商標拒絶査定不服審判
2023-003061
エメ、エイマー
- 審判番号
- 2023-003061
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2022-114525
- 請求日
- 2023年02月22日
- 審決日
- 2024年06月19日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社アゲハスプリングス
- 【請求人代理人】工藤 一郎
- 審判長/審判官
- 審判長 大橋 良成
- 審判官 山田 啓之
- 審判官 渡邉 あおい
- 分類
- T18 .13 -Z (W09)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法3条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号、商標法第10条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2022-114525拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 本願商標及び手続の経緯
本願商標は、「Aimer」の文字を標準文字で表してなり、令和4年2月16日に登録出願された商願2022-17307に係る商標法第10条第1項の規定による商標登録出願とし、第9類「業務用テレビゲーム機用プログラム,メトロノーム,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた記録媒体,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させたDVD,レコード(歌手Aimerの歌唱する楽曲のものに限る。),インターネットを利用して受信し及び保存することができる音楽ファイル(歌手Aimerの歌唱する楽曲のものに限る。),インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル(歌手Aimerの歌唱する楽曲のものに限る。),録画済みの磁気カード・磁気シート・磁気ディスク・光ディスク・ビデオテープ・ビデオディスク・DVD(歌手Aimerの歌唱する楽曲のものに限る。),電子出版物(歌手Aimerの歌唱する楽曲のものに限る。),映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント」を指定商品として、同年10月5日に登録出願されたものである。
本願は、令和4年10月25日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月16日に意見書が提出されたが、同年12月14日付けで拒絶査定がされ、これに対して同5年2月22日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。
第2 原査定の拒絶の理由(要旨)
原査定は、「本願商標は、女性シンガーソングライターの芸名として、我が国において広く認識されているものであり、本願商標に接する取引者、需要者に、当該芸名を表示したものと容易に認識させるものであるから、本願商標をその指定商品中「レコード(歌手Aimerの歌唱する楽曲のものに限る。),インターネットを利用して受信し及び保存することができる音楽ファイル(歌手Aimerの歌唱する楽曲のものに限る。),インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル(歌手Aimerの歌唱する楽曲のものに限る。),録画済みの磁気カード・磁気シート・磁気ディスク・光ディスク・ビデオテープ・ビデオディスク・DVD(歌手Aimerの歌唱する楽曲のものに限る。),電子出版物(歌手Aimerの歌唱する楽曲のものに限る。)」に使用しても、これに接する取引者、需要者は、該商品に係る収録曲を歌唱している者を表示したものであると認識するにとどまり、本願商標は、単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示するものと判断するのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第3 当審の判断
1 本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性について
(1)商標法第3条第1項第3号が、「その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状(…)、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格」を「普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」について、商標登録の要件を欠くと規定しているのは、このような商標は、指定商品との関係で、その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状その他の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品識別力を欠くものであることによるものと解される。
そうすると、本願商標が、その指定商品について商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるというためには、審決の時点において、本願商標がその指定商品との関係で商品の品質を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり、本願商標がその指定商品に使用された場合に、将来を含め、取引者、需要者によって商品の品質を表示したものと一般に認識されるものである必要があるものと解される(知的財産高等裁判所平成27年(行ケ)第10232号同28年4月14日判決)。
そして、「レコード,インターネットを利用して受信し、及び保存することができる音楽ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ」においては、当該商品に係る収録曲を歌唱する者、又は映像に出演し歌唱している者が誰であるかは、当該商品の主要な品質(内容)に該当するものである(知的財産高等裁判所平成25年(行ケ)第10158号同年12月17日判決)。
このことは、「インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル,録画済みの磁気カード・磁気シート・磁気ディスク・光ディスク・ビデオテープ・ビデオディスク・DVD,電子出版物」についても同様であると解される。
(2)本願商標は、前記第1のとおり、「Aimer」の文字からなるものである。
