商標拒絶査定不服審判
2023-012691
- 審判番号
- 2023-012691
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2022-122070
- 請求日
- 2023年07月28日
- 審決日
- 2025年07月08日
- 公報発行日
- 2025年09月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】有限会社齋藤歯研工業所
- 【請求人代理人】岸本 忠昭
- 【請求人代理人】松下 ひろ美
- 審判長/審判官
- 審判長 高橋 幸志
- 審判官 小俣 克巳
- 審判官 鯉沼 里果
- 分類
- T18 .13 -Z (W10) / T18 .17 -Z (W10)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第2項、商標法第3条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2022-122070拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、令和4年10月25日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 5年 1月13日付け:拒絶理由通知書
令和 5年 3月23日 :意見書、手続補正書の提出
令和 5年 4月20日 :上申書の提出
令和 5年 5月26日付け:拒絶査定
令和 5年 7月28日 :審判請求書の提出
令和 6年 7月 9日付け:拒絶理由通知書、審尋
令和 6年 8月16日 :意見書、手続補正書、回答書の提出
令和 7年 3月10日付け:審尋
令和 7年 4月18日 :回答書の提出
2 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの立体的形状よりなり、第9類に属する願書に記載のとおりの商品を指定商品として登録出願されたものである。
その後、本願の指定商品は、上記1の手続補正書により、最終的に第10類「支持台に装着して使用する歯科用歯形模型固定用プレート」と補正されたものである。
3 原査定の拒絶の理由(要旨)
本願商標は、願書に記載されたとおりの態様よりなる立体的形状であるところ、当該立体的形状は、略U字状のプレート本体を有し、その片面側の湾曲中間部を除く両端部に20本のダウエルピンをその幅方向に二列に設けたものである。
そして、本願の指定商品は、歯科用歯形模型用支持台に装着して使用されるものであり、プレートの片面側に複数本のダウエルピンが設けられている。
そうすると、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、単に指定商品の一形態であると認識するにすぎないものと判断するのが相当である。
したがって、本願商標は、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。
また、本願商標が出願人の業務に係る商品について使用された結果、識別力を獲得したものと認めることはできないから、本願商標は商標法第3条第2項の要件を具備するものとは認められない。
4 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、別掲1のとおり、略U字状のプレート本体を有し、そのプレート片面側の、湾曲内周部及び外周部に沿って線を描き、湾曲中間部を除く両端部に20本のダウエルピンを二列に設けた立体的形状からなる。
そして、本願の指定商品「支持台に装着して使用する歯科用歯形模型固定用プレート」は、歯冠補綴物を製作する作業等、歯科治療の作業に使用する歯科模型を固定するために用いられるものであるところ、本願商標の形状は、全歯タイプの歯科模型に貼り合わせて用いられるものであることから略U字状のプレートを有し、支持台に装着して使用されるものであることからプレートの片面側に複数のダウエルピンが設けられているという当該商品の基本的特徴を有することから、「支持台に装着して使用する歯科用歯形模型固定用プレート」の形状を表したものと認められる。
また、原審における拒絶理由通知で示された事実のとおり、本願商標と基本的特徴を共通にする形状の「支持台に装着して使用する歯科用歯形模型固定用プレート」が取引されている実情がある。
そうすると、本願商標の立体的形状は、子細にみれば、他社商品とは異なる特徴を有するとしても、それらの特徴は「支持台に装着して使用する歯科用歯形模型固定用プレート」について機能に資することを目的として採択されたものとみるのが妥当であり、その機能上又は美観上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものとみるのが相当である。
してみれば、本願商標は、本願の指定商品との関係においては、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)商標法第3条第2項に規定する要件を具備するか否かについて
