商標拒絶査定不服審判
2023-017655
カーボンニュートラルジドーシャホケン、カーボンニュートラル
- 審判番号
- 2023-017655
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2022-084083
- 請求日
- 2023年10月18日
- 審決日
- 2024年11月01日
- 公報発行日
- 2025年04月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】チューリッヒ フェアズィッヒェルングス-ゲセルシャフト アクチェンゲゼルシャフト
- 【請求人代理人】岩瀬 ひとみ
- 【請求人代理人】船橋 理恵
- 【請求人代理人】樫村 亮吾
- 審判長/審判官
- 審判長 大島 康浩
- 審判官 小林 裕子
- 審判官 大塚 正俊
- 分類
- T18 .16 -Z (W36) / T18 .272-Z (W36)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法3条1項6号商標法4条1項16号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第6号、特許法第150条第5項、商標法第4条第1項第16号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2022-84083拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、令和4年7月20日の登録出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和5年3月7日付け:拒絶理由通知書
令和5年6月9日:意見書の提出
令和5年7月5日付け:拒絶査定
令和5年10月18日:審判請求書、手続補正書の提出
令和6年5月15日付け:証拠調べ通知書
令和6年8月19日:意見書の提出
2 本願商標
本願商標は、「カーボンニュートラル自動車保険」の文字を標準文字で表してなり、第36類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として登録出願され、その後、本願の指定役務については、前記1の手続補正書により、第36類「自動車保険業務,自動車保険の引受け,自動車保険契約の締結の仲介,自動車保険情報の提供,自動車保険に関する助言,乗物保険業務,自動車及び自動二輪車の保険業務,自動車の損害保険業務,自動車の損害保険の引受け,自動車の損害保険契約の締結の代理」に補正されたものである。
3 原査定の拒絶の理由の要旨
原査定は、「本願商標は、「カーボンニュートラル自動車保険」の文字を標準文字で表示してなる。そして、その構成中の「カーボンニュートラル」の文字は、「温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること」を意味するところ、2020年10月、政府は2050年までにこのカーボンニュートラルを目指すことを宣言し、カーボンニュートラルの達成のためには、温室効果ガスの排出量の削減並びに吸収作用の保全及び強化を図ることが必要であると述べ、これを国だけなく、企業や国民にも広く求めているところである。また、本願指定役務と関連する保険や、食品、旅行などのあらゆる分野で「カーボンニュートラル」を達成するための取組みが行われており、さらには、このような取組みを行っていることをうたう商品や役務について、「カーボンニュートラル○○」(○○には商品又は役務の名称が入る。)の語句を使用している事実が認められる。そのため、「カーボンニュートラル」の文字と、保険の種類を表す語である「自動車保険」の文字を結合したにすぎない本願商標をその指定役務に使用した場合、これに接する需要者は、その自動車保険がカーボンニュートラルを達成するための取組みを行っているものであるとの役務の理念を表す語句として理解するにすぎず、自他役務の識別標識として認識し得ないものとみるのが相当である。また、自動車保険に係る役務以外の指定役務に使用するときは、役務の質の誤認を生ずるおそれがある。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号及び同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
4 当審における証拠調べ通知
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第6号及び同法第4条第1項第16号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べを実施した結果、別掲2及び別掲3(1)ないし(5)に示したとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対して、証拠調べの結果を通知した。
5 証拠調べに対する請求人の意見の要点
請求人は、最近、脱炭素を達成するといった企業等の目標や取組みを説明するために、「カーボンニュートラル」の語句が多く使用されつつある点自体は否定しないが、請求人は、「カーボンニュートラル」自体の独占排他権を求めているのではない。
本願商標「カーボンニュートラル自動車保険」は、その構成全体からは、役務の理念あるいは企業の特性や優位性を記述した企業理念・経営方針等としてのみ理解されるとはいい難く、さらに、請求人のみが継続して使用しており、本願の指定役務を取り扱う業界において、役務の理念・宣伝広告、企業理念又は経営方針等を表示するものとして、一般的に使用されている事実はない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当しない。また、商標法第4条第1項第16号に基づく拒絶理由については、審判請求書と同日付で提出した手続補正書によって本願に係る指定役務を補正したことにより、解消された。
6 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第6号について
