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商標拒絶査定不服審判

2023-010054

ホクサイアサンブラージュ、ホクサイアッサンブラージュ、ホクサイアセンブリッジ、ホクサイアッセンブリッジ、ホクサイ、アサンブラージュ、アッサンブラージュ、アセンブリッジ、アッセンブリッジ

審判番号
2023-010054
法域
商標
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
商願2022-095237
請求日
2023年06月19日
審決日
2025年07月22日
公報発行日
2025年10月31日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】Sake Experience Japan株式会社
  • 【請求人代理人】小川 雅也
審判長/審判官
  • 審判長 豊瀬 京太郎
  • 審判官 清川 恵子
  • 審判官 目黒 潤
分類
T18 .22 -Z (W33)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
商標法4条1項7号
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第4条第1項第7号
データ出所
審決公報(XML)

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商願2022-95237拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 1 手続の経緯 本願は、令和4年8月18日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和4年12月 2日付け:拒絶理由通知書 令和5年 1月31日 :意見書の提出 令和5年 4月25日付け:拒絶査定 令和5年 6月19日 :審判請求書の提出 令和6年 8月 6日付け:審尋 令和6年11月11日 :回答書の提出 2 本願商標 本願商標は、「HOKUSAI Assemblage」の文字を標準文字で表してなり、第33類「日本酒,洋酒,果実酒」を指定商品として登録出願されたものである。 3 原査定の拒絶の理由(要旨) 原審において、「本願商標は、「HOKUSAI Assemblage」の文字を標準文字で表してなるところ、この構成中「HOKUSAI」の文字は、江戸中・後期の浮世絵師として広く知られている人物である「葛飾北斎」を容易に認識させるものである。ところで、一般に、歴史上の著名な人物にゆかりのある地域では、その人物の氏名や略称などを、観光事業等に用いて地域振興を図っているのが通常であり、また、その人物名等は、名声により強い顧客吸引力を有しているから、土産物等に表示され、観光客に販売されることも少なくない。そして、葛飾北斎についても、ゆかりの地において、美術館が設立され、催しが開催されるなど、同人は敬愛の念をもって親しまれている。そうすると、「HOKUSAI」の文字を含む本願商標を、一私人である出願人が自己の商標として、その指定商品について独占的に使用することは、葛飾北斎を敬愛する人々の心情を害するおそれがあるばかりでなく、観光振興などの公益的な施策の遂行を阻害するおそれがあるから、社会公共の利益に反するものとみるのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、拒絶したものである。 4 当審における審尋(要旨) 当審において、令和6年8月6日付け審尋により、別掲1ないし34に掲げる事実を提示した上で、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとの暫定的見解を示し、期間を指定した上で請求人に対し意見を求めた。 5 審尋に対する請求人の回答(要旨) 請求人は、上記4の審尋に対し、令和6年11月11日に回答書(以下「回答書」という。)を提出し、要旨以下のとおりの意見を述べた。 請求人が提示した「出願の経緯・目的・理由」及び「「葛飾北斎」と請求人との関係」に係る事情も照らせば、全国各地の「葛飾北斎」を利活用した地域振興や観光振興等の振興の阻害や公正な商取引を阻害するような、社会公共の利益に反する意図、又は社会の一般的道徳観念に反する意図があるとはいえない。 6 当審の判断 (1)商標法第4条第1項第7号について 商標法第4条第1項第7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は、商標登録を受けることができないと規定する。ここでいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、(1)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(2)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、(3)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(4)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(5)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである(知財高裁平成17年(行ケ)第10349号)。 ところで、周知・著名な歴史上の人物名は、その人物の名声により強い顧客吸引力を有する。その人物の郷土やゆかりの地においては、住民に郷土の偉人として敬愛の情をもって親しまれ、例えば、地方公共団体、商工会議所等の公益的な機関が、その業績を称え記念館を運営していたり、地元のシンボルとして地域興しや観光振興のために人物名を商標として使用したりするような実情が多くみられるところであり、当該人物が商品と密接な関係にある場合はもちろん、商品との関係が希薄な場合であっても、強い顧客吸引力を発揮すると考えられる。このため、周知・著名な歴史上の人物名を商標として使用したいとする者も、少なくないものと考えられる。一方、敬愛の情をもって親しまれているからこそ、その商標登録に対しては、国民又は地域住民全体の反発も否定できない。 そして、上記判決では、商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するものとして、(1)ないし(5)の場合を例示として挙げており、その例示の一つとして、「(2)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合」が挙げられている。 そうすると、周知・著名な歴史上の人物名からなる商標は、(ア)当該歴史上の人物の周知・著名性、(イ)当該歴史上の人物名に対する国民又は地域住民の認識、(ウ)当該歴史上の人物名の利用状況、(エ)当該歴史上の人物名の利用状況と指定商品との関係、(オ)出願の経緯・目的・理由、(カ)当該歴史上の人物と請求人(出願人)との関係に係る事情を総合的に勘案して、当該商標を特定の者の商標としてその登録を認めることが、社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するものと認められる場合には、商標法第4条第1項第7号に該当するというべきである。 (2)本願商標の商標法第4条第1項第7号該当性について ア 本願商標 本願商標は、「HOKUSAI Assemblage」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中、「HOKUSAI」の文字は「江戸後期の浮世絵師」である「葛飾北斎」の略称「北斎」(出典:「広辞苑第7版」株式会社岩波書店)をローマ字表記したものであって、当該文字部分が本願の指定商品との関係において、自他商品の識別標識としての機能を有しないとか、又は、その機能が弱いというべき事情は見当たらないものである。 そして、「Assemblage」の文字は「1 集める[集まる]こと,会合(assembly)、(人・物の)集まり,集合,群、2 (機械などの各部分の)組み立て」等の意味(出典:「プログレッシブ英和中辞典第5版」株式会社小学館)を有する英単語であるところ、当該文字及び当該文字の表音である「アッサンブラージュ」の文字は、本願の指定商品を取り扱う業界において、「ワインをブレンドすること」を意味(別掲1、別掲2)する語として知られ、取引の実際においては、異なるブドウの品種からなるワインを組み合わせたり、ワインのみならず、日本酒の分野においても、原酒をブレンドしたりすることを「Assemblage(アッサンブラージュ)」と称していることは別掲3ないし別掲12のとおりであるから、当該文字は、指定商品との関係において、自他商品識別力を有しない若しくは極めて弱いものといえる。 そうすると、本願商標の構成中、自他商品の識別標識としての機能を有するのは、「HOKUSAI」の文字部分であるというのが相当であって、本願商標の構成全体から、特定の意味合いを認識し得るという特段の事情もないことから、「HOKUSAI」の文字部分が、独立して商品の出所識別標識として機能し得るといえるものである。 イ 「HOKUSAI(葛飾北斎)」について、職権による調査(別掲13~25)並びに請求人の主張及び提出された証拠によれば、以下のとおりである。 (ア)「葛飾北斎」の周知・著名性 「葛飾北斎」は、本名「川村鉄蔵(幼名は時太郎)」は1760年に現在の東京都墨田区で生まれ、1849年浅草寺の子院・遍照院で亡くなったとされる、江戸中・後期の浮世絵師である。