商標拒絶査定不服審判
2023-011221
チーサナオソーシキ、チーサナ
- 審判番号
- 2023-011221
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2022-049608
- 請求日
- 2023年07月04日
- 審決日
- 2024年03月28日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社ユニクエスト
- 【請求人代理人】弁理士法人ナビジョン国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 旦 克昌
- 審判官 阿曾 裕樹
- 審判官 山根 まり子
- 分類
- T18 .13 -Z (W45) / T18 .17 -Z (W45)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第2項、商標法第3条第1項第3号、特許法第150条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2022-49608拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和4年4月28日に登録出願されたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和4年6月21日付け:拒絶理由通知書
令和4年8月5日付け:意見書
令和5年4月21日付け:拒絶査定
令和5年7月4日付け:審判請求書
令和5年11月9日付け:証拠調べ通知書
令和5年12月12日付け:意見書
令和6年1月18日付け:上申書
第2 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第45類「葬儀の執行」を指定役務として登録出願されたものである。
第3 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、青緑色の「小さなお葬式」の文字を、普通に用いられる方法で横書きしてなり、全体として「小さいお葬式」程の意味合いを容易に認識させるものであるから、これを、その指定役務中、「規模が小さい葬儀の執行」に使用しても、取引者、需要者は、役務の質を表示したものとして認識するにとどまる。したがって、本願商標は、単にその役務の質を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。また、出願人が提出した証拠からは、本願商標が使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるに至っていると認めることはできないから、本願商標が、商標法第3条第2項の要件を具備するということはできない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第4 当審における証拠調べ通知(令和5年11月9日付け証拠調べ通知書)
本願商標が、その指定役務との関係において、商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べを実施した結果、別掲2のとおりの事実(「小さなお葬式」と称する小規模な葬儀が広く行われている実情があること)を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条の規定に基づき通知し、意見を求めた。
第5 上記通知に対する請求人の意見(要旨)
1 別掲2の事例の多くは、本件審理において参酌されるべきものではない。
請求人が、別掲2の事例の事業者に問い合わせを行った結果、15件のうち11件は、小さなお葬式が請求人の商標であることに承服する旨の意向や、小さなお葬式の文言の使用を中止する旨の回答を受けた。そして、一部は、実際に、小さなお葬式の文言の使用を中止している。また、別掲2の事例の少なくとも8件は、請求人が葬儀業界で多くのシェアを占めるようになった後のものであり、本願商標の周知度を利用することを目的としていたと推認できる。
2 日本国内における葬儀業者の数は、経済産業省の特定サービス産業動態統計調査によると3000件弱はあるから、別掲の事例は極めて少数といえる。例えば、Googleのウェブサイトで「小さなお葬式」の文字の検索結果は、ほとんどは請求人に関するものであり、「小さなお葬式」の語が請求人と強い関連性を有するものといえる(甲195、甲196)。
3 審判請求書において述べたとおり、本願商標は、使用により識別力を獲得しているから、商標法第3条第2項の適用を受けて登録が認められるべきである。
第6 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号該当性について
(1)本願商標は、別掲1のとおり、「小さなお葬式」の文字(「さな」の文字部分は他の文字部分よりやや小さい。)を青緑色で横書きしてなり、文字の大きさに多少の違いはあるものの、全体の構成態様に、特段の特徴はない。
また、本願商標の構成中の「小さな」の文字部分は、「規模などが大きくない」の意味を有する語である「小さい」の連体形であり(参照:「広辞苑 第七版」岩波書店)、「お葬式」の文字部分は、「死者をほうむる儀式。葬儀。」の意味を有する「葬式」(参照:前掲書)の語の丁寧語であり、いずれも意味の理解が容易な語であるから、構成文字全体として「規模が大きくない葬儀」程度の意味合いを容易に理解できる。
