特許拒絶査定不服審判
2023-002134
冷媒漏洩管理システム
- 審判番号
- 2023-002134
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-086544
- 請求日
- 2023年02月08日
- 審決日
- 2024年10月17日
- 公報発行日
- 2025年01月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ダイキン工業株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 充
- 審判官 水野 治彦
- 審判官 飯星 潤耶
- 分類
- P18 .55 -WZ (F25B) / P18 .537-WZ (F25B) / P18 .121-WZ (F25B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法17条の2第3項特許法36条6項1号特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-86544「冷媒漏洩管理システム」拒絶査定不服審判事件〔令和4年12月2日出願公開、特開2022-179217〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和3年5月21日の出願であって、その手続は以下のとおりである。
令和4年 6月10日付け :拒絶理由通知書
令和4年 8月30日 :面接記録
令和4年10月18日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年11月 1日付け :拒絶査定
令和5年 2月 8日 :審判請求書の提出
令和5年10月13日 :拒絶理由通知書
令和5年12月15日 :意見書、手続補正書の提出
令和6年 3月15日 :拒絶理由通知書(以下、「当審拒絶理由」という。)
令和6年 5月14日 :意見書の提出
第2 本願の特許請求の範囲
本願の特許請求の範囲は、令和5年12月15日の手続補正により補正された特許請求の範囲により特定される、以下のとおりのものである。
「 【請求項1】
冷凍サイクル装置(10)の運転が停止している期間をカウントするタイマー(20)と、
前記冷凍サイクル装置の運転停止期間が所定の第1期間を超えているか否かを判断する制御部(100)と、
を備え、
前記制御部は、前記冷凍サイクル装置の運転停止期間が前記第1期間を超えていると判断するとき、
前記冷凍サイクル装置を運転させ、又は、前記冷凍サイクル装置の管理者に前記冷凍サイクル装置の運転を促すための報知を行い、
前記冷凍サイクル装置が運転されたことを検知したとき、前記タイマーのカウントをリセットし、
前記第1期間は、規則で定められている期間である第2期間よりも短い期間であり、
前記第2期間は、前記冷凍サイクル装置を人手以外の方法によって点検することが許容されている期間であり、かつ前記冷凍サイクル装置の運転停止期間が前記第2期間を超えた場合は前記冷凍サイクル装置を人手によって点検しなければならない期間であり、
前記制御部は、前記タイマーのカウントをリセットする際に、前記第1期間及び前記第2期間についてのカウントをリセットする、
冷媒漏洩管理システム(1、1A、1B)。
【請求項2】
前記制御部は、前記冷凍サイクル装置の運転停止期間が前記第2期間を超えた場合は前記冷凍サイクル装置を人手によって点検しなければならないことを管理者に報知する、
請求項1に記載の冷媒漏洩管理システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記冷凍サイクル装置の運転停止期間が前記第1期間よりも短い期間である第3期間を超えていると判断するとき、前記冷凍サイクル装置の管理者に報知する、請求項1又は2に記載の冷媒漏洩管理システム。
【請求項4】
前記冷凍サイクル装置の冷媒回路(11)における冷媒の状態を検出する検出部(12)をさらに備え、
前記制御部は、前記検出部の検出結果に基づいて前記冷媒回路からの冷媒漏洩の有無を判断する、
請求項1から3のいずれかに記載の冷媒漏洩管理システム。」
第3 当審拒絶理由通知における拒絶の理由
当審拒絶理由通知における拒絶の理由は、次のとおりである。
1 (新規事項)令和5年12月15日付け手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
2 (サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
3 (明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
第4 当審の判断
1 特許法第17条の2第3項(新規事項)について
