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商標取消審判

2023-300215

ジェーエフシー

審判番号
2023-300215
法域
商標
審判種別
取消審判(商標取消の審決)
出願番号
商願1986-019558
登録番号
2059278
請求日
2023年04月03日
審決日
2026年02月09日
公報発行日
2026年08月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】君帆工業股▲ふん▼有限公司
  • 【請求人代理人】小谷 昌崇
  • 【請求人代理人】川瀬 幹夫
  • 【請求人代理人】並川 鉄也
  • 【請求人代理人】貴答 信介
  • 【被請求人】日本フアインセラミツクス 株式会社
  • 【被請求人代理人】弁理士法人アテンダ国際特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 大橋 良成
  • 審判官 馬場 秀敏
  • 審判官 富澤 哲生
分類
T132 .1 -Y (X070911121719)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
商標法50条
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第2条第3項第8号、商標法第50条第1項、商標法第2条第3項第2号、商標法第50条第2項、商標法第50条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の登録第2059278号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 本件商標 本件登録第2059278号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、昭和61年2月28日に登録出願、同63年7月22日に第9類「産業機械器具、その他本類に属する商品」を指定商品として設定登録され、平成21年10月7日に、指定商品を、第7類、第9類、第11類、第12類、第17類及び第19類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品とする書換登録がなされ、その商標権は現に有効に存続しているものである。 そして、本件審判の請求の登録は、令和5年4月17日になされたものであり、商標法第50条第2項に規定する、この登録前3年以内の期間(令和2年4月17日~令和5年4月16日)を以下「要証期間」という。 第2 請求人の主張 請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定商品中、第7類「金属加工機械器具,製材用・木工用又は合板用の機械器具,印刷用又は製本用の機械器具,ミシン,プラスチック加工機械器具,石材加工機械器具,動力機械器具(陸上の乗物用のもの及び「水車・風車」を除く。),陸上の乗物用の動力機械の部品,風水力機械器具,電動式カーテン引き装置,軸・軸受・軸継ぎ手・ベアリング(機械要素)(陸上の乗物用のものを除く。),動力伝導装置(機械要素)(陸上の乗物用のものを除く。),緩衝器及びばね(機械要素)(陸上の乗物用のものを除く。),制動装置(機械要素)(陸上の乗物用のものを除く。),バルブ(機械要素)(陸上の乗物用のものを除く。)」、第9類「アーク溶接装置,金属溶断機,電気溶接装置,電動式扉自動開閉装置」、第11類「ボイラー,水道用栓,タンク用水位制御弁,パイプライン用栓」、第12類「陸上の乗物用の動力機械(その部品を除く。),軸・軸受・軸継ぎ手・ベアリング(陸上の乗物用の機械要素),動力伝導装置(陸上の乗物用の機械要素),緩衝器及びばね(陸上の乗物用の機械要素),制動装置(陸上の乗物用の機械要素)」、第17類「ゴム製又はバルカンファイバー製のバルブ(機械要素に当たるものを除く。)」及び第19類「送水管用バルブ(金属製又はプラスチック製のものを除く。)」(以下「請求に係る指定商品」という。)についての登録を取り消す、審判費用は、被請求人の負担とするとの審決を求め、審判請求書、令和5年7月3日付け審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)に対する同年8月30日付け審判事件弁駁書(以下「弁駁書」という。)及び令和7年8月5日付け回答書(以下「回答書」という。)に対する同年11月5日付け意見書(以下「意見書」という。)にて、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。 1 請求の理由 本件商標は、その指定商品中、請求に係る指定商品について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。 2 答弁に対する弁駁 被請求人は乙第1号証ないし乙第11号証を提出し、本件商標は、要証期間に本国内において、請求に係る指定商品のいずれかに使用されている旨を主張しているが、本件商標は、請求に係る指定商品について商品商標として使用されたものではないことが明らかであるから、本件商標が請求に係る指定商品のいずれかに使用されている状態にはなく、被請求人の主張は当を得ないものである。 以下、被請求人の提出した乙各号証を挙げながら、弁駁の理由を詳述する。 (1)乙第1号証について ア 乙第1号証からは、答弁書に記載されているとおり、商標権者の取扱商品を示した要証期間内のホームページの写しであること、そして、セラミックス材料の一種である「炭化ケイ素」を商標権者が取扱っていることがうかがえる。 この証拠に関し、被請求人は、答弁書において、「主な用途」という欄に商標権者が製造・販売している各種商品が掲載され、その中に、「摺動部品(・・・、ケミカルポンプ軸受け、シャフト)」と記載されており、本件商標が商標権者のウェブページに掲載され、かつ、商品「ケミカルポンプ軸受け、シャフト」に使用されているから、本件商標は、請求に係る指定商品中の第7類「軸・軸受(機械要素)(陸上の乗物用のものを除く。)」又は第12類「軸・軸受(機械要素)(陸上の乗物用の機械要素)」について使用されているものと認められる旨主張している。 イ しかしながら、乙第1号証の記載中、「特徴」に関する項目において「炭化ケイ素(炭化珪素)は黒色のセラミックスで、他のファインセラミックスと比べ高温域(1000℃以上)での機械強度の低下が小さく、耐摩耗性の高い材料です。」