請求人は、本願商標は、請求人によって独占的に使用された結果、請求人の業務に係る識別標識としての機能を果たしている旨主張し、証拠方法として、原審において資料1ないし資料29を、当審において資料1ないし資料48(枝番号を含む。)を提出しているところ、当審において提出された資料1ないし資料29は原審における証拠を援用したものであるから当審において提出された証拠を採用する。
以下、請求人の主張及び同人が提出した上記証拠を参照し、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するか否かについて検討する。
ア 商標法第3条第2項について
商標法第3条第1項第3号から第5号に該当する商標について、同条第2項所定の「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」に至ったか否かを判断するに当たっては、当該商標と外観において同一と見られる標章が指定商品又は指定役務とされる商品又は役務に使用されたことを前提として、その使用開始時期、使用期間、使用地域、使用態様、当該商品又は役務の販売数量又は売上高等及び当該商品又は役務やこれに類似した商品又は役務における当該商標又は標章に類似した他の標章の存否などの事情を総合的に考慮すべきものといえる(知的財産高等裁判所 平成27年(行ケ)10019号 同年10月29日判決言渡参照)。
イ 事実認定
上記アの観点に照らし、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するか否かについて判断する。請求人の主張の全趣旨及び同人が提出した各証拠によれば、次のとおりである。
なお、証拠の記載に当たっては、「資料○」を「資○」及び「資料○-○」を「資○-○」(枝番号のすべてを示すときは、枝番号を省略する。)と表記する場合がある。
(ア)商標の同一性について
本願商標は、別掲1のとおり、略U字状のプレート本体を有し、そのプレート片面側の、湾曲内周部及び外周部に沿って線を描き、湾曲中間部を除く両端部に20本のダウエルピンを二列に設けた立体的形状からなる。
他方、請求人が製造販売する「支持台に装着して使用する歯科用歯形模型固定用プレート」の立体的形状は、本願商標と外観において同一視できるものである(資2、資4、資5、資25~資29ほか。)。
以下、請求人が製造販売する「支持台に装着して使用する歯科用歯形模型固定用プレート」を「本願使用商品」という(別掲2に資5-1を本願使用商品として表示する。)。
(イ)本願使用商品の使用開始時期及び使用期間
2013年から2021年の請求人のウェブサイトの出力の写し(資35~資43)及び2022年発行の他社のカタログ(資27)に本願使用商品が確認できることから、請求人は少なくとも2013年から2022年までの約10年程度、本願使用商品を継続的に販売していることが認められる。
(ウ)本願使用商品の使用地域、販売方法
請求人は、2020年に本願使用商品を全国37都道府県に所在する182事業所(171の歯科技工所及び11の卸売販売業者)に、販売している(請求人の主張、資33)。
また、請求人は、本願使用商品を請求人のウェブサイト、第三者の通販サイト、他社のカタログ等に掲載しており、これら請求人のウェブサイト、第三者の通販サイト、他社のカタログを通じて販売している(資2、資4、資17、資19、資25~資29、資44、資45)。
(エ)本願使用商品の販売実績
請求人は、本願使用商品を2011年から2022年までの12年間で、合計196万7700個を販売し、合計売上金額は約3億3500万円であり、近年2年の年間販売数量は約20万個を超え、年間売上金額は4000万円を超えているとしている(資15)。
(オ)広告宣伝の実績
請求人は、「QDT」と題し、「補綴医・歯科技工士の国際誌」とされる2009年11月10日及び2009年12月10日に発行された歯科技術専門誌(以下「歯科技術専門誌」という。)に、本願使用商品の広告を掲載している(資20、資21)。
(カ)取引の実情
本願使用商品は、一般的な需要者を対象とした商品ではなく、主たる需要者は歯科技工士であって、2020年における、歯科技工士が勤務する歯科技工所数は全国に2万879事業所、歯科技工士の人数は3万4826名である(資16)ことから、本願使用商品の販売数量は、1事業所当たり年間約10個に相当し、歯科技工士1人当たり年間約5.7個に相当するとしている(請求人の主張)。
ウ 判断
請求人は、本願商標と同一と認められる立体的形状をした本願使用商品を製造販売し、その使用地域(販売エリア)は、請求人が2020年に本願使用商品を販売した顧客の所在地が37都道府県であることを考慮すれば、全国に及んでいるといえるもので、その使用期間(販売期間)は、2013年頃から2022年までの10年程度であるということができ近年2年では、年間の販売数量が約20万個を超えるもので、4000万円を超える年間売上金額を記録していることから、本願使用商品は相当程度の取引があるということができる。
しかしながら、そもそも本願使用商品の販売個数、売上金額については請求人が作成した資料(資15)であることから客観的な裏付けが乏しいことに加え、商品「支持台に装着して使用する歯科用歯形模型固定用プレート」の分野における販売総数や全体の売上金額、また、他社商品の販売数や売上金額などの本願使用商品の販売個数及び売上金額の多寡を評価するための情報がないことから、この本願使用商品の販売個数及び売上金額のみをもって、需要者の認識を判断する証拠として採用することはできない。
