝部内を通る前記給水路により給水され、
前記給水系統において、分岐してから遠くに給水される前記ユニットに通じる前記給水路が、分岐してから近くに給水される前記ユニットを前記車長方向に通り越しており、
前記停車検出手段で検出された前記停車位置に停車した自動車に対して、前記処理装置の移動と共にブラッシング洗浄を行う際に、前記車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる、
ことを特徴とする洗車装置。
【請求項2】
前記ユニットは、複数の前記ノズルが取り付けられ、前記車長方向に延在する管を備え、
各前記ユニットの前記管に分水してそれぞれの複数の前記ノズルから洗浄水を噴射させる、
請求項1記載の洗車装置。
【請求項3】
停車位置に自動車がいることを検出する停車検出手段と、
前記停車位置に停車した自動車の長さを検出する車長検出手段と、
前記停車位置の床面に自動車の車種の長さに応じて車長方向に複数に区分けされ、自動車の下面に向かうノズルを有するユニットと、
各前記ユニットの外で分岐した給水路により分水して各前記ユニットに給水する給水系統と、を備え、
前記停車位置の床面で車長方向に延在する溝部に複数に区分けされた前記ユニットが自動車の車幅方向にも設けられ、
前記給水系統において、前記車幅方向における隣接する前記ユニット間の外で分岐された前記給水路が、前記車幅方向における隣接する前記溝部の端部のそれぞれと繋がり、前記床面で前記車幅方向における隣接する前記ユニット間の外へ延在する連通溝内および前記溝部内を通り、
前記停車検出手段で検出された前記停車位置に停車した自動車に対して、前記車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる、
ことを特徴とする洗車装置。
【請求項4】
停車位置に自動車がいることを検出する停車検出手段と、
前記停車位置に停車した自動車の長さを検出する車長検出手段と、
前記停車位置の床面に自動車の車種の長さに応じて車長方向に複数に区分けされ、自動車の下面に向かうノズルを有するユニットと、
給水源を備え、各前記ユニットの外で前記給水源から分岐した給水路により分水して各前記ユニットに給水する給水系統と、
車長方向に移動自在に前記車長検出手段と設けられ、自動車をブラッシング洗浄可能な処理装置を備え、
前記ユニットが、前記停車位置の床面で車長方向に延在する溝部に設けられ、前記溝部内を通る前記給水路により給水され、
前記停車検出手段で検出された前記停車位置に停車した自動車に対して、前記処理装置の移動と共にブラッシング洗浄を行う際に、前記車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる、
ことを特徴とする洗車装置。
【請求項5】
停車位置に自動車がいることを検出する停車検出手段と、
前記停車位置に停車した自動車の長さを検出する車長検出手段と、
前記停車位置の床面に車長方向に複数に区分けされ、自動車の下面に向かうノズルを有し、前記停車位置で停車される自動車のスペースの外から別々に給水路により給水されるユニットと、
車長方向に移動自在に前記車長検出手段と設けられ、自動車をブラッシング洗浄可能な処理装置を備え、
前記ユニットが、前記停車位置の床面で車長方向に延在する溝部に設けられ、前記溝部内を通る前記給水路により給水され、
前記処理装置の移動と共にブラッシング洗浄を行う際に、前記車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる、
ことを特徴とする洗車装置。
【請求項6】
停車位置に自動車がいることを検出する停車検出手段と、
前記停車位置に停車した自動車の長さを検出する車長検出手段と、
前記停車位置の床面に自動車の車種の長さに応じて車長方向に複数に区分けされ、自動車の下面に向かうノズルを有するユニットと、
前記停車位置で停車される自動車のスペースの外で分岐した給水路により分水して各前記ユニットに給水する給水系統と、
車長方向に移動自在に前記車長検出手段と設けられ、自動車をブラッシング洗浄可能な処理装置を備え、
前記ユニットが、前記停車位置の床面で車長方向に延在する溝部に沿うプレート状であって前記ノズルと対面する位置で開口するカバーで覆われ、
前記停車検出手段で検出された前記停車位置に停車した自動車に対して、前記処理装置の移動と共にブラッシング洗浄を行う際に、前記車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる、
ことを特徴とする洗車装置。
【請求項7】
停車位置に自動車がいることを検出する停車検出手段と、
前記停車位置に停車した自動車の長さを検出する車長検出手段と、
前記停車位置の床面に自動車の車種の長さに応じて車長方向に複数に区分けされ、自動車の下面に向かうノズルを有するユニットと、
各前記ユニットの外で分岐した給水路により分水して各前記ユニットに給水する給水系統と、
車長方向に移動自在に前記車長検出手段と設けられ、自動車の側面をブラッシング洗浄可能なブラシを有する処理装置を備え、
前記停車位置の床面で車長方向に延在する溝部に複数に区分けされた前記ユニットが自動車の車幅方向にも設けられ、
前記給水系統において、前記車幅方向における隣接する前記ユニット間の外で分岐された前記給水路が、前記車幅方向における隣接する前記溝部の端部のそれぞれと繋がり、前記床面で前記車幅方向における隣接する前記ユニット間の外へ延在する連通溝内および前記溝部内を通り、
前記停車検出手段で検出された前記停車位置に停車した自動車に対して、前記処理装置の移動と共に前記ブラシで自動車の側面のブラッシング洗浄を行う際に、前記車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる、
ことを特徴とする洗車装置。
【請求項8】
複数の前記ユニットは、自動車前端側の第1ユニットおよび前記第1ユニットよりも自動車後端側の第2ユニットを備え、
前記車長検出手段で検出した自動車の長さが、第1車種の車長までであれば前記第1ユニットのノズルから洗浄水を噴射し、
前記車長検出手段で検出した自動車の長さが、前記第1車種より長い第2車種の車長までであれば、前記第1ユニットのノズルから洗浄水を噴射させ、また前記第2ユニットのノズルから洗浄水を噴射させる、
請求項1~7のいずれか一項に記載の洗車装置。
【請求項9】
前記ノズルが、首振り自在に構成されている、
請求項1~8のいずれか一項に記載の洗車装置。
第4 取消理由通知に記載した取消理由の概要
訂正前の請求項1~9に係る特許に対して、当審が令和6年4月18日付けの取消理由通知で特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(進歩性)本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
記
・請求項 1、4~6
・引用文献 1~4
・請求項 2、8、9
・引用文献 1~5
<引用文献等一覧>
引用文献1:中国実用新案第2060413号明細書
(申立人1が提出した甲第1号証、申立人2が提出した甲第2号証)
引用文献2:特開平8-72679号公報
(申立人2が提出した甲第8号証)
引用文献3:特開2009-73300号公報
(申立人1が提出した甲第2号証、申立人2が提出した甲第4号証)
引用文献4:特開昭63-134358号公報
(申立人2が提出した甲第7号証)
引用文献5:英国特許第1421390号明細書
(申立人1が提出した甲第8号証、申立人2が提出した甲第1号証)
第5 当審の判断
1 申立人が提出した証拠方法
申立人1が提出した甲第1号証~甲第9号証は以下のとおりである。
甲第1号証 :中国実用新案第2060413号明細書
甲第2号証 :特開2009-73300号公報
甲第3号証 :実公平3-27007号
甲第4号証 :特公昭46-26713号
甲第5甲証 :特開平7-246917号公報
甲第6号証 :特開2000-6773号公報
甲第7号証 :特開平9-104327号公報
甲第8号証 :英国特許第1421390号明細書
甲第9号証 :特開2016-60452号公報
また、申立人2が提出した甲第1号証~甲第12号証は以下のとおりである。
甲第1号証 :英国特許第1421390号明細書
甲第2号証 :中国実用新案第2060413号明細書
甲第3号証 :実公平3-27007号
甲第4号証 :特開2009-73300号公報
甲第5甲証 :特開2013-244761号公報
甲第6号証 :特開2000-6773号公報
甲第7号証 :特開昭63-134358号公報
甲第8号証 :特開平8-72679号公報
甲第9号証 :特開平11-129871号公報
甲第10号証:特開昭61-181746号公報
甲第11号証:特開2014-19299号公報
甲第12号証:特公昭46-26713号
以下では、申立人1が提出した「甲第1号証」~「甲第9号証」を、それぞれ、「甲1-1」~「甲1-9」といい、申立人2が提出した「甲第1号証」~「甲第12号証」を、それぞれ、「甲2-1」~「甲2-12」という。
2 甲号証の記載事項
(1)甲1-1及び甲2-2
ア 記載事項
同一の文献である甲1-1及び甲2-2(当審における取消理由通知の引用文献1)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。なお、記載事項は申立人1が提出した翻訳で示した。また、下線は当審において付した(以下同じ。)。
(ア)第5ページ第14行~第6ページ第2行
「以下においては、添付図面に基づき本考案について更に説明する。
図1は半自動化自動車洗浄設備の配置図である。
図2はブラシ洗浄機の構造図である。
図3は従来技術におけるブラシローラの接続構造である。
図4は本考案におけるブラシローラの接続構造である。
図5は図4におけるK部の拡大図である。
図6は揺動ノズル、揺動軸受が付いた単一揺動水噴射管の取付図である。
図7はシャーシの高圧水管路網揺動フラッシュ洗浄装置である。
図8は図7におけるB-Bの断面図である。」
(イ)第6ページ第6行~第13行
「図1に示されている通り、車両が右斜面から洗車台先端のブラシ洗浄台[1]に進入すると、自動検出装置が信号を発してブラシ洗浄機[I]が運転を開始する(ブラシ洗浄水を放出し、ブラシローラ[2]が回転する)ように制御し、車両が所定速度でブラシ洗浄台[I]の中線[00]に沿って均一速度で走行し、走行中に6台のブラシ洗浄機(つまり左側車体前部、左側車体、左側車体後部、右側車体前部、右側車体、右側車体後部)により車体がきれいにブラシ洗浄される。車体がブラシ洗浄機を脱離して洗車台後端のシャーシフラッシュ洗浄台[3]に進入した後、その際にブラシローラは原位置に復帰し、ブラシ洗浄機は自動的にシャットダウンされる。ブラシ洗浄機のブラシアーム[4]、[5]は自由回転可能であり、各型式車両の幅寸法がそれぞれ異なるブラシ洗浄に適応している。シャーシのフラッシュ洗浄は、車両前部バンパーを位置決め基準としてシャーシフラッシュ洗浄台[3]末端の所定位置に位置決めして停止し、その後、シャーシ高圧水管揺動フラッシュ洗浄装置[II]を始動して定位置・定時間フラッシュ洗浄を実施する。」
(ウ)第7ページ第10行~第16行
「図6に示されている通り、高圧揺動水噴射管[25]は、両端がフランジを用いて枢軸[23]、[27]に接続されて、両軸受[21]、[28]上に支持され、左端は取水する揺動軸受[21]であり、水潤滑軸受が採用され、右端は転がり軸受[28]であり、高圧水は給水母管[19]からエルボ[20]を介して揺動軸受[21]に進入し、中空軸[23]を介して揺動水噴射管[25]に進入する。揺動ノズル[26]は管上に溶接され、揺動スイングアーム[24]はボルトを用いて水噴射管[25]の外周上に締結され、駆動装置に従動して揺動スイングアーム[24]が往復揺動することにより、揺動ノズル[26]が掃射フラッシュ洗浄を実現する。」
(エ)第7ページ第17行~第20行
「図7、図8に示されている通り、図6に示されている単一本揺動水噴射管群が、更に2つの軸受を介して、図8に示されている通り、スチームフレーム[22]下に固定される。更に複数本が設置されて、4組の管路網[30]、[31]、[34]、[36]が構成され、それぞれ4つの高圧電磁弁[29]、[32]、[35]、[37]により制御される。それは洗車対象の車体の長短に応じてそれぞれ管群の始動を制御することができる。」
イ 認定事項
(ア)記載事項(エ)並びに半自動化自動車洗浄設備の配置図である図1(下記参考図1を参照)及びシャーシの高圧水管路網揺動フラッシュ洗浄装置を表す図7(下記参考図2を参照)の図示内容から、「4組の管路網[30]、[31]、[34]、[36]」は、「車両が停止する床面に車長方向に区分けされ」ているものと認められる。
[参考図1]図1に当審において加筆
[図:0001420307000001.jpg]
[参考図2]図7に当審において加筆
[図:0001420307000002.jpg]
(イ)記載事項(ウ)並びに図7(上記参考図2を参照)及び図7におけるB-Bの断面図である図8(下記参考図3を参照)の図示内容から、「管路網[30]、[31]、[34]、[36]は、車幅方向に延在する複数の揺動水噴射管[25]に進入した高圧水により車両の下面に向かって掃射フラッシュ洗浄を実現する複数の揺動ノズル[26]を備え」るものと認められる。
[参考図3]図8に当審において加筆
[図:0001420307000003.jpg]
(ウ)記載事項(ウ)並びに図7(上記参考図2を参照)及び図8(上記参考図3を参照)から、揺動水噴射管[25]、管路網[30]、[31]、[34]、[36]及びこれらの管を接続する管は給水路であるといえ、当該給水路が全体として「給水系統」を構成しているものと認められる。
ここで、「給水系統」が「給水源を備え」ることは自明であり、また、図1(上記参考図1を参照)及び図7(上記参考図2を参照)の図示内容から、「給水系統」は、「車両が停止するエリアの外、かつ、管路網[30]、[31]、[34]、[36]の外の4つの高圧電磁弁[29]、[32]、[35]、[37]が設けられた箇所で分岐した給水路により分水して各管路網[30]、[31]、[34]、[36]に給水する」ものであることが看取できる。
(エ)図1(上記参考図1を参照)の図示内容から、「管路網[30]、[31]、[34]、[36]が、車両が停止する床面で車長方向に延在する溝部に設けられ、溝部内を通る給水路により管路網[30]、[31]、[34]、[36]に給水され」ることが看取できる。
(オ)図7(下記参考図4を参照)の図示内容から、「管路網[30]に分岐する箇所から遠くに給水される管路網[31]、[34]、[36]に通じる給水路が、当該分岐する箇所から近くに給水される管路網[30]を車長方向に通り越して」いることが看取できる。
[参考図4]図7の一部拡大図に当審において加筆
[図:0001420307000004.jpg]
(カ)図1(上記参考図1を参照)の図示内容から、車両が管路網[30]、[31]、[34]、[36]の上方に位置することが看取できるので、明示はされていないものの、「管路網[30]、[31]、[34]、[36]は、車両が停止する床面で車長方向に延在する溝部に沿うカバーで覆われ」ているものといえる。
また、記載事項(ウ)を踏まえると、揺動ノズル[26]は掃射フラッシュ洗浄を実現するものであるので、揺動ノズル[26]が溝部内から溝部外の車両の下面に向けて高圧水を掃射するために、「当該カバーは、揺動ノズル[26]と対面する位置で開口」するものと認められる。
ウ 甲発明1
上記記載事項及び認定事項を総合すると、甲1-1及び甲2-2には、次の発明(以下「甲発明1」という。)が記載されていると認められる。
「車両が停止する床面に車長方向に区分けされ、洗車対象の車体の長短に応じてそれぞれ管群の始動を制御することができる4組の管路網[30]、[31]、[34]、[36]が構成され、管路網[30]、[31]、[34]、[36]は、車幅方向に延在する複数の揺動水噴射管[25]に進入した高圧水により車両の下面に向かって掃射フラッシュ洗浄を実現する複数の揺動ノズル[26]を備え、
給水源を備え、車両が停止するエリアの外、かつ、管路網[30]、[31]、[34]、[36]の外の4つの高圧電磁弁[29]、[32]、[35]、[37]が設けられた箇所で分岐した給水路により分水して各管路網[30]、[31]、[34]、[36]に給水する給水系統を備え、
車両の左側車体前部、左側車体、左側車体後部、右側車体前部、右側車体、右側車体後部をブラシ洗浄するブラシローラ[2]を有するブラシ洗浄機[I]を備え、
管路網[30]、[31]、[34]、[36]が、車両が停止する床面で車長方向に延在する溝部に設けられ、溝部内を通る給水路により管路網[30]、[31]、[34]、[36]に給水され、