と説明されていることからも明らかなように、商標権者が取扱う商品は、「材料」としての「炭化ケイ素」である。 また、答弁書にも記載されているように「摺動部品(・・・、ケミカルポンプ軸受け、シャフト)」の記載は、セラミック材料である「炭化ケイ素」の単なる「用途の説明」にすぎず、商標権者が用途例に挙げる商品を自社製品として製造販売していることを示すものではないことはいうまでもない。 さらに、最終製品について自社製品として製造販売をしている旨の説明や、製品に係る型番・品番等は一切記載がなく、乙第1号証から、最終製品を受託加工サービスによらず製造販売していることを示す記載はない。 ウ なお、請求人側もウェイバックマシーンにより2020年10月21日の商標権者ウェブページにアクセスし、商標権者の取扱う製品一覧情報を確認した。かかる製品一覧情報のスクリーンショットを甲第1号証に示す。 甲第1号証によると、矢印で示した掲載事項から、商標権者の取扱う製品は、「エンジニアリングセラミックス」、「エレクトロニクセラミックス」、「金属セラミックス複合材料」の3つの分野のセラミックス材料であることが明確に理解できる。 また、同時に、甲第1号証中に青い丸で囲った掲載事項「セラミック精密加工」から、セラミック材料の受託による加工サービスも行っていることがわかる。 ここで、商標権者が行っている加工サービスのパンフレットを甲第2号証として提出する。 甲第2号証によると、第1ページ目に示される多数の形状のセラミックス製品を加工するサービスを提供していることが明確にわかる。 エ 上記より、商標権者は、「セラミックス材料の製造販売」及び「受託によるセラミック加工サービス」を行う企業であって、セラミックス材料を利用した最終製品を受託加工サービスによらず製造販売し、その製品を市場に流通させることを行っていないことが明白である。 なお、セラミックス材料を利用した最終製品を受託加工サービスによらず製造販売しているのであれば、最終製品の型番等が掲載された製品カタログの提出がなされるものと推測するが、そのような証拠資料の提出もない。 したがって、乙第1号証は、請求に係る指定商品中の第7類「軸・軸受(機械要素)(陸上の乗物用のものを除く。)」又は第12類「軸・軸受(機械要素)(陸上の乗物用の機械要素)」との関係で使用していることを証明するものではなく、本件商標の使用の証拠となるものではない。 なお、前述の事情を踏まえると、商標権者がセラミックス材料を使用した最終製品を製造する場合とは、特定顧客からの依頼による「セラミックス受託加工サービス」を提供する場合に限られるものと思料する。 ここで、「商品及び役務の区分解説」(国際分類第11-2022版対応特許庁商標課編)の第199頁(甲3)を見ると、「分類上、商品の生産又は製造は他の者の注文及び仕様に応じて、当該生産又は製造を行う場合にのみサービスとみなされる。」との旨が記載されている。 故に、商標権者が行う受託加工サービスによる最終製品の製造への本件商標の「使用」は、それが「商標としての使用」であったとしても、「加工サービス」に該当する「サービスヘの使用」にすぎないため、「指定商品のいずれかについて使用」に相当するものでないことが明らかである。 なお、「セラミックス受託加工サービス」により製造された最終製品は、委託者に納品されるものであって、市場に流通する性質のものではないため、商標法上の「商品」に該当するものではないことを申し添える。 (2)乙第2号証について 乙第2号証は、商標権者が取扱うセラミックス材料の一つである「窒化ケイ素」の紹介ページにすぎず、乙第1号証と同様に、本件商標の使用の証拠となるものではない。 (3)乙第号3証について ア 乙第3号証は、商標権者が取り扱うセラミックス材料のカテゴリー「エンジニアリングセラミックス」のパンフレットの写しであり、被請求人は、当該資料の1ページ目に「ポンプ・シール用摺動部品、半導体、液晶製造装置用部品等を原料調合から最終製品まで一貫生産している。」と記載されていることをもって、乙第1号証及び乙第2号証に示すセラミックス材料を使用した最終製品を製造・販売していると主張している。 イ しかしながら、上記の乙第3号証で言及されている「一貫生産」は、受託加工サービスによる製造を意味するものであるので、その説明を以下に行う。 最初に、乙第3号証の1ページ目の上方には、「当社は、(省略)エンジニアリングセラミックス材料(炭化珪素、窒化珪素、アルミナ、ジルコニア)を当社独自の技術により生産しております。」と説明されており、材料を製造販売していることが明確に説明されており、この点は、商標権者がセラミックス材料の製造販売企業であることを示す乙第1号証及び乙第2号証、甲第1号証の取扱製品一覧の内容とも合致する内容である。 また、乙第3号証の4ページ目に掲載されている2つ目の表には「製作可能最大寸法」の文言と、表の下に小さく「( )内につきましては仕様によります。また、上記以外の寸法につきましても別途ご相談下さい。」と記載されていることから、受託加工サービスを行うにあたり、顧客が依頼可能な寸法を示したものであることが明らかである。 さらに、乙第3号証の4ページ目の下方には、「設計についてのお願い」の項目があり、その内容として「セラミックスの特徴を最大限に活かすため、部品の設計にあたっては、下記内容を参考にして頂くようお願いします。」と注意書きがなされている。この記載は、商標権者の顧客が商標権者に「セラミックス受託加工」を依頼する際の注意事項を記載したものであることが明白であり、通常、当該パンフレットに接する需要者はそのように理解することが自然であるものと思料する。 上記を総合的に考慮すると、乙第3号証は、セラミックス材料「エンジニアリングセラミックス」の紹介と共に、当該材料に係る受託加工サービスに関して説明されたパンフレット」であり、1ページ目の「ポンプ・シール用摺動部品、半導体、液晶製造装置用部品等を原料調合から最終製品まで一貫生産しております。」の記載は、受託加工の依頼があった商品は、自社で一貫した加工を行う旨、説明しているものと理解するのが自然であるものと思料する。 したがって、乙第3号証をもって、請求に係る指定商品への本件商標の使用の証拠となるものではない。 なお、乙第3号証を考慮してもなお、乙第1号証及び第2号証が請求に係る指定商品への本件商標の使用の証拠と理解できるものでもない。 (4)乙第4号証について 乙第4号証は、商標権者の企業活動を紹介する資料にすぎず、本件商標の使用の証拠となるものではない。 