特許異議申立
2023-700518
吸音パネル
- 審判番号
- 2023-700518
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-230971
- 登録番号
- 7175734
- 請求日
- 2023年05月18日
- 審決日
- 2023年09月04日
- 公報発行日
- 2023年10月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】日鉄神鋼建材株式会社
- 【権利者代理人】安彦 元
- 【異議申立人】日本環境アメニティ 株式会社
- 【異議申立人代理人】北村 光司
- 【異議申立人代理人】高尾 俊雄
- 審判長/審判官
- 審判長 前川 慎喜
- 審判官 古屋野 浩志
- 審判官 西田 秀彦
- 分類
- P1651.121-Y (E01F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7175734号発明「吸音パネル」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7175734号の請求項1~14に係る特許を維持する。
理由
理 由
1 手続の経緯
特許第7175734号の請求項1~14に係る特許についての出願は、平成30年12月10日に出願され、令和4年11月11日にその特許権の設定登録がされ、同年同月21日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和5年5月18日に特許異議申立人日本環境アメニティ株式会社(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
2 本件特許
特許第7175734号の請求項1~14の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の1~14に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下「本件特許発明1」~「本件特許発明14」という。)。
「【請求項1】
防音壁の最上段に設置される吸音パネルであって、
音源側に向けられる正面部、及び受音側に向けられる背面部を有する外装材と、
前記外装材に内装された吸音材と、を備え、
前記正面部には、第1開口部が、前記正面部の全体に設けられ、
前記背面部には、第2開口部が、前記背面部の上部のみに設けられており、音源と受音点とを結ぶ直線上に透過音を反射する遮音面が設けられていること
を特徴とする吸音パネル。
【請求項2】
前記外装材は、天面部を有し、
前記天面部には、第3開口部が設けられていること
を特徴とする請求項1に記載の吸音パネル。
【請求項3】
前記吸音材の少なくとも前記第1開口部、又は前記第2開口部に位置する表面が、通気性を有する撥水部材で覆われていること
を特徴とする請求項1に記載の吸音パネル。
【請求項4】
前記吸音材の少なくとも上部の表面が、通気性を有する撥水部材で覆われていること
を特徴とする請求項1又は2に記載の吸音パネル。
【請求項5】
前記吸音材は、前記天面部と接すること
を特徴とする請求項2に記載の吸音パネル。
【請求項6】
前記外装材の中に、上下方向に設けられた縦仕切材を備えること
を特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の吸音パネル。
【請求項7】
前記天面部から下方に延びる縦仕切材を前記第2開口部の下部の背面部とオーバーラップさせて設けること
を特徴とする請求項2に記載の吸音パネル。
【請求項8】
前記外装材の中に、平面方向に設けられた横仕切材を備えること
を特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の吸音パネル。
【請求項9】
前記吸音材は、前記横仕切材の上方と下方のそれぞれに配置され、
前記上方に配置される吸音材は、吸音材の密度と、前記吸音パネルの平面方向の吸音材の厚さの少なくとも1つが前記下方に配置される吸音材よりも大きいこと
を特徴とする請求項8に記載の吸音パネル。
【請求項10】
前記吸音パネルの上部には、下部より前記背面部側に突出する張出部が設けられ、
前記吸音材は、前記張出部に、さらに配置されていること
を特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の吸音パネル。
【請求項11】
前記張出部に配置された吸音材は、正面側又は下方に配置された吸音材より、密度、及び前記吸音パネルの平面方向の厚さの少なくとも1つが大きいこと
