商標拒絶査定不服審判
2023-004137
クボタ
- 審判番号
- 2023-004137
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2022-049573
- 請求日
- 2023年03月10日
- 審決日
- 2023年09月26日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】朝日酒造 株式会社
- 【請求人代理人】吉井 剛
- 審判長/審判官
- 審判長 豊瀬 京太郎
- 審判官 板谷 玲子
- 審判官 白鳥 幹周
- 分類
- T18 .14 -Z (W33) / T18 .17 -Z (W33)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第2項、商標法第3条第1項第4号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2022- 49573拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、令和4年4月28日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和4年 8月22日付け:拒絶理由通知書
令和4年11月 2日 :意見書の提出
令和4年12月 9日付け:拒絶査定
令和5年 3月10日 :審判請求書の提出
2 本願商標
本願商標は、「KUBOTA」の文字を標準文字で表してなり、第33類「清酒」を指定商品として登録出願されたものである。
3 原査定の拒絶の理由(要旨)
(1)商標法第3条第1項第4号について
本願商標は、「KUBOTA」の文字を標準文字で表してなるところ、日本人の姓氏を表す場合、必ずしも漢字のみならず、平仮名や片仮名文字又は欧文字等で表すことも決して少なくないことから、本願商標に接する取引者又は需要者は、我が国においてありふれた氏の一つである「久保田」を、欧文字により表したものと容易に理解、認識するものといえる。
そうすると、本願商標は、ありふれた氏を普通に用いられる方法で表示するものにすぎないというのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第4号に該当する。
(2)本願商標が使用により自他商品の識別性を獲得していることについて
提出された資料において示された使用例について、商品の裏ラベルに記載された「KUBOTA」の文字は、「久保田」の文字に小さく併記されているものであり、また、商品の表ラベルや商品の包装箱においても「KUBOTA」の文字が独立して記載されていることは伺えず、あくまで「久保田」の文字と組み合わせて使用されているにすぎないものであるから、そのような事実を鑑みれば、「KUBOTA」の文字が単独で識別標識として機能しているということはできない。
また、提出された商品の売上金額に関する資料についても、その商品には「KUBOTA」の標章のみではなく「久保田」の標章とともに使用されていると推認され、さらに、各種商品の広告に関する資料においても、「KUBOTA」の標章が単体で使用されていると認められ得るものがないため、その広告が標章「KUBOTA」の使用に係る広告であるということができない。
したがって、本願商標が、使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものになっていると認めることはできない。
4 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第4号該当性について
本願商標は、「KUBOTA」の文字を標準文字で表してなるところ、原審提示の情報にあるように、これは、姓氏の一つとして辞書類にも掲載されている「久保田」の読みを欧文字で表したものと理解されるものであって、また、「久保田」の氏の者が相当数、存在することが認められる。
そして、日本人の姓氏を表記する際に、その読みを欧文字で表記することは、広く一般に行われているものである。
そうすれば、本願商標は、ありふれた氏を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というべきであるから、商標法第3条第1項第4号に該当する。
(2)商標法第3条第2項に規定する要件を具備するか否かについて
請求人は、本願商標は、その指定商品「清酒」を取り扱う分野において、請求人の提供に係る商品のブランドとして需要者に理解されている旨主張し、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第146号証(以下、表記に当たっては「甲○」(「○」部分は数字)のように省略して記載する。)を提出しているところ、上記証拠及び請求人の主張(令和4年11月2日付け意見書における主張を含む。)によれば、以下のとおりである。