なお、乙第4号証中の「展示品」の項目において、「エンジニアリングセラミックス」「金属セラミックス複合材料MMC」「エレクトロニクセラミックス」とのセラミックス材料の記載があるので、展示会で「セラミックス材料」が展示されたことがうかがわれる。 (5)乙第5号証について ア 商標権者は、乙第4号証にて展示会の説明をしているが、乙第5号証が乙第4号証で説明された展示会の写真であるとの証左はない。 乙第5号証内の展示会写真において、その開催時期が示されておらず、当該展示会が要証期間内のものであるか不明である。 したがって、乙第5号証は、本件商標の使用の証拠となるものではない。 イ なお、上記のとおり、乙第5号証は本件商標の使用証拠となるものではないが、商標権者の事業内容が「セラミックス材料の製造販売」及び「受託によるセラミックス加工サービス」であることをうかがわせる資料ではあるので、この点、補足する。 乙第5号証は、不鮮明ではあるが、2ページ目の写真内の左側電光パネルにおいて、商標権者のウェブページと同様、取扱商品であるエンジニアリングセラミックス材料の「窒化珪素」「炭化珪素」が紹介されていることがうかがえ、やはり商標権者の取扱商品がセラミックス材料のみであることがわかる。また、同資料内、電光パネル前には、セラミックス材料を使用したと思しき最終製品例が展示されているようである。 この写真資料のみによって、商標権者が各種最終製品を受託による加工サービスによらず製造販売し、当該商品を市場に流通させていることが証明されることがないことはいうまでもないが、前述した事情を考慮すると、むしろ、これらの展示物は、甲第2号証に示したセラミックス材料の受託による加工サービスで製造可能な製品例を紹介するにすぎないものであると思料する。 当該展示会の開催時期は不明であるが、当該資料より、商標権者が展示会においても一貫して「セラミックス材料の製造販売」及び「受託によるセラミックス加工サービス」に係る販売促進活動を行っていることがうかがえる。 (6)乙第6号証及び乙第7号証について ア 乙第6号証は、商標権者が顧客に対して発行した請求書等であり、乙第7号証は納品した商品に関する説明資料である。 被請求人は、当該資料に基づき、請求書等に記載された「回転側軸受」等の商品の取引を行った旨主張している。 イ しかし、当該資料は、顧客からの受託加工サービスの発注を受けた商品を製造し、納品したことを示す書類に相違ないものであり、被請求人の主張は当を得ないものであると思料する。この点について、以下、説明する。 被請求人は、医療機器メーカーであるS社に自社製品として、「回転側軸受」を納品したことを主張している。 確かに、乙第7号証の5ページないし6ページにおいて「JFC殿供給部品」(JFCは、商標権者を指すものと推測する。)と記載されているが、その一方で、同11ページ目の「事業内容」の項目においては、S社について、「「植込み型補助人工心臓」の開発~製造までを行う、国内唯一の医療機器メーカーです。」と説明されており、同社が人工心臓を自社製造していることがわかる。 また、人工心臓等の医療機器の中でも特に専門性の高い製品であるので、一般的に部品においても汎用品が使用されるというより、その製品に特化した専用品(特別に設計されたもの)が使用されるものと思料する。 また、前述したように、商標権者はセラミックス材料の受託加工サービスを行っていることも併せて考慮すると、乙第7号証中の「JFC殿供給部品」の記載から、人工心臓の部品である血液ポンプ用回転側軸受について、S社が設計したものを商標権者に製造委託しているものと思料する。 また、一般的に、受託による加工サービスによらず生産される自社製品であれば取引書類において、製品に対応する型番・品番等が示される筈であるが、乙第6号証には、型番等の記載がなく、注文番号のみが示されている点からも、自社製品として最終製品を販売しているものではなく、市場に流通しない受託加工サービス(注文)により製造された商品に関する請求書等であるものと思料する。 したがって、取引書類に示される「回転側軸受」は、受託加工サービスの結果物にすぎず、乙第6号証は、本件商標の商品商標としての使用を示す証拠となるものではない。 なお、人工心臓の部品である血液ポンプ用回転側軸受は、血液ポンプの動作を支えるための基幹部品の一つであって、医療用機械器具の専用部品であることから、類似群コード09F01が付与される汎用的な第7類の商品ではなく、l0D0lが付与される第10類の商品であるものと思料する。 (7)乙第8号証ないし乙第11号証について 乙第8号証ないし乙第11号証についても、一般的に取引書類に記載される、型番・品番等が示されておらず、注文番号のみが示されている。 注文番号があるということは、注文書も存在する筈であり、注文書には具体的な加工委託に係る寸法等の仕様が記載されているものと推測するが、今回、注文書に関する取引書類の提出はなされていない。 これらの点からしても、自社製品として最終製品を販売しているものではなく、市場に流通しない受託加工サービスにより製造された商品に関する請求書等であることがうかがえる。 したがって、乙第8号証ないし乙第11号証に示された商品「軸受け」は、受託加工サービスの結果物にすぎず、乙第8号証ないし乙第11号証は、本件商標の商品商標としての使用を示す証拠となるものではない。 (8)まとめ 以上のとおり、乙第1号証ないし乙第11号証は、請求に係る指定商品のいずれかに本件商標を使用したことについて何ら証明しているものではなく、また、被請求人が取引を行ったと主張する商品が商標法上の「商品」であることを証明するものでもないため、本件商標の使用の証拠となるものではない。 3 意見書による主張 令和7年8月5日付け回答書によると、商標権者は卸売会社から繰り返しSiC軸受(以下単に「軸受」という)の製造注文を受け、これを納入先に納入している旨、すなわち、商標権者はいわゆるOEMによる軸受の生産を受注し納品している者である旨を述べている。その上で、軸受が商標権者の商品として取引されている旨を主張している。 しかしながら、OEMとして生産される商品は、当然ながら自社の商品ではなく、第三者ブランドの商品として納品され、かつ、第三者ブランドの商品として市場に流通する。つまり、「軸受が商標権者の商品として取引されている」という商標権者の主張は失当である。 商標権者が生産している商品が第三者ブランドの商品である以上、商標権者がその商品そのものに商標を使用しているとはいえない。むしろ、生産の受注に応じて商品を製造し納入するという商標権者の業態からすれば、商標権者は、「受注に応じて軸受を製造するというサービス」、すなわち「受託による軸受の製造」という役務に自らの商標を使用しているというべきである。 