代表作は「富嶽三十六景」、「北斎漫画」等で知られており、19世紀のヨーロッパ印象派画家にも影響を与えたことでも知られている(甲6~甲8)。 葛飾北斎は、歴史上の人物として国語辞典等に掲載されている他、同人の作品を収蔵した美術館は各地に設けられており、また、1998年に米国で発行されていた雑誌「LIFE」では「この1000年で最も偉大な業績を残した世界の100人」に日本人で唯一選ばれている(甲6~甲8、甲15、甲16)。 (イ)「葛飾北斎」に対する国民又は地域住民の認識 葛飾北斎は、上記(ア)のとおり、歴史上の人物として国内にとどまらず世界的に知られているところ、「葛飾北斎」やその作品のゆかりの地では「葛飾北斎」関連の催しや施設等が設けられている。出生地である東京都墨田区では「北斎通り」と名付けられた通りがあるほか、「北斎祭り」も催されており、葛飾北斎に関する美術品等が展示されている「すみだ北斎美術館」もある(甲9~甲11)。 そして、葛飾北斎が晩年よく訪れていたとされる長野県上高井郡小布施町には作品を展示した「北斎館」があり(甲12)、「北斎漫画」の初刷りが発見された島根県鹿足郡津和野町には、「葛飾北斎美術館」が設けられている(甲13)。 また、同人の作品は、日本全国に所在する多数の美術館において展示会や展覧会が開催されていることから(例えば、甲17、甲18、別掲13~別掲20)、ゆかりの地における地域住民はもとより、我が国の国民に広く敬愛されているといえるものである。 (ウ)「葛飾北斎」の名称の利用状況 上記(イ)のとおり、「葛飾北斎」のゆかりの地において、地域振興や観光振興のために、同人の名称が広く利用されていることが認められる。 (エ)「葛飾北斎」の名称の利用状況と指定商品・役務との関係 本願の指定商品は、上記2のとおり、第33類「日本酒,洋酒,果実酒」であるところ、当審において職権をもって調査したところ、本願の指定商品を含む酒類を取り扱う分野において、請求人以外にも「葛飾北斎」を認識させる「HOKUSAI」の文字(「北斎」、「Hokusai」の文字を含む。以下同じ。)を有する標章を使用している者が存在している(別掲21~別掲25)。 また、一般に美術館等におけるミュージアムショップでは、展示作品に関する商品や地域の特産品等が広く販売されているところ、別掲26ないし別掲34のように、本願の指定商品を含む酒類が販売されている事実が少なからず見受けられる。 (オ)出願の経緯・目的・理由 請求人は、国際北斎学会や一般社団法人日本美術アカデミー(以下「日本美術アカデミー」という。)の「葛飾北斎」について研究、魅力を伝える活動に賛同しており、日本のみならず海外へと「葛飾北斎」の文化的普及に資するこれら団体への協力を目的としたものであり、日本美術アカデミーの代表理事より、「葛飾北斎」をテーマにした日本酒の商品開発ができないかと請求人が相談を受けたことが契機であるとし、また、商品開発にあたっては、「富嶽三十六景 甲州石班澤」を借り受け、「HOKUSAI Assemblage2018」の名称を冠した商品が誕生し、2019年の国際北斎学会の会場にて展示、提供されたとする(請求人の主張。甲33、甲38~甲40、甲44、甲45)。 (カ)「葛飾北斎」と請求人との関係 上記(オ)のとおり、請求人は、2018年頃に「葛飾北斎」にちなんだ日本酒の製造を行ったことが見受けられるが、その他請求人が提出した証拠及び職権調査によっても、「葛飾北斎」と請求人とを直接関連づけるような事実は発見できない。 (3)判断 上記(2)イで認定した事実によれば、「葛飾北斎」は、江戸中・後期の浮世絵師としてとして、我が国を超えて世界的に著名な存在であり、現在においても、我が国の国民(一般需要者)の間に、広く認識されている存在であることは明らかである。そして、「HOKUSAI」の文字は、我が国において、著名な歴史上の人物である「葛飾北斎」の名を欧文字表記したものと容易に認識させるものであるところ、同人の出生地やゆかりの地における関連施設は観光地として広く知られ、また、同人の名称を利用したイベントの開催、あるいは同人の作品は、日本全国に所在する多数の美術館や展示会場等において展示会や展覧会等が多数開催されており、「葛飾北斎」の人名は、それぞれの地域における公益的事業の遂行と密接な関係を有しているものといえる。 そして、本願の指定商品は、「日本酒,洋酒,果実酒」であるところ、上記(2)イ(エ)のとおり、美術館等に併設するミュージアムショップでは、展示作品に関する商品や地域の特産品等が広く販売されており、その中には、本願の指定商品を含む酒類が販売されていることも少なくないものである。 さらに、本願の指定商品を取り扱う分野において、「HOKUSAI」の文字を有する標章を使用している者が、請求人以外にも存在している事実が認められることを踏まえれば、本願の指定商品の分野において、今後さらに多くの事業者が、「HOKUSAI」の文字の使用を欲する可能性は極めて高いといえる。 