を特徴とする請求項10に記載の吸音パネル。
【請求項12】
前記吸音材と前記背面部との間に空気層があること
を特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の吸音パネル。
【請求項13】
前記第1開口部は、ルーバー形状であること
を特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の吸音パネル。
【請求項14】
前記第2開口部は、単一のスリット構造であること
を特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載の吸音パネル。」
3 申立理由の概要
申立人は、主たる証拠として甲第1号証を、従たる証拠として甲第2号証~甲第5号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲5」という)を提出し、請求項1~4に係る特許は甲1及び甲2に基づいて、請求項5~9に係る特許は甲1~甲4に基づいて、請求項10~14に係る特許は甲1~甲5に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1~14に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。
甲第1号証:特開2014-101747号公報
甲第2号証:特開2011-1727号公報
甲第3号証:国際公開第2015/114929号
甲第4号証:特開2015-132743号公報
甲第5号証:特開2003-147731号公報
4 証拠の記載
(1)甲第1号証
ア 記載事項
甲1には、以下の事項が記載されている(下線は、本特許異議の決定で付した。)。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば道路や鉄道などに設けられる吸音パネル及び防音壁設備に関し、詳しくは、第1吸音材を第1吸音空間に内装してある防音パネルを、上下方向に複数段に並べてある防音壁設備において、上下方向に複数段に並べてある前記防音パネルの内の最上段の物の更に上に配設し、第2吸音材を内装した第2吸音空間を内部に形成すると共に、音源とその音源の周囲とを隔てる隔壁を形成自在な第2外枠体を設け、前記第2吸音空間とその外方とにわたる音の出入りを可能にする音挿通孔を多数設けてある音透過面を、前記第2外枠体の音源側表面部及び、背面部に形成してある吸音パネル、及び、その吸音パネルを使用した防音壁設備に関する。」
(イ)「【0028】
[第1実施形態]
図1、図2に示すように、前記パネル1は、コンクリート製の基礎外壁2の上に上下方向に複数段に積み上げる防音パネル1Aと、その防音パネル1Aの最上段の物の更に上に配設する吸音パネル1Bとからなり、いずれの防音パネル1Aも第2吸音パネル1Bも、夫々の左右両端部を、横方向に隣接するパネル支持用H型鋼10の夫々の縦溝内に嵌入させてある。
図1、図2に示すように、防音パネル1Aは、グラスウールからなる第1吸音材3Aを内装した第1吸音空間4Aを内部に形成すると共に、音源となる道路とその道路の周囲とを隔てる隔壁を形成自在な金属板から成る第1外枠体5Aを設け、第1吸音空間4Aに外方の音を取り入れ自在な音導入孔6を多数形成してあるガラリ構造からなる音透過面を、第1外枠体5Aの音源側表面部7に形成すると共に、第1外枠体5Aの音源側とは反対側の背面部8には孔の開いてない鉄板製の遮音板を設けて、道路側からの発生音を防音壁の背面側には逃がさないように構成してある。
図5~図8中の14は、吸音パネル1Bを、パネル支持用H型鋼10に設置してH形鋼との間に上部より固定用ばね鋼材を打ち込んで固定した後に、パネル支持用H型鋼10に連結したワイヤー(図外)を通す切り欠き部で、図中の15は、切り欠き部14と同時に通すアイボルトで、パネル支持用H型鋼10からの吸音パネル1Bの脱落を防止してある。
【0029】
図3~図9に示すように、吸音パネル1Bは、第2吸音材3Bを内装した第2吸音空間4Bを内部に形成すると共に、音源とその音源の周囲とを隔てる隔壁を形成自在な第2外枠体5Bを設け、第2吸音空間4Bに外方の音を取り入れ自在な音導入孔6を多数設けてある音透過面を、第2外枠体5Bの音源側表面部7及び、背面部8に形成してある。そして、第2吸音材3Bが上端部側ほどその流れ抵抗値及び面密度が小さくなるように形成されており、第2外枠体5Bの内面との間に間隙を設けてある。
尚、第1外枠体5A及び第2外枠体5Bは、夫々2部材以上の板金部材から成り、それらの複数の板金部材をリベットやボルトナット又は接着、溶接などで一体に箱状に組み付けて形成してある。」
