商標取消審判
2023-300744
エテ、イイテイイイ
- 審判番号
- 2023-300744
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願2003-110858
- 登録番号
- 4798199
- 請求日
- 2023年10月19日
- 審決日
- 2024年08月30日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【請求人】庄司 夏子
- 【請求人代理人】稲葉 良幸
- 【請求人代理人】田中 克郎
- 【請求人代理人】葉玉 匡美
- 【請求人代理人】石田 昌彦
- 【請求人代理人】中河 香一郎
- 【被請求人】株式会社 ミルク
- 【被請求人代理人】弁理士法人三枝国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 雅也
- 審判官 馬場 秀敏
- 審判官 富澤 哲生
- 分類
- T132 .1 -Z (Y2124)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第50条、商標法第2条第3項、商標法第50条第1項、商標法第1条、商標法第50条第2項、商標法第2条第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第4798199号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
登録第4798199号商標の指定商品中、第21類「食器類(貴金属製のものを除く。),こしょう入れ・砂糖入れ及び塩振り出し容器(貴金属製のものを除く。),ナプキンホルダー及びナプキンリング(貴金属製のものを除く。),栓抜,なべ敷き」及び第24類「織物製テーブルナプキン」についての商標登録を取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第4798199号商標(以下「本件商標」という。)は、「ete」の欧文字を横書きにしてなり、平成15年12月12日に登録出願、同16年8月27日に第21類「食器類(貴金属製のものを除く。),こしょう入れ・砂糖入れ及び塩振り出し容器(貴金属製のものを除く。),ナプキンホルダー及びナプキンリング(貴金属製のものを除く。),栓抜,なべ敷き」及び第24類「織物製テーブルナプキン」を含む、第3類、第9類、第16類、第21類、第24類及び第43類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として設定登録されたものである。
その後、商標権一部取消し審判により、第43類に属する役務について取り消すべき旨の審決がされ、令和6年5月14日にその確定審決の登録がされた。
そして、本件審判の請求の登録は、令和5年11月9日になされたものであり、この登録前3年以内の期間(令和2年11月9日~令和5年11月8日)を以下「要証期間」という。
第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、審判請求書及び令和6年1月9日付け審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)に対する同年2月26日付け審判事件弁駁書(以下「弁駁書」という。)にて、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第5号証(枝番号を含む。)を提出した。
なお、以下、証拠の表記に当たっては、甲第1号証を「甲1」、乙第1号証を「乙1」のように省略して表示する場合があり、枝番号のすべてを示すときは、枝番号を省略する。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、第21類「食器類(貴金属製のものを除く。),こしょう入れ・砂糖入れ及び塩振り出し容器(貴金属製のものを除く。),ナプキンホルダー及びナプキンリング(貴金属製のものを除く。),栓抜,なべ敷き」及び第24類「織物製テーブルナプキン」(以下「請求に係る指定商品」という。)について、継続して3年以上日本国内において、本件商標の権利者(以下「商標権者」という。)、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 弁駁書による主張
(1)被請求人の主張概要
被請求人は、答弁書、及び乙第4号証ないし乙第8号証において、被請求人が「ete」の標章を付したガラス製のペアグラス(以下「本件ペアグラス」という。)を要証期間内に顧客に提供している旨を主張し、当該商標を使用した商品は、第21類「食器類(貴金属製のものを除く。)」に該当すると主張する。
