商標拒絶査定不服審判
2023-007906
ケツリューカイセキ
- 審判番号
- 2023-007906
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2022-036502
- 請求日
- 2023年05月15日
- 審決日
- 2024年10月09日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】西野 輝泰
- 【請求人代理人】伊藤 克博
- 【請求人代理人】矢冨 亜弥
- 【請求人】板谷 慶一
- 【請求人代理人】伊藤 克博
- 【請求人代理人】矢冨 亜弥
- 審判長/審判官
- 審判長 大橋 良成
- 審判官 渡邉 あおい
- 審判官 渡邉 潤
- 分類
- T18 .13 -Z (W094244) / T18 .17 -Z (W094244)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号、商標法第3条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2022- 36502拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和4年3月30日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和4年 8月17日付け:拒絶理由通知書
令和4年11月 4日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年 2月13日付け:拒絶査定
令和5年 5月15日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和6年 6月 5日付け:審尋
令和6年 7月22日 :回答書、手続補正書の提出
第2 本願商標
本願商標は、「血流解析」の文字を標準文字で表してなり、第9類、第42類及び第44類に属する願書記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として登録出願されたものであり、その後、指定商品及び指定役務については、上記第1の手続補正により、最終的に、別掲1に記載のとおりの商品及び役務(以下「当審補正商品及び役務」という。)に補正されたものである。
第3 原査定の拒絶の理由の要旨
原査定は、「本願商標は、「血流解析」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「血流」の文字は、「血管内の血液の流れ」の意味を、「解析」の文字は、「事物の構成要素を細かく理論的に調べることによって、その本質を明らかにすること」の意味を有する語として広く知られているから、本願商標は全体として「血流の解析」ほどの意味合いを容易に認識させるものである。そして、本願の指定商品及び指定役務を取り扱う業界において、血流等の医療データを解析するソフトウェア等、血流を解析し可視化するためのコンピュータソフトウェアが使用されており、また、そのコンピュータソフトウェアを活用して医療診断が行われている実情が確認できる。そうすると、本願の指定商品及び指定役務中、第9類「心臓血管疾患・障害及び血管疾患・障害の治療用電子計算機用プログラム」、第42類「心臓血管疾患・障害及び血管疾患・障害の治療用電子計算機用プログラムの提供,医療に関する研究」、第44類「人の診断及び治療のための医療分析」等との関係において、本願商標を使用しても、これに接する需要者は、本願商標が「血流の解析に関する商品・役務,血流の解析を内容とする商品・役務」であることを理解するにとどまるものといえるから、本願商標は、単に商品の品質・役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と判断するのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第4 当審における審尋
当審において、上記第1の審尋により、請求人に対し、別掲2のとおりの事実を提示した上で、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当し、かつ、同条第2項に規定する要件を具備するものではない旨の暫定的見解を示し、相当の期間を指定して、これに対する回答を求めた。
第5 審尋に対する請求人の回答(要旨)
請求人は、上記第4の審尋に対し、令和6年7月22日付けの回答書を提出し、要旨、以下のとおりの意見を述べた。
1 当審補正商品及び役務は日本の病院でもごく限られた大学病院等の病院でしか使用されていない特殊なものであり、また、原審及び審尋に掲載された血流解析と当審補正商品及び役務とは相違している。当審補正商品及び役務は一般的にはFFRCTまたは血流動態解析等と呼ばれており、その商品・役務の品質・質等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標ではない。