(1)特許法第17条の2第3項(新規事項)についての当審の判断
令和5年12月15日付け手続補正書で補正した請求項1に記載される「前記タイマーのカウントをリセットする際に、前記第1期間及び前記第2期間についてのカウントをリセットする」との事項が、当初明細書等に記載または示唆されていたかについて、以下のとおり判断する。
ア はじめに、当初明細書等に「第1期間」についてのカウントをリセットすることが記載されていたか否かを検討する。
当初明細書等の段落【0035】は、「例えば、冷凍サイクル装置10の運転が停止するとともにタイマー20によるカウントを開始させ、冷凍サイクル装置10の運転が開始するとともにタイマー20によるカウントをリセットさせる。これにより、タイマー20は、冷凍サイクル装置10の運転が停止している時間をカウントすることができる。」のとおり、「タイマー20によるカウントをリセットさせる」ことを記載するのみである。
ここで、段落【0060】ないし【0062】には、次の記載がある。
「【0060】
ステップS6では、制御部100は、冷凍サイクル装置10の運転停止期間が第1期間を超過しているか否かを判断する。冷凍サイクル装置10の運転停止期間が第1期間を超過している場合、(ステップS6でYesの場合)制御部100の処理はステップS7に進む。それ以外の場合、(ステップS6でNoの場合)制御部100の処理はステップS4に戻る。
【0061】
ステップS7では、制御部100は、冷凍サイクル装置10の管理者に対して報知を行う。報知を行ってから所定時間が経過した場合、制御部100の処理はステップS8に進む。
【0062】
ステップS8では、制御部100は、冷凍サイクル装置10の運転を開始させる。また、ステップS8では、タイマー20によるカウントがリセットされる。」
段落【0060】ないし【0062】の記載から、制御装置100は、タイマー20により、冷凍サイクル10の運転停止期間が第1期間を超過しているかを判断し、そして、第1期間を超過している場合、制御装置100は、冷凍サイクル装置10の管理者に対して報知を行い、報知を行ってから所定時間が経過した場合、冷凍サイクル装置10の運転を開始させ、タイマー20によるカウントをリセットするものと理解できる。
ここで、「タイマー20によるカウントをリセット」することはタイマー20により第1期間を超過している場合に行われるものであるから、「第1期間についてのカウントをリセット」することと解される。
段落【0060】ないし【0062】の記載を併せ読むと、段落【0035】には、冷凍サイクル装置の運転停止時間が所定の第1期間を超えているか否かを判断するための、運転停止時間に係るカウント、すなわち「第1期間」についてのカウントをリセットすることが記載されていると理解できる。
イ 次に、当初明細書等にタイマー20のリセットが「第2期間」についてのカウントをリセットすることが記載されてか否かを検討する。
当初明細書等の段落【0037】には、「記憶部40には、第1期間、第2期間及び第3期間についての設定が予め記憶されている。」と記載され、段落【0046】には、「制御部100は、冷凍サイクル装置10の運転停止期間が第2期間を超えた場合は冷凍サイクル装置10を人手によって点検しなければならないことを示すメッセージを、同時に送信することが好ましい。」と記載されている。特に段落【0046】の「制御部100は、冷凍サイクル装置10の運転停止期間が第2期間を超えた場合」との記載は、制御部100が第2期間を超過しているか否かを判断しているものと理解できる。
しかしながら、段落【0037】、【0046】、【0047】及び【0048】の記載事項並びに段落【0054】ないし【0066】及び【図3】において記載又は図示される制御部100の処理の流れにおいて、「第2期間を超過しているか否かの判断」を行うことの記載はない。また、当審拒絶理由で摘示した、当初明細書等の段落【0071】、【0072】及び【0074】にも、第2期間を超過しているか否かの判断をタイマー20により行うことの記載はない。そうすると、「第2期間を超過しているか否かの判断をタイマー20により行う」ことは、当初明細書等に記載されていない。
そして、「第2期間を超過しているか否かの判断」をタイマー20により行うことは、当初明細書等に記載されていないのであるから、「タイマー20のカウントがリセットされるときに、第2期間についてのカウントがリセットされる」ことも、当初明細書等に記載されていない。
ウ さらに、当初明細書等にタイマー20のリセットが「第2期間」についてのカウントをリセットすることが示唆されているといえるかを検討する。
当初明細書等の段落【0038】及び【0039】には、「第2期間」及び「第1期間」についての記載があり、それによると、第2期間は、第1期間よりも長い期間であり、規則によって決められている期間と理解できる。
