商標異議申立
2022-900531
チュウファッション、チューファッション、チュー
- 審判番号
- 2022-900531
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2022-007152
- 登録番号
- 6635443
- 請求日
- 2022年12月26日
- 審決日
- 2024年03月29日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ピーピービー スタディオス コーポレーションリミテッド
- 【異議申立人】ジェー、チュー、リミテッド
- 【異議申立人代理人】宮嶋 学
- 【異議申立人代理人】本宮 照久
- 【異議申立人代理人】高田 泰彦
- 【異議申立人代理人】柏 延之
- 【異議申立人代理人】副田 圭介
- 審判長/審判官
- 審判長 豊田 純一
- 審判官 杉本 克治
- 審判官 小田 昌子
- 分類
- T1651.261-Y (W25) / T1651.262-Y (W25) / T1651.263-Y (W25) / T1651.271-Y (W25)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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登録第6635443号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6635443号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6635443号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、令和4年1月24日に登録出願、第25類「被服,コート,ジャケット,スカート,カーディガン,セーター,外衣,ドレス,ティーシャツ,靴下,帽子,ブーツ,履物,レギンス,ニット製被服,ズボン」を指定商品として、同年9月29日に登録査定され、同年11月2日に設定登録されたものである。
第2 登録異議申立人が引用する商標
1 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件登録の異議申立ての理由において、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する商標は、以下の(1)ないし(4)の登録商標であり、これらの商標権は、いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)国際登録第1201378号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲2のとおり、ややデザイン化された「CHOO」の欧文字を横書きしてなり、2013年(平成25年)11月8日に国際商標登録出願、第3類及び第9類に属する別掲2に記載のとおりの商品を指定商品として、平成27年6月12日に設定登録されたものである。
(2)国際登録第1257825号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲3のとおり、ややデザイン化された「CHOO」の欧文字を横書きしてなり、2014年(平成26年)12月18日に国際商標登録出願、第18類、第25類及び第35類に属する別掲3に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成28年11月4日に設定登録されたものである。
(3)国際登録第1443377号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲4のとおり、ややデザイン化された「CHOO」の欧文字を横書きしてなり、2018年4月9日にUnited Kingdomにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2018年(平成30年)10月8日に国際商標登録出願、第14類、第18類及び第25類に属する別掲4に記載のとおりの商品を指定商品として、令和3年2月12日に設定登録されたものである。
(4)国際登録第1494017号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲5のとおり、ややデザイン化された「CHOO」の欧文字を横書きしてなり、2019年(令和元年)9月17日に国際商標登録出願、第9類に属する別掲5に記載のとおりの商品を指定商品として、令和3年8月6日に設定登録されたものである。
以下、引用商標1ないし引用商標4をまとめていう場合は、「11号引用商標」という。
2 申立人が、本件登録の異議申立ての理由において、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する商標は、11号引用商標の他に、以下の(1)及び(2)の登録商標であり、これらの商標権は、いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)国際登録第1393820号商標(以下「引用商標5」という。)は、「IWANTCHOO」の欧文字を横書きしてなり、2017年5月26日にUnited Kingdomにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2017年(平成29年)11月17日に国際商標登録出願、第18類、第25類及び第35類に属する別掲6に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、令和元年8月16日に設定登録されたものである。