(ウ)「【0035】
[第3実施形態]
吸音パネル1Bの第3実施形態を、図20~図24に示し、説明する。
吸音パネル1Bは、第2吸音材3Bを内装した第2吸音空間4Bを内部に形成すると共に、音源とその音源の周囲とを隔てる隔壁を形成自在な第2外枠体5Bを設け、第2吸音空間4Bとその外方とにわたる音の出入りを可能にする音挿通孔を多数設けてある音透過面を、第2外枠体5Bの音源側表面部7及び、背面部8に形成し、音透過面を、第2外枠体5Bの天井部20にも設け、第2外枠体5Bの内面に対して第2吸音材3Bにおける表裏の上下縦面、及び、上面との間に間隙を設け、第2吸音材3Bの上方を通気性のある撥水部材21で覆ってある。つまり、第2外枠体5Bを穴開きのパンチングメタルで構成して、音源側表面部7、背面部8、天井部20に音透過面を形成してある。
【0036】
前記撥水部材21は、撥水性の布で形成され、吸音パネル1B裏面側に雨水が流下する水勾配を形成するように、第2外枠体5Bの下側で、間隔を隔てて取り付けると共に、パネル全幅に亘る長さの布支持用第1パンチングメタル22で支持されている。
また、撥水部材21における水勾配の下流側に、第2吸音材3Bの上下縦面よりも外方側に延設する軒部を形成する第2パンチングメタル23を取り付け、その第2パンチングメタル23上に延設した撥水部材21を載置支持させて、撥水部材21上を流下する雨水が、水勾配に沿って軒部を流下して下方に落下することで、第2吸音材3Bが雨水に濡れて含水して吸音性能を低下させてしまうのを防止してある。
尚、第2吸音材3Bの表面及び裏面にも、撥水部材21としての防水布を貼ってある。」
(エ)「【0041】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
〈1〉 前記第1吸音材3A、第2吸音材3Bは、ポリエステルウール以外に、グラスウールやロックウール等の無機繊維からなる多孔質体や、ステンレス繊維などの金属繊維からなる多孔質体の他に、アルミニウム焼結板から構成してあってもよい。
〈2〉 前記パンチングメタルを、アルミニウム以外に、ステンレス、亜鉛引き鋼板などの金属板から形成してあってもよい。また、ポリカーボネート、アクリル等の樹脂板であっても良い。
〈3〉 前記防音壁設備は、道路用以外に、鉄道用、一般の防音壁設備、又は、室内のパーティションにも利用することもできる。
〈4〉 前記第1実施形態の第2吸音材3Bは、上下方向に連続的に厚み及び流れ抵抗値が変化するもの以外に、厚みが均等で下端部ほど面密度が大きくなるものや、密度一定で厚みを上端側程薄く形成してあったり、密度一定の吸音材マットを、厚み方向に積層して上端側より下端部ほど積層枚数を増加させてあってもよく、つまり、空気の流れ抵抗値を下端部ほど大になるように設定してあればよい。
〈5〉 第2外枠体5Bの表面部を、パンチングメタル以外に、金属メッシュやガラリ構造やルーバー形式の金属板や金属製焼結板で形成してあってもよい。
〈6〉 第2吸音材3Bの上方を覆う前記撥水部材21は、撥水性の織布や不織布等でもよく、また、それを支持するのに、少なくとも表裏の上下縦面いずれか一方側に雨水が流下する水勾配を形成するようにしてあればよい。」
(オ)図1~図4、図9、図20、図23の記載は以下のとおりである。
「【図1】
[図:0001402797000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001402797000002.jpg]
」
「【図3】
[図:0001402797000003.jpg]
」
「【図4】
[図:0001402797000004.jpg]
」
「【図9】
[図:0001402797000005.jpg]
」
「【図20】
[図:0001402797000006.jpg]
」
「【図23】
[図:0001402797000007.jpg]
」
イ 認定事項
上記「ア(イ)」の記載、及び、「ア(オ)」の図3、図4、図9の記載より看取できる事項からみて、甲1には下記の事項が記載されていると認められる。
「第2外枠体5Bの音源側表面部7及び、背面部8の、正面視において第2吸音材3Bに対応する領域に音導入孔6を多数設けてある音透過面を備えること。」
ウ 甲1発明
上記「ア(ア)」~「ア(オ)」の記載及び「イ」において認定した事項からみて、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「防音壁設備の上下方向に複数段に積み上げる防音パネル1Aの最上段の物の更に上に配設する吸音パネル1Bであって、
