商標取消審判
2023-300877
イイクリニック、クリニック、イイ
- 審判番号
- 2023-300877
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願2003-085692
- 登録番号
- 4771403
- 請求日
- 2023年11月30日
- 審決日
- 2024年08月08日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】鈴木 多香子
- 【被請求人】特定非営利活動法人 21世紀の医療医学を考える会
- 【被請求人代理人】藤田 隆
- 審判長/審判官
- 審判長 旦 克昌
- 審判官 小林 裕子
- 審判官 相崎 裕恒
- 分類
- T132 .1 -Y (Y44)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第50条第1項、商標法第2条第3項第8号、商標法第50条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第4771403号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
本件登録第4771403号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成15年10月1日に登録出願され、「栄養の指導」を含む第44類に属する商標登録原簿に記載の役務を指定役務として、同16年5月14日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和5年12月18日であり、その請求の登録前3年以内の同2年12月18日から同5年12月17日までの期間を以下「要証期間」という。
第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定役務中、第44類「栄養の指導」(以下「請求に係る指定役務」という。)についての商標登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証を提出している。
1 請求の理由
本件商標は、その指定役務中、請求に係る指定役務について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
請求人は、答弁に対し弁駁していない。
第3 被請求人の主張
被請求人は、「本件審判の請求は、却下する。本件審判の請求は成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第6号証(枝番を含む。)を提出している。
1 本件審判の請求人は、係属中の審判(取消2022-300291号)において取消請求がされている役務以外の全ての指定役務について、本件審判の請求を含む6件の審判請求を同日又は一日違いで提起しており、これらの審判請求は、業種の異なる6種類の役務について、別個に行われている。一人の自然人である請求人がこれらの役務に係る多岐にわたる業務を並行して起業することは極めて困難といえる。また、請求人は、審判請求書に電話番号を記載しておらず、電話を設置していないか、設置していても他人との会話や連絡を忌避しているものといえる。このような一の自然人が多業種にわたって事業を新たに起業することは全く不可能である。また、仮に本件商標が取り消されても、本件商標に類似する他人の商標登録出願が存在するから、請求人が本件商標と同一又は類似する商標を登録し使用することも、できる余地はなく、本件審判は、商標を使用することも登録することもできない状況で提起されたものである。したがって、請求人は、商標の使用の意思も商標登録の意思も有しない者といえ、このような者が、一の本件商標について、殊更に6件の審判請求を行うことは、非営利活動を行っている被請求人に過度な金銭的負担を課して、その運営を害することを目的しているといわざるを得ず、特許庁における行政の適切な運用に対する有害行為として排除されるべきものである。
このような状況からみて、本件審判請求は、権利の濫用であり、却下されるべきである。
2 本件商標権者のポスター(乙1)の上段には、本件商標と社会通念上同一の商標が大きく表示されており、下部には本件商標権者の名称等が表示されている。また、中央には「私たちがeクリニックのスタッフです」の文字とともに、本件商標権者にスタッフとして所属する医師、はり師・きゅう師、歯科医師、管理栄養士等の顔写真と氏名が表示されている。当該ポスターは、当該スタッフのクリニックの待合室等に掲示されている。
