商標拒絶査定不服審判
2023-000761
- 審判番号
- 2023-000761
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2021-146823
- 請求日
- 2023年01月17日
- 審決日
- 2024年09月04日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社エンジニア
- 【請求人代理人】松井 宏記
- 【請求人代理人】宗助 智左子
- 【請求人代理人】鈴木 行大
- 審判長/審判官
- 審判長 山田 啓之
- 審判官 鈴木 雅也
- 審判官 杉本 克治
- 分類
- T18 .13 -Z (W08)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法3条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2021-146823拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和3年11月25日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和4年4月26日付け :拒絶理由通知
令和4年6月3日 :意見書及び手続補足書(資料1~資料22)
の提出
令和4年11月4日付け :拒絶査定
令和5年1月17日 :審判請求書及び手続補足書(資料23~資料
26の3)の提出
第2 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第8類「プライヤー」を指定商品として登録出願されたものである。
第3 原査定の拒絶の理由(要旨)
原査定は、「本願商標は、その指定商品との関係において、プライヤーのグリップ部分を表した図形であると容易に認識される。そして、プライヤーについては、グリップ部分のデザインや形状に工夫を凝らした様々な商品が製造、販売されている実情がうかがえる。そうすると、本願商標をその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者は、単に商品の形状を普通に用いられる方法で表示しているものと認識するにすぎないというのが相当であり、したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第4 当審における審尋
当審において、令和6年2月8日付け審尋により、請求人に対し、別掲2及び3のとおりの事実を提示した上で、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当する旨の暫定的見解を示し、相当の期間を指定して、これに対する意見を求めたが、これに対して、請求人は、何ら回答していない。
第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号該当性について
(1)商標法第3条第1項第3号について
商標法第3条第1項第3号は、「その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状(包装の形状を含む。)、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は、商標登録を受けることができない旨を規定しているが、これは、同号掲記の標章は、商品の産地、販売地、形状その他の特性を表示、記述する標章であって、取引に際し必要な表示として誰もがその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合、自他商品・役務識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないことから、登録を許さないとしたものである。
そして、商品の形状は、本来、商品の機能をより効果的に発揮させたり、美感を向上させるために選択されるものであるから、商品の形状からなる商標は、その形状が、需要者において、その機能又は美感上の理由から選択されると予測し得る範囲を超えたものである等の特段の事情のない限り、商品等の形状そのものの範囲を出るものでなく、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものとして、商標法第3条第1項第3号に該当するものと解される(令和5年12月21日知的財産高等裁判所判決、令和5年(行ケ)第10083号)。
(2)本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性について