また、被請求人は、商標権者の販売するアクセサリーやジュエリーを購入した場合、購入金額に応じてポイントが付与され、貯められたポイントに応じてオリジナル製品と交換できること、そのオリジナル製品の1つが本件ペアグラスであるとの説明を行っている。
(2)被請求人の主張の当否について
ア 被請求人が配布する本件ペアグラスの性質
乙第4号証によれば、商標権者の実店舗ないしオンラインショップで商標権者のアクセサリーやジュエリーを購入した場合、110円(税込)の購入で1ポイント、ete ONLINESTOREにてエコラッピングを選択した場合に10ポイントが付与されるシステムを設け、貯まったポイントに応じてポーチやジュエリーボックス、本件ペアグラスのような各種グッズと交換できることとされている。
このように、本件ペアグラスはあくまで商標権者の本来的業務に当たるアクセサリーやジュエリーの購入者に無償で配布されるものであるから、アクセサリーやジュエリーに対する広告目的や顧客誘引目的で配布される、いわゆる販促品(ノベルティ)に該当するというべきである。
イ 販促品(ノベルティ)として頒布される物品の「商品」該当性
商標法には、「商品」を定義した規定はないが、商標法は商標による出所表示機能を保護するものであり(商標法第1条)、商標登録が認められるのは、自己の業務に係る「商品」又は役務について使用をする商標であり(同法第3条第1項)、また、不使用取消の対象となるのは、指定「商品」について使用がされなかった場合である(同法第50条第1項)ことから、商標法上の「商品」といえるためには、商取引の対象であって、出所表示機能を保護する必要のあるものでなければならないとされる(知財高裁平成19年9月27日判決(平成19年(行ケ)10008))。
また、商標法における「商品」は、商取引の目的物として流通性のあるもの、すなわち、一般市場で流通に供されることを目的として生産される有体物であるとされている(東京高裁昭和63年3月29日判決(昭和62年(ネ)1462))。
すなわち、商標は取引市場で識別標識として使用されるものであることから、「商品」として認められるためには、独立して取引対象となることが必要であると考えられている。
また、「商品」は原則として有償で取引されるものをいうと考えられており、一般に無償で配布されるものや主たる商品や役務に付随して実費程度の対価で譲渡される物品は「商品」には該当しないと解されている(東京高裁昭和60年7月31日判決(昭和59年(行ケ)256))。
そのため、単に広告目的や顧客誘引目的で配布される販促品(ノベルティ)は「商品」には該当しないというべきである。
ウ 本件ペアグラスの「商品」該当性
被請求人は、顧客に配布した本件ペアグラスが第21類「食器類(貴金属製のものを除く。)」に該当するものであると主張している。すなわち、本件ペアグラスは商標法における「商品」に該当すると主張している。
しかし、前述のとおり、本件ペアグラスは、商標権者の本来的業務であるアクセサリーやジュエリーの購入に際して付与されたポイントを貯めた顧客の求めに応じ、無償で配布されるにすぎないものである。
したがって、本件ペアグラスは販促品(ノベルティ)としてのみ使用されるものであり、本件ペアグラスのみ単独で販売される等の事情はないから、本件ペアグラスが独立して取引対象となることはない。
また、被請求人は答弁書において、「ポイントにより引き換えられる製品については、無償で提供されるものではあるものの、本件における当該製品は、『ete』に係る標章が付された商標権者のオリジナル製品であって、商標権者のアクセサリーやジュエリー等を購入した顧客の求めに応じて提供されており、それ自体で取引の対象となっていると言える。」と述べている。
しかし、「ポイントにより引き換えられる製品」であるという事実や、「無償で提供される」という事実、さらにあくまで「アクセサリーやジュエリー等を購入した顧客の求めに応じて提供され」るにすぎないという事実は、本件ペアグラスを入手するためにはアクセサリーやジュエリー等を購入しポイントを貯めなければならないこと、ポイントを貯めれば無償で配布されることを意味しているから、これらの事実はむしろ、「本件ペアグラスがそれ自体で取引の対象となっていないこと」を意味しているといわざるを得ない。
また、被請求人は「本件における当該製品は、『ete』に係る標章が付された商標権者のオリジナル製品であって」と述べるものの、乙第5号証及び乙第6号証にも明確に記載されているとおり、本件ペアグラスは「sghr」「スガハラ」というブランドの「リリオ」という名称のタンブラーである。
当該タンブラーは、菅原工芸硝子株式会社(甲3。以下「菅原工芸硝子社」という。)が製造する商品であり、「LIRIO(リリオ)」の名称で8種類の商品がそれぞれ2,420円で販売されており(甲4)、また、乙第6号証にも記載されている特徴的な「sghr」のロゴは商標登録されている(甲5)。