ア 請求人は、2005年(平成17年)より、請求人の取扱いに係る商品「清酒」のうち、「久保田」ブランドの商品(以下「請求人商品」という。)の裏ラベルにおいて、「KUBOTA」の文字からなる商標(以下「本件商標」という。)を使用し、また、2019年(令和元年)10月からは同商品の表ラベルにも同文字を使用するようになり、現在に至るまで日本全国において継続して使用している(甲13、甲14、甲16、甲130、甲131)。また、請求人商品の包装箱や包装紙袋等にも本件商標を使用している(甲17ないし甲19)。
イ 請求人は、「久保田」の文字からなる商標について、「清酒」を指定商品として、商標法第3条第2項に規定する要件を具備するものとして、商標登録を受けている(甲1、甲2)。
ウ 請求人商品の2004年(平成16年)10月1日からの総売上実績は約1,104億7,000万円、総販売本(セット)数は約6,800万本(セット)であって、例えば2022年(令和4年)度の売上実績は約3億3,500万円、販売本(セット)数は23万5,000本(セット)である(甲129ないし甲131)。
エ 請求人は、商品の表ラベルに本件商標を使用している請求人商品について、インターネット上(「Facebook」及び「Instagram」)での広告宣伝、並びに、ポスター及びチラシでの広告宣伝を行っており、2022年(令和4年)7月までに、前者については約600万円、後者については約200万円の費用を掛けている(甲27ないし甲41、甲130、甲131、甲136ないし甲141)。そのほか、請求人商品について、飲食店向けのパンフレットや広告宣伝用カレンダーの作成も行っている(甲132ないし甲135)。
オ 商品の表ラベルに本件商標を使用している請求人商品に関する記事が、新聞や雑誌において掲載されている(甲42ないし甲123)。
カ 「新潟県酒造組合」及び「長岡商工会議所」が、本願商標は請求人の業務に係る清酒の商標であると直ちに認識できるほど、一般需要者・取引業者の間に広く認識されているものと考える旨、証明している(甲130、甲131)。
キ 請求人以外の者が、本件商標を、商品「清酒」について、商標的に使用している事実は見当たらない(請求人の主張、甲142、甲144、甲145)。
ク 上記アないしキによれば、請求人は、約18年間、本件商標を請求人商品に使用しており、本件商標の態様は、本願商標と同一か、又は、同一性を損なわない範囲のものといえる。そして、請求人商品は、商品「清酒」に係る市場シェアは不明であるものの、本件商標の使用が始まった2005年(平成17年)以降、全国において相当の数量が販売されているものといえ、また、全国で販売されているものを含め、雑誌や新聞において何度も紹介等されたことがある事実が認められることから、請求人商品、及び、それに使用されている「久保田」の文字からなる商標は、我が国の需要者において広く知られているものというのが相当である。
しかしながら、請求人商品について「KUBOTA」の文字が使用される際には、その近傍にほぼ必ず「久保田」の文字(一般的な書体、又は、毛筆の手書き風の書体によるもの。以下同じ。)からなる商標が使用されており、また、「KUBOTA」の文字が「久保田」の文字よりも小さく表されていることがほとんどであって、「KUBOTA」の文字が独立して、「久保田」の文字と同程度に、自他商品の識別標識として使用されてきたとはいい難いものである。
加えて、請求人商品に関する新聞や雑誌の記事においても、欧文字「KUBOTA」に着目した記載があるものはごくわずか(甲57ないし甲61、甲63、甲64、甲66、甲67)であって、同商品に関して「KUBOTA」と称したり「KUBOTAブランド」などと表現しているものは見当たらず、また、文章中に「KUBOTA」の文字がまったく記載されていないもの(例えば、甲45、甲50ないし甲56、甲65、甲68、甲69、甲71ないし甲76、甲78、甲80ないし甲96など)や、掲載されている商品画像において「KUBOTA」の文字が鮮明に表示されていないもの(例えば、甲42ないし甲47、甲51ないし甲54、甲71ないし甲98など)も少なくないことからすると、請求人商品に係る販売額や広告宣伝などの程度を、本願商標に係るそれと同視することが適切とはいえない。
さらに、需要者の認識度を客観的に示す証拠(アンケート結果など)は提出されておらず、上記カに係る証明はあるものの、いずれも新潟県所在の、わずか2団体によるものであり、それをもって本願商標に係る全国の需要者の認識度を推し量ることは困難であって、その他、提出された証拠からは、本願商標が請求人の業務に係る商品を表すものとして需要者の間で広く知られているものであると判断することはできない。
以上のことからすると、本願商標が、その指定商品との関係において、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているとは認められないから、本願商標は、商標法第3条第2項に規定する要件を具備しない。
