商標拒絶査定不服審判
2023-004697
ウエルビーイング
- 審判番号
- 2023-004697
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2022-021569
- 請求日
- 2023年03月20日
- 審決日
- 2024年05月09日
- 公報発行日
- 2024年07月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】日清食品ホールディングス株式会社
- 【請求人代理人】林 栄二
- 審判長/審判官
- 審判長 豊瀬 京太郎
- 審判官 板谷 玲子
- 審判官 田中 瑠美
- 分類
- T18 .16 -Z (W0510162930313233353940424344)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法3条1項6号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第6号、商標法第2条第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2022- 21569拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、令和4年2月25日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和4年 7月 7日付け:拒絶理由通知書
令和4年 9月30日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年12月 9日付け:拒絶査定
令和5年 3月20日 :審判請求書の提出
令和6年 1月16日付け:審尋
令和6年 3月 4日 :回答書の提出
2 本願商標
本願商標は、「well-being」の文字を標準文字で表してなり、第5類、第9類、第10類、第16類、第29類、第30類、第31類、第32類、第33類、第35類、第39類、第40類、第41類、第42類、第43類及び第44類に属する願書記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として登録出願されたものであり、その後、指定商品及び指定役務については、原審における上記1の手続補正書により、別掲1のとおりの指定商品及び指定役務に補正されたものである。
3 原査定の拒絶の理由(要旨)
本願商標は、「well-being」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は、「広義には身体・精神・社会との関りが持続的に良好な状態であること」、「持続的な幸せ」又は「健康で安心なこと、満足できる生活状態、福祉、福利、幸福」等の意味を有する語である。
そして、近時、様々な企業において、従業員や社会全体のウェルビーイング(幸福)を実現するための経営方針やグループビジョン等が採用されており、実際に「ウェルビーイング」の語が経営理念、企業理念、経営手法等を表すものとして一般に使用されている実情がある。
また、社会全体のウェルビーイングを実現するため、ビジョンを共有する様々なパートナーとともに、チーム企業型で、共同研究や事業開発に取り組んでいる実情がある。
そうすると、本願商標をその指定商品及び指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者は、「心身の幸福」を意味する概念「ウェルビーイング」に資する企業の活動や目標、理念・経営方針、或いは、「ウェルビーイング」に適した商品又は役務等を普通に用いられる方法で表示したものと認識、理解するにとどまるとみるのが相当であるから、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができないものである。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。
4 当審における審尋
当審において、令和6年1月16日付け審尋により、別掲2に掲げる事実を提示した上で、本願商標が、その指定商品及び指定役務との関係において、商標法第3条第1項第6号に該当する旨の暫定的見解を示し、相当の期間を指定して、請求人に対し、意見を求めた。
5 審尋に対する請求人の意見(要旨)
請求人は、上記4の審尋に対し、令和6年3月4日に回答書を提出し、要旨以下(1)ないし(4)のとおりの意見を述べた。
(1)原審における認定は、本願商標「well-being」の文字のみより理解、認識できる意味合いに基づいて行われなければならないところ、インターネット等の記事全体の内容より理解、認識できる意味合いに基づき行われたものといわざるを得ず、審尋においても、本願商標を構成する文字のみでは、企業の活動や目標などに関する状況が理解、認識し得ないとの請求人の主張に対する見解を示すところはない。
(2)原審の認定における「使用」とは、商標法第2条第3項に規定する「使用」を指すものでなければならないと思料されるところ、拒絶査定において提示するインターネット情報は、従業員や、職場環境などに関する記述をしたものであり、さらに、審尋において新たに引用したインターネット又は新聞記事情報は、「well-being(ウェルビーイング)」の用語の説明と思しき記述はあっても、商標法第2条第3項に規定する「使用」に係る商品又は役務の広告とも取引書類とも言い難いものであって、本願商標の指定商品又は指定役務との関連性を示す記述があるわけでもないから、これらは商標法第2条第3項に規定する「使用」に該当せず、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するとの裏付けにならない。
(3)審尋では、本願商標の文字自体については、「幸福。安寧。身体的・精神的・社会的に良好な状態。」の意味を表すと認定しているところ、当該意味のみでは、企業の経営理念や政策運営のための具体的な取組を理解することはできず、「well-being(ウェルビーイング)」の取組に関する商品及び役務とは、具体的に如何なる商品又は役務を指しているのかが不明であり、審尋によっても、本願商標の意味合いの曖昧さは何ら解消されない。
