商標拒絶査定不服審判
2023-000301
マルドリガラスープ、マルドリ、ガラスープ、ガラ
- 審判番号
- 2023-000301
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2021-070601
- 請求日
- 2023年01月10日
- 審決日
- 2024年01月23日
- 公報発行日
- 2024年02月22日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】味の素株式会社
- 【請求人代理人】古関 宏
- 審判長/審判官
- 審判長 高野 和行
- 審判官 小俣 克巳
- 審判官 石塚 利恵
- 分類
- T18 .13 -WY (W30) / T18 .17 -WY (W30)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号、商標法第3条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2021-70601拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願商標は、登録すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和3年6月8日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和4年 2月21日付け:拒絶理由通知書
令和4年 7月 6日 :意見書、手続補足書の提出
令和4年 8月 1日 :上申書の提出
令和4年 9月21日付け:拒絶査定
令和5年 1月10日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和5年 2月27日 :手続補足書の提出
令和5年 5月26日 :上申書の提出
令和5年 8月28日 :上申書の提出
令和5年10月16日 :上申書、手続補足書の提出
令和5年12月 5日付け:審尋
令和5年12月13日 :回答書、手続補正書の提出
第2 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第29類及び第30類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として登録出願され、その後、本願の指定商品については、前記第1の手続補正により、最終的に、第30類「鶏を使用してなる中華だし(調味料)」に補正されたものである。
第3 原査定の拒絶の理由(要点)
本願商標は、別掲1のとおり、「丸鶏」と「がらスープ」の文字を上下二段に表してなるところ、その構成中の「丸鶏」の文字は、「鶏一羽丸ごと」ほどの意味合いとして一般に使用されており、「がら」の文字は、「肉を取った後の鶏の骨。煮出してスープなどをとる。鶏がら。」を、「スープ」の文字は、「西洋料理の汁物。」の意味をそれぞれ有する語である。
また、食品業界においては、丸鶏(鶏一羽丸ごと)を使用したスープや鶏がらを使用したスープが取引されている実情がある。
そうすると、本願商標をその指定商品に使用したときは、これに接する取引者、需要者は、「丸鶏(鶏一羽丸ごと)を使用した鶏がらスープのもと、中華だし(調味料)、だしの素、調味料」ほどの意味合いを理解するにとどまるから、本願商標は、商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものである。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、「上記商品以外のスープのもと、中華だし(調味料)、だしの素、調味料」に使用するときは、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。
なお、請求人は、本願商標について、その使用がされた結果、出願人の商品を表示する商標として、取引者及び需要者に広く認識されているため、本願商標は自他商品の出所識別標識としての機能を果たす旨述べ、甲各号証を提出しているところ、提出された証拠によれば、出願人は、1994年ないし現在に至るまで、指定商品中「中華だし(調味料),だしの素」について、本願商標(一部「丸鶏使用がらスープ」の表示あり)を使用していることが認められるものの、本願商標の上部において、常に出願人のロゴマーク(「AJINOMOTO」)と組み合わせて使用されていることから、出願人の「中華だし(調味料),だしの素」は、「AJINOMOTO(味の素)の丸鶏がらスープ」として認識されているとはいい得るとしても、本願商標のみにより、当該商品が何人かの業務に係るものであることを認識できるほど、需要者等に広く知られるに至ったものとはいえない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第2項に規定する要件を具備するものとは認められない。
