商標取消審判
2023-300173
スカウト
- 審判番号
- 2023-300173
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願2005-048083
- 登録番号
- 4922282
- 請求日
- 2023年03月10日
- 審決日
- 2023年12月08日
- 公報発行日
- 2024年02月22日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社 TAO
- 【請求人代理人】村上 博
- 【被請求人】株式会社 リクルート
- 【被請求人代理人】橘 哲男
- 【被請求人代理人】佐藤 大輔
- 審判長/審判官
- 審判長 旦 克昌
- 審判官 小林 裕子
- 審判官 清川 恵子
- 分類
- T132 .1 -Y (Y35)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 行政事件訴訟法46条商標法50条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第50条第1項、商標法第2条第3項第3号、商標法第2条第3項第4号、商標法第50条第2項、商標法第2条第3項第7号、商標法第2条第3項、商標法第50条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第4922282号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第4922282号商標(以下「本件商標」という。)は、「スカウト」の文字を標準文字で表してなり、平成17年5月31日に登録出願され、「職業のあっせん,職業のあっせんに関する情報の提供,求人情報の提供」を含む第35類及び第41類に属する商標登録原簿に記載の役務を指定役務として、同18年1月20日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録は、令和5年3月29日になされたものであるから、商標法第50条第2項に規定する「審判の請求の登録前3年以内」とは、令和2(2020)年3月29日から令和5(2023)年3月28日までの期間(以下「要証期間」という。)である。
第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定役務中、第35類「全指定役務」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を要旨以下のように述べた。
1 請求の理由
本件商標は、その指定役務中、第35類「全指定役務」について継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
請求人は、被請求人の答弁に対して、要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証を提出した。
(1)商標法第50条第1項における判断の枠組み
平成24年(行ケ)第10382号判決(甲1)の判断基準によれば、使用商標のある部分が取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものではなく、残りの部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないともいうことができない場合には、使用商標からある部分のみを抽出し、この部分だけを本件商標と比較して商標そのものの同一性を判断することは、許されない。
(2)本件商標の「使用」についての判断基準
商標法第50条第1項は、「指定役務についての登録商標の使用」と規定している。
したがって、標章を記載していても、「指定役務についての本件商標の使用」、つまり「標章を商標として使用している」ことが必要である。
ここで、「標章を商標として使用している」と言えるためには、少なくとも、その標章が出所表示機能を果たしているかによって判断できる。
(3)被請求人の本件商標の指定役務についての使用の有無
ア 標章「スカウト」について
乙第2号証の「スカウトについて」の記載によれば、被請求人が提供している役務は概ね以下である。
まず、求職者であるユーザが、自己の属性情報、自己PR、スキル経験等を「OpenES」を通じて被請求人のシステムに登録し、被請求人のシステムは、ユーザの承諾の下、「OpenES」に登録されたユーザの情報を、求人企業に提供する。