(2)そして、本願の指定役務に関連する分野において、規模が大きくない、小規模な葬儀が広く執り行われており、別掲2のとおり、例えば、通夜を行わない、告別式だけ、火葬だけの葬儀、参列者が家族、身内、近しい人だけである葬儀、費用を抑えた、低価格の葬儀などを、「小さなお葬式」と称している取引の実情がある。
(3)そうすると、本願商標は、その構成文字の語義から理解できる意味合いや上記取引の実情を踏まえると、「規模が大きくない葬儀」程度の意味合いを認識させるにすぎず、これをその指定役務「葬儀の執行」に使用するときは、取引者、需要者に、単に役務の質(内容)を表示するものと認識、理解されるというべきである。
してみれば、本願商標は、その指定役務との関係において、役務の質(内容)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり、商標法第3条第1項第3号に該当する。
2 商標法第3条第2項該当性について
(1)事実認定
請求人の主張並びに原審及び当審における提出証拠(請求人提出の資料1から資料196は、甲1から甲196と読み替える。)によれば、以下のとおりである。
ア 請求人は、インターネットによる葬儀ビジネスの運営を事業内容としており、2009年10月より、無駄を省いた低価格セットプランである「小さなお葬式」を提供しており、その中には「小さなお別れ葬」、「小さな火葬式」、「小さな一日葬」、「小さな家族葬」、「小さな一般葬」のプランがある(甲1)。
イ 請求人は、全国の4000以上の式場と提携しており(甲1)、その売上高は、2020年度は約158億円(甲126、甲127)であった。
ウ 2011年から2023年のテレビ、雑誌、書籍、インターネット上の放映・記事情報などにおいて、請求人や請求人に係る事業等が紹介された(甲3~甲61、甲106~甲146)。
これら記事では、請求人の提供する「小さなお葬式」について、例えば「小規模な葬式は“格安定額”に」(甲20)、「少人数での葬式は“格安定額”で行う」(甲23)、「急速に進む小規模・低価格化」(甲24)のように紹介されている。
エ 請求人は、2019年3月から2023年5月の各地域を対象としたテレビCM(甲76、甲158)において、請求人に係る葬儀「小さなお葬式」の宣伝広告を行ったとされる(請求人の主張)。
そして、テレビCMには、「お葬式は小さくていい」(甲79)、「小さなお葬式は、葬儀に必要なものを厳選し費用を抑えました。」(甲88)などの文字を表示するものがある。
オ 請求人は、時期は不明だが、全国200カ所に、パンチングバルーン、のぼり(甲90)、2021年7月から9月及び2023年1月から4月に愛知県名古屋市、2023年1月から4月に福岡県、北海道において、電子看板(甲93、甲169)を利用し、請求人に係る葬儀「小さなお葬式」の宣伝広告を行ったとされる(請求人の主張)。
そして、電子看板には、「日本のお葬式の品質は小さくても豊かだ。」(甲96)の文字を表示するものがある。
カ 請求人は、2016年12月から2022年にかけて、全国を対象とし、リーフレットやパンフレット(甲99)を発行し、請求人に係る葬儀「小さなお葬式」の宣伝広告を行ったとされる(請求人の主張)。
キ 鹿児島県の「小さなお葬式 谷山ホール」(甲177)や大阪府の「小さなお葬式 熊取ホール」(甲178)など、「小さなお葬式」の文字を名称中に有する請求人の直営の式場が全国に32カ所あるとされ(甲176、請求人の主張)、その建物の看板には、「小さなお葬式」の文字を表示したものがある(甲177~甲179)。
ク 請求人が、「株式会社マクロミル」に委託して、2022年3月15日から同月17日にかけて実施したアンケート調査(甲153。以下「本件アンケート調査」という。)は以下のとおりである。
(ア)調査対象者は、日本国内に居住する委託先のモニタ会員の30歳以上の者(男性・女性、30代から70代の5つの年代)であり、各調査の依頼数と有効回答数は1万件である。
(イ)「以下の葬儀会社の中から、該当するものを全てお選びください。(知ってるもの)」との質問に対して、「小さなお葬式」は41.7%の者が選択し、「以下の葬儀会社の中から、該当するものを全てお選びください。(利用したことがあるもの)」との質問に対して、「小さなお葬式」は1.8%の者が選択した。
ケ 葬儀業界において、上記1(2)のとおり、例えば、通夜を行わない、告別式だけ、火葬だけの葬儀、参列者が家族、身内、近しい人だけである葬儀、費用を抑えた、低価格の葬儀などの、規模が大きくない、小規模な葬儀を、「小さなお葬式」と称している取引の実情がある。
(2)判断
ア 上記(1)の認定事実によれば、請求人は、2009年10月から、「小さなお葬式」と称する葬儀プランを、全国の4000以上の式場と提携して提供し、その売上高は、2020年度に約158億円にのぼり、テレビや雑誌、書籍などを通じた広告宣伝活動も継続的にしていることがうかがい知れる。
しかしながら、請求人の提供する「小さなお葬式」なるサービスは、その名称の語義から理解できる「規模が大きくない葬儀」に相当するような、無駄を省いた低価格であることを特徴とするものであり、広告宣伝などにおいても、当該特徴が強調されていること、加えて、葬儀業界においてそのような、規模が大きくない、小規模な葬儀を「小さなお葬式」と称している実情があることを踏まえると、請求人による事業活動や広告宣伝活動により、本願商標が、請求人固有の出所識別標識として認識され、その知名度が向上するとは直ちに評価し難い。