第4 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、別掲1のとおり、大きく表された「丸鶏」の文字を上段に、これに比して小さく表された「がらスープ」の文字(上段の文字に比してその高さは2分の1ほどである。)を下段に、中心をそろえて二段に表してなるものである。
ところで、食品を取り扱う業界においては、羽、頭、内臓等を取り除いた鶏が「丸鶏」と指称され、だしやスープをとる際に使用される材料であるとの説明がなされているほか、ローストチキンや参鶏湯(サムゲタン)といった料理の調理用に「丸鶏」が多数販売されている実情がある(別掲2(1)、(2)、別掲3(1)~(3)参照)。
また、同業界において、「鶏がら」(ニワトリから肉を取り除いたあとに残った骨の部分。スープの材料として利用される。)は「がら」ともいわれ、「鶏がらからとった濃厚なだし」は「鶏がらスープ」と指称される(別掲4参照)ところ、複数の(鶏)がらスープの素が取引されており、その中には、丸鶏がらを煮出したスープを使用したがらスープの素(調味料)等が製造、販売されている実情もある(別掲2(3)~(5)、別掲3(4)参照)。
そうすると、本願の指定商品の需要者である一般消費者の間において、「丸鶏」とは、内臓等の処理済みの鶏であって、そのまま料理に用いられたり、スープをとる際に使用されるものであるとの認識が形成されているといえることから、「丸鶏」及び「がらスープ」の文字からなる本願商標を、その指定商品「鶏を使用してなる中華だし(調味料)」に使用しても、これに接する取引者、需要者は、その商品が「丸鶏を使用したがらスープ(調味料)」であること、すなわち、商品の品質を表したものとして理解、認識するにとどまるとみるのが相当である。
また、本願商標を構成する要素(書体、二段書き)は、取引上、普通に採択されている程度のものであるから、本願商標の態様は、普通に用いられる方法の域を脱しない方法で表示するものである。
したがって、本願商標は、商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。
2 商標法第3条第2項に規定する要件を具備するか否かについて
請求人は、仮に、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとしても、同法第3条第2項の適用を受け得るものである旨主張し、その証拠方法として、原審ないし当審を通じて甲第1号証ないし甲第106号証(枝番号を含む。)を提出している。
そこで、請求人の提出に係る甲各号証について、以下検討する。
(1)使用開始時期及び使用期間について
請求人は、1994年に、「丸鶏使用がらスープ」と称する「丸のままの鶏肉とがらのエキスをベースにしたスープの素」の販売を開始した。当該商品の包装袋(容器)には、隷書体に類する書体で大きく「丸鶏」及び「がらスープ」の文字が上下二段に表され、「丸鶏」の右に、極めて小さな「使用」の文字が配される態様となっていた(甲10)。
その後、請求人は、2006年に、上記商品の名称を「丸鶏がらスープ」へ変更し、商品に関する記載を「鶏肉とがらをじっくり煮出した、コクのあるまろやかな味わいの本格鶏がらスープの素」としたが、当該商品の包装袋(容器)には、毛筆体に類する書体で「丸鶏」及び「がらスープ」の文字が上下二段に表される態様となっていた(甲12)。
さらに、請求人は、2010年に、上記商品のリニューアルを行い、商品に関する記載を「丸鶏(鶏肉とがら)をじっくり煮出した本格的な鶏がらスープの素」としたところ、当該商品の包装袋(容器)には、本願商標と同一と認められる態様で「丸鶏」及び「がらスープ」の文字が上下二段に表されていた(甲13。以下、当該商品を「使用商品」という。)。それ以降、約13年間にわたり、請求人は、本願商標を「鶏がらスープの素」に継続的に使用していることが認められる(甲14~甲28)。
(2)売上額及び販売地域
マーケティングリサーチ会社である株式会社インテージが証明する、全国の「中華だし」分野における主要商品の推計販売規模(金額)によれば、2011年度ないし2016年度の期間において、使用商品の販売金額は21,661,587千円であって、市場シェアは1位の31%、2017年度ないし2020年度の期間において、使用商品の販売金額は18,709,894千円であって、市場シェアは1位の30%である(甲29)。
(3)広告宣伝等の方法、期間、地域及び規模
請求人は、2011年ないし2021年の期間において、継続的に、高視聴率の番組枠を中心として、使用商品を表示したテレビCMによる広告を全国的に行った。上記期間のテレビCMの出稿金額は、約22億円以上である(甲34、甲106)。