そして、求人企業がこのユーザに興味を持った場合には、メッセージがユーザに配信される。
そうすると、被請求人が「スカウト」として提供している役務は、「求職者の情報を求人企業に提供する」ということと、「求人企業からの応募の勧誘メッセージをユーザに送信する」ということのみである。
したがって、この役務は「職業のあっせん」でも、「求人情報の提供」でもない。
「職業のあっせん」とは、「求職者」に対して職業を紹介等することであって、求人企業に対して求職者を紹介することは、「職業」のあっせんではなく、「求人者」のあっせんである。
また、「求人情報の提供」は、求人企業の具体的な求人条件を求人者に提供することであって、求人企業に対して求職者を紹介することは、「求人情報の提供」ではなく、「求職者情報の提供」である。
そして、被請求人のポータルサイト全体において「スカウト」という標章が指定役務の出所表示機能を果たす態様で使用されているという証拠はない。
さらに、乙第3号証は、ユーザ名が「検証用scout0」及び「teaser03」などとなっており、企業名が全て「MP増殖企業」などの架空の企業名で、これらのページのURLも、出力された日付もない。
つまり、これらのページは実際にユーザに提供されたページではなく、外部には非公開の社内用のテスト用デモページのハードコピーである。
したがって、乙第2号証は本件商標の指定役務について、被請求人が実際に使用したことの証拠にはならない。
イ 標章「リクナビスカウト」について
(ア)使用した商標について
乙第2号証~乙第3号証においては、「リクナビスカウト」における「スカウト」の部分は、通常用いられる「スカウト」、つまり「有望な人材を探し出したり引き抜いたりすること」(広辞苑第七版、岩波書店)と、同じ意味で用いられている。
したがって、「ある部分が取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとまではいうことはでき」ない。
そして、答弁書及び乙第1号証によれば、「リクナビ」は需要者の間において広く知られ、厚生労働省などの中枢たる省庁から高い評価を得ているそうである。
そうであるならば、「残りの部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないともいうことはできない」。
よって、「使用商標からある部分(スカウト)のみを抽出し、この部分だけを本件商標と比較して商標そのものの同一性を判断することは、許されない。」
したがって、被請求人が要証期間中に本件商標を役務に使用したという証明はされていない。
(イ)使用対象となった役務について
被請求人が「リクナビスカウト」を使用している役務は、上述の「スカウト」を使用している役務と同一と思われる。
そうすると、被請求人が「スカウト」として提供している役務は、「求職者の情報を求人企業に提供する」ということと、「求人企業からの応募の勧誘メッセージをユーザに送信する」ということのみである。
したがって、この役務は「職業のあっせん」でも、「求人情報の提供」でもない。
ウ 残りの指定役務についての使用
残りの指定役務についても、被請求人が要証期間中に本件商標を役務に使用したという証明はされていない。
(4)まとめ
以上述べたように、被請求人の主張はすべて失当であり、被請求人が要証期間中に本件商標を第35類の役務に使用したという証明はされていない。
第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第4号証を提出している。
1 被請求人の答弁
(1)本件商標の使用状況
ア 本件商標権者(被請求人)提供役務「リクナビ」について
本件商標権者(被請求人)である株式会社リクルートは、大学新卒者、転職者、派遣希望者などの求職者を対象として就職ポータルサイト「リクナビ」を提供し、各求職者に対して職業のあっせんや求人情報の提供を行っている。「リクナビ」は、被請求人が提供する就職ポータルサイトの名称として20年以上もの長きにわたり継続的に使用されてきたものであり、被請求人の業務に係る役務として大学新卒者、転職者、派遣希望者などのあらゆる層の就転職者の間で広く知られている。
特に、企業の新卒採用には多大な影響力を持ち、新卒採用業界のトップランナーの地位を常に維持している。このような状況下において、「リクナビ」は、厚生労働省の就職支援対象サイトとされており、我が国の中枢たる省庁からも高い評価を得ている(乙1)。
イ 使用標章について