そうすると、当初明細書等の段落【0046】に記載される「制御部100は、冷凍サイクル装置10の運転停止期間が第2期間を超えた場合は冷凍サイクル装置10を人手によって点検しなければならないことを示すメッセージを、同時に送信する」ことは、第1期間よりも長い期間である第2期間を超えたか否かを判断し、超えた場合、冷凍サイクル装置10を人手によって点検しなければならないことを示すメッセージを、同時に送信すること、といえる。さらに、当初明細書等の段落【0071】、【0072】、【0074】の記載を踏まえると、「第1期間よりも長い期間である第2期間を超えたか否かを判断する」ことは、当初明細書等に示唆されているといえる。
これを踏まえ、「第1期間よりも長い期間である第2期間を超えたか否かを判断する」ことをタイマー20によるカウントにより行い、タイマー20のカウントがリセットされたときに第2期間についてのカウントがリセットされることが当初明細書等に示唆されているかを検討する。
アで述べたとおり、タイマー20は、冷凍サイクル10の運転停止期間が第1期間を超過しているかを判断し、報知を行ってから所定時間が経過した場合、冷凍サイクル装置10の運転を開始させ、カウントをリセットするものである。そして、段落【0061】、【0062】の記載事項及び図3に図示される制御部100が行う処理の流れにおいて、冷凍サイクル装置10の運転が開始され、タイマ20によるカウントがリセットされるステップS8は、ステップS7で行われる管理者に対する報告の所定時間の経過後に常に行われるものである。そうすると、制御部100が行う処理の流れにおいて、第1期間及び所定時間に係る期間よりも長い期間を超過しているかを判断するためのカウントをタイマー20で行っているとは理解できない。
ここで、段落【0061】に記載される「所定時間」は、段落【0048】の「上記メッセージを送信してから所定の時間(例えば10分間)が経過したタイミングで、制御部100は冷凍サイクル10の運転を開始させる。」との記載を踏まえると、メッセージを送信してから冷凍サイクル10の運転を開始するまでの間にかかる時間である。そして、当初明細書等の段落【0008】には「第2期間が経過する前に、冷凍サイクル装置を運転させることができる」との記載がある。してみると、所定期間が経過した後に行われる冷凍サイクル装置10の運転は、第2期間を超える前に開始され、そして、タイマー20によるカウントのリセットも「第2期間」を超える前に行われるといえる。そうすると、タイマー20のリセットが「第2期間」についてのカウントをリセットすることを導き出すこともできない。
そうすると、「第1期間よりも長い期間である第2期間を超えたか否かを判断する」ことをタイマー20によるカウントにより行うことは、当初明細書等に示唆されているとはいえない。
なお、当初明細書等の段落【0037】は、記憶部40に第2期間についての設定が予め記憶されることは記載されているものの、「第1期間よりも長い期間である第2期間を超えたか否かを判断する」ことをタイマー20によるカウントにより行うことについての示唆はない。
したがって、タイマー20のカウントがリセットされたときに第2期間についてのカウントがリセットされることは、当初明細書等に示唆されていない。
エ イ及びウから、「前記タイマーのカウントをリセットする際に、前記第2期間についてのカウントをリセットする」との事項は、当初明細書等に記載も示唆もない。
そうすると、「前記タイマーのカウントをリセットする際に、前記第1期間及び前記第2期間についてのカウントをリセットする」との事項は、当初明細書等に記載も示唆もない。
オ したがって、このような補正を含む令和5年12月15日付け手続補正書の補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、「前記タイマーのカウントをリセットする際に、前記第1期間及び前記第2期間についてのカウントをリセットする」という新たな技術的事項を導入するものであるから、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでない。
(2)令和6年5月14日の意見書における請求人の主張
令和6年5月14日の意見書において、請求人は次のとおり主張する。
ア 「 当初明細書の
「タイマー20の動作は、制御部100によって制御される。制御部100は、例えば、冷凍サイクル装置10の運転が停止するとともにタイマー20によるカウントを開始させ、冷凍サイクル装置10の運転が開始するとともにタイマー20によるカウントをリセットさせる。…タイマー20によってカウントされた期間(冷凍サイクル装置10の運転停止期間)は、制御部100に取得される。(段落[0035])」、
「記憶部40には、第1期間、第2期間及び第3期間についての設定が予め記憶されている。(段落[0037])」、および