音源側表面部7及び、背面部8を有する第2外枠体5Bを設け、
内部に形成した第2吸音空間4Bに第2吸音材3Bを内装し、
音源側表面部7及び背面部の正面視において第2吸音材3Bに対応する領域に、音導入孔6を多数設けてある音透過面を形成した、
吸音パネル1B。」
(2)甲第2号証
ア 記載事項
甲2には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
本発明は、鉄道・道路などで用いる防風柵であって、構造体に作用する風圧を減らして取付部への作用力を軽減するとともに、車両などからの騒音を遮る構造体に関するものである。」
(イ)「【0044】
なお、遮音対象である音源側を正面側として説明する。遮音対象の音源としては、鉄道が走行する線路、車両が走行する道路が挙げられる。また、各図に示すように、x方向が左右方向(幅方向、横方向)、y方向が前後方向(奥行き方向)、z方向が上下方向(高さ方向、縦方向)として説明する。
・・・
【0046】
FRP製防風柵1の箱形構造体は、スキン面板(2a~2c,3a,3b)、天板(上部板)4、側板5,5、底板6を備えている。また、箱形構造体の内部には、横方向xに延在して一対のスキン面板3a,3bを連結する横インナーリブ(横方向リブ)7、縦方向zに延在して一対のスキン面板3a,3bを連結する縦インナーリブ(縦方向リブ)8a,8bが形成されている。
・・・
【0047】
横インナーリブ7は、横方向xに延在し、箱形構造体を上下に仕切っている。また、箱形構造体の幅方向xの両端に配置された縦インナーリブ8bは、上端が天板4に連結され、下端が底板6に連結されている。また、横インナーリブ7は、x方向の端部が縦インナーリブ8b,8bに連結されている。
【0048】
ここで、本発明の箱形構造体は、前後方向yに貫通する複数の開口孔9a,9b,9cが形成された開口板2a,2b,2cを備えている。FRP製防風柵1の箱形構造体では、横インナーリブ7より上側に、開口孔9a,9b,9cが形成された部分である孔あき部51A,51B,51Cを備え、横インナーリブ7より下側に、開口孔が形成されていない部分である遮音部52A,52Bを備えている。
【0049】
以下、図1に示すように、相対するスキン面板に形成された孔あき部51Aの開口板を、「多孔スキン面板2a,2b」と称する。また、図2に示すように、単板構造である孔あき部52Aの開口板を、「多孔単板2c」と称する。また、開口孔が無い部分である遮音部52A,52Bのスキン面板は、「無孔スキン面板3a,3b」と表記して、それぞれ区別する。」
(ウ)「【0054】
FRP製防風柵1A,2Bの下端には、固定部として凹形状の取付部11が形成されている。凹形状の取付部11は、図4に示すように、2対の縦インナーリブ8a間で、下部の前面側の無孔スキン面板3aが、後方側に凹んで、裏面の無孔スキン面板3bと一体化し、下面部の前記底板6に重なり、取付板12を形成する。この取付板12には、所定の大きさで穿孔された取付板13を有し、この取付孔13を介して、例えばアンカーボルト14にて躯体19に架設、固定する。」
(エ)「【0062】
(孔あき部)
さて、図1、図2及び図10に示すように、FRP製防風柵1に開口率βの開口孔9を有する孔あき部51A,51B,51Cを設けることによって、風が通り抜け、FRP製防風柵1に作用する風圧力を軽減し、取付部11,21に作用する応力を軽減することが可能となる。そのため、例えば特許文献3,4のような孔あき部のない防風柵の背丈を、より高くすることが可能となる。
【0063】
そして、FRP製防風柵1の孔あき部51A,51B,51Cでは、前述したように、両端の縦インナーリブ8bが天板4から底板6にかけて連続して形成されている。これにより、FRP製防風柵1の幅方向の両端は、ボックス構造となり十分な曲げ剛性を確保することができる。その結果、堅固な箱形構造体を実現することが可能となる。」
(オ)「【0113】
また、本発明のFRP製防風柵を風洞実験に供し、孔あき部の風上と風下に風速計を設置し前後の風速を比較したところ、風下の風速が約5~10%小さくなり、孔あき部での圧力損失によって弱まったことを確認した。
【0114】
また、FRP製防風柵を、実際に設置し、行路差を一定にして、列車走行時の騒音音量を騒音計で測定した。その結果、孔のない従来のコンクリート製の遮音壁と同等の騒音測定結果が得られた。」
(カ)図1、図4の記載は以下のとおりである。
「【図1】
[図:0001402797000008.jpg]
」
「【図4】
[図:0001402797000009.jpg]
」
イ 認定事項