(2)国際登録第1514854号商標(以下「引用商標6」という。)は、別掲7のとおり、ややデザイン化された「I WANT CHOO」の欧文字を横書きしてなり、2019年8月7日にUnited Kingdomにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2020年(令和2年)1月9日に国際商標登録出願、第3類に属する別掲7に記載のとおりの商品を指定商品として、令和3年6月25日に設定登録されたものである。
以下、引用商標1ないし引用商標6をまとめていう場合は、「引用商標」という。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第34号証(枝番号を含む)を提出した。
なお、申立人が提出した証拠を表示する場合は、以下、「甲○号証」を「甲○」のように省略して記載し、枝番号を全て表示する場合は、枝番号を省略して記載する。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)指定商品等の類否について
本件商標に係る全指定商品は、11号引用商標に係る指定商品等と類似する。
(2)本件商標と11号引用商標との類否について
ア 本件商標について
本件商標は、「ch」の文字と、「u」の下半円の円弧部分を消去したデザインの「uu」の文字、すなわち、「chuu」の文字を横書きに表し、その下段に、「chuu」の文字に比して小さく「FASHION」の文字を横書きに表し、これらの文字の右上部及び左下部に、これらの文字を囲むように半円弧状の図形を2つ配した構成よりなる商標である。
本件商標の構成中、図形部分は、特定の意味合いを想起させない図形と認められ、文字部分を強調し、又は装飾的に配置されているとの印象を与えるため、特定の称呼及び観念は生じないといえる。
そして、本件商標の構成中、「chuu」の文字と「FASHION」の文字は、二段併記の構成であって、書体や文字の大きさに相違があることから、視覚上分離して把握される。
また、「chuu」の語は、辞書等に載録されている既成語ではなく、特定の観念を生じない一種の造語として認識され、本件商標に係る指定商品との関係において出所識別標識としての機能を有するのに対して、「FASHION」の文字は、「服装(衣服、装身具及び服飾)」という意味を有する語であり、本件商標に係る指定商品との関係においては、出所識別標識としての機能を欠く。
以上より、本件商標をその指定商品に使用する場合、構成中の「chuu」の文字が商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとみるのが相当であり、「chuu」の文字をもって取引にあたる場合も少なくないといえるから、本件商標から「chuu」の文字を要部として抽出し、他人の商標と比較することも許される。
したがって、本件商標は、要部である「chuu」の文字に相応し、「チュー」の称呼が生じ、また、本件商標は、特定の観念を生じない一種の造語として認識される。
イ 11号引用商標について
11号引用商標は、いずれも、「CHOO」の文字を通常の書体の文字又はゴシック調欧文字を図案化して横書きしてなるものであり、その構成文字に相応し、「チュー」の称呼が生じる。
本件商標(決定注:「本件商標」は、「11号引用商標」の誤記と認める。)は、辞書等に載録されている既成語ではなく、特定の観念を生じない一種の造語として認識される。
ウ 取引の実情について
本件商標と11号引用商標が使用されるいわゆるラグジュアリー・ファッション・ブランドの分野における取引の実情を鑑みると、例えば、ファッションブランドとして著名な「プラダ」、「グッチ」等のブランドについて、同一称呼を生じ得る欧文字の僅かな違いのみを備えた商標、例えば、「PURADA」、「GOOCCI」等の商標が、欧文字1文字のみの違いにより商標登録が許されるような状況にはないことも明らかである。
エ 出願人(決定注:「出願人」は、「本件商標の権利者」の誤記と認め、以下、「出願人」の記載は、「商標権者」と改める。)の本件商標に関する認識について
商標権者は、(ア)日本国向けの通信販売用ウェブサイトの利用案内において、「私たちChuuは、韓国の最新流行ファッションを日本のお客様に身近に感じて頂くために、(中略)、どうぞ今後ともChuuをよろしくお願いいたします。」という説明を行っており(甲4の1)、(イ)商品紹介ページにおいても、「<<公式>>Chuu(チュー)レディースファッション通販!」として公式ウェブサイト名を「Chuu(チュー)」としており(甲4の2)、(ウ)商品:被服について“「Today,chuu」ゼリーラウンドリブknit”という表示を行っている(甲4の2)。
上記事実によれば、商標権者が事業上採択している商標は、「chuu(チュー)」であり、本件商標はウェブサイトの最上部において「chuu(チュー)」が併記されるように掲示されていることから、本件商標は「chuu(チュー)」と読まれることを前提としているものと考えることが自然である。
しかしながら、商標権者は、本件商標の審査段階で提出された、本件商標に「CHOO」が引用された拒絶理由に対する意見書(甲3。以下「意見書」という。)において、「「Chuu」よりも「chiiii」と認識する可能性の方が圧倒的に高いと思われます。」とか、「「ch」の右横に縦線4本が並んでいると認識する場合の方が圧倒的に多いと考えます。」とか、「一般的な消費者であれば「chiiii」と認識する可能性の方が極めて高いと考えます。」といった主張を行っているところ、本件商標は「Chuu(チュー)」をロゴ化した商標であることが明らかであるにもかかわらず、商標権者の真の使用の使用意図を原審審査官に悟られずに商標登録を受けることを目的として、実際の使用実態から離れて、専ら審査をくぐり抜けるためのテクニック上作出されたような意見が提出されている。