被請求人は、新卒学生向けに職業のあっせんや求職情報の提供を行う就職ポータルサイト「リクナビ」中の機能名称として「スカウト」(以下、「使用標章」とする。)を表記、使用するものである。使用標章は、本件商標と「同一」(社会通念上同一を含む。)である。
ウ 使用役務について
被請求人は、利用者である新卒学生に対して、就職ポータルサイト「リクナビ」内の「スカウト」機能を通じて、職業のあっせんや求人情報の提供(以下、これらを併せて「被請求人使用役務」とする。)を行っている。
すなわち、当該「スカウト」機能とは、利用者の属性情報(現住所の都道府県など)や自己PRなどの情報、スキル・経験及び「リクナビ」上の行動履歴に基づき、経験や個性に興味を持った企業から届くメッセージをいう(乙2)。これに対して、利用者側が承諾することで企業への応募が可能となる。
乙第3号証は、「リクナビ2025利用者側画面の写し」であり、当該画面上では使用標章「スカウト」の文字を各所に散見されていることが一見して認識可能となる。利用者は、当該画面上で企業側からの「スカウト」の有無を確認することができる。
このように、被請求人は、利用者である新卒学生に対して、就職ポータルサイト「リクナビ」内の「スカウト」機能を通じて、被請求人使用役務の提供を行っている。この被請求人使用役務は、本件商標に係る役務中の第35類「職業のあっせん,求人情報の提供」に該当する。
エ 商標法上の「使用」について
被請求人は、使用標章「スカウト」を用いて被請求人使用役務について、以下の「使用」行為を行っている。
(ア)インターネット上で前記「リクナビ」が表示されているディスプレイ画面を介し被請求人使用役務を提供するに際して、そのディスプレイ画面上に使用標章「スカウト」を表示することで前記使用役務を提供するものである。これは「電磁的方法により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為」に当たり、商標法第2条第3項第7号で規定する「使用」に該当する。
(イ)さらに、被請求人使用役務に際して、利用者である新卒学生が利用に供する就職ポータルサイト「リクナビ」内で使用標章「スカウト」を表示することは、「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物(譲渡し、又は貸し渡す物を含む。以下同じ。)に標章を付する行為」に当たり、商標法第2条第3項第3号で規定する「使用」に該当する。
(ウ)また、被請求人使用役務に際して、前記「リクナビ」内で使用標章「スカウト」を表示して前記使用役務の提供を行っている。これは「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為」に当たり、商標法第2条第3項第4号で規定する「使用」に該当する。
このように、被請求人は、使用標章「スカウト」を用いて被請求人使用役務について、商標法上に規定されている「使用」(商標法第2条第3項第3号、同第4号、同第7号)するものといわなければならない。
オ 要証期間内における使用であること
被請求人による前記「使用」行為は、要証期間を含め現時点に至るまで継続的に行われている。
乙第4号証の申込書は、企業側が、被請求人に対して、前記「リクナビ」の利用する際に送付する申込書である。当該申込書においては、左上に申込日、その下方発注会社欄に顧客企業名(営業秘密のため顧客企業名は黒塗りとする。)とその担当者等の情報、申込内容、合計金額等の各種情報が記載されている。前記「リクナビ」の利用を希望する企業側が当該申込書を記載し、被請求人に対して送付することで前記「リクナビ」利用を開始できる。これにより、企業側が、求職活動を行っている新卒学生等の利用者に対して、「スカウト」を送ることが可能となる。
左上部の申込日に記載されている日付は、2023年(令和5年)3月から2022年(令和4年)6月までのものであり、いずれも要証期間内のものであることが一見して理解できる。
(2)結語
以上に述べたように、被請求人の提出に係る乙各号証を勘案すれば、被請求人は、要証期間内において、被請求人使用役務について本件商標(社会通念上同一の商標を含む。)を使用(商標法第2条第3項第3号、同4号、同7号)するものであることが容易に理解できる。そのため、本件商標は、商標法第50条第1項の規定に基づいて、その登録を取り消されるべきものではなく、請求人による審判請求は理由がない。
第4 当審の判断
1 事実認定
被請求人が提出した証拠、同人の主張によれば、以下の事実を認めることができる。
