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特許拒絶査定不服審判

2023-018680

判定装置、制御システム、通信システム、学習モデルの生成方法、コンピュータプログラム、および、記憶媒体

審判番号
2023-018680
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-033069
請求日
2023年11月02日
審決日
2025年06月12日
公報発行日
2025年08月29日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】株式会社シマノ
  • 【請求人代理人】河野 英仁
  • 【請求人代理人】河野 登夫
審判長/審判官
  • 審判長 草野 顕子
  • 審判官 高橋 学
  • 審判官 稲垣 彰彦
分類
P18 .121-WZ (B62J) / P18 .113-WZ (B62J) / P18 .14 -WZ (B62J)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019- 33069号「判定装置、制御システム、通信システム、学習モデルの生成方法、コンピュータプログラム、および、記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 9月 3日出願公開、特開2020-138557号〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成31年2月26日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和4年10月20日付け:拒絶理由通知書 同年12月20日提出:意見書、手続補正書 令和5年 4月13日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書 同年 6月14日提出:意見書、手続補正書 同年 7月21日付け:令和5年6月14日の手続補正についての補 正の却下の決定、拒絶査定 同年11月 2日提出:審判請求書、手続補正書 令和7年 1月16日付け:当審における拒絶理由通知書 同年 3月18日提出:意見書、手続補正書 第2 本願発明 本願の請求項1~14に係る発明は、令和7年3月18日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 人力駆動車の走行に関する走行情報と、前記人力駆動車のライダーに関するライダー情報とに基づき、前記ライダーの身体的コンディションを判定する判定装置であって、 前記走行情報は、前記人力駆動車の速度、加速度、地理的な位置、傾斜角度、走行距離、走行時間、ケイデンス、パワー、車輪の回転速度、走行路、風向、風速、外気の温度、および、外気の湿度のうちの少なくとも1つに関する情報を含み、 前記ライダー情報は、前記ライダーの性別、年齢、身長、体重、筋肉量、脂肪量、心拍、体温、発汗、血圧、呼吸、筋電、および、脳波のうちの少なくとも1つに関する情報を含み、 前記走行情報および前記ライダー情報の入力に応じて、前記ライダーが走行可能な残り体力の情報を出力するように構成される学習モデルを用いて、前記身体的コンディションとして、前記ライダーの走行可能な残り体力を判定する、判定装置。」 第3 当審における拒絶の理由の概要 当審において通知した令和7年1月16日付けの拒絶の理由のうちの理由3は、次のとおりのものである。 (進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ・請求項 1、18~19 ・引用文献 1~2 ・請求項 2~7、16~17 ・引用文献 1~3 ・請求項 8~9、11~15 ・引用文献 1~4 ・請求項 10 ・引用文献 1~5 〈〈引用文献等一覧〉〉 1.特開2012-106553号公報 2.特開2015-131533号公報(周知技術を表す文献) 3.特開2018-180983号公報(周知技術を表す文献) 4.米国特許出願公開第2010/0198453号明細書 5.米国特許出願公開第2016/0039497号明細書 第4 当審の判断 1 引用文献1 (1)記載事項 当審における拒絶の理由で引用された引用文献1(特開2012-106553号公報;平成24年6月7日公開)には、以下の事項が記載されている(下線は当審において付した。)。 ア【0001】 「本発明は、例えば自転車用の運転解析装置に関する。」 イ【0016】 「このようにすれば、使用者は、自己の疲労度の客観的な評価を知ることができる。」 