商標拒絶査定不服審判
2023-012344
ジムニーファン、ジムニー、ファン、エフエイエヌ
- 審判番号
- 2023-012344
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2023-003854
- 請求日
- 2023年07月24日
- 審決日
- 2025年01月17日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】エスエスシー出版有限会社
- 【請求人代理人】▲高▼橋 幸夫
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 雅也
- 審判官 滝口 裕子
- 審判官 小田 昌子
- 分類
- T18 .261-WY (W16) / T18 .262-WY (W16) / T18 .263-WY (W16) / T18 .271-WY (W16)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項11号商標法4条1項15号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2023-3854拒絶査定不服審判事件についてした令和5年12月26日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(令和6年(行ケ)第10007号、令和6年8月5日判決言渡)があったので、更に審理の上、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願商標は、登録すべきものとする。
理由
理 由
第1 本願商標及び手続の経緯
本願商標は、別掲1のとおり「Jimny Fan」の欧文字と「ジムニーファン」の片仮名を2段に書してなり、第16類「印刷物」を指定商品として、令和5年1月17日に登録出願されたものである。
本願は、令和5年3月14日付けで拒絶の理由が通知され、同年4月14日付け意見書が提出され、本願の指定商品は、同日付けの手続補正書により、第16類「オフロード車の改造に用いる部品及び附属品に関する情報雑誌」(以下「本願補正商品」という。)に補正されたが、同年6月20日付けで拒絶査定され、これに対し、同年7月24日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
第2 引用商標
原査定において、本願商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして、本願の拒絶の理由に引用した登録商標は以下の1及び2のとおりであり、これらの商標権は現に有効に存続しているものである。
1 登録第6214256号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲2のとおり、「Jimny」の欧文字を横書きしてなり、平成31年1月22日に登録出願、「自動車並びにその部品及び附属品」を含む第12類、第14類、「印刷物」を含む第16類、第18類、第21類、第24類、第25類及び第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、令和2年1月8日に設定登録されたものである。
2 登録第6623643号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲3のとおり、「JIMNY」の欧文字及び「ジムニー」の片仮名を2段に書してなり、令和4年2月24日に登録出願、「電子出版物」を含む第9類、第35類「自動車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,印刷物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、令和4年10月5日に設定登録されたものである。
以下、引用商標1と引用商標2をまとめていう場合は、「引用商標」という。
第3 原査定の拒絶の理由の要旨
原査定は、以下1及び2のとおり認定、判断し、本願を拒絶したものである。
1 本願商標は、別掲1のとおり「Jimny Fan」の欧文字及び「ジムニーファン」の片仮名を2段に横書きしてなるところ、スズキ株式会社(以下「スズキ社」という。)のオフロード車の名称である「Jimny(ジムニー)」(以下「Jimny商標」という。)は、我が国においても著名な自動車の一つといえ、我が国における自動車を使用する幅広い年齢層の多くの需要者に知られており、本願商標の構成中の「Jimny」の欧文字及び「ジムニー」の片仮名は、Jimny商標を表示したものと認識できるものであるから、当該文字部分(以下、これらを「本願商標の要部」という場合がある。)が強く支配的な印象を与え、本願商標の要部をもって他の商標と類否を判断することが許されるというのが相当である。
そして、本願商標の要部と引用商標を比較すると、本願商標の要部中の「Jimny」の欧文字と引用商標は、外観が類似し、「ジムニー」の称呼及び「スズキ株式会社の自動車(軽四輪駆動車)の名称」の観念を共通にすることから、本願商標と引用商標は、互いに紛らわしい類似の商標というべきである。
