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商標取消審判

2023-300275

スポコン

審判番号
2023-300275
法域
商標
審判種別
取消審判(商標取消の審決)
出願番号
商願2016-058298外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
5933956
請求日
2023年05月01日
審決日
2024年06月13日
公報発行日
2024年08月30日
結論
請求成立(取消)
当事者
審判長/審判官
分類
T132 .1 -Z (W09)
識別力・商標の種類(本文から自動判定・参考)
標準文字
論点(本文から自動抽出・参考)
称呼外観観念取引の実情指定商品の表示不使用(50条)使用の事実・証明社会通念上同一正当な理由(不使用)濃い色は判断部分で検討された論点、薄い色は本文中で触れているもの
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第2条第3項第8号、商標法第2条第3項第1号、商標法第2条第3項第2号、商標法第50条、商標法第50条第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の登録第5933956号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論
登録第5933956号商標の指定商品及び指定役務中、第9類「電子計算機用プログラム」についての商標登録を取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。

理由

目次 ▾ 18項目
理 由

第1 本件商標

本件登録第5933956号商標(以下「本件商標」という。)は、「スポ魂」を標準文字で表してなり、平成28年5月18日に登録出願、第9類、第41類及び第45類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同29年3月24日に設定登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

そして、本件審判の請求の登録日は、令和5年5月31日であり、本件審判の請求の登録前3年以内の期間(令和2年5月31日~令和5年5月30日)を以下「要証期間」という。

第2 請求人の主張

折りたたみ中(クリックで表示)

請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第9号証を提出した。

1 請求の要旨

本件商標は、その指定商品及び指定役務中、第9類「電子計算機用プログラム」について、継続して3年以上日本国内において、商標権者によって使用されている事実を発見することができず、また、商標登録原簿に専用使用権及び通常使用権は設定登録されておらず、許諾を受けた通常使用権者等による使用の事実もない。

さらに、本件商標を使用していないことについての正当な理由も認めることができないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。

2 弁駁書による主張の要旨

(1)被請求人の主張に対する反論

ア 被請求人提供役務は第42類「電子計算機用プログラムの提供」である点

被請求人は、答弁書(4頁(ウ))において、「・・・したがって、本件商品(審決注:被請求人が開発し、電気通信回線を通じて提供した商品「電子計算機用プログラム」をいう。以下同じ。)は第9類の「電子計算機用プログラム」に該当する・・・」などと述べる。

しかしながら、被請求人は、このような主張を展開するのみで何らの書証を提出していない。そのため、このような立証を伴わない主張を展開しようと、本件商標の使用事実を立証したことにはならない。

一般に、このような役務を顧客に提供する場合は、クラウド上にあるソフトウェアをインターネット経由で利用することが可能となるサービスであるSaaS(Software as a Service)として提供されるものであり、当該SaaSはコンピュータプログラムをダウンロードせずに利用することが可能となるものであり、第9類「電子計算機用プログラム」に該当するものではなく、第42類「電子計算機用プログラムの提供」に該当するものである。

この点、被請求人が顧客に提供したと主張する役務についても、いわゆるSaaSとして提供される形態をとるものであるから、第42類「電子計算機用プログラムの提供」に該当するものといわなければならない。なぜなら、仮に、被請求人提供役務が、ダウンロード可能なコンピュータプログラムであるならば、ダウンロード後は利用者のみが当該プログラムの内容(カスタマイズされたものを含む。)を把握、使用できるものであり、被請求人側で利用者閲覧画面(審決注:「利用者閲覧画面」とは本件商品の利用者のみが閲覧可能な表示画面をいう。以下同じ。)を把握することはできないはずだからである。

しかしながら、被請求人は、本来であれば把握することができないカスタマイズされた後の利用者閲覧画面を乙第9号証ないし同14号証の3として提出するものである。これが被請求人提供役務がSaaSの形態で顧客に提供される証左である。

そのため、被請求人提供役務は、顧客に対してSaaSの形態で提供されるものであり、第9類「電子計算機用プログラム」に該当するものではなく、第42類「電子計算機用プログラムの提供」に該当するものといわなければならない。

また、被請求人は、答弁書(5頁(エ))において、「本件商品はPWA(Progressive Web Apps)として利用できる・・・」などと主張するが、乙第6号証ないし同第8号証によっても、被請求人提供役務がSaaSではないこと、及び、ダウンロード可能なコンピュータプログラムであることの証左となるものではない。

さらに、被請求人は「PWAは、Webページをネイティブアプリのように端末にインストールし実行するアプリケーションであるなどと指摘しているが、この「端末にインストールし実行する」行為が、直ちに被請求人提供役務がSaaSに該当する事実を排斥するものではないことはいうまでもない。前記のとおり、被請求人提供役務は、クラウド上にあるソフトウェアをインターネット経由で顧客に提供するサービスであるSaaSに該当するものであり、第9類「電子計算機用プログラム」に該当するものではなく、第42類「電子計算機用プログラムの提供」に該当するものといわなければならない。

したがって、被請求人の主張は、失当である。

イ 被請求人提供役務に関する取引実態がない点

被請求人が提出する乙各号証のいずれからも顧客との取引の実態を認識、把握することはできない。この点、乙第26号証においてLINEトークのスクリーンショットを提出し、利用者に対して、利用者手引を送信していると主張するものである。

しかしながら、当該スクリーンショットからは、被請求人取締役が一方的に利用者手引を送信した事実のみしか窺い知ることはできず、どの顧客に対して送信したのか、果たして本当に利用者手引を送信したのかを把握、理解することはできない。そもそも、被請求人提供役務を顧客に対して販売したと主張するのであれば、発注書、請求書、領収書などの伝票やその他の取引書類が提出されて然るべきであるが、この点において被請求人からはこれらの書証の提出が一切見当たらない。そのため、被請求人と顧客との間で被請求人提供役務に関する取引の事実があるものか疑わしいものといわざるを得ない。

したがって、この点における被請求人の主張は、失当である。

(2)結語

以上より、被請求人が主張する答弁の理由及び提出された乙第1号証ないし乙第26号証のいずれからも、被請求人が、要証期間内に本件商標を本件指定商品に使用する事実を確認することはできない。