(1)被請求人(本件商標権者)は、大学新卒者、転職者、派遣希望者などの求職者を対象として就職ポータルサイト「リクナビ」を提供し、当該サイトは、本件商標権者が提供する就職ポータルサイトの名称として継続的に使用されていたものである。
(2)乙第1号証は、厚生労働省ウェブサイト「学生のための民間就職情報サイトへの・・・就職支援情報の掲載について」の写しであり、そこには、「平成24年1月17日」、「学生向け・・・就職情報ポータルサイトを運営する民間企業に無償でご協力いただき、新規学校卒業予定者等(平成24年3月卒業)に対する新卒応援ハローワークなどの広報を行うこととしました。」、「リクナビ2012」(1月6日より)/(運営)株式会社リクルート」等の記載があり、株式会社リクルート(本件商標権者及び被請求人、以下「リクルート社」という場合がある。)が、遅くとも平成24年1月には、大学新卒者などの求職者を対象として就職情報ポータルサイト「リクナビ」を運営し、大学新卒者などの就職の支援を行っていることが認められる。
(3)乙第2号証は、本件商標権者の「リクナビ」のサイトのFAQの写しであり、「OpenES PRODUCED BY RECRUIT」、「リクナビ2025ご利用の方」「スカウトについて」の記載があり、7葉目に「スカウトについて」「「スカウト」とは、あなたのOpenESにおける属性情報(現住所の都道府県・海外および学科系統)や自己PRなどの情報、スキル・経験およびリクナビ上の行動履歴(気になる登録・閲覧履歴・応募状況等)に基づき、経験や個性に興味を持った企業から届くメッセージのことです。あなたがOpenESに情報を入力・保存し・・・スカウト機能に登録した場合に送られてくる可能性があります。・・・スカウトを承諾することで、企業への応募ができます。」等の記載があり、本件商標権者が当該サイトにおいて、企業から利用者へのメッセージの送信や利用者が「承諾」することで企業と関係をつなぐことができる機能(以下、「使用役務」という場合がある。)を表すものとして「スカウト」の文字を使用していることが認められる。
(4)乙第3号証は、本件商標権者の「リクナビ」のサイトのうち「リクナビ2025利用者側画面」の写しであり、7葉目には、「スカウト/あなたの経験や個性に興味を持った企業から直接メッセージが届く!」「あなたにスカウトが届いた理由がわかります」「スカウト限定のインターンシップ・1day仕事体験があります」等の記載、8葉目には「「スカウト」では・・・あなたのOpenESを見て会いたいと思った企業からのスカウトを確認することができます。」等の記載、11葉目には、「スカウト機能における利活用方法の説明」として「スカウトとは、企業が、OpenESなどを利用し、企業が開催する説明会や採用選考の案内を会員に送信するサービスをいいます。」「Recruit Co.,Ltd」等の記載があり、本件商標権者の当該サイトにおいて、企業から利用者へのメッセージや採用選考案内などを送信できる機能を表すものとして「スカウト」及び「スカウト」の文字を含む表記で使用されていることが認められる。
(5)乙第4号証は、企業側が本件商標権者に対して「リクナビ」を利用する際に送付する申込書の写しであり、3葉目には「(株)リクルート御中」「申込日 2023年3月7日」「商品・号/リクナビ(IS) 23年6月1日開始[3]」「企画/リクナビスカウト配信料」「明細/1000通(プレ)」「料金(税抜)/2,000,000」の記載、4葉目には「(株)リクルート御中」「申込日 2022年12月23日」「商品・号/リクナビ2024 23年3月1日開始[2]」「企画/リクナビスカウト配信料」「明細/1000通」「料金(税抜)/960,000」の記載、6葉目には、「(株)リクルート御中」「申込日 2022年12月13日」「商品・号/リクナビ2024 23年3月1日開始[1]」「企画/リクナビスカウト配信料」「明細/100通」「料金(税抜)/100,000」の記載、11葉目には、「(株)リクルート御中」「申込日 2022年8月26日」「商品・号/リクナビ2024 23年3月1日開始[5]」「企画/リクナビスカウト配信料」「明細/1000通」「料金(税抜)/600,000」の記載、13葉目には、「(株)リクルート御中」「申込日 2022年8月16日」「商品・号/リクナビ2024 23年3月1日開始[12]」「企画/リクナビスカウト配信料」「明細/1000通」「料金(税抜)/600,000」の記載があり、企業が「リクナビ」で「スカウト」配信を利用するためにスカウト配信の明細(○○通)を記載した申込書を本件商標権者に送付していることが認められる。