なお参考までに、「受託による製品の製造」が第40類に属する役務であることを示すJ-platpat「商品・役務名検索」検索結果プリントアウト写しを甲第4号証として提出する。 以上のように、商標権者がこれまで提出した答弁書、回答書およびそれらに添付された証拠からすれば、商標権者は本件商標を役務「受託による軸受の製造」に使用しているのであって、商品「軸受」に使用しているとはいえない。 第3 被請求人の主張 被請求人は、結論同旨の審決を求め、答弁書、令和7年1月28日付け審尋(以下「審尋1」という。)に対する同年3月3日付け回答書(以下「回答書1」という。)及び同年6月30日付け審尋(以下「審尋2」という。)に対する同年8月5日付け回答書(以下「回答書2」という。)において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第23号証を提出した。 1 答弁の理由 (1)ウェブページにおける本件商標の使用 ア 2020年10月21日に商標権者ウェブページの製品情報の炭化ケイ素(Sic)の欄に掲載された記事の写し(乙1)を提出する。 乙第1号証は過去に掲載されたウェブページを閲覧するツールである「Wayback Machine」を用いて取得したものである。 乙第1号証には、その上部に「日本ファインセラミックス株式会社」という商標権者の名称が記載され、さらにその名称の左横に本件商標が付されている。なお、本件商標を構成する文字「JFC」は商標権者名称の英語表記「JAPAN FINE CERAMICS CO.,LTD.」の略称である。 また、「主な用途」という欄に商標権者が製造・販売している各種商品が掲載され、その中に、「摺動部品(・・・、ケミカルポンプ軸受け、シャフト)」と記載されている。 以上の点から明らかなように、本件商標が商標権者のウェブページに掲載され、かつ、商品「ケミカルポンプ軸受け、シャフト」に使用されているから、本件商標は取消対象の第7類の指定商品「軸.軸受(機械要素)(陸上の乗物用のものを除く。)」又は第12類の指定商品「軸.軸受(陸上の乗物用の機械要素)」について使用されているものと認められる(商標法第2条第3項第8号)。 イ 2020年10月21日に商標権者ウェブページの製品情報の窒化ケイ素(Si3N4)の欄に掲載された記事の写し(乙2)を提出する。 乙第2号証は「Wayback Machine」を用いて取得したもので、その上部の「日本ファインセラミックス株式会社」という商標権者の名称の左横に本件商標が付されている。 また、「主な用途」という欄に商標権者が製造・販売している各種商品が掲載され、その中に、「耐摩耗部品(・・・、モーターシャフト、軸受け・・・)」と記載されている。 以上の点から明らかなように、本件商標が商標権者のウェブページに掲載され、かつ、商品「モーターシャフト、軸受け」に使用されているから、本件商標は、請求に係る指定商品中の第7類「軸・軸受(機械要素)(陸上の乗物用のものを除く。)」又は第12類「軸・軸受(陸上の乗物用の機械要素)」について使用されているものと認められる(商標法第2条第3項第8号)。 なお、上記乙第1号証及び乙第2号証において、「炭化ケイ素(Sic)」や「窒化ケイ素(Si3N4)」が掲載されているが、これらは商標権者の製造・販売商品の原材料を紹介したものであり、「主な用途」に掲載された商品が商標権者の製造・販売する商品であることはいうまでもないが、誤解のないよう、この事実を示す証拠を以下に掲げる。 2022年7月改定の商品パンフレットの写し(乙3)の「エンジニアセラミックス」に記載された記事(1枚目)において、「ポンプ・シール用摺動部品、半導体、液晶製造装置用部品等を原料調合から最終製品まで一貫生産しております。」と記載され、最終製品が製造・販売されていることが示されている。 また、現在の商標権者ウェブページのニュース欄に記載された記事の写し(乙4)に、2020年12月2日から同月4日まで「高機能セラミック展」が開催されたことが掲載され、当該展示会の商標権者出店ブースを撮影した写真(2枚)の写し(乙5)には、製造・販売商品である最終製品の展示が撮影されており、最終製品が製造・販売されていることが示されている。 (2)取引書類における本件商標の使用 ア 商標権者がS社に対して2022年4月27日付けで発行した請求書、納品書及び物品受領書の写し(乙6)を提出する。 乙第6号証は、商品「回転側軸受」に関する取引書類であり、各書面の右上に商標権者の名称とその左横に本件商標が付されている。 続いて、当該商品「回転側軸受」について、S社の社員が2022年6月15日に作成した「EVAHEARTシステム」の説明書の写し(乙7)を用いて説明する。 乙第7号証は「2022年度精密工学会ものづくり賞」向けに提出する資料として2022年6月に商標権者の社員宛てに提供されたもので、その第5頁及び第6頁に「回転側軸受(JFC殿供給部品)」と記載され、「回転側軸受」が血液ポンプに使用される部品となっていることが示されている。 したがって、乙第6号証に係る「回転側軸受」は血液ポンプに使用されるものであるから、本件商標は、請求に係る指定商品中の第7類「軸受(機械要素)(陸上の乗物用のものを除く。)」について使用されているものである(商標法第2条第3項第8号)。 イ その他の商標権者発行の請求書、納品書及び物品受領書の写し(乙8~乙11)を提出する。 上記の乙第6号証以外においても、商品「軸受」について本件商標が付された取引書類を多数発行しているので併せて提出する。 (ア)商標権者が2020年9月9日付け発行の「軸受」に関する請求書、納品書及び物品受領書の写し(乙8) (イ)商標権者が2020年11月4日付けで発行した「セラミック軸受(1)及びセラミック軸受(2)」に関する請求書、納品書及び物品受領書の写し(乙9) (ウ)商標権者が2021年6月23日付けで発行した「セラミック軸受素材及びセラミック軸受」に関する請求書、納品書及び物品受領書の写し(乙10) (エ)商標権者が2022年8月18日付けで発行した「二段両持ポンプ中央軸受」に関する請求書、納品書及び物品受領書の写し(乙11) (3)まとめ 以上のように、要証期間に日本国内でおいて、商標権者が請求に係る指定商品の一部について本件商標を使用していることが明らかである。 2 回答書1による主張 審尋1に対して以下のとおり回答する。 (1)商標法第2条第3項第2号に係る本件商標の使用 商標権者は、その製造・販売に係る商品「φ160×80L、SiC軸受、BRG-BX焼きバメ完成品;項番46101」(以下「軸受商品」という。)