3 意見書による主張の要旨

(1)被請求人提供役務は第42類「電子計算機プログラムの提供」であることに変わりない点

ア 第9類「電子計算機用プログラム」はダウンロードして利用することが前提となっていること

第9類「電子計算機用プログラム」については、特許庁商標課編「商品及び役務の区分解説」において、「ダウンロードによる電子計算機用プログラム、記録媒体に記録した電子計算機用プログラムのソフトウェアが含まれる」(甲3~甲5)と記載されている。

これに対し、第42類「電子計算機用プログラムの提供」は、「電気通信回線を通じて電子計算機用プログラムを利用させる役務である」(同掲書、甲7~甲9)と記載され、ダウンロードできないプログラムを対象とする取り扱いとなっている。

このように、国際分類においては、ダウンロード可能なソフトウェア等を商標法上の商品と捉えており、ダウンロードできないソフトウェア等を商標法上の役務として捉えられている。

この一貫した伝統的な取り扱いを踏みにじるような例外を簡単に設けることは、国際的に許されるものではない。

イ PWAはダウンロードして利用するものではなく、第9類「電子計算機用プログラム」の前提を欠くこと

乙第27号証から乙第29号証を精査しても、PWAがサーバからダウンロードして利用する旨の記載は一切見当たらない。被請求人自身も「PWA」と「ダウンロードしてインストールするネイティブアプリケーション」は、一線を画していることを認めている。

PWAは、その利用に際して、ダウンロードすることなく、利用者にその機能を提供することを特徴とするものであることから、その時点で第9類の「電子計算機用プログラム」の前提を欠くものといわなければならない。

被請求人がPWAについて技術的説明を加えようと、PWAは商標法上の「役務」として捉えられるから、国際分類上は、「電子計算機用プログラムの提供」に該当する。

(2)商標法上の役務に該当しないこと

被請求人は、「本件商品を春日サッカークラブに無料で提供したものである」などと述べた上で裁判例を挙げて、「本件商品を対象とした取引は商取引であり・・・商標法上の商品に該当する」旨主張する。

商標法上の役務とは、他人のためにする労務又は便益であって、独立して商取引の目的となり得るべきものをいう。本件の取引が商取引である以上は、取引書類が一切存在しないといったことは取引の現実に鑑みるとあり得ないといわなければならない。

また、「本件商品は、商売のステップとして無償提供からはじめて、有償又は広告を組み込むことで収益化を図ろうとするものである。・・・口コミなどで他のスポーツチームへの展開が期待されるほか、自社の広告への問い合わせの応答時など見込み客に対し、提供事例として紹介するものである」旨説明しているが、本件商品が他のビジネスに繋がった等の証拠は被請求人からは一切出ていない。

なお、裁判例(乙35)は、「商品自体は無償で譲渡されるものであっても、当該商品の譲渡によって利益を得る仕組みがあり、その仕組みの一環として、当該商品が無償で譲渡されるのであれば、当該商品は交換価値を有し、商取引の対象となっていると認めることができるというべきである」と判示しており、商品を含む全体のビジネスモデルとして収益化される場面がある場合は、商標法上の商品となり得るとしたものであり、被請求人提供役務のような役務の提供はもとより、全体のビジネスモデルを概観した場合でも収益化の欠片を見いだすことができないような場合にまで、商品性を拡張する趣旨の裁判例でないこと明らかである。したがって、本裁判例と本件とは事案を異にする。

第3 被請求人の答弁

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1 被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第35号証(枝番を含む。枝番の全てを引用する場合は、その枝番の記載を省略する。)を提出した。

(1)本件商標の使用の事実

ア 本件商標の構成

本件商標は、「スポ魂」の文字からなる標準文字商標である。

イ 本件商標を使用した商品について

(ア)被請求人の事業内容

被請求人は、コンピュータソフトウェア開発、製造、販売等を事業内容とする法人である(乙1)。

(イ)本件商標を使用した商品の概要

被請求人は、本件商品について本件商標を使用している。以下、本件商品について説明する。

本件商品は、スポーツチームのコミュニケーション用ソフトウェアであり、スポーツチームの試合等に関する各種情報を管理、入力、削除、変更、閲覧等できる商品である。本件商品は、利用者閲覧画面と、インターネット上に公開されているフロント画面を備えている。

上記フロント画面(https://nerima-kasuga.jp/)のWebページは、インターネット上のWebページを電子保存する団体(Internet Archive「WaybackMachine」)のウェブサイト(https://archive.org/web/)に保存されている。

乙第2号証の1は、2021年5月8日に保存された上記フロント画面のスクリーンショットであり、乙第2号証の2は、乙第2号証の1に示す表示画面を末尾までスクロールし、末尾に達したときの表示画面のスクリーンショットである。乙第2号証の2に示すように、本件商品のフロント画面には被請求人名称の英語表記「ambass inc.」が表示されている。また、この英語表記「ambass inc.」の文字には、被請求人のホームページ(乙1)へのリンクが張られている。

また、乙第3号証は、2021年5月8日に保存された上記Webページの全体をPDF出力したものである。

なお、2021年5月8日のアーカイブなのに、新着情報の欄に2023年の情報が表示され(乙2の1及び乙3)、2016年から2023年の最新の試合結果まで全ての試合結果が表示されている(乙3)のは、スクリプトがキャッシュされずにリアルタイムの情報をリンクしているからである。これはWebアーカイブの性質によるものである。また、画像やアイコンについては一部Webアーカイブがキャッシュしきれずに表示されていないものもある。しかしながら、これらの点を考慮したとしても、乙第2号証の1ないし乙第3号証によって、要証期間内に本件商品のフロント画面が存在しており、要証期間内のフロント画面に、被請求人の名称が表示されていたことは立証されている。

乙第4号証の1及び乙第4号証の2は、2023年3月29日に保存された上記フロント画面のスクリーンショットである。乙第4号証の2に示すように、2023年3月29日のフロント画面においても、被請求人名称の英語表記「ambass inc.」が表示されている。

また、乙第5号証は、2023年3月29日に保存された上記Webページの全体をPDF出力したものである。

以上に示すように、要証期間内において、被請求人の名称が表示された本件商品のフロント画面はインターネット上で公開されていた。なお、利用者閲覧画面については後述する。