そのため、本件ペアグラスは明らかに菅原工芸硝子社のオリジナル製品であり、同社が自社の商品であるタンブラーに、自他商品識別目的で「sghr」及び「LIRIO(リリオ)」の商標を付して販売しているものである。
一方、商標権者は本件ペアグラスを商標権者の販促品(ノベルティ)として顧客に配布するに際し、一種の広告目的で底面に「ete」と付したにすぎないというべきである。
そのため、被請求人が答弁書で主張するような、本件ペアグラスに対する「ete」ブランドの信用の化体も存在しないというべきである。
エ 小括
上記のとおり、本件ペアグラスはあくまで販促品(ノベルティ)に過ぎず、独立して取引対象となるものではないから、商標法が予定する「商品」には該当しない。
したがって、本件ペアグラスは、第21類「食器類(貴金属製のものを除く。)」には含まれないというべきである。
また、本件ペアグラスは菅原工芸硝子社が自社のオリジナルブランドとして販売する商品であり、「ete」の文字は商標権者により広告目的で付されているにすぎない。
なお、乙第5号証には「ete」の文字が付されているが、同文字はウェブサイト上の各種ノベルティの案内ページに付されているにすぎず、何らかの商品の自他識別目的で記載されたものではない。
乙第6号証については、前述のとおり本件ペアグラスにおける商標は「sghr」及び「LIRIO(リリオ)」部分であり、左上に付された「ete」の文字は、あくまで商標権者のショップで3000ポイントを貯めれば本件ペアグラスが配布されることを案内するために付されたにすぎず、「ete」部分が本件ペアグラスの自他商品識別機能を有しているわけではない。
また、乙第7号証には「2014.8.22」の数字が印字されているが、もし2014年8月22日前後に配布されたものであれば要証期間内の使用には当たらないし、仮に要証期間内に配布されたものであってもノベルティとしての使用にすぎないことは前述のとおりである。
さらに、乙第8号証についても、「ete」の文字はあくまで顧客がポイントと引換えに受け取るノベルティの発注先として表示されているか、広告目的で表示されているにすぎないものであり、ペアグラスの自他商品識別目的で表示されているものということはできない。
(3)結語
以上のとおり、被請求人は、本件商標を第21類「食器類(貴金属製のものを除く。)」について要証期間内に使用していることにつき、何ら立証を行っているとはいえない。
第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする旨の審決を求め、答弁書において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第8号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁の理由
(1)本件商標の使用について
商標権者は、本件商標と同じ構成である、肉太に表した「ete」の欧文字をメインのブランドの一つとして、アクセサリーやジュエリー等の製造・販売を行う会社であるところ、当該「ete」に係るブランドは、1994年より継続して使用され、現在では、全国各地域の百貨店やショッピングモール等において67もの店舗を有しており、台湾においても5店舗を有している(乙1、乙2)。
また、商標権者は、当該「ete」ブランドについて、積極的にインターネットを通じたアクセサリーやジュエリー等の製品販売も行っている(乙3)。
加えて、商標権者は、「ete」ブランドに係る製品を購入いただいた顧客向けに、製品購入等に応じてポイントを付与し、当該顧客において貯められたポイントに応じて、「ete」ブランドが付された他のオリジナル製品と引換えができる制度を採用している(乙4)。
かかる貯められたポイントと引換えができるオリジナル製品の一つに、本件ペアグラスがあり(乙5)、当該ペアグラスは、ガラス製であって、本件商標の第21類「食器類(貴金属製のものを除く。)」に該当することは明らかである(乙6)。
また、乙第7号証は、本件ペアグラスの底面のサンプル写真であるところ、当該底面には、本件商標に係る「ete」の標章が付されている。
そして、乙第8号証は、実際に要証期間内において、顧客より発注されていたこと示す発注書の写しである。
これにより、本件商標に係る「ete」標章が付されたガラス製のペアグラスが顧客に提供されていることが分かる。
このように、商標権者は、要証期間に日本国内において、本件商標に係る「ete」標章を、ガラス製のペアグラスに係る第21類「食器類(貴金属製のものを除く。)」に使用していることが明らかである。