2 判断
前記1において認定した事実によれば、以下のとおり判断できる。
(1)使用商標
本件商標は、前記第1のとおり、「スカウト」の文字を標準文字で表してなるところ、使用商標は以下のとおりである。
ア 本件商標権者の「リクナビ」のサイトのFAQ(乙2)で掲載されている「スカウトについて」「「スカウト」とは」の「スカウト」の片仮名は、本件商標の片仮名と同じであるから、本件商標と社会通念上同一の商標であると認められる。
イ 本件商標権者の「リクナビ」のサイトのうち「リクナビ2025利用者画面の写し」(乙3)では、7葉目の「スカウト」、8葉目「スカウトでは」の「スカウト」の片仮名は、本件商標の片仮名と同じであるから、本件商標と社会通念上同一の商標であると認められる。
(2)使用役務について
前記1(1)及び(2)のとおり、本件商標権者は、大学新卒者などの求職者を対象として、企業側の採用・求人情報などを載せた就職情報ポータルサイト「リクナビ」において、大学新卒者などの就職の支援を行っていることが認められる。そして前記1(3)及び(4)によれば、「スカウト」は、属性情報や自己PRなどの登録がなされた利用者(求職者)情報を企業(求人企業)に提供し、その利用者(求職者)に興味を持った企業から届くメッセージ(企業の採用情報等)であり、これに対して、利用者(求職者)側が承諾することで企業への応募が可能となるものである。
ところで、「職業のあっせん」(「あっせん:事が進展するよう、人と人の間をとりもつこと。世話。」「広辞苑 第七版」岩波書店)は、主として労働者への職業紹介が含まれ、職業紹介とは、企業等からの求人及び求職者からの求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあっせんすることをいうものである(「商品及び役務の区分解説〔国際分類第11―2022版対応〕)。
そこで、使用役務についてみるに、利用者(求職者)から求職の申込み(属性情報や自己PRなどの登録)を受け、利用者(求職者)の情報を求人企業に提供し、その利用者(求職者)に興味をもった企業が利用者(求職者)にメッセージ(企業の求人情報等)を送り、その企業のメッセージ(企業の求人情報等)に対して利用者(求職者)が承諾することで企業への応募(申込み)となるものであるから、使用役務は、利用者(求職者)と求人企業との間の雇用関係の成立をとりもっているものといえる。
そうすると、前記使用役務は、請求に係る指定役務である第35類のうち「職業のあっせん,職業のあっせんに関する情報の提供」の範ちゅうに属する役務と認められる。
(3)使用時期について
前記1(5)のとおり、企業が本件商標権者に対して就職情報ポータルサイト「リクナビ」及び「スカウト」を利用する際に送付する申込書(乙4)において、申込書の日付は、「2023年3月7日」「2022年12月23日」「2022年12月13日」「2022年8月26日」「2022年8月16日」といずれも要証期間内であり、「リクナビスカウト配信料」の文字から、当該期間内に「リクナビ」において「スカウト」の文字がFAQ(乙2)や利用者画面(乙3)において使用されていることが推認できる。
(4)使用者
前記1のとおり、就職情報ポータルサイト「リクナビ」を運営、提供しているのは、被請求人であって本件商標権者であるリクルート社であり、当該サイトにおいて「スカウト」を使用しているのは、本件商標権者である。
(5)使用行為
ア 前記1(2)の「ポータルサイトのFAQ」(乙2)は、就職情報ポータルサイト「リクナビ」及び「スカウト」の使用方法を説明するものであり、使用役務の提供に当たり、その提供を受ける者の利用に供する物に該当する。そして、前記(2)及び(3)のとおり、使用役務が提供されていたことが推認されるから、本件商標権者は、要証期間内に、請求に係る指定役務の範ちゅうの使用役務の提供に当たり、その提供を受ける者の利用に供する物に前記(1)の使用商標を付した物を用いて役務の提供を行ったものであり、この行為は、商標法第2条第3項第4号の使用行為に該当する。
イ 前記1(3)の「リクナビ2025利用者画面の写し」(乙3)は、利用者が利用する際の画面(映像)であり、前記(2)及び(3)のとおり、使用役務が提供されていたことが推認されるから、本件商標権者は、要証期間内に、電磁的方法により行う映像を介した使用役務の提供に当たり、その映像面に前記(1)の使用商標を表示して役務を提供する行為を行ったものであり、この行為は、商標法第2条第3項7号の使用行為に該当する。
3 小括
