特許拒絶査定不服審判
2023-006267
フレキシブルプリント配線板及びその製造方法
- 審判番号
- 2023-006267
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-560658
- 請求日
- 2023年04月17日
- 審決日
- 2024年01月29日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】住友電気工業株式会社
- 【請求人代理人】池田 義典
- 【請求人】住友電工プリントサーキット株式会社
- 【請求人代理人】池田 義典
- 審判長/審判官
- 審判長 岩間 直純
- 審判官 山澤 宏
- 審判官 山内 裕史
- 分類
- P18 .121-WY (H05K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-560658「フレキシブルプリント配線板及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年10月 7日国際公開、WO2021/200614、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2021年3月26日(優先権主張 2020年4月1日(以下、「優先日」という。) 日本国)を国際出願日とする出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
令和4年 7月21日付け:拒絶理由通知書
令和4年10月31日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年 2月15日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。)
令和5年 4月17日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 原査定の概要
原査定(令和5年2月15日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
(進歩性)
本願請求項1-4に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明、および、引用文献6に記載された技術事項に基づいて、本願請求項5-7に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明、および、引用文献2、6に記載された技術事項に基づいて、または、本願請求項1-3、5-7に係る発明は、以下の引用文献2に記載された発明、および、引用文献6に記載された技術事項に基づいて、本願請求項4、8-10に係る発明は、以下の引用文献2に記載された発明、および、引用文献3-6に記載された技術事項に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1.国際公開第2007/039992号
2.特開2014-082320号公報
3.特開2006-057177号公報(周知技術を示す文献)
4.国際公開第2016/104530号(周知技術を示す文献)
5.特表2012-522898号公報(周知技術を示す文献)
6.特開2011-14721号公報(周知技術を示す文献)
第3 本願発明
本願の請求項1ないし10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明10」という。)は、令和5年4月17日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
ベースフィルムと、上記ベースフィルムの少なくとも一方の面に設けられる複数本の配線を有する配線層とを備えるフレキシブルプリント配線板であって、
上記配線の平均線幅が30μm以下、平均間隔が30μm以下であり、
上記配線が銅系めっき層を有し、
上記銅系めっき層の電気抵抗率が1.68×10-8Ω・mより大きく、
上記銅系めっき層における銅結晶粒の平均直径が2μm以上100μm以下であり、
上記銅系めっき層が硫黄、窒素及び炭素を含有し、
上記銅系めっき層中の上記硫黄の含有量が0.0001質量%以上0.005質量%以下であり、上記窒素の含有量が0.0001質量%以上0.005質量%以下であり、上記炭素の含有量が0.001質量%以上0.01質量%以下であるフレキシブルプリント配線板。
【請求項2】
上記銅系めっき層の電気抵抗率が1.73×10-8Ω・m以上2.10×10-8Ω・m以下である請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項3】
上記銅系めっき層の電気抵抗率が1.76×10-8Ω・m以上1.93×10-8Ω・m以下である請求項2に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項4】
上記銅系めっき層が硫黄、窒素及び炭素を含有し、
上記銅系めっき層中の上記硫黄の含有量が0.0005質量%以上0.001質量%以下であり、上記窒素の含有量が0.0005質量%以上0.001質量%以下であり、上記炭素の含有量が0.002質量%以上0.005質量%以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項5】
上記配線が、上記ベースフィルムの上記一方の面に接する第1導電性下地層をさらに含み、
上記銅系めっき層は上記第1導電性下地層の上記ベースフィルムに接する面とは反対の面に設けられ、
上記第1導電性下地層が、上記ベースフィルムの上記一方の面に接する第1層と上記第1層の上記ベースフィルムに接する面とは反対の面に設けられる第2層を含む請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項6】
上記第1層が、ニッケル、クロム、チタン及び銀よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する請求項5に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項7】
上記第2層が、上記第2層において50質量%以上の銅を含有する請求項5又は請求項6に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項8】