そして、本願使用商品は、請求人のウェブサイト、第三者の通販サイト及び第三者の製品カタログで取り扱われていることは確認できるものの、本願使用商品の広告、宣伝は、歯科技術専門誌に2009年に掲載されたわずか2回のみで、その雑誌の広告に掲載された内容は、本願商標の特徴を示す「20ピン」の文字の記載が確認できるものの、当該文字の横に掲載している立体図形(別掲3)は本願商標と比較しても、本願商標の特徴的部分といえる略U字状のプレート本体と、そのプレート片面側の、湾曲内周部及び外周部に沿って線を描き、湾曲中間部を除く両端部に20本のダウエルピンを二列に設けた立体的形状の表示と同一視できるものではないから、本願使用商品とは認め難いものであり、その他新聞・雑誌等による広告や宣伝を行っている状況は確認できない
さらに、請求人は、本願使用商品の販売数量は、1歯科技工所当たり年間約10個に相当し、歯科技工士1人あたり年間約5.7個に相当すると主張しているが、確かに歯科技工所の数及び歯科技工士の人数との比較において、そのような数字になるのかもしれないが、これらは歯科技工所及び歯科技工士の大半に本願使用商品が行き渡ったことを表すものではないから、このような歯科技工所の数及び歯科技工士の人数と販売数量の比較によって本願商標に関する需要者の認識を推し量ることができるものとはいい難い。
加えて、歯科技工所が全国に2万879事業所(2020年)あり、請求人が2020年に本願使用商品を販売した歯科技工所が182事業所だとした場合、本願使用商品が販売された歯科技工所の割合はごくわずかといわざるを得ない。
その他、本願商標(本願使用商品)が、本願の指定商品に係る需要者の間において請求人に係る出所識別標識として広く認識されていることを客観的かつ具体的に示す証拠は見いだせない。
以上のことからすれば、請求人の主張及び提出された証拠からは、本願商標が使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものとは認められないから、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備しない。
(3)請求人の主張について
請求人は、本願商標の立体的形状は、U字状のプレート本体の両端部のみにダウエルピンを設け、その湾曲中間部にダウエルピンを設けないという、独創的で特異な形状を有しており、他社商品にないものであることから、本願の指定商品の需要者である歯科作業をする歯科技工士は、特に本願商標の立体的形状を充分に熟知して使用しており、需要者及び取引者は、請求人の業務に係る商品であることを容易に識別し得るものであるから、自他商品識別力を有するものである旨主張する。
しかしながら、上記(1)のとおり、たとえ本願商標と同一形状の商品が取引されていないとしても、本願商標は、略U字状のプレート本体の片面側に複数のダウエルピンが設けられているという、本願の指定商品の分野における商品の基本的な特徴を有することから、本願の指定商品の分野における商品の一般的な形状を表したものというのが相当である。そして、請求人及び同業者の同種の商品をみるに、プレート本体の形状、ダウエルピンの配置位置や数について、様々な商品が製造販売されている実情が確認でき(資4、資24~資29等)、請求人の同種の商品の紹介において、「・5種類の模型があり、補綴物のケースに合わせた模型を選べます。」、「単冠からブリッジまで対応出来る万能タイプ」、「臼歯部のブリッジや連冠に使用可」、「前歯部の単冠・連冠・ブリッジに使用可」、「コア・クラウン・インレー・オンレーなどに使用可。」等(資43-2等)と記載されていることがうかがえることからすれば、需要者及び取引者は、歯科治療作業の種類に応じて必要な商品を取捨選択しているにすぎないというのが相当であり、本願商標の立体的形状は、客観的にみて、本願の指定商品の機能に資することを目的とする形状の選択であると予測し得る範囲のものというのが相当である。
また、請求人は、本願商標は、本願商標の立体的形状を充分に熟知している取引者及び需要者が請求人の業務に係る商品であることを容易に識別し得るものであるから、自他商品識別力を有するものである旨主張する。
しかしながら、上記(2)のとおり、本願商標は、需要者が請求人の取扱いに係る商品であることを認識するに至ったものということはできず、請求人は需要者及び取引者の認識について裏付ける十分な資料の提出をしていない。
したがって、請求人の主張は、いずれも採用することができない。
(4)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであって、また、商標法第3条第2項に規定する要件を具備するものともいえないから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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