管路網[30]に分岐する箇所から遠くに給水される管路網[31]、[34]、[36]に通じる給水路が、当該分岐する箇所から近くに給水される管路網[30]を車長方向に通り越しており、
管路網[30]、[31]、[34]、[36]は、車両が停止する床面で車長方向に延在する溝部に沿うカバーで覆われ、当該カバーは、揺動ノズル[26]と対面する位置で開口し、
車体がブラシ洗浄機を脱離して洗車台後端のシャーシフラッシュ洗浄台[3]に進入した後、所定位置に位置決めして停止し、その後、管路網[30]、[31]、[34]、[36]が、それぞれ4つの高圧電磁弁[29]、[32]、[35]、[37]により制御される、
半自動化自動車洗浄設備。」
(2)甲1-8及び甲2-1
ア 記載事項
同一の文献である甲1-8及び甲2-1(当審における取消理由通知の引用文献5)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。なお、記載事項は申立人2が提出した翻訳で示した。
(ア)第1ページ第10行~第23行
「本発明は、自動車の上面及び下面を同時に洗浄する装置であって、レール経路に沿って往復運動し車両の上面を洗浄する逆U字型の門型洗浄機と、車両の支持面において又は支持面の直下においてレール経路の長さ方向に沿って伸長するパイプシステムを備え、前記パイプシステムは、車両の下面に対して加圧液体を噴霧する多数のノズルを搭載し、長さ方向に沿って互いに遮断された個別のセクションに細分化されている、洗浄装置に関する。」
(イ)第2ページ第19行~第38行
「門型洗浄機の移動中に電磁弁の作動が自動的に行われるため、本発明による装置は手動による影響を与えずに作動する。その結果、本発明の装置は、セルフサービスの洗浄施設に設置するのが好適である。また、液体の供給が一度に1つのセクションにのみ行われるように装置が制御され、それによって、門型洗浄機がその移動中にセクションを通過すると直ちに当該セクションからの噴霧が停止するので、車両の下面を効率的に洗浄するのに十分な水圧が、限られた水消費量を用いても得られる。すなわち装置の規定の効果が、従来の装置より小型の高圧ポンプを用いて達成することができる。」
(ウ)第2ページ第39行~第48行
「通常は再循環されて装置に再利用される使用済みの水のための排出口を除いて、洗浄装置施設の下に深い穴を掘る必要がないため、また車両下面用の洗浄設備で可動式のものを用いないことから複雑な液体供給接続を必要としないため、装置の設置は比較的簡単である。」
(エ)第2ページ第73行~第90行
「門型洗浄機1は、洗浄装置の床面に固定された2本のレール10、11の経路に沿って往復運動するように取り付けられ、門型洗浄機の前進は、図2に番号12、13で示すように可逆式電動モーターによって行われる。回転可能なサイドブラシ5、6は、レール経路の長さ方向に対して横断移動するように取り付けられ、ルーフブラシ7は、門型洗浄機に対して垂直移動するように取り付けられ、その結果、門型洗浄機の移動中に、前記3つの回転ブラシが車両の外形に自動的に追従するようになっている。装置のこれらの詳細はそれ自体公知であり、本発明の一部を構成するものではなく、これ以上の説明を要しない。」
(オ)第2ページ第91行~第100行
「また洗浄装置は、全体を参照符号14で示すパイプシステムから構成された、車両下面の洗浄設備を備え、車両の支持面を構成する洗浄装置床面に固定されたフレーム構造15に取り付けられ、このフレーム構造は図2に示すような格子16によって覆われている。」
(カ)第2ページ第101行~第117行
「本発明によると、パイプシステム14は、長さ方向に沿って互いに遮断された個別のセクションに細分化され、各セクションの長さは13.5フィート未満であり、その上更に、各セクションに関連付けて設けられた電磁弁を使用することで一度に1つのセクションのみから車両の下面に液体を噴霧するように、パイプシステムが配置されている。門型洗浄機の移動中、門型洗浄機による影響を直接受けるアクチュエータから各弁が電気的に作動して、門型洗浄機がその瞬間にその上に位置しているパイプセクションのみに、高圧ポンプから液体が供給されることが可能となっている。」
(キ)第2ページ第118行~第3ページ第9行
「図示の実施形態において、パイプシステム14は、上記したようなセクションを計7つ含んでおり、このセクションは、門型洗浄機1の移動の開始位置に相当するレール経路の端部から順に、それぞれ参照符号17、18、19、20、21、22、23で示す。各セクションは、例えばパイプセクション17において25、26で示すように両端が閉じ且つ相対して位置する2本の平行なパイプ片を含む。パイプセクション17を構成する2本のパイプ片は、それらの中央部でパイプ接続部25、26、27、28を介して連結され、パイプ接続部29、30において電磁弁を搭載する。パイプ接続部27、28は液体供給管31に連結され、液体供給管31は高圧ポンプ32に連結されている。最後のセクション23では、1つの電磁弁33のみが設けられ、供給管内に直接配置されている。」
(ク)第3ページ第28行~第45行
「パイプセクションに異なる長さ寸法を割り当てる目的は、門型洗浄機の移動によって制御される車両の下面の洗浄を、可能な限り洗浄対象の車両の実際の長さに限定することを確実に行うことにある。洗浄操作の間、門型洗浄機の移動の開始位置に最も近いレール経路端部に車両が置かれ、次いで洗浄ラックが車両に沿って移動し、回転ブラシ5、6、7が車両の形状を追従し、ブラシが車両の反対側の端部に達すると直ちに、門型洗浄機の移動が自動的に反転し、その後門型洗浄機は開始位置に戻る。」
(ケ)第3ページ第46行~第54行
「洗浄ラックが移動する間、上述したように門型洗浄機による影響を直接受けるアクチュエータから、符号29、30、33で示される電磁弁が作動して、洗浄ラック1がその瞬間にその上に位置しているパイプセクション17~23のみに、高圧ポンプ32から液体が供給されるようになっている。」
イ 認定事項
(ア)記載事項(キ)から、パイプセクション17~23、パイプ接続部25、26、27、28及び液体供給管31からなる供給管は、全体として「給水系統」を構成しているものと認められる。
そして、図1(下記参考図5を参照)の図示内容から、「給水系統」は、「高圧ポンプ32を備え、車両が停止するエリアの内側、かつ、各パイプセクション17~23の内側の電磁弁が設けられた箇所で液体供給管31から分岐した供給管により分水して各パイプセクション17~23に供給する」ものであることが看取できる。
[参考図5]図1に当審において加筆
[図:0001420307000005.jpg]
(イ)図1(上記参考図5を参照)の図示内容から、「給水系統」において、「分岐してから遠くに給水されるパイプセクション18~23に通じる液体供給管31が、分岐してから近くに給水されるパイプセクション17を車長方向に通り越して」いることが看取できる。
(ウ)図1(上記参考図5を参照)の図示内容から、「給水系統」において、「パイプセクション18~23の液体を噴霧する部分が車両の車幅方向に2列設けられ」ることが看取できる。
ウ 甲発明2
上記記載事項及び認定事項を総合すると、甲1-8及び甲2-1には、次の発明(以下「甲発明2」という。)が記載されていると認められる。
「長さ方向に沿って互いに遮断された個別のパイプセクション17~23に細分化され、車両の下面に液体を噴霧するパイプシステム14と、
高圧ポンプ32を備え、車両が停止するエリアの内側、かつ、各パイプセクション17~23の内側の電磁弁が設けられた箇所で液体供給管31から分岐した供給管により分水して各パイプセクション17~23に供給する給水系統と、
2本のレール10、11の経路に沿って往復運動するように取り付けられ、車両の外形に自動的に追従するサイドブラシ5、6が取り付けられた門型洗浄機1を備え、
パイプセクション18~23の液体を噴霧する部分が車両の車幅方向に2列設けられ、
パイプシステム14が、洗浄装置床面に固定されたフレーム構造15に取り付けられ、
分岐してから遠くに給水されるパイプセクション18~23に通じる液体供給管31が、分岐してから近くに給水されるパイプセクション17を車長方向に通り越しており、
門型洗浄機1の移動の開始位置に最も近いレール経路端部に置かれた車両に対して、門型洗浄機1が移動し、サイドブラシ5、6が車両の形状を追従し、門型洗浄機1が移動する間、門型洗浄機による影響を直接受けるアクチュエータから、電磁弁29、30、33が作動して、門型洗浄機1がその瞬間にその上に位置しているパイプセクション17~23のみに、高圧ポンプ32から液体が供給され、門型洗浄機1の移動によって制御される車両の下面の洗浄を、可能な限り洗浄対象の車両の実際の長さに限定することを確実に行う、
洗浄装置。」
(3)甲1-5
ア 記載事項
甲1-5には、以下の事項が記載されている。
(ア)【0012】
「前記ダンプトラックAの走行路10には洗車用ピット11が設けてあり、この洗車用ピット11はコンクリート製であって排水用凹溝12を有し、この排水用凹溝12は左右方向に向う細長い前凹溝13と左右方向に向う細長い後凹溝14と、前後方向に向い前後凹溝13,14に連続した中央凹溝15と、前後方向に向い前後凹溝13,14と連続した左右一対の内側凹溝16と、前後方向に向い前後凹溝13,14と連続した左右一対の外側凹溝17を有し、その前凹溝13と後凹溝14の左右両側部分と各内側凹溝16と各外側凹溝17の上部に格子状、あるいは穴明き板等のすのこ18がそれぞれ載置されて水や土砂等が下方に落下する走行路面19を構成し、前記前凹溝13は外部排水溝20に連続し、後凹溝14は配管、配線用溝21に連続している。」
(イ)【0014】
「前記左右の内側凹溝16の左右両側には内側パイプ26と外側パイプ27が前後方向に向けてそれぞれ設けられ、この各内側パイプ26には複数の内側固定下面ノズル28が設けてあり、各外側パイプ27には複数の外側固定下面ノズル29が設けてあり、これら内側・外側固定下面ノズル28,29はすのこ18より上方に洗浄水を噴出するようになって、内側固定下面ノズル28は内側タイヤ3aの内側面と対向し、外側固定下面ノズル29は内側タイヤ3aと外側タイヤ3bの中間と対向している。」
(ウ)図1には、以下の内容が示されている。
「
[図:0001420307000006.jpg]
」
(エ)図2には、以下の内容が示されている。
「
[図:0001420307000007.jpg]
」
(オ)図3には、以下の内容が示されている。
「
[図:0001420307000008.jpg]
」
イ 甲1-5記載事項
上記記載事項を総合すると、甲1-5には、次の事項(以下「甲1-5記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「左右の内側凹溝16には上方に洗浄水を噴出する内側・外側固定下面ノズル28,29が設けてある内側パイプ26と外側パイプ27が設けられ、
左右一対の内側凹溝16と連続した後凹溝14は配管、配線用溝21に連続している、
洗車用ピット11。」
(4)甲1-7
ア 記載事項
甲1-7には、以下の事項が記載されている。
(ア)【0006】
「【実施例】以下、この発明の実施例を図面に基づき説明する。図1は本発明の一実施例の正面外観図、図2は同じく実施例の平面説明図である。1は門形に形成される洗車機本体で、レール2・2’上を該レール間に停車される自動車Aを跨ぐように往復走行する。3は一対のスイングアーム4・4’を介して揺動可能に支持されるトップブラシで、車体との接触により揺動して主に車体の上面をブラッシング洗浄する。5・5’は本体天部に左右移動すなわち開閉動作できるよう吊下げられた一対のサイドブラシで、車体の側面形状に沿って開閉動作し、車体の前後左右の各側面をブラッシング洗浄する。6・7・7’はそれぞれ本体上方及び両側に設けられるブロワノズルで、車体に対し高圧で空気を吹き付け、車体に付いた水を飛散させて乾燥を計る。このうちノズル6はリンク機構により昇降可能に形成され、車体上面形状に沿って昇降動作する。」
(イ)【0008】
「従って、洗車機本体1はその走行に伴い、上記各ブラシを駆動して自動車の主に上面及び側面を洗浄し、更にブロワノズル6・7・7’により車体の乾燥を行なう。」
(ウ)【0011】
「従って、下回り洗浄装置は、キャリア12の走行に伴い放水ノズル14より放水して、自動車の底面の洗浄を行なう。尚、上記洗車機本体1とキャリア12とは、少なくともその洗浄動作時には、同じ速度で走行するよう機械的あるいは電気的に調整されている。」
(エ)【0019】
「以上のように、この実施例では洗車機本体1とキャリア12は常に一緒に走行し、従って車体の上面・側面並びに底面が同時に洗浄でき、しかも下回り洗浄の放水は常に洗車機本体内において成され、外部へ飛散することがない。更に、サイドブラシ5・5’の動作を検出スイッチ32・33でモニタすることにより車体の前後端を検出し、放水ノズル14からの放水を車体の下方にあるときのみ行なうよう制御するので、余計な場所へ放水して悪影響を及ぼす等の危険がない。」
(オ)図2には、以下の内容が示されている。
「
[図:0001420307000009.jpg]
」
イ 甲1-7記載事項
上記記載事項を総合すると、甲1-7には、次の事項(以下「甲1-7記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「停車される自動車Aを跨ぐように往復走行する、各ブラシを駆動して自動車の主に上面及び側面を洗浄する洗車機本体1を備え、
洗車機本体1とキャリア12は常に一緒に走行し、キャリア12の走行に伴い放水ノズル14より放水して、自動車の底面の洗浄を行ない、車体の上面・側面並びに底面が同時に洗浄でき、しかも下回り洗浄の放水は常に洗車機本体内において成される、
下回り洗浄装置。」
(5)甲2-11
ア 記載事項
甲2-11には、以下の事項が記載されている。
(ア)【0013】
「本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。図1、図2及び図3は本実施形態の洗車機を示す側面図、正面図及び平面図である。洗車機WAは洗車機本体1を備え、洗車機本体1の進入経路上にはリモートパネル7Aが配される。被洗浄車両CAはリモートパネル7Aの面前で停車し、リモートパネル7Aの操作によって洗車の受け付け等を行う。」
(イ)【0014】
「洗車機本体1は前後に開口し、被洗浄車両CAを跨ぐ門型に形成される。洗車機本体1の底面には地面に設けられた左右一対のレール2上に配される車輪3が設けられる。これにより、洗車機本体1はレール2上を走行して被洗浄車両CAに対して前後に相対移動する。」
(ウ)【0015】
「洗車機本体1には被洗浄車両CAをブラッシングする複数の回転するブラシを設けている。ブラシはトップブラシ4、サイドブラシ5及びロッカーブラシ6から成っている。トップブラシ4は被洗浄車両CAの上面を洗浄し、布(織布、編布、不織布等)や樹脂繊維から成るブラシ毛を放射状に固着して形成される。」
(エ)【0016】
「サイドブラシ5は洗車機本体1の後部に左右一対設けられ、被洗浄車両CAの両側面と前後面に摺動して被洗浄車両CAを洗浄する。ロッカーブラシ6は左右一対設けられ、被洗浄車両CAのタイヤを含む側面下面を洗浄する。サイドブラシ5及びロッカーブラシ6もトップブラシ4と同様の回転軸及びブラシ毛を有している。」
(オ)【0020】
「洗車機本体1の前面には車両センサ8、9が設けられている。車両センサ8は光電センサから成って左右一対で設けられ、洗車機本体1に進入する被洗浄車両CAの外面形状、被洗浄車両CAの車両下面高さ、前端及び後端を検知する。車両センサ9は超音波センサから成って洗車機本体1の上部に設けられ、洗車機本体1に進入する被洗浄車両CAの車両形状やフロントガラス、ボンネット50等を検知する。」
(カ)【0025】
「下面洗浄装置30は複数のノズル31を備えて、ノズル31から所定の噴射角度で高圧水などを噴射して被洗浄車両CAの下面を洗浄する。また、洗浄水の噴射角度は洗車スタッフにより適宜設定可能である。」
(キ)【0026】
「上記構成により、ユーザは操作パネル7やリモートパネル7Aにて洗車機本体1の洗車条件を設定し、洗車機本体1の洗浄が開始される。洗車機本体1が前後方向に移動すると車両センサ8、9は被洗浄車両CAの形状や被洗浄車両CAの車両下面高さH1、H2の高さを検知する。車両センサ8、9の検知結果に基づき各種回転ブラシが被洗浄車両CAに摺動して被洗浄車両CAの洗浄が開始される。」
(ク)【0027】
「図4は乗用車系の被洗浄車両CAを洗浄する下面洗浄部30の洗浄動作を示す図である。下面洗浄部30は被洗浄車両CAの車両下面高さH1の時には前端CA1と噴射範囲Mの前端(開始位置)との第1距離L1だけ離れて噴射を開始する。乗用車系の被洗浄車両CAの場合には第1距離L1を例えば約200mm設けている。」
(ケ)【0029】