前記(1)ないし(5)によれば、本件商標権者は、要証期間内に、日本国内において、その請求に係る指定役務中「職業のあっせん,職業のあっせんに関する情報の提供」に関する役務の提供に当たり、その役務の提供を受ける者の利用に供する物(FAQ)に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付したものと認めることができ、また、電磁的方法により行う映像面(利用者画面)を介した役務の提供に当たり、その映像面に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して「職業のあっせん,職業のあっせんに関する情報の提供」に関する役務を提供する行為を行ったものと認められ、これは、商標法第2条第3項第4号及び同項第7号に該当する商標の使用ということができる。
4 請求人の主張について
(1)請求人は、被請求人が「スカウト」として提供している役務は、「求職者の情報を求人企業に提供する」ということと、「求人企業からの応募の勧誘メッセージをユーザに送信する」ということのみであって、この役務は「職業のあっせん」でも、「求人情報の提供」でもない旨主張する。
しかしながら、前記2(2)のとおり、「スカウト」が提供している役務は、「求職者の情報を求人企業に提供」し、「求人企業からの応募の勧誘メッセージを求職者に送信」して、求職者が承諾すれば、企業への応募(申込み)につながるものであることからすれば、求人と求職者との間における雇用関係の成立をあっせんしているものといえるから、「職業のあっせん,職業のあっせんに関する情報の提供」の範ちゅうに含まれるものといえる。
したがって、請求人の主張は採用できない。
(2)請求人は、ポータルサイト全体において「スカウト」という標章が指定役務の出所表示機能を果たす態様で使用されているという証拠はない旨主張する。
しかしながら、前記2(2)のとおり、本件商標権者(被請求人)は、提供する企業の採用・求人情報などを載せた就職情報ポータルサイトで、求職者と求人企業とをとりもつ役務を表すものとして、「スカウト」の文字を使用しているものである。そして、「スカウト」の文字が役務の具体的な内容を表示するものと直ちに理解できるものともいえないから、「スカウト」の文字が役務の出所表示機能を果たし得ないものということはできない。
したがって、請求人の主張は採用できない。
(3)請求人は、「リクナビスカウト」の使用商標から「スカウト」のみを抽出し、この部分だけを本件商標と比較して商標そのものの同一性を判断することは、許されない旨主張する。
しかしながら、本件商標権者(被請求人)の使用商標は、前記2(1)のとおり、「スカウト」の文字であって、前記(2)のとおり、「スカウト」の文字が出所表示機能を果たさないとはいえないから、請求人の主張は採用できない。
(4)請求人は、乙第3号証は、ユーザ名が「検証用scout0」及び「teaser03」となっており、企業名が全て「MP増殖企業」などの架空の企業名で、これらのページのURLも、出力された日付もないから、これらのページは実際にユーザに提供されたページではなく、外部には非公開の社内用のテスト用デモページのハードコピーであって、指定役務について、被請求人が実際に使用したことの証拠にはならない旨主張する。
しかしながら、乙第3号証には「リクナビ2025」、「企業検索」「WEBセミナー」「就活準備ガイド」「Recruit Co.,Ltd」などの文字が掲載され、これらの文字及びその画面の内容から「リクナビ2025の利用者側画面」の写しであることが推認し得るものである。
そうとすれば、実際にユーザーに提供されたページではないとしても、当該書証が証拠にならないということはできない。
したがって、請求人の主張は採用できない。
5 むすび
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標権者が、本件審判の請求に係る指定役務である第35類のうち「職業のあっせん,職業のあっせんに関する情報の提供」の範ちゅうに含まれる役務について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていることを証明したということができる。
したがって、本件商標の登録は、その請求に係る指定役務について、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。
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