2 本願商標が、品質等を表示する商標であったとしても、請求人及び請求人が代表を務める株式会社Cardio Flow Design(以下「CFD社」という。)の長年における研究と多数の学会、研究会での紹介等も相まって、本願商標は審判請求人の商標であると全国的周知であることは明らかである。当審補正商品及び役務の需要者は主に大学病院の心臓血管外科、心臓血管外科医であって、その需要者である大学病院の63%の病院への販売実績があるから、需要者の間に周知であることは明らかである。
第6 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号について
商標法第3条第1項第3号が、「その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状(包装の形状を含む。)、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格」又は「その役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格」を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標について商標登録を受けることができない旨規定しているのは、このような商標は、指定商品又は指定役務との関係で、「その商品の産地、販売地、品質、形状その他の特性」又は「その役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途その他の特性」を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品又は自他役務の識別力を欠くものであることによるものと解される。
そうすると、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するというためには、審決の時点において、本願商標が、その指定商品又は指定役務との関係で、「その商品の産地、販売地、品質、形状その他の特性」又は「その役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途その他の特性」を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり、本願商標の指定商品又は指定役務の取引者及び需要者によって本願商標がその指定商品又は指定役務に使用された場合に、将来を含め、商品の上記特性を表示したものと一般に認識されるものであれば足りると解される(知財高裁平成27年(行ケ)第10107号同年10月21日判決、知財高裁平成27年(行ケ)第10061号同年9月16日判決参照)。
2 本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、「血流解析」文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「血流」の文字は、「体内の血液の流れ。」を意味し、「解析」の文字は、「物事をこまかく解き開き、理論に基づいて研究すること。」(いずれも「広辞苑 第七版」発行者:株式会社岩波書店)を意味する語であるから、本願商標は、構成全体として、「血流の解析」ほどの意味合いを認識させる。
そして、別掲2のとおり、当審補正商品及び役務に関連する分野において、血流を可視化して解析することが「血流解析」といわれており、「血流解析」を行うための機器やソフトウェアの提供や研究開発がされていることが確認できる。
そうすると、本願商標を、当審補正商品及び役務に使用しても、これに接する需要者・取引者は、当該商品及び役務が、「血流の解析を内容とする商品及び役務」、「血流の解析用の商品及び役務」であることを理解するにとどまるから、本願商標は、商品の品質及び用途並びに役務の質(内容)及び用途を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものである。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
3 本願商標の当審補正商品及び役務における周知性について
請求人は、令和5年5月15日付けの審判請求書及び同6年7月22日付けの回答書において、本願商標の実際の使用状況や需要者の認知度を考慮すると、本願商標は当審補正商品及び役務に関して需要者の間において周知である旨主張し、当審において、甲第1号証ないし甲16号証(枝番号を含む。)を提出している。
本願商標は、上記2のとおり、商標法第3条第1項第3号該当するものであり、上記請求人の主張は、上記2の判断に影響を及ぼすものではないが、同条第2項とは関連するため、請求人は同項該当性を明示して主張してはいないものの、以下、言及する。
(1)商標法第3条第2項について