「制御部100は、冷凍サイクル装置10の運転停止期間が第2期間を超えた場合は冷凍サイクル装置10を人手によって点検しなければならないことを示すメッセージを、同時に送信することが好ましい。(段落[0046])」
等に示すように、制御部100は、タイマー20を制御して、冷凍サイクル装置10の運転停止期間をカウントします。そして、制御部100は、カウントしている冷凍サイクル装置10の運転停止期間が、(記憶部40に予め記憶されている)第2期間(の設定値)を超えているか否かを判断し、カウントしている冷凍サイクル装置10の運転停止期間が第2期間を超えた場合は、冷凍サイクル装置10を人手によって点検しなければならないことを示すメッセージを送信します。
そのため、「第2期間」に係るカウントを(制御部100が)タイマー20で行っていることは、当初明細書の段落[0035]、[0037]、[0046]等の記載から明らかであると思量します。」(2.(1)(1-1)(1-1-1))
イ 「 請求項1に係る発明(本願発明)の目的は、冷凍サイクル装置を人手以外の方法によって点検し続けることです(段落[0008]等)。仮に、冷凍サイクル装置10の運転が開始され、(第2期間よりも短い)第1期間についてのタイマー20のカウントがリセットされるときに、第2期間についてのカウントがリセットされなければ、次に冷凍サイクル装置10の運転が停止され、タイマー20のカウントを開始するときに、タイマー20のカウントは、(リセットされていない)第2期間をすぐに超えてしまい、冷凍サイクル装置10を人手によって点検しなければならないことを示すメッセージを送信することになります。このことは、冷凍サイクル装置を人手以外の方法によって点検することが許容されているにもかかわらず、冷凍サイクル装置を人手によって点検しなければならないことを意味し、本願発明の目的が失われます。そのため、本願発明の目的に照らすと、第1期間についてのタイマー20のカウントがリセットされるときに、第2期間についてのカウントがリセットされることは想定できると思量します。
また、上記(1-1-1)に示すように、第2期間に係るカウントも、同じタイマー20で行っているため、第1期間についてのタイマー20のカウントがリセットされるときに、第2期間についてのカウントがリセットされることは想定できると思量します。」(2.(1)(1-1)(1-1-2))
(3)請求人の主張の検討
(2)に係る上記請求人の主張を検討する。
ア (2)アに係る請求人の主張を検討する。
(1)イで述べたとおり、「第2期間を超過しているか否かの判断」をタイマー20により行うことは、当初明細書等に記載されていない。したがって、「第2期間」に係るカウントをタイマー20で行っていることは、当初明細書等には記載されていない。
また、(1)ウで述べたとおり、「第1期間よりも長い期間である第2期間を超えたか否かを判断する」ことをタイマー20によるカウントにより行うことは、当初明細書等に示唆されているとはいえない。したがって、「第2期間」に係るカウントをタイマー20で行っていることが、当初明細書等に示唆されているともいえない。
したがって、(2)アに係る請求人の主張は当を得ない。
イ (2)イに係る請求人の主張を検討する。
(ア) 本願の段落【0008】は、「規則で定められている期間である第2期間が経過する前に、冷凍サイクル装置を運転させることができる。あるいは、規則で定められている期間である第2期間が経過する前に、冷凍サイクル装置を運転させるように管理者に促すことができる。このため、冷凍サイクル装置の運転停止期間が第2期間を超えることが抑制される。したがって、冷凍サイクル装置を人手以外の方法によって点検し続けることができる。」ことを記載する。そして、アに記載したとおり、制御部100は、冷凍サイクル装置10の運転停止期間が第1期間を超過している場合、冷凍サイクル装置10の管理者に対して報知を行い、さらに所定時間が経過した場合、冷凍サイクル装置10の運転を開始させ、タイマー20のカウントをリセットされるものである。そして、第1期間は、段落【0038】及び【0039】の記載から、規則で定められている第2期間よりも短い期間であるから、制御部100の機能は、段落【0008】に記載される、「規則で定められている期間である第2期間が経過する前に、冷凍サイクル装置を運転させることができる。あるいは、規則で定められている期間である第2期間が経過する前に、冷凍サイクル装置を運転させるように管理者に促すことができる。」ことを奏するものといえる。
また、(1)イ及び(1)ウで述べたとおり、制御部100が行う処理の流れにおいて、タイマー20は、冷凍サイクル10の運転停止期間が第1期間を超過し、報知を行ってから所定時間が経過した場合、常にカウントをリセットするものであるから、その後にタイマー20がカウントされることにより得られる値が「第1期間よりも長い期間である第2期間」を超えることはないといえる。