ウ【0028】 「本実施形態の運転解析装置1は、センサー部10と表示器部20を含んで構成されている。」 エ【0031】 「表示器部20は、CPU(処理部)200、通信インターフェース(I/F)210、操作部220、メモリー(記憶部)230、表示部240を含んで構成されている。通信インターフェース(I/F)210は、センサー部10から無線送信された加速度データと角速度データを受信する受信部として機能する。」 オ【0041】 「[センサー取り付け例2] 図5(A)、図5(B)及び図5(C)は、センサー部10の取り付け位置の第2の例を示す図である。5(A)は横方向から自転車を見た図であり、図5(B)は後ろ方向から自転車を見た図であり、図5(C)は上方向から自転車を見た図である。この第2の取り付け例では、センサー部10は、自転車3のトップチューブに、任意の1つの検出軸(第1の検出軸)が自転車3の後方又は前方を向き、他の任意の1つの検出軸(第2の検出軸)が上方又は下方を向くように取り付けられている。CPU200で第1の検出軸回り(図5(B)の破線矢印)の角速度データを積分処理することでロール角を算出し、現在のロール角を表示部240にリアルタイムに表示させることができる。また、CPU200で第2の検出軸回り(図5(C)の破線矢印)の角速度データを積分処理することでヨー角を算出し、現在のヨー角を表示部240にリアルタイムに表示させることができる。さらに、ロール角やヨー角の時間変化の情報をグラフ化して表示部240に表示させたり、不揮発性メモリー250に記録することができる。」 カ【0044】 「また、使用者は、ロール角の時間変化とヨー角の時間変化の情報から疲労度を客観的に判断することができる。例えば、同じ条件で走行中に図7(A)に示すようなロール角の時間変化のグラフと図7(B)に示すようなヨー角の時間変化のグラフが得られたとする。この場合、ロール角の平均振幅値がΔAからΔBに上昇するとともに、ヨー角の平均振幅値がΔCからΔDに上昇したことがわかる。すなわち、走行条件が変わらないのに横揺れとふらつきが大きくなったので、疲労していると判断することができる。」 キ【0045】 「さらに、CPU200でロール角の振幅値の時間変化とヨー角の振幅値の時間変化から疲労度のレベルを総合的に判定し、判定結果を表示部240に表示させることもできる。例えば、疲労度をレベル1~5の5段階(例えばレベル数が高いほど疲労度が高い)にわけて、CPU200でロール角の平均振幅値の変化率(例えば、運転開始直後のロール角の平均振幅値に対する現在のロール角の平均振幅値の割合)とヨー角の平均振幅値の変化率(例えば、運転開始直後のヨー角の平均振幅値に対する現在のヨー角の平均振幅値の割合)に応じてレベル1~5のいずれかを総合的に判定し、判定したレベルを表示部240に表示するようにしてもよい。」 ク【0046】 「なお、CPU200は、センサー部10からの3軸の加速度データと3軸の角速度データに基づいてセンサー部10の姿勢を算出することができるので、この姿勢の情報に基づいて自転車の前後方向のあらかじめ決められた軸の回り角度をロール角、自転車の上下方向のあらかじめ決められた軸の回り角度をヨー角として算出するようにしてもよい。このようにすれば、センサー部10を自転車のフレームの任意の位置に任意の方向に取り付けることができる。」 ケ【0065】 「使用者がセンサー部10の設定が完了して運転を開始すると、表示器部20は、各センサー部10からのデータに基づいて、初期姿勢からの姿勢変化を算出しながら前述した各種の運転解析情報を生成して表示部240に表示する。図13は、図10に示したように3つのセンサー部10a,10b,10cを取り付けた場合の運転解析情報の表示画面の一例を示す図である。図13に示す運転解析情報表示画面320では、センサー部10a又は10bのデータから算出されるロール角、センサー部10bのデータから算出されるヨー角、傾斜角、走行速度、センサー部10cのデータから算出される回転数、さらに、走行速度と回転数から算出されるギア比がリアルタイム表示されている。また、これらのリアルタイム値の右側にはそれぞれ履歴ボタン(321,322,323,324,325,326)が表示されており、各履歴ボタンのタッチ操作を行うと、表示部240に、運転を開始してからの履歴(時間変化の情報)が表示される。例えば、履歴ボタン321のタッチ操作を行うと図4や図7(A)に示したようなロール角の時間変化を表すグラフデータが表示され、履歴ボタン322のタッチ操作を行うと図7(B)に示したようなヨー角の時間変化を表すグラフデータが表示される。さらに、各履歴ボタン(321,322,323,324,325,326)のタッチ操作後の画面で所定の操作を行うことで過去の情報を表示できるようにしてもよい。」 