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特許拒絶査定不服審判

2023-000614

PSEUDOMONAS AERUGINOSAに対して使用するためのDNA抗体構築物

審判番号
2023-000614
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-510582
請求日
2023年01月13日
審決日
2024年09月17日
公報発行日
2025年02月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】ザ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ ペンシルバニア
  • 【請求人代理人】青木 篤
  • 【請求人代理人】三橋 真二
  • 【請求人代理人】鶴田 準一
  • 【請求人代理人】南山 知広
  • 【請求人代理人】渡辺 陽一
  • 【請求人】ザ ウィスター インスティテュート オブ アナトミー アンド バイオロジー
  • 【請求人代理人】青木 篤
  • 【請求人代理人】三橋 真二
  • 【請求人代理人】鶴田 準一
  • 【請求人代理人】南山 知広
  • 【請求人代理人】渡辺 陽一
  • 【請求人】イノビオ ファーマシューティカルズ,インコーポレイティド
  • 【請求人代理人】青木 篤
  • 【請求人代理人】三橋 真二
  • 【請求人代理人】鶴田 準一
  • 【請求人代理人】南山 知広
  • 【請求人代理人】渡辺 陽一
審判長/審判官
  • 審判長 福井 悟
  • 審判官 荒木 英則
  • 審判官 北田 祐介
分類
P18 .113-Z (C12N) / P18 .536-Z (C12N) / P18 .537-Z (C12N)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号特許法36条4項1号特許法36条6項1号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-510582「PSEUDOMONAS AERUGINOSAに対して使用するためのDNA抗体構築物」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月 9日国際公開、WO2017/193101、令和 1年 7月18日国内公表、特表2019-520085〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2017年5月5日(パリ条約による優先権主張 2016年5月5日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。 令和3年 4月30日付け 拒絶理由通知書 同 年11月18日 意見書、手続補正書の提出 同 年12月24日付け 拒絶理由通知書 令和4年 9月 6日付け 拒絶査定 令和5年 1月13日 審判請求書、手続補正書の提出 第2 令和5年1月13日付け手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 令和5年1月13日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、 (補正前)「【請求項1】 1つ以上のDNAモノクローナル抗体(DMAb)又はその断片をコードする核酸分子であって、前記核酸分子が、以下からなる群: a)抗-PcrV DMAb(DMAb-αPcrV)又はその断片もしくはホモログをコードするヌクレオチド配列、ここで、前記抗-PcrV DMAbまたはその断片もしくは変異体は、 i)配列番号2、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、及び配列番号14からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して、そのアミノ酸配列の全長にわたって、少なくとも約95%の同一性を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、 ii)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、及び配列番号16からなる群から選択されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、 iii)配列番号2、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、及び配列番号14からなる群から選択されるアミノ酸配列の全長の少なくとも約95%を含む断片をコードするヌクレオチド配列、 iv)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、及び配列番号15からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して、そのヌクレオチド配列の全長にわたって、少なくとも約95%の同一性を有するヌクレオチド配列、 v)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、及び配列番号15からなる群から選択されるヌクレオチド配列、及び vi)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、及び配列番号15からなる群から選択されるヌクレオチド配列の断片、からなる群から選択される少なくとも1つを含む; b)抗-Psl DMAb(DMAb-αPsl)又はその断片もしくはホモログをコードするヌクレオチド配列、ここで、抗-Psl DMAb又はその断片もしくは変異体は、 i’)配列番号20のアミノ酸配列に対して、そのアミノ酸配列の全長にわたって、少なくとも約95%の同一性を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、 ii’)配列番号20のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、 iii’)配列番号20のアミノ酸配列の全長の少なくとも95%を含むアミノ酸配列の断片をコードするヌクレオチド配列、 iv’)配列番号19のヌクレオチド配列の全長にわたって少なくとも約95%の同一性を有するヌクレオチド配列、 v’)配列番号19のヌクレオチド配列の少なくとも95%を含むヌクレオチド配列の断片、及び vi’)配列番号19のヌクレオチド配列、からなる群から選択される少なくとも1つを含む;及び c)二重特異性抗-PcrV抗-Psl DMAb(DMAb-BiSPA)又はその断片もしくはホモログをコードするヌクレオチド配列、ここで、前記二重特異性抗-PcrV抗-Psl DMAb又はその断片もしくは変異体は、 i”)配列番号22をコードするヌクレオチド配列、 ii”)配列番号17、及び配列番号19からなる群から選択されるヌクレオチド配列に対して、そのヌクレオチド配列の全長にわたって、少なくとも約95%の同一性を有するヌクレオチド配列、及び iii”)配列番号17、及び配列番号19からなる群から選択されるヌクレオチド配列の少なくとも95%を含むヌクレオチド配列の断片、 iv”)配列番号17、及び配列番号19からなる群から選択されるヌクレオチド配列、からなる群から選択される少なくとも1つを含む; から選択される少なくとも1つを含む、前記核酸分子。」 