特許拒絶査定不服審判
2023-015418
固化材液置換コラムの掘削装置
- 審判番号
- 2023-015418
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-140758
- 請求日
- 2023年09月12日
- 審決日
- 2025年02月21日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社テノックス
- 【請求人代理人】山本 龍郎
- 【請求人代理人】山本 彰司
- 【請求人】ジャパンホームシールド株式会社
- 【請求人代理人】山本 龍郎
- 【請求人代理人】山本 彰司
- 審判長/審判官
- 審判長 古屋野 浩志
- 審判官 門 良成
- 審判官 山本 一
- 分類
- P18 .113-WZ (E02D) / P18 .121-WZ (E02D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 行政事件訴訟法46条特許法29条1項3号特許法49条2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特願2019-140758「固化材液置換コラムの掘削装置」拒絶査定不服審判事件〔令和3年2月22日出願公開、特開2021-25209〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年7月31日の特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和5年 3月 7日付け:拒絶理由通知書
同年 5月11日 :意見書及び手続補正書の提出
同年 6月28日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同年 7月 3日 :原査定の謄本の送達)
同年 9月12日 :審判請求書及び手続補正書の提出
令和6年 8月 2日 :拒絶理由通知書
同年10月 3日 :意見書及び手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年10月3日に提出された手続補正書(以下、当該手続補正書による補正を「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
「【請求項1】
掘削ロッドと掘削ヘッドとが着脱自在であり、該掘削ロッドと掘削ヘッドとの間には該掘削ロッドと掘削ヘッドと同径で該掘削ロッドと掘削ヘッドに対して空回りを防止する空回り防止部が形成された着脱リングが介在させられ、該着脱リングには前記掘削ロッドと掘削ヘッドの外方に向かって突出する少なくとも1個の地盤掘削翼 が形成されてなることを特徴とする固化材液置換コラムの掘削装置。」
第3 当審において通知した拒絶の理由の概要
令和6年8月2日付けで当審において通知した拒絶の理由の概要は、以下の理由を含むものである。
2.(新規性)本件補正前の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
3.(進歩性)本件補正前の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献一覧>
1.特許第6517082号公報
第4 当審の判断
1 引用文献
(1)引用文献1
上記第3の当審において通知した拒絶の理由で引用された、本願の出願日前である平成31年4月26日に発行された刊行物である特許第6517082号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。
ア 「【0007】