ベースフィルムと、上記ベースフィルムの少なくとも一方の面に設けられる複数本の配線を有する配線層とを備えるフレキシブルプリント配線板の製造方法であって、
上記配線の平均線幅が30μm以下、平均間隔が30μm以下であり、
上記配線が銅系めっき層を有し、
上記銅系めっき層の電気抵抗率が1.68×10-8Ω・mより大きく、
上記銅系めっき層における銅結晶粒の平均直径が2μm以上100μm以下であり、
上記銅系めっき層が硫黄、窒素及び炭素を含有し、
上記銅系めっき層中の上記硫黄の含有量が0.0001質量%以上0.005質量%以下であり、上記窒素の含有量が0.0001質量%以上0.005質量%以下であり、上記炭素の含有量が0.001質量%以上0.01質量%以下であり、
上記ベースフィルムの少なくとも一方の面に導電性下地層を積層する工程と、
上記導電性下地層の表面にレジストパターンを形成する工程と、
めっき液中にて、上記導電性下地層上の上記レジストパターンの開口部に電気めっきすることにより、銅系めっき層を形成する工程と、
上記レジストパターン及び上記導電性下地層における上記銅系めっき層の非積層領域を除去する工程とを備え、
上記めっき液が第1有機化合物、第2有機化合物及び第3有機化合物を含有し、
上記第1有機化合物が3,3’-ジチオビス(1-プロパンスルホン酸)2ナトリウムを含み、
上記第2有機化合物がポリエチレングリコールを含み、
上記第3有機化合物が窒素含有有機化合物を含むフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項9】
上記第3有機化合物が、ジアリルアンモニウムと二酸化硫黄との共重合体、ポリビニルイミダゾリウム4級化物、ビニルピロリドンとビニルイミダゾリウム4級化物との共重合体及び4級ポリアミンから選ばれる1種以上である請求項8に記載のフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項10】
上記めっき液中、
上記第1有機化合物の含有量は0.0001質量%以上1質量%以下であり、
上記第2有機化合物の含有量は0.004質量%以上5質量%以下であり、
上記第3有機化合物の含有量は0.0001質量%以上0.5質量%以下である請求項8又は請求項9に記載のフレキシブルプリント配線板の製造方法。」
第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審により付与。以下同様。)
A 「技術分野
[0001] 本発明は、2層フレキシブル基板に関し、より具体的には、絶縁体フィルム上に銅層を形成した2層フレキシブル基板に関する。
背景技術
[0002] フレキシブル配線板を作製するために用いる基板として、2層フレキシブル基板が注目されている。2層フレキシブル基板は絶縁体フィルム上に接着剤を用いることなく直接銅導体層を設けたもので、基板自体の厚さを薄くすることができる上に、被着させる銅導体層の厚さも任意の厚さに調整することができるという利点を有する。このような2層フレキシブル基板を製造する場合は、絶縁体フィルム上に下地金属層を形成して、その上に電気銅めっきを行うのが一般的である。しかし、このようにして得られた下地金属層にはピンホールが多数発生し、絶縁フィルム露出部が生じ、薄膜の銅導体層を設けた場合は、ピンホールによる露出部分を埋めることができず、銅導体層表面にもピンホールが生じ、配線欠陥を生じる原因となっていた。この問題を解決する方法として、たとえば特許文献1に、絶縁体フィルム上に下地金属層を乾式めっき法により作製し、次に下地金属層上に1次電気銅めっき被膜を形成した後、アル力リ溶液処理を施し、しかる後無電解銅めっき被膜層を被着させ、最後に2次電気銅めっき被膜層を形成する2層フレキシブル基板の製造方法が記載されている。しかしこの方法では工程が複雑となる。」
B 「発明を実施するための最良の形態
[0008] 本発明の2層フレキシブル基板は、絶縁体フィルム上に銅層を形成したものであるが、絶縁体フィルム上に下地金属層を形成した上に、所定の厚さの銅層を電気めっきにより形成させることが好ましい。
[0009] 本発明の用いる絶縁体フィルムとしては、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、フェノ一ル樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリエチレン樹脂等の熱可塑性樹脂、ポリアミド等の縮合ポリマー、等の樹脂の1種または2種以上の混合物からなるフィルムが挙げられる。ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム等が好ましく、ポリイミドフィルムが特に好ましい。ポリイミドフィルムとしては、各種ポリイミドフィルム、例えば、カプトン(東レデュボン製)、ユーピレックス (宇部興産製)等が挙げられる。
絶縁体フィルムとしては、厚さ10~50μmのフィルムが好ましい。
[0010] 絶縁体フィルム上には、Ni、Cr、Co、Ti、Cu、Mo、Si、V等の単独元素または混合系などによる下地金属層層を、蒸着、スパッタ、またはめっき法等の公知の方法により形成させることができる。
下地金属層の厚さは10~500nmが好ましい。
[0011] 本発明の2層フレキシブル基板は、これまで述べてきた下地金属層を形成した絶縁体フィルム上に、常法の電気めっきにより銅めっき層を形成したものである。
このときめっき液としては、通常の酸性銅めっき液を使用することができ、硫酸銅水溶液に、塩素、ノニオン系界面活性剤、硫黄系有機化合物を添加剤として混合した水溶液を用いることが好ましく、膜厚3~30μmの銅層を形成することが好ましい。」
C 「実施例
[0022] 次に本発明を実施例によって説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1~2、比較例1~3
以下のめっき条件で下地金属層を有するポリイミドフィルムに電気めっきを行い、約8μmの銅被膜を作製した。添加剤及びその添加量は表1記載の通りである。
液容量: 約 800ml
アノード:鉛電極
力ソード:ポリイミドフィルムを卷きつけた回転電極
下地金属層を有するポリイミドフィルム:
37.5μm厚のカプトンE (デュポン製)上にNiCrを10nm+Cuを2000Åスパッタ成膜したもの。
電流時間:1300As
電流密度:5→10→20→30A/dm2と変化(各電流密度で40秒ずつ保持)
流速: 190r,p.m.