(ウ)本件商品の提供態様

上記フロント画面(乙2~乙5)において、「KASUGA SOCCER CLUB」「春日サッカークラブ」との名称が表示されていることからも明らかなように、本件商品は、本件商品の利用者である各スポーツチームにそれぞれカスタマイズされて提供されるものである。

したがって、本件商品は、エンジンとなるプログラム及びカスタマイズされたモジュール等のプログラムをサーバーにダウンロードできるように設計されている。

なお、本件商品がインストールされるサーバーは、利用者が所有するサーバーであってもよいし、他のサーバー領域等であってもよい。いずれにせよ、上記のように、本件商品は利用者ごとにカスタマイズされてインストールされるプログラムであるため、インストールされた本件商品は、特定の利用者専用のものとなる。

このように、本件商品は、プログラムの機能のみをクラウド上から複数の顧客に提供するサービスとは異なるものである。

「春日サッカークラブ」用にカスタマイズされた本件商品がサーバーにインストールされると、そのインストールされた本件商品は、「春日サッカークラブ」しか利用できない。すなわち、他のスポーツチームが本件商品を購入しても、「春日サッカークラブ」用にカスタマイズされてインストールされた本件商品が、この購入者に提供される訳ではない。他のスポーツチームが本件商品を購入すると、購入したスポーツチーム用に本件商品がカスタマイズされて、このスポーツチームのサーバーや他のサーバー領域等に、カスタマイズされた本件商品がインストールされることにより、本件商品がこのスポーツチームに提供されることになる。

以上のように、本件商品は、商品の提供に際して、インストールパッケージ(電子計算機用プログラム)を顧客ごとにカスタマイズして、カスタマイズしたインストールパッケージを顧客ごとにサーバーにダウンロードして提供するように設計されている。したがって、本件商品は第9類の「電子計算機用プログラム」に該当するものである。

(エ)本件商品のPWA(Progressive Web Apps)について

またさらに、本件商品は、PWA(Progressive Web Apps)として利用できるように設計されている。PWAは、Webページをネイティブアプリのように端末にインストールし実行するアプリケーションである。このように、本件商品は、利用者の個々のコンピュータ端末、スマートフォン等の情報端末にもPWAとしてインストールできる。この点においても、本件商品は、第9類の「電子計算機用プログラム」に該当するものである。

乙第6号証及び乙第7号証に示すプログラムコードは、本件商品がPWAとしてインストールできる機能を実装していることを示している。乙第8号証は、本件商品についてのタイムスタンプのスクリーンショットである。このタイムスタンプは、プログラムを更新すると更新した日付で自動的に付与され、ファイルリスト参照コマンドなどによって表示できるものである。

乙第8号証のタイムスタンプにおいて、「manifest.json」及び「serviceWorker.js」と表示されているものが、PWA用定義である。これらのプログラムのタイムスタンプは、乙第8号証に示すように、「11月 12 20:27 2018 manifest.json」及び「11月 12 20:27 2018 serviceWorker.js」と示されている。このように、本件商品をPWAとして端末にインストールできる機能は、2018年11月12日に本件商品に実装されて現在に至るものであるから、要証期間においても本件商品は、利用者の個々のコンピュータ端末、情報端末等にPWAとしてインストール可能な商品であった。

なお付言すれば、AppStoreなどのアプリケーションストアを介して端末ヘインストールするタイプのネイティブアプリケーションであっても、対象製品の一部のプログラムが利用者の端末にインストールされて、データやコンテンツそのものはWEBを参照するものが一般的である。よって、PWAであっても、本件商品を構成するプログラムの少なくとも一部は、利用者の端末にインストールされるのであるから、上記ネイティブアプリケーションと同様に、本件商品は第9類の「電子計算機用プログラム」に該当するものである。

(オ)本件商品についてのまとめ

上記項目(ウ)において述べたように、本件商品は、商品の提供に際して、本件商品を顧客ごとにカスタマイズして、カスタマイズした本件商品を顧客ごとにサーバーにダウンロードして提供するように設計されている。したがって、本件商品は第9類の「電子計算機用プログラム」に該当するものである。

さらに、上記項目(エ)において述べたように、本件商品は、利用者の個々のコンピュータ端末、情報端末等にもPWAとしてインストール可能な商品であるから、この点においても、本件商品は、第9類の「電子計算機用プログラム」に該当するものである。

ウ 要証期間内における本件商標の使用について

(ア)本件商品の利用者閲覧画面について

本件商品は、公開されているフロント画面(乙2~乙5)に加えて、利用者閲覧画面へのログイン画面(乙9)を有している。上記フロント画面(乙2~乙5)を備える本件商品の利用者は「春日サッカーチーム」であり、このサッカーチームの所属員である複数の個人がユーザーIDとパスワードによって、利用者閲覧画面にログインできる。

乙第10号証から乙第14号証は、利用者閲覧画面のスクリーンショットである。乙第10号証から乙第13号証に示す利用者閲覧画面は、要証期間内に行われた試合結果を表示している。乙第10号証は、2023年5月の試合結果を表示しており、「2023年05月の試合結果」という文字の下に黒色で商標「スポ魂」との表示がある。さらに加えて、試合結果情報を囲む長方形の枠内の右上にオレンジ色で商標「スポ魂」との表示がある。黒色で表示された商標「スポ魂」は、文字全体に若干のデザイン化が施されているものの、「スポ魂」の三文字が横一列に並び且つ三文字とも黒色で明瞭に表示され、「スポ魂」の文字を明確に認識することができる。また、オレンジ色で表示された商標「スポ魂」は、一般的な書体で表されており、「スポ魂」の文字を明確に認識することができる。このように、試合結果の文字の下に黒色で表示されている商標「スポ魂」も、試合結果情報を囲む長方形の枠内右上に表示されている商標「スポ魂」も、いずれも標準文字商標である本件商標と社会通念上同一の商標である。

「スポ魂」の文字は、一般的な用語として使用されている「スポ根」の文字とは異なり、「魂」の文字を使用して被請求人が考案した造語である。したがって、本件商標は識別カの高い商標である。また、乙第10号証に示すように、商標「スポ魂」が表示されている利用者閲覧画面の下方に、被請求人の英語表記名称「ambass inc.」が表示されている。なお、本件商品のフロント画面(乙2~乙5)にも、前述のように、被請求人名称の英語表記「ambass inc.」が表示されている。このように、商標の識別力が高い本件商標が、被請求人の名称が表示された本件商品に使用されていることからも、本件商標は出所表示機能を果たす態様で使用されているものである。