また、請求人は、2018年、2020年及び2021年に、使用商品を表示したデジタルアドによるインターネット上の広告を行った。上記期間のデジタルアドの出稿金額は、約4000万円以上である(甲34)。
さらに、請求人は、2011年ないし2019年の期間において、継続的に、新聞(「北海道新聞」、「東京新聞」、「中日新聞」、「西日本新聞」等)や、料理雑誌(「レタスクラブ」、「オレンジページ」)、生活情報誌(「saita」、「Mart」)等の雑誌に、使用商品を表示した広告を行った。上記期間の新聞及び雑誌の出稿回数は、55回である(甲34、甲39)。
(4)第三者による紹介
使用商品は、2011年6月から継続して、テレビ番組、新聞、書籍等で紹介されているところ、例えば、2019年のテレビ番組において、「「丸鶏がらスープ」でつくる白魚の中華風スープ」として、使用商品が紹介されたことがうかがえる(甲40~甲65)。
(5)アンケート
請求人が、「NERAエコノミックコンサルティング」を通じて行った、2023年6月29日付け「「丸鶏がらスープ」の識別力に関するアンケート調査 報告書」(甲104。以下「本件アンケート調査」という。)によれば、以下のとおりである。
ア 調査対象者は、日本全国に在住する20歳以上69歳以下の男女(本人又は同居家族が関連職業に従事する者等は除く。)であり、1,000人からなる回答者サンプルを得た。
イ 調査方法は、インターネットによるアンケート調査であり、導入質問を経て、本願商標の画像を表示するグループ(500人)及び「丸鶏がらスープ」の文字列を表示するグループ(500人)に、表示された画像又は文字列は、調味料のパッケージに使用されることがある表示だが、当該表示を見ると、1つの会社の調味料が思い浮かぶか、2つ以上の会社の調味料が思い浮かぶかを尋ねた(単一出所調査)。
次に、「1つの会社の調味料が思い浮かぶ」と回答した者への追加調査として、その出所の名称を自由回答式で、次いで、自由回答式で記入できなかった者に対して多肢選択式で尋ねた(企業名調査)。
ウ 集計結果によれば、本願商標の画像が表示されたグループにおいて、「1つの会社の調味料が思い浮かぶ」と回答した調査対象者は、59.80%であった(なお、「2つ以上の会社の調味料が思い浮かぶ」と回答した調査対象者は、6.60%であった)。
次に、「1つの会社の調味料が思い浮かぶ」と回答した調査対象者のうち、請求人又はその関連商品を回答したのは、自由回答式で90.54%であり、多肢選択式で39.74%であった。
(6)小括
上記(1)ないし(5)によれば、請求人は、1994年に、使用商品の前身の商品である「丸鶏使用がらスープ」の販売を開始し、2006年に、商品名称を「丸鶏がらスープ」へ変更した後、2010年から現在に至るまで約13年間にわたり、継続的に、本願商標を使用商品に使用している。そして、使用商品は全国で販売され、2011年度ないし2020年度の期間に、「中華だし」分野において市場シェア1位を維持している。また、請求人は、テレビ、新聞、雑誌等を通じて、継続的に、日本全国において、使用商品に係る広告宣伝活動を行っており、使用商品は、種々の媒体において、第三者により、請求人の取扱いに係る商品として多数紹介されている。加えて、本件アンケート調査によれば、日本全国に在住する20歳以上69歳以下の男女のうち、約6割の者が、本願商標の画像から「1つの会社の調味料が思い浮かぶ」と回答し、当該回答者の9割以上が、請求人の名称まで回答した。
以上を総合的に考察すれば、本願商標は、請求人の業務に係る商品(「鶏を使用してなる中華だし(調味料)」)を表示するものとして、我が国の需要者の間において、広く認識されているとみるのが相当である。
また、職権による調査によれば、本願商標と同一の構成からなる商標を、本願の指定商品を取り扱う業界において、他人が使用している事実は発見できなかった。
そうすると、本願商標は、請求人による継続的な使用の結果、需要者が何人か(請求人)の業務に係る商品を表示する商標として認識するに至ったものとみるのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するものというべきである。
3 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものの、同条第2項の要件を具備するものであり、商標登録を受けることができるものであるから、原査定は取消しを免れない。
その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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