このように商標権者が提出した意見書は、審査官に対して真正な商標の使用意図を説明するものではなく、信義則上、拒絶査定の前の拒絶理由通知に対する誠意ある応答といえるのかどうか、甚だ疑問が残るものとなっている。
オ 本件商標における「FASHION」の識別標識性について
商標権者は、本件商標には「FASHION」という語が付記されていることに言及し、本件商標から「「チーファッション」という称呼が生じる可能性が高い」という意見を述べているものの、本件商標の指定商品が第25類のアパレル関連商品、すなわち、ファッション関連商品であることを考慮に入れた主張が展開されているものではなく、本件商標の捉え方に関する主張としての妥当性に欠けるものである。
ここで、最判平成20年9月8日判時2021号92頁(平成19年(行ヒ)第223号)〔つつみのおひなっこや事件〕で判示された規範の判断基準に照らして本件商標について検討すると、本件商標の構成中の「FASHION」の語は、第25類の本件商標に係る指定商品との関係で、そもそも「出所識別標識」には該当しないと考えられるため、これよりは、出所識別標識としての称呼、観念が生じるものではないと考えられる。
加えて、「FASHION」の語は、ロゴ化されインパクトのある態様で示されている「chuu」と比較して非常に小さく表示されている。
さらに「chuu」の語が造語であることに鑑みれば、ロゴ化された「chuu」の部分が、取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと考えられる。
したがって、本件商標の構成中の「chuu」の文字を抽出し、これだけを11号引用商標と比較して商標そのものの類否を判断することも許される。
カ 商標権者の意見の妥当性について
本件商標の審査段階において、商標権者の提出した意見書における主張について検討すると、意見書の「本願商標の称呼」において述べられている「本願の商標「chuu\FASHION」からは文字どおり、一連一体の「チューファッション」、「チーファッション」という称呼のみが生じます。」というような主張は、本願商標(決定注:「本願商標」は、「本件商標」の誤記と認める。)の外観上の特徴に関する分析を意図的に回避した解釈に基づくものであり、あたかも、本件商標が標準的な文字により一連一体で標記されていることを想定したかのような主張であり、本件商標の捉え方を誤った前提に基づき展開されたものである。
なお、商標権者は、「FASHION」を含む商標の併存登録例を挙げているが、これらの商標には、本件商標のように「FASHION」の文字が識別標識として捉えられる主要部と比較して小さく表示されているというような事情が全く見受けられない商標に関する事例であり、本件商標が「FASHION」を含めた商標として一体的に観察されなければならない、という主張の根拠にはならないと考えられる(甲5)。
キ 拒絶理由の妥当性について
商標権者が、本件商標を「チー」、「チーファッション」、「chiiii」と認識・称呼される可能性が高いと述べるような主張は、商標権者の事業実態や事実認識とかい離したものであり、かつ、結合商標である本件商標の捉え方についての誤りがあると考えられることから、このような商標権者の意見の内容をもって、拒絶理由通知書において通知された商標法第4条第1項第11号の拒絶理由が撤回されるべきではないことも明らかである。
換言すると、本件商標と引用商標が類似するという拒絶理由通知書において示された判断は妥当なものであり、本件商標には商標法第4条第1項第11号の適用があるべきところ、商標権者の意見の内容を精査せずに、商標の捉え方についての商標権者の主張には妥当性がない点が指摘されることなく、拒絶理由を撤回した原審査定には誤りがあり、異議申立てにおいて、当然に見直されるべきである。
(3)小括
本件商標は、その構成中、ロゴ化された「chuu」の部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与え、当該文字部分より「チュー」の称呼を生じるものであり、特定の観念を生じない。
本件商標と11号引用商標を比較すると、両商標は「チュー」という同一の称呼を生じることは否定されない。
また、外観上も、4文字のうち、前半2文字の「ch/CH」を共通としており、後半2文字の「uu」と「oo」という同一文字を重ねて表示するという文字構成において共通性がみられ、両者は、いずれも「チュー」と称呼される商標であり、観念で区別することができない。
加えて、取引の実情に照らしてみても、ファッション業界では、ばくだいな投資と大量の広告、百貨店などへの高額なテナント料の支払いを含めたファッションのトップブランドが維持するための投資がなされており、申立人の「JIMMY CHOO」及び「CHOO」というブランド/登録商標の著名性に鑑みると、例えば、申立人の代表的な商品である「靴」の分野において、気安く「CHUU」なる商標の使用が認められるべきでないことは、ファッション業界の商取引上の慣習や社会通念に鑑みても当然である。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(4)同種事案について
本件商標が引用商標と類似する商標と判断されることが妥当であることを示す、同種事案の拒絶理由通知等がある(甲6、甲7)。
(5)まとめ