乙第11号証は2022年6月の試合結果を表示しており、前述の乙第10号証と同様に、黒色で商標「スポ魂」との表示が、さらに、各試合結果情報を囲む複数の長方形の枠内の右上に、オレンジ色で商標「スポ魂」との表示がある。また、被請求人の英語表記名称「ambass inc.」も表示されている。

乙第12号証は、2021年6月の試合結果を表示している。各試合結果情報を囲む複数の長方形の枠内の右上に、オレンジ色で商標「スポ魂」と表示されるため、2021年6月の試合結果を表示する利用者閲覧画面においては、24個の試合結果が表示されているため、黒色で表示された商標「スポ魂」とオレンジ色の商標「スポ魂」が24個が表示されている(乙12の1)。

乙第13号証は2020年8月の試合結果を示す利用者閲覧画面のスクリーンショットである。乙第10号証ないし乙第12号証の3と同様に、黒色の商標「スポ魂」とオンレンジ色の商標「スポ魂」の表示があり、被請求人の英語表記名称「ambass inc.」も表示されている。

後述のように、本件商品は2016年10月から要証期間を経て現在に至るまで、利用者閲覧画面に本件商標「スポ魂」を表示している。

(イ)本件商品の利用手引きについて

本件商品については、本件商品の使用方法を説明した「利用手引き」が作成されており、年度ごとに、「利用手引き」が電子データの形式で本件商品の利用者に送信されている。

乙第15号証ないし乙第21号証は、上記利用手引きの元データであるパワーポイントファイル(ファイル名「春日HP管理者利用手引き」)のスクリーンショットである。

乙第22号証は、上記パワーポイントファイル(乙15~乙21)のプロパティ情報のスクリーンショットである。被請求人は、年度ごとに、このパワーポイントファイルをPDF形式に変換し、PDF形式で利用者に送付している。上記プロパティ情報(乙22)に「コンテンツの作成日時:2016/9/4」と表示されているように、上記パワーポイントファイルは、2016年に被請求人が作成したものであり、乙第15号証のスクリーンショットに「2023年度総代表」の表示があるように、年度ごとに変更する必要のある文字情報のみを上書き変更して運用している。画像情報については、2016年のファイル作成時から変更されていないため、利用手引きの3ページ目及び4ページ目(乙17、乙18)に掲載されている表示画面画像には、2016年の文字が表示されている。

利用手引きの4ページ目(乙18)には、利用者閲覧画面が表示されていて、商標「スポ魂」が表示されている。

このように、年度ごとに利用者に送付されていた本件商品の利用手引きにおいて、商標「スポ魂」が表示されている。

この利用手引きは、本件商品の利用者閲覧画面の使用方法を説明するものであり、利用者は、商標「スポ魂」が表示されている実際の利用者閲覧画面と照らし合わせながらこの利用手引きを見るため、利用手引きに表示されている商標「スポ魂」が本件商品の利用者閲覧画面に表示されている被請求人の商標「スポ魂」であることを容易に認識するものである。したがって、利用手引きに表示されている本件商標も出所表示機能を発揮している。

(ウ)要証期間内の使用について

a 商標法第2条第3項第8号の使用行為

乙第24号証には、2021年3月6日というトークの日付が表示され、「春日HP管理者利用手引き.pdf」の文字、有効期間及びサイズの文字、PDFのロゴマークなどから分かるように、利用手引きのPDFファイルが送信されたことが示されている。

乙第25号証には、2022年3月15日というトークの日付が表示され、「春日HP管理者利用手引き.pdf」の文字、有効期間及びサイズの文字、PDFのロゴマークなどから分かるように、利用手引きのPDFファイルが送信されたことが示されている。

乙第26号証には、2月20日というトークの日付が表示され、「2023年度春日HP管理者利・・・引き.pdf」の文字、有効期間及びサイズの文字、PDFのロゴマークなどから分かるように、利用手引きのPDFファイルが送信されたことが示されている。なお、LINEトークの日付において年が表示されていないのは本年だからであり、2月20日の表示が2023年2月20日を示しているのは、明らかである。

以上の乙第24号証ないし乙第26号証に示すように、被請求人は、2021年3月6日に2021年度用の利用手引きのPDFを利用者に送信し、2022年3月15日に2022年度用の利用手引きのPDFを利用者に送信し、2023年2月20日に2023年度用の利用手引きのPDFを利用者に送信している。

このように、被請求人は要証期間内において、本件商標「スポ魂」と社会通念上同一の商標を表示した利用手引きを利用者に送信している。利用手引きは、本件商品と共に本件商品の利用者に提供される書類であり、本件商品に関する取引書類に該当する。なお、上記の利用手引きは、実質的に商品の取扱説明書と言えるものであり、商品の取扱説明書が商標法第2条第3項第8号における取引書類に該当することは、過去の審決においても認められている(取消2021-300464に係る審決、取消2022-300039に係る審決等)。

よって、被請求人は、要証期間内において、上記本件商品に関する取引書類を内容とする情報に本件商標と社会通念上同ーと認められる商標を付して電磁的方法により提供してきた(商標法第2条第3項第8号)ものである。

b 商標法第2条第3項第1号及び2号の使用行為

上記項目(イ)において言及したように、2016年10月から要証期間を経て現在に至るまで、商標「スポ魂」は利用者閲覧画面に表示されている。

証拠説明書に記載のように、乙第10号証から乙第14号証に示すスクリーンショットの撮影日は要証期間内ではないが、2016年に撮影された利用者閲覧画面のスクリーンショット(乙21)が利用手引きのデータの一部として残っている。

2016年に撮影された利用者閲覧画面のスクリーンショット(乙21)と、乙第10号証から乙第14号証に示す利用者閲覧画面のスクリーンショットによって、要証期間内においても、利用者閲覧画面において同様の態様で商標が表示されていたことが裏付けられるものである。