から、 (補正後)「【請求項1】 1つ以上のDNAモノクローナル抗体(DMAb)又はその断片をコードする核酸分子であって、前記核酸分子が、以下からなる群: a)抗-PcrV DMAb(DMAb-αPcrV)又はその断片もしくはホモログをコードするヌクレオチド配列、ここで、前記抗-PcrV DMAbまたはその断片もしくは変異体は、 i)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、及び配列番号16からなる群から選択されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、及び ii)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、及び配列番号15からなる群から選択されるヌクレオチド配列、 からなる群から選択される少なくとも1つを含む; b)抗-Psl DMAb(DMAb-αPsl)又はその断片もしくはホモログをコードするヌクレオチド配列、ここで、前記抗-Psl DMAb又はその断片もしくは変異体は、 i’)配列番号20のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、及び ii’)配列番号19のヌクレオチド配列、からなる群から選択される少なくとも1つを含む;及び c)二重特異性抗-PcrV抗-Psl DMAb(DMAb-BiSPA)又はその断片もしくはホモログをコードするヌクレオチド配列、ここで、前記二重特異性抗-PcrV抗-Psl DMAb又はその断片もしくは変異体は、 i”)配列番号22をコードするヌクレオチド配列、 ii”)配列番号17、及び配列番号21からなる群から選択されるヌクレオチド配列、からなる群から選択される少なくとも1つを含む; から選択される少なくとも1つを含む、前記核酸分子。」 に補正された。(下線部は補正箇所である。) 2.補正の適否 本件補正は、「i)配列番号2、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、及び配列番号14からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して、そのアミノ酸配列の全長にわたって、少なくとも約95%の同一性を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」等の「アミノ酸配列の全長にわたって、少なくとも約95%の同一性を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」の選択肢、及び、「iii)配列番号2、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、及び配列番号14からなる群から選択されるアミノ酸配列の全長の少なくとも約95%を含む断片をコードするヌクレオチド配列」等の「アミノ酸配列の全長の少なくとも約95%を含む断片をコードするヌクレオチド配列」の選択肢を削除することを含むものである。 そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。 よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものを含むと認められる。 そこで、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)(以下、「独立特許要件」という。)について、以下で検討する。 3.独立特許要件の検討 (1)特許法第29条第1項第3号(いわゆる新規性の欠如)について ア.引用文献の記載 原査定の拒絶の理由で引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である国際公開第2015/171504号(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、引用文献は英文であるため、以下では当審による訳文を示す。また、下線は当審合議体が付加した。 (ア)請求項1 「1.シュードモナスPslへ結合する結合ドメインとシュードモナスPcrVへ結合する結合ドメインを含む、二重特異性抗体。」 (イ)請求項13~15 「13.請求項1~12のいずれか一項に記載の二重特異性抗体であって、Bs-2-GLO、Bs-3-GLO、またはBs-4-GLOを含むもの。 14.請求項1~13のいずれか一項に記載の二重特異性抗体を含むかまたは産生する細胞。 15.請求項1~13のいずれか1項に記載の二重特異性抗体をコードするポリヌクレオチドを含む、単離されたポリヌクレオチド分子。」 (ウ)段落0037 「軽鎖および重鎖は、構造的および機能的に相同性のある領域に分けられる。「定常」および「可変」という用語は機能的に使用される。この点で、軽鎖(VL)および重鎖(VH)部分の両方の可変ドメインが抗原認識および特異性を決定することは理解されるであろう。」 (エ)例1(段落0195~0228) 「例1:WapR-004/V2L2二重特異性抗体および関連抗体の構築 [0195] WapR-004+V2L2の組み合わせはシュードモナスの攻撃に対する防御を提供するため(例えば、PCT出願番号PCT/US2013/068609を参照)、二重特異性構築物が生成された。構築物の製造は、TNF-α(IgG)およびANG-2(ScFv)に結合するテンプレート二重特異性抗体から開始した。 [0196] これらの二重特異性抗体の構成要素は、PCT出願番号PCT/US2013/068609で開示されている。これらには、IgG形式とScFv形式の両方の抗Psl抗体WapR-004(W4)、W4-RAD、W4-RAD-2C、およびPsl0096、および抗PcrV抗体V2L2およびV2L2-MDが含まれる。これらの抗体のVHおよびVLアミノ酸配列は、表2に示される。 表2:抗体のブロックを構築するアミノ酸配列 …… [図:0001418536000001.jpg] …… Bs4-GLOの作成: [0217] Bs4-GLOは、IgGアームとしてV2L2MD(germ-lined and lead optimized V2L2)を含み、ヒンジ領域に挿入されたPsl0096 scFv(germ-lined and lead optimized W4)を含む。 [0218] プラスミドpOE-V2L2MD IgGベクターをBssHII/SalIで消化した。挿入バンド(V2L2MD LC および V2L2MD-VH を含む)をゲル精製した。Bs4-V2L2/W4-RAD-2C も BssHII/Sallで消化し、ベクターのバンドを精製してV2L2MDインサートと連結し、Stable 3コンピテントセル (Life Technologies)を形質転換した。コロニーは正しいV2L2MD-VLおよびVH挿入のために配列決定された。このベクターには、V2L2MD IgGアームと W4-RAD-2C scFvが含まれている。 [0219] 次に、このベクターをBamHIで消化し、ベクターバンドを精製した。VH-44およびVL-100の位置にシステインを含むPsl0096 scFvは、Operonによって合成された。次のプライマーを使用して、Bs4ベクターのscFvを増幅した。……PCR 増幅後、Psl0096 scFv をゲル精製し、……Bs4-V2L2MDベクターにライゲーションし、次に……コンピテントセルを形質転換した。コロニーは正しいPsl0096 scFv挿入のために配列決定され、このベクターはBs4-GLOと名付けられた。 …… [0225] Bs2-GLO、Bs3-GLOおよびBs4-GLOのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を以下に示す。 …… [0228] Bs4-V2L2MD/Psl0096 [図:0001418536000002.jpg] [図:0001418536000003.jpg] 」 (オ)例3(段落0243) 「例3:BS4-GLO二重特異性抗体の代替作成 BS4-GLO(Germlined Lead Optimized)二重特異性構築物は、抗Psl scFv(Psl0096 scfv)およびV2L2-MD(VH+VL)を含んで生成された。BS4-GLO軽鎖は、Germlined Lead Optimized抗PcrV抗体軽鎖可変領域(すなわち、V2L2-MD)を含んでなる。BS4-GLO重鎖は、式VH-CH1-H1-L1-S-L2-H2-CH2-CH3で構成され、ここで、CH1は重鎖定常領域ドメイン1、H1は第1の重鎖ヒンジ領域フラグメント、L1は第1のリンカー、Sは抗PcrV ScFv分子、L2は第2のリンカー、H2は第2の重鎖ヒンジ領域フラグメント、CH2は重鎖定常領域ドメイン2、CH3は重鎖定常領域ドメイン3である。 [図:0001418536000004.jpg] GLO(germlined lead optimized)V2L2(すなわち、V2L2-MD)軽鎖可変領域は下線が引かれている [図:0001418536000005.jpg] [図:0001418536000006.jpg] GLO(germlined-lead optimized)V2L2(すなわち、V2L2-MD)重鎖可変領域は下線が引かれている。;CH1は括弧[ ]で囲まれている;GLO(germlined-lead optimized)W4-RAD(すなわち、Psl0096)scFvは太字斜体で示され、G4Sリンカー(配列番号40)は太字斜体で下線が引かれており、ヒンジ領域は二重下線が引かれている。」 イ.引用発明・対比 引用文献には、「SEQ ID NO:7」(以下では「配列番号7」と称する。)として「AIQMT……NRGEC」というアミノ酸配列が記載されるとともに、これがシュードモナスPslへ結合する結合ドメインとシュードモナスPcrVへ結合する結合ドメインを含む二重特異性抗体である「BS4-GLO」の軽鎖に係るアミノ酸配列であって、V2L2-MDの軽鎖可変領域を含むこと、V2L2-MDが抗PcrV抗体にあたることが記載されている((ア)、(イ)、(エ)、(オ))。 また、(エ)によると、Bs4-GLOベクターの作成に際してプラスミドpOE-V2L2MD IgGベクターやBamHI等のDNA切断能を有する制限酵素を用いること、その配列としてBS4-GLOの軽鎖のアミノ酸配列である配列番号7とこれをコードするポリヌクレオチド配列である「SEQ ID NO:11」が記載されていることから、引用文献には「配列番号7」で表されるアミノ酸配列を有する、BS4-GLOの軽鎖をコードする核酸分子が記載されているといえる。 以上のことから、引用文献には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「配列番号7で示されたアミノ酸配列を有し、V2L2-MDの軽鎖可変領域を含む、シュードモナスPslへ結合する結合ドメインとシュードモナスPcrVへ結合する結合ドメインを含む二重特異性抗体であるBS4-GLOの軽鎖をコードする、ヌクレオチド配列を有する核酸分子。」 本件補正発明のうち、「a)抗-PcrV DMAb(DMAb-αPcrV)又はその断片もしくはホモログをコードするヌクレオチド配列、ここで、前記抗-PcrV DMAbまたはその断片もしくは変異体は、」「i)」「配列番号4」「からなる群から選択されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」「を含む」「核酸分子」の発明と引用発明を対比する。 本件補正発明の配列番号4(以下では「本願配列番号4」と称する。)で表されるアミノ酸配列と引用発明の配列番号7で表されるアミノ酸配列を、アラインメントにより確認すると、以下のとおり、214残基中213残基が同一であって、約99.5%の同一性を示す。 [図:0001418536000007.jpg] ここで、シュードモナスPslへ結合する結合ドメインとシュードモナスPcrVへ結合する結合ドメインを含む二重特異性抗体は、シュードモナスPcrVへの結合活性も示すから、引用発明の二重特異性抗体であるBS4-GLOが、抗-PcrV抗体としての性質を示すことは明らかである。 本願明細書には「ホモログ」の具体的定義は記載されておらず、一般的な語義により解釈されるべきである。更に、「変異体」について、 『核酸に関して本明細書で使用する「変異体」は、(i)基準ヌクレオチド配列の一部または断片、(ii)基準ヌクレオチド配列またはその一部の相補体、(iii)基準核酸またはその相補体と実質的に同一の核酸、または、(iv)ストリンジェントな条件下で、基準核酸、その相補体、または、それらと実質的に同一の配列とハイブリダイズする核酸のことを意味し得る。』(段落0059)、 『ペプチドまたはポリペプチドに関して使用する「変異体」は、アミノ酸の挿入、欠失、または、保存的置換によってアミノ酸配列が異なっているが、少なくとも1つの生物活性を保持しているものを意味し得る。』(段落0060) と記載されており、「ホモログ」と「変異体」は、少なくとも、アミノ酸1残基程度の配列の欠失、置換、付加といった変異に基づくものを包含すると解される。 よって、引用発明の配列番号7と本願配列番号4とは、アミノ酸1残基の違いがあるのみで、約99.5%という高い同一性を有し、前者は後者の「ホモログ」又は「変異体」の関係にあるといえるから、引用発明の「配列番号7で示されたアミノ酸配列を有する、V2L2-MDの軽鎖可変領域を含む、シュードモナスPslへ結合する結合ドメインとシュードモナスPcrVへ結合する結合ドメインを含む二重特異性抗体であるBS4-GLOの軽鎖」は、本件補正発明の「配列番号4のアミノ酸配列」を有する「抗-PcrV DMAb」の「ホモログ」又は「変異体」に相当する。 そうすると、引用発明は、「1つ以上のDNAモノクローナル抗体(DMAb)又はその断片をコードする核酸分子」であることに加え、「配列番号4のアミノ酸配列」を有する「抗-PcrV DMAb」の「ホモログ」又は「変異体」「をコードするヌクレオチド配列」を含む核酸分子でもあるため、本件補正発明との間で、実質的な相違点は見出せない。 ウ.小括 以上からすると、本件補正発明は、他の選択肢の「核酸分子」について検討するまでもなく、引用文献に記載された発明であるといえるので、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (2)特許法第36条第4項第1号(いわゆる実施可能要件違反)について ア.本願明細書の記載 本願発明の核酸分子を用いた「1つ以上のDNAモノクローナル抗体(DMAb)又はその断片」の製造に関して、発明の詳細な説明には以下の記載がある。なお、下線は当審合議体が付加した。 (ア) 段落0066~0074 「【0066】 ある実施形態において、当該核酸分子は、抗-PcrV抗体(DMAb-αPcrV)をコードするヌクレオチド配列を含む。ある実施形態において、DMAb-αPcrVをコードするヌクレオチド配列は、DMAb-αPcrVの可変VHまたはVL領域をコードするコドン最適化核酸配列を含む。ある実施形態において、DMAb-αPcrVの可変VH領域をコードするヌクレオチド配列は、配列番号2に記載のアミノ酸配列をコードする。ある実施形態において、DMAb-αPcrVの可変VL領域をコードするヌクレオチド配列は、配列番号4に記載のアミノ酸配列をコードする。ある実施形態において、DMAb-αPcrVの可変VH領域をコードするヌクレオチド配列は、配列番号12に記載のアミノ酸配列をコードする。ある実施形態において、DMAb-αPcrVの可変VL領域をコードするヌクレオチド配列は、配列番号16に記載のアミノ酸配列をコードする。 【0067】 ある実施形態において、抗-PcrV抗体をコードするヌクレオチド配列は、配列番号2に記載の可変VH領域、及び、配列番号4に記載の可変VL領域をコードする。ある実施形態において、抗-PcrV抗体をコードするヌクレオチド配列は、配列番号12に記載の可変VH領域、及び、配列番号16に記載の可変VL領域をコードする。ある実施形態において、抗-PcrV抗体をコードするヌクレオチド配列は、配列番号6、配列番号8、配列番号10、及び、配列番号14から選択されるアミノ酸配列をコードする。 【0068】 ある実施形態において、DMAb-αPcrVの可変VH領域をコードするヌクレオチド配列は、配列番号1に記載の配列を含む。ある実施形態において、DMAb-αPcrVの可変VL領域をコードするヌクレオチド配列は、配列番号3に記載の配列を含む。ある実施形態において、DMAb-αPcrVの可変VH領域をコードするヌクレオチド配列は、配列番号11に記載のヌクレオチド配列を含む。ある実施形態において、DMAb -αPcrVの可変VL領域をコードするヌクレオチド配列は、配列番号15に記載の配列を含む。 【0069】 ある実施形態において、DMAb-αPcrVをコードするヌクレオチド配列は、配列番号1に記載の可変VH配列、及び、配列番号3に記載の可変VL配列を含む。