(4)審尋では、個々の指定商品や指定役務との関係や取引の実情をあげることなく、本願商標を商標法第3条第1項第6号に該当すると認定しているところ、登録例等の関係においてのみ、その指定商品等との関係や商品の取引の実情を考慮して判断されるとして請求人の主張を否定することは許されない上、これら登録例の中には数年前の登録例も多数含まれており、判断の基準時の違いも認定が異なる理由にはならない。
6 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第6号該当性について
本願商標は、「well-being」の文字を標準文字で表してなるところ、これは、「幸福。安寧。身体的・精神的・社会的に良好な状態。」(出典:株式会社小学館「デジタル大辞泉」)等の意味を表す語として用いられているものであり、1948年発効の世界保健機関(WHO)憲章で「健康」を定義する際に用いられていたものであるが、2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」における17の目標の3番目として「Good Health and well-being」が掲げられたことを契機に、世界的に注目されるようになった語であることがうかがえるものである(別掲2(1)(5)(7))。
そして、「well-being(ウェルビーイング)」の概念は、昨今、就業面においても、労働者が自身の生き方の選択に合わせて、働きがいを感じながら、心身ともに健康で満たされた状態で仕事ができることを指すものとして受け入れられており(別掲2(6))、SDGsの達成・実現に向け、働く人の安全(Safety)、健康(Health)、ウェルビーイング(Wellbeing)の向上を目指す世界的な活動へと広がりを見せていることもうかがえる(別掲2(2)ないし(4))。
これらの流れを受け、より多くの人がやりがいや幸福を感じながら働けるよう、各国の機関や官公庁、企業において、労働者の環境を整備することに強い関心が集まっている実情にあり、我が国においても、経済社会の構造を人々の満足度(well-being)の観点から多面的に把握し、政策運営に活かしていくことを目的とした「満足度・生活の質に関する調査」が行われ、「well-beingに関する取組」の推進に向けた、関係省庁間での情報共有・連携強化・優良事例の横展開がはかられていることも確認できる(別掲2(8))。
上記のとおり、世界的な潮流として、多くの企業や団体が「well-being(ウェルビーイング)」をマネジメントにおける一つの重点目標として捉えるようになっていることから、原審説示のように、近時、様々な企業において、従業員や社会全体の「well-being(ウェルビーイング)」を実現するための経営方針やグループビジョン等が採用されるなど、企業経営に関連して、「well-being(ウェルビーイング)」の語が多数使用されている実情にある(原審の拒絶理由通知の参考情報及び拒絶査定の後掲)。
そして、このことは、本願の指定商品及び指定役務に関連する業界における使用事実からもうかがえるものである(別掲3)。
そうすると、本願商標は、SDGsの採択を契機に注目されるようになった「well-being(ウェルビーイング)」の概念を表すものとして、各種業界において、企業の経営理念や政策運営のための取組等に一般に使用される語であって、これを普通に用いられる方法で表示するものであるから、自他商品役務の識別標識としての機能を有しないものとみるのが相当である。
してみれば、本願商標をその指定商品及び指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者は、これらの商品及び役務が、「well-being(ウェルビーイング)」の取組に関する商品及び役務であることを認識、理解するにとどまり、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができないものというべきである。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は、原審における認定は、本願商標「well-being」の文字のみより理解、認識できる意味合いに基づいて行われなければならないところ、インターネット等の記事全体の内容より理解、認識できる意味合いに基づき行われたものといわざるを得ず、審尋においても、本願商標を構成する文字のみでは、企業の活動や目標などに関する状況が理解、認識し得ないとの請求人の主張に対する見解を示すところはない旨主張する。
しかしながら、上記(1)で述べたとおり、「well-being(ウェルビーイング)」の概念は、昨今、就業面においても、労働者が自身の生き方の選択に合わせて、働きがいを感じながら、心身ともに健康で満たされた状態で仕事ができることを指すものとして受け入れられており、SDGsの達成・実現に向け、働く人の安全(Safety)、健康(Health)、ウェルビーイング(Wellbeing)の向上を目指す世界的な活動へと広がりを見せているものである。そして、これらの流れを受け、より多くの人がやりがいや幸福を感じながら働けるよう、各国の機関や官公庁、企業において、労働者の環境を整備することに強い関心が集まっている実情にあること、我が国においても、経済社会の構造を人々の満足度(well-being)の観点から多面的に把握し、政策運営に活かしていくことを目的とした「満足度・生活の質に関する調査」が行われ、「well-beingに関する取組」の推進に向けた、関係省庁間での情報共有・連携強化・優良事例の横展開がはかられていること、世界的な潮流として、多くの企業や団体が「well-being(ウェルビーイング)」をマネジメントにおける一つの重点目標として捉えるようになっていることから、近時、様々な企業において、従業員や社会全体の「well-being(ウェルビーイング)」を実現するための経営方針やグループビジョン等が採用されるなど、企業経営に関連して、「well-being(ウェルビーイング)」の語が多数使用されていることよりすれば、本願商標は、SDGsの採択を契機に注目されるようになった「well-being(ウェルビーイング)」の概念を表すものとして、各種業界において、企業の経営理念や政策運営のための取組等に一般に使用される語であって、これを普通に用いられる方法で表示するものであるから、自他商品役務の識別標識としての機能を有しないものとみるのが相当である。