以上の内容に照らせば、「HOKUSAI」の文字を有する本願商標が、特定の者(請求人)の商標として登録された場合には、全国各地の「葛飾北斎」を利活用した地域振興や観光振興等の振興を阻害するおそれや公正な商取引を阻害するおそれがあり、さらに、ゆかりの地に関連した各種の商品等を取り扱う事業者や、今後「HOKUSAI」の文字の使用を欲するであろう多くの事業者に対して無用の混乱を招くおそれがあるものと判断するのが相当である。 してみれば、このような事情を招くおそれがある本願商標を請求人の商標として登録を認めることは、社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するものというべきである。 したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。 (4)請求人の主張について ア 請求人は、本願商標の構成中の「Assemblage」の文字は、一般に親しまれている語には該当しておらず、本願商標からは一連で特定の観念が想起されず、また、外観上も殊更「HOKUSAI」部分のみが分離抽出されるような態様には該当しない旨主張している。 しかしながら、「Assemblage(アッサンブラージュ)」の語が「ワインをブレンドすること」を意味する語として知られ、異なるブドウの品種からなるワインを組み合わせることや、日本酒の分野においても、原酒をブレンドすることを「Assemblage(アッサンブラージュ)」と称することも少なくないことから、当該文字は、自他商品識別力を有しない若しくは極めて弱いものといえ、「HOKUSAI」の文字部分が、独立して商品の出所識別標識として機能し得るというのは、上記(2)アで述べたとおりである。 イ 請求人は、回答書における「出願の経緯・目的・理由」及び「「葛飾北斎」と請求人との関係」に係る事情も照らせば、全国各地の「葛飾北斎」を利活用した地域振興や観光振興等の振興の阻害や公正な商取引の阻害するような、社会公共の利益に反する意図、又は社会の一般的道徳観念に反する意図はない旨主張している。 しかしながら、回答書からは、請求人が日本美術アカデミー(国際北斎学会の本部)からの依頼により、名称を「HOKUSAI Assemblage2018」とする日本酒を製造し、当該日本酒が2019年の国際北斎学会の会場にて展示、提供されたこと、また、「葛飾北斎」の振興に資する活動を行っている当該法人(当該学会)と商取引上の関係があることは見受けられるものの、請求人本人が「葛飾北斎」のゆかりの地に関係した者であったり、当該人物に関する公共的な取り組みを中心に行っている者又はそれを委託されている者であるといった事実は発見できない。 また、美術館等に併設するミュージアムショップにおいては、展示作品に関する商品等が広く販売され、その中には、本願の指定商品を含む酒類が販売されている事実は少なくなく、また、酒類の分野において、「HOKUSAI」の文字を有する標章を使用している者が、請求人以外にも存在している実情があることに照らせば、今後さらに多くの事業者が、「HOKUSAI」の文字の使用を欲する可能性は極めて高いことは、上記(3)で述べたとおりである。 そうとすると、請求人による本願商標の出願の経緯等が回答書のとおりであって、公益的な施策等に便乗し、その遂行を阻害し、利益の独占を図る意図をもってしたものでないとしても、「HOKUSAI」の文字を有してなる本願商標を一私人である請求人が自己の商標として登録し、独占的に使用することは、「HOKUSAI」の文字を活用した公共性を有する各種施策や地域興し、観光振興等の遂行を阻害するおそれがあり、「葛飾北斎」に通ずる「HOKUSAI」に関連する各種商品等を取り扱う多数の事業者等の円滑な商取引を阻害し、ひいては社会公共の利益の妨げになるおそれがあるものといわざるを得ない。 ウ 請求人は、歴史上の人物名からなる過去の登録例、審決例及び判例を挙げ、本願も同様に判断されるべきである旨主張する。 しかしながら、登録出願に係る商標が商標法第4条第1項第7号に該当するか否かは、当該商標の査定時又は審決時における実情に基づき判断すべきものであるところ、本願については上記(2)及び(3)のとおりであるから、具体的な状況や構成態様の異なるこれら登録例等が上記判断に影響を及ぼすものとはいえない。 エ したがって、請求人の上記アないしウの主張は、いずれも採用することができない。 (4)まとめ 以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものであるから、登録することができない。 よって、結論のとおり審決する。

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