Cu: 70g/L
H2SO4:60g/L
Cl: 75ppm
[0023] 得られた銅ポリイミド2層基板の表面粗さ (Ra)(μm) (算術平均粗さ)を JIS B 0601に準じて測定し、ポリイミドフィルムから 1μmのところの銅の平均結晶粒径を求め、欠陥の個数、エッチング特性、レジストとの密着性を評価した。
[0024] 平均結晶粒径:
平均結晶粒径は、FIBより断面を切断した後、SIMで観察し、ポリイミドから1μmの高さの部分(10m幅)の結晶粒径の平均値を求めた。結果は表1に示す。
[0025] 欠陥の個数:
欠陥の個数は、銅層表面1dm2の欠陥数 (微小な突起またはくぼみの数)を目視にて求めた。尚、結果は表1に示す。
[0026] エッチング特性:
エッチング特性は、エッチング率により評価した。エッチング率は、20μmピッチのラインを形成し、下記に示す計算式に基づき計算した。
エッチング率=h/{(b-t)/2}(=tanθ)
h、b、tは図1に示すように、h=エッチングの深さ、b=基板表面のエッチングの幅、t=エッチング底面のエッチングの幅を示す。
結果は表1に示す。」
D 「[図 1]
[図:0001407627000001.jpg]
」
E 「[0028] [表 1]
[図:0001407627000002.jpg]
」
F 上記Cの段落[0022]、[0026]によれば、実施例1~2、比較例1~3として得られた2層フレキシブル基板に、エッチングにより20μmピッチのラインを形成することが記載されている。また、ライン(配線)が形成された2層フレキシブル基板はフレキシブル配線板といえる。
してみると、引用文献1には、比較例2として、2層フレキシブル基板に、エッチングにより20μmピッチのライン(配線)を形成したフレキシブル配線板が記載されているといえる。
G 上記Bの段落[0008]、Cの段落[0022]によれば、比較例2として、ポリイミドフィルム上に下地金属層を形成した上に、約8μmの厚さの銅層を電気めっきにより形成させた2層フレキシブル基板が記載されている。
H 上記Bの段落[0011]、Cの段落[0022]、Eの[表 1]によれば、比較例2のめっき液として、硫酸銅水溶液、塩素、SPS(ビス(3-スルフォプロピル)ジ-スルフィド2ナトリウム)を30ppm、PEG(ポリエチレングリコール)を50ppm、JGB(ヤーヌス-グリーンB(含窒素化合物))を30ppm、混合したものを用いることが記載されている。
また、Cの段落[0022]によれば、比較例2におけるめっきは、電流密度を5→10→20→30A/dm2と変化(各電流密度で40秒ずつ保持)させて行うことが記載されている。
I Cの段落[0024]、Eの[表 1]によれば、比較例2の、ポリイミドから1μmの高さの部分(10m幅)の結晶粒径の平均値が、0.9μmであることが記載されているといえる。
(2)引用発明1
上記(1)から、引用文献1には、特に比較例2に注目すると、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「ポリイミドフィルム上に下地金属層を形成した上に、約8μmの厚さの銅層を電気めっきにより形成させた2層フレキシブル基板に、20μmピッチのライン(配線)をエッチングで形成したフレキシブル配線板において、
銅層の電気めっきは、めっき液として、硫酸銅水溶液、塩素、SPS(ビス(3-スルフォプロピル)ジ-スルフィド2ナトリウム)を30ppm、PEG(ポリエチレングリコール)を50ppm、JGB(ヤーヌス-グリーンB(含窒素化合物))を30ppm、混合したものを用いて、電流密度を5→10→20→30A/dm2と変化(各電流密度で40秒ずつ保持)させて電気めっきを行ったものであって、
ポリイミドから1μmの高さの部分(10m幅)の結晶粒径の平均値が、0.9μmである、
フレキシブル配線板。」
2 引用文献2について
(1)引用文献2記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。
A 「【0041】
(5)フレキシブル配線板
上記2層フレキシブル基板の少なくとも片面に、配線パターンを個別に形成することによりフレキシブル配線板が得られる。また、基板の所定の位置に、層間接続のためのヴィアホールを形成して、各種用途に用いることもできる。
【0042】
より具体的な配線パターンの形成方法としては、例えば、次の(A)~(C)がある。
(A)高密度配線パターンを2層フレキシブル基板の少なくとも片面に個別に形成する。
(B)必要に応じて、その配線層が形成された2層フレキシブル基板に、配線層と2層フレキシブル基板とを貫通するヴィアホールを形成する。
(C)場合によっては、そのヴィアホール内に、導電性物質を充填してホール内を導電化する。
【0043】
この配線パターンの形成方法としては、従来公知のセミアディティブ法を使用する。
例えば、少なくとも片面に下地金属層と銅被膜層が順に形成された2層フレキシブル基板を準備して、その銅被膜層表面を化学研磨した上に、ドライフィルムレジストをラミネートして感光性レジスト膜を形成後、露光・現像してパターニングを行い、次いで、得られた回路パターンから露出した通電に使用している下地金属層と銅被膜層からなる金属膜の積層体の上に、電解銅めっきにて銅めっき層を形成する。