商標法第3条第1項第3号から第5号に該当する商標について、同法第3条第2項所定の「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」に至ったか否かを判断するに当たっては、当該商標と外観において同一と見られる標章が指定商品又は指定役務とされる商品又は役務に使用されたことを前提として、その使用開始時期、使用期間、使用地域、使用態様、当該商品又は役務の販売数量又は売上高等及び当該商品又は役務やこれに類似した商品又は役務における当該商標又は標章に類似した他の標章の存否などの事情を総合的に考慮すべきものといえる(知財高裁平成27年(行ケ)第10019号同年10月29日判決参照)。
また、同法第3条第2項にいう「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」とは、同法第3条第1項第3号ないし第5号に該当する出所表示機能を欠く商標であっても、永年使用されることにより、特定の者の出所表示としてその商品又は役務の需要者の間で全国的に認識されるに至っている(特別顕著性がある)をいうと解される(知財高裁平成19年(行ケ)第10127号同年11月22日判決参照)。
そこで、本願商標が使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるに至っているか否かについて、上記判決に照らし、以下、検討する。
(2)事実認定
請求人の提出に係る証拠及びその主張によれば、次の事実が認められる。
ア 請求人及び商標の使用開始時期、使用期間、使用地域、使用態様について
(ア)請求人である西野輝泰氏及び板谷慶一氏(以下、「板谷氏」という。)は医師であり、板谷氏は、ウィキペディアの記載によると、心臓血管外科医であると同時に流体力学研究者でもあり、数値流体力学、心臓MRI、心臓超音波検査による「血流解析」の第一人者であるとされ(甲3-2)、2012年に北里大学にて「血流解析学講座」を設立、2013年に「血流解析」に関する研究会である血流会を創設、2016年に京都府立医科大学で「心臓血管血流解析学講座」を設立している(請求人の主張)。
(イ)請求人は、2015年にCFD社を設立し(甲3-1)、CFD社は、血流を可視化して解析する「血流解析」を行うため、2016年にCT画像を元に血流のシミュレーションとその可視化を行うサービスである「iTSimulation」の提供を、2017年にMRIのデータを元に血流の解析とその可視化ができるソフトウェアである「iTFlow」の提供を、2018年に超音波画像を元に血流の解析とその可視化ができるソフトウェアである「iTEcho」の提供を開始しており(甲8-1、請求人の主張)、その需要者は主に大学病院の心臓血管外科、心臓血管外科医である(請求人の主張)。
なお、請求人及びCFD社と同様に血流のシミュレーションをビジネスとして展開する(あるいは展開しようとしている)企業は、請求人のほかに4社、既存機器の付帯機能としてのサービスも含めると6社あり、「2015年頃を境として,血流シミュレーションソフトウェアが・・・市場に提案されるようになってきた」、「・・・現在,多くの血流シミュレーションソフトウェアおよびそれに基づくビジネスが展開されつつある・・・」といわれている(甲1-5)。
以下、請求人及びCFD社をまとめて「請求人等」といい、請求人等が「血流解析」のために販売、提供しているソフトウェアや医療分析等に係る商品及び役務を、「請求人商品及び役務」という。
(ウ)本願商標「血流解析」の文字は、2012年に北里大学にて設立された「血流解析学講座」の講座名の一部としての使用、2016年に京都府立医科大学設立された「心臓血管血流解析学講座」の講座名の一部としての使用、CFD社のウェブサイト及びパンフレット(甲3-1、甲8-1、甲11-1、甲11-2)での使用のほか、CFD社から大学病院等への納入実績を示す請求書(甲7、甲16)において、「血流解析シミュレーション」(甲7-3など)、「大動脈血流解析」(甲7-8など)、「血流解析[iTFlow]サービス」(甲16-1など)等の記載がされていることが確認できる。
もっとも、請求人商品及び役務に係る本願商標の使用開始時期、使用地域、使用態様は確認することができない。
また、上記CFD社のウェブサイト及びパンフレットにおいて、請求人商品及び役務は、「iTSimulation」、「iTFlow」及び「iTEcho」の文字を使用して紹介されている。
イ 使用商品及び役務の販売数量、売上高、我が国における市場占有率について
請求人等は、上記ア(イ)のとおり、請求人商品及び役務の販売及び提供を行っていることが認められるものの、請求人等が販売及び提供した請求人商品及び役務の具体的な数量、売上高、我が国における市場占有率等については、日本国内にある81の大学病院のうち、およそ63%にあたる51病院への販売実績があると主張するものの、その具体的な証拠の提出はなく、その他、客観的に評価できる証拠が提出されておらず、確認することができない。