「その後、下面洗浄部30は被洗浄車両CAの後端CA2と噴射範囲Mの後端との第2距離を設けて噴射を終了する。この時、乗用車系の被洗浄車両CAの場合には第2距離L2を例えば約210mm設けている。なお、第1距離L1と第2距離L2とは同じであってもよい。その後、洗車機本体1は各種ブロアを用いて被洗浄車両CAを乾燥させて洗浄は終了する。」
(コ)【0031】
「このため、第1距離L1(約450mm)、第2距離L2は乗用車系の被洗浄車両CAに比べて大きくしている。このように、被洗浄車両CAの車両下面高さH1、H2が高い時に低いい時よりも被洗浄車両CAの前端CA1と噴射範囲Mの前端(開始位置)との第1距離L1及び被洗浄車両CAの後端CA2と噴射範囲Mの後端(終了位置)との第2距離L2を大きくし、周囲への洗浄水の飛散を抑制する。」
(サ)図2には、以下の内容が示されている。
「
[図:0001420307000010.jpg]
」
イ 甲2-11記載事項
上記記載事項を総合すると、甲2-11には、次の事項(以下「甲2-11記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「被洗浄車両CAの外面形状、被洗浄車両CAの車両下面高さ、前端及び後端を検知する車両センサ8と、
被洗浄車両CAの下面を洗浄する複数のノズル31を備える下面洗浄装置30と、
被洗浄車両CAに対して前後に相対移動し、車両センサ8が設けられ、被洗浄車両CAをブラッシングする複数の回転するブラシを設けている洗車機本体1を備え、
リモートパネル7Aの面前で停車した被洗浄車両CAに対して、洗車機本体1が前後方向に移動すると車両センサ8は被洗浄車両CAの形状や被洗浄車両CAの車両下面高さH1、H2の高さを検知し、車両センサ8の検知結果に基づき各種回転ブラシが被洗浄車両CAに摺動し、下面洗浄装置30は、被洗浄車両CAの車両下面高さH1の時には前端CA1と噴射範囲Mの前端との第1距離L1だけ離れて噴射を開始し、被洗浄車両CAの後端CA2と噴射範囲Mの後端との第2距離を設けて噴射を終了する、
洗車機WA。」
3 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲発明1とを対比する。
ア 甲発明1の「車両が停止する床面」は本件発明1の「停車位置の床面」に相当し、以下同様に、「揺動ノズル[26]」は「ノズル」に、「管路網[30]、[31]、[34]、[36]」は「ユニット」に、「車両」は「自動車」に、「車両が停止するエリア」は「停車位置で停車される自動車のスペース」に、「給水系統」は「給水系統」に、「ブラシ洗浄機[I]」は「処理装置」に、「溝部」は「溝部」に、「高圧水」は「洗浄水」に、「半自動化自動車洗浄設備」は「洗車装置」に、それぞれ相当する。
そして、上記の相当関係を踏まえると以下のことがいえる。
イ 甲発明1の「車長方向に区分けされ、洗車対象の車体の長短に応じてそれぞれ管群の始動を制御することができる4組の管路網[30]、[31]、[34]、[36]」は、本件発明1の「自動車の車種の長さに応じて車長方向に複数に区分けされ」た「ユニット」に相当する。
したがって、甲発明1の「車両が停止する床面に車長方向に区分けされ、洗車対象の車体の長短に応じてそれぞれ管群の始動を制御することができる4組の管路網[30]、[31]、[34]、[36]が構成され、管路網[30]、[31]、[34]、[36]は、」「高圧水により車両の下面に向かって掃射フラッシュ洗浄を実現する複数の揺動ノズル[26]を備え」る構成は、本件発明1の「前記停車位置の床面に自動車の車種の長さに応じて車長方向に複数に区分けされ、自動車の下面に向かうノズルを有するユニット」「を備え」る構成に相当する。
ウ 甲発明1の「車両が停止するエリアの外」「の4つの高圧電磁弁[29]、[32]、[35]、[37]が設けられた箇所で分岐した給水路により分水して各管路網[30]、[31]、[34]、[36]に給水する給水系統を備え」る構成は、本件発明1の「前記停車位置で停車される自動車のスペースの外で分岐した給水路により分水して各前記ユニットに給水する給水系統」「を備え」る構成に相当する。
エ 甲発明1の「車両の左側車体前部、左側車体、左側車体後部、右側車体前部、右側車体、右側車体後部をブラシ洗浄するブラシローラ[2]を有するブラシ洗浄機[I]を備え」る構成と、本件発明1の「車長方向に移動自在に前記車長検出手段と設けられ、自動車をブラッシング洗浄可能な処理装置を備え」る構成とは、「自動車をブラッシング洗浄可能な処理装置を備え」る構成において共通する。
オ 甲発明1の「管路網[30]、[31]、[34]、[36]が、車両が停止する床面で車長方向に延在する溝部に設けられ、溝部内を通る給水路により管路網[30]、[31]、[34]、[36]に給水され」る構成は、本件発明1の「前記ユニットが、前記停車位置の床面で車長方向に延在する溝部に設けられ、前記溝部内を通る前記給水路により給水され」る構成に相当する。
カ 甲発明1の「管路網[30]に分岐する箇所から遠くに給水される管路網[31]、[34]、[36]に通じる給水路が、当該分岐する箇所から近くに給水される管路網[30]を車長方向に通り越して」いる構成は、本件発明1の「前記給水系統において、分岐してから遠くに給水される前記ユニットに通じる前記給水路が、分岐してから近くに給水される前記ユニットを前記車長方向に通り越して」いる構成に相当する。
キ 甲発明1の「洗車対象の車体の長短に応じてそれぞれ管群の始動を制御することができる4組の管路網[30]、[31]、[34]、[36]が構成され、管路網[30]、[31]、[34]、[36]は、」「複数の揺動ノズル[26]を備え、」「管路網[30]、[31]、[34]、[36]が、それぞれ4つの高圧電磁弁[29]、[32]、[35]、[37]により制御される」構成は、洗車対象の車体の長さに応じて管路網[30]、[31]、[34]、[36]を選択して揺動ノズル[26]から洗浄水を噴射させる制御を行う構成といえる。
したがって、甲発明1の「洗車対象の車体の長短に応じてそれぞれ管群の始動を制御することができる4組の管路網[30]、[31]、[34]、[36]が構成され、管路網[30]、[31]、[34]、[36]は、」「複数の揺動ノズル[26]を備え、」「車体がブラシ洗浄機を脱離して洗車台後端のシャーシフラッシュ洗浄台[3]に進入した後、所定位置に位置決めして停止し、その後、管路網[30]、[31]、[34]、[36]が、それぞれ4つの高圧電磁弁[29]、[32]、[35]、[37]により制御される」構成と、本件発明1の「前記停車検出手段で検出された前記停車位置に停車した自動車に対して、前記処理装置の移動と共にブラッシング洗浄を行う際に、前記車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる」構成とは、「前記停車位置に停車した自動車に対して、自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる」構成において共通する。
ク そうすると、両者は、
「前記停車位置の床面に自動車の車種の長さに応じて車長方向に複数に区分けされ、自動車の下面に向かうノズルを有するユニットと、
前記停車位置で停車される自動車のスペースの外で分岐した給水路により分水して各前記ユニットに給水する給水系統と、
自動車をブラッシング洗浄可能な処理装置を備え、
前記ユニットが、前記停車位置の床面で車長方向に延在する溝部に設けられ、前記溝部内を通る前記給水路により給水され、
前記給水系統において、分岐してから遠くに給水される前記ユニットに通じる前記給水路が、分岐してから近くに給水される前記ユニットを前記車長方向に通り越しており、
前記停車位置に停車した自動車に対して、自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる、
洗車装置。」
において一致し、以下の点で相違する。
[相違点1-1]
停車位置に停車した自動車に対して洗浄水を噴射させる構成に関し、本件発明1では、「停車位置に自動車がいることを検出する停車検出手段」「を備え、」「前記停車検出手段で検出された」停車位置に停車した自動車に対して、ノズルから洗浄水を噴射させるのに対して、甲発明1では、停車検出手段について特定されていない点。
[相違点1-2]
自動車の長さに応じてユニットを選択して洗浄水を噴射させる構成に関し、本件発明1では、「前記停車位置に停車した自動車の長さを検出する車長検出手段と、」「車長方向に移動自在に前記車長検出手段と設けられ」た処理装置を備え、「前記処理装置の移動と共にブラッシング洗浄を行う際に、前記車長検出手段で検出した」自動車の長さに応じてユニットを選択してノズルから洗浄水を噴射させるのに対して、甲発明1では、「ブラシ洗浄機[I]」は車長方向に移動することができず、また、車長検出手段が設けられているか特定されておらず、さらに、「車体がブラシ洗浄機を脱離して洗車台後端のシャーシフラッシュ洗浄台[3]に進入した後」、洗車対象の車体の長短に応じてそれぞれ管群の始動を制御するものである点。
(2)判断
事案に鑑み、相違点1-2から検討する。
ア 甲発明2の適用について
a 甲発明2の洗浄装置は、門型洗浄機1(甲発明1の「ブラシ洗浄機[I]」に対応)が車長方向に移動するとともに、車両の下面に液体を噴霧する個別のパイプセクション17~23(同「管路網[30]、[31]、[34]、[36]」に対応)を備えたものとなっており、門型洗浄機1が移動する間、門型洗浄機1がその瞬間にその上に位置している、すなわち、門型洗浄機1と同じ位置にあるパイプセクション17~23のみに高圧ポンプ32から液体を供給することで、車両の下面を洗浄するものである。
b 一方、甲発明1の半自動化自動車洗浄設備は、ブラシ洗浄機[I]が移動しないものであり、また、ブラシ洗浄機[I]とシャーシフラッシュ洗浄台[3]は同じ位置にはない。そうすると、甲発明1の半自動化自動車洗浄設備と甲発明2の洗浄装置とは、ブラシ洗浄機の移動の有無、ブラシ洗浄機とシャーシフラッシュ洗浄台の位置関係など、その前提となる構成が大きく異なるものであるから、甲発明1に甲発明2を適用する動機付けは見いだせない。
c また、甲発明2の洗浄装置は、上記のとおり、門型洗浄機1がその瞬間にその上に位置しているパイプセクション17~23のみに高圧ポンプ32から液体を供給するものであり、その際、「門型洗浄機による影響を直接受けるアクチュエータから、電磁弁29、30、33が作動して」パイプセクション17~23に液体を供給するものであって、門型洗浄機1に車長検出手段を設け、当該車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて、いずれのパイプセクション17~23から液体を供給するかを選択するものではない。そうすると、仮に、甲発明1に甲発明2を適用しても、車長検出手段で検出した自動車の長さに応じてユニットを選択してノズルから洗浄水を噴射させるものにはならない。
d したがって、甲発明1に甲発明2を適用して、相違点1-2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。
イ 甲1-7記載事項の適用について
a 甲1-7記載事項の下回り洗浄装置は、往復走行する洗車機本体1(甲発明1の「ブラシ洗浄機[I]」に対応)と、洗車機本体1と常に一緒に走行するキャリア12を備え、キャリア12から放水して自動車の底面を洗浄するものである。すなわち、甲1-7記載事項の下回り洗浄装置において、キャリア12は、自動車の車種の長さに応じて車長方向に複数に区分けされたものではなく、車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて洗浄水を噴射させるユニットを選択するものでもない。また、甲1-7記載事項の下回り洗浄装置において、洗車機本体1とキャリア12は常に同じ位置にある。
b そうすると、甲発明1の半自動化自動車洗浄設備と甲1-7記載事項の下回り洗浄装置とは、車長方向に複数に区分けされた管路網の有無、ブラシ洗浄機の移動の有無、ブラシ洗浄機とシャーシフラッシュ洗浄台の位置関係など、その前提となる構成が大きく異なるものであるから、甲発明1に甲1-7記載事項を適用する動機付けは見いだせないし、仮に、甲発明1に甲1-7記載事項を適用したとしても、車長検出手段で検出した自動車の長さに応じてユニットを選択してノズルから洗浄水を噴射させるものにはならない。
c したがって、甲発明1に甲1-7記載事項を適用して、相違点1-2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。
ウ 甲2-11記載事項の適用について
a 甲2-11記載事項の洗車機は、前後方向に移動する洗車機本体1(甲発明1の「ブラシ洗浄機[I]」に対応)に車両の前端及び後端を検出する車両センサ8を備えるものであるものの、下面洗浄装置30は、前後方向に移動するものであって、自動車の車種の長さに応じて車長方向に複数に区分けされたものではなく、車長検出手段で検出した自動車の長さに応じてユニットを選択してノズルから洗浄水を噴射させるものでもない点では、甲1-7記載事項と同様である。
b そうすると、甲発明1の半自動化自動車洗浄設備と甲2-11記載事項の洗車機とは、車長方向に複数に区分けされた管路網の有無、ブラシ洗浄機の移動の有無など、その前提となる構成が大きく異なるものであるから、甲発明1に甲2-11記載事項を適用する動機付けはないし、仮に、甲発明1に甲2-11記載事項を適用したとしても、車長検出手段で検出した自動車の長さに応じてユニットを選択してノズルから洗浄水を噴射させるものにはならない。
c したがって、甲発明1に甲2-11記載事項を適用して、相違点1-2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。
エ その他の証拠について
その他の証拠である甲1-2~甲1-6、甲2-3~甲2-10及び甲2-12には、自動車をブラッシング洗浄可能な処理装置と自動車の下面に洗浄水を噴射させるユニットとを備えた洗車装置については記載されておらず、その他、相違点1-2に関係する構成も開示されていない。
オ したがって、甲発明1において、相違点1-2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
よって、本件発明1は、相違点1-1を検討するまでもなく、甲発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定をしたものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
5 本件発明3について
(1)対比
本件発明3と甲発明1とを対比する。
前記3(1)アの相当関係を踏まえると以下のことがいえる。
ア 甲発明1の「管路網[30]、[31]、[34]、[36]の外の4つの高圧電磁弁[29]、[32]、[35]、[37]が設けられた箇所で分岐した給水路により分水して各管路網[30]、[31]、[34]、[36]に給水する給水系統を備え」る構成は、本件発明3の「各前記ユニットの外で分岐した給水路により分水して各前記ユニットに給水する給水系統」「を備え」る構成に相当する。
イ 前記3(1)キの対比を踏まえると、甲発明1の「洗車対象の車体の長短に応じてそれぞれ管群の始動を制御することができる4組の管路網[30]、[31]、[34]、[36]が構成され、管路網[30]、[31]、[34]、[36]は、」「複数の揺動ノズル[26]を備え、」「車体が」「洗車台後端のシャーシフラッシュ洗浄台[3]に進入した後、所定位置に位置決めして停止し、その後、管路網[30]、[31]、[34]、[36]が、それぞれ4つの高圧電磁弁[29]、[32]、[35]、[37]により制御される」構成と、本件発明3の「前記停車検出手段で検出された前記停車位置に停車した自動車に対して、前記車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる」構成とは、「前記停車位置に停車した自動車に対して、自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる」構成において共通する。
ウ さらに、前記3(1)イの対比を踏まえると、両者は、
「前記停車位置の床面に自動車の車種の長さに応じて車長方向に複数に区分けされ、自動車の下面に向かうノズルを有するユニットと、
各前記ユニットの外で分岐した給水路により分水して各前記ユニットに給水する給水系統と、を備え、
前記停車位置に停車した自動車に対して、自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる、
洗車装置。」
において一致し、以下の点で相違する。
[相違点1-3]
停車位置に停車した自動車に対して洗浄水を噴射させる構成に関し、本件発明3では、「停車位置に自動車がいることを検出する停車検出手段」「を備え、」「前記停車検出手段で検出された」停車位置に停車した自動車に対して、ノズルから洗浄水を噴射させるのに対して、甲発明1では、停車検出手段について特定されていない点。