さらに、回路パターンを剥離除去した後、フラッシュエッチングで、銅めっき層の周囲に露出した通電用の銅被膜層を溶解除去して、最後に銅めっき層の周囲に露出した下地金属層を溶解除去する。
その後、必要に応じて、配線パターンの表面に、スズなどの金属めっきを施し、ソルダーレジストなどを形成することにより、フレキシブル配線板を得る。」
B 「【実施例1】
【0053】
35μm厚のポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製、商品名「ユーピレックス(登録商標)35SGA」)の片面に、下地金属層として、20質量%Cr-Ni合金ターゲット(住友金属鉱山株式会社製)を用いた直流スパッタリング法により、20質量%Cr-Ni合金下地金属層を20nmの厚さに成膜した。続いて、その上に銅薄膜層として、Cuターゲット(住友金属鉱山株式会社製)を用いた直流スパッタリング法により、200nmの厚さに成膜した。その後、電気めっきにより、銅めっき被膜層を0.8μm積層し、銅薄膜層と合わせた銅被膜層を1μmとした。
用いた銅めっき液は、温度:27℃、pH:1以下の硫酸銅溶液であり、硫黄原子を持つ有機化合物としてSPS(BiS(3-sulfopropyl)disulfide)を8質量ppm含有させた。
【0054】
銅めっき被膜表面から深さ0.4μmまでの銅めっき被膜中の硫黄濃度を測定したところ、60質量ppmであった。
その後、上記中心線平均粗さ(Ra)の測定方法に従って、得られた基板の中心線平均粗さ(Ra)を測定した。結果を表1に示す。
【0055】
次に、作製した基板に、ドライフィルムレジスト(日立化成工業株式会社製、RY-3315)を積層した後、露光、現像し、配線ピッチが20μm(ライン幅;10μm、スペース幅;10μm)となるように、回路パターンを形成した。レジスト層の剥離は確認されなかった。
【0056】
次いで、下地金属層と銅被膜層(銅薄膜層及び銅めっき被膜からなる)で構成する金属膜の積層体を通電に使用して、露出した銅めっき被膜の上に、硫酸銅を主成分とする液を用いた電解めっき法により、銅めっき層を形成した。銅めっき層を形成後、濃度4%の水酸化ナトリウム水溶液を用いて、50℃の液温で120秒間浸漬処理し、銅めっき層の周囲の回路パターンを剥離、除去した。最後に、露出した銅めっき被膜層を、濃度10%の硫酸+濃度30%の過酸化水素溶液を用いてエッチング除去し、更に、濃度10%の塩酸+濃度10%の硫酸溶液で、下地金属層をエッチング除去した。
【0057】
配線の断面をSEMで観察したところ、配線底部のアンダーカット量比率(W1-W2)/2W1が、後述する比較例に比して小さく、0.03であった。」
C 上記Aの段落【0041】には、2層フレキシブル基板の少なくとも片面に、配線パターンを個別に形成することにより得られるフレキシブル配線板が記載されている。
D 上記Aの段落【0043】、Bの段落【0053】には、2層フレキシブル基板は、35μm厚のポリイミドフィルムの片面に、下地金属層として、20質量%Cr-Ni合金下地金属層を20nmの厚さに成膜し、その上に銅薄膜層として、200nmの厚さに成膜した後、電気めっきにより、銅めっき被膜層を0.8μm積層し、銅薄膜層と合わせた銅被膜層を1μmとして作成することが記載されている。
E 上記Aの段落【0043】、Bの段落【0055】、【0056】には、フレキシブル配線板は、作成した2層フレキシブル基板に、ドライフィルムレジストを積層した後、露光、現像し、配線ピッチが20μm(ライン幅;10μm、スペース幅;10μm)となるように、回路パターンを形成し、次いで、下地金属層と銅被膜層(銅薄膜層及び銅めっき被膜からなる)で構成する金属膜の積層体を通電に使用して、露出した銅めっき被膜の上に、硫酸銅を主成分とする液を用いた電解めっき法により、銅めっき層を形成した後、銅めっき層の周囲の回路パターンを剥離、除去し、露出した銅めっき被膜層を、エッチング除去し、更に、下地金属層をエッチング除去したものであることが記載されている。
(2)引用発明2
上記(1)から、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「2層フレキシブル基板の少なくとも片面に、配線パターンを個別に形成することにより得られるフレキシブル配線板において、
2層フレキシブル基板は、35μm厚のポリイミドフィルムの片面に、下地金属層として、20質量%Cr-Ni合金下地金属層を20nmの厚さに成膜し、その上に銅薄膜層として、200nmの厚さに成膜した後、電気めっきにより、銅めっき被膜層を0.8μm積層し、銅薄膜層と合わせた銅被膜層を1μmとして作成したものであって、
フレキシブル配線板は、作成した2層フレキシブル基板に、ドライフィルムレジストを積層した後、露光、現像し、配線ピッチが20μm(ライン幅;10μm、スペース幅;10μm)となるように、回路パターンを形成し、次いで、下地金属層と銅被膜層(銅薄膜層及び銅めっき被膜からなる)で構成する金属膜の積層体を通電に使用して、露出した銅めっき被膜の上に、硫酸銅を主成分とする液を用いた電解めっき法により、銅めっき層を形成した後、銅めっき層の周囲の回路パターンを剥離、除去し、露出した銅めっき被膜層を、エッチング除去し、更に、下地金属層をエッチング除去したものである、
フレキシブル配線板。」