ア 本願商標は、別掲1のとおり、緑色で幅広の一対の弧状の図形が横向きに表された図形(その左側は弧状の図形が上下に接し、右側は離れている。)からなるものである。そして、当該弧状の図形の表面には直線、円などを用いた幾何学模様が付されているが、これらの模様は細く薄く描いた線や円のみにより表されたものであって、本願商標全体の構成において、それほど目立つものとはいえない。
イ ところで、別掲2及び3によれば、本願商標の指定商品である「プライヤー」を取り扱う業界において、弧状の形状からなるグリップは多く採用され、緑色で表されたものも多数存在する一方で、他の色彩で表されたグリップも多く存在する。また、弧状の形状からなるグリップの形状は商品ごとに異なり、その表面に施された模様も様々なものが採用されていることが認められる。
そうすると、プライヤーのグリップには様々な色彩が採用され得るものであるとともに、その形状及びその表面に施された模様は、「ソフトグリップは滑り止めの凸面が施されているので、握りやすく、使いやすい。」(別掲3(1))、「握りやすい左右非対称ボディ!」(別掲3(5))、「グリップに紅白花梨を使い作成いたしました。/表面と裏面で色味の異なるように配色、内張りにはフレイムメイプル材を使用/模様が光の加減で見え方が変わります。」(別掲3(7))、「“スプーン・フォーク・ナイフ・缶切り・栓抜き”を備えた5WAYマルチツールで食事や調理、栓抜き、缶開けなどの用途に使用できて、キャンプや災害時に活躍します。」(別掲3(8))といった記載からも理解されるとおり、商品の機能や美感を発揮させるために選択されているものということができる。
ウ してみれば、本願商標の指定商品との関係においては、別掲1の本願商標の構成態様及び上記(1)の条文の趣旨を踏まえて考慮すれば、本願商標は、需要者において、商品「プライヤー」のグリップを、一方向から見た場合の図形を表したものと認識されるものであり、たとえ、緑色で表され、その表面に直線、円などを用いて幾何学模様が付されているという特徴を有するとしても、その特徴は、商品の機能又は美感上の理由から選択されると予測し得る形状及び色彩の範囲を超えたものであるということはできず、商品の形状及び色彩そのものの範囲を出るものでないというのが相当である。
エ したがって、本願商標は、商品の形状、その他の特徴を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものとして、商標法第3条第1項第3号に該当する。
2 請求人の主張について
請求人は、本願商標の元になった商品(「ネジザウルスGT」)は永年使用された結果、需要者が請求人の業務に係る商品であることを認識することができ、本願商標も自他商品識別力を有する旨主張し、証拠方法として資料1ないし資料26(枝番号を含む。)を提出しているので、以下、検討する。
なお、証拠の標記に当たっては、枝番号の全てを表示する場合は、枝番号を省略することがある。
(1)請求人の主張及び提出した証拠によれば、以下のとおりである。
ア 請求人はネジ穴が潰れたネジをつかんで外すという特徴を有するプライヤーを主とする複数の商品を「ネジザウルス」シリーズとして販売しているところ、当該シリーズの商品のうち、「ネジザウルスGT」と呼ばれるプライヤーのグリップ部分の色彩、形状及び表面に付された模様は、本願商標のそれと同様であることがうかがえるものの、それ以外の商品のグリップ部の色彩、形状及びその表面に付された模様が本願商標の形状及び幾何学模様と同一かどうかは不明である(資料5、6)。
また、「ネジザウルス」シリーズのプライヤーのグリップ部分の表面には「Neji-saurus」の文字が付されている(資料5、6)。
イ 「ネジザウルス」シリーズの商品は、ホームセンター、東急ハンズ、家電量販店、ドン・キホーテなどの店舗の販売コーナーにおいて、「ネジザウルス」等の表示の下に、様々な種類の商品が多数陳列されているが、本願商標を構成する、緑色で表され、表面に直線、円などを用いた幾何学模様が付された弧状の図形と同一の図形自体を表示したプライヤー及び同種商品の展示・陳列は見受けられない(資料10の1~9)。
ウ また、「ネジザウルスGT」を含む「ネジザウルス」シリーズのプライヤーは、アマゾン、楽天、ヨドバシカメラなどのインターネット通信販売サイトにおいても「ネジザウルス」等の名称の下、他の「ネジザウルス」シリーズの各種商品とともに販売されていることがうかがえるが、本願商標を構成する、緑色で表され、表面に直線、円などを用いて幾何学模様が付された弧状の図形と同一の形状からなる図形が独立して表示されている販売サイトは、確認することができない(資料10の10~12)。
エ 「ネジザウルス」シリーズは、平成14年(2002年)から平成30年(2018年)までの間に、累計で370万本余りが販売され(資料11の1)、「ネジザウルスGT」は、平成21年(2009年)から令和元年(2019年)までの11年間に235万本余りが販売されている(資料11の2)。「ネジザウルスGT」の販売数は、請求人の他のペンチの販売数と比較すると多い(資料11の3)。