この発明の節付き現場打ちコンクリート系杭の杭築造用管は、立姿勢で使用される管体と、この管体の下端面に設けられ前記管体と共に回転することで、地盤に杭孔を形成する先端掘削刃と、前記管体の下部の外周面から突出し前記管体と共に回転することで前記杭孔内に螺旋状溝を形成する螺旋状溝形成用刃体とを備え、前記管体の引き上げ時に前記管体の下端からコンクリート系材料を吐出可能であって、前記螺旋状溝形成用刃体が前記管体に対して着脱可能に取付けられていることを基本構成とする。
【0008】
この構成の節付き現場打ちコンクリート系杭の杭築造用管を使用した現場打ちコンクリート系杭の築造は、以下のように行う。杭築造用管の管体を先端が下向きとなるように支持した状態で、所定の回転貫入方向に回転させつつ押し下げる。これにより、杭築造用管が地盤に貫入して杭孔を形成する。杭築造用管が地盤に貫入したら、杭築造用管の管体内にモルタル、生コンクリート、セメントミルク等のコンクリート系材料を充填する。そして、管体の下端面を開いた状態にして、杭築造用管を回転させながら地盤から引き抜くことによって、螺旋状溝形成用刃体により杭孔の周面に螺旋状溝が形成され、杭孔および螺旋状溝にコンクリート系材料を流し込む。コンクリート系材料が硬化することで、節付きコンクリート系杭となる。」
イ 「【0050】
図15および図16は、この発明のさらに他の実施形態を示す。この実施形態では、図14の実施形態において、前記刃固定金物10Bが、管体本体10Aの下面に取り付けられる螺旋状溝用刃固定金物10BAと、この螺旋状溝用刃固定金物10BAの下面に取り付けられる先端掘削刃用刃固定金物10BBとに分離されている。螺旋状溝用刃固定金物10BAには螺旋状形成用刃体11が設けられ、先端掘削刃用刃固定金物10BBには先端掘削刃20(図15,図16には図示せず)が設けられる。管体本体10Aの下端部の構造は、図14の実施形態における管体本体10Aの場合と同様である。先端掘削刃用刃固定金物10BBの構造は、図14の実施形態の場合の刃固定金物10Bにおいて、螺旋状溝形成用刃体11が固定されないことを除いて同じである。
【0051】
螺旋状溝形成用刃体11は、柄部11aと管体10の外周面側に突出する刃部11bとでなる。前記螺旋状溝用刃固定金物10BAは、図16に平面図で示すように、管体本体10Aとほぼ同径の円板状で、その周縁の一部に螺旋状溝形成用刃体11の柄部11aが着脱可能に嵌合する嵌合凹部27が設けられ、中央部にはセンメトミルクを通すための通口28が設けられ、その周囲には複数のボルト挿通孔29が設けられる。
【0052】
螺旋状溝用刃固定金物10BAと、この螺旋状溝用刃固定金物10BAの下面に取り付けられる先端掘削刃用刃固定金物10BBとは、図15のように、先端掘削刃用刃固定金物10BB側から挿入したボルト16を螺旋状溝用刃固定金物10BAのボルト挿通孔29に挿通させ、さらに管体本体10Aの下面のナット17に螺合させることで、管体本体10Aの下面側に一体に取り付けることができる。
【0053】
螺旋状溝形成用刃体11の交換時には、前記ボルト16による管体本体10Aの下面への螺旋状溝用刃固定金物10BAおよび先端掘削刃用刃固定金物10BBの結合を解くことにより、螺旋状溝用刃固定金物10BAから螺旋状溝形成用刃体11を取り外すことができる。そして、新たな螺旋状溝形成用刃体11を螺旋状溝用刃固定金物10BAの嵌合凹部27に嵌合させ、先端掘削刃用刃固定金物10BBと共に、螺旋状溝用刃固定金物10BAをボルト16で管体本体10Aの下面に結合させることで、螺旋状溝形成用刃体11の交換を行うことができる。螺旋状溝用刃固定金物10BAでは、図16のように、螺旋状溝形成用刃体11が嵌合する嵌合凹部27がセンメトミルク(当審注:「セメントミルク」の誤記と認める。)の通口28と繋がっていないので、嵌合凹部27に土が混入することはない。」
ウ 「【図15】
[図:0001421911000001.jpg]
」
エ 「【図16】
[図:0001421911000002.jpg]
」
オ 上記ウ【図15】と、上記イ【0051】の「螺旋状溝用刃固定金物10BAは、図16に平面図で示すように、管体本体10Aとほぼ同径の円板状」との記載から、螺旋状溝用刃固定金物10BAは円板状の外周を備えると認められる。