3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、次の事項が記載されている。
A 「【0035】
本発明においては、上述したような電気銅めっき浴を用いて基板上に形成されたビアホールをビアフィルめっきする。電気めっき条件としては、従来公知の条件が適用し得るが、陰極電流密度は0.05~5A/dm2、特に0.5~3A/dm2とすることが好ましい。また、撹拌は、一般的に用いられている手法、例えば、エアーレーション、噴流、スキージ等を用いることが可能である。
・・・中略・・・
【0045】
[実施例1]
シリコンウエハーにエッチングで、開口部を50μm角、深さ150μm、アスペクト比3.0のビアホールを形成し、そのビア内壁に絶縁層を形成後、めっき下地層としてCuの拡散バリア層(TiN)、及びめっき開始のシード層(Cu)を成膜したものに、硫酸銅5水塩200g/L、硫酸50g/L、塩素イオン50mg/L、ブライトナーとしてSPS[ビス-(3-ナトリウムスルホプロピル)ジスルフィド]2mg/L、キャリアーとしてPEG[ポリエチレングリコール(平均分子量7500)]500mg/L、レベラーとしてビニルピロリドン(VP)とビニルイミダゾリウムクロライド(VICl)との共重合物(平均分子量 約60000(上記式(2)中のp=20,q=400に相当) VP:VICl=5:95(mol比))5mg/Lを含有する電気銅めっき浴を用い、Dk=0.5A/dm2、めっき時間180分の条件でビアフィルめっきを行った。」
4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、次の事項が記載されている。
A 「実施例1
[0048] 実施例1では、電解銅めっき液の組成及び電流密度を一定とした場合における、ワークの被めっき面に対する当該電解銅めっき液の噴流条件別の析出膜厚の変化について確認を行った。この実施例1では、ワークに対して、アルカリ脱脂(5min×3回)を行った後に酸洗い(1min×3回)を行い、電気銅めっきを施した。また、電解銅めっき処理を行うに際し、めっき処理温度は、25℃とし、電流密度は50A/dm2とした。
[0049] 実施例1で用いる電解銅めっき液の組成は、以下に示す通りである。また、実施例1で用いるワークは、10×20×0.5(mm)の板状の鋼材とした。
[0050] <電解銅めっき液の組成>
・硫酸銅5水和物(CUSO4・5H2O):250g/l
・硫酸(H2SO4):50g/l
・塩化物イオン(NaCl):50mg/l
・ポリエチレングリコール(PEG2000):30mg/l
・ビス(3-スルホプロピル)ジスルフィド(SPS):50mg/l
・ヤヌスグリーンB(JGB):30mg/l」
5 引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には、次の事項が記載されている。
A 「【0049】
本発明の電気メッキ溶液は、成分を如何なる順序で組み合わせて製造しても良い。無機成分、例えば金属塩、水、電解質、及び任意のハロゲン化物イオンが溶液容器に最初に加えられ、次に有機成分、例えば平滑剤、促進剤、抑制剤、界面活性剤等が加えられることが好ましい。
・・・中略・・・
【0056】
特に好ましい促進剤は以下のものである:
-SPS:ビス-(3-スルホプロピル)-ジスルフィドジソジウム塩
-MPS:3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸、ナトリウム塩。
・・・中略・・・
【0058】
このような促進剤は、典型的には、メッキ溶液の合計質量に対して、約0.1ppm~約3000ppmの量で使用される。本発明にとって有用な促進剤の特に適切な量は、1~500ppm、及びより特定的には、2~100ppmである。
【0059】
如何なる追加的な抑制剤も、本発明に有利に使用して良い。本発明にとって有用な抑制剤は、ポリマー性材料、特にヘテロ原子置換基及びより特定的には酸素置換基を有するものを含むが、これらに限定されるものではない。抑制剤が、ポリアルキレンオキシドであることが好ましい。適切な抑制剤は、ポリエチレングリコールコポリマー、特に、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールコポリマーを含む。適切な抑制剤のエチレンオキシドとプロピレンオキシドの配列は、ブロック、交互、傾斜(勾配)、又はランダムであって良い。ポリアルキレングリコールは、更なるアルキレンオキシド形成ブロック、例えばブチレンオキシドを含んでも良い。好ましくは、適切な抑制剤の平均分子量は、約2000g/モルを超える。適切なポリアルキレングリコールの出発分子は、アルキルアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール、及びこれらに類似するもの、アリールアルコール、例えばフェノール、及びビスフェノール、アルカリルアルコール、例えばベンジルアルコール、ポリオール開始剤、例えばグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリチリトール、ソルビトール、炭水化物、例えばサッカロース、及びこれらに類似するもの、アミン、及びオリゴアミン、例えばアルキルアミン、アリールアミン、例えばアニリン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、及びこれらに類似するもの、アミド、ラクタム、複素環式アミン、例えばイミダゾール及びカルボン酸であっても良い。任意に、ポリアルキレングリコール抑制剤がイオン基、例えばサルフェート、スルホネート、アンモニウム、及びこれらに類似するものによって官能化されても良い。