ある実施形態において、DMAb-αPcrVをコードするヌクレオチド配列は、配列番号11に記載の可変VH配列、及び、配列番号15に記載の可変VL配列を含む。ある実施形態において、DMAb-αPcrVをコードするヌクレオチド配列は、配列番号5、配列番号7、配列番号9、及び、配列番号13から選択される配列を含む。 【0070】 ある実施形態において、DMAb-αPcrVをコードするヌクレオチド配列は、リーダー配列をコードする配列に作動可能に連結される。様々な実施形態において、リーダー配列に作動可能に連結した配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、及び、配列番号16を、それぞれ、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、及び、配列番号41に記載している。 【0071】 ある実施形態において、当該核酸分子は、抗-Psl抗体(DMAb-αPsl)をコードするヌクレオチド配列を含む。ある実施形態において、DMAb-αPslをコードする当該ヌクレオチド配列は、DMAb-αPslの可変VH領域、及び、可変VL領域をコードするコドン最適化核酸配列を含む。ある実施形態において、DMAb-αPslをコードする当該ヌクレオチド配列は、DMAb-αPslの可変VH領域、及び、可変VL領域をコードするコドン最適化核酸配列を含む。ある実施形態において、DMAb-αPslをコードするヌクレオチド配列は、配列番号20に記載のアミノ酸配列をコードする。ある実施形態において、DMAb-αPslをコードするヌクレオチド配列は、配列番号19に記載のヌクレオチド配列を含む。 【0072】 ある実施形態において、DMAb-αPslをコードするヌクレオチド配列を、リーダー配列をコードする配列に作動可能に連結する。様々な実施形態において、リーダー配列に作動可能に連結した配列番号19及び配列番号20は、それぞれ、配列番号44及び配列番号45に記載してある。 【0073】 ある実施形態において、当該核酸分子は、二重特異性抗体をコードするヌクレオチド配列を含む。ある実施形態において、二重特異性抗体は、抗-PcrV、及び、抗-Psl二重特異性抗体(DMAb-BiSPA)である。ある実施形態において、DMAb-BiSPAをコードする当該ヌクレオチド配列は、DMAb-BiSPAの可変VH領域、及び、可変VL領域をコードするコドン最適化核酸配列を含む。ある実施形態において、DMAb-BiSPAをコードするヌクレオチド配列は、配列番号18及び配列番号22から選択されるアミノ酸配列をコードする。ある実施形態において、DMAb-BiSPAをコードするヌクレオチド配列は、配列番号17及び配列番号21から選択されるヌクレオチド配列を含む。 【0074】 ある実施形態において、二重特異性抗体をコードするヌクレオチド配列を、リーダー配列をコードする配列に作動可能に連結する。様々な実施形態において、リーダー配列に作動可能に連結した配列番号17、配列番号18、配列番号21、及び、配列番号22を、それぞれ、配列番号42、配列番号43、配列番号46、及び、配列番号47に記載している。」 (イ) 実施例 「【0207】 11.実施例 以下の例において、本発明をさらに例示する。…… 【0208】 例1:改変二重特異性DNAがコードしたIgG抗体(DMAb)は、致死量のpneumoniaを接種したモデルにおけるPseudomonas aeruginosaを防御する 本明細書で示した研究は、インビボでの産生及び活性を目的とした、単一特異性抗-PcrV IgG(DMAb-αPcrV)、及び、臨床候補二重特異性抗体ABC123(DMAb-BiSPA)をコードする合成DMAbの開発と分析を説明している。インビボでのDMAb産生は、双方の構築物について、機能的及び防御的な力価を迅速に生み出すことを可能にする。これらのDMAbは、持続可能であり、また、主要な器官のP.aeruginosaコロニー形成の比較可能な予防に加えて、バイオプロセスで産生したモノクローナル抗体と同等の効力を有することができる。 …… 【0213】 DMAb構築と発現 【0214】 単一特異性抗-P.aeruginosa PcrVタンパク質(クローンV2L2MD)(Warrener et al., 2014,Antimicrob Agents Chemother 58,4384-4391)、及び、改変した二重特異性抗-PDiGiandomenico et al., 2014, Sci Transl Med 6,26.aeruginosa(PcrV及びPslの二重特異性、クローンABC123)(DiGiandomenico et al., 2014, Sci Transl Med 6,262ra155)の配列を得た。ヒトIgG1重鎖、及び、Igκ軽鎖の各々のヌクレオチド配列を、マウス及びヒトの双方のバイアスについてコドンを最適化して、哺乳動物細胞における発現を増強した(……)。これらの配列についてRNA最適化も行って、mRNA安定性の改善とリボソームでの効率的な翻訳とを図り(……)、タンパク質収量の増大を目指した(……)。次いで、最適化した重鎖及び軽鎖遺伝子を、ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)プロモーター、及び、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリAの制御下で、pGX0001 DNA発現ベクターに挿入した。 【0215】 双方の遺伝子は、フーリン開裂部位とP2Aペプチドとで分離されたcisでコードされていた。その結果は、2つのプラスミド、DMAb-αPcrV、及び、DMAb-BiSPAであった。HEK 293T細胞を、GeneJammer(Agilent,Wilmington,DE)トランスフェクション試薬を用いて、DMAb DNAでトランスフェクトした。細胞上清、及び、細胞溶解物を、トランスフェクションの48時間後に回収し、そして、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、及び、ウエスタンブロットによって、ヒトIgG産生についてアッセイした。 …… 【0227】 マウス 【0228】 メスの6~8週齢のB6.Cg-FoxnlnuJ、及び、BALB/cマウスを、……動物施設に収容した。……動物たちに対して、TAまたは四重筋に、100μg~300μgのDMAb-αPcrVまたはDMAb-BiSPAのIM注射を行う30分~1時間前に、ヒアルロニダーゼ(400U/ml, Sigma Aldrich)の筋肉内(IM)予備注射を行い、続いて、電気穿孔IM-EPをした。投与の後に、DMAbの血清レベルをモニターした。 【0229】致命的肺炎接種 【0230】 接種前の-5日目に、BALB/cマウス(n=8/群)に対して、IM-EPによって、100μgまたは300μgのDMAb-αPcrVまたはDMAb-BiSPAを投与した。無関係のデング熱ウイルスDMAb-DVSF320を、コントロールとして含めた。第4群の動物に対して、接種前の-1日目に、精製タンパク質IgG ABC123(2mg/kg)を腹腔内(IP)に注射した。0日目に、動物たちに対して、悪性抗菌耐性Pseudomonas aeruginosa株6077の9.75e5-1.0e6コロニー形成単位(CFU)を鼻腔内に接種をした。16に記載したように、生存に関して、鼻腔内接種の後、6日間、動物たちをモニターした。すなわち、動物たちを、ケタミン及びキシラジンで麻酔し、続いて、0.05mlの細菌接種物を鼻腔内に投与した。臓器負荷分析については、感染の24時間後に、DMAbで処置した動物から、肺、脾臓、及び、肝臓を摘出し、続いて、細菌CFUの計数のために、Luria寒天プレートの均質化処理とプレーティングを行った。IL-1β、IL-6、及び、KC/GROを、製造業者の指示に従って、マルチプレックスキット(Meso Scale Diagnostics)を用いて、肺ホモジネートの上清で定量をした。DMAbとメロペネム(MEM)との併用実験については、感染の4時間後にMEMを皮下投与した。 