(ア)上記「ア(イ)」における「遮音対象である音源側を正面側」とすることについてみると、上記「ア(ウ)」に記載された「躯体19」において、「ア(カ)」の図4には、「FRP製防風柵1A」における「無孔スキン面板3a」の側に、「鉄道が走行する線路、車両が走行する道路」が設けられることが看取できるから、上記「FRP製防風柵1A」の「遮音対象である音源側」は、当該「無孔スキン面板3a」が設けられる側であると認められる。
(イ)また、上記「ア(イ)」には、「相対するスキン面板に形成された孔あき部51Aの開口板を、「多孔スキン面板2a,2b」と称」し、かつ、「開口孔が無い部分である遮音部52A,52Bのスキン面板は、「無孔スキン面板3a,3b」と表記して、それぞれ区別する。」と記載されていることからみて、「多孔スキン面板2a」と「無孔スキン面板3a」、あるいは、「多孔スキン面板2b」と「無孔スキン面板3b」とは、それぞれ一のスキン面板を構成すると解されるから、上記(ア)において「無孔スキン面板3a」が設けられる側が「FRP製防風柵1A」の「遮音対象である音源側」であるとしたのと同様に、「多孔スキン面板2a」が設けられる側が「FRP製防風柵1A」の「遮音対象である音源側」となり、当該「音源側」とは反対側に「多孔スキン面板2b」が設けられると認められる。
(ウ)上記(ア)及び(イ)で示した事項に加え、上記「ア(イ)」の記載、及び、「ア(カ)」の図1の記載より看取できる事項からみて、甲2には下記の事項が記載されていると認められる。
「FRP製防風柵1の箱形構造体において、スキン面板(2a,2b,3a,3b)の、無孔スキン面板3a及び多孔スキン面板2aが設けられる側が遮音対象である音源側となっており、当該多孔スキン面板2aに開口孔9aが、音源側とは反対側に設けられた多孔スキン面板2bに開口孔9bが形成されること。」
ウ 甲2発明
上記「ア(ア)」~「ア(カ)」の記載及び「イ」において認定した事項からみて、甲2には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「FRP製防風柵1の箱形構造体の上下に仕切っている横インナーリブ7より上側のスキン面板(2a,2b,3a,3b)の、遮音対象である音源側の多孔スキン面板2aに開口孔9aが、音源側とは反対側の多孔スキン面板2bに開口部9bが形成された部分である孔あき部51Aを備え、孔あき部51Aを設けることによって、風が通り抜け、FRP製防風柵1に作用する風圧力を軽減し、取付部11,21に作用する応力を軽減することが可能となるFRP製防風柵1の箱形構造体。」
5 当審の判断
(1)本件特許発明1
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「防音壁設備」、「吸音パネル1B」は、それぞれ本件特許発明1の「防音壁」、「吸音パネル」に相当し、甲1発明において「防音壁設備の上下方向に複数段に積み上げる防音パネル1Aの最上段の物の更に上に配設する」ことは、本件特許発明1の「防音壁の最上段に設置」することに相当する。
(イ)甲1発明の「第2外枠体5B」は、本件特許発明1の「外装材」に相当し、甲1発明の「音源側表面部7」、「背面部8」は、それぞれ本件特許発明1の「音源側に向けられる正面部」、「受音側に向けられる背面部」に相当する。
(ウ)甲1発明の「第2吸音材3B」は、本件特許発明1の「吸音材」に相当し、甲1発明において「吸音パネル1B」の「内部に形成した第2吸音空間4B」は、「第2外枠体5B」の内部に形成されることは明らかであるから、甲1発明の「内部に形成した第2吸音空間4Bに」「内装」された「第2吸音材3B」は、本件特許発明1の「外装材に内装された吸音材」に相当する。
(エ)甲1発明の「音導入孔6」は、本件特許発明1の「第1開口部」に相当し、甲1発明の「正面視において第2吸音材3Bに対応する領域に、音導入孔6を多数設けてある音透過面を形成」することは、本件特許発明1の「第1開口部が、前記正面部の全体に設けられ」ることに相当する。
(オ)以上より、本件特許発明1と甲1発明とは、
「 防音壁の最上段に設置される吸音パネルであって、
音源側に向けられる正面部、及び受音側に向けられる背面部を有する外装材と、
前記外装材に内装された吸音材と、を備え、
前記正面部には、第1開口部が、前記正面部の全体に設けられている、
吸音パネル。」
である点において一致し、下記の相違点において相違する。
[相違点]
吸音パネルに設けられる開口部に関して、甲1発明において、「背面部8の、正面視において第2吸音材3Bに対応する領域に音導入孔6を多数設けてある音透過面を備える」、すなわち、「背面部には、第2開口部が、前記正面部の全体に設けられ」ているのに対して、本願特許発明1では、「背面部には、第2開口部が、」「背面部の上部のみに設けられており、音源と受音点とを結ぶ直線上に透過音を反射する遮音面が設けられている」点。