[相違点1-4]
自動車の長さに応じてユニットを選択して洗浄水を噴射させる構成に関し、本件発明3では「前記停車位置に停車した自動車の長さを検出する車長検出手段」「を備え、」「前記車長検出手段で検出した」自動車の長さに応じてユニットを選択してノズルから洗浄水を噴射させるのに対して、甲発明1では、自動車の長さをどのように把握するか不明である点。
[相違点1-5]
自動車の下面に向かうノズルを有するユニットに関し、本件発明3では、「前記停車位置の床面で車長方向に延在する溝部に複数に区分けされた前記ユニットが自動車の車幅方向にも設けられ、前記給水系統において、前記車幅方向における隣接する前記ユニット間の外で分岐された前記給水路が、前記車幅方向における隣接する前記溝部の端部のそれぞれと繋がり、前記床面で前記車幅方向における隣接する前記ユニット間の外へ延在する連通溝内および前記溝部内を通」るのに対して、甲発明1では、管路網[30]、[31]、[34]、[36]が車両の車幅方向に隣接するものではなく、溝部も車幅方向に隣接するものではない点。
(2)判断
事案に鑑み、相違点1-5から検討する。
ア 甲1-5記載事項の適用について
a 甲1-5記載事項の「内側・外側固定下面ノズル28,29」は本件発明3の「ノズル」に対応し、以下同様に、「内側パイプ26と外側パイプ27」は「ユニット」に、「内側凹溝16」は「溝部」に、「後凹溝14」は「連通溝」に、それぞれ対応する。
そうすると、甲1-5記載事項の洗車用ピットは、本件発明3の記載に倣うと、「自動車の下面に向かうノズルを有するユニットと、」「前記ユニットに給水する給水系統と、」「を備え、」「停車位置の床面で車長方向に延在する溝部の前記ユニットが自動車の車幅方向にも設けられ、前記給水系統において、前記車幅方向における隣接する前記ユニット間の外で分岐された前記給水路が、前記車幅方向における隣接する前記溝部の端部のそれぞれと繋がり、前記床面で前記車幅方向における隣接する前記ユニット間の外へ延在する連通溝内および前記溝部内を通」る構成を含むものと認められる。
しかしながら、甲1-5記載事項における「ユニット(内側パイプ26と外側パイプ27)」は、車長方向に複数に区分けされたものではない。
b 一方、甲発明1の洗車装置は、車長方向に複数に区分けされた管路網[30]、[31]、[34]、[36]を備え、洗車対象の車体の長短に応じて車両の下面全体に向かって掃射フラッシュ洗浄を実現するものであり、車長方向に複数のユニットに区分けされたものであって、車幅方向には区分けされてはいない。
c 以上のことから、甲発明1の半自動化自動車洗浄設備と甲1-5記載事項の洗車用ピットとは、車両の下面に向かうノズルを有するユニットの区分けの方向が異なっており、甲発明1に甲1-5記載事項の洗車用ピットの構成を適用する動機は見いだせないし、仮に、甲発明1の管路網[30]、[31]、[34]、[36]に、車長方向に複数に区分けされていない甲1-5記載事項を適用したとしても、甲発明1の目的である車体の長短に応じた洗浄が実現できなくなると認められるから、その適用には阻害要因があるといえる。
d また、甲1-5記載事項は、上記のとおり、車幅方向における隣接するユニット間の外で分岐された給水路が、前記車幅方向における隣接する溝部の端部のそれぞれと繋がる構成を含むと認められる。しかしながら、当該構成は、車幅方向にユニットが区分けされているものであることを前提として、車幅方向における隣接する溝部とし、さらにその溝部の端部と給水路とが繋がる構成としたものといえ、甲発明1のように車長方向にユニットが区分けされているものにおいて、車幅方向における隣接する溝部を備え、さらにその溝部の端部と給水路が繋がる構成とすることを教示するものではない。あえて、甲発明1の管路網[30]、[31]、[34]、[36]を溝に区分するとしても、車長方向に隣接する溝部になり、また、給水路も車長方向に隣接する溝部の端部とつながるものになると認められ、車幅方向における隣接する溝部を備え、さらにその溝部の端部と給水路が繋がる構成とはならない。
e したがって、甲発明1において、甲1-5記載事項を適用して、相違点1-5に係る本件発明3の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。
イ 甲発明2の適用について
a 甲発明2は、停車位置の床面で車長方向に延在する溝部に設けられるものではなく、当然、車幅方向における隣接するユニット間の外で分岐された給水路が、前記車幅方向における隣接する溝部の端部のそれぞれと繋がる構成を開示するものでもない。
また、甲発明2は、車幅方向における隣接するユニット間の「外」で分岐された構成を開示するものでもない。
b そうすると、甲発明1に甲発明2を適用して、相違点1-5に係る本件発明3の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。
ウ その他の証拠について
甲1-2~甲1-4、甲1-6、甲1-7及び甲2-3~甲2-12には、車長方向に延在する溝部に複数に区分けされたユニットが自動車の車幅方向にも設けられる構成については記載されておらず、その他、相違点1-5に関係する構成も開示されていない。
エ したがって、甲発明1において、相違点1-5に係る本件発明3の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
よって、本件発明3は、相違点1-3及び1-4を検討するまでもなく、甲発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
6 本件発明4について
(1)対比
本件発明4と甲発明1とを対比する。
前記3(1)アの相当関係を踏まえると以下のことがいえる。
ア 甲発明1の「給水源を備え、」「管路網[30]、[31]、[34]、[36]の外の4つの高圧電磁弁[29]、[32]、[35]、[37]が設けられた箇所で分岐した給水路により分水して各管路網[30]、[31]、[34]、[36]に給水する給水系統を備え」る構成は、本件発明4の「給水源を備え、各前記ユニットの外で前記給水源から分岐した給水路により分水して各前記ユニットに給水する給水系統」「を備え」る構成に相当する。
イ さらに、前記3(1)イ、エ、オ及びキの対比を踏まえると、両者は、
「前記停車位置の床面に自動車の車種の長さに応じて車長方向に複数に区分けされ、自動車の下面に向かうノズルを有するユニットと、
給水源を備え、各前記ユニットの外で前記給水源から分岐した給水路により分水して各前記ユニットに給水する給水系統と、
自動車をブラッシング洗浄可能な処理装置を備え、
前記停車位置に停車した自動車に対して、自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる、
洗車装置。」
において一致し、以下の点で相違する。
[相違点1-6]
停車位置に停車した自動車に対して洗浄水を噴射させる構成に関し、本件発明4では、「停車位置に自動車がいることを検出する停車検出手段」「を備え、」「前記停車検出手段で検出された」停車位置に停車した自動車に対して、ノズルから洗浄水を噴射させるのに対して、甲発明1では、停車検出手段について特定されていない点。
[相違点1-7]
自動車の長さに応じてユニットを選択して洗浄水を噴射させる構成に関し、本件発明4では、「前記停車位置に停車した自動車の長さを検出する車長検出手段と、」「車長方向に移動自在に前記車長検出手段と設けられ」た処理装置を備え、「前記処理装置の移動と共にブラッシング洗浄を行う際に、前記車長検出手段で検出した」自動車の長さに応じてユニットを選択してノズルから洗浄水を噴射させるのに対して、甲発明1では、「ブラシ洗浄機[I]」は車長方向に移動することができず、また、車長検出手段が設けられているか特定されておらず、さらに、「車体がブラシ洗浄機を脱離して洗車台後端のシャーシフラッシュ洗浄台[3]に進入した後」、洗車対象の車体の長短に応じてそれぞれ管群の始動を制御するものである点。
(2)判断
事案に鑑み、相違点1-7から検討する。
ア 相違点1-7は、前記相違点1-2と同じであるので、前記3(2)で相違点1-2について検討したのと同様に、甲発明1において、相違点1-7に係る本件発明4の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
イ したがって、本件発明4は、相違点1-6について検討するまでもなく、甲発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
7 本件発明5について
(1)対比
本件発明5と甲発明1とを対比する。
前記3(1)アの相当関係を踏まえると以下のことがいえる。
ア 甲発明1の「車両が停止する床面に車長方向に区分けされ」た「4組の管路網[30]、[31]、[34]、[36]が構成され、管路網[30]、[31]、[34]、[36]は、」「高圧水により車両の下面に向かって掃射フラッシュ洗浄を実現する複数の揺動ノズル[26]を備え、」「車両が停止するエリアの外」「の4つの高圧電磁弁[29]、[32]、[35]、[37]が設けられた箇所で分岐した給水路により分水して各管路網[30]、[31]、[34]、[36]に給水する給水系統を備え」る構成は、本件発明5の「前記停車位置の床面に車長方向に複数に区分けされ、自動車の下面に向かうノズルを有し、前記停車位置で停車される自動車のスペースの外から別々に給水路により給水されるユニット」「を備え」る構成に相当する。
イ 前記3(1)キの対比を踏まえると、甲発明1の「洗車対象の車体の長短に応じてそれぞれ管群の始動を制御することができる4組の管路網[30]、[31]、[34]、[36]が構成され、管路網[30]、[31]、[34]、[36]は、」「複数の揺動ノズル[26]を備え、」「車体がブラシ洗浄機を脱離して洗車台後端のシャーシフラッシュ洗浄台[3]に進入した後、所定位置に位置決めして停止し、その後、管路網[30]、[31]、[34]、[36]が、それぞれ4つの高圧電磁弁[29]、[32]、[35]、[37]により制御される」構成と、本件発明5の「前記処理装置の移動と共にブラッシング洗浄を行う際に、前記車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる」構成とは、「自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる」構成において共通する。
ウ さらに、前記3(1)エ及びオの対比を踏まえると、両者は、
「前記停車位置の床面に車長方向に複数に区分けされ、自動車の下面に向かうノズルを有し、前記停車位置で停車される自動車のスペースの外から別々に給水路により給水されるユニットと、
自動車をブラッシング洗浄可能な処理装置を備え、
前記ユニットが、前記停車位置の床面で車長方向に延在する溝部に設けられ、前記溝部内を通る前記給水路により給水され、
自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる、
洗車装置。」
において一致し、以下の点で相違する。
[相違点1-8]
停車位置に自動車がいることの検出に関し、本件発明5では、「停車位置に自動車がいることを検出する停車検出手段」「を備え」るのに対して、甲発明1では、停車検出手段について特定されていない点。
[相違点1-9]
自動車の長さに応じてユニットを選択して洗浄水を噴射させる構成に関し、本件発明5では、「前記停車位置に停車した自動車の長さを検出する車長検出手段と、」「車長方向に移動自在に前記車長検出手段と設けられ」た処理装置を備え、「前記処理装置の移動と共にブラッシング洗浄を行う際に、前記車長検出手段で検出した」自動車の長さに応じてユニットを選択してノズルから洗浄水を噴射させるのに対して、甲発明1では、「ブラシ洗浄機[I]」は車長方向に移動することができず、また、車長検出手段が設けられているか特定されておらず、さらに、「車体がブラシ洗浄機を脱離して洗車台後端のシャーシフラッシュ洗浄台[3]に進入した後」、洗車対象の車体の長短に応じてそれぞれ管群の始動を制御するものである点。
(2)判断
事案に鑑み、相違点1-9から検討する。
ア 相違点1-9は、前記相違点1-2と同じであるので、前記3(2)で相違点1-2について検討したのと同様に、甲発明1において、相違点1-9に係る本件発明5の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
イ したがって、本件発明5は、相違点1-8について検討するまでもなく、甲発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
8 本件発明6について
(1)対比
本件発明6と甲発明1とを対比する。
ア 甲発明1の「カバー」は本件発明6の「カバー」に相当する。
さらに、前記3(1)アの相当関係を踏まえると以下のことがいえる。
イ 甲発明1の「管路網[30]、[31]、[34]、[36]は、車両が停止する床面で車長方向に延在する溝部に沿うカバーで覆われ、当該カバーは、揺動ノズル[26]と対面する位置で開口」する構成と、本件発明6の「前記ユニットが、前記停車位置の床面で車長方向に延在する溝部に沿うプレート状であって前記ノズルと対面する位置で開口するカバーで覆われ」る構成とは、「前記ユニットが、前記停車位置の床面で車長方向に延在する溝部に沿う前記ノズルと対面する位置で開口するカバーで覆われ」る構成において共通する。
ウ さらに、前記3(1)イ~エ及びキの対比を踏まえると、両者は、
「前記停車位置の床面に自動車の車種の長さに応じて車長方向に複数に区分けされ、自動車の下面に向かうノズルを有するユニットと、
前記停車位置で停車される自動車のスペースの外で分岐した給水路により分水して各前記ユニットに給水する給水系統と、
自動車をブラッシング洗浄可能な処理装置を備え、
前記ユニットが、前記停車位置の床面で車長方向に延在する溝部に沿う前記ノズルと対面する位置で開口するカバーで覆われ、
前記停車位置に停車した自動車に対して、自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる、
洗車装置。」
において一致し、以下の点で相違する。
[相違点1-10]
停車位置に停車した自動車に対して洗浄水を噴射させる構成に関し、本件発明6では、「停車位置に自動車がいることを検出する停車検出手段」「を備え、」「前記停車検出手段で検出された」停車位置に停車した自動車に対して、ノズルから洗浄水を噴射させるのに対して、甲発明1では、停車検出手段について特定されていない点。
[相違点1-11]
自動車の長さに応じてユニットを選択して洗浄水を噴射させる構成に関し、本件発明6では、「前記停車位置に停車した自動車の長さを検出する車長検出手段と、」「車長方向に移動自在に前記車長検出手段と設けられ」た処理装置を備え、「前記処理装置の移動と共にブラッシング洗浄を行う際に、前記車長検出手段で検出した」自動車の長さに応じてユニットを選択してノズルから洗浄水を噴射させるのに対して、甲発明1では、「ブラシ洗浄機[I]」は車長方向に移動することができず、また、車長検出手段が設けられているか特定されておらず、さらに、「車体がブラシ洗浄機を脱離して洗車台後端のシャーシフラッシュ洗浄台[3]に進入した後」、洗車対象の車体の長短に応じてそれぞれ管群の始動を制御するものである点。
[相違点1-12]
ユニットを覆うカバーに関し、本件発明6では、「プレート状」であるのに対して、甲発明1では、カバーがあることまでは看取できるものの、プレート状であるか不明な点。
(2)判断
事案に鑑み、相違点1-11から検討する。
ア 相違点1-11は、前記相違点1-2と同じであるので、前記3(2)で相違点1-2について検討したのと同様に、甲発明1において、相違点1-11に係る本件発明6の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
イ したがって、本件発明6は、相違点1-10及び1-12について検討するまでもなく、甲発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
9 本件発明7について
(1)対比
本件発明7と甲発明1とを対比する。
ア 甲発明1の「ブラシローラ[2]」は本件発明7の「ブラシ」に相当する。
さらに、前記3(1)アの相当関係を踏まえると以下のことがいえる。
イ 甲発明1の「車両の左側車体前部、左側車体、左側車体後部、右側車体前部、右側車体、右側車体後部をブラシ洗浄するブラシローラ[2]を有するブラシ洗浄機[I]を備え」る構成と、本件発明7の「車長方向に移動自在に前記車長検出手段と設けられ、自動車の側面をブラッシング洗浄可能なブラシを有する処理装置を備え」る構成とは、「自動車の側面をブラッシング洗浄可能なブラシを有する処理装置を備え」る構成において共通する。