なお、ポイントより引き換えられる製品については、無償で提供されるものではあるものの、本件における当該製品は、「ete」に係る標章が付された商標権者のオリジナル製品であって、商標権者のアクセサリーやジュエリー等を購入した顧客の求めに応じて提供されており、それ自体で取引の対象となっているといえる。
また、顧客においては、アクセサリーやジュエリー等以外の製品に「ete」のブランドが付されることに対して独自の価値を見いだしていることは明らかであり、当該製品についても、「ete」に係るブランドの信用は化体している。
そうすると、商標権者において、不使用により取り消されるような不利益を被るいわれはなく、少なくとも不使用取消における場面においては、当該製品は、商標法上の商品に該当すると考えられる。
よって、上述のように、商標権者は、本件商標に係る「ete」標章を、ガラス製のペアグラスに係る第21類「食器類(貴金属製のものを除く。)」に使用している。
(2)むすび
以上により、本件商標は、商標権者によって、第21類「食器類(貴金属製のものを除く。)」について、要証期間に日本国内において使用されていることが明らかにされた。
したがって、本件商標は、請求に係る指定商品について、その登録が取り消されるべきではない。
2 審尋に対する回答
審判長は、被請求人に対し、令和6年3月29日付けで、合議体の暫定的見解を示した審尋を送付し、相当の期間を指定して、当該審尋に対する回答を求めたが、被請求人は、何ら応答していない。
第4 当審の判断
1 被請求人の立証責任
商標法第50条による商標登録の取消審判の請求があったときは、同条第2項の規定により、被請求人において、請求に係る指定商品のいずれかについて登録商標の使用をしていることを証明し、又は使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り、その登録の取消しを免れない。
すなわち、本件商標の使用をしていることを証明するには、商標法第50条第2項に規定されているとおり、被請求人は、要証期間に、日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、請求に係る指定商品のいずれかについて、本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標の使用(商標法第2条第3項各号のいずれかに該当する使用行為)をしていることをすべて証明する必要がある。
2 事実認定
(1)被請求人の提出した乙各号証によれば、以下の事実が確認できる。
ア 乙第1号証について
乙第1号証は、商標権者の会社プロフィールであり、1葉目に、「MILK Co.,ltd.COMPANY PROFILE」の記載があり、2葉目の「BRANDS -展開ブランド-」についての記載中に、本件商標の記載、その下に、「エテ」1994年デビュー。/<ブランドコンセプト>/“Always,my favorite one.”/いつも自分らしさを大切に。“ジュエリーをもっと自由に楽しんでいただきたい”という想いのもと、シンプルな美しさを讃えながら、いとさじの遊び心を添えたジュエリーを展開。」の記載がある。
また、6葉目に、「株式会社 ミルク」の記載、その下の会社情報についての記載中、「営業種目」の項に、「アクセサリー貴金属 企画・製造」、「アクセサリー貴金属 販売」、「ディスプレイ器具 企画・製造」及び「相手先ブランド商品 製造」の各記載がある。
イ 乙第2号証について
乙第2号証は、被請求人が、商標権者のウェブサイトと主張するものであり、左上に「ete」の欧文字の記載、中ほどに「青山本店」の記載、その上下に店舗内を撮影した複数の写真が掲載されている。
また、末尾に「C Milk Co.,ltd.All Rights Reserved.」(審決注:「C」は「○」の中に「C」を表示した記号を表す。以下同じ。)の記載がある。
ウ 乙第3号証について
乙第3号証は、「ete ONLINE STORE」ウェブサイトであり、指輪、ネックレス等の商品一覧が、それぞれの商品画像により示されており、各商品画像には、全てに共通して「ete」の欧文字の記載が添えられ、また、個別の商品名及び個別の価格が添えられている。
また、3葉目の末尾に「C Milk Co.,ltd.All Rights Reserved.」の記載がある。
エ 乙第4号証について
乙第4号証は、「ete ONLINE STORE」ウェブサイトにおける「ご利用ガイド」についてのページであり、「ポイントについて」の記載として、「ete ONLINE STORE、全国のeteショップで商品をご購入いただくと貯まるポイントです。110円(税込)お買い上げごとに1ポイント、ete ONLINE STOREにてエコラッピングを選択いただきましたお客様へ10ポイントが付与されます。」の記載の下、「ポイント発生条件」の項に「ete ONLINE STORE、全国のeteショップで商品を購入することで発生します。ポイントはご購入金額(税込)に対して発生します。なお、ポイントを利用するためには会員登録(無料)が必要です。」の記載、「ポイントの交換について」の項に「たまったポイントは、メンバーズギフトと交換いただけます。」等の記載がある。