商標法は、「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする」ものであるところ(同法第1条)、商標の本質は、自己の業務に係る商品又は役務と識別するための標識として機能することにあり、この自他商品又は役務の識別標識としての機能から、出所表示機能、品質保証機能及び広告宣伝機能等が生じるものである。同法3条1項6号が、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」を商標登録の要件を欠くと規定するのは、同項1号ないし5号に例示されるような、識別力のない商標は、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、自他商品・役務の識別力を欠くために、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解される(平成21年(行ケ)第10270号、平成22年1月27日知財高裁判決)。
(2)本願商標の商標法第3条第1項第6号及び同法第4条第1項第16号の該当性について
本願商標は、前記2のとおり、「カーボンニュートラル自動車保険」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中「カーボンニュートラル」の文字は、「日常生活や経済活動によって排出される温室効果ガスのうち、排出者自身の努力では削減できない分を、他の場所で達成された削減・吸収量で相殺することによって、温室効果ガスの増加が実質的にゼロになった状態。」(出典:株式会社小学館「デジタル大辞泉」)を意味する語であり、「自動車保険」の文字は、「損害保険の一種。自動車・オートバイの損害や盗難、事故による被害者(同乗者を含む)への治療費や被害物への賠償費などを填補する目的の任意保険。」(出典:「広辞苑 第七版」株式会社岩波書店)を意味する語であり、それぞれ一般に親しまれた語である。
そして、原審において示された事実及び当審における職権による調査(別掲1ないし3)によれば、幅広い分野において、カーボンニュートラルを実現するための取組みが行われており、また、本願指定役務に関連する自動車保険の業界においては、近年、カーボンニュートラルを実現することを特徴としてうたった自動車保険が提供されている事実が認められることに加え、様々な業界において、カーボンニュートラルを実現することを特徴としてうたった商品や役務を表す際に、「カーボンニュートラル○○」(○○には商品又は役務の名称が入る。)の文字が使用されている事実も認められる。
そうすると、「カーボンニュートラル自動車保険」の文字からなる本願商標を、その補正後の指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者は、カーボンニュートラルを実現することを特徴としてうたった自動車保険であるという、役務の特徴を説明するための語であると理解、認識するにすぎないものであるから、本願商標は、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものであり、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標というべきである。
また、本願商標を、その補正後の指定役務中、上記に相応する役務以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標というべきである。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号及び同法第4条第1項第16号に該当する。
(3)請求人の主張について
ア 請求人は、「カーボンニュートラル自動車保険」は、その構成全体からは、役務の理念あるいは企業の特性や優位性を記述した企業理念・経営方針等としてのみ理解されるとはいい難く、さらに、審判請求人のみが継続して使用しており、本願の指定役務を取り扱う業界において、役務の理念・宣伝広告、企業理念又は経営方針等を表示するものとして、一般的に使用されている事実はない旨主張する。
しかしながら、前記(2)のとおり、本願指定役務に関連する自動車保険業界においては、近年、カーボンニュートラルを実現することを特徴としてうたった自動車保険が提供されている事実が認められることから、「カーボンニュートラル自動車保険」の文字からなる本願商標をその指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者は、カーボンニュートラルを実現することを特徴としてうたった自動車保険であるという、役務の特徴を説明するための語であると理解、認識するにすぎないものであるから、本願商標は、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものである。
また、商標法第3条第1項第6号に該当する商標であるか否かは、本件審決時において、本願商標がその指定役務に使用された場合に、将来を含め、その需要者が、商品及び役務の宣伝活動を行う際に一般的に使用される標章と認識するものであって、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないと判断されるものであるから、本願商標が請求人を除く他の事業者によって、現在使用されていないとしても、そのことのみをもって本願商標の同項同号該当性の判断が左右されるものではない。
イ 請求人は、本願商標の登録適格性を主張するために、他の登録例を挙げているが、登録出願に係る商標が商標法第3条第1項第6号に該当するものであるか否かの判断は、当該商標登録出願の査定時又は審決時に、その指定役務との関係において、個別具体的に判断されるものであって、他の登録例の存在によって、上記判断が左右されるものではない。
ウ したがって、請求人の主張は、いずれも採用することができない。
(4)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第6号及び同法第4条第1項第16号に該当し、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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