そして、「冷凍サイクル装置10を人手によって点検しなければならないことを示すメッセージ」は、カウントされることにより得られる値が第2期間を超えることにより「送信」されるのであるから、カウントされることにより得られる値が「第1期間よりも長い期間である第2期間」を超えることはないタイマー20によるカウントを用いて、「第2期間が超えたときに冷凍サイクル装置10を人手によって点検しなければならないことを示すメッセージを送信する」と、合理的に理解することはできない。
そうすると、請求人が主張する「次に冷凍サイクル装置10の運転が停止され、タイマー20のカウントを開始するときに、タイマー20のカウントは、(リセットされていない)第2期間をすぐに超えてしまい、冷凍サイクル装置10を人手によって点検しなければならないことを示すメッセージを送信すること」は生じない。
したがって、(2)イに係る請求人の主張は、当を得ない。
2 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
(1)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)についての当審の判断
請求項1に記載される「前記タイマーのカウントをリセットする際に、前記第1期間及び前記第2期間についてのカウントをリセットする」との事項は、「1、(1)特許法第17条の2第3項(新規事項)についての当審の判断」で述べた理由と同じ理由により、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えたものといえる。
したがって、請求項1に係る発明及び請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし請求項4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
(2)令和6年5月14日の意見書における請求人の主張
令和6年5月14日の意見書において、請求人は次のとおり主張する。
「上記(1-1)に示すように、請求項1に記載される「前記タイマーのカウントをリセットする際に、前記第1期間及び前記第2期間についてのカウントをリセットする」との事項は、当初明細書等に記載した事項の範囲内のものです。」
(3)請求人の主張の検討
(2)に係る上記請求人の主張を検討する。
1(1)で述べたとおり、「前記タイマーのカウントをリセットする際に、前記第1期間及び前記第2期間についてのカウントをリセットする」ことは、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでない。
また、令和4年10月18日付けの手続補正及び令和5年12月15日付けの手続補正において、明細書及び図面に対する手続補正はなされていない。
そうすると、令和5年12月15日付け手続補正書の補正により補正された請求項1に記載される「前記タイマーのカウントをリセットする際に、前記第1期間及び前記第2期間についてのカウントをリセットする」との事項は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えたものといえる。
したがって、令和6年5月14日の意見書における請求人の主張は当を得ない。
3 特許法第36条第6項第2号(明確性)について
(1)特許法第36条第6項第2号(明確性)についての当審の判断
ア 請求項1には、「第2期間」に関し、次の記載がある。
(ア)「前記第1期間は、規則で定められている期間である第2期間よりも短い期間であり、」
(イ)「前記第2期間は、前記冷凍サイクル装置を人手以外の方法によって点検することが許容されている期間であり、かつ前記冷凍サイクル装置の運転期間が前記第2期間を超えた場合は前記冷凍サイクル装置を人手によって点検しなければならない期間であり」
(ウ)「前記制御部は、前記タイマーのカウントをリセットする際に、前記第1期間及び前記第2期間についてのカウントをリセットする。」
イ ア(ア)の記載から、「第2期間」は「規則で定められている期間」であること、及び第1期間は、第2期間よりも短い期間であることが明確に理解できる。そして、第1期間は、第2期間を指標として、当該指標である第2期間よりも短い期間として特定されることも明確といえる。
また、ア(イ)の記載から「第2期間」は、「前記冷凍サイクル装置を人手以外の方法によって点検することが許容されている期間」であり、かつ「前記冷凍サイクル装置の運転期間が前記第2期間を超えた場合は前記冷凍サイクル装置を人手によって点検しなければならない期間」であることが明確に理解できる。