ウ 前記3(1)キの対比を踏まえると、甲発明1の「洗車対象の車体の長短に応じてそれぞれ管群の始動を制御することができる4組の管路網[30]、[31]、[34]、[36]が構成され、管路網[30]、[31]、[34]、[36]は、」「複数の揺動ノズル[26]を備え、」「車体がブラシ洗浄機を脱離して洗車台後端のシャーシフラッシュ洗浄台[3]に進入した後、所定位置に位置決めして停止し、その後、管路網[30]、[31]、[34]、[36]が、それぞれ4つの高圧電磁弁[29]、[32]、[35]、[37]により制御される」構成と、本件発明7の「前記停車検出手段で検出された前記停車位置に停車した自動車に対して、前記処理装置の移動と共に前記ブラシで自動車の側面のブラッシング洗浄を行う際に、前記車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる」構成とは、「前記停車位置に停車した自動車に対して、自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる」構成において共通する。
エ さらに、前記3(1)イ及び前記5(1)アの対比を踏まえると、両者は、
「前記停車位置の床面に自動車の車種の長さに応じて車長方向に複数に区分けされ、自動車の下面に向かうノズルを有するユニットと、
各前記ユニットの外で分岐した給水路により分水して各前記ユニットに給水する給水系統と、
自動車の側面をブラッシング洗浄可能なブラシを有する処理装置を備え、
前記停車位置に停車した自動車に対して、自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる、
洗車装置。」
において一致し、以下の点で相違する。
[相違点1-13]
停車位置に停車した自動車に対して洗浄水を噴射させる構成に関し、本件発明7では、「停車位置に自動車がいることを検出する停車検出手段」「を備え、」「前記停車検出手段で検出された」停車位置に停車した自動車に対して、ノズルから洗浄水を噴射させるのに対して、甲発明1では、停車検出手段について特定されていない点。
[相違点1-14]
自動車の下面に向かうノズルを有するユニットに関し、本件発明7では、「前記停車位置の床面で車長方向に延在する溝部に複数に区分けされた前記ユニットが自動車の車幅方向にも設けられ、前記給水系統において、前記車幅方向における隣接する前記ユニット間の外で分岐された前記給水路が、前記車幅方向における隣接する前記溝部の端部のそれぞれと繋がり、前記床面で前記車幅方向における隣接する前記ユニット間の外へ延在する連通溝内および前記溝部内を通」るのに対して、甲発明1では、管路網[30]、[31]、[34]、[36]が車両の車幅方向に隣接するものではなく、溝部も車幅方向に隣接するものではない点。
[相違点1-15]
自動車の長さに応じてユニットを選択して洗浄水を噴射させる構成に関し、本件発明7では、「前記停車位置に停車した自動車の長さを検出する車長検出手段と、」「車長方向に移動自在に前記車長検出手段と設けられ」た処理装置を備え、「前記処理装置の移動と共に」ブラシで自動車の側面の「ブラッシング洗浄を行う際に、前記車長検出手段で検出した」自動車の長さに応じてユニットを選択してノズルから洗浄水を噴射させるのに対して、甲発明1では、「ブラシ洗浄機[I]」は車長方向に移動することができず、また、車長検出手段が設けられているか特定されておらず、さらに、「車体がブラシ洗浄機を脱離して洗車台後端のシャーシフラッシュ洗浄台[3]に進入した後」、洗車対象の車体の長短に応じてそれぞれ管群の始動を制御するものである点。
(2)判断
事案に鑑み、相違点1-14及び相違点1-15から検討する。
ア 相違点1-14は、前記相違点1-5と同じであるので、前記5(2)で相違点1-5について検討したのと同様に、甲発明1において、相違点1-14に係る本件発明7の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
イ また、相違点1-15は、前記相違点1-2と同じであるので、前記3(2)で相違点1-2について検討したのと同様に、甲発明1において、相違点1-15に係る本件発明7の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
ウ したがって、本件発明7は、相違点1-13について検討するまでもなく、甲発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
10 本件発明8及び9について
本件発明8及び9は、本件発明1、3、4、5、6又は7の発明特定事項を全て含み、さらに限定をしたものであるから、本件発明1、3、4、5、6又は7と同様の理由により、甲発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
11 小括
以上のとおり、本件発明1~9は、甲発明1に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものということはできない。
第6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立人の主張する特許異議申立理由
(1)申立人1の主張する特許異議申立理由の概要
申立人1は、特許異議申立書において、取消理由通知に記載した取消理由に係る「甲1-1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである」との理由の他に、下記理由1を挙げている。
また、申立人1は、意見書において、特許異議申立書で挙げた理由の他に、本件訂正後の請求項に対して下記理由2を挙げている。
ア 理由1(新規事項)
本件特許に係る特許出願について行われた5回の手続補正は、本件特許の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「当初明細書等」という。)に記載されていない新規事項を追加する補正であるため、本件訂正前の請求項1~9に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである。
また、その結果、本件訂正前の請求項1~9は、特許法第44条に規定された分割要件に違反しており、出願日が原出願の出願日に遡及しないため、本件特許の原出願の公開公報である甲1-9により新規性がなく、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものである。
イ 理由2(明確性要件)
本件訂正後の請求項1、4、5及び6に係る発明は明確ではなく、特許法第36条第6項第2号に違反している。
(2)申立人2の主張する特許異議申立理由の概要
申立人2は、特許異議申立書において、下記理由3~5を挙げている。
ア 理由3(進歩性)
本件訂正前の請求項1~9に係る発明は、甲2-1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項1~9に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
イ 理由4(サポート要件)
(ア)理由4-1
本件特許の出願時の技術常識に照らしても、本件訂正前の請求項1、3~6の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないので、本件訂正前の請求項1、3~6及びこれらの請求項を直接的又は間接的に引用する請求項2、7~9に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものである。
(イ)理由4-2
本件訂正前の請求項5には、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、本件訂正前の請求項5及び請求項5を直接的又は間接的に引用する請求項7~9に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものである。
ウ 理由5(新規事項)
(ア)理由5-1
本件訂正前の請求項1、3~6について行われた手続補正は、当初明細書等に記載されていない新規事項を追加する補正であるため、本件訂正前の請求項1、3~6及びこれらの請求項を直接的又は間接的に引用する請求項2、7~9に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである。
(イ)理由5-2
本件明細書について行われた課題の補正は、当初明細書等に記載されていない新たな技術的事項を導入するものであるから、本件訂正前の請求項1~9に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである。
また、その結果、本件訂正前の請求項1~9は、特許法第44条に規定された分割要件に違反しており、出願日が原出願の出願日に遡及しない結果、本件特許の親出願の公開公報により新規性がなく、特許法第29条第1項第3号の規定に違反している。
2 理由1(新規事項)について
(1)申立人の主張
申立人1は特許異議申立書において、以下の旨を主張する。
本件訂正前の請求項1と当初明細書等の請求項1とを比較すると、構成要件ア「自動車の車長方向に移動自在に設けられて自動車の下面以外の車体面を洗浄する上部洗浄装置を備える」こと及び構成要件イ「車長検出手段が上部洗浄装置に備えられている」ことが削除されているが、当初明細書等には、上部洗浄装置を備えないことを想定した記載や車長検出手段が上部洗浄装置以外に設けられることを想定した記載は一切存在せず、それを示唆するような記載も存在しない。
したがって、上記構成要件を削除する補正は、当初明細書等に記載された全ての記載を総合することにより導かれる範囲を超えて特許請求の範囲を拡張するものである。
また、本件特許の独立項である本件訂正前の請求項3、4及び6についても、本件訂正前の請求項1と同様に、上記構成要件ア及びイを削除する補正が行われている。
さらに、本件訂正前の請求項5と当初明細書等の請求項1とを比較すると、構成要件ウ「車長検出手段で検出する自動車の長さに応じて下部洗浄装置の洗浄ユニットを限定的に作動する制御手段を備える」ことも削除されているが、当初明細書等には、自動車の長さに関係なく一律に噴射する構成等を想定した記載は一切存在せず、それを示唆するような記載も存在しない。
したがって、上記構成要件を削除する補正も、当初明細書等に記載された全ての記載を総合することにより導かれる範囲を超えて特許請求の範囲を拡張するものである。
(2)当審の判断
本件明細書の段落【0033】の「自動車の長さに応じて下部洗浄装置4の噴水管24を制限することで、外部への飛散を防ぐことができ、同時に節水が図られる」との記載や、段落【0035】の「門型洗車機に関して言えば、ブラシ装置を備えず車体を高圧スプレー等で洗浄するタイプの洗車機でも良いし、ドライブスルー方式ではなく、サービスマンが洗車を行うタイプの洗車機で良い。」との記載を踏まえると、本件特許に係る発明においては、構成要件ウの「車長検出手段で検出する自動車の長さに応じて下部洗浄装置の洗浄ユニットを限定的に作動する制御手段を備える」ことは必須である一方、上部洗浄装置については任意付加的な構成と認められるので、構成要件ア及びイが含まないことが新たな技術的事項を導入するものとは認められない。
そして、本件訂正後の独立項である本件発明1、3~7は、いずれも、構成要件ウに対応する、「自動車の長さを検出する車長検出手段と、」「前記停車位置の床面に」「車長方向に複数に区分けされ、自動車の下面に向かうノズルを有」する「ユニットと、」「を備え」、「前記車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる」構成を含むものである。
よって、申立人1の当該主張は採用できない。
3 理由2(明確性要件)について
(1)申立人の主張
申立人1は意見書において、以下の旨を主張する。
本件発明1、4、5及び6は、「前記処理装置の移動と共にブラッシング洗浄を行う際に」との特定事項における「ブラシング洗浄」に「前記」が付されていないため、「ブラッシング洗浄」が「前記処理装置」以外によって行われるものまで含むこととなっており、発明が明確でない。
(2)当審の判断
本件発明1、4、5及び6には、処理装置について、「自動車をブラッシング洗浄可能な処理装置」と特定されていることに鑑みると、「前記処理装置の移動と共にブラッシング洗浄を行う際に、前記車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる」構成における、「処理装置の移動と共に」行われる「ブラッシング洗浄」は、当然、「ブラッシング洗浄可能な処理装置」によって行われるものと認められる。
よって、申立人1の当該主張は採用できない。
4 理由3(進歩性)について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲発明2とを対比する。
(ア)甲発明2の「パイプセクション17~23」は本件発明1の「ユニット」に相当し、以下同様に、「車両」は「自動車」に、「車両が停止するエリア」は「停車位置で停車される自動車のスペース」に、「給水系統」は「給水系統」に、「門型洗浄機1」は「処理装置」に、「洗浄装置床面」は「停車位置の床面」に、「液体」は「洗浄水」に、「洗浄装置」は「洗車装置」に、それぞれ相当する。
そして、上記の相当関係を踏まえると以下のことがいえる。
(イ)甲発明2の「長さ方向に沿って互いに遮断された個別のパイプセクション17~23」は、「車両の下面の洗浄を、可能な限り洗浄対象の車両の実際の長さに限定することを確実に行う」ためのものであるので、「自動車の車種の長さに応じて車長方向に複数に区分けされ」たものと認められる。
また、甲発明2の「車両の下面に液体を噴霧する」「パイプセクション17~23」は、「自動車の下面に向かうノズルを有する」ものと認められる。
したがって、甲発明2の「長さ方向に沿って互いに遮断された個別のパイプセクション17~23に細分化され、車両の下面に液体を噴霧するパイプシステム14」「を備え、」「パイプシステム14が、洗浄装置床面に固定されたフレーム構造15に取り付けられ、」「車両の下面の洗浄を、可能な限り洗浄対象の車両の実際の長さに限定することを確実に行う」構成は、本件発明1の「前記停車位置の床面に自動車の車種の長さに応じて車長方向に複数に区分けされ、自動車の下面に向かうノズルを有するユニット」「を備え」る構成に相当する。
(ウ)甲発明2の「車両が停止するエリアの内側」「の電磁弁が設けられた箇所で液体供給管31から分岐した供給管により分水して各パイプセクション17~23に供給する給水系統」「を備え」る構成と、本件発明1の「前記停車位置で停車される自動車のスペースの外で分岐した給水路により分水して各前記ユニットに給水する給水系統」「を備え」る構成とは、「分岐した給水路により分水して各前記ユニットに給水する給水系統」「を備え」る構成において共通する。
(エ)甲発明2の「門型洗浄機1」は、「2本のレール10、11の経路に沿って往復運動するように取り付けられ」るものであり、参考図5(前記第5の2(2)イ(ア)を参照)を踏まえると、「車長方向に」往復運動するものと認められる。
したがって、甲発明2の「2本のレール10、11の経路に沿って往復運動するように取り付けられ、車両の外形に自動的に追従するサイドブラシ5、6が取り付けられた門型洗浄機1を備え」る構成と、本件発明1の「車長方向に移動自在に前記車長検出手段と設けられ、自動車をブラッシング洗浄可能な処理装置を備え」る構成とは、「車長方向に移動自在に、自動車をブラッシング洗浄可能な処理装置を備え」る構成において共通する。
(オ)甲発明2の「分岐してから遠くに給水されるパイプセクション18~23に通じる液体供給管31が、分岐してから近くに給水されるパイプセクション17を車長方向に通り越して」いる構成は、本件発明1の「前記給水系統において、分岐してから遠くに給水される前記ユニットに通じる前記給水路が、分岐してから近くに給水される前記ユニットを前記車長方向に通り越して」いる構成に相当する。
(カ)甲発明2の「長さ方向に沿って互いに遮断された個別のパイプセクション17~23に細分化され、車両の下面に液体を噴霧するパイプシステム14」「を備え、」「門型洗浄機による影響を直接受けるアクチュエータから、電磁弁29、30、33が作動して、門型洗浄機1がその瞬間にその上に位置しているパイプセクション17~23のみに、高圧ポンプ32から液体が供給され」る構成は、上記(イ)を踏まえると、「パイプセクション17~23を選択してノズルから洗浄水を噴射させる」構成であるといえる。