なお、CFD社から大学病院等への請求人商品及び役務の納入実績を示す請求書(甲7、甲16)において、請求人商品及び役務の名称が記載されている「詳細」欄には、「iTFlow」(甲7-1など)、「Flow MRI解析」(甲7-2)、「CFD解析」(甲7-5など)、「4D Flow MRI 解析」(甲7-10など)、「Echo Flow Dynamics」(甲7-20など)、「心臓血管血流シミュレーション(先天性)」(甲7-30)、「心血管血流シミュレーション」(甲7-56)、「血流シミュレーション」(甲7-59)、「iTSimulation」(甲7-67など)、「iTEcho」(甲7-82など)の文字が、「血流解析」の文字とともに記載されているものや、「血流解析」の文字を使用することなく記載されているものが多数見られる。
ウ 広告宣伝のされた期間・地域及び規模について
板谷氏は、「血流解析」に関する論文及び著書の発表、講演や講義、学会等への出展を行っており(甲3-3~甲3-5、甲13、甲14)、また、「TOMORUBA」ウェブサイト(甲2-4)、「ZEROICHI」のウェブサイト(甲4-2)、「ZDNET」のウェブサイト(甲8-3)及びテレビ番組(甲15-1)においては、請求人商品及び役務が紹介されていることがうかがえるが、これらのほかに、請求人等が、請求人商品及び役務に関して行った、本願商標の広告宣伝の期間・地域及び規模等について客観的に評価できる証拠が提出されておらず、確認することができない。
また、請求人が、請求人商品及び役務を学会等へ出展した際に使用されたポスターにおいては、「iTEcho」(甲13-1など)、「iTFlow」(甲13-1など)、「iTSimulation」(甲13-5など)の文字が大きく記載され、請求人商品及び役務が紹介されている。
さらに、「ZEROICHI」のウェブサイト(甲4-2)では、その本文において、「ITSimulation」の文字を使用して請求人商品及び役務が紹介されており、「ZDNET」のウェブサイト(甲8-3)では、その見出し及び本文において、「iTFlow2」の文字を使用して請求人商品及び役務が紹介されており、テレビ番組(甲15-1)においても、「血流解析」の文字だけでなく、「iTFlow」の文字も使用して請求人商品及び役務が紹介されている。
(3)判断
以上認定した事実を総合すれば、医師である請求人は、2015年にCFD社を設立し、2016年から2018年にかけて血流を可視化して解析する「血流解析」を行うためのソフトウェア「iTSimulation」、「iTFlow」及び「iTEcho」の提供を開始し、その需要者は主に大学病院の心臓血管外科、心臓血管外科医であること、板谷氏は、「血流解析」に関する論文及び著書の発表、講演や講義、学会等への出展を行っており、ウェブサイト及びテレビ番組において、請求人商品及び役務が紹介されていることが認められる。
しかしながら、本願商標は、以下に述べるとおり、未だ自他識別力を獲得するまでには至っていないと判断する。
ア 本願商標が我が国において全国的な周知性を獲得していないこと
(ア)本願商標の使用について
上記(2)ア(ウ)のとおり、本願商標「血流解析」の文字は、大学の講座名の一部としての使用、CFD社のウェブサイト及びパンフレットでの使用のほか、CFD社から大学病院等への納入実績を示す請求書の記載の一部においての使用が確認できる。
しかしながら、大学の講座名の一部として本願商標「血流解析」の文字が使用されているからといって、本願商標が、請求人商品及び役務に使用されているとはいえない。
また、上記(2)ア(イ)のとおり、請求人商品及び役務は、「iTSimulation」、「iTFlow」及び「iTEcho」の文字を使用して提供が開始されたものであるところ、同ア(ウ)、同イ及びウのとおり、CFD社のウェブサイト及びパンフレット、CFD社から大学病院等への請求人商品及び役務の納入実績を示す請求書、学会等へ出展した際に使用されたポスター、他者のウェブサイト、テレビ番組においては、請求人商品及び役務の名称として、「iTSimulation」、「iTFlow」及び「iTEcho」等の文字が使用されている事例が多数見られることから、「血流解析」の文字が、単独で、当審補正商品及び役務の需要者において、請求人等の商標として認識されているとはいい難いものである。
その他、請求人商品及び役務に係る本願商標の使用開始時期、使用地域、使用態様を確認することができる証拠は提出されていない。
したがって、本願商標は、当審補正商品及び役務について、請求人等により、永年の間、一貫して使用されてきたとはいえないものである。
(イ)請求人商品及び役務の販売実績について
上記(2)ア(イ)のとおり、請求人等は、請求人商品及び役務の販売及び提供を行っていることが認められるものの、同イのとおり、請求人等が販売及び提供した請求人商品及び役務の具体的な数量、売上高、我が国における市場占有率等について、日本国内にある81の大学病院のうち、およそ63%にあたる51病院への販売実績があると主張するものの、その具体的な証拠の提出はなく、その他、客観的に評価できる証拠が提出されておらず、確認することができない。