また、前述のように、要証期間内において利用手引きは年度ごとに利用者に送信されていた(乙24~乙26)。そして、利用手引きの1ページ目(乙15)に示すように、本件商品を利用するためのユーザーID(メールアドレス)とパスワードを被請求人が年度ごとに発行しており、原則として、前年度の利用者アカウントは使用できなくなる。すなわち、本件商品は、利用者に対して年度ごとに新たに提供される商品となっている。

2021年度の場合、2021年3月6日に送信された利用手引きによって、2021年度に本件商品を利用するためのユーザーIDとパスワードが利用者に通知された。

上記項目イにおいて述べたように、本件商品は第9類の「電子計算機用プログラム」に該当するものであり、上記のように、要証期間内において、利用者に対して年度ごとに新たに提供されている。そして、本件商標「スポ魂」と社会通念上同一の商標が、本件商品の利用者閲覧画面に表示されている。

以上に申し述べたように、被請求人は、要証期間内において、本件商品に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付し(商標法第2条第3項第1号)、本件商品に本件商標と社会通念上同ーと認められる商標を付したものを電気通信回線を通じて提供し(商標法第2条第3項第2号)、本件商品に関する取引書類を内容とする情報に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して電磁的方法により提供してきた(商標法第2条第3項第8号)。したがって、本件商標の登録は取り消されるべきものではなく、本件審判の請求は成り立たない。

さらに付言すれば、本件商標は、被請求人が考案した造語からなり、要証期間よりも前の2016年から使用を開始し、要証期間を経て現在に至るまで継続して被請求人が使用している。このような使用の結果、本件商標には、被請求人の業務上の信用が化体している。商標法第50条の趣旨は、長期間にわたり使用されていない登録商標、すなわち、業務上の信用が化体していない商標の登録を取り消すことができるようにしたものであり、被請求人の業務上の信用が化体した本件商標の登録を取り消すことは、商標法第50条の趣旨にも反するものである。

第4 被請求人に対する審尋及び被請求人による審尋への回答

1 審尋の要旨

審判長は、被請求人に対し、令和5年10月31日付けで、被請求人による主張及び提出された証拠によっては、商標権者の使用に係る商品が、第9類「電子計算機用プログラム」の範ちゅうに含まれる商品であることを、被請求人が証明したものと認めることはできない旨の合議体による暫定的見解を示したうえで、請求人提出の審判事件弁駁書の主張及び合議体による暫定的見解に対し、意見があれば証拠とともに提出するよう、相当の期間を指定して回答を求めた。

2 被請求人の回答の要旨

(1)PWAについて

ア 乙第27号証には、PWAは、「モバイル向けのWebサイトをネイティブアプリと同様に動作させることができる技術です。」「なお、PWAのインストールはWebサイトから直接実行できるため、アプリストアを経由する必要はありません。」と記載され、乙第28号証及び乙第29号証では、「PWAはWebサイトのコンテンツをアプリとしてスマートフォンやPCにインストール可能にする技術です。通常のアプリと同様にホーム画面にアイコンができて、これをタップ(クリック)すると画面が立ち上がります。」と記載されている。また、4頁には、「PWAのインストールは、Webサイトから直接実行されます。アプリストアなどを経由することなくインストールが完結しますので、ユーザーにインストールを促すのにストアにリンクしてダウンロードさせるというステップも必要なくなり、手順がシンプルで簡単なインストールが可能になります。」と記載されている。

イ 近年、アプリケーションプログラムにおいては、一部のプログラムのみをユーザー端末にインストールし、サーバーサイドに保持したプログラムと通信することによって稼働させるプログラムが主流である。例えば、アプリストアなどからダウンロードしてインストールするタイプのネイティブアプリケーションであっても、起動部のみを端末にインストールし、利用者端末のアプリケーション内で取得する情報そのものはサーバーから返却される形で動作させるものが一般的である。

ウ PWAは、アプリケーション内で取得する情報そのものはサーバーから取得されるが、アプリケーションの起動部が利用者端末にインストールされるものである。

乙第29号証には、「PWAを構成するためには、「ServiceWorker」と「Manifest」の2つのファイルが最低限、必要となります」と記載されている。

乙第6号証に「nerimaーkasuga.jp/manifest.json」と表されていることからも明らかなように、PWAの実装に用いられる「Manifest」ファイルである。乙第7号証には、「nerimaーkasuga.jp/serviceWorker.js」の表示があるから、PWAの実装に用いられる上記ファイルである。

「Manifest」ファイルには、利用者の個々の端末側でのアプリ表示に関連する挙動がプログラミングされている(乙6)。具体的には、端末にインストールされたアイコンにアプリ名「スポ魂ダラ KSC」を表示させること、アイコンにアプリ名を短く表示させる場合には「スポ魂ダラ」と表示させることがプログラムされ、その他、アイコンをどのような色及びサイズで表示させるのかについてもプログラムされている。また、乙第7号証のプログラムコードには、Webページの更新などが行われた際に発生するイベントである「fetch」イベントが組み込まれており、これにより、「Service Worker」ファイルとして機能している。

エ 以上のように、本件商品はPWAとしてインストールできる機能を実装していることは明らかである。また、本件商品が利用者の個々の端末にインストールされると、乙第6号証のプログラムコードで定義したプログラムコードで定義したアイコンが端末画面に表示され、このアイコンによって本件商品がブラウザを介することなく起動できるようになる。すなわち、本件商品の起動部が利用者の端末にインストールされたことになる。

よって、本件商品は、本件商品を構成する全てのプログラムが利用者の個々の端末にインストールされる訳ではないが、本件商品の起動部が利用者の個々の端末にインストール可能であるように構成されている。

オ なお、ネイティブアプリケーションにおいても起動部のみを端末にインストールし、利用者端末のアプリケーション内で取得する情報そのものはサーバーから返却される形で動作させるものが主流であり、このような状況を鑑みても、第9類の「電子計算機用プログラム」が、商品を構成するプログラムの全てが利用者端末にダウンロード可能でなければならないとすることは、第9類の上記商品範囲を不当に狭く解釈するものである。

前述のように、PWAとしてインストールできる機能を実装した本件商品は、起動部が利用者の個々の端末にインストール可能であるように構成されているから、第9類「電子計算機用プログラム」に該当する。