また、本願補正商品は、引用商標の指定商品「印刷物」及び「電子出版物」並びに指定役務「印刷物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と類似する商品である。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
2 本願商標の要部である「Jimny」の欧文字及び「ジムニー」の片仮名は、Jimny商標であることは上記1のとおりであるから、本願商標とJimny商標は類似性が高いといえる。
また、本願補正商品は、「オフロード車の改造に用いる部品及び附属品に関する情報雑誌」であるところ、これはオフロード車である「ジムニー」と関係が深いものを内容とする情報雑誌であることから、需要者を共通にするというのが相当である。
そうすると、本願商標を本願補正商品に使用するときは、本願商標の構成中に「Jimny」及び「ジムニー」の文字を含むことから、「ジムニー」に関係する商品が取り扱われていると容易に認識でき、これに接する需要者は、スズキ社又はスズキ社と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのごとく、商品の出所に混同を生じるおそれがあるというのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号、同項第15号と「取引の実情」について
(1)商標法第4条第1項第11号の商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品・役務に使用された場合に、商品・役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品・役務に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察する必要があり、しかも、その商品・役務の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である(最高裁昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁)。
(2)商標法第4条第1項第15号にいう「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品・役務と他人の業務に係る商品・役務との間の関連性の程度、取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、上記指定商品・役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断すべきである(最高裁平成12年7月11日第三小法廷判決・民集54巻6号1848頁)。
(3)本願補正商品は、第16類「オフロード車の改造に用いる部品及び附属品に関する情報雑誌」という極めて狭い市場において流通すると考えられる(いわゆるニッチな)商品である点に特徴があり、そのような本願補正商品についても、自動車の関連グッズや付随サービスに関する一般論が妥当するのか等につき、取引の実情を明らかにした上、当該取引の実情に基づいて、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号該当性の判断をする必要がある。
2 本願商標と引用商標の類否について
(1)本願商標について
ア 本願商標は、「Jimny Fan」の欧文字と「ジムニーファン」の片仮名を2段に書してなる結合商標であるところ、その構成文字全体に相応して「ジムニーファン」の呼称を生じる。
そして、本願商標の構成部分中、「Jimny」の欧文字及び「ジムニー」の片仮名の部分に着目すれば、周知のスズキ社のオフロード車ジムニーを表すものであり、また、「Fan」の欧文字及び「ファン」の片仮名の部分に着目すれば、「スポーツ・演劇・映画・音楽などで、ある分野・団体・個人をひいきにする人。」の意味を有する語である。
そうすると、本願商標を全体としてみれば、「スズキ社のオフロード車ジムニーの愛好者」といった観念を生じさせるものといえる。
イ そして、本願商標上段の「Jimny」と「Fan」の欧文字は同じ字体であり、その字の大きさも同じものであるから、両者は同格の印象を受けるものである。
また、両欧文字の間には中1字分の空白が存在するものの、前者の「Jimny」がアルファベット5文字、後者の「Fan」がアルファベット3文字で構成されていることからすると、全体として冗長なものともいえず、中1字分の空白があるからといって両欧文字は別個独立の構成であるとの印象が生じるわけでもない。
そして、「ジムニーファン」の片仮名の部分に関していえば、欧文字文の部分に相応する空白もない。
そうすると、本願商標の外観上、「Jimny」、「ジムニー」の部分と「Fan」、「ファン」の部分を分離して観察する根拠はないというべきである。
ウ ところで、結合商標の構成部分の一部が、取引者・需要者に対して商品・役務の出所の識別標識として強く支配的な印象を与える場合、当該一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断するという手法が妥当することはある(最高裁平成5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁、最高裁平成20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参照)。