したがって、甲発明2の「長さ方向に沿って互いに遮断された個別のパイプセクション17~23に細分化され、車両の下面に液体を噴霧するパイプシステム14」「を備え、」「門型洗浄機1の移動の開始位置に最も近いレール経路端部に置かれた車両に対して、門型洗浄機1が移動し、サイドブラシ5、6が車両の形状を追従し、門型洗浄機1が移動する間、門型洗浄機による影響を直接受けるアクチュエータから、電磁弁29、30、33が作動して、門型洗浄機1がその瞬間にその上に位置しているパイプセクション17~23のみに、高圧ポンプ32から液体が供給され」る構成と、本件発明1の「前記停車検出手段で検出された前記停車位置に停車した自動車に対して、前記処理装置の移動と共にブラッシング洗浄を行う際に、前記車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる」構成とは、「前記停車位置に停車した自動車に対して、前記処理装置の移動と共にブラッシング洗浄を行う際に、前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる」構成において共通する。
(キ)そうすると、両者は、
「前記停車位置の床面に自動車の車種の長さに応じて車長方向に複数に区分けされ、自動車の下面に向かうノズルを有するユニットと、
分岐した給水路により分水して各前記ユニットに給水する給水系統と、
車長方向に移動自在に、自動車をブラッシング洗浄可能な処理装置を備え、
前記給水系統において、分岐してから遠くに給水される前記ユニットに通じる前記給水路が、分岐してから近くに給水される前記ユニットを前記車長方向に通り越しており、
前記停車位置に停車した自動車に対して、前記処理装置の移動と共にブラッシング洗浄を行う際に、前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる、
洗車装置。」
において一致し、以下の点で相違する。
[相違点2-1]
停車位置に停車した自動車に対して洗浄水を噴射させる構成に関し、本件発明1では、「停車位置に自動車がいることを検出する停車検出手段」「を備え、」「前記停車検出手段で検出された」停車位置に停車した自動車に対して、ノズルから洗浄水を噴射させるのに対して、甲発明2では、停車検出手段について特定されていない点。
[相違点2-2]
ユニットに給水する給水系統の構成に関し、本件発明1では、「停車位置で停車される自動車のスペースの外で」分岐した給水路により分水して各ユニットに給水する給水系統を備え、「前記ユニットが、前記停車位置の床面で車長方向に延在する溝部に設けられ、前記溝部内を通る前記給水路により給水され」るのに対して、甲発明2では、「車両が停止するエリアの内側」で液体供給管31から分岐した供給管により分水して各パイプセクション17~23に供給する給水系統を備え、「パイプシステム14が、洗浄装置床面に固定されたフレーム構造15に取り付けられ」る点。
[相違点2-3]
自動車の長さに応じてユニットを選択して洗浄水を噴射させる構成に関し、本件発明1では、「前記停車位置に停車した自動車の長さを検出する車長検出手段と、」「前記車長検出手段と設けられ」た処理装置を備え、処理装置の移動と共にブラッシング洗浄を行う際に、「前記車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて」ユニットを選択してノズルから洗浄水を噴射させるのに対して、甲発明2では、「門型洗浄機1」は車長検出手段と設けられておらず、「門型洗浄機1がその瞬間にその上に位置しているパイプセクション17~23のみに、高圧ポンプ32から液体が供給され」る点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点2-2及び相違点2-3から検討する。
(ア)相違点2-2について
a 甲発明1の適用について
(a)甲発明2では、パイプセクション17~23に細分化されたパイプシステム14が取り付けられるフレーム構造15は、洗浄装置床面に固定されており、これによって、「通常は再循環されて装置に再利用される使用済みの水のための排出口を除いて、洗浄装置施設の下に深い穴を掘る必要がない」(第5の2(2)ア(ウ)を参照)ものとしている。また、甲発明2では、門型洗浄機1が移動することが必要であり、洗浄装置床面には門型洗浄機1の移動のための2本のレール10、11も設けられている。
そうすると、甲発明2において、パイプシステム14が取付けられるフレーム構造15は、2本のレール10、11の内側、すなわち、車両が停止するエリアの内側に位置させなければならないという制約があるものと認められる。
(b)一方、甲発明1は車両が停止するエリアの外側で給水系統が分岐するものであるが、甲発明2に上記制約があることに鑑みれば、甲発明2に甲発明1を適用する動機付けはないというべきである。
また、仮に、甲発明2に甲発明1を適用するとしても、上記制約を考慮すれば、車両が停止するエリアの内側に、分岐部分を含めた給水系統の全てを設けることになるものと認められ、停車位置で停車される自動車のスペースの外で分岐した給水路を備えるという相違点2-2に係る本件発明1の構成になるものではない。
(c)さらに進んで検討するに、甲発明1では、給水系統が溝部に設けられているが、甲発明2に甲発明1を適用した際に、レール10、11をまたぐようにして溝を設けて車両の停止するエリアの外で吸水系統が分岐するようにすることも当業者が容易に想到し得たこととは認められない。なぜなら、甲発明2のレール10、11には門型洗浄機1の重量を支えることが求められるところ、レール10、11の下部を溝とすることは阻害要因があるといえるからである。
b その他の証拠について
その他の証拠である甲1-2~甲1-7及び甲2-3~甲2-12には、車長方向に複数に区分けされたユニットが停車位置で停車される自動車のスペースの外で分岐した給水路により分水する構成については記載されておらず、その他、相違点2-2に関係する構成も開示されていない。
c したがって、甲発明2において、相違点2-2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(イ)相違点2-3について
a 甲2-11記載事項の適用について
(a)第5の3(2)ウに説示したとおり、甲2-11記載事項は、前後方向に移動する洗車機本体1に車両の前端及び後端を検出する車両センサ8を備えるものであるものの、下面洗浄装置30は、前後方向に移動するものであって、下部洗浄装置30の移動位置を制御することで、「被洗浄車両の車両下面高さが高い時に低い時よりも被洗浄車両の前端と噴射範囲の前端との第1距離及び被洗浄車両の後端と噴射範囲の後端との第2距離を大きくし、周囲への洗浄水の飛散を抑制する」(第5の2(5)ア(コ)を参照)ものとしている。
(b)一方、甲発明2は、長さ方向に沿って互いに遮断された個別のパイプセクション17~23を備え、門型洗浄機による影響を直接受けるアクチュエータから、電磁弁29、30、33が作動して、門型洗浄機1がその瞬間にその上に位置しているパイプセクション17~23のみに、高圧ポンプ32から液体が供給される構成とすることで、パイプセクション17~23の選択に車長検出手段を使用することなく、門型洗浄機1がその瞬間にその上に位置しているパイプセクション17~23を選択して洗浄水を噴射させるものといえる。
(c)そうすると、長さ方向に沿って互いに遮断された個別のユニットを備える甲発明2の洗浄装置と、移動するユニットを備えることを前提とした甲2-11記載事項の洗車機とは、自動車の下面に向かうノズルを有するユニットの構成及び機能が大きく異なるものであるから、甲発明2に甲2-11記載事項を適用する動機付けはないし、仮に、甲発明2に甲2-11記載事項を適用したとしても、車長検出手段で検出した自動車の長さに応じてユニットを選択してノズルから洗浄水を噴射させるものにはならない。
また、そもそも、ユニットを選択するための車長検出手段を必要としない甲発明2において、ユニットを制御するための車長検出手段を備える構成とする動機付けもないといえる。
b その他の証拠について
甲1-1(甲2-2)は、車体の長短に応じて車長方向に複数に区分けされた管路網[30]、[31]、[34]、[36]を制御するものであるが、自動車の長さを車長検出手段で検出することは記載されておらず、その他の証拠である甲1-2~甲1-7並びに甲2-3~甲2-10及び甲2-12にも、車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて自動車の下面に向かうノズルを有するユニットを制御する構成については記載されていないし、その他、相違点2-3に関係する構成も開示されていない。
c したがって、甲発明2において、相違点2-3に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(ウ)よって、本件発明1は、相違点2-1を検討するまでもなく、甲発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定をしたものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明3について
ア 対比
本件発明3と甲発明2とを対比する。
前記(1)ア(ア)の相当関係を踏まえると以下のことがいえる。
(ア)甲発明2の「各パイプセクション17~23の内側の電磁弁が設けられた箇所で液体供給管31から分岐した供給管により分水して各パイプセクション17~23に供給する給水系統」「を備え」る構成と、本件発明3の「各前記ユニットの外で分岐した給水路により分水して各前記ユニットに給水する給水系統」「を備え」る構成とは、「分岐した給水路により分水して各前記ユニットに給水する給水系統」「を備え」る構成において共通する。
(イ)甲発明2において、「パイプセクション18~23の液体を噴霧する部分」も「長さ方向に沿って互いに遮断された」ものであり、「車両の下面に液体を噴霧する」ものであるので、本件発明3の「ユニット」に相当するものといえる。
したがって、甲発明2の「長さ方向に沿って互いに遮断された個別のパイプセクション17~23に細分化され、」「パイプセクション18~23の液体を噴霧する部分が車両の車幅方向にも設けられ」る構成と、本件発明3の「前記停車位置の床面で車長方向に延在する溝部に複数に区分けされた前記ユニットが自動車の車幅方向にも設けられ」る構成とは、「前記停車位置の床面で車長方向に延在する複数に区分けされた前記ユニットが自動車の車幅方向にも設けられ」る構成において共通する。
(ウ)前記(1)ア(カ)の対比を踏まえると、甲発明2の「長さ方向に沿って互いに遮断された個別のパイプセクション17~23に細分化され、車両の下面に液体を噴霧するパイプシステム14」「を備え、」「門型洗浄機1の移動の開始位置に最も近いレール経路端部に置かれた車両に対して、門型洗浄機1が移動し、」「門型洗浄機1が移動する間、門型洗浄機による影響を直接受けるアクチュエータから、電磁弁29、30、33が作動して、門型洗浄機1がその瞬間にその上に位置しているパイプセクション17~23のみに、高圧ポンプ32から液体が供給され」る構成と、本件発明3の「前記停車検出手段で検出された前記停車位置に停車した自動車に対して、前記車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる」構成とは、「前記停車位置に停車した自動車に対して、前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる」構成において共通する。
(エ)さらに、前記(1)ア(イ)の対比を踏まえると、両者は、
「前記停車位置の床面に自動車の車種の長さに応じて車長方向に複数に区分けされ、自動車の下面に向かうノズルを有するユニットと、
分岐した給水路により分水して各前記ユニットに給水する給水系統と、を備え、
前記停車位置の床面で車長方向に延在する複数に区分けされた前記ユニットが自動車の車幅方向にも設けられ、
前記停車位置に停車した自動車に対して、前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる、
洗車装置。」
において一致し、以下の点で相違する。
[相違点2-4]
停車位置に停車した自動車に対して洗浄水を噴射させる構成に関し、本件発明3では、「停車位置に自動車がいることを検出する停車検出手段」「を備え、」「前記停車検出手段で検出された」停車位置に停車した自動車に対して、ノズルから洗浄水を噴射させるのに対して、甲発明2では、停車検出手段について特定されていない点。
[相違点2-5]
ユニットに給水する給水系統の構成に関し、本件発明3では、「各前記ユニットの外で」分岐した給水路により分水して各ユニットに給水する給水系統を備え、停車位置の床面で車長方向に延在する「溝部に」複数に区分けされたユニットが自動車の車幅方向にも設けられ、「前記給水系統において、前記車幅方向における隣接する前記ユニット間の外で分岐された前記給水路が、前記車幅方向における隣接する前記溝部の端部のそれぞれと繋がり、前記床面で前記車幅方向における隣接する前記ユニット間の外へ延在する連通溝内および前記溝部内を通」るのに対して、甲発明2では、「各パイプセクション17~23の内側」で液体供給管31から分岐した供給管により分水して各パイプセクション17~23に供給する給水系統を備え、「パイプシステム14が、洗浄装置床面に固定されたフレーム構造15に取り付けられ」る点。
[相違点2-6]
自動車の長さに応じてユニットを選択して洗浄水を噴射させる構成に関し、本件発明3では、「前記停車位置に停車した自動車の長さを検出する車長検出手段」「を備え、」「前記車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて」ユニットを選択してノズルから洗浄水を噴射させるのに対して、甲発明2では、「門型洗浄機1がその瞬間にその上に位置しているパイプセクション17~23のみに、高圧ポンプ32から液体が供給され」る点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点2-5及び相違点2-6から検討する。
(ア)相違点2-5について
a 甲1-5記載事項の適用について
(a)第5の5(2)アに説示したとおり、甲1-5記載事項の洗車用ピットは、本件発明3の記載に倣うと、「自動車の下面に向かうノズルを有するユニットと、」「前記ユニットに給水する給水系統と、」「を備え、」「前記停車位置の床面で車長方向に延在する溝部の前記ユニットが自動車の車幅方向にも設けられ、前記給水系統において、前記車幅方向における隣接する前記ユニット間の外で分岐された前記給水路が、前記車幅方向における隣接する前記溝部の端部のそれぞれと繋がり、前記床面で前記車幅方向における隣接する前記ユニット間の外へ延在する連通溝内および前記溝部内を通」る構成を含むものと認められる。
しかしながら、甲1-5記載事項における「ユニット(内側パイプ26と外側パイプ27)」は、車長方向に複数に区分けされたものではない。
(b)一方、甲発明2では、パイプセクション17~23に細分化されたパイプシステム14が取り付けられるフレーム構造15は、洗浄装置床面に固定されており、これによって、「通常は再循環されて装置に再利用される使用済みの水のための排出口を除いて、洗浄装置施設の下に深い穴を掘る必要がない」(第5の2(2)ア(ウ)を参照)ものとしている。また、甲発明2では、門型洗浄機1が移動することが必要であり、洗浄装置床面には門型洗浄機1の移動のための2本のレール10、11も設けられている。
(c)そうすると、甲発明2の洗浄装置と甲1-5記載事項の洗車用ピットとは、パイプセクションを備える構成の前提が異なっており、甲発明2に甲1-5記載事項の洗車用ピットの構成を適用する動機は見いだせないし、甲発明2において、パイプシステム14が取付けられるフレーム構造15は、2本のレール10、11の内側に位置させなければならないという制約があり、そのための一態様として、各パイプセクション17~23の内側の電磁弁が設けられた箇所で給水路を分岐させていることに鑑みると、仮に、甲発明2に甲1-5記載事項を適用するとしても、給水路は車幅方向における隣接するユニット間の内側で分岐されるものとなり、車幅方向における隣接するユニット間の外で分岐された給水路が、車幅方向における隣接する溝部の端部のそれぞれと繋がり、床面で車幅方向における隣接するユニット間の外へ延在する連通溝内および前記溝部内を通る構成とはならない。
(d)したがって、甲発明2において、甲1-5記載事項を適用して、相違点2-5に係る本件発明3の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。
b 甲発明1の適用について
(a)甲発明1は、車長方向に延在する溝部に複数に区分けされたユニットが自動車の車幅方向にも設けられるものではなく、当然、車幅方向における隣接するユニット間の外で分岐された給水路が、車幅方向における隣接する溝部の端部のそれぞれと繋がり、床面で車幅方向における隣接するユニット間の外へ延在する連通溝内および前記溝部内を通る構成を開示するものでもない。