コ【0066】 「また、運転解析情報表示画面320では、ロール角やヨー角に基づいて判定した運転技術のレベルや疲労度のレベルがリアルタイム表示されている。運転技術のレベルや疲労度のレベルを知ることで、疲れにくい運転ができているか否かを判断しながらトレーニングすることができる。」 サ【図5】(A)には、以下の内容が示されている。 「 [図:0001425163000001.jpg] 」 シ【図13】には、以下の内容が示されている。 「 [図:0001425163000002.jpg] 」 (2)引用発明 引用文献1の記載事項の内容を総合すると、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「自転車3のトップチューブに取り付けられているセンサー部10からの3軸の加速度データと3軸の角速度データに基づいてセンサー部10の姿勢を算出し、この姿勢の情報に基づいて自転車の前後方向のあらかじめ決められた軸の回り角度をロール角、自転車の上下方向のあらかじめ決められた軸の回り角度をヨー角として算出し、ロール角の平均振幅値の変化率とヨー角の平均振幅値の変化率に応じて使用者の疲労度がレベル1~5のいずれかを総合的に判定し、判定したレベルを表示部240に表示する、CPU200を含む表示器部20を含んで構成されている、運転解析装置1。」 2 引用文献2の記載事項 当審における拒絶の理由で引用された引用文献2(特開2015-131533号公報;平成27年7月23日公開)には、以下の事項が記載されている。 【0015】 「走行情報は、車輪の回転速度、速度、ケイデンス、傾斜、外気の温度、外気の湿度、高度、加速度、踏力、および使用者の心拍数の少なくとも一つを含んでもよい。この場合には、使用者の体力に影響を与える走行情報と変速位置との関連を知ることができる。」 3 引用文献3の記載事項 当審における拒絶の理由で引用された引用文献3(特開2018-180983号公報;平成30年11月15日公開)には、以下の事項が記載されている。 (1)【0195】 「また、例えば、学習部160は、推定状態履歴に示される運転前及び運転中の注目ユーザの疲労度の推移に基づいて、注目ユーザの疲労度を予測する疲労度推定モデルの学習を行ってもよい。例えば、状態推定部152は、疲労度推定モデルを用いて、走行予定ルートの各地点における注目ユーザの疲労度を推定することができる。さらに、例えば、学習部160は、時間帯、天候、渋滞の状況、道路の種類(例えば、一般道又は高速道)等の車両12の周囲の状態を加味して、疲労度推定モデルの学習を行うことにより、疲労度の推定精度を向上させることができる。」 (2)【0196】 「また、学習処理の方法には、例えば、ニューラルネットワーク等の機械学習やその他の任意の方法を用いることができる。」 (3)【0238】 「<適用例> 本技術の運転支援処理は、先に例示した車両以外にも、(例えば、本技術は、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、船舶、建設機械、農業機械(トラクター)等の各種の移動体の運転を行う場合にも適用することができる。すなわち、運転前及び運転中のユーザの状態の推定結果を用いて、運転診断、リスク予測、損害予測、ユーザへのフィードバック等を行うことができる。なお、本技術が適用可能な移動体には、場所を移動するもの以外にも、一部の建設機械等(例えば、固定式のクレーン等)の、固定された場所において作業を行う部分等が移動する移動体も含まれる。また、本技術が適用可能な移動体には、例えば、ドローン、ロボット等のユーザが搭乗せずにリモートで運転(操作)する移動体も含まれる。」 4 本願発明について (1)対比 本願発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「自転車3」は本願発明の「人力駆動車」に相当し、以下同様に、「使用者」は「ライダー」に、「使用者の疲労度がレベル1~5のいずれかを総合的に判定」「する、CPU200」は「判定装置」に、相当する。 そして、上記相当関係を踏まえると、以下のことがいえる。 イ 本願発明の「前記走行情報は、前記人力駆動車の速度、加速度、地理的な位置、傾斜角度、走行距離、走行時間、ケイデンス、パワー、車輪の回転速度、走行路、風向、風速、外気の温度、および、外気の湿度のうちの少なくとも1つに関する情報を含み」との構成について、当該「走行情報」に含まれる「速度、加速度」は、その方向等が特定されておらず、「人力駆動車の速度、加速度」であれば、いずれの方向に対するものも含まれると解される。 