【0060】
抑制剤が使用される場合、これらは、典型的には、溶液の質量に対して、約1~約10000ppmの範囲、好ましくは約5~約10000ppmの範囲の量で存在する。
【0061】
本発明に従う金属メッキ溶液中に、平滑剤を有利に使用することができる。ここで、「平滑剤」と「レベラー」は同意語として使用される。
【0062】
適切な平滑剤は、1種以上のポリエチレンイミン、及びこれらの誘導体、四級化ポリエチレンイミン、ポリグリシン、ポリ(アリルアミン)、ポリアニリン、ポリウレア、ポリアクリルアミド、ポリ(メラミン-コ-ホルムアルデヒド)、アミンとエピクロロヒロリンの反応生成物、アミン、エピクロロヒドリン、及びポリアルキレンオキシドの反応生成物、アミンと、ポリエポキシド、ポリビニルピリジン、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピロリドン、又はこれらのコポリマーの反応生成物、ニグロシン、ペンタメチル-パラ-ロザニリンヒドロハライド、ヘキサメチル-パラロザニリンヒドロハライド、トリアルカノールアミン、及びその誘導体、又は式N-R-S(但し、Rが、置換されたアルキル、無置換のアルキル、置換されたアリール、又は無置換のアリールである)の官能基を含む化合物を含むが、これらに限定されるものではない。代表例では、アルキル基は、(C1~C6)アルキル、及び好ましくは(C1~C4)アルキルである。通常、アリール基は、(C6~C20)アリール、好ましくは(C6~C10)アリールを含む。このようなアリール基は、更に、ヘテロ原子、例えば硫黄、窒素、及び酸素を含む。アリール基が、フェニル、又はナフチルであることが好ましい。式N-R-Sの官能基を含む化合物が一般に知られており、一般に市販されており、及び更に精製することなく使用しても良い。
・・・中略・・・
【0087】
通常、電気メッキ溶液内の平滑剤の合計量は、メッキ溶液の合計量に対して、0.5ppm~10000ppmである。本発明に従う平滑剤は、メッキ溶液の合計量に対して、典型的には、約0.1ppm~約1000ppmの合計量で使用され、及びより典型的には、1~100ppmの合計量で使用されるが、これよりも多い量、又は少ない量も使用して良い。本発明に従う電気メッキ溶液は、1種以上の任意の添加剤を含んでも良い。このような任意の添加剤は、促進剤、抑制剤、界面活性剤、及びこれらに類似するものを含むが、これらに限定されるものではない。このような抑制剤、及び促進剤は、この技術分野では公知である。抑制剤及び/又は促進剤の使用する種類と量は、この技術分野の当業者にとって明確である。」
6 引用文献6について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6には、次の事項が記載されている。
A 「【0031】
また、熱処理後の銅層における銅の平均結晶粒径は、銅層のビッカース硬度並びに屈折時における常温下での動的再結晶の発現の観点から、2μm以上であることが好ましい。銅層における銅の平均結晶粒径は、フレキシブル性銅張積層板をサブトラクティブ法でフレキシブル配線基板に加工する際にエッチングで形成される配線の形状にも影響するため、12μm以下とすることが好ましく、2μm~9μmの範囲が更に好ましい。尚、銅の結晶粒径は、SEMのEBSD(electron backscatter diffraction)により測定することができる。」
第5 対比・判断
1 引用文献1を主引例とする場合
(1)本願発明1について
A 対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1の「ポリイミドフィルム」は、本願発明1の「ベースフィルム」に相当する。
引用発明1の「フレキシブル配線板」は、「ポリイミドフィルム上に下地金属層を形成した上に、約8μmの厚さの銅層を電気めっきにより形成させた2層フレキシブル基板に、20μmピッチのライン(配線)をエッチングで形成した」ものである。
したがって、引用発明1の「ライン(配線)」は、本願発明1の「配線」に相当し、後記の点で相違するものの、引用発明1の「フレキシブル配線板」は、本願発明1の「ベースフィルムと、上記ベースフィルムの少なくとも一方の面に設けられる複数本の配線を有する配線層とを備えるフレキシブルプリント配線板」に対応するものである。
イ 引用発明1では、「20μmピッチのライン(配線)をエッチングで形成」するものであって、通常であれば、配線の幅を10μm、配線の間隔を10μmで形成されているものと認められる。
してみると、引用発明1は、本願発明1の「上記配線の平均線幅が30μm以下、平均間隔が30μm以下であ」るという構成を備えているものといえる。
ウ 引用発明1の「銅層」の「ライン(配線)」は、「電気めっきにより形成さ」れた「銅層」を「エッチング」して形成したものであるから、銅系のめっき層を有していることは明らかである。
したがって、引用発明1は、本願発明1の「上記配線が銅系めっき層を有」するという構成を備えるものである。