(b)そうすると、甲発明2に甲発明1を適用して、相違点2-5に係る本件発明3の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。
c その他の証拠について
その他の証拠である甲1-2~甲1-4及び甲1-6~甲1-7並びに甲2-3~甲2-12には、車長方向に延在する溝部に複数に区分けされたユニットが自動車の車幅方向にも設けられ、車幅方向における隣接するユニット間の外で分岐された給水路が、車幅方向における隣接する溝部の端部のそれぞれと繋がる構成については記載されておらず、その他、相違点2-5に関係する構成も開示されていない。
d したがって、甲発明2において、相違点2-5に係る本件発明3の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(イ)相違点2-6について
相違点2-6は、前記相違点2-3と実質的に同じであるので、前記(1)イ(イ)で相違点2-3について検討したのと同様に、甲発明2において、相違点2-6に係る本件発明3の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(ウ)したがって、本件発明3は、相違点2-4について検討するまでもなく、甲発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明4について
ア 対比
本件発明4と甲発明2とを対比する。
(ア)甲発明2の「高圧ポンプ32」は本件発明4の「給水源」に相当する。
さらに、前記(1)ア(ア)の相当関係を踏まえると以下のことがいえる。
(イ)甲発明2の「高圧ポンプ32を備え、」「各パイプセクション17~23の内側の電磁弁が設けられた箇所で液体供給管31から分岐した供給管により分水して各パイプセクション17~23に供給する給水系統」「を備え」る構成と、本件発明4の「給水源を備え、各前記ユニットの外で前記給水源から分岐した給水路により分水して各前記ユニットに給水する給水系統」「を備え」る構成とは、「給水源を備え、前記給水源から分岐した給水路により分水して各前記ユニットに給水する給水系統」「を備え」る構成において共通する。
(ウ)さらに、前記(1)ア(イ)、(エ)及び(カ)の対比を踏まえると、両者は、
「前記停車位置の床面に自動車の車種の長さに応じて車長方向に複数に区分けされ、自動車の下面に向かうノズルを有するユニットと、
給水源を備え、前記給水源から分岐した給水路により分水して各前記ユニットに給水する給水系統と、
車長方向に移動自在に、自動車をブラッシング洗浄可能な処理装置を備え、
前記停車位置に停車した自動車に対して、前記処理装置の移動と共にブラッシング洗浄を行う際に、前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる、
洗車装置。」
において一致し、以下の点で相違する。
[相違点2-7]
停車位置に停車した自動車に対して洗浄水を噴射させる構成に関し、本件発明4では、「停車位置に自動車がいることを検出する停車検出手段」「を備え、」「前記停車検出手段で検出された」停車位置に停車した自動車に対して、ノズルから洗浄水を噴射させるのに対して、甲発明2では、停車検出手段について特定されていない点。
[相違点2-8]
ユニットに給水する給水系統の構成に関し、本件発明4では、「各前記ユニットの外で」給水源から分岐した給水路により分水して各ユニットに給水する給水系統を備え、「前記ユニットが、前記停車位置の床面で車長方向に延在する溝部に設けられ、前記溝部内を通る前記給水路により給水され」るのに対して、甲発明2では、「各パイプセクション17~23の内側」で液体供給管31から分岐した供給管により分水して各パイプセクション17~23に供給する給水系統を備え、「パイプシステム14が、洗浄装置床面に固定されたフレーム構造15に取り付けられ」る点。
[相違点2-9]
自動車の長さに応じてユニットを選択して洗浄水を噴射させる構成に関し、本件発明4では、「前記停車位置に停車した自動車の長さを検出する車長検出手段と、」「前記車長検出手段と設けられ」た処理装置を備え、処理装置の移動と共にブラッシング洗浄を行う際に、「前記車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて」ユニットを選択してノズルから洗浄水を噴射させるのに対して、甲発明2では、「門型洗浄機1」は車長検出手段と設けられておらず、「門型洗浄機1がその瞬間にその上に位置しているパイプセクション17~23のみに、高圧ポンプ32から液体が供給され」る点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点2-8及び2-9から検討する。
(ア)相違点2-8について
a 甲発明1の適用について
(a)甲発明2では、パイプセクション17~23に細分化されたパイプシステム14が取り付けられるフレーム構造15は、洗浄装置床面に固定されており、これによって、「通常は再循環されて装置に再利用される使用済みの水のための排出口を除いて、洗浄装置施設の下に深い穴を掘る必要がない」(第5の2(2)ア(ウ)を参照)ものとしている。また、甲発明2では、門型洗浄機1が移動することが必要であり、洗浄装置床面には門型洗浄機1の移動のための2本のレール10、11も設けられている。
そうすると、甲発明2において、パイプシステム14が取付けられるフレーム構造15は、2本のレール10、11の内側に位置させなければならないという制約があり、そのための一態様として、各パイプセクション17~23の内側で給水路を分岐させているものと認められる。
(b)一方、甲発明1は、管路網[30]、[31]、[34]、[36]の外側で給水系統が分岐するものであり、給水系統が溝部に設けられているものであるが、甲発明2に上記制約があることに鑑みれば、甲発明2に甲発明1を適用する動機付けはないというべきである。
また、仮に、甲発明2に甲発明1を適用するとしても、上記制約を考慮すれば、ユニットの内側で給水路が分岐されることになるものと認められ、ユニットの外で分岐された給水路を備えるという相違点2-8に係る本件発明4の構成になるものではない。
(c)さらに、上記したとおり、甲発明2において、パイプセクション17~23に細分化されたパイプシステム14が取り付けられるフレーム構造15は、洗浄装置床面に固定さており、これによって、「洗浄装置施設の下に深い穴を掘る必要がない」ものとしていることを踏まえると、甲発明2において、甲発明1にあるように、溝部にユニットが設けられる構成を適用することには、阻害要因があるともいえる。
b その他の証拠について
その他の証拠である甲1-2~甲1-7及び甲2-3~甲2-12には、車長方向に複数に区分けされた各ユニットの外で給水路により分水する構成については記載されておらず、その他、相違点2-8に係る構成も開示されていない。
c したがって、甲発明2において、相違点2-8に係る本件発明4の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(イ)相違点2-9について
相違点2-9は、前記相違点2-3と同じであるので、前記(1)イ(イ)で相違点2-3について検討したのと同様に、甲発明2において、相違点2-9に係る本件発明4の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(ウ)したがって、本件発明4は、相違点2-7について検討するまでもなく、甲発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)本件発明5について
ア 対比
本件発明5と甲発明2とを対比する。
前記(1)ア(ア)の相当関係を踏まえると以下のことがいえる。
(ア)前記(1)ア(イ)及び(ウ)の対比を踏まえると、甲発明2の「長さ方向に沿って互いに遮断された個別のパイプセクション17~23に細分化され、車両の下面に液体を噴霧するパイプシステム14と、」「車両が停止するエリアの内側」「で液体供給管31から分岐した供給管により分水して各パイプセクション17~23に供給する給水系統と」「を備え」る構成と、本件発明5の「前記停車位置の床面に車長方向に複数に区分けされ、自動車の下面に向かうノズルを有し、前記停車位置で停車される自動車のスペースの外から別々に給水路により給水されるユニット」「を備え」る構成とは、「前記停車位置の床面に車長方向に複数に区分けされ、自動車の下面に向かうノズルを有し、別々に給水路により給水されるユニット」「を備え」る構成において共通する。
(イ)前記(1)ア(カ)の対比を踏まえると、甲発明2の「長さ方向に沿って互いに遮断された個別のパイプセクション17~23に細分化され、車両の下面に液体を噴霧するパイプシステム14」「を備え、」「門型洗浄機1が移動し、サイドブラシ5、6が車両の形状を追従し、門型洗浄機1が移動する間、門型洗浄機による影響を直接受けるアクチュエータから、電磁弁29、30、33が作動して、門型洗浄機1がその瞬間にその上に位置しているパイプセクション17~23のみに、高圧ポンプ32から液体が供給され」る構成と、本件発明5の「前記処理装置の移動と共にブラッシング洗浄を行う際に、前記車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる」構成とは、「前記処理装置の移動と共にブラッシング洗浄を行う際に、前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる」構成において共通する。
(ウ)さらに、前記(1)ア(エ)の対比を踏まえると、両者は、
「前記停車位置の床面に車長方向に複数に区分けされ、自動車の下面に向かうノズルを有し、別々に給水路により給水されるユニットと、
車長方向に移動自在に、自動車をブラッシング洗浄可能な処理装置を備え、
前記処理装置の移動と共にブラッシング洗浄を行う際に、前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる、
洗車装置。」
において一致し、以下の点で相違する。
[相違点2-10]
停車位置に自動車がいることの検出に関し、本件発明5では、「停車位置に自動車がいることを検出する停車検出手段」「を備え」るのに対して、甲発明2では、停車検出手段について特定されていない点。
[相違点2-11]
ユニットに給水する構成に関し、本件発明5では、「前記停車位置で停車される自動車のスペースの外から」別々に給水路により給水されるユニットを備え、「前記ユニットが、前記停車位置の床面で車長方向に延在する溝部に設けられ、前記溝部内を通る前記給水路により給水され」るのに対して、甲発明2では、「車両が停止するエリアの内側」で液体供給管31から分岐した供給管により分水して各パイプセクション17~23に供給され、「パイプシステム14が、洗浄装置床面に固定されたフレーム構造15に取り付けられ」る点。
[相違点2-12]
自動車の長さに応じてユニットを選択して洗浄水を噴射させる構成に関し、本件発明5では、「前記停車位置に停車した自動車の長さを検出する車長検出手段と、」「前記車長検出手段と設けられ」た処理装置を備え、処理装置の移動と共にブラッシング洗浄を行う際に、「前記車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて」ユニットを選択してノズルから洗浄水を噴射させるのに対して、甲発明2では、「門型洗浄機1」は車長検出手段と設けられておらず、「門型洗浄機1がその瞬間にその上に位置しているパイプセクション17~23のみに、高圧ポンプ32から液体が供給され」る点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点2-11及び2-12から検討する。
(ア)相違点2-11は、前記相違点2-2と実質的に同じであるので、前記(1)イ(ア)で相違点2-2について検討したのと同様に、甲発明2において、相違点2-11に係る本件発明5の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(イ)相違点2-12は、前記相違点2-3と同じであるので、前記(1)イ(イ)で相違点2-3について検討したのと同様に、甲発明2において、相違点2-12に係る本件発明5の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(ウ)したがって、本件発明5は、相違点2-10について検討するまでもなく、甲発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(6)本件発明6について
ア 対比
本件発明6と甲発明2とを対比する。
前記(1)ア(イ)~(エ)及び(カ)の対比を踏まえると、両者は、
「前記停車位置の床面に自動車の車種の長さに応じて車長方向に複数に区分けされ、自動車の下面に向かうノズルを有するユニットと、
分岐した給水路により分水して各前記ユニットに給水する給水系統と、
車長方向に移動自在に、自動車をブラッシング洗浄可能な処理装置を備え、
前記停車位置に停車した自動車に対して、前記処理装置の移動と共にブラッシング洗浄を行う際に、前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる、
洗車装置。」
において一致し、以下の点で相違する。
[相違点2-13]
停車位置に停車した自動車に対して洗浄水を噴射させる構成に関し、本件発明6では、「停車位置に自動車がいることを検出する停車検出手段」「を備え、」「前記停車検出手段で検出された」停車位置に停車した自動車に対して、ノズルから洗浄水を噴射させるのに対して、甲発明2では、停車検出手段について特定されていない点。
[相違点2-14]
ユニットに給水する給水系統の構成に関し、本件発明6では、「前記停車位置で停車される自動車のスペースの外で」分岐した給水路により分水して各ユニットに給水する給水系統を備え、「前記ユニットが、前記停車位置の床面で車長方向に延在する溝部に沿うプレート状であって前記ノズルと対面する位置で開口するカバーで覆われ」るのに対して、甲発明2では、「車両が停止するエリアの内側」で液体供給管31から分岐した供給管により分水して各パイプセクション17~23に供給する給水系統を備え、「パイプシステム14が、洗浄装置床面に固定されたフレーム構造15に取り付けられ」る点。
[相違点2-15]
自動車の長さに応じてユニットを選択して洗浄水を噴射させる構成に関し、本件発明6では、「前記停車位置に停車した自動車の長さを検出する車長検出手段と、」「前記車長検出手段と設けられ」た処理装置を備え、処理装置の移動と共にブラッシング洗浄を行う際に、「前記車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて」ユニットを選択してノズルから洗浄水を噴射させるのに対して、甲発明2では、「門型洗浄機1」は車長検出手段と設けられておらず、「門型洗浄機1がその瞬間にその上に位置しているパイプセクション17~23のみに、高圧ポンプ32から液体が供給され」る点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点2-14及び相違点2-15から検討する。
(ア)相違点2-14について
a 甲発明1の適用について
(a)甲発明2では、パイプセクション17~23に細分化されたパイプシステム14が取り付けられるフレーム構造15は、洗浄装置床面に固定されており、これによって、「通常は再循環されて装置に再利用される使用済みの水のための排出口を除いて、洗浄装置施設の下に深い穴を掘る必要がない」(第5の2(2)ア(ウ)を参照)ものとしている。また、甲発明2では、門型洗浄機1が移動することが必要であり、洗浄装置床面には門型洗浄機1の移動のための2本のレール10、11も設けられている。
そうすると、甲発明2において、パイプシステム14が取付けられるフレーム構造15は、2本のレール10、11の内側、すなわち、車両が停止するエリアの内側に位置させなければならないという制約があるものと認められる。
(b)一方、甲発明1は、車両が停止するエリアの外側で給水系統が分岐するものであり、ユニットが、停車位置の床面で車長方向に延在する溝部に沿うノズルと対面する位置で開口するカバーで覆われるものと認められるが、甲発明2に上記制約があることに鑑みれば、甲発明2に甲発明1を適用する動機付けはないというべきである。
また、仮に、甲発明2に甲発明1を適用するとしても、上記制約を考慮すれば、車両が停止するエリアの内側に、分岐部分を含めた給水系統の全てを設けることになるものと認められ、停車位置で停車される自動車のスペースの外で分岐した給水路を備えるという相違点2-14に係る本件発明1の構成になるものではない。