を例に掲げ、本件商標の使用事実を以下に説明する。 ア 軸受商品の販売経緯 (ア)注文書(乙12)の発行 乙第12号証には、令和3(2021)年7月19日付けで、製品の卸売業者であるY社が、商標権者宛に「φ160×80L、SiC軸受、BRG-BX焼きバメ完成品;項番46101」を注文した事実が記載されている。 また、軸受商品の数量、金額、納期、納入先(I社)、使用先(東京都(中略)雨水ポンプ)及び引合先(T社)等が記載されている。なお、SiC軸受とは乙第1号証に示すように「炭化ケイ素軸受」を意味する。 (イ)請求書、納品書及び物品受領書(乙13)の発行 乙第13号証は上記注文を受け軸受商品を納入する際(2021年11月9日)、商標権者が卸売会社であるY社に発行したものである。 乙第13号証には軸受商品の商品名、数量、金額等が記載されている。 (ウ)「添付資料のご連絡」と題する書面(乙14)及び納入仕様書(乙15) 乙第14号証及び乙第15号証は軸受商品を納入する際、I社に提出した書類である。 乙第14号証は軸受商品を納入する際(2021年11月9日)、商標権者からI社ヘの連絡事項(製品の項番46101)であり、下部に、都度提出していた「納入時の提出書類」は提出していないこと、また、以後納品の際は以前容認を受けた「納品時の提出資料」を添付する旨記載されている。 乙第15号証は乙第14号証の書面と同時に提出された納入仕様書であり、乙第14号証に記載された、以前容認された「納品時の提出資料」である。 具体的には、1葉目が納品仕様書(項番46101)の表紙である。2葉目が「納品時の提出書類について」と題する書面であり、軸受商品の項番46101、図番JKA1480-0が記載されている。3葉目及び4葉目が検査成績書であり、軸受商品の図番JKA1480-0が記載されている。5葉目が材料試験成績書、6葉目が軸受商品の製作図(図番JKA1480-0)である(製作図中、商標権者のノウハウに係わる箇所は黒塗りとした。)。 ここで、当該製作図の上部に<刻印について>と題して、 ・ベアリングボックスの刻印指示位置にJFCと刻印の事。円周上の位置は任意。 ・刻印文字の大きさは、一文字縦4~5mm横3mm程度とする。 ・刻印はローストレスレターポンチを使用して行う事。 という記載がある。 (エ)軸受に付された刻印の例を示す写真(乙16) 乙第16号証は上記(ウ)の製作図の刻印方法に基づき刻印が施された軸受を撮影した写真であり、1葉目は軸受の全体写真、2葉目は「JFC」と刻印された箇所を拡大した写真、3葉目は「JFC」の文字が視認し易くなるようコントラストを付けた拡大写真である(写真に赤丸を付記し「JFC」が表示されている箇所を示した。)。このように、軸受には「JFC」という文字が刻印されている。 なお、本件商標は円図形の中に欧文字「JFC」と表示してなり、「JFC」以外の構成がありふれた図形にすぎないため、本件商標と軸受に刻印された「JFC」は社会通念上同一の商標と解される。 イ 軸受商品は商標法上の商品であること 商標法上の商品とは、商取引の目的たりうべき物、特に動産をいう(工業所有権法(産業財産権法)逐条解説[第17版]1160頁)とされるものであり、流通性を有するものである。 一方、軸受商品は、納入先がI社ではあるものの、譲渡先は卸売業者であるY社であるから、Y社を通じて市場に流通しており、他社へも納入が可能な商品であり、一般流通市場を通じて商取引の対象となり得る商標法上の商品にほかならない。 したがって、軸受商品は第7類「軸受(機械要素)(陸上の乗物用のものを除く。)」であることは明白である。 ウ 小括 以上のように、商標権者は第7類「軸受(機械要素)(陸上の乗物用のものを除く。)」に本件商標を付したものを譲渡しているため、商標法第2条第3項第2号に該当する登録商標の使用と認められる。 (2)商標法第2条第3項第8号に係る登録商標の使用 本件商標の使用について商標法第2条第3項第8号に係る登録商標の使用に該当する旨は、答弁書で述べたところではあるが、新たに証拠方法を追加して説明する。 ア 2022年5月31日に公表されている商標権者ウェブページ(乙17) 乙第17号証の1枚目には、ウェブ上に本件商標が表示されるとともに、商標権者の製品情報について、「エンジニアリングセラミックス」、「エレクトロニクセラミックス」、「金属セラミックス複合材料」及び「セラミックス受託加工」と分けて記載されている。 本号証の2枚目には、ウェブ上に本件商標が表示されるとともに、「エンジニアリングセラミックス」に属する軸受(赤丸で表示された商品)が記載されている。 特許庁ホームページで公表されている「不使用取消審判請求に対する登録商標の使用の立証のための参考資料」によれば、「【典型例2】登録商標を表示した自己のウェブサイトで自己の商品・役務を紹介している場合」において、「そのウェブサイトの印刷物又は保存データは、商標の広告的使用(商標法第2条第3項第8号)に係る使用の有力な証拠となります。」と記載されている。 そうすると、本件商標が表示された自己(商標権者)のウェブサイト(乙17)で自己の商品(軸受)を紹介していることから、商標の広告的使用と認められる(商標法第2条第3項第8号)。 イ エンジニアリングセラミックスを紹介した2022年7月改定の商品パンフレット(乙18) 乙第18号証の1枚目の右欄にはエンジニアリングセラミックスに属する軸受(赤丸及び赤文字で示している。)が掲載され、また、1枚目の左欄下部には商標権者名称の右に本件商標が記載されている。 このように、本件商標は商品カタログを通じて軸受について広告的に使用されている。 ウ 2022年7月改定の会社案内(乙19) 乙第19号証には、その「ファインセラミックスの限りない未来を求めて」という欄の中に「会社概要」という記事が掲載されている。当該記事の「8.営業品目」「エンジニアリングセラミックス」の欄には以下のように記載されている(赤枠で囲われた箇所)。 「エンジニアリングセラミックス/炭化珪素、窒化珪素、アルミナ、ジルコニアを主原料とした各種エンジニアリングセラミックス製品、ポンプ・シール用摺動部品、半導体・LED・液晶製造装置用部品、精密機械用部品、耐薬・耐熱・耐摩耗用各種部品、医薬用機械部品 他」 以上の記載から明らかなように、商標権者は「炭化珪素」や「窒化珪素」等のセラミック材料はもとより、「ポンプ・シール用摺動部品」に該当する軸受(軸受商品)も販売している。 