エ 引用発明1の「ライン(配線)」が形成される「電気めっきにより形成さ」れた「銅層」は、「硫酸銅水溶液、塩素、SPS(ビス(3-スルフォプロピル)ジ-スルファイド2ナトリウム)を30ppm、PEG(ポリエチレングリコール)を50ppm、JGB(ヤーヌスグリーンB(含窒素化合物))を30ppm、混合した」「めっき液」を用いるものである。
ここで、「SPS」は硫黄を含み、「JGB」は窒素化合物であり、「SPS」、「PEG」、「JGB」は炭素を含むものであるから、引用発明1の「銅層」には、微量かもしれないが、硫黄、窒素及び炭素が含有するものと認められる。
してみると、引用発明1は、本願発明1の「上記銅系めっき層が硫黄、窒素及び炭素を含有」するという構成を備えるものである。
したがって、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
〈一致点〉
「 ベースフィルムと、上記ベースフィルムの少なくとも一方の面に設けられる複数本の配線を有する配線層とを備えるフレキシブルプリント配線板であって、
上記配線の平均線幅が30μm以下、平均間隔が30μm以下であり、
上記配線が銅系めっき層を有し、
上記銅系めっき層が硫黄、窒素及び炭素を含有する、
フレキシブルプリント配線板。」
〈相違点1〉
本願発明1では、
「上記銅系めっき層の電気抵抗率が1.68×10-8Ω・mより大きく、
上記銅系めっき層における銅結晶粒の平均直径が2μm以上100μm以下であ」るのに対して、
引用発明1では、「銅層」についてその旨の特定がされていない点。
〈相違点2〉
本願発明1では、
「上記銅系めっき層中の上記硫黄の含有量が0.0001質量%以上0.005質量%以下であり、上記窒素の含有量が0.0001質量%以上0.005質量%以下であり、上記炭素の含有量が0.001質量%以上0.01質量%以下である」るのに対して、
引用発明1では、「銅層」についてその旨の特定がされていない点。
B 相違点についての判断
「銅系めっき層」について相互に関連する、上記相違点1及び相違点2について、まとめて検討する。
引用文献3~5には、めっき液に、SPS、PEG、窒素化合物を混合することは記載されているが、このめっき液でめっきされためっき層中に硫黄、窒素、炭素がどの程度含有されるかは記載されておらず、また、含有されることで電気抵抗が大きくなることに関しても記載されていない。また、引用文献6にも、この点は記載されていない。
さらに、通常であれば、抵抗は小さいほうがよいものであり、引用発明1において、「銅層」の抵抗を通常の純銅の抵抗値より大きくする理由が認められない。
また、銅系めっき層中に硫黄の含有量を0.0001質量%以上0.005質量%以下とし、窒素の含有量を0.0001質量%以上0.005質量%以下とし、炭素の含有量を0.001質量%以上0.01質量%以下とすることで、銅系めっき層の電気抵抗率が1.68×10-8Ω・mより大きくなることが周知の技術であったとも認められない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用文献1に記載された発明、および引用文献3~6に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
(2)本願発明2ないし7について
本願発明2ないし7は、本願発明1に従属する発明であって、本願発明1と同じ構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用文献1に記載された発明、および引用文献3~6に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本願発明8について
本願発明8は、本願発明1に対応する「方法」の発明であり、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。したがって、本願発明8は、本願発明1の構成に対応する構成を実質的に備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1に記載された発明、および引用文献3~6に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本願発明9、10について
本願発明9、10は、本願発明8に従属する発明であって、本願発明1の構成に対応する構成を実質的に備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用文献1に記載された発明、および引用文献3~6に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 引用文献2を主引例とする場合
(1)本願発明1について
A 対比
本願発明1と引用発明2とを対比する。
ア 引用発明2の「ポリイミドフィルム」は、本願発明1の「ベースフィルム」に相当する。