カ 上記ウ【図15】から、螺旋状溝用刃固定金物10BA、管体本体10A、先端掘削刃用固定金物10BBは同径であることが看取できる。
また、上記ウ【図15】からの看取事項と、上記イ【0051】の「螺旋状溝用刃固定金物10BAは、上記エ【図16】に平面図で示すように、管体本体10Aとほぼ同径の円板状」との記載から、螺旋状溝用刃固定金物10BA、管体本体10A、先端掘削刃用固定金物10BBは同径であると認められる。
キ 上記イ【0050】、【0051】、上記エ【図16】より、螺旋状溝用刃固定金物10BAには、先端掘削刃用刃固定金物10BB及び管体本体10Aの外周面側に突出するように、螺旋状溝形成用刃体11が設けられていると認められる。
ク 上記ア【0007】、【0008】より、節付き現場打ちコンクリート系杭の杭築造用管は、「先端が下向きとなるように支持した状態で、所定の回転貫入方向に回転させつつ押し下げ」、「これにより、杭築造用管が地盤に貫入して杭孔を形成」し、「地盤に貫入したら、杭築造用管の管体内にモルタル、生コンクリート、セメントミルク等のコンクリート系材料を充填する」ものであるから、コンクリート系材料により置換されるものであるといえ、先端掘削刃によって地盤に杭孔を形成するものであるので、コンクリート系材料に置換される杭築造用管の掘削装置であると認められる。
ケ 上記エ【図16】より、螺旋状溝用刃固定金物10BAの中央部に円形状のセメントミルクの通口28が設けられていることが看取できる。
上記ア~ケより、引用文献1には下記の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明1」という。)。
「先端掘削刃用刃固定金物には先端掘削刃が設けられ、螺旋状溝用刃固定金物、管体本体、先端掘削刃用固定金物は同径であり、
螺旋状溝用刃固定金物は、円板状の外周を備え、中央部にセメントミルクの通口が設けられており、
セメントミルクの通口は円形状であり、
先端掘削刃用刃固定金物側から挿入したボルトを螺旋状溝用刃固定金物のボルト挿通孔に挿通させ、さらに管体本体の下面のナットに螺合させることで、管体本体の下面側に螺旋状溝用刃固定金物と先端掘削刃用刃固定金物とが一体に取り付けられ、
螺旋状溝用刃固定金物には、先端掘削刃用刃固定金物及び管体本体の外周面側に突出するように、螺旋状溝形成用刃体が設けられている、
コンクリート系材料に置換される杭築造用管の掘削装置。」
2 対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
(1)引用発明1の「管体本体」、「螺旋状溝形成用刃体」は、本願発明の「掘削ロッド」、「地盤掘削翼」に相当する。
(2)引用発明1の「螺旋状溝用刃固定金物」は、円板状の外周を備えるとともに、中央部にセメントミルクの通口が設けられ、この通口は円形状であることから、リング状であるといえ、また、ボルトとナットによって、管体本体の下面側に取り付けられているので、着脱自在なものであるといえる。
そうすると、引用発明1の「螺旋状溝用刃固定金物」は、本願発明の「着脱リング」に相当する。
(3)引用発明1の「「先端掘削刃」が設けられた「先端掘削刃用刃固定金物」」は、本願発明の「掘削ヘッド」に相当する。
(4)引用発明1の「先端掘削刃」は、その掘削する機能と技術常識を考慮すると「先端掘削刃用刃固定金物」と同径であるといえるから、引用発明1において、「螺旋状溝用刃固定金物、管体本体、先端掘削刃用固定金物は同径」であることと、上記(1)、(3)をふまえると、本願発明の「着脱リング」と、引用発明1の「螺旋状溝用刃固定金物」とは、「掘削ロッドと掘削ヘッドと同径」である点で一致する。
(5)引用発明1は、「管体本体の下面側に螺旋状溝用刃固定金物と先端掘削刃用刃固定金物とは一体に取り付けられ」ることから、螺旋状溝用刃固定金物は、先端掘削刃用刃固定金物及び管体本体に対して空回りすることなく、共に回転するといえる。