【0231】 組織病理 【0232】 感染48時間後に肺を摘出し、そして、短くとも48時間、10%中性緩衝ホルマリンで固定した。次いで、固定組織を常法で処理し、そして、パラフィンに包埋し、厚さ3μmの切片にし、次に、実験条件に対して盲検された病理学者による組織学的評価のために、Gillのヘマトキシリン及びエオシンで染色した。 …… 【0235】 実験の結果を、以下に説明する。 【0236】 抗-P.aeruginosa DNA送達モノクローナル抗体(DMAb)のデザイン、及び、インビトロ発現 【0237】 至適発現のためにDNA発現ベクター系に改めてコードされる2つの抗-P.aeruginosaモノクローナル抗体遺伝子は、前述した、致命的P.aeruginosa感染に対する強力なインビボでの保護活性に基づいている。当該ヒト免疫グロブリンγ1(IgG1)重鎖配列、及び、軽鎖配列(Fab及びFc部分)は、ヒト及びマウスのコドンバイアスの両方を考慮して最適化したヌクレオチド、及び、アミノ酸配列であり、そして、pGX0001 DNAプラスミド主鎖での単一のポリシストロニック単位としてコードされており、その結果、2つの構築物、DMAb-αPcrV、及び、DMAb-BiSPAをもたらした(図1A)。当該重鎖及び軽鎖は、単一のmRNA転写物として発現され、次いで、ブタのテッショウウイルス-1 2A(P2A)開裂部位で翻訳後に開裂する。インビボでの最終産物である抗体からP2Aを完全に除去するために、フーリン開裂部位(RGRKRRS;配列番号23)も含まれていた。 【0238】 全長ヒトIgG1抗体を発現する各構築物の能力を、HEK293T細胞のインビトロでのトランスフェクションの後に評価した。48時間後に、DMAbでトランスフェクトした細胞、及び、上清を回収し、そして、全IgG ELISAを、細胞溶解物、及び、培地で行い、それにより、DMAb IgGの産生、及び、分泌を確認した(図1B、パネルi及びii)。ウエスタンブロットを行って、抗体重鎖、及び、軽鎖の両方を発現していることを確認した。二重特異性DMAbの重鎖は、2つの可変領域特異性をコードするので、大きな分子量で認められる(図1C)。pGX0001 DNAベクターを、陰性コントロールとして使い、及び、精製した抗-PcrV IgG1を陽性コントロールとして使った。 【0239】 抗-P.aeruginosa DMAb-αPcrV、及び、DMAb-BiSPAのマウスでの発現 【0240】 インビトロでの発現を確認した後に、DNA送達したDMAb-αPcrV、及び、DMAb-BiSPAのマウスでの発現を調べた。マウス筋肉におけるDMAb発現を確認するために、抗-P.aeruginosa DMAb-αPcrV(100μg)、DMAb-BiSPA(100μg)、コントロールのDMAb-DVSF3(100μg)、または、コントロールのpGX0001空ベクター(100μg)を、BALB/cマウスに対して、前脛骨筋(TA)へ筋内注射(IM)をして投与を行い、続いて、筋肉内電気穿孔(IM-EP)を行った。注射の3日後に筋肉組織を採取し、そして、切片を、ヤギ抗-ヒトIgG Fc抗体でプローブし、続いて、AF488に接合したロバ抗-ヤギIgGで検出した(図2)。インビボでの発現を確認した後に、さらなる実験を行って、全身循環におけるDMAbレベルをアッセイした。ヒトIgG1は、マウス免疫系によって非自己として認識されるので、免疫正常マウスにおいて抗-抗体応答を誘導する。したがって、T細胞を有しておらず、かつ、非機能性B細胞を有している免疫正常B6.Cg-Foxnlnu/J無胸腺マウス(ヌード)で発現を評価した。抗-P.aeruginosa DMAb-αPcrV(100μg)、または、DMAb-BiSPA(100μg)を、ヌードマウス(n=5/群)のTAまたは大腿四頭筋(quad)にIM投与し、続いて、IM-EPを行った。血清を回収して、循環においてヒトIgG1発現を長期間モニターした。投与後の100~120日間にわたって、双方のDMAbの発現が観察されたことは、これらの新規なDNA送達モノクローナル抗体が、全身循環において検出可能な有意な量で骨髄筋において産生され、数週間にわたって発現が続くという仮説を支持している(図3A及び図3D)。 【0241】 次に、P. aeruginosa感染のモデルとして一般的に使用されている免疫正常BALB/cマウスにおいて、DMAb発現を評価した。マウス(n=10/群)に対して、DMAb-αPcrVまたはDMAb-BiSPAの100μg及び300μg用量(3つの注入箇所×100μg)を、IM-EPで投与した。注射をして7日後に、ピークのDMAb発現レベルが出現し、それらは、DMAb-αPcrV、及び、DMAb-BiSPAについて、100μg用量では、それぞれ、7.1~17.1μg/ml、及び、2.9~7.2μg/mlであり、300μg用量では、それぞれ、31.2~49.7μg/mL、及び、3.2~12.7μg/mLであった(図3B及び図3E)。BALB/cマウスにおけるヒトIgG1 DMAb発現は、14日目までに、マウス免疫系によって排除された(図4A及び図4B)。比較のために、マウスIgG2a DMAbもデザインした。このことは、免疫正常BALB/cマウスにおける100日超の長期発現を実証しており、免疫系による排除を受けることなく、DMAbの長期発現を実証する(図4C)。DMAbの標的抗原特異性を確認するために、7日後に投与した血清もELISAで組換えPcrVタンパク質への結合に関するアッセイと確認も行った(図3C及び図3F)。 【0242】 致命的肺炎モデルにおけるDMAb-αPcrV、及び、DMAb-BiSPAの評価 【0243】 インビトロ及びインビボでの発現の研究は、DMAbが、組換えPcrVタンパク質に結合する完全なヒトIgG1抗体を形成することを示した。インビボでDNA送達したDMAbの機能的活性に対処するために、致命的なマウス肺炎モデルを用いて、高病原性で、かつ、高細胞毒性のP.aeruginosa株6077(PA6077)に対する防御を評価した。PA6077を接種する5日前に、マウスに対して、DMAb-αPcrV(300μg)、DMAb-BiSPA(300μg)、または、デングウイルスを標的とする無関係なコントロールのDMAb-DVSF3(300μg)を注射した(Flingaiet al, 2015, Sci Rep 5, 12616)。接種をする1日前に、マウスに対して、タンパク質ABC123 IgG(2mg/kg)を投与する、陽性コントロール群も使用した。DMAb-αPcrV、及び、DMAb-BiSPAで処置した動物から無作為に選択した動物を安楽死させて、接種時の血清でのDMAb発現レベルをモニターし、ならびに、発現したDMAbの効力を評価した。図5Aに示したように、単一特異性DMAb-αPcrV、及び、二重特異性DMAb-BiSPAの双方は、血清から全ヒトIgGを定量する場合に、それぞれ、約16、及び、8μg/mlの中央値力価を示した。インビボで発現したDMAb-αPcrV、及び、DMAb-BiSPAの効力を、血清での抗-細胞毒性活性に基づいて、抗体発現を定量することで評価した。定量化方法に差異は認められず、このことは、インビボで発現された単一特異性、及び、二重特異性DMAb-IgGが、バイオプロセスで生成したIgGと比較して、完全に機能的であり、かつ、同等の活性を有することを示している(図5A)。次いで、各群での残余の動物に対して、致死量のP. aeruginosaを鼻腔内に接種して感染させた後の6日間(144時間)の生存をモニターした。コントロールのDMAb-DVSF3を与えた動物は、24~55時間以内に死亡した。これとは対照的に、DMAb-αPcrVまたはDMAb-BiSPAのいずれかを与えられた約94%の動物(15/16)は、接種をしても生存していた(図5B、DMAb-DVSF3と比較してp<0.0001)。予想した通りに、ABC123 IgG(2mg/kg)を投与した陽性コントロールの動物は、すべてが、接種を受けても生存していた。加えて、100μg(1箇所×100μg)、200μg(2箇所×100μg)、または、300μg(3箇所×100μg)のDMAb-BiSPAを用いた処置を受け、次いで、P. aeruginosaを感染させたマウスは、濃度依存的な生存を示した(図5C)。