そうすると、引用発明の「自転車3のトップチューブに取り付けられているセンサー部10からの3軸の加速度データと3軸の角速度データ」は、本願発明の「走行情報」に含まれる「人力駆動車の速度、加速度」に相当するものといえる。 ウ 引用発明の「使用者の疲労度」は、「疲労度」とは通常「体力の消耗度」を表すものと認められるので、本願発明の「ライダーの身体的コンディション」に相当するものともいえるとともに、本願発明の「前記ライダーの走行可能な残り体力」とは、「前記ライダーの体力情報」である点で、共通するものであるといえる。 エ 上記イ及びウを踏まえると、引用発明の「自転車3のトップチューブに取り付けられているセンサー部10からの3軸の加速度データと3軸の角速度データに基づいてセンサー部10の姿勢を算出し、この姿勢の情報に基づいて自転車の前後方向のあらかじめ決められた軸の回り角度をロール角、自転車の上下方向のあらかじめ決められた軸の回り角度をヨー角として算出し、ロール角の平均振幅値の変化率とヨー角の平均振幅値の変化率に応じて使用者の疲労度がレベル1~5のいずれかを総合的に判定」する構成は、本願発明の記載に倣うと、「人力駆動車の走行に関する走行情報」「に基づき、ライダーの身体的コンディションを判定」し、「前記走行情報は、前記人力駆動車の速度、加速度」「に関する情報を含み、」「前記身体的コンディションとして、前記ライダーの体力情報を判定する」構成に対応する。 したがって、引用発明の「自転車3のトップチューブに取り付けられているセンサー部10からの3軸の加速度データと3軸の角速度データに基づいてセンサー部10の姿勢を算出し、この姿勢の情報に基づいて自転車の前後方向のあらかじめ決められた軸の回り角度をロール角、自転車の上下方向のあらかじめ決められた軸の回り角度をヨー角として算出し、ロール角の平均振幅値の変化率とヨー角の平均振幅値の変化率に応じて使用者の疲労度がレベル1~5のいずれかを総合的に判定」する構成と、本願発明の「人力駆動車の走行に関する走行情報」「に基づき、前記ライダーの身体的コンディションを判定」し、「前記走行情報は、前記人力駆動車の速度、加速度、地理的な位置、傾斜角度、走行距離、走行時間、ケイデンス、パワー、車輪の回転速度、走行路、風向、風速、外気の温度、および、外気の湿度のうちの少なくとも1つに関する情報を含み、」「前記身体的コンディションとして、前記ライダーの走行可能な残り体力を判定する」構成とは、「人力駆動車の走行に関する走行情報に基づき、ライダーの身体的コンディションを判定」し、「前記走行情報は、前記人力駆動車の速度、加速度、地理的な位置、傾斜角度、走行距離、走行時間、ケイデンス、パワー、車輪の回転速度、走行路、風向、風速、外気の温度、および、外気の湿度のうちの少なくとも1つに関する情報を含み、」「前記身体的コンディションとして、前記ライダーの体力情報を判定する」構成において共通する。 オ そうすると、本願発明と引用発明とは、 「人力駆動車の走行に関する走行情報に基づき、ライダーの身体的コンディションを判定する判定装置であって、 前記走行情報は、前記人力駆動車の速度、加速度、地理的な位置、傾斜角度、走行距離、走行時間、ケイデンス、パワー、車輪の回転速度、走行路、風向、風速、外気の温度、および、外気の湿度のうちの少なくとも1つに関する情報を含み、 前記身体的コンディションとして、前記ライダーの体力情報を判定する、判定装置。」 の点において一致し、以下の点において相違する。 〔相違点1〕 ライダーの身体的コンディションに関して、本願発明では、人力駆動車の走行に関する走行情報と、「前記人力駆動車のライダーに関するライダー情報」に基づき、「前記ライダーの走行可能な残り体力」を判定し、「前記ライダー情報は、前記ライダーの性別、年齢、身長、体重、筋肉量、脂肪量、心拍、体温、発汗、血圧、呼吸、筋電、および、脳波のうちの少なくとも1つに関する情報を含」むのに対して、引用発明は、かかる「ライダー情報」を用いることが特定されておらず、また、「使用者の疲労度」の「レベル」を判定する点。 〔相違点2〕 ライダーの身体的コンディションの判定の処理に関して、本願発明では、「学習モデルを用い」るのに対し、引用発明では、「学習モデル」の使用が特定されていない点。 (2)相違点についての判断 ア 相違点1について 人力駆動車の使用者の体力に影響を与える走行情報に「使用者の心拍数」が含まれることは、例えば、引用文献2(段落【0015】を参照。)に示すように周知の技術事項(以下、令和7年1月16日付け拒絶理由通知書と同様に「周知技術3」という。)であり、周知技術3の「使用者の心拍数」は、本願発明の「前記ライダー情報」に含まれる「心拍」「に関する情報」に対応するものと認められる。 