また、本願発明の「掘削ロッドと掘削ヘッドに対して空回りを防止する空回り防止部」の「空回り防止部」との記載について、明細書【0034】、【0035】等の記載を参酌すると、掘削ヘッドに対して掘削ロッドが相対的に移動しないように固定する構成を「防止」と表現しているものと解されるから、本願発明の「空回り防止部」と、引用発明1の「ボルト挿通孔」とは、「掘削ロッドと掘削ヘッドに対して空回りを防止する」ものである点で一致する。
また、本願発明の「着脱リング」と引用発明1の「螺旋状溝用刃固定金物」は、「掘削ロッドと掘削ヘッドに対して空回りを防止する空回り防止部が形成」されるものである点で一致する。
(6)引用発明1の「掘削装置」において、「ボルト」が挿入される部材の順からみて、「先端掘削刃用刃固定金物」と「管体本体」の間に螺旋状溝用刃固定金物が設けられることが明らかであって、当該「間に」設けることは「介在」することにほかならないから、本願発明の「着脱リング」と、引用発明1の「螺旋状溝用刃固定金物」とは、「掘削ロッドと掘削ヘッドとの間に介在」させられたものである点で一致する。
(7)引用発明1の「螺旋状溝用刃固定金物」に、「先端掘削刃用刃固定金物及び管体本体の外周面側に突出するように、螺旋状溝形成用刃体が設けられている」ことは、本願発明の「着脱リング」に、「掘削ロッドと掘削ヘッドの外方に向かって突出する1個の地盤掘削翼が形成されてなる」ことに相当する。
(8)引用発明1の「コンクリート系材料に置換される杭築造用管の掘削装置」は、本願発明の「固化材液置換コラムの掘削装置」に相当する。
(9)引用発明1の「コンクリート系材料に置換される杭築造用管の掘削装置」は 、「先端掘削刃用刃固定金物側から挿入したボルトを螺旋状溝用刃固定金物のボルト挿通孔に挿通させ、さらに管体本体の下面のナットに螺合させることで、管体本体の下面側に螺旋状溝用刃固定金物と先端掘削刃用刃固定金物とが一体に取り付けられ」るものであって、ボルトとナットは互いに着脱自在であることから、先端掘削刃用刃固定金物と管体本体は着脱自在に連結されていると認められる。
上記(3)もふまえると、本願発明の「固化材液置換コラムの掘削装置」と引用発明1の「コンクリート系材料に置換される杭築造用管の掘削装置」とは、「掘削ロッドと掘削ヘッドとが着脱自在」である点で一致する。
よって、本願発明と引用発明1とは、
「掘削ロッドと掘削ヘッドとが着脱自在であり、該掘削ロッドと掘削ヘッドとの間には該掘削ロッドと掘削ヘッドと同径で該掘削ロッドと掘削ヘッドに対して空回りを防止する空回り防止部が形成された着脱リングが介在させられ、該着脱リングには前記掘削ロッドと掘削ヘッドの外方に向かって突出する1個の地盤掘削翼が形成されてなることを特徴とする固化材液置換コラムの掘削装置。」
において一致する。
3 判断・検討
(1)判断
上記2のとおり、本願発明における発明特定事項は、実質的に、すべて引用発明1が備えているといえるから、本願発明と引用発明1との間に差異はない。
また、本願発明は、引用発明1から当業者が容易に想到し得るものである。
(2)審判請求人の主張について
ア 審判請求人の主張の概要
審判請求人は、令和6年10月3日に提出された意見書の(3)(b)において、本願発明と引用発明1との相違点について、令和6年8月2日付けで当審が通知した拒絶理由における認定に対して、概略次の主張(ア)~(ケ)の観点において本願発明と引用発明との「具体的な構成が多々異なる」ので、本願発明の具体的な構成は引用発明を超えて新規性を備えるとの主張をしている。
(ア)主張ア:
ご指摘では、引用発明の管体本体、螺旋状溝形成用刃体は、本願発明の掘削ロッド、地盤掘削翼に相当する、と認定されました。しかしながら、引用発明の螺旋状溝形成用刃体は螺旋状溝用刃固定金具を別に必要とする構成です。しかし、本願発明の地盤掘削翼は着脱リングに突出して形成された新規な構成です。したがって、引用発明から本願発明の地盤掘削翼が想起される可能性は皆無であり新規性を有すると確信します。