これを本件について見るに、本件で問題とすべきは、本願商標を本願補正商品に使用したときに、取引者・需要者が出所識別標識としていかなる認識を有するかということである。
このような観点から考えると、まず、スズキ社を含む自動車メーカーが自ら又は系列ディーラー等を通じて、「オフロード車の改造に用いる部品及び附属品に関する情報雑誌」を発行している事実は認められない。
また、スズキ社を含む自動車メーカーは、ジムニーのカスタマイズ市場等に係る業務に対して、広告掲載を行うなど第三者の活動を側面から援助することはあっても、主体的に関わることは避けていることがうかがわれる。
このような中、本願商標を使用した本願補正商品に接した取引者・需要者において、スズキ社を含む自動車メーカー又はその系列ディーラー等が発行主体となっている(可能性がある)と認識するとは考え難い。
してみれば、本願商標は、その構成中の「Jimny」の欧文字及び「ジムニー」の片仮名が強く支配的な印象を与えるものということはできず、引用商標との類否を判断するに当たって、当該文字を本願商標の要部として抽出し、これを引用商標と比較して商標の類否を判断することは許されない。
なお、オフロード車の改造に関心を有している本願補正商品の取引者、需要者が本願商標に接した場合、本願商標中の「Jimny」及び「ジムニー」の部分が、改造のベースとなる車両として強く支配的な印象を与えることは想像に難くないが、それは「出所識別標識」とは次元の異なる問題であり、「Jimny」及び「ジムニー」の部分を結合商標の要部として抽出する根拠となるものではない。
(2)上記(1)によれば、本願商標の全体観察を前提に引用商標との比較をすべきところ、まず引用商標は本願商標の構成部分である「Fan」及び「ファン」に相当する構成を欠いているため、本願商標と引用商標は、商標全体としての外観が異なる。
また、称呼においては、本願商標より生じる「ジムニーファン」の称呼と引用商標より生じる「ジムニー」においては、両称呼は明瞭に聴別し得るものである。
さらに、観念においては、本願商標は「スズキ社のオフロード車ジムニーの愛好者」の観念を生じるのに対し、引用商標は「スズキ社のオフロード車の名称」の観念を生じるため、相紛れるおそれはない。
そうすると、本願商標と引用商標とは、外観、観念及び称呼において相紛れるおそれがないものであるから、これらの外観、観念及び称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両商標は相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標は、引用商標とは非類似の商標であるから、本願商標の指定商品と引用商標の指定商品及び指定役務の類否を検討するまでもなく、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しないものである。
3 本願商標に係る「混同を生ずるおそれ」について
(1)上記1(2)の枠組みに従って判断するに、まず、Jimny商標がスズキ社の製造販売するオフロード車の名称を表示するものとして、我が国の幅広い年齢層の自動車ユーザー等の間で広く知られていた事実が認められ、また、「Jimny(ジムニー)」は普通名詞に由来しない造語と理解されるものである。したがって、Jimny商標の周知著名性及び独創性の程度は、いずれも高いものと評価される。
(2)そこで、次に、本願補正商品とスズキ社の業務に係る商品及び役務との関連性について検討する。
ア 本願補正商品は、第16類「オフロード車の改造に用いる部品及び附属品に関する情報雑誌」という極めてニッチな商品であるところ、スズキ社を含む自動車メーカーが自ら又は系列ディーラー等を通じて、「オフロード車の改造に用いる部品及び附属品に関する情報雑誌」を発行している事実はなく、また、本願商標を使用した本願補正商品に接した取引者・需要者において、スズキ社を含む自動車メーカー又はその系列ディーラー等が発行主体となっている(可能性がある)と認識するとも考え難い。
加えて、スズキ社は、請求人に対してJimny商標との関係での誤認混同を生じさせるといった警告、クレームを原告に伝えたことがないばかりか、広告掲載するなどして本件雑誌の発行を援助している事実が認められる。
イ 以上の事実関係を総合すると、「オフロード車の改造に用いる部品及び附属品に関する情報雑誌」に係る業務は、スズキ社又はその系列ディーラー等とは直接関係のない第三者によって提供されているのが実情であり、スズキ社とは抵触関係に立たない「棲み分け」が成立していると認められる。
(3)以上によれば、本願商標を本願補正商品に使用したとしても、スズキ社のJimny商標に係る商品・役務との混同を生ずるおそれは認められないというべきであるから、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
4 むすび
以上のとおりであるから、本願商標が商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
その他、本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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