また、引用文献1の段落【0044】に、「疲労度の判断」について、「走行条件が変わらないのに横揺れとふらつきが大きくなったので、疲労していると判断する」と記載されていることを踏まえると、引用発明における「ロール角の平均振幅値の変化率とヨー角の平均振幅値の変化率」に応じた判断とは、「走行条件が変わらないのに横揺れとふらつきが大きくなった」か否かの判断であるといえる。 そして、人力駆動車において、横揺れとふらつきが大きいときに走行困難な状態であることは技術常識であるから、引用発明において、「横揺れとふらつきが大きくなった」状態を表す指標ともいえる「使用者の疲労度」は、使用者の「走行可能な体力情報」を含むものと認められる。 ここで、上記(1)ウで述べたように、「疲労度」とは通常「体力の消耗度」を表すものと認められるので、疲労度が低い状態は、体力の消耗が少ない状態、すなわち残り体力がある状態であり、疲労度が高い状態は、体力の消耗が多い状態、すなわち、残り体力がなくなっている状態であるといえる。 したがって、疲労度と残り体力は、身体的コンディションを表す状態として、いわゆる表裏の関係にあるというべきものである。 そして、両者のこのような関係に照らせば、引用発明において、「使用者の疲労度」が「レベル1」の状態は「使用者」の残り体力が十分にある状態であり、「使用者の疲労度」が「レベル5」の状態は、「使用者」の残り体力がなくなっている状態であるともいえることは明らかである。 そうすると、引用発明において、「使用者の疲労度」を判定するにあたり、周知技術3に鑑み、「使用者の心拍数」をも考慮することは、当業者が適宜になし得ることであり、また、引用発明において、使用者の身体的コンディションを「使用者」の「疲労度」として判定するか、「残り体力」として判定するかは、当業者が適宜に選択し得る事項にすぎないといえる。そして、「残り体力」として判定する際の当該「残り体力」が、使用者が自転車3で走行可能な残り体力を意味することとなるのは明らかである。 したがって、引用発明において、周知技術3を踏まえ、「使用者の心拍数」をも考慮するとともに、使用者の身体的コンディションとして判定されるものを「使用者」の「走行可能な残り体力」として、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 イ 相違点2について 人力駆動車において、ライダーの身体的コンディションを判定する際に学習モデルを用いることは、例えば、引用文献3(段落【0195】、【0196】及び【0238】に記載された「疲労度推定モデル」を参照。)に示すように周知の技術事項である(以下「周知技術2」という。)。 そうすると、引用発明において、「使用者の疲労度」を判定するにあたり、周知技術2に鑑み、「学習モデル」を使用する構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (3) 作用効果について 本願発明が奏する効果も、引用発明及び周知技術2及び周知技術3から、当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものとはいえない。 (4) 請求人の主張について 請求人は、令和7年3月18日に提出した意見書において、 「引用文献1及び3は、ユーザの疲労度を推定する構成を開示するものの、そのユーザがあとどれくらい走行可能であるのかを示す残り体力を判定する構成については開示も示唆もしていない。 よって、車輪の回転速度、速度、ケイデンスなどの自転車の走行情報を開示した引用文献2、推奨される迂回経路を特定する技術を開示した引用文献4、疲労係数に基づいて目標ケイデンス及び目標ギヤ比を決定する技術を開示した引用文献5の存在を考慮したとしても、これらの引用文献1~5に基づき、本願請求項1に係る発明と同様の構成とすることは、当業者といえども容易に想到し得る程度のものではない。」 と主張する。 しかしながら、(2)アに示したとおり、疲労度と残り体力は、身体的コンディションを表す状態として、いわゆる表裏の関係にあるというべきものであるので、使用者の身体的コンディションとして判定されるものとして、「使用者の疲労度」の「レベル」の状態に代えて「使用者」の「走行可能な残り体力」の状態を用い、相違点1に係る本願発明1の構成とすることは、当業者の適宜なし得る事項にすぎないといえる。 よって、請求人の主張を採用することはできない。 (5) 小括 したがって、本願発明は、引用発明並びに周知技術2及び周知技術3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-018680

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