(イ)主張イ:
ご指摘では、引用発明の螺旋状溝用刃固定金物は本願発明の着脱リングに相当する、と認定されました。しかし、引用発明の螺旋状溝用刃固定金物は旋状溝形成用刃体を受入れ固定する構成であり本願発明の着脱リングと具体的構成が異なります。
(ウ)主張ウ:
引用発明の「先端掘削刃」が設けられた「先端掘削刃用刃固定金物」は本願発明の掘削ヘッドに相当する、と認定されました。しかし、具体的構成には相違があります。
(エ)主張エ:
引用発明において、「螺旋状溝用刃固定金物、管体本体、先端掘削刃固定金物は同径であ」るので、本願発明の「着脱リング」と、引用発明の「螺旋状溝用刃固定金物」とは、「掘削ロッドと掘削ヘッドと同径」であるものとの概念が一致する、と認定されました。しかし、各種の杭築造装置では一般的構成と思料します。
(オ)主張オ:
本願発明の「着脱リング」と引用発明の「螺旋状溝用刃固定金物は、「掘削ロッドと掘削ヘッドに対して空回りを防止する空回り防止部が形成」される点で概念が一致する、と認定されました。しかし、引用発明には意図する空回り防止部が存在しなません。したがって、本願発明と構成が異なります。
(カ)主張カ:
引用発明は、先端掘削刃固定用刃固定金物と管体本体の間に螺旋状溝用固定金物を介在しているので、本願発明の「着脱リング」と、引用発明の「螺旋状溝用刃固定金物」とは、「掘削ロッドと掘削ヘッドの接合面に」「介在」させられたものとの概念で一致する、と認定されました。しかし、具体的構成に相違があります。
(キ)主張キ:
本願発明の「着脱リング」と、引用発明の「螺旋状溝用刃固定金物」とは、「掘削ロッドと掘削ヘッドの外方に向かって突出する1個の地盤掘削翼が形成されてなる」ものとの概念で一致する、と認定されました。しかし、その具体的構成は全く異なります。
(ク)主張ク:
引用発明の「コンクリート系材料に置換される杭築造用管の掘削装置」は、本願発明に係るにおける「固化材液置換コラムの掘削装置」に相当する、と認定されました。両発明の目的は同等と思料します。
(ケ)主張ケ:
引用発明は「先端掘削刃用刃固定金物側から挿入したボルトを螺旋状溝用刃固定金物のボルト挿通孔に挿通させ、さらに管体本体の下面のナットに螺合させることで、管体本体の下面側に螺旋状溝用刃固定金物と先端掘削刃固定金物とが一体に取り付けられ」るものであって、ボルトとナットは互いに着脱自在であることから、本願発明の掘削ロッドと掘削ヘッドとの連結部が着脱自在である点で一致する、と認定されました。確かにボルトとナットは螺合及び螺合解除可能ですが、引用発明において前記ボルト、ナットでは螺旋状溝形形成用刃体の交換を迅速且つ容易に行うことができるかについては疑問があります。
イ 審判請求人の主張についての見解
(ア)主張アについて
審判請求人は、「引用発明の管体本体、螺旋状溝形成用刃体は、本願発明の掘削ロッド、地盤掘削翼に相当する」との認定に対して、「引用発明の螺旋状溝形成用刃体は螺旋状溝用刃固定金具を別に必要とする構成です。しかし、本願発明の地盤掘削翼は着脱リングに突出して形成された新規な構成です。」と主張するが、一般に「形成」とは、「形作ること」を意味するところ、当該用語において複数の要素によりこれをなすことが排除される特段の事情は認められず、引用発明1の上記「刃体」と上記「固定金具」とが別体からなることを包含する概念であると解されるから、引用発明1の螺旋状溝形成用刃体が、「先端掘削刃用刃固定金物及び管体本体の外周面側に突出する」以上、螺旋状溝用刃固定金具に対し「突出して形成された」ものに他ならない。
してみると、上記2(7)で論じたとおり、引用発明1の「螺旋状溝形成用刃体」は、「螺旋状溝用刃固定金具を別に必要とする構成」であったとしても、本願発明の「地盤掘削翼」に相当すると認められる。
よって、主張アは採用できない。