(2)本件商品の提供態様

本件商品は、プログラムの機能のみをクラウド上から複数の顧客に提供するサービスとは異なる。よって、本件商品は、第42類の「電子計算機用プログラムの提供」には該当しない。

本件商品は、利用者ごとにカスタマイズされてインストールされるプログラムであるため、特定の利用者専用のものとなる。カスタマイズしたインストールパッケージを顧客ごとにサーバーにダウンロードして提供するように設計されているから、第9類の「電子計算機用プログラム」に該当する。

また、利用者閲覧画面(乙10~乙14)において、プログラムの設計・開発の宣伝文句等のサービスを想起させる文言は表示されていない。よって、本件商標は、第42類の「プログラムの設計・開発」についての商標とは認識されないため、本件商標は第42類の上記役務に、使用されていない。

なお、過去の複数の判決において、1つの商品が2つの指定商品に属する二面性を有することが認められている(平成24年(行ケ)第10277号、乙30)。

また、IT分野の取引対象物は、多面性及び多機能を有するから、仮に本件商標が他の役務について商標として機能する場面があったとしても、本件商品は、第9類「電子計算機用プログラム」に該当するものである。

(3)取引書類について

被請求人は、本件商品を春日サッカークラブに無料で提供したから、請求書及び領収書等の取引書類は存在しない。

なお、商取引は、売買契約に限られるものではなく、様々な契約形態による場合が含まれ、対価と引き換えに取引されなければ商標法上の商品ではないということはできない(平成19年(行ケ)第10008号、乙31)。

被請求人は、コンピュータソフトウェアの開発、製造、販売等を事業内容とする会社(乙1)で、本件商品の開発及び提供を業として行っている。そして、被請求人のHPで2016年10月13日、2022年7月7日及び現在に至るまで「親子で作るスポーツコミュニケーション スポ魂ダラ」と表示して広告している(乙32~乙34)。

本件商品は、商売のステップとして無償提供から始めて、有償化又は広告を組み込むことによる収益化を図ろうとするものである。

春日サッカークラブに提供した本件商品はモデルケースとして機能しており、口コミなどで他のスポーツチーム等への展開が期待されるほか、自社の広告への問い合わせの応答時など、見込み客に対し、提供事例として紹介することもできる。したがって、本件商品は、無償で行われたものであるが、取引全体からみて、「商品」を対象にした取引であり、商標法上の商品に該当する。

なお、平成30年(行ケ)第10059の判決(乙35)では「商標法上の商品というためには,・・・必ずしも当該商品が有償で譲渡される必要はなく,・・・当該商品の譲渡によって利益を得る仕組みがあり,その仕組みの一環として,当該商品が無償で譲渡されるのであれば,当該商品は交換価値を有し、商取引の対象となっていると認めることができる・・・」と判示され、無料アプリを活用したサービスを展開していく計画があることを理由として、商標法上の商品と認めている。

また、IT分野の商取引において、サービスやアプリを無償提供から始めて、段階的に収益化を図る手法は一般的に広く知られた方法である。

(4)使用商標

本件商品の利用者閲覧画面(乙10~乙14)において、オレンジ色で表された「スポ魂」の文字は、審尋において本件商標と社会通念上同一と認定されている。なお、本件商品の利用者閲覧画面において「○年○月の試合結果」のタイトルの下に表示されている黒色文字の商標「スポ魂」も、文字全体に若干のデザイン化が施されているものの、「スポ魂」の文字を明確に認識することができるため本件商標と社会通念上同一の商標である。

また、本件商品の利用手引きにおいて商標「スポ魂」が表示されており(乙18、乙21、乙23)、利用者閲覧画面の商標と同様の態様で使用されているから、利用手引きにおいても本件商標と社会通念上同一の商標が使用されている。

(5)要証期間の使用

ア 被請求人は、要証期間内に、本件商標と社会通念上同一の商標を表示した利用手引きを利用者に送信している。利用手引きは、本件商品の取引書類に該当する。また、本件商品は、第9類「電子計算機用プログラム」に該当する商品である。

したがって、被請求人は、要証期間内に、「電子計算機用プログラム」に関する取引書類を内容とする情報に、本件商標と社会通念上同一の商標を付して電磁的方法に提供した(商標法第2条第3項第8号)ものである。

イ また、本件商品を利用するためのユーザーIDとパスワードを被請求人が年度ごとに発行し、利用者に送付されることから、本件商品は、要証期間内に利用者に対し年度ごとに新たに提供される商品となっている。

したがって、被請求人は要証期間において第9類の「電子計算機用プログラム」に該当する本件商品に、本件商標と社会通念上同一の商標を付し(商標法第2条第3項第1号)、本件商標と社会通念上同一の商標を付した本件商品を電気通信回線を通じて提供したものである(商標法第2条第3項第2号)。

3 弁駁書に対する反論

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(1)ダウンロード可能な電子計算機用プログラムの提供態様は様々であって、各種サービスと組み合わせて提供される場合もあり、ダウンロードされたプログラムと表示画面の関係性も様々であるから、ダウンロード後の表示画面を利用者以外が閲覧できたことのみをもって、そのプログラムがダウンロード可能な電子計算機用プログラムに該当しないとはいえない。

(2)「春日サッカークラブ」専用にカスタマイズされた本件商品の利用者閲覧画面は、「春日サッカークラブ」の所属員である複数の個人がユーザーIDとパスワードでログインすることで本件商品の機能を使用できるように構成されており、プログラム機能のみをクラウド上から複数の顧客に提供するサービスとは異なるものであるため、SaaSには該当しない。なお、利用者の所属員個人に利用者閲覧画面にログインして証拠の提供者となってもらうことは、個人をこの取消審判での争いの直接的に巻き込んでしまうことになる。そこでやむを得ず、被請求人がアクセスした画面を提出したものである。

(3)また、PWAとしてインストールできる機能を実装した本件商品は、本件商品の起動部が利用者の所属員の端末にインストール可能であるように構成されているため、第9類「電子計算機用プログラム」に該当する。

(4)さらに、LINEトークのスクリーンショット(乙24~乙26)は、送信日やファイル名が表示されており、要証期間内において、年度ごとに利用手引きが送信されたことは明らかである。また、利用手引きは利用者が使用するものであり、年度ごとに利用手引きが送信されていることから、送信先が利用者(春日サッカークラブ)であることは、なんら、不自然ではない。