そうすると、請求人は弁駁書の中で、「摺動部品(・・・、ケミカルポンプ軸受、シャフト)」の記載は、セラミック材料である「炭化ケイ素」の単なる「用途の説明」にすぎず」、「セラミック製品を加工するサービスを提供していることが明確にわかる」などと指摘しているが、「営業品目」として「ポンプ・シール用摺動部品」が明示されている以上、セラミック材料はもとより「軸受」を販売していることは明白である。 一方、「加工サービス」も営業品目の一つではあるが、「受託加工」(赤枠で囲った箇所)に属するものであり、「エンジエアリングセラミックス」と明確に区別されている。この点は、乙第17号証の1葉目で「エンジニアリングセラミックス」と「セラミックス受託加工」を区別して掲げていることと同様である。 したがって、「エンジエアリングセラミックス」と「セラミックス受託加工」を同じく「加工サービス」と認定する請求人の主張には誤りがある。 なお、請求人は弁駁書の中で、「・・・最終製品は、委託者に納品されるものであって、市場に流通する性質のものではないため、商標法上の「商品」に該当するものではないことを申し添える」と指摘しているが、この点は、上記(1)イで述べたように、商標法上の商品であることは明白である。 エ 小括 以上のように、本件商標は、軸受商品を含む第7類の指定商品「軸受(機械要素)(陸上の乗物用のものを除く。)」について商標権者のウェブページ或いは商品パンフレットにより広告的に使用されており、商標法第2条第3項第8号に該当する登録商標の使用と認められる。 (3)まとめ 以上のように、要証期間に日本国内でおいて、商標権者が請求に係る指定商品の一部について本件商標を使用していることが明らかである。 3 回答書2による主張 審尋2において指摘された点、すなわち、「商標権者がOEMによる軸受の生産を受注し納品することが当該取引において行われていた、といった状況」であったことについて、以下に説明する。 (1)回答書1とともに提出した乙第12号証ないし乙第15号証に掲げた商品(以下「商品A」という。)の内容 商品Aは、回答書1において説明したように、商標権者は卸売会社(Y社)から注文を受け、これを製造して納入先(I社)に納入したもので、次のような内容となっている。 ア 品名&仕様(商品名) 商品Aの品名&仕様は「φ160×80L、SiC軸受、BRG-BX焼きバタ完成品」である。 なお、商品名は乙第13号証ないし乙第15号証において、「SiC軸受、BRG-BX焼きバメ完成品」、「ベアリング(φ160)BRG一BX」或いは「ベアリング(φ160)」と簡略表示されている。 イ 項番 項番とは、製品を構成する部品や材料を識別するための番号で、製品の仕様や構成を管理するために使用される番号である。商品Aに対しては、「46101」が付されている。 ウ 図番 図番とは、機械製図等の製品図面を識別するために記載される番号で、商品Aに対して、2種類の図番が付与されている。すなわち、弊社図番「JKA1480-0」(商標権者の図番)と貴社図番「3N4-Y9A91032」(I社の図番)であり、商品Aの製作図が製造元の商標権者と納品先のI社の両者で別々の図番で管理されている。 なお、注文書(乙12)の図番の欄において、「Y9A91032」と記載されているが、「3N4-」を省略した貴社図番の簡略表示である。 (2)回答書2とともに提出した乙第20号証ないし乙第23号証に掲げる商品(以下「商品B」という。)の内容 乙第20号証は卸売会社(Y社)が商標権者へ発行した商品Bの注文書(令和2年6月17日発行)である。 乙第21号証は当該注文を受けて商品Bを製造し、商品Bを納入先(I社)に納入する際に発行した請求書、納品書及び物品受領書(2020年10月9日発行)である。 乙第22号証及び乙第23号証は商品Bを当該納入先に納入する際に提出した書類で、乙第22号証は「添付資料のご連絡」と題する書類(2020年10月9日発行)であり、乙第23号証は乙第22号証と同時に提出された納入仕様書と題する書類である。 そして、これら乙第20号証ないし乙第23号証に係る商品Bは次のような内容となっている。 なお、乙第20号証ないし乙第23号証において、「品名&仕様(商品名)」、「項番」及び「図番」の箇所に付された赤矢印は商標権者が追加したものである。 ア 品名&仕様(商品名) 商品Bの品名&仕様は、商品Aと同じく、「φ160×80L、SiC軸受、BRG-BX焼きバメ完成品」となっており、また、商品Aと同様に、商品名は乙第21号証ないし乙第23号証において、「SiC軸受、BRG-BX焼きバメ完成品」、「ベアリング(φ160)BRG-BX」あるいは「ベアリング(φ160)」と簡略表示されている。 イ 項番 商品Bの項番として、商品Aと同じく「46101」が付されている。 ウ 図番 商品Bの図番として、商品Aと同様に、弊社図番「JKA1480-0」及び貴社図番「3N4-Y9A91032」が付され、商品Bも商品Aと同一の製作図(乙第23号証の6葉目に記載された製作図)により製造されている。 なお、「品名&仕様(商品名)」、「項番」及び「図番」の箇所には赤矢印を付した。 (3)商品Aと商品Bとの関係 以上のように、商品A及び商品Bについて説明したが、商品A及び商品Bがいずれもその「品名&仕様(商品名)」、「項番」及び「図番」が同一となっており、同一の製作図に基づき製造されている。したがって、商品Aと商品Bは同一仕様の商品であることは明らかである。 また、商品A及び商品Bについて商標権者に注文する際、納入先(I社)の指示、すなわち、「客先管理番号」(「項番:46101」(「図番:Y9A91032」)の指示によるものであるため、商標権者が製造する商品仕様は納入先によって管理されている。 (4)まとめ 以上のように、商標権者は納入先から指示されて商品仕様の商品A(商品B)を繰り返し製造し納品している者、すなわち、商標権者はOEM(相手先ブランド)によるSiC軸受の生産を受注し納品している者にほかならない。 そうすると、SiC軸受が商標権者の商品として取引されているものと思料する。 よって、商標権者は請求に係る指定商品の一部について本件商標を使用している。 第4 当審の判断 1 事実認定 (1)被請求人の主張及び乙各号証によれば、以下の事実が確認できる。 ア 乙第12号証 乙第12号証は、注文書であり、上部中央に、その表題の記載、左上の「取引先」に対応して、「御中」の記載を伴った商標権者の社名の記載、右上の「注文発行日」に対応して、「令和3年7月19日」の記載、その下に、静岡県内の住所の記載、その下に、Y社の社名の記載、その左下の「納入先:」に対応して、I社の社名の記載、その右の「使用先:」に対応して、「東京都(中略)雨水ポンプ」の記載がある。 