(イ)主張イについて
審判請求人は、「引用発明の螺旋状溝用刃固定金物は本願発明の着脱リングに相当する」との認定に対して、「引用発明の螺旋状溝用刃固定金物は旋状溝形成用刃体を受入れ固定する構成であり本願発明の着脱リングと具体的構成には相違がある」旨主張するが、明細書【0028】や【図3】等を参酌すると、本願発明の「着脱リング」は、他の部材に対し「着脱」ができ、「リング状」の形状であるものであると解される。
そして、上記2(2)で示したとおり、引用発明1の「螺旋状溝用刃固定金物」は、その形状が「リング」状をなすものであるとともに、ボルトとナットによって「着脱」がなし得るものである以上、本願発明の「着脱リング」と相当関係があると認められるものである。
よって、主張イは採用できない。
(ウ)主張ウについて
審判請求人は、「引用発明の「先端掘削刃」が設けられた「先端掘削刃用固定金物」は本願発明の「掘削ヘッド」に相当するとの認定に対して、「具体的な構成には相違がある」旨主張するが、引用発明1の「先端掘削刃用固定金物」は「先端掘削刃」とともに、「掘削」のためのヘッドとして機能し、かつ、当該「先端掘削刃」をセットして用いられることが技術常識からみても明らかであるから、本願発明の「掘削ヘッド」に相当すると認められるものである。
よって、主張ウは採用できない。
(エ)主張エについて
審判請求人は、「「螺旋状溝用刃固定金物、管体本体、先端掘削刃固定金物は同径であ」るので、本願発明の「着脱リング」と、引用発明の「螺旋状溝用刃固定金物」とは、「掘削ロッドと掘削ヘッドと同径」であるものとの概念が一致する」との認定に対して、各種の杭築造装置では一般的構成である旨主張しているが、当該装置に係る技術分野において「同径」との技術事項が一般的構成であれば、上記(ウ)で論じた事項も踏まえると、本願発明と引用発明1とは、本願発明の「着脱リング」と、引用発明の「螺旋状溝用刃固定金物」とこれにセットされるものである「先端掘削刃」とは、当然に、具体的な構成としても「同径」のものとなると認められる。
仮に、当該主張エを「しかし、各種の杭築造装置では一般的構成ではない」旨の主張であると解釈しても、上記2(4)のとおり、技術常識からみても相違するとは認められず、主張エは採用できない。
(オ)主張オについて
審判請求人は、本願発明の「着脱リング」と引用発明の「螺旋状溝用刃固定金物」は、「掘削ロッドと掘削ヘッドに対して空回りを防止する空回り防止部が形成」される点で概念が一致する」との認定に対して、「引用発明には意図する空回り防止部が存在しない」旨主張するが、引用発明1は、「ボルト挿通孔」に「ボルト」と「ナット」が挿通されることによって、「管体本体」の下面側に「螺旋状溝用刃固定金物」と「先端掘削刃用刃固定金物」とが一体に取り付けられるものであるから、これにより「管体本体」に対する「先端掘削刃用刃固定金物」及び「先端掘削刃」の空回りを防止する機能が発揮されていると認められ、上記2(5)で論じたとおり、引用発明の「ボルト挿通孔」は、本願発明の「空回り防止部」に相当する。
よって、主張オは採用できない。
(カ)主張カについて
審判請求人は、「引用発明は、先端掘削刃固定用刃固定金物と管体本体の間に螺旋状溝用固定金物を介在しているので、本願発明の「着脱リング」と、引用発明の「螺旋状溝用刃固定金物」とは、「掘削ロッドと掘削ヘッドの接合面に」「介在」させられたものとの概念で一致する」との認定に対して、本願発明の「着脱リング」と引用発明1の「螺旋状溝用刃固定金物」とは、具体的構成に相違がある旨主張している。
しかし、引用発明1の「掘削装置」は、「先端掘削刃用刃固定金物側から挿入したボルトを螺旋状溝用刃固定金物のボルト挿通孔に挿通させ、さらに管体本体の下面のナットに螺合させることで、管体本体の下面側に螺旋状溝用刃固定金物と先端掘削刃用刃固定金物とが一体に取り付けられ」るものであるから、引用発明1の「螺旋状溝用刃固定金物」は「先端掘削刃用刃固定金物」と「管体本体」の間に位置するといえる。