(c)さらに進んで検討するに、甲発明1では、給水系統が溝部に設けられているが、甲発明2に甲発明1を適用した際に、レール10、11をまたぐようにして溝を設けて車両の停止するエリアの外で吸水系統が分岐するようにすることも当業者が容易に想到し得たこととは認められない。なぜなら、甲発明2のレール10、11には門型洗浄機1の重量を支えることが求められるところ、レール10、11の下部を溝とすることは阻害要因があるといえるからである。
b その他の証拠について
その他の証拠である甲1-2~甲1-7及び甲2-3~甲2-12には、車長方向に複数に区分けされたユニットが停車位置で停車される自動車のスペースの外で分岐した給水路により分水する構成については記載されておらず、その他、相違点2-14に関係する構成も開示されていない。
c したがって、甲発明2において、相違点2-14に係る本件発明6の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(イ)相違点2-15について
相違点2-15は、前記相違点2-3と同じであるので、前記(1)イ(イ)で相違点2-3について検討したのと同様に、甲発明2において、相違点2-15に係る本件発明6の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(ウ)したがって、本件発明6は、相違点2-13について検討するまでもなく、甲発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(7)本件発明7について
ア 対比
本件発明7と甲発明2とを対比する。
(ア)甲発明2の「サイドブラシ5、6」は、本件発明7の「自動車の側面をブラッシング洗浄可能なブラシ」に相当する。
さらに、前記(1)ア(ア)の相当関係を踏まえると以下のことがいえる。
(イ)前記(1)ア(エ)の対比を踏まえると、甲発明2の「2本のレール10、11の経路に沿って往復運動するように取り付けられ、車両の外形に自動的に追従するサイドブラシ5、6が取り付けられた門型洗浄機1を備え」る構成と、本件発明7の「車長方向に移動自在に前記車長検出手段と設けられ、自動車の側面をブラッシング洗浄可能なブラシを有する処理装置を備え」る構成とは、「車長方向に移動自在に、自動車の側面をブラッシング洗浄可能なブラシを有する処理装置を備え」る構成において共通する。
(ウ)前記(1)ア(カ)の対比を踏まえると、甲発明2の「長さ方向に沿って互いに遮断された個別のパイプセクション17~23に細分化され、車両の下面に液体を噴霧するパイプシステム14」「を備え、」「門型洗浄機1の移動の開始位置に最も近いレール経路端部に置かれた車両に対して、門型洗浄機1が移動し、サイドブラシ5、6が車両の形状を追従し、門型洗浄機1が移動する間、門型洗浄機による影響を直接受けるアクチュエータから、電磁弁29、30、33が作動して、門型洗浄機1がその瞬間にその上に位置しているパイプセクション17~23のみに、高圧ポンプ32から液体が供給され」る構成と、本件発明7の「前記停車検出手段で検出された前記停車位置に停車した自動車に対して、前記処理装置の移動と共に前記ブラシで自動車の側面のブラッシング洗浄を行う際に、前記車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる」る構成とは、「前記停車位置に停車した自動車に対して、前記処理装置の移動と共に前記ブラシで自動車の側面のブラッシング洗浄を行う際に、前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる」構成において共通する。
(エ)さらに、前記(1)ア(イ)並びに前記(3)ア(ア)及び(イ)の対比を踏まえると、両者は、
「前記停車位置の床面に自動車の車種の長さに応じて車長方向に複数に区分けされ、自動車の下面に向かうノズルを有するユニットと、
分岐した給水路により分水して各前記ユニットに給水する給水系統と、
車長方向に移動自在に、自動車の側面をブラッシング洗浄可能なブラシを有する処理装置を備え、
前記停車位置の床面で車長方向に延在する複数に区分けされた前記ユニットが自動車の車幅方向にも設けられ、
前記停車位置に停車した自動車に対して、前記処理装置の移動と共に前記ブラシで自動車の側面のブラッシング洗浄を行う際に、前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる、
洗車装置。」
において一致し、以下の点で相違する。
[相違点2-16]
停車位置に停車した自動車に対して洗浄水を噴射させる構成に関し、本件発明7では、「停車位置に自動車がいることを検出する停車検出手段」「を備え、」「前記停車検出手段で検出された」停車位置に停車した自動車に対して、ノズルから洗浄水を噴射させるのに対して、甲発明2では、停車検出手段について特定されていない点。
[相違点2-17]
ユニットに給水する給水系統の構成に関し、本件発明7では、「各前記ユニットの外で」分岐した分岐した給水路により分水して各ユニットに給水する給水系統を備え、停車位置の床面で車長方向に延在する「溝部に」複数に区分けされたユニットが自動車の車幅方向にも設けられ、「前記給水系統において、前記車幅方向における隣接する前記ユニット間の外で分岐された前記給水路が、前記車幅方向における隣接する前記溝部の端部のそれぞれと繋がり、前記床面で前記車幅方向における隣接する前記ユニット間の外へ延在する連通溝内および前記溝部内を通」るのに対して、甲発明2では、「各パイプセクション17~23の内側」で液体供給管31から分岐した供給管により分水して各パイプセクション17~23に供給する給水系統を備え、「パイプシステム14が、洗浄装置床面に固定されたフレーム構造15に取り付けられ」る点。
[相違点2-18]
自動車の長さに応じてユニットを選択して洗浄水を噴射させる構成に関し、本件発明7では、「前記停車位置に停車した自動車の長さを検出する車長検出手段と、」「前記車長検出手段と設けられ」た処理装置を備え、処理装置の移動と共に・・・ブラッシング洗浄を行う際に、「前記車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて」ユニットを選択してノズルから洗浄水を噴射させるのに対し、甲発明2では、「門型洗浄機1」は車長検出手段を設けられておらず、「門型洗浄機1がその瞬間にその上に位置しているパイプセクション17~23のみに、高圧ポンプ32から液体が供給され」る点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点2-17及び相違点2-18から検討する。
(ア)相違点2-17は、前記相違点2-5と同じであるので、前記(3)イ(ア)で相違点2-5について検討したのと同様に、甲発明2において、相違点2-17に係る本件発明7の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(イ)相違点2-18は、前記相違点2-3と同じであるので、前記(1)イ(イ)で相違点2-3について検討したのと同様に、甲発明2において、相違点2-18に係る本件発明7の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
(ウ)したがって、本件発明7は、相違点2-16について検討するまでもなく、甲発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(8)本件発明8及び9について
本件発明8及び9は、本件発明1、3、4、5、6又は7の発明特定事項を全て含み、さらに限定をしたものであるから、本件発明1、3、4、5、6又は7と同様の理由により、甲発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(9)小括
以上のとおり、本件発明1~9は、甲発明2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものということはできない。
よって、申立人2の前記理由3に係る主張は採用できない。
5 理由4(サポート要件)について
(1)理由4-1について
ア 申立人の主張
申立人2は特許異議申立書において、以下の旨を主張する。
本件明細書に記載されている「車長検出手段」は、「自動車の長さに応じた第1噴水管~第3噴水管の選択のために門型洗車機に設けられて上面輪郭データを作成する」ものであり、本件明細書には、車長検出手段を門型洗車機以外の箇所に設けることや、上面輪郭データのその他の作成方法、上面輪郭データに代わるデータの作成方法については開示されていない。
一方で、本件訂正前の請求項1、3~6では「前記停車位置に停車した自動車の長さを検出する車長検出手段」と特定されているにすぎず、「車長検出手段」は「門型洗車機に設けられる」及び「上面輪郭データを作成する」との構成を具備しない構成まで広く含むものである。
したがって、本件特許の出願時の技術常識に照らしても、本件訂正前の請求項1~9の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
イ 当審の判断
本件明細書の段落【0005】の「本発明の一目的は、周囲への飛散を最小限に抑えて洗浄水を自動車の下面に噴射させることのできる技術を提供するものである。」との記載や、段落【0033】の「自動車の長さに応じて下部洗浄装置4の噴水管24を制限することで、外部への飛散を防ぐことができ、同時に節水が図られる」との記載を踏まえると、本件特許に係る発明においては、「車長検出手段により抽出した自動車の長さに応じて下部洗浄装置の噴水管を制限する」構成は必須である一方、自動車の長さを抽出できるのであれば、車長検出手段の配置や自動車の長さの検出方法等は任意の事項と認められ、門型洗車機に設けられることや上面輪郭データを作成することまで特定することを要するものとは認められない。
そして、本件訂正後の独立項である本件発明1、3~7は、いずれも、当該構成に対応する、「自動車の長さを検出する車長検出手段と、」「車長方向に複数に区分けされ、自動車の下面に向かうノズルを有」する「ユニットと、」「を備え、」「前記車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる」構成を含むものである。
よって、申立人2の当該主張は採用できない。
(2)理由4-2について
ア 申立人の主張
申立人2は特許異議申立書において、以下の旨を主張する。
特許権者は、令和5年3月20日提出の審判請求書において、「本願発明は、・・・、停車位置の床面で車長方向に延在する溝部にて、各ユニットに給水するため停車ペースの外(または各ユニットの外)で分岐した給水路が溝部内を通ったり、・・・することで周囲への飛散を最小限に抑えて洗浄水を自動車の下面に噴射させることができる(特に、本件明細書の段落【0007】)という作用効果を奏するものです。」と主張しているが、溝部により周囲への洗浄水の飛散を防止できないことは、本件特許の出願時の技術常識であり、ユニット及び給水路が「溝部」に設けられることにより、周囲への洗浄水の飛散を防止できることを主張することはできない。
したがって、本件訂正前の請求項5において、「溝部」を特定しても、本件明細書に記載の「周囲への飛散を最小限に抑えて洗浄水を自動車の下面に噴射させる」という課題を解決することはできず、本件訂正前の請求項5には、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、特許法第36条第6項第1号の規定に違反して特許されたものである。
イ 当審の判断
本件明細書の段落【0005】の「本発明の一目的は、周囲への飛散を最小限に抑えて洗浄水を自動車の下面に噴射させることのできる技術を提供するものである。」との記載や、段落【0033】の「自動車の長さに応じて下部洗浄装置4の噴水管24を制限することで、外部への飛散を防ぐことができ、同時に節水が図られる」との記載を踏まえると、本件特許に係る発明においては、「車長検出手段により抽出した自動車の長さに応じて下部洗浄装置の噴水管を制限する」構成が、発明の課題を解決するための手段として必要な構成であると認められる。
そして、本件訂正後の請求項5は、当該構成に対応する、「自動車の長さを検出する車長検出手段と、」「車長方向に複数に区分けされ、自動車の下面に向かうノズルを有」する「ユニットと、」「を備え、」「前記車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる」構成を含むものと認められる。
よって、申立人2の当該主張は採用できない。
6 理由5(新規事項)について
(1)理由5-1について
ア 申立人の主張
申立人2は特許異議申立書において、以下の旨を主張する。
当初明細書等においては、「車長検出手段」が「自動車の長さに応じた第1噴水管~第2噴水管の選択のために門型洗車機1に設けられて上面輪郭データを作成する」ものであることが記載されているのみであるので、上部洗浄装置が車長検出手段を備えるという構成を削除した本件訂正前の請求項1、3~6に係る補正は、特許法第17条の2第3項に違反する。
イ 当審の判断
本件明細書の段落【0033】の「自動車の長さに応じて下部洗浄装置4の噴水管24を制限することで、外部への飛散を防ぐことができ、同時に節水が図られる」との記載や、段落【0035】の「門型洗車機に関して言えば、ブラシ装置を備えず車体を高圧スプレー等で洗浄するタイプの洗車機でも良いし、ドライブスルー方式ではなく、サービスマンが洗車を行うタイプの洗車機で良い。」との記載を踏まえると、本件特許に係る発明においては、「自動車の長さに応じて下部洗浄装置の噴水管を制限する」ことが必須である一方、上部洗浄装置については任意付加的な構成と認められるから、「上部洗浄装置が車長検出手段を備える」構成を含まないことが、新たな技術的事項を導入するものであるとは認められない。
よって、申立人2の当該主張は採用できない。
(2)理由5-2について
ア 申立人の主張
申立人2は特許異議申立書において、以下の旨を主張する。
本件明細書では、本件特許の出願当初の「下部洗浄装置からの洗浄水を無駄なく確実に車体の下面に噴射させ、周囲への飛散を最小限に抑える」との課題Aが、令和2年7月2日付けの手続補正書において、「周囲への飛散を最小限に抑えて洗浄水を自動車の下面に噴射させる」との課題Bに変更されているが、上記課題Bについては、本件明細書に記載された、自動車の長さに応じた噴水管の制限、及び、噴射ノズルの向きの調整以外の構成、例えば、車長方向に延在する、飛散防止可能な溝部を備え、当該溝部に、車長方向に延在する1つのユニットを備える構成をも含むものであり、当該構成の場合には無駄なく確実に自動車の下面に噴射できないことから、上記課題Aを解決できない。
したがって、上記課題の補正は、本件明細書に、当初明細書等に記載されていない新たな技術的事項を導入したものであるから、特許法第17条の2第3項に違反するものである。
イ 当審の判断
本件明細書の段落【0005】の「本発明の一目的は、周囲への飛散を最小限に抑えて洗浄水を自動車の下面に噴射させることのできる技術を提供するものである。」との記載や、段落【0033】の「自動車の長さに応じて下部洗浄装置4の噴水管24を制限することで、外部への飛散を防ぐことができ、同時に節水が図られる」との記載を踏まえると、本件特許に係る発明においては、「自動車の長さに応じて下部洗浄装置の噴水管を制限する」ことが、発明の課題を解決するための手段として必須の構成であると認められる。
そして、本件訂正後の独立項である請求項1、3~7は、いずれも、当該構成に対応する「自動車の長さを検出する車長検出手段と、」「車長方向に複数に区分けされ、自動車の下面に向かうノズルを有」する「ユニットと、」「を備え、」「前記車長検出手段で検出した自動車の長さに応じて前記ユニットを選択して前記ノズルから洗浄水を噴射させる」構成を含むものと認められる。
なお、申立人2は、課題Bでは、「車長方向に延在する、飛散防止可能な溝部を備え、当該溝部に、車長方向に延在する1つのユニットを備える」構成をも含むものであると主張するが、本件訂正後の独立項である請求項1、3~7はいずれも、「車長方向に複数に区分けされ、自動車の下面に向かうノズルを有」する「ユニット」「を備え」るものであり、申立人2が主張するような「車長方向に延在する1つのユニットを備える」構成が導入されているものではない。
よって、申立人2の当該主張は採用できない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、並びに申立人1及び申立人2が特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠によっては、請求項1~9に係る特許を取り消すことはできない。
さらに、他に請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-701310