したがって、本願商標は、当審補正商品及び役務の需要者の間において、請求人等の商品及び役務の出所表示として全国的に周知であるとはいえないものである。
(ウ)請求人商品及び役務の宣伝広告について
上記(2)ウのとおり、板谷氏は、「血流解析」に関する論文及び著書の発表、講演や講義、学会等への出展を行っている。
しかしながら、論文及び著書の発表、講演や講義により、板谷氏が「血流解析」の研究者であることは把握できるとしても、本願商標が請求人商品及び役務に使用されているとはいえないものである。
そうすると、板谷氏による「血流解析」に関する論文及び著書の発表、講演や講義が行われているからといって、当審補正商品及び役務の需要者の間における本願商標「血流解析」の認識について推し量ることはできず、「血流解析」の文字が、当審補正商品及び役務の需要者において、請求人等の商標として認識されているとはいい難いものである。
また、請求人商品及び役務を学会等へ出展した際に使用されたポスターにおいては、「iTEcho」、「iTFlow」、「iTSimulation」の文字が大きく記載され、請求人商品及び役務が紹介されている。
さらに、請求人商品及び役務が紹介されているウェブサイト及びテレビ番組は僅かな数であることに加え、これらの媒体においても、「血流解析」の文字だけでなく、「iTEcho」、「iTFlow」、「iTSimulation」の文字が使用されている。
その他、請求人等が、請求人商品及び役務に関して行った、広告宣伝の期間・地域及び規模等について客観的に評価できる証拠が提出されておらず、確認することができない。
したがって、「血流解析」の文字が、単独で、当審補正商品及び役務の需要者において、請求人等の商標として認識されているとはいい難いものであり、本願商標は、当審補正商品及び役務の需要者の間において、請求人等の商品及び役務の出所表示として全国的に周知であるとはいえないものである。
(エ)以上からすると、本願商標は、我が国において全国的な周知性を獲得するに至ったとはいえないものである。
イ 他社による「血流解析」の使用例が多数存在すること
別掲2のとおり、当審補正商品及び役務に関連する分野において、請求人等以外の第三者により、血流を可視化して解析することが「血流解析」といわれており、血流を可視化して解析する「血流解析」を行うための機器やソフトウェアの提供や研究開発が行われていることが確認できるから、本願商標は、当審補正商品及び役務の需要者の間で、請求人等の出所表示として認識されるに至っているとは認められないものである。
(4)小括
以上のとおり、本願商標は、「iTEcho」、「iTFlow」、「iTSimulation」等の文字とともに使用されることが多いこと、請求人商品及び役務に係る本願商標の使用開始時期、使用地域、使用態様を確認することができないこと、請求人商品及び役務の具体的な売上高等が確認できないこと、宣伝広告は僅かな件数しか確認できないこと、本願商標に類似する請求人等以外の第三者の標章が多数存在することなどを踏まえると、本願商標は、請求人等により、永年の間、一貫して使用されてきたものとはいえず、我が国において、請求人等の出所表示として、その商品又は役務の需要者の間で全国的な周知性を獲得するに至ったものとはいえないものである。
そうすると、本願商標は、使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品及び役務であることを認識することができるものとは認められない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するものではない。
4 請求人の主張について
(1)請求人は、「当審補正商品及び役務は日本の病院でもごく限られた大学病院等の病院でしか使用されていない特殊なものであり、また、原審及び審尋に掲載された血流解析と当審補正商品及び役務とは相違している。当審補正商品及び役務は一般的にはFFRCTまたは血流動態解析等と呼ばれており、その商品・役務の品質・質等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標ではない。」旨主張する。
しかしながら、上記1のとおり、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するというためには、審決の時点において、本願商標が、その指定商品又は指定役務との関係で、「その商品の産地、販売地、品質、形状その他の特性」又は「その役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途その他の特性」を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり、本願商標の指定商品又は指定役務の取引者及び需要者によって本願商標がその指定商品又は指定役務に使用された場合に、将来を含め、商品の上記特性を表示したものと一般に認識されるものであれば足りると解されている。