また、以上の各記載の下に提示された表中、左上の「客先管理番号」の欄に、「作番」、「項番」及び「図番」がそれぞれ「CG5W381」、「46101」及び「Y9A91032」であるとする記載が含まれており、その記載の右における「引合先」の欄に、T社の社名の記載がある。 さらに、上記表の下に別の表が提示され、その表中、1行目において、見出しとして「項目」、「品名 及 仕様」、「数量」、「単価」、「金額」及び「納期」の各記載があり、6行目において、「項目」欄に「項番 46101」の記載、「品名 及 仕様」欄に「φ160×80L SiC軸受、BRG-BX焼きバメ完成品」の記載、「数量」欄に「1」の記載、「金額」欄に金額を示す数値の記載があり、7行目ないし9行目においては、「品名 及 仕様」欄に、それぞれ「・BRG-BX、SUS403、図/♯3219127 ×1個(項/♯47102)」、「・RD-BRG、SiC 、図/♯3157083 ×1個(項/♯47101)」、「・BRG 、完成品 、図/♯Y9A91032 ×1組」の記載がある一方、「項目」、「数量」及び「金額」の各欄はいずれも空欄とされている。 イ 乙第13号証 乙第13号証は、請求書、納品書及び物品受領書であり、それらの3つの書面が並べて提示され、各書面において、それぞれの上部中央に対応する表題の記載がある。 そして、このうち、納品書については、左上に、「御中」の記載を伴ったY社の社名の記載、右上に、「2021/11/09」の記載、その下に、別掲2に示すとおりの商標の記載、その右に、商標権者の社名の記載、その下に、商標権者のものと一致する住所の記載があり、その下に提示された表中、1行目に、見出しとして「枝番」、「商品名」、「数量」、「単位」、「単価」、「金額」及び「備考」の各記載があり、2行目において、「商品名」欄に、「SiC軸受、BRG-BX焼きバメ完成品 客先注番02491310 作番CG5W381 項番46101」の記載、「数量」欄に、「1.00」の記載、「金額」欄に、乙第12号証において提示された表中の「金額」欄のものと一致する金額を示す数値の記載がある。 ウ 乙第14号証 乙第14号証は、「添付資料のご連絡」との表題の書面であり、上部に、その表題の記載、その右下に、「2021/11/9」の記載、その左下に、「様」の記載を伴ったI社の社名の記載、その右下に、商標権者の社名の記載、その左下に、「下記の資料を製品同梱添付致します。」の記載、その下に、「注番:02491310 作番:CG5W381 項番:46101」の記載があり、下部に、「※ご注文の際、都度提出しておりました【納入時の提出資料】ですが、事前容認は不要のご指示をいただき、提出しておりません。以後納品の際は、以前容認いただきました【納入時の提出資料】を都度添付致します。その際、貴社注番・貴社作番・貴社項番・数量の訂正は致しません。」の記載がある。 エ 乙第15号証 乙第15号証は、被請求人が、乙第14号証に係る上記ウの書面と同時に提出された納入仕様書と主張するものであり、各葉に以下の記載がある。 (ア)1葉目において、「納品仕様書」の記載、その下に、「作番:CG5Y617」、「項番:46101、47101、47102」、「品番:BRG-BX」、「メーカ:ヤマショウ」の各記載があり、その下に提示された表中に、T社の社名の記載がある。 (イ)2葉目において、右上に、「2019/07/19」の記載、その左下に、「御中」の記載を伴ったI社の社名の記載、その右下に、商標権者の社名の記載、その下に、商標権者のものと一致する住所の記載、その左下に、「納品時の提出書類について」の記載、その下に、「(φ160x 80L SiC軸受、BRG-BX:材質SUS403)」の記載があり、その下に提示された表中、最も左の列に、見出しとして「部品名」、「貴社注番」、「貴社作番」、「貴社項番」、「貴社品番」、「貴社図番」、「弊社図番」、「弊社コード」、「数量」、及び「摘要」の各記載があり、左から2番目ないし4番目の列において、「部品名」欄に、それぞれ「BRG-BXベアリングボックス」、「RD-BRGラジアルベアリング」、「ベアリング(φ160)」の各記載、「貴社注番」欄に、各列共通で「01827935」の記載、「貴社作番」欄に、各列共通で「CG5Y617」の記載、「貴社項番」欄に、それぞれ「47102」、「47101」、「46101」の各記載、「弊社図番」欄に、各列共通で「JKA1480-0」の記載がある。 (ウ)6葉目において、右上に、円筒形状の機械部品の図が提示され、その左に、表が提示され、その欄の1つに「セラミックス軸受」の記載があり、当該表の左に、「<刻印について>」の記載、その下に、「・ベアリングボックスの刻印指示位置にJFCと刻印の事。」の記載があり、右下に提示された表中に、商標権者の社名の記載及び「JKA1480-0」の記載があり、また、左下における紙面のやや中央寄りに、「注記)」の記載、その下に、「1.ラジアルベアリングをベアリングボックスに焼き嵌めする事。」の記載がある。 (2)上記(1)アないしエによれば、次の事実を認めることができる。 ア 静岡県内のY社は、商標権者宛に、令和3年7月19日付けで、「納入先」及び「引合先」がそれぞれI社及びT社であり、「作番」及び「項番」がそれぞれ「CG5W381」及び「46101」であること及び用途が雨水ポンプであることが特定された、「φ160×80L SiC軸受、BRG-BX焼きバメ完成品」と称する製品(以下「本件軸受」という。)を1個注文することについての注文書(以下「注文書」という。)を発行した(乙12)。 イ 商標権者は、Y社宛に、2021年11月9日付けで、別掲2の商標が表示され、「SiC軸受、BRG-BX焼きバメ完成品 客先注番02491310 作番CG5W381 項番46101」と称する、金額が注文書における記載のものと一致する製品を1個納品したことについての納品書(以下「納品書」という。)を発行した(乙13)。 ウ 納品書に記載されている製品の名称が、発注書に記載されている製品である本件軸受の名称と「SiC軸受、BRG-BX焼きバメ完成品」において一致しており、また、発注書と納品書とは、当該製品の金額並びに「作番」及び「項番」の記載についても一致していることからすれば、納品書に記載されている上記製品が本件軸受であることは明らかである。 さらに、発注書と納品書とは、受領の当事者が商標権者及びY社である点及び取引対象とされた本件軸受の個数が一致しており、納品書の日付から発注書の日付までの期間が3月余りであることも考慮すると、発注書及び納品書は、本件軸受に関して同一の取引に係る取引書類であり、これらは、令和3年7月19日にY社が発注した本件軸受を、商標権者が同年11月9日に、納品書を静岡県内のY社宛に発行の上、I社に納品したことを示すものといえる。 