ここで、一般に「介在」とは、「両者の間に他のものがはさまっていること」を意味するから、上記2(6)で論じたとおり、本願発明の「着脱リング」と、引用発明1の「螺旋状溝用刃固定金物」とは、「掘削ロッドと掘削ヘッドとの間の接合面に介在」させられたものである点で一致する。
よって、主張カは採用できない。
(キ)主張キについて
審判請求人は、「本願発明の「着脱リング」と、引用発明の「螺旋状溝用刃固定金物」とは、「掘削ロッドと掘削ヘッドの外方に向かって突出する1個の地盤掘削翼が形成されてなる」ものとの概念で一致するとの認定に対して、「その具体的構成は全く異なる」と主張する。
しかし、上記2(1)、2(7)及び上記(ア)で論じたことからみて、引用発明の「螺旋状溝用刃固定金物」は、本願発明の「着脱リング」が備える、「掘削ロッドと掘削ヘッドの外方に向かって突出する1個の地盤掘削翼が形成されてなる」との構成を備えるものであると認められる。
よって、主張キは採用できない。
(ク)主張クについて
審判請求人は、本願発明と引用発明1の目的は同等である旨主張しており、上記2のとおりであるから、主張クに基づいて、本願発明と引用発明1とが相違するとは認められない。
(ケ)主張ケについて
審判請求人は、引用発明1においてボルト、ナットでは螺旋状溝形形成用刃体の交換を迅速且つ容易に行うことができるかについては疑問がある旨主張している。
上記「螺旋状溝形形成用刃体の交換を迅速且つ容易に行うことができる」との作用効果について検討すると、本件明細書の【0026】に「図面実施例では、前記掘削ヘッド4側に細径の接続部5を形成し、前記掘削ロッド2側に前記掘削ヘッド4の接続部5が適合する受入部6を形成し、該受入部6に前記接続部5を適合させて固定装置7により一体化および着脱自在に構成されている。」と記載されているように、本願発明において「着脱リング」の交換は、請求項には記載されていない「固定装置7により一体化および着脱自在」とする工程を経る必要があると認められる。
ここで、本願発明では「掘削ロッド」、「掘削ヘッド」、及び「着脱リング」の関係について、「掘削ロッドと掘削ヘッドとが着脱自在であ」る点、「該掘削ロッドと掘削ヘッドとの間には該掘削ロッドと掘削ヘッドと同径で該掘削ロッドと掘削ヘッドに対して空回りを防止する空回り防止部が形成された着脱リングが介在させられ」る点が特定されているものの、「固定装置7により一体化および着脱自在」とする工程に関してなんら特定されていないことから、「螺旋状溝形形成用刃体の交換を迅速且つ容易に行うことができる」との作用効果を奏するとも認められない。
そして、引用発明1の「螺旋状溝用刃固定金物」、「管体本体」、「先端掘削刃用固定金物」、及び「先端掘削刃」については上記2(1)~(6)、(9)のとおりであって、本願発明の上記特定事項が示されていると認められるし、上記のとおり「螺旋状溝形形成用刃体の交換を迅速且つ容易に行うことができる」との作用効果を奏するとは認められないから、主張ケは採用できない。
ウ 審判請求人の主張のまとめ
上記イのとおり、主張ア~ケは、上記2の判断を左右するものでなく採用できない。
4 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
また、本願発明は、引用発明1から当業者が容易に想到し得るものである。
第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、第29条第1項の規定により特許を受けることができないものであり、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができず、同法第49条第2号に該当するから、本願は拒絶されるべきものである。
したがって、結論のとおり審決する。
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2023-015418