オ 「ネジザウルス」シリーズに関して、タレントの所ジョージ氏が「ネジザウルス」を愛用していること等、当該商品がテレビや雑誌において取り上げられた(資料12、資料13等)。
また、インターネット上において、「ネジザウルス」又は「ネジザウルスGT」がヒット商品であること等について記事がある(資料14等)。さらに、全国版のニュース番組、情報番組等のテレビ番組にも取り上げられた(資料15等)。
しかしながら、これらの記事等において、本願商標を構成する、緑色で表され、表面に直線、円などを用いて幾何学模様が付された弧状の図形と同一の形状からなる図形のみが独立して目を引く事例は見受けられない。
カ 「ネジザウルスGT」は、平成21年(2009年)のグッドデザイン賞、発明表彰、ものづくり大賞、などを受賞した(資料17等)。
キ 「ネジザウルス」シリーズについて、平成24年8月には「なるほど、日本の素敵な製品」に(資料7)、平成26年2月には「知的財産権活用企業事例集2014」に(資料8)、平成29年7月には「事例から学ぶ意匠制度活用ガイド」に取り上げられた(資料9)。
(2)上記(1)の事実認定によれば、以下のように判断できる。
ア 請求人は、ネジ穴が潰れたネジをつかんで外すという特徴を有するプライヤーを「ネジザウルス」シリーズとして、ホームセンター、東急ハンズ、家電量販店、ドン・キホーテなどの店舗の販売コーナーや、インターネット通信販売サイトにおいて販売している。
イ 「ネジザウルス」シリーズの商品は、平成14年(2002年)から同30年(2018年)までの間に、累計で370万本余りが販売され、特に「ネジザウルスGT」は、平成21年(2009年)から令和元年(2019年)までの11年間に235万本余りが販売され、「ネジザウルスGT」の販売数は、請求人の他のペンチの販売数と比較すると多い。
ウ 「ネジザウルスGT」のグリップ部分を、一方向から見た場合の形状及びその表面に付された模様は、本願商標の形状と同様であることがうかがえるところ、「ネジザウルスGT」の商品は、店舗の販売コーナーにおいて、「ネジザウルス」等の文字の下、シリーズの各種商品とともに陳列され、また、インターネット通信販売サイトにおいても、「ネジザウルスGT」等の文字とともに商品画像の掲載が認められるものの、いずれにおいても、「ネジザウルスGT」以外の「ネジザウルス」シリーズの多数の商品がある中で、本願商標を構成する、緑色で表され、表面に直線、円などを用いて幾何学模様が付された弧状の図形と同一の形状からなる図形のみが独立して目を引く態様で用いられていることは確認できず、本願商標と同一の図形が、商品自体の形状を超えて、自他商品識別標識としての機能を果たしているとはいい難い。
エ また、「ネジザウルスGT」を含む、「ネジザウルス」シリーズのプライヤーのグリップ部分の表面には、「Neji-saurus」の文字が付されており、当該文字が商品の出所識別機能を果たしていることは明らかである。
オ さらに、「ネジザウルス」又は「ネジザウルスGT」のプライヤーが、ヒット商品として、テレビ番組、雑誌記事、インターネット記事等で取り上げられ、グッドデザイン賞等を受賞し、「なるほど、日本の素敵な製品」等で取り上げられたとしても、これらの記事等においては、「ネジザウルス」の文字又は「ネジザウルスGT」の文字が商品の出所識別機能を果たしていることは明らかである。
他方、本願商標を構成する、緑色で表され、表面に直線、円などを用いて幾何学模様が付された弧状の図形と同一の形状からなる図形のみが独立して目を引く事例は見受けられないことからすれば、本願商標と同一の図形が、商品自体の形状を超えて、自他商品識別標識としての機能を果たしているということはできない。
カ そうすると、上記ウないしオに示した、本願商標の指定商品である「プライヤー」を取り扱う業界におけるプライヤーのグリップの色彩、形状及びその表面に付された幾何学模様に関する実情、並びに、上記1(1)のとおり、商品の形状からなる商標についての自他商品識別力に関する条文の趣旨を合わせ考慮すれば、本願商標の元になったとされる商品について、出所識別標識としての機能を果たすのは「ネジザウルスGT」の文字というべきであり、その販売期間が長いこと、販売数が多いこと、グッドデザイン賞・ものづくり大賞の受賞や表彰等を考慮したとしても、本願商標の元となった商品「プライヤー」のグリップの色彩、形状及びその表面に付された幾何学模様については、需要者が請求人の業務に係る商品であることを認識することができるものと認めることできない。
したがって、請求人のかかる主張は、採用することができない。
3 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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