そして、原審において示した証拠(別掲)によれば、「Aimer」は、「エメ」と読まれるシンガーソングライターの名称であり、同人は、2011年9月にメジャーデビュー、2017年に武道館単独公演、2022年1月にテレビアニメ「鬼滅の刃」遊郭編のオープニングテーマ及びエンディングテーマを収録したシングルをリリース、「ビルボードジャパンHot100」の2022年上半期総合ソングチャート1位を獲得、2022年12月に「第73回NHK紅白歌合戦」に出場したことが認められる。
そうすると、音楽に関する分野においては、「Aimer」の文字は、その取引者、需要者によって、当該シンガーソングライターを表したものと認識されるとみるのが相当である。
してみると、「Aimer」の文字からなる本願商標は、これをその指定商品中「レコード(歌手Aimerの歌唱する楽曲のものに限る。),インターネットを利用して受信し及び保存することができる音楽ファイル(歌手Aimerの歌唱する楽曲のものに限る。),インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル(歌手Aimerの歌唱する楽曲のものに限る。),録画済みの磁気カード・磁気シート・磁気ディスク・光ディスク・ビデオテープ・ビデオディスク・DVD(歌手Aimerの歌唱する楽曲のものに限る。),電子出版物(歌手Aimerの歌唱する楽曲のものに限る。)」(以下「本件指定商品」という。)に使用するときは、これに接する取引者、需要者は、当該文字をシンガーソングライターである「Aimer」を表したものと認識し、当該商品に係る収録曲を歌唱する者又は映像に出演し歌唱している者が「Aimer」であること、すなわち、商品の品質を表したものと一般に認識するにすぎないものというべきである。
また、本願商標は、標準文字により表されたものであるから、普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標といえる。
したがって、本願商標は、商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。
2 請求人の主張について
(1)請求人は、例えば「ビートルズ」の楽曲が納められた「レコード」の品質を表現する言葉として「Aimer」が使用されることはあり得ず、このように本願商標の指定商品の全般に対して利用できない言葉は、商品の品質ではない旨主張している。
しかしながら、本件指定商品は、いずれにも「歌手Aimerの歌唱する楽曲のものに限る。」との限定がされているから、本件指定商品には、本願商標が当然に使用され得るものである。
したがって、請求人の主張は、その前提において失当である。
(2)請求人は、「Aimer」の文字は、生産者、取引者が一般に使用せず、また、一般に使用される性質のものではない旨主張している。
しかしながら、前記(1)のとおり、本件指定商品は、いずれにも「歌手Aimerの歌唱する楽曲のものに限る。」との限定がされているから、本件指定商品においては、「Aimer」の文字は、生産者、取引者が一般に使用するものであり、一般に使用される性質のものである。
また、著作権法では、歌手等の実演家(同法第2条第1項第4号)には、実演家人格権を含む実演家の権利が定められており(同法第89条第1項)、実演家は、その実演(著作物を・・・演奏し、歌い、・・・その他の方法により演ずること。同法第2条第1項第3号。)の公衆への提供又は提示に際し、その氏名若しくはその芸名その他氏名に代えて用いられるものを実演家名として表示し、又は実演家名を表示しないこととする権利を有しており(氏名表示権。同法第90条の2第1項。)、実演を利用する者は、その実演につき既に実演家が表示しているところに従って実演家名を表示することができ(同条第2項)、また、実演を公衆に提供し、又は提示する者は、その実演家の死後においても、実演家が生存しているとしたならばその実演家人格権の侵害となるべき行為をしてはならないこととされている(同法第101条の3)。
このように、実演家は、実演家人格権としての氏名表示権を有しており、実演を利用する者は、実演家の死後においても、実演家が生存しているとしたならばその実演家人格権の侵害となるべき行為をしてはならないとされており、このことは、実演家の権利の存続期間(実演から70年。著作権法第101条。)の満了後も同様と解される。
そうすると、「レコード」等における歌手名について、これを例えば当該歌手が所属するレコード会社や芸能事務所に商標権として独占させた場合、レコード会社や芸能事務所を移籍したときの移籍先又は実演家の権利の存続期間満了後における当該実演の利用者は、歌手名を表示した場合には商標権侵害となり、表示しなかった場合には氏名表示権を侵害することとなり、いずれにおいても、当該実演の利用ができないこととなってしまう。
してみると、「レコード」等における歌手名については、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるといえ、たとえ当該歌手が所属するレコード会社や芸能事務所であっても、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないものといわなければならない。
したがって、シンガーソングライターを認識させる「Aimer」の文字からなる本願商標は、本件指定商品においては、取引に際し必要適切な表示であり、本件指定商品おける取引者、需要者によって一般に使用されるものというべきである。
この点からも、本件指定商品においては、「Aimer」の文字は、生産者、取引者が一般に使用するものであり、一般に使用される性質のものといえる。
(3)請求人は、需要者が「商品に係る収録曲を歌唱している者を表示したものであると認識するにとどまるもの」は、正に出所表示機能を示すものである旨主張している。
しかしながら、本件指定商品における出所は、当該商品を制作又は販売する者のことをいうものであり、前記1(1)のとおり、本件指定商品に係る収録曲を歌唱する者又は映像に出演し歌唱している者が誰であるかについては、当該商品の主要な品質(内容)に当たるというべきである。
(4)請求人は、原査定における「我が国において広く認識されており、一般的に使用がされている本願商標をその指定商品に使用しても、その商品の品質を表示したものと認識されるにすぎず」との判断部分は、「品質表示機能」そのものを指すものである旨主張している。
しかしながら、一般に、商標には品質保証機能があるとされているが、これは、同一商標を付した商品又は役務は、一定の品質又は質を備えているという信頼を保証する機能と解される。
したがって、商標における品質保証機能は、本願商標それ自体が商品の品質を表示したものと認識されることとは別異のものというべきである。
(5)以上のとおり、請求人の主張は、いずれも採用できない。
3 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから、これを登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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