引用発明2の「フレキシブル配線板」は、「35μm厚のポリイミドフィルム」からなる「2層フレキシブル基板に、ドライフィルムレジストを積層した後、露光、現像し、配線ピッチが20μm(ライン幅;10μm、スペース幅;10μm)となるように、回路パターンを形成し、次いで、下地金属層と銅被膜層(銅薄膜層及び銅めっき被膜からなる)で構成する金属膜の積層体を通電に使用して、露出した銅めっき被膜の上に、硫酸銅を主成分とする液を用いた電解めっき法により、銅めっき層を形成した後、銅めっき層の周囲の回路パターンを剥離、除去し、露出した銅めっき被膜層を、エッチング除去し、更に、下地金属層をエッチング除去したものである」ものであって、「ポリイミドフィルム」の少なくとも一方の面に「回路パターン」に対応する「配線」を有する配線層を備えているといえる。
したがって、引用発明2の「配線」は、本願発明1の「配線」に相当し、後記の点で相違するものの、引用発明2の「フレキシブル配線板」は、本願発明1の「ベースフィルムと、上記ベースフィルムの少なくとも一方の面に設けられる複数本の配線を有する配線層とを備えるフレキシブルプリント配線板」に対応するものである。
イ 引用発明2では、「配線ピッチが20μm(ライン幅;10μm、スペース幅;10μm)」で「配線」を形成するものであるから、引用発明2は、本願発明1の「上記配線の平均線幅が30μm以下、平均間隔が30μm以下であ」るという構成を備えるものである。
ウ 引用発明2の「配線」は、「電解めっき法」により形成された「銅めっき層」であるから、引用発明2の「銅めっき層」は、本願発明1の「銅系めっき層」に相当し、引用発明2は、本願発明1の「上記配線が銅系めっき層を有」するという構成を備えるものである。
したがって、本願発明1と引用発明2との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
〈一致点〉
「 ベースフィルムと、上記ベースフィルムの少なくとも一方の面に設けられる複数本の配線を有する配線層とを備えるフレキシブルプリント配線板であって、
上記配線の平均線幅が30μm以下、平均間隔が30μm以下であり、
上記配線が銅系めっき層を有する、
フレキシブルプリント配線板。」
〈相違点3〉
本願発明1では、
「上記銅系めっき層の電気抵抗率が1.68×10-8Ω・mより大きく、
上記銅系めっき層における銅結晶粒の平均直径が2μm以上100μm以下であ」るのに対して、
引用発明2では、「銅めっき層」についてその旨の特定がされていない点。
〈相違点4〉
本願発明1では、
「上記銅系めっき層が硫黄、窒素及び炭素を含有し、
上記銅系めっき層中の上記硫黄の含有量が0.0001質量%以上0.005質量%以下であり、上記窒素の含有量が0.0001質量%以上0.005質量%以下であり、上記炭素の含有量が0.001質量%以上0.01質量%以下である」るのに対して、
引用発明2では、「銅めっき層」についてその旨の特定がされていない点。
B 相違点についての判断
「銅系めっき層」について相互に関連する、上記相違点3及び相違点4について、まとめて検討する。
引用文献3~5には、めっき液に、SPS、PEG、窒素化合物を混合することは記載されているが、このめっき液でめっきされためっき層中に硫黄、窒素、炭素がどの程度含有されるかは記載されておらず、また、含有されることで電気抵抗が大きくなることに関しても記載されていない。また、引用文献6にも、この点は記載されていない。
さらに、通常であれば、抵抗は小さいほうがよいものであり、引用発明2において、「銅めっき層」の抵抗を通常の純銅の抵抗値より大きくする理由が認められない。
また、銅系めっき層中に硫黄の含有量を0.0001質量%以上0.005質量%以下とし、窒素の含有量を0.0001質量%以上0.005質量%以下とし、炭素の含有量を0.001質量%以上0.01質量%以下とすることで、銅系めっき層の電気抵抗率が1.68×10-8Ω・mより大きくなることが周知の技術であったとも認められない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用文献2に記載された発明、および引用文献3~6に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
(2)本願発明2ないし7について
本願発明2ないし7は、本願発明1に従属する発明であって、本願発明1と同じ構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用文献2に記載された発明、および引用文献3~6に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本願発明8について
本願発明8は、本願発明1に対応する「方法」の発明であり、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。したがって、本願発明8は、本願発明1の構成に対応する構成を実質的に備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献2に記載された発明、および引用文献3~6に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本願発明9、10について
本願発明9、10は、本願発明8に従属する発明であって、本願発明1の構成に対応する構成を実質的に備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用文献2に記載された発明、および引用文献3~6に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2023-006267