(5)なお、上記項目2(3)で述べたように、本件商品の提供自体は無償で行われたものであるが、取引全体からみて「商品」を対象にした取引であり、本件商品は商標法上の商品に該当する。

第5 当審の判断

被請求人は、本件商品は第9類「電子計算機用プログラム」に該当する商品であり、要証期間内において、本件商品に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付し(商標法第2条第3項第1号)、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付した本件商品を電気通信回線を通じて提供(商標法第2条第3項第2号)し、本件商品に関する取引書類を内容とする情報に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付し電磁的方法により提供した(商標法第2条第3項第8号)旨主張するので、以下検討する。

1 被請求人が提出した証拠及び同人の主張によれば、以下のとおりである。

(1)商標権者について

商標権者(被請求人)は、コンピュータソフトウェア開発、製造、販売等を事業内容とする法人である(乙1)。

(2)使用商品について

ア 本件商品は、春日サッカークラブ(スポーツチーム)のコミュニケーション用ソフトウェア(以下「使用商品」という。)であり、スポーツチームの試合等に関する各種情報を管理、入力、削除、変更、閲覧等できる商品である(被請求人主張)。

イ 使用商品は、春日サッカークラブの利用者のみが閲覧等可能な利用者閲覧画面と、インターネット上に公開されているフロント画面を備えている(乙2、乙9、他)。

(ア)使用商品の利用者閲覧画面の下部には、「ambass inc.」「poweredbyスポ魂ダラ」の表示がある(乙9、他)。(以下「スポ魂ダラ」を「使用商標1」という場合がある。別掲1)

使用商品の利用者が利用者閲覧画面にログインし、使用商品を利用するためには、商標権者から年度ごとに発行、送付されるユーザーIDとパスワードが必要である(被請求人主張)。

利用者閲覧画面には、「○年○月の試合結果」のタイトルの下に、デザイン化され、赤い炎の図形を背景に「魂」文字の一部にサッカーボールを配した「スポ魂」(以下「使用商標2」という。別掲2)の表示があり、試合結果情報を囲む長方形の枠内の右上にオレンジ色で商標「スポ魂」(以下「使用商標3」という。別掲3)が表示されている。

(イ)使用商品のフロント画面の下部には、「ambass inc.」「poweredbyスポ魂ダラ」の表示がある(乙2の2、他)。

ウ 商標権者は、電子データの形式で使用商品の利用者閲覧画面の使用方法を説明するための「利用手引き」(乙15~乙20)を年度ごとに作成し、利用者に送信している(被請求人主張)。利用手引きには、利用者閲覧画面が表示されているから、利用者閲覧画面と同様に「スポ魂」(使用商標2及び使用商標3)が表示されている。

エ 春日サッカークラブ用にカスタマイズされた使用商品は、使用商品の起動部が利用者の端末にインストール可能であり、インストールされたアイコンにアプリ名「スポ魂ダラ KSC」と表示させること、アプリ名を短く表示させる場合には「スポ魂ダラ」と表示させることなどがプログラムされている(被請求人主張)。

オ 乙第8号証(撮影日令和5年7月11日)は、プログラムを更新すると更新した日付でタイムスタンプが自動的に付与され、ファイルリスト参照コマンドで表示できるものである(請求人主張)。「11月 12 20:27 2018 manifest.json」及び「11月 12 20:27 2018 serviceWorker.js」と示されており、PWA(Progressive Web Apps)用定義である、「manifest」及び「serviceWorker」の記載があり、2018年11月12日にこれらのプログラムが使用商品に実装された。

カ 乙第24号証には、商標権者の取締役とみられる名字と2021年3月6日(土)の記載、「マニュアルファイルお送りします。春日HP管理者利用手引き.pdf(記載の新しいID発行済みです)」の記載、乙第25号証には、「2022年3月15日(火)」「春日HP管理者利用手引き.pdf」「HP管理者手引きを送ります。」との記載、乙第26号証には、「2/20(月)」「2023年度の新代表のパスワードと資料をお送りいたします。」の記載がある。

(3)商標権者は、使用商品を無償で提供している(被請求人主張)。

(4)商標権者のホームページには、2016年10月13日、2022年7月7日および現在において、炎の図形を背景に図案化された「スポ魂ダラ」のアイコンとその下に「親子で作るスポーツコミュニケーション スポ魂ダラ COMING SOON」の記載がある(乙32の1、乙33、乙34)。

2 判断

(1)本件商標の使用者について

上記1(2)イによれば、使用商品のフロント画面及び利用者閲覧画面には、商標権者の欧文字表記とみられる「ambass inc.」の表示があり、商標権者が春日サッカークラブのホームページの作成に関係していることが認められる。

(2)使用商標について

ア 使用商標1について

使用商標1は、上記1(2)イのとおり、インターネット上に公開されている使用商品のフロント画面及び利用者閲覧画面に、別掲1の「スポ魂ダラ」と表示されているが、本件商標は「スポ魂」であって、本件商標と使用商標1は、ともに造語と認められるところ、両者は観念において比較できず、外観及び称呼が相違するため、使用商標1は、本件商標と社会通念上同一の商標とはいえない。

イ 使用商標2について

使用商標2は、上記1(2)イのとおり、春日サッカークラブ内のIDとパスワードを有する者のみがログインできる利用者閲覧画面において、「○年○月の試合結果」のタイトルの下に表示されているものである。そして、別掲2のとおり、デザイン化された文字で、赤い炎を背景とし、「魂」の漢字のうち「ム」の部分をサッカーボールの図形で表しており、「スポ魂」の文字と理解されるものの、標準文字からなる本件商標とは外観上明らかに異なる態様である。そうすると、称呼が同じであるとしても、「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標・・・外観において同視される図形からなる商標そのほかの当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標」ということはできない。

ウ 使用商標3について

使用商標3は、上記1(2)イのとおり、春日サッカークラブ内のIDとパスワードを有する者のみがログインできる利用者閲覧画面のうち、試合結果情報を囲む長方形の枠内の右上に、別掲3のとおり、オレンジ色で「スポ魂」と表したものである。