そして、上記2のとおり、本願商標は、構成全体として、「血流の解析」ほどの意味合いを認識させるものである。
また、別掲2のとおり、当審補正商品及び役務に関連する分野において、血流を可視化して解析することが「血流解析」といわれており、「血流解析」を行うための機器やソフトウェアの提供や研究開発がされていることが確認できる。
そうすると、仮に、当審補正商品及び役務においては、FFRCTまたは血流動態解析等の名称が一般的に使用されているとしても、本願商標の語義及び別掲2の事例を踏まえると、本願商標を当審補正商品及び役務に使用するときは、これに接する需要者・取引者は、当該商品及び役務が、「血流の解析を内容とする商品及び役務」、「血流の解析用の商品及び役務」であることを理解するにとどまり、本願商標は、商品の品質及び用途並びに役務の質(内容)及び用途を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものである。
請求人は、別掲2の事例について、当審補正商品及び役務とは相違していると主張するが、商標法第3条第1項第3号は、取引者、需要者に指定商品の品質等を示すものとして認識され得る表示態様の商標につき、それ故に登録を受けることができないとしたものであって、該表示態様が、商品の品質(役務の質)を表すものとして必ず使用されるものであるとか、現実に使用されている等の事実は、同号の適用において必ずしも要求されないものと解されるものである(東京高裁平成12年(行ケ)第76号,同年9月4日判決参照)。
そして、当審補正商品及び役務は、別掲1のとおりであるところ、別掲2の事例は、血流を可視化して解析することが「血流解析」といわれており、また、「血流解析」を行うための機器やソフトウェアの提供及び研究開発がされていることを示すものであり、当審補正商品及び役務の分野との関連性を有する事例であるといえる。
(2)請求人は、「本願商標が、品質等を表示する商標であったとしても、請求人等の長年における研究と多数の学会、研究会での紹介等も相まって、本願商標は審判請求人の商標であると全国的周知であることは明らかである。当審補正商品及び役務の需要者は主に大学病院の心臓血管外科、心臓血管外科医であって、その需要者である大学病院の63%の病院への販売実績があるから、需要者の間に周知であることは明らかである。」旨主張する。
しかしながら、学会等での紹介等により、請求人等が「血流解析」に関する研究をしていることはうかがえるとしても、上記3(3)ア(ウ)のとおり、本願商標が請求人商品及び役務に使用されているとはいえないものである。
また、当審補正商品及び役務の主な需要者である心臓血管外科、心臓血管外科医が属する大学病院のうち63%の大学病院への販売実績があると請求人は主張するが、上記3(3)ア(イ)のとおり、当該主張を裏付ける客観的な証拠はなく、その他、請求人等が販売及び提供した請求人商品及び役務の具体的な数量、売上高、我が国における市場占有率等について、客観的に評価できる証拠が提出されていない。
さらに、上記3(2)ア(イ)のとおり、請求人等と同様に血流のシミュレーションをビジネスとして展開する(あるいは展開しようとしている)企業は、請求人のほかにも4社(既存機器の付帯機能としてのサービスも含めると6社)あり、また、「2015年頃を境として,血流シミュレーションソフトウェアが・・・市場に提案されるようになってきた.」、「・・・現在,多くの血流シミュレーションソフトウェアおよびそれに基づくビジネスが展開されつつある・・・」とされていることからも、本願商標が、請求人等の出所表示として、需要者の間に周知であるとは評価し難い。
加えて、当審補正商品及び役務の需要者の間における本願商標「血流解析」の認識について推し量ることができる証拠は提出されていない。
以上のほか、上記3(4)のとおり、本願商標は、「iTEcho」、「iTFlow」、「iTSimulation」等の文字と共に使用されることが多いこと、請求人商品及び役務に係る本願商標の使用開始時期、使用地域、使用態様を確認することができないこと、宣伝広告は僅かな件数しか確認できないこと、本願商標に類似する請求人等以外の第三者の標章が多数存在することなども踏まえると、本願商標は、請求人等により、永年の間、一貫して使用されてきたものとはいえず、我が国において、請求人等の出所表示として、その商品又は役務の需要者の間で全国的な周知性を獲得するに至ったものとはいえないものである。
(3)したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができず、その他、請求人の主張は、採用するべき事情はない。
5 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、かつ、同条第2項に規定する要件を具備するものではから、登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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