オ 乙第5号証について
乙第5号証は、「ete ONLINE STORE」ウェブサイトにおける「POINT EXCHANGE」についてのページであり、「ete MEMBERSでたまったポイントは、メンバーズギフトと交換できます。」の記載があり、また、種々の商品一覧がそれぞれの商品画像により示され、その中に、2個のガラス製のコップの画像により示される商品が含まれている。そして、当該画像中に「※店舗ではイニシャル刻印をオーダーいただけます。」の記載があり、当該画像の下に、「3000pt」及び「Sghr Pair Grass」の各記載がある。
カ 乙第6号証について
乙第6号証は、被請求人が、本件ペアグラス紹介の資料と主張するものであり、左上に「ete MEMBER’S GIFT:3000pt」の記載、その下に「Sghr Pair Glass/No.81 Sghrスガハラ ペアグラス “リリオ”」及び「※それぞれにイニシャル刻印が可能です」の各記載、その右に上記オの2個のコップの画像と同じ画像がある。
キ 乙第7号証について
乙第7号証は、被請求人が、本件ペアグラスの底面のサンプル写真と主張するものであり、コップの底面に「ete」「Sghr」ほかの文字が刻印されていることが見て取れる。
ク 乙第8号証について
乙第8号証は、被請求人が、本件ペアグラスの発注書(以下「発注書」という。)と主張するものであり、各記入欄に記入された内容や、それぞれの右上のファクシミリの送信日時を示すものと思われる記載を除き、乙第8号証の1と乙第8号証の2の書類の様式は共通である。
そして、発注書の左上に「ete」の欧文字の記載、その右に「Sghr×ete Pair Glass Order Sheet」の記載があり、その下の「Date 日付」の記入欄に、乙第8号証の1においては「2023.4.30」と、乙第8号証の2においては「2023.10.11」と記入され、その下の「Date of receipt/お約束日」の記入欄に、乙第8号証の1においては「2023.5.31(水)」と、乙第8号証の2においては「2023.11.8(水)」と記入されている。
また、発注書の中ほどには、「◆Stamp Design」欄の記載として「TYPE1」及び「TYPE2」の記載があり、「TYPE1」の右に、内部に「ete」の欧文字及び「KENTAROU & MARIE/2010.12.24」の文字を記載した円、「TYPE2」の右に、内部に「ete」の欧文字及び「K M/2010.12.24」の文字を記載した円が、それぞれ示されている。
また、いずれにも「Sghr」の文字も記載されている。
そして、それらの下には、「1.刻印のデザインタイプをどちらかお選びいただき、刻印するおふたりのお名前/イニシャルをご記入ください。」の記載とともに、チェックボックスの記入による「TYPE1」及び「TYPE2」の選択欄が示され、「TYPE2」の選択欄においては、「イニシャルを大文字で1文字ずつご記入ください。」の記載とともに、イニシャルの記入欄が設けられている。
ここで、乙第8号証の1、乙第8号証の2とも「TYPE2」のチェックボックスにチェックが記入されている。
(2)請求人の提出した甲各号証によれば、以下の事実が確認できる。
ア 甲第3号証について
甲第3号証は、菅原工芸硝子社のウェブサイトにおける会社概要のページであり、1葉目において、左上に「Sghr」の文字の記載、その下の「会社概要」についての記載中に同社の所在地等の記載、左下に「https://www.sugahara.com/about/」の記載がある。
イ 甲4号証について
甲第4号証は、菅原工芸硝子社のウェブサイトにおける同社の商品「LIRIO」についてのページであり、甲第4号証の2において、左上に「Sghr」の記載があり、その下に、乙第5号証における2個のコップのうちの一方と同様のコップの写真が掲載され、左下に「https://shop.sugahara.com/view/item/006001000254?category_page_id=ct238」の記載がある。
(3)上記(1)及び(2)によれば、次の事実を認めることができる。
ア 商標権者は、アクセサリー貴金属の企画・製造並びにその販売、ディスプレイ器具の企画・製造及び相手先ブランド商品の製造を営業種目とし、「ete(エテ)」というブランドをジュエリーについて展開する会社である(乙1、乙2)。