本件商標と使用商標3を比較すると、両者はともに「スポ魂」の文字からなり、辞書に載録された文字ではないから造語と認められる。

そうすると、両者は観念は比較できないとしても、同じ文字からなるから外観が近似し、称呼も同じくするから、使用商標3は本件商標と社会通念上同一の商標と認められるものである。

(3)使用商品について

ア 商標法上の商品である第9類「電子計算機用プログラム」には、インターネット上でダウンロードにより提供される電子計算機用プログラムや、記録媒体に記憶した電子計算機用プログラムが含まれるものである(出典:商品及び役務の区分解説〔国際分類第11-2022版対応〕https://www.jpo.go.jp/system/trademark/gaiyo/bunrui/document/kubun_kaisetsu/kubun_kaisetsu.pdf)。

イ 上記1(2)オによれば、使用商品はPWAの定義を備えるものであることは理解されるものである。しかしながら、上記1(2)エのとおり、被請求人は、その起動部について春日サッカークラブの利用者はインストール可能であり、インストールされたアイコンにアプリ名を表示するプログラムがある旨を主張しているが、実際に利用者がインストールしたことを客観的に示す証左は見いだせない。

そうすると、使用商品のその起動部についてインストール可能であり、上記定義を備えるものであるとしても、使用商品がダウンロードされたことを客観的に証明したものとはいえないから、使用商品が第9類「電子計算機用プログラム」であることを確認できない。

ウ 上記1(2)カによれば、被請求人は、商標権者から「利用手引き」(IDとパスワードを含む)が利用者に送付されていると主張するが、利用者がそれを受領したことを示す客観的な証左はなく、利用者が利用手引きを使用して利用者閲覧画面を利用していることも確認できない。

エ 乙第8号証や被請求人の主張によれば、商標権者が、春日サッカークラブのウェブサイトに関連するコンピュータプログラムの更新、IDやパスワードを毎年変更するなどして管理していることが認められる。このようなコンピュータプログラムの更新やコンピュータプログラムの保守は第42類(類似群コード42P02)の範ちゅうの役務といえるものであって、第9類の商品ということはできない。

オ そして、被請求人が回答書で述べるとおり、春日サッカークラブのウェブサイトに関しては無償で提供されている。第9類の商品であれば、電子計算機用プログラムをダウンロードしたことで対価が発生するものであるが、春日サッカークラブの利用者が、使用商品をダウンロードしたことも確認できない上、無償であるから、商標権者が使用商品を提供する際、どの段階で対価を得る予定であるかも不明である。

したがって、仮に、使用商品が被請求人主張のとおり、商標法上の商品であるとしても、使用商品が第9類の商品であることを証明しているとはいえない。

カ 上記1(4)のとおり、商標権者のホームページには、2016年10月13日から現在において、図案化された「スポ魂ダラ」のアイコンが表示されている。そして、被請求人は、使用商品は、無償であるが、無償提供から始めて、段階的に収益化を図る手法であり、商標法上の商品である旨主張しているが、2016年10月から掲載しているにもかかわらず、審決時においても「COMING SOON」と記載され、当該ホームページのアイコンから春日サッカークラブのウェブサイトの情報を確認することはできず、どのような内容のものかも確認することができない。そうすると、当該アイコン表示が広告宣伝機能を有しているとはいい難く、また、当該アイコンを表示していることのみをもって段階的に収益化を図るということまでは想定できないから、使用商品が商標法上の商品であると判断することもできない。

キ 以上のとおり、商標権者が、春日サッカークラブのウェブサイトに関係しており、利用者閲覧画面及び利用手引きに本件商標と社会通念上同一の商標が表示されていたとしても、使用商品が第9類「電子計算機用プログラム」であると認めることができない。

したがって、商標権者が、本件商標を第9類「電子計算機用プログラム」に付し(商標法第2条第3項第1号)、本件商標を付した上記商品を電気通信回線を通じて提供(商標法第2条第3項第2号)し、上記商品に関する取引書類を内容とする情報を電磁的方法で提供した(商標法第2条第3項第8号)と認めることはできない。

(4)小括

上記のとおり、被請求人が提出した証拠によっては、要証期間内に、本件商標権者が、本件審判の請求に係る指定商品について、本件商標を使用したことを認めるに足る事実を見いだせない。

3 被請求人の主張

折りたたみ中(クリックで表示)

被請求人は、PWAとしてインストールできる機能を実装した使用商品は、第9類の「電子計算機用プログラム」である旨主張する。

しかしながら、不使用取消審判の請求の対象となっている登録商標を現実に使用している商品が当該登録商標の指定商品に該当するか否かは、単に、その名称、表示等の形式のみによって判断すべきではなく、当該商品の取引者及び需要者の判断を基準として実質的に判断すべきである(東京高裁昭和57年(行ケ)第67号 同60年5月14日判決参照。)ところ、被請求人の使用商品の需要者は春日サッカークラブであるところ、需要者である春日サッカークラブが使用商品を使用していることは確認できないため、春日サッカークラブが使用商品を第9類の「電子計算機用プログラム」という商品と認識しているかも不明であり、被請求人から提出された証拠及び全主張からは、使用商品が、第9類の電子計算機用プログラムと同様に取引されていること等は認められない。また、電子計算機用プログラムを取り扱う業界において、被請求人の使用商品のような商品が第9類の商品として取り扱われているような事情も見いだせない。

したがって、使用商品が第9類の商品と認めることはできないから、上記被請求人の主張は採用できない。

4 まとめ

以上のとおりであるから、被請求人は、要証期間内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者が本件審判の請求に係る指定商品についての本件商標の使用をしていた事実を証明したものとは認められない。

また、被請求人は、本件審判の請求に係る指定商品について本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。

したがって、本件商標の登録は、その指定商品及び指定役務中の「結論掲記の指定商品」について、商標法第50条の規定により、取り消すべきものである。

別掲(理由中で参照)

画像画像本体は公報データに含まれません
画像画像本体は公報データに含まれません
別掲2 使用商標2 (色彩は原本参照。)J-PlatPat(審決公報)で画像を確認 ↗
画像画像本体は公報データに含まれません
別掲3 使用商標3 (色彩は原本参照。)J-PlatPat(審決公報)で画像を確認 ↗

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