本件商標権者は、P社に対し、ポスター(乙1)を、要証期間内である2023年2月28日に100部発注し(乙2の1)、このポスターが、同年3月7日に、同社から本件商標権者に納品されたことは明らかである(乙2の2~乙2の4)。
3 本件商標権者にスタッフとして所属するはり師・きゅう師や医師が院長を務める治療院や医院の外観及び内装を撮影した写真(乙3の1~乙3の4)によれば、これらの治療院や医院内にポスター(乙1)が掲示されていることがわかる。
また、これらのはり師・きゅう師や医師の署名付き宣誓書(乙4)によれば、これらの者は、要証期間内にポスター(乙1)の提供を受けて、これらの治療院や医院内に掲示したことがわかる。
4 当該ポスターの顔写真中に、本件商標権者のスタッフで管理栄養士であるK氏が掲載されている。
5 本件商標権者が2023年10月1日付けで発行したテキスト「栄養保険 健康貯金が貯まるロジカル栄養学」の表紙の右下には、本件商標と社会通念上同一の商標が表示されており、奥付には本件商標権者の名称が記載されている。このテキストは、2023年9月11日には株式会社プリントパックに発注され、同年10月2日には当該テキストが被請求人のもとに届き、遅くとも2023年11月2日には、関係各所に送付され、K氏には、同時期に本件商標権者の代表より直接手渡しで提供された。K氏の署名付き宣誓書により、K氏は、要証期間内に被請求人のスタッフとして患者等に栄養の指導を行った。
第4 当審の判断
1 本件審判の請求について
(1)商標法第50条第1項は、「継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品又は指定役務についての登録商標の使用をしていないときは、何人も、その指定商品又は指定役務に係る商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。」と規定しているところ、登録商標の不使用による取消審判の請求は、専ら被請求人を害することを目的としていると認められる場合などの特段の事情がない限り、当該請求が権利の濫用となることはないと解するのが相当である(知財3判平成20年6月26日、平成20年(行ケ)第10025号)。
(2)本件審判の請求が権利の濫用であるとすべき特段の事情は見当たらない。
この点、被請求人は、請求人が一人の自然人である、また、審判請求書に電話番号を記載していない等と主張しているが、「何人も」取消審判を請求することができることに照らせば、これらの点は、本件審判の請求が権利の濫用となるような具体的な事情に該当しない。
さらに、被請求人は、請求人が1の登録商標につき6種類の役務について6件の審判請求を行って、非営利活動を行っている被請求人に過度な金銭的負担を課しその運営を害することを目的しているとも主張しているが、登録商標の指定役務の一部についての取消審判請求や同じ登録商標についての複数の取消審判請求が禁止されていないことに照らせば、請求人が1の登録商標に含まれる役務の異なる一部について本件審判を含む6件の審判請求を提起したとしても、そのことは、本件審判の請求が権利の濫用となるような具体的な事情に該当しない。
2 被請求人が提出した証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)本件商標権者は、大阪府大阪市に所在し、医院の院長である医師や治療院の院長であるはり師・きゅう師等をそのスタッフとして活動する特定非営利活動法人(NPO法人)である(乙1、乙2、乙4)。
(2)本件商標権者は、P社(以下「印刷会社」という。)に対し、「A2ポスターver2023」の品名でA2版片面印刷4色刷のポスター(以下「本件ポスター」という。)を100部発注し、印刷会社は、2023年2月28日付けで、本件商標権者に対し、この発注に対する請求書(インボイス)を発行した(乙2の2)。請求書では、支払条件がクレジットカード払いである旨、及び納品期日が7営業日である旨が示されている。
(3)印刷会社は、2023年3月7日付けで本件商標権者に本件ポスターを納品し(乙2の4)、これらは、本件商標権者のスタッフである医師等に提供された(乙4の1~乙4の4)。
その後、提供を受けた医師等は、2023年12月18日まで、それぞれの者が大阪市や山口県周防市において営業する医院等の院内において、本件ポスターを掲示した(乙3の1~乙3の4、乙4の1~乙4の4)。