イ 請求人は、原審の認定における「使用」とは、商標法第2条第3項に規定する「使用」を指すものでなければならないと思料されるところ、拒絶査定において提示するインターネット情報は、従業員や、職場環境などに関する記述をしたものであり、さらに、審尋において新たに引用したインターネット又は新聞記事情報は、「well-being(ウェルビーイング)」の用語の説明と思しき記述はあっても、商標法第2条第3項に規定する「使用」に係る商品又は役務の広告とも取引書類とも言い難いものであって、本願商標の指定商品又は指定役務との関連性を示す記述があるわけでもないから、これらは商標法第2条第3項に規定する「使用」に該当せず、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するとの裏付けにならない旨主張する。
しかしながら、上記(1)で述べたとおり、多くの企業や団体が「well-being(ウェルビーイング)」をマネジメントにおける一つの重点目標として捉えるようになっていることから、近時、様々な企業において、従業員や社会全体の「well-being(ウェルビーイング)」を実現するための経営方針やグループビジョン等が採用されるなど、企業経営に関連して、「well-being(ウェルビーイング)」の語が多数使用されている実情にある中で、実際に、本願の指定商品及び指定役務に関連する業界においても、「well-being(ウェルビーイング)」の語を同様に使用していることがうかがえることよりすれば、本願商標は、その指定商品及び指定役務との関係において、企業の経営理念や政策運営のための取組等に一般に使用される語であって、これを普通に用いられる方法で表示するものであるから、自他商品役務の識別標識としての機能を有しないものといわざるを得ず、これに接する取引者、需要者は、これらの商品及び役務が、「well-being(ウェルビーイング)」の取組に関する商品及び役務であることを認識、理解するにとどまり、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができないものというべきである。
ウ 請求人は、審尋では、本願商標の文字自体については、「幸福。安寧。身体的・精神的・社会的に良好な状態。」の意味を表すと認定しているところ、当該意味のみでは、企業の経営理念や政策運営のための具体的な取組を理解することはできず、「well-being(ウェルビーイング)」の取組に関する商品及び役務とは、具体的に如何なる商品又は役務を指しているのかが不明であり、審尋によっても、本願商標の意味合いの曖昧さは何ら解消されない旨主張する。
しかしながら、上記(1)で述べたとおり、本願商標は、元々、世界保健機関(WHO)憲章で「健康」を定義する際に用いられていたものが、SDGsの採択を契機に世界的に注目され、ウェルビーイング(Wellbeing)の向上を目指す世界的な活動へと広がりを見せるようになったものであり、今や各種業界において、企業の経営理念や政策運営のための取組等に一般に使用される語であるから、本願商標をその指定商品及び指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者をして、これらの商品及び役務が、「well-being(ウェルビーイング)」の取組に関する商品及び役務であることを認識、理解させるにとどまり、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができないものといわざるを得ない。そして、本願における商標法第3条第1項第6号該当性の判断においては、上記の商品及び役務であることを認識、理解させることで足り、それ以上に具体的な商品及び役務の内容が特定されることまでは要しないというのが相当である。
エ 請求人は、審尋では、個々の指定商品や指定役務との関係や取引の実情をあげることなく、本願商標を商標法第3条第1項第6号に該当すると認定しているところ、登録例等の関係においてのみ、その指定商品等との関係や商品の取引の実情を考慮して判断されるとして請求人の主張を否定することは許されない上、これら登録例の中には数年前の登録例も多数含まれており、判断の基準時の違いも認定が異なる理由にはならない旨主張する。
しかしながら、登録出願に係る商標が商標法第3条第1項第6号に該当するものであるか否かの判断は、当該商標登録出願の査定時又は審決時において、当該商標の構成態様と指定商品・指定役務との関係や、その商品又は役務の分野における取引の実情をも踏まえて、個別具体的に判断されるべきものであるところ、本願商標は、その指定商品及び指定役務に関連する業界においても、企業経営に関連して多数使用されていることがうかがえるものであって、請求人の挙げた登録例や審決例は、商標の構成態様や指定商品・役務、判断時期が本願商標とは異なるものである点において、本願とは、事案を異にするものというべきであり、また、過去の登録例や審決例が存在することをもって、本件判断が左右されるものではない。
オ したがって、請求人の上記アないしエの主張は、いずれも採用することができない。
なお、請求人は、回答書において、依然として拒絶理由が存在すると判断される場合は、指定商品及び指定役務の補正を行う用意がある旨述べているところ、本願商標は、上記(1)のとおり、これがその指定商品及び指定役務に使用された場合、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができないと認められるものであるから、更なる対応を求めることなく審理を進めた。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当するものであるから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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