これらの結果は、これらの動物の血清で発現したDMAb-BiSPAの定量と一致しており、DMAb-BiSPAの血清タンパク質濃度は、電気穿孔を受けたDNAの量の減少に伴って減る(図5D)。 【0244】 抗-Pseudomonas DMAbが、肺の細菌負荷を減らし、そして、全身の細菌の播種を防止する能力について分析をした。P. aeruginosaを接種して24時間の後に、肺、脾臓、及び、腎臓をアッセイし、続いて、各組織におけるコロニー形成単位(CFU)の定量を行った。DMAb-BiSPAで処置した場合では、CFU、肺での負荷については有意な減少が認められたが、DMAb-αPcrVで処置した動物では認められなかった(図6A)。重要なことに、DMAb-BiSPAで処置した動物の肺における細菌負荷は、タンパク質ABC123 IgGで処置したマウスで認められた肺での負荷と類似しており、また、双方の抗-PseudomonasDMAbは、コントロールのDMAb-DVSF3と比較して、脾臓及び腎臓への細菌播種を抑制した(図6A)。加えて、DMAb-αPcrV、DMAb-BiSPA、及び、ABC123 IgGは、コントロールのDMAb-DVSF3で処置したマウスと比較して、感染動物の肺水腫の予防に対して有効であることが、肺重量を測定して明らかとなった(図6B)。これらの結果と一致して、炎症性サイトカインIL-1β、及び、IL-6、ならびに、ケモカインKC/GRO(図6C)もまた、コントロールのDMAb-DVSF3と比較して、抗-Pseudomonas DMAbで処置したマウス、及び、タンパク質IgGで処置したマウスにおいて減少していた。非感染動物とPA6077を接種して24時間後の感染動物との間で、血清IgGレベルを比較した(図6D)。まとめると、このデータは、DNA送達モノクローナル抗体が、骨格筋においてインビボで産生されており、そして、保護活性を媒介し、また、外因的に産生したIgG モノクローナル抗体と同様の効力を示すことを示唆している。 【0245】 接種後の肺組織病理 【0246】 感染の48時間後に採取した肺組織の病理は、DMAb-DVSF3で処置した動物での顕著な肺胞炎を実証しており、同組織は、出血及び肺胞壊死の領域に加えて、肺胞及び脈管周囲空間内への好中球及びマクロファージの浸潤を有していた。これとは対照的に、上記した肺上清由来の炎症性サイトカイン及びケモカインの減少とも符合して、DMAb-BiSPAで処置した動物において、主に好中球と少なめのマクロファージとの緩やかな集団による炎症は顕著に減少しており、これは、DMAb-αPcrV及びコントロールのABC123 IgG群におけるのと同様の変化であった(図7)。 【0247】 抗生物質とDMAbとの併用 【0248】 グラム陰性またはP. aeruginosa感染が疑われる場合には、メロペネム(MEM)などの広域カルバペネム系抗生物質を投与する。さらに、コリスチンなどの最終手段的な抗生物質投与計画は、ヒトでの高毒性と関連しており(……)、また、それらの細菌が、さらなる抗菌抵抗性を獲得する可能性がある(……)。したがって、これらのリスクを低減するための代替的かつ補助的な戦略が、非常に有利である。DMAb-BiSPA処置の考え得る適用を、MEMと組み合わせて評価した。これらの実験では、必要量以下の用量のMEM(2.3mg/kg)を用いて、抵抗性細菌に感染した患者において遭遇する不適切な薬物暴露、及び、DMAb-BiSPAの必要量以下の用量(100μg、図5Cで同定した)をシミュレーションした。これらの必要量以下の用量を組み合わせると、DMAb-BiSPAのみを投与した動物での10%と比較して、67%の生存期間が得られた(p=0.026、図8)。MEMのみ、または、DMAb-DVSF3を投与したコントロールのマウスは、致命的接種をすると死亡した。ここまでをまとめると、このことは、DMAb処置の適用を、独立した処置として、あるいは、既存の抗生物質投与計画との組み合わせのいずれかにまで拡大する。さらに、このデータは、DMAb投与が、精製IgGモノクローナル抗体と同様に機能し、そして、標準の抗生物質処置計画と組み合わせた場合に、強化された保護活性を媒介できるという仮説を支持する。 …… 【0253】 【表1-1】 [図:0001418536000008.jpg] 【表1-2】 [図:0001418536000009.jpg] 【表1-3】 [図:0001418536000010.jpg] 」 イ.実施可能要件の判断 発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するか否かは、明細書の発明の詳細な説明に、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているか否かを検討して判断すべきものと解される。 この観点で本願明細書の発明の詳細な説明を検討すると、本件補正発明では「1つ以上のDNAモノクローナル抗体(DMAb)又はその断片をコードする」という発明特定事項を有するから、本件補正発明が実施可能要件に適合するためには、本願明細書の発明の詳細な説明に、本件補正発明の「核酸分子」を用いることで「1つ以上のDNAモノクローナル抗体(DMAb)又はその断片」が製造し得ることについて当業者が認識できる記載が必要であるといえる。 ここで、請求項1や上記ア(ア)の記載から、a)~c)のそれぞれで使用される核酸分子のヌクレオチド配列を理解でき、実施例であるア(イ)の記載より、a)やc)に関して、クローン製造時に使用された核酸分子がa)、c)のいずれであるかは不明であるものの、「単一特異性抗-P.aeruginosa PcrVタンパク質(クローンV2L2MD)」及び「改変した二重特異性抗-PDiGiandomenico et al., 2014, Sci Transl Med 6,26.aeruginosa(PcrV及びPslの二重特異性、クローンABC123)」という「1つ以上のDNAモノクローナル抗体(DMAb)」が製造されたことは理解できる。 しかし、b)の 「i’)配列番号20のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、及び ii’)配列番号19のヌクレオチド配列、からなる群から選択される少なくとも1つを含む」 核酸分子より、具体的に如何なる「抗-Psl DMAb(DMAb-αPsl)」が製造できるのかは、本願明細書において何ら記載されていない。 また、上記のとおり「クローンV2L2MD」や「クローンABC123」が得られたことが記載されるものの、その作製時に使用された核酸分子がa)、c)のいずれであるかは示されておらず、請求項1でa)の 「i)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、及び配列番号16からなる群から選択されるアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、及び ii)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、及び配列番号15からなる群から選択されるヌクレオチド配列、 からなる群から選択される少なくとも1つを含む」 核酸分子や、c)の 「i”)配列番号22をコードするヌクレオチド配列、 ii”)配列番号17、及び配列番号21からなる群から選択されるヌクレオチド配列、からなる群から選択される少なくとも1つを含む; から選択される少なくとも1つを含む」 核酸分子が挙げられていたとしても、これによって直ちにb)で挙げられた核酸分子により「抗-Psl DMAb(DMAb-αPsl)」が製造できたと解することはできない。 したがって、本願明細書の記載及び本願の出願時の技術常識を参酌しても、本件補正発明を実施するには当業者に過度の試行錯誤・実験を要するものと認められる。 ウ.