エ 商標権者は、I社宛に、2021年11月9日付けで、「注番」が「02491310」、「作番」が「CG5W381」、「項番」が「46101」の「製品」に「都度添付」する「納入時の提出資料」について、「貴社注番・貴社作番・貴社項番・数量」の訂正をしない旨が記載された、「添付資料のご連絡」と題する書面(乙14、以下「連絡書」という。)を発行したところ、その発行日は納品書と一致しており、連絡書における「02491310」、「CG5W381」及び「46101」の各記載についても納品書に同じ記載があることから、連絡書が、商標権者が本件軸受をI社に納品する際のI社への連絡事項を記載したものであることは明らかである。 オ 一方、連絡書とは別に、商標権者は、「納品仕様書」(乙15の1葉目)に添付して、「納品時の提出書類について」と題する書面(乙15の2葉目、以下「提出書類説明書」という。)を、I社宛に、2019年7月19日付けで発行したところ、この日付は、連絡書の日付の2年以上前であり、また、提出書類説明書における「貴社注番」及び「貴社作番」の「01827935」及び「CG5Y617」も、それぞれ連絡書の「02491310」及び「CG5W381」と異なるものである。 しかしながら、提出書類説明書における「φ160x 80L SiC軸受、BRG-BX」の記載は、発注書における「φ160×80L、SiC軸受、BRG-BX焼きバメ完成品」の記載と多くの部分が共通しており、提出書類説明書の表中に記載されている「貴社項番」の1つである「46101」について、同じ記載が注文書、納品書及び連絡書に存在することからすれば、提出書類説明書は、本件軸受について記載したものとみて差し支えない。 そうすると、提出書類説明書の表中の「弊社図番」欄に記載されている「JKA1480-0」は、本件軸受の図番といえる。 なお、提出書類説明書における「貴社注番」及び「貴社作番」が連絡書と異なることは、連絡書に記載のとおり、「貴社注番・貴社作番・貴社項番・数量」の訂正をしなかったことに起因するものと合理的に理解できる。 カ 「納品仕様書」(乙15の1葉目)には、右下に提示された表中に商標権者の社名の記載及び「JKA1480-0」の記載がある書類(乙15の6葉目)が添付されているところ、上記オによれば、当該書類は、本件軸受について記載したものであって、その「ベアリングボックスの刻印指示位置にJFCと刻印の事。」の記載や、「ラジアルベアリングをベアリングボックスに焼き嵌めする事。」の記載は、本件軸受が、商標権者において、ベアリングボックスに「JFC」と刻印する工程や、ラジアルベアリングをベアリングボックスに焼き嵌めする工程を経て製造されたことを示すものといえる。 そして、「JFC」は、本件軸受の出所表示のため、商標権者の社名をアルファベットの頭文字で表記したものと解される。 以上を総合すると、上記ウの納品について、商標権者は、本件軸受を自らの商品として製造、販売したものと推認できる。 キ 上記アないしカによれば、商標権者は、2021年11月9日に日本国内において、雨水ポンプ用の商品「軸受」(以下「使用商品」という。)を1個、I社に納品することにつき、静岡県内のY社宛に、別掲2の商標(以下「使用商標」という。)が表示された納品書を頒布したことが認められる。 2 判断 上記1(2)オの行為について、次のとおり判断できる。 (1)使用商品について 使用商品は、雨水ポンプ用の「軸受」であるから、請求に係る指定商品中の第7類「軸・軸受・軸継ぎ手・ベアリング(機械要素)(陸上の乗物用のものを除く。)」に該当すると認められる。 (2)使用商標について 使用商標は、本件商標と色彩を除いて同一であって、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。 (3)使用者、使用時期及び使用行為について 納品書は、使用商品に係る取引書類といえるから、商標権者により、使用商標が表示された取引書類を頒布する行為が、2021年11月月9日に日本国内において行われたものであって、使用商標の使用者は、商標権者であり、使用商標の使用時期である2021年(令和3年)11月9日は、要証期間であり、当該行為は、商標法第2条第3項第8号にいう、商品に関する取引書類に標章を付して頒布する行為に該当する。 (4)小括 上記(1)ないし(3)によれば、商標権者は、要証期間に日本国内において、請求に係る指定商品中の第7類「軸・軸受・軸継ぎ手・ベアリング(機械要素)(陸上の乗物用のものを除く。)」に該当する商品に関する取引書類に標章を付して頒布する、商標法第2条第3項第8号に該当する行為を行ったことが認められる。 3 請求人の主張について 請求人は、意見書において、OEMとして生産される商品は、自社の商品ではなく、第三者ブランドの商品として納品され、かつ、第三者ブランドの商品として市場に流通するから、被請求人による、商標権者はいわゆるOEMによる軸受の生産を受注し納品している者であり、軸受が商標権者の商品として取引されているとの主張は失当であり、商標権者が生産している商品が第三者ブランドの商品である以上、商標権者がその商品そのものに商標を使用しているとはいえず、むしろ、生産の受注に応じて商品を製造し納入するという商標権者の業態からすれば、商標権者は、「受注に応じて軸受を製造するというサービス」、すなわち「受託による軸受の製造」という役務に自らの商標を使用しているというべきである旨、主張している。 しかしながら、上記1(2)カのとおり、商標権者は、本件軸受を自らの商品として製造、販売したものと推認できる一方、商標権者が、請求人が主張する役務の提供の対価等として本件軸受を納品したと認めるに足りる証拠はない。 よって、請求人の上記主張は採用できない。 4 まとめ 以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者が、請求に係る指定商品に該当する商品について、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていたことを証明したということができる。 したがって、本件商標の登録は、請求に係る指定商品について、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。 よって、結論のとおり審決する。

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