(4)本件ポスターは、その下部に「eクリニック」の文字とともに、本件商標権者の名称、所在地等を表示したものであり、その上部には、大きく別掲2(1)の使用商標1が表示されている。また、使用商標1の下に、「私たちがeクリニックのスタッフです」との文字が表示されるとともに、21人の医師等の顔写真、氏名及び身分が表示されている。その中には、「管理栄養士」の表示とともにKの顔写真と氏名がある。
さらにその下には、「病気で苦しんだり寿命を縮めたりすることなくみんな元気で長生きできる社会を目指します!」との標語が表示されている。
(5)本件商標権者は、印刷会社に対し、「栄養保険2023」の品名でA5版両面印刷4色刷36頁の中綴製本のテキスト(以下「本件テキスト」という。)を500部発注し、印刷会社は、2023年9月11日付けで、本件商標権者に対し、この発注に対する請求書(インボイス)を発行した(乙5の2)。請求書では、支払条件が代金引換(後払)である旨、及び納品期日が7営業日である旨が示されている。
(6)印刷会社は、2023年10月2日付けで本件商標権者に本件テキストを代金引換で納品した(乙5の3)。本件商標権者は、同年11月に日本国内の複数の者に対して本件テキストの出荷を予定しており(乙5の5)、同年10月に納品された本件テキストは、これらの者に対し出荷されたものと推認される。
(7)本件テキスト(乙5の1)は、「栄養保険 健康貯金が貯まるロジカル栄養学」とのタイトルのものであり、その表紙に別掲2(2)の使用商標2が記載されており、その裏表紙に「定価:800円+税」と記載されている。また、本件テキストの奥付には、本件テキストが2023年10月1日に第4版第1刷が発行されたものである旨、発行者が本件商標権者である旨が記載されている。
(8)本件テキストは、「不足しがちな栄養素を「栄養素補給サプリメント(ベースサプリメント)」で補うこと」を示す「栄養保険」の概念に関する事項をその内容とするものと認められ(乙5の1)、管理栄養士であるKは、本件テキストの作成に監修として関与した(乙6)。
(9)本件テキストの「栄養保健、かけ方の目安」の項目のページの末尾には、「以上が、「栄養保健、かけ方の目安」です。ご不明な点がありましたら、遠慮なくeクリニック受付までお問合せください。」と記載されている。そして、本件テキストの奥付には、本件商標権者の電話番号、メールアドレス、WEBページのURL、「eクリニック」の文字が記載されている検索フォームの絵が記載されており(乙5の1)、いわば、「eクリニック受付」の問合せ先が記載されているといえる。
3 上記2において認定した事実によれば、以下のとおり判断できる。
(1)使用商標1及び使用商標2について
本件商標は、図案化した水色の「e」の欧文字とその中央に重畳させた青色の「CLINIC」の欧文字との組合せからなる商標である。これに対し、使用商標1及び使用商標2は、図案化した水色のeの欧文字とその中央に重畳させた青色の「CLINIC」の欧文字との組合せからなる商標であり、両者は、「e」の欧文字の一部等に若干の違いはあるもののほぼ同様の構成のものであって、外観上同視できるものである。
よって、使用商標1及び使用商標2は、本件商標と社会通念上同一のものである。
(2)使用者について
ア 上記2(4)によれば、本件ポスターには、使用商標1とともに本件商標権者の名称、所在地等が表示されており、さらに、上記2(3)によれば、本件ポスターは、本件商標権者のスタッフである医師等により、自身が営業する医院等の院内に掲示されたものである。そして、上記2(4)によれば、本件ポスターは、本件商標権者の理念を示す標語や「私たちがeクリニックのスタッフです」との文字の下に示されたKの顔写真と氏名を「管理栄養士」の表示とともに表示するものであり、本件商標権者のスタッフである医師等は、本件ポスターを院内に掲示して、本件商標権者のスタッフに「管理栄養士」が含まれており、後述イに示す問合せへの対応を含む「栄養の指導」の役務の提供が本件商標権者のスタッフである「管理栄養士」において可能となっている旨を告知しているものである。
イ また、上記2(8)のとおり、使用商標2を表示する本件テキストは「不足しがちな栄養素を「栄養素補給サプリメント(ベースサプリメント)」で補うこと」に関するものであり、いわば「栄養の指導」をその内容とするものであるところ、本件商標権者のスタッフであり管理栄養士であるKは、本件テキストの作成に監修として関与したものである。そして、本件テキストには、上記2(9)のとおり、「栄養保健、かけ方の目安」の内容、いうなれば、栄養素補給サプリメントによる不足しがちな栄養素の補充の仕方について「eクリニック受付」への問合せが可能である旨とその問合せ先が記載されている。このことから、管理栄養士Kは、本件商標権者のスタッフとして、本件テキストの作成に関与することで、本件テキストの読者に対し、問合せに応じて栄養素の補充の仕方等の栄養の指導を行うことができる旨を本件テキストの内容として具体的に示したものといえる。