ア(ア)及びア(イ)から、請求項1の「第2期間」は、「第1期間」を特定するために用いられる「指標」であって、「前記冷凍サイクル装置を人手以外の方法によって点検することが許容されている期間」、かつ「前記冷凍サイクル装置の運転期間が前記第2期間を超えた場合は前記冷凍サイクル装置を人手によって点検しなければならない期間」である、「規則で定められている期間」と明確に理解できる。
そして、当該理解とは異なる理解をア(ア)及びア(イ)から導き出すことはできないから、請求項1の「第2期間」に、「指標」以外の技術的意味はないといえる。
なお、本願の発明の詳細な説明には、段落【0004】に記載する「冷凍サイクル装置の運転停止期間が所定の第1期間を超えているか否かを判断する。」に係る「第1期間」に関し、段落【0006】に、「第1期間は、第2期間よりも短い期間である。第2期間は、規則で定められている期間である。第2期間は、冷凍サイクル装置を人手以外の方法によって点検することが許容されている期間である。」と記載される。
また、段落【0038】には、第2期間について「第2期間は、冷凍サイクル装置を人手以外の方法によって点検することが許容されている期間である。また、第2期間は、規則で定められている期間である。本実施形態において、『規則』は、冷凍サイクル装置10の点検に関する事項を定めた各国の法令や、ガイドラインのことを意味する。」と記載され、段落【0039】には、「第1期間は、第2期間よりも短い期間である。上記のとおり、本実施形態では、第2期間は3ヵ月に設定される。したがって、第1期間は、例えば2ヵ月と3週間に設定される。」と記載される。
そうすると、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、「第2期間」は、「第1期間」を設定されるために用いられる「指標」であって、「冷凍サイクル装置を人手以外の方法によって点検することが許容されている期間」であるとともに、「冷凍サイクル装置10の点検に関する事項を定めた各国の法令や、ガイドライン」である「規則で定められている期間」とのみ理解できる。
ウ ア(ウ)は、その記載から、制御部は、「第2期間」についてカウントを行うことを前提として、タイマーのカウントをリセットする際に「第2期間」についてのカウントをリセットすることを特定するものと理解できる。
ここで、請求項1に記載される制御部は、その記載から、
『「第2期間」よりも短い「第1期間」を超えているか否かを判断し、「第1期間」を超えていると判断するとき、冷凍サイクル装置を運転させ、又は冷凍サイクル装置の管理者に冷凍サイクル装置の運転を促すための報知を行い、冷凍サイクル装置が運転されたことを検知したとき、タイマーのカウントをリセットする』
ものである。そして、タイマーのカウントは、「第1期間」を超えているか否かを判断するために行うものであるから、その「リセット」をする際に、第1期間についてのカウントをリセットすることは、明確に理解できる。
しかしながら、イで述べたとおり、請求項1の「第2期間」は、「第1期間」を特定するために用いられる「指標」である。そうすると、制御部が、「第1期間」を特定するために用いられる「指標」について、タイマーによりカウントを行うことの技術的な意味内容を明確に理解することができない。さらに、タイマーのカウントをリセットする際に、「第1期間」を特定するために用いられる「指標」についてのカウントをリセットすることの技術的な意味内容を明確に理解することもできない。
仮に、請求項1に記載される制御部が、イで述べたとおりの「第1期間」を特定するための「指標」であって、「規則で定められている期間」である「第2期間」をカウントすると解し、検討する。
請求項1に記載される制御部は、「『第2期間』よりも短い『第1期間』を超えているか否かを判断し、『第1期間』を超えていると判断するとき、冷凍サイクル装置を運転させ、又は冷凍サイクル装置の管理者に冷凍サイクル装置の運転を促すための報知を行い、冷凍サイクル装置が運転されたことを検知したとき、タイマーのカウントをリセットする」という制御を行うものであって、「第2期間」をカウントした結果を用いて冷凍サイクル装置の運転または報知に係る制御をするものではない。
そうすると、請求項1に記載される制御部における制御と、当該制御部では用いることのない「第2期間」をカウントすることがどのように関連するかを明確に理解できない。そして、「第2期間」をカウントした結果を用いて冷凍サイクル装置の運転または報知に係る制御をするものではない当該制御において、「第2期間」よりも短い「第1期間」を超えていると、「第2期間」の「カウント」を「リセット」することの技術的な意味内容を明確に理解することもできない。
さらに、請求項1に記載された事項を全てみても、「第1期間」を特定するための指標であって、「規則で定められている期間」である「第2期間」について、「前記制御部は、前記タイマーのカウントをリセットする際」に、「第2期間についてのカウントをリセット」することが、請求項1に記載された冷媒漏洩管理システム及び冷媒漏洩管理システムを構成する、冷凍サイクル装置、タイマー、制御部との関係において、どのような意味内容を持つか、明確に理解できない。