イ 商標権者は、「ete ONLINE STORE」と称するオンラインストア(以下「オンラインストア」という。)のウェブサイトを開設し、指輪、ネックレス等のジュエリーの販売を行っている(乙3)。
ウ オンラインストア又は店頭販売を行う「eteショップ」にて商品を購入した者は、購入金額に応じて発生するポイントを獲得することができ、オンラインストアに表示されている種々のメンバーズギフトのうちの獲得ポイント数が足りているものと交換することができる(乙4~乙6)。
エ 種々のメンバーズギフトのうち、本件ペアグラスは、2個のガラス製のコップであり、これを希望する者は、発注書を用いてこれを発注する際に、各コップの底面に加工される刻印のデザインを「TYPE1」及び「TYPE2」の中から選択することができるが、いずれを選択しても、刻印の内容には「ete」及び「Sghr」の各文字が含まれるものとされる(乙6~乙8)。
そして、「TYPE2」を選択した発注が2023年4月30日になされ、「お約束日」の日付が、2023年5月31日に設定された(乙8の1)。
オ 本件ペアグラスは、菅原工芸硝子社の「Sghr」ないし「LIRIO」なる名称の商品である(乙6、甲3、甲4)。
3 判断
上記2の事実認定からすれば、次のとおり判断できる。
商標権者は、商標権者の指輪、ネックレス等のジュエリーを所定の金額以上購入して相当のポイント数を獲得した者の発注に応じて、その発注者に対し、対応するポイント数と引換えに、菅原工芸硝子社の「Sghr」なる名称の本件ペアグラスを、「ete」及び「Sghr」の各文字を付して2023年5月(要証期間)に譲渡したことがうかがえる。
そして、本件ペアグラスに付された「ete」の文字は、本件商標と同一のつづりであり、また、本件ペアグラス(ガラス製のコップ)は、請求に係る指定商品中の「食器類(貴金属製のものを除く。)」に該当する商品である。
しかしながら、本件ペアグラスは、商標権者がオンラインショップで販売しているものではなく、本来は菅原工芸硝子社の「Sghr」なる名称の商品であって、商標権者が自身の商品である指輪、ネックレス等のジュエリーを所定の金額以上購入した者が、いわば景品として受け取るものとして、商標権者の業務に係る商品(指輪、ネックレス等のジュエリー)の販売促進のための販促品(ノベルティ)であるといえる。
ところで、商標は、主たる機能として商品、役務の出所を表示し、自他商品、役務を識別させる機能を有しており、商品、役務の品質を需要者、取引者のために保証する機能及び宣伝広告機能を有する。ここにいう商品、役務とは、必ずしも有償である必要はないが、一般に、販促品に付された企業名は、専らその販促品とは別の当該企業が扱う商品、役務の宣伝広告のために付されるものであって、販促品を登録商標の指定商品とする限りについてみれば、これに接する取引者、需要者に対して、商標が一般に有する自他商品(役務)識別機能を有するものではなく、もとより、販促品の品質を保証し、その宣伝広告をするために付されるものではないというべきである(東京高裁平成13年2月27日判決(平成12年(行ケ)335))。
そうすると、上記2に係る事実関係の下においては、本件ペアグラスに「ete」の文字が付されているとしても、それは商品「ガラス製のコップ」の自他商品識別標識として機能するのでなく、商標権者の指輪、ネックレス等のジュエリーの宣伝広告のためのものというのが相当であるから、本件ペアグラスに「ete」の文字が付されていることをもって、本件商標が請求に係る指定商品中の商品「食器類(貴金属製のものを除く。)」に使用されたものということはできない。
そのほか、要証期間に、請求に係る指定商品のいずれかについて本件商標の使用をしていることを認めるに足りる証拠は見いだせない。
よって、被請求人は、商標権者が、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を請求に係る指定商品のいずれかについて、要証期間に、商標法第2条第3項に規定する「使用」行為を証明したとはいえない。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人が提出した証拠によっては、被請求人は、要証期間に、日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)を、請求に係る指定商品のいずれかについて、商標法第2条第3号各号の使用行為を行ったことを証明していない。
また、被請求人は、本件商標を使用していないことについて正当な理由があることを明らかにしていない。
したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、その指定商品中「結論掲記の指定商品」についての登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-300744