小括 以上からすると、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件補正発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないので、本件補正発明は、特許法第36条第4項第1号の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (3)特許法第36条第6項第1号(いわゆるサポート要件違反)について ア.本願発明の課題 本願明細書の段落0004の記載より、本件補正発明が課題しようとする課題は「Pseudomonas aeruginosa感染、及び、バイオフィルム形成を、予防、及び/または、治療する改善された治療方法」を提供することにあるといえる。 イ.本願明細書の記載 本願明細書には(2)アで挙げた記載に加え、Pseudomonas aeruginosaの感染やバイオフィルム形成に関連して以下の記載がある。また、下線は当審合議体が付加した。 (ア) 段落0054 「本明細書で互換的に使用する「対象」及び「患者」とは、あらゆる脊椎動物を指すものであって、哺乳動物(例えば、……)、非ヒト霊長類(例えば、……)、及び、ヒトなどがあるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態において、当該対象は、ヒトあるいは非ヒトとし得る。当該対象あるいは患者は、その他の形態の処置を受け得る。」 (イ) 段落0058 「本明細書で使用する「処置」または「処置する」は、疾患の予防、抑制、抑圧、または、完全排除の手段を介して、対象を疾患から防御するものと意味することができる。疾患を予防することは、その疾患の発症前に、当該対象に対して、本発明のワクチンを投与することを含む。疾患を抑制することは、その疾患の誘導後であって、その疾患の臨床的出現の前に、当該対象に対して、本発明のワクチンを投与することを含む。疾患を抑圧することは、その疾患の臨床的出現後に、当該対象に対して、本発明のワクチンを投与することを含む。」 (ウ) 段落0064 「2.組成物 本発明は、一部は、哺乳動物細胞においてモノクローナル抗体または二重特異性抗体を産生するために使用するための新規な配列の生成に基づく。ある実施形態において、当該配列は、細菌ベクター、酵母ベクター、及び、ウイルスベクターを含むDNAまたはRNAベクターでの送達のためのものである。本発明は、抗体、その断片、その変異体、または、それらの組み合わせをコードする組み換え核酸配列を含む組成物に関する。当該組成物は、それを必要とする対象に投与された場合、当該対象にて合成抗体の生成をもたらし得る。当該合成抗体は、対象内に存在する標的分子(すなわち、抗原)に結合することができる。そのような結合は、抗原を中和し、別の分子、例えば、タンパク質または核酸によって抗原の認識をブロックして、抗原に免疫応答を惹起または誘発することができる。」 (エ) 段落0076 「本発明の組成物は、細菌活性に関連するあらゆる疾患、障害、または、病態を、処置、予防、及び/または、防御することができる。特定の実施形態において、当該組成物は、細菌感染症を、処置、予防、及び/または、防御することができる。特定の実施形態において、当該組成物は、細菌バイオフィルム形成を、処置、予防、及び/または、防御することができる。特定の実施形態において、当該組成物は、Pseudomonas aeruginosa感染症を、処置、予防、及び/または、防御することができる。特定の実施形態において、当該組成物は、Pseudomonas aeruginosaバイオフィルム形成を、処置、予防、及び/または、防御することができる。特定の実施形態において、当該組成物は、敗血症を、処置、予防、及び/または、予防することができる。」 (オ) 段落0077~0079 「【0077】 合成抗体は、当該組成物を投与した対象における疾患を、処置、予防、及び/または、防御することができる。抗原に結合することで、当該合成抗体は、当該組成物を投与した対象における疾患を、処置、予防、及び/または、防御することができる。当該合成抗体は、当該組成物を投与した対象における疾患生存率を改善することができる。ある実施形態において、当該合成抗体は、当該合成抗体の投与を受けていない同じ疾患を有する対象において予測された生存期間にわたって、当該疾患を有する対象の延命を可能にする。…… …… 【0079】 当該組成物は、それを必要とする対象に投与した場合に、抗原の投与を受けて体液性免疫応答を誘発する対象において内因性抗体を生成する場合よりも迅速に、当該対象において当該合成抗体を生成することができる。当該組成物は、抗原の投与を受けて体液性免疫応答を誘発する対象において内因性抗体を生成する少なくとも約1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、または、10日前に、当該合成抗体を生成することができる。」 (カ) 段落0179~0182 「【0179】 5.組成物の賦形剤及び他の成分 当該組成物は、医薬として許容される賦形剤をさらに含み得る。医薬として許容される当該賦形剤を、ビヒクル、担体、または、希釈剤としての機能的分子とすることができる。医薬として許容される当該賦形剤を、界面活性剤を含むことができる、トランスフェクション促進剤、例えば、免疫刺激複合体(ISCOMS)、フロイント不完全アジュバント、モノホスホリル脂質AなどのLPS類似体、ムラミルペプチド、キノン類似体、スクアレン及びスクアレンなどの小胞、ヒアルロン酸、脂質、リポソーム、カルシウムイオン、ウイルスタンパク質、ポリアニオン、ポリカチオン、または、ナノ粒子、または、その他の公知のトランスフェクション促進剤とすることができる。 【0180】 当該トランスフェクション促進剤は、ポリアニオン、ポリカチオン、ポリ-L-グルタミン酸塩(LGS)など、または、脂質である。当該トランスフェクション促進剤は、ポリ-L-グルタミン酸塩であり、かつ、当該ポリ-L-グルタミン酸塩は、6mg/ml未満の濃度で当該組成物に存在し得る。当該トランスフェクション促進剤は、界面活性剤、例えば、免疫刺激複合体(ISCOMS)、フロイント不完全アジュバント、モノホスホリル脂質AなどのLPS類似体、ムラミルペプチド、キノン類似体、及び、スクアレン及びスクアレンなどの小胞を含んでいてもよく、そして、ヒアルロン酸を用いて、当該組成物と共に投与もし得る。当該組成物は、トランスフェクション促進剤、例えば、脂質、レシチンリポソームまたはDNAリポソーム混合物(例えば、W09324640を参照されたい)などの当該技術分野で周知のその他のリポソームなどのリポソーム、カルシウムイオン、ウイルスタンパク質、ポリアニオン、ポリカチオン、または、ナノ粒子、または、その他の公知のトランスフェクション促進剤も含み得る。当該トランスフェクション促進剤は、ポリアニオン、ポリカチオン、ポリ-L-グルタミン酸塩(LGS)など、または、脂質である。当該ワクチンでの当該トランスフェクション剤の濃度は、4mg/ml未満、2mg/ml未満、1mg/ml未満、0.750mg/ml未満、0.500mg/ml未満、0.250mg/ml未満、0.100mg/ml未満、0.050mg/ml未満、または、0.010mg/ml未満である。 【0181】 当該組成物は、本明細書の一部を構成するものとしてその全内容を援用する、1994年4月1日に出願された米国特許出願第021,579号に記載の遺伝的助長因子をさらに含み得る。 【0182】 当該組成物は、約1ng~100mg、約1μg~約10mg、または、好ましくは、約0.1μg~約10mg、または、より好ましくは、約1mg~約2mgの量のDNAを含む。幾つかの好ましい実施形態において、本発明の組成物は、約5ng~約1000μgのDNAを含む。幾つかの好ましい実施形態において、組成物は、約10ng~約800μgのDNAを含むことができる。幾つかの好ましい実施形態において、当該組成物は、約0.1~約500μgのDNAを含むことができる。幾つかの好ましい実施形態において、当該組成物は、約1~約350μgのDNAを含むことができる。幾つかの好ましい実施形態において、当該組成物は、約25~約250μg、約100~約200μg、約1ng~100mg、約1μg~約10mg、約0.1μg~約10mg、約1mg~約2mg、約5ng~約1000μg、約10ng~約800μg、約0.1~約500μg、約1~約350μg、約25~約250μg、約100~約200μgのDNAを含むことができる。」 (キ) 段落0199~0201 「【0199】 9.処置の方法 本明細書でさらに提供されるものは、それを必要とする対象において、疾患の処置、疾患に対する防御、及び/または、予防をする方法であり、合成抗体を当該対象内で生成する。当該方法は、当該組成物を当該対象に投与することを含むことができる。当該対象への当該組成物の投与は、上記した送達の方法を用いて行うことができる。 【0200】 特定の実施形態において、本発明は、細菌感染の処置、細菌感染に対する防御、及び/または、予防の方法を提供する。ある実施形態において、当該方法は、細菌バイオフィルムを処理し、細菌バイオフィルムに対する防御、及び/または、防止をする。ある実施形態において、当該方法は、Pseudomonas aeruginosa感染、または、バイオフィルム形成を処理し、それらに対する防御、及び/または、防止をする。ある実施形態において、当該方法は、創傷へのPseudomonas aeruginosaの感染を処理し、それらに対する防御、及び/または、防止をする。 【0201】 当該対象内で合成抗体が生成されると、当該合成抗体は、当該抗原と、結合または反応することができる。かかる結合により、当該抗原を中和し、別の分子、例えば、タンパク質または核酸による抗原の認識をブロックし、そして、当該抗原に対する免疫応答を惹起または誘発し、それにより、当該対象での抗原と関連する疾患を処理、防御、及び/または、予防することができる。」 ウ.サポート要件の判断 特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識等に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり、本願明細書のサポート要件の存在は、本願出願人すなわち審判請求人が証明責任を負うと解するのが相当である。 この観点で本件補正発明を検討すると、上記イ(ア)~(キ)の記載より、本件補正発明は、核酸分子を組成物として対象あるいは患者に投与し、生体内(対象内)で合成抗体が生成されることで「Pseudomonas aeruginosa感染、及び、バイオフィルム形成を、予防、及び/または、治療する」ものと解されるところ、上記(2)イでも述べたように、b)の核酸分子により「抗-Psl DMAb(DMAb-αPsl)」が製造できるか否かについては、本願明細書より理解することはできず、また、a)やc)に関しても、「クローンV2L2MD」及び「クローンABC123」という「1つ以上のDNAモノクローナル抗体(DMAb)」が製造されたことは理解できる一方、クローン製造時に使用された核酸分子は不明であるため、本件補正発明の核酸分子により目的とするDNAモノクローナル抗体(DMAb)が製造できると解することができない。 したがって、本件補正発明の核酸分子を用いた場合に、上記アで示した課題を解決できることを、当業者が、本願明細書の記載及び本願の出願時の技術常識から認識できるとは認められない。 エ.小括 以上からすると、本件補正発明は、サポート要件に適合するものではなく、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないので、本件補正発明は、特許法第36条第6項第1号の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)審判請求人の主張 審判請求人は、請求項1を補正したことにより、本件補正発明は引用文献に開示されていない旨、本願明細書の実施例(特に図1~7)には、本件補正発明が対象とする特定の抗-PcrV DMAb、抗-Psl DMAb及び二重特異性抗-PcrV抗-Psl DMAbの効果が示されており、肺の細菌負荷を軽減し、全身の細菌の拡散を防ぐ能力を有することが実証されている旨を主張する。 しかし、上記(1)で検討したとおり、本件補正発明は、選択肢として、引用発明の内容を実質的に含むものであるし、上記(2)、(3)で検討したとおり、本願明細書の実施例(特に図1~7)を勘案しても、本件補正発名の核酸分子によりDNAモノクローナル抗体(DMAb)が製造でき、上記(3)アで示した課題を解決できることを当業者は認識できないといえる。 したがって、上記主張はいずれも採用できない。 (5)むすび 以上検討したところによると、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 令和5年1月13日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和3年11月18日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記第2の1において、補正前の【請求項1】に記載したとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。 第4 原査定の拒絶理由 本願発明に対する原査定の拒絶の理由1、3~4の概要は、以下のとおりである。 (理由1)本願発明は、本願優先日前に頒布された刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 (理由3)本願は、発明の詳細な説明が、当業者が本願発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものでないので、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 (理由4)本願は、本願発明が、発明の詳細な説明に記載したものでないので、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 第5 当審の判断 本願発明は、本件補正発明の選択肢以外に、「i)配列番号2、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、及び配列番号14からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して、そのアミノ酸配列の全長にわたって、少なくとも約95%の同一性を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」等の「アミノ酸配列の全長にわたって、少なくとも約95%の同一性を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」の選択肢、及び、「iii)配列番号2、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、及び配列番号14からなる群から選択されるアミノ酸配列の全長の少なくとも約95%を含む断片をコードするヌクレオチド配列」等の「アミノ酸配列の全長の少なくとも約95%を含む断片をコードするヌクレオチド配列」の選択肢を含むものである。 そして、引用文献に記載された事項及び引用発明は、上記第2の3(1)ア及びイに記載したとおりであり、本願明細書には、上記第2の3(2)ア及び第2の3(3)イに記載した内容が記載されている。 そうすると、本件補正発明に対する、特許法第29条第1項第3号(いわゆる新規性の欠如)の拒絶理由、特許法第36条第4項第1号(いわゆる実施可能要件違反)の拒絶理由、特許法第36条第6項第1号(いわゆるサポート要件違反)の拒絶理由は、いずれも本件補正発明の発明特定事項を含む本願発明においても妥当する。 第6 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、本願は、発明の詳細な説明の記載が同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許請求の範囲が同法同条第6項第1号に規定する要件を満たしていないので、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-000614

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