そうすると、「第1期間」に係る時間を決定する際に用いられる単なる指標であって、「規則で定められている期間」である「第2期間」のカウントを「リセット」することの意味内容を明確に理解することができないから、請求項1に係る発明は明確でない。
同様に、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし請求項4に係る発明は、明確でない。
(2)令和6年5月14日の意見書における請求人の主張
令和6年5月14日の意見書において、請求人は次のとおり主張する。
「しかし、『第2期間』は、当初明細書の段落[0046]に示すように、設定値として記憶部40に予め記憶されているものであるため、『第1期間』に係る時間を決定する際に用いられる単なる指標ではありません。
また、『第2期間』のカウントをリセットすることの意味内容は、上記(1-1-2)に示すように、冷凍サイクル装置を人手以外の方法によって点検し続けることであり(段落[0008]等)、請求項1の文面から明確に理解できると思量します。
その結果、請求項1に記載された『前記タイマーのカウントをリセットする際に、前記第1期間及び前記第2期間についてのカウントをリセットする』との事項は明確であり、請求項1に係る発明の明確性の拒絶理由は、解消したものと思量します。」
(3)請求人の主張の検討
(2)に係る上記請求人の主張を検討する。
請求項1には、「第2期間」について(1)ア(ア)ないし(1)ア(ウ)が記載されるのみである。そして、(1)ア(ア)及び(1)ア(イ)から理解できることはイで述べたとおりである。
当初明細書等の段落【0037】には、「記憶部40には、第1期間、第2期間及び第3期間についての設定が予め記憶されている。」と記載される。また、【0046】には「制御部100は、冷凍サイクル装置10の運転停止期間が第2期間を超えた場合は冷凍サイクル装置10を人手によって点検しなければならないことを示すメッセージを、同時に送信することが好ましい。」事を記載する。
しかしながら、「第2期間」が設定値として記憶部40に予め記憶されることは、請求項1に記載されていない。
さらに、「第2期間」が設定値として記憶部40に予め記憶されることにより、(1)イにおいて述べた、(1)ア(ア)及び(1)ア(イ)から導ける「第2期間」についての理解が変わるものではないから、(1)ウで述べたことに影響を与えるものではない。
そうすると、「『第2期間』は、当初明細書の段落[0046]に示すように、設定値として記憶部40に予め記憶されている」ことで、請求項1の「第2期間」の理解に影響を与えるものではない。
また、「『第2期間』のカウントをリセットすること」との記載は、段落【0008】を含む発明の詳細な説明にはない。段落【0008】の記載から導き出せることは、冷凍サイクル装置の運転停止期間が第2期間を超えることが抑制されることによって、冷凍サイクル装置を人手以外の方法によって点検し続けることができること、である。
そして、請求項1に記載される
「前記制御部は、前記冷凍サイクル装置の運転停止期間が前記第1期間を超えていると判断するとき、
前記冷凍サイクル装置を運転させ、又は、前記冷凍サイクル装置の管理者に前記冷凍サイクル装置の運転を促すための報知を行い、
前記冷凍サイクル装置が運転されたことを検知したとき、前記タイマーのカウントをリセットし、
前記第1期間は、規則で定められている期間である第2期間よりも短い期間であり、
前記第2期間は、前記冷凍サイクル装置を人手以外の方法によって点検することが許容されている期間であり、かつ前記冷凍サイクル装置の運転停止期間が前記第2期間を超えた場合は前記冷凍サイクル装置を人手によって点検しなければならない期間であ」
ることにより、段落【0008】から導き出せる事項は達成できるといえる。
そうすると、段落【0008】の記載は、「『第2期間』のカウントをリセットすることの意味内容」であるとはいえない。
したがって、令和6年5月14日の意見書における請求人の主張は当を得ない。
第5 むすび
以上のとおり、本願は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面についてした補正が特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから、拒絶すべきものである。
また、本願は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、拒絶すべきものである。
さらに、本願は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-002134