イ 判断
上記相違点について検討する。
(ア)本願特許発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明の「FRP製防風柵1」は、本件特許発明1の「防音壁」に相当し、単独ではあるが「最上段に設置」されるといえるものではあり、かつ、甲2発明の「音源側とは反対側の多孔スキン面板2b」は、本件特許発明1の「背面部」に対応する側に設けられるものであるものの、甲2発明の「開口部9b」は「開口孔9a」とともに、いずれも「横インナーリブ7より上側のスキン面板」に設けられ、それにより「FRP製防風柵1」に「孔あき部51Aを設けることによって、風が通り抜け、FRP製防風柵1に作用する風圧力を軽減」するためのものである。
(イ)一方、甲1発明は「内部に形成した第2吸音空間4Bに第2吸音材3Bを内装」し、「音源側表面部7及び背面部の正面視において第2吸音材3Bに対応する領域に、音導入孔6を多数設けてある音透過面を形成した」ものであって、「風が通り抜ける」ことを妨げるように機能すると解される、当該「第2吸音材3B」を備えることを前提とし吸音するものである。
(ウ)してみると、甲1発明と甲2発明とが、防音壁として機能するものである点において技術分野が同一であったとしても、孔を設ける目的が異なる以上、解決しようとする課題が共通するものであるとはいえないし、甲1発明に対して甲2発明を適用するにあたっての動機付けがあるとは認められない。
さらに、上述のとおり、甲1発明が「第2吸音材3B」を備え吸音するものであることは、甲2発明の「風が通り抜け」ることを妨げるものとなることからみて、甲1発明に対して甲2発明を適用するにあたり阻害要因となると解される。
(エ)したがって、甲1発明及び甲2発明に基づいて、上記相違点に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
さらに、甲3~甲5にも、上記の相違点に係る構成は何ら記載されていない。
(オ)なお、甲1発明の「背面部の正面視において第2吸音材3Bに対応する領域に、音導入孔6を多数設け」ることに換えて、甲2発明の「開口部9b」がスキン面板(2b,3b)における「音源側とは反対側の多孔スキン面板2b」に設けられた構成を適用するのであれば、甲1発明の「音源側表面部7及び背面部の正面視において第2吸音材3Bに対応する領域に、音導入孔6を多数設け」たものに対しても、同様に、甲2発明の「開口部9a」がスキン面板(2a,3a)における「音源側とは反対側の多孔スキン面板2b」に設けられた構成を適用することとなるから、上記一致点とした構成のうちの、「前記正面部には、第1開口部が、前記正面部の全体に設けられる」との構成が、甲1発明と甲2発明とを組み合わせることにより相違点となるものと解される。
(カ)申立人は、甲2発明と甲1発明とは、(a)「いずれも道路や鉄道に用いられる防音のための設備(構造)に関する発明であり、技術分野が同一であるため、甲1発明に甲2発明を適用することは、当業者にとって容易である」、(b)「音源側の一方の所定の位置にある音源と、受音側の他方の所定の位置にある受音点と、を結ぶ所定の直線上に、該音源からの音(透過音)を反射する面(透過面)を位置させることは、当業者であれば遮音(防音)の効果を向上させるために当然行う行為である」と主張する(符号(a)及び(b)は、本異議決定において付した。)。
しかし、仮に上記主張(b)が妥当なものであったとしても、上記(ア)~(ウ)で述べたとおり、甲1発明に対して甲2発明を適用するにあたっての動機付けがあるとは認められないから、上記主張(a)を容れることはできず、申立人の主張は採用できない。
(キ)以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲1発明及び甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件特許発明2~14
本件特許発明2~14は、本件特許発明1の構成を全て含み、さらに限定を加えた発明であるから、上記(1)で検討した理由と同じ理由により、本件特許発明2~14は、甲1発明及び甲2発明、甲3~甲5に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~14に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700518