(3)請求人の主張について
ア 請求人は、欧文字「KUBOTA」は、請求人によってブランド名として使用され、取引者、需要者においても、請求人の清酒のブランドとして理解、認識されている商標であって、また、清酒において「久保田」は既に周知商標と認められていることからすれば、本願商標は、酒の業界に限り、「ありふれた氏」を表示したものとはいえない旨主張する。
しかしながら、本願商標が請求人の業務に係る商品を表すものとして需要者の間で広く知られているものであるといえないことは上記(2)クのとおりであって、また、「久保田」の文字が商品「清酒」との関係で我が国において広く知られている商標であることによって、「KUBOTA」の文字がありふれた氏を表示するものであることが否定されるものでもない。
イ 請求人は、「名字由来net」ウェブサイトにおいての全国名字(苗字)ランキングで「久保田」の名字(苗字)のランキング(123位、およそ151,000人)より、ランキングの高い名字(苗字)(甲3)をローマ字で表示したものといえる商標の登録例を挙げ、漢字で表示した場合「ありふれた氏」であったとしても、それをローマ字で表示した場合は、商標登録され得る旨主張する。
しかしながら、請求人の挙げた登録例は、商標の構成態様が本願商標とは異なるものである点において、本願とは、事案を異にするものというべきであり、また、過去の登録例が存在することをもって、上記判断が左右されるものではない。
ウ 請求人は、提出された証拠においては、「KUBOTA」の文字の単独使用と評価されるべき使用例が多数ある(甲16ないし甲19)旨主張する。
しかしながら、提出された証拠において示されている使用例のうち、その近傍に「久保田」の文字からなる商標が使用されていないものは包装用の紙袋(甲19)のみであって、そのほかに請求人が審判請求書において特に挙げる使用例も、その多くにおいて「KUBOTA」の文字が「久保田」の文字よりも小さく、目立たない態様で表されていることからすると、請求人商品について、「KUBOTA」の文字が独立して、「久保田」の文字と同程度に、自他商品の識別標識として使用されてきたとはいい難いものである。
エ 請求人は、本願商標は、周知商標である「久保田」の表記違いに過ぎず、また、昨今、酒造業界では瓶ラベルやパッケージのデザイン化において様々な語を欧文字表記することが主流となっている実情がある(甲125ないし甲128)ことからすれば、本願商標をその指定商品に使用するときは、それに接する取引者、需要者は、それが周知商標「久保田」の欧文字表記であって、請求人の商品であることを表示するものであると認識するのが自然である旨主張する。
しかしながら、商標法第3条第2項の規定上、同項によって商標登録が認められるのは、使用されていた商標に限られることは明らかであるところ、同条第1項第3号ないし第5号の規定に対する例外規定である同条第2項の規定は、当該商標が、特定人によりその業務に係る商品の自他識別標識として使用されてきた事実に基づく、公益上の要請の後退及び自他商品識別力の取得という現象に基礎を置くものであって、当該「使用」の範囲に含まれない構成態様の商標には、同条第2項により商標登録を受けることを許容する根拠が認められるわけではない(すなわち、当該「使用」の範囲に含まれない構成態様の商標が、なお同条第1項第3号等に当たる場合であれば、上記公益上の要請及び識別力の欠如という状態が存在する)のであるから、同条第2項の適用において、登録出願に係る商標と使用されていた商標との同一性は、厳格に判断されるべきものと解するのが相当である(平成19年4月10日判決言渡、平成18年(行ケ)10450号 知的財産高等裁判所第4部判決参照)。
そして、「KUBOTA」の文字と「久保田」の文字とは、文字種や文字数が異なり、同一又は同一性を損なわない範囲のものとはいえないことからすると、「久保田」の文字からなる商標が請求人の業務に係る商品を示すものとして広く知られていることをもって、その読みを欧文字で表記した「KUBOTA」の文字からなる商標が、商標法第3条第2項に規定する要件を具備するものと判断されるべきであるということは、適切とはいえず、また、請求人が挙げる当業界における欧文字の使用事例の存在によって、上記判断が左右されるものでもない。
オ したがって、請求人の上記アないしエの主張は、いずれも採用することができない。
(4)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第4号に該当するものであって、商標法第3条第2項に規定する要件を具備するものともいえないから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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