さらには、本件テキストは、上記2(7)のとおり定価の記載があり、少なくとも本件商標権者のスタッフ以外の者に対する無料配布は予定されていないものの、発行者である本件商標権者の名称や「eクリニック」の文字を明示して「ご不明な点がありましたら、遠慮なくeクリニック受付までお問合せください。」と記載しており、本件テキストの購入者からの問合せに対してのみならず、本件商標権者のスタッフや本件テキストの購入者である医師が営業する医院における閲覧者からの問合せに対しても、本件商標権者のスタッフによる栄養の指導が行われることが明らかである。
以上を踏まえれば、本件商標権者は、いわば、本件テキストの発行及び配布を通じて、栄養素の補充の仕方等の栄養の指導を行うことができたことを告知しており、本件商標権者は、「栄養の指導」の役務を提供したものと推認される。
ウ よって、使用商標1及び使用商標2の使用者は、本件商標権者であるといえる。
(3)使用役務について
上記(2)ア及びイによれば、使用商標1及び使用商標2に係る使用役務は、請求に係る指定役務である「栄養の指導」であるといえる。
(4)使用時期及び使用場所について
ア 上記2(2)及び(3)によれば、使用商標1を表示する本件ポスターは、2023年(令和5年)2月28日に印刷会社に発注されたものが同年3月7日に納品され、これが本件商標権者のスタッフである医師等に提供され、同年12月18日まで、これらの医師等は、それぞれが営業する医院等の院内に本件ポスターを掲示したものである。上記2(2)のとおり、本件ポスターの品名が「A2ポスターver2023」であることに照らせば、本件ポスターは納品後さほど時間をおかずに医師等に提供されて、それぞれの医院等において掲示されたものと推認されるから、使用商標1の使用時期は、要証期間内であることが明らかである。
また、使用商標1の使用場所である医院等は、大阪市内や山口県周防市内にあり、いずれも日本国内である。
イ 上記2(6)及び(7)のとおり、本件商標権者は、2023年11月に複数の者に対して使用商標2を表示する本件テキスト(2023年10月1日発行の第4版第1刷)の出荷を予定しており、同年10月2日に本件テキストが納品されたことから、この出荷ができなかったと考えるべき事情は見当たらない。
このことから、納品された本件テキストは、予定どおり、要証期間内である2023年11月に出荷されたものと推認され、使用商標2の使用時期は、要証期間内であると推認される。
また、本件テキストの出荷先は、いずれも日本国内であり、使用商標2の使用場所は、日本国内である。
(5)使用行為について
ア 上記(2)ア及び(3)に照らせば、本件ポスターは、本件商標権者のスタッフとして「栄養の指導」を行う管理栄養士がスタッフとして自身に所属することを告知することで、本件商標権者として「栄養の指導」を行う旨を告知するものとなっており、請求に係る指定役務の範ちゅうの役務である「栄養の指導」の役務に関する広告に該当するものといえる。
そして、上記(4)アに照らせば、本件商標権者は、要証期間内に、日本国内で、請求に係る指定役務に関する広告である本件ポスターに本件商標と社会通念上同一の商標である使用商標1を付して展示する行為を行ったものである。この行為は、商標法第2条第3項第8号に掲げる使用行為に該当する。
イ 上記(2)イ及び(3)に照らせば、本件テキストは、その発行及び配布を通じて、本件商標権者が「栄養の指導」を行う旨を告知するものとなっており、請求に係る指定役務の範ちゅうの役務である「栄養の指導」の役務に関する広告に該当するものであるといえる。
そして、上記(4)イに照らせば、本件商標権者は、要証期間内に、日本国内で、請求に係る指定役務に関する広告である本件テキストに本件商標と社会通念上同一の商標である使用商標2を付して頒布する行為を行ったものである。この行為は、商標法第2条第3項第8号に掲げる使用行為に該当する。
4 以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者が請求に係る指定役務について本件商標(社会通念上同一の商標を含む。)を使用していたことを証明したということができる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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