イ また、本件アンケート調査は、「小さなお葬式」を知っている者が約4割いることを示すとしても、残りの6割以上の者は知らなかったことになる上、葬儀業界において、規模が大きくない、小規模な葬儀を「小さなお葬式」と称している実情があることを踏まえると、知っていると回答した者であっても、それを、他社のサービスではなく、請求人の事業に係る出所識別標識と認識した上で回答しているのかどうかは定かでない。
ウ 加えて、請求人の「小さなお葬式」と称する葬儀プランには「小さなお別れ葬」、「小さな火葬式」、「小さな一日葬」、「小さな家族葬」、「小さな一般葬」などの細分化されたプランがあり、「小さな」の文字が「規模が大きくない」という役務の質(内容)を強調するような態様で使用されている。
エ 以上によれば、本願商標は、その指定役務に係る需要者において、請求人の業務に係る出所識別標識として広く認識されているものと認めることはできず、請求人のみが排他独占的に使用してきた表示でもなく、独占適応性を欠くことも併せ鑑みると、使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるものとなったとは認められない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備しない。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、本願商標を継続して使用し、全国のテレビCM、新聞広告、電子看板、病院へのパンフレットの頒布など通じて、全国で長期間に渡り宣伝広告を行っていること、シェア率が1位であり、アンケート調査でも認識度が群を抜いて高い点などから、本願商標は、全国で著名なものであり、請求人の出所表示として役務の需要者の間で全国的に認識されるものであるから、商標法第3条第2項を具備する旨を主張する。
しかしながら、上記1(2)アのとおり、請求人が「小さなお葬式」と称する葬儀プランを提供し、継続的な事業実績や広告宣伝実績があるとしても、請求人の提供する「小さなお葬式」なるサービスは、その名称の語義から理解できる「規模が大きくない葬儀」に相当するような、無駄を省いた低価格であることを特徴とするものであり、広告宣伝などにおいても、当該特徴が強調されていること、加えて、葬儀業界において、そのような、規模が大きくない、小規模な葬儀を「小さなお葬式」と称している実情があることを踏まえると、請求人による事業活動や広告宣伝活動により、本願商標が、請求人固有の出所識別標識として認識され、その知名度が向上するとは直ちに評価し難い。
また、本件アンケート調査は、上記1(2)イのとおり、「小さなお葬式」を知っている者が約4割いることを示すとしても、残りの6割以上の者は知らなかったことになる上、葬儀業界において、規模が大きくない、小規模な葬儀を「小さなお葬式」と称している実情があることを踏まえると、知っていると回答した者であっても、それを、他社のサービスではなく、請求人の事業に係る出所識別標識と認識した上で回答しているのかどうかは定かでない。
したがって、本願商標は、その指定役務に係る需要者において、請求人の業務に係る出所識別標識として広く認識されているものとはいえず、使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるものとなったとは認められないから、商標法第3条第2項の要件を具備しない。
(2)請求人は、別掲2の事例のうち11件は、小さなお葬式が請求人の商標であることに承服する旨の意向や、小さなお葬式の文言の使用を中止する旨の回答があり、一部は実際に中止しているから、事例の多くは、本件審理において参酌されるべきものではない旨を主張する。
しかしながら、別掲2の事例の関係者が、小さなお葬式が請求人の商標であることに承服するか、また、小さなお葬式の文言の使用を中止するかにかかわらず、そこで例示されている事例が示すとおり、「小さなお葬式」は、請求人のみが、その指定役務について、排他独占的に使用してきた表示ではなく独占適応性を欠くものであって、本願商標のみで、請求人に係る出所識別標識としては機能することが事実上難しいと考えられる。
(3)請求人は、日本国内における葬儀業者の数は、3000件弱あるから、別掲2の事例は極めて少数といえる一方、例えば、Googleのウェブサイトで「小さなお葬式」の文字の検索結果は、ほとんどは請求人に関するものであり、「小さなお葬式」の語が請求人と強い関連性を有するものといえる旨を主張する。
しかしながら、別掲2の事例は、取引全般における使用例の全てを提示しているものではなく、そのうちの一部を職権調査の結果として通知しているにすぎない。また、ウェブサイトでの「小さなお葬式」の文字の検索結果に請求人が多くあるとしても、請求人の提供する「小さなお葬式」なるサービスは、その構成文字(「小さなお葬式」)の語義から理解できる「規模が大きくない葬儀」に相当するような、無駄を省いた低価格であることを特徴とするものであり、広告宣伝などにおいても、当該特徴が強調されていることを踏まえると、本願商標は、その指定役務に係る需要者において、請求人の業務に係る出所識別標識として広く認識されていると認めることはできない。
(4)したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。
4 むすび
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、かつ同法第3条第2項の要件を具備しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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