上記のとおり、本件商標と11号引用商標は、その指定商品を同一又は類似とするものであり、互いに類似する商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)申立人及び引用商標について
申立人は、イギリス国ロンドンに本店を有する、I996年に設立されたラグジュアリーアクセサリーブランド「JIMMY CHOO」のブランド創設者であり、ブランドの核であるシューズを中心に、官能的な感性と遊び心に満ちた大胆なスピリットを世界に送り出しており、グローバルストアネットワークは200店舗以上に及び、世界各地の直営店舗や世界中で最も有名な百貨店、セレクトショップで販売されている。
我が国においても、直営店舗及び百貨店において、商品が販売されており、また、商品の宣伝広告もなされている(甲8~甲32)。
「JIMMY CHOO」が生み出すファッションは、2008年には英国ファッション協会からデザイナー・ブランド・オブ・ザ・イヤー賞を、また、米国アクセサリー協会からは2008年ACEブランド賞を、ニューヨークのフットウエア・ニュースからは2008年ブランド・オブ・ザ・イヤー賞の受賞対象となっており、現在では、国内外のセレブリティからロイヤルファミリー、ミュージシャン、ファーストレディにまで、老若男女問わず広く愛されている。
このように、「JIMMY CHOO」ブランドは、セレブリティ・ファッションの代名詞といっても過言ではないブランドヘ成長を遂げており、今日ではフルラインがそろうラグジュアリーアクセサリーブランドとして、レディースシューズを中核として、ハンドバッグ、革小物、スカーフ、サングラス、ベルト、フレグランス及びメンズシューズを展開している。
(2)引用商標の周知・著名性について
引用商標は、「JIMMY CHOO」ブランドの略称又は、「JIMMY CHOO」ブランドを象徴するアイコニックなブランドロゴとして、申立人が使用してきたブランドであり、本件商標の登録出願日時点において、引用商標を一見しただけで、申立人の業務に係る商品及び役務を表示する商標として認識することのできる全国的に周知・著名な商標である。
例えば、2017年秋のプロモーションでは、「I WANT CHOO」をキーフレーズとしたブランディング・マーケティング活動を行っており、現在でも、フレングラスのブランドとして使用され(甲22)、申立人は、「I WANT CHOO」についても商標権を取得している(甲2の5、甲2の6)。
また、出願人(決定注:「出願人」は、申立人の誤記と認める。)の商品を特定する語として「CHOO」が通用している例として、世界的に知られた米国のドラマにおける名せりふもあげられる(甲33)。
(3)本件商標と引用商標の類似性の程度について
本件商標の要部である「chuu」の文字部分は、周知商標である引用商標の構成文字「CHOO」の文字と配列が近似するものであり、全体として引用商標と印象が酷似する。
すなわち、本件商標の要部は「chuu」と表記されるが、かかる態様を引用商標「CHOO」と比較すると、外観上の差異は本件商標の要部の第3・4文字目に位置する「U」と「O」のみであることから、その外観において非常に相紛らわしいといえる。
さらに、称呼においても、両称呼は同一である。
(4)商品間の関連性について
本件商標と引用商標の指定商品は、被服等を中心としたファッション分野の商品であり、同一営業主により製造販売される商品であって、同一店舗の同一販売部門で取り扱われることが多く、用途においても類似し、需要者の範囲も共通している。
したがって、本件商標と引用商標の指定商品は、それに同一又は類似の商標を使用すれば同一営業主の製造又は販売にかかる商品と誤認混同されるおそれがある互いに極めて関連性の強い商品である。
(5)需要者の注意力について
本件商標の指定商品「被服」等の主たる需要者は、専門知識を有しない一般の消費者であることから、商品の選択や購入をする際に払われる通常の注意力は、格段高いとはいい得ない。
引用商標の顕著性を鑑みれば、「被服」等に使用される本件商標に接した一般消費者は、過去の蓄積された記憶の中から、「CHOO」、「JIMMY CHOO」を即座に思い浮かべ、その強い印象、連想の程度は商標上の微々たる差異を優に凌駕する。
すなわち、本件商標は、これに接する需要者が、引用商標を連想、想起して、需要者にその商品の出所について混同を生じさせるおそれが高い。
(6)台湾における周知性の認定及び登録拒絶の異議決定について
引用商標は、周知著名な商標であるといえるところ、例えば、台湾の経済部智慧財産局は、商標権者の「chuu」商標登録出願について、引用商標の周知著名性を認定した上で、登録取消しに関する異議決定を下しており(甲34)、海外においても、引用商標の周知著名性は認定されている。
(7)まとめ
上記のとおり、本件商標は、申立人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標、すなわち、需要者からすると「CHOO」の商標権者である申立人から、商標の使用許諾ライセンスを受けていることを想起させる状況も想定されるところであり、いわゆる広義の混同を生じるおそれがあるといえる。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
申立人の主張及び同人の提出に係る証拠によれば、以下のとおりである。
(1)申立人は、1996年に英国のラグジュアリーアクセサリーブランド「JIMMY CHOO」(以下「JIMMY CHOOブランド」という。)を創設し、「JIMMY CHOOブランド」が生み出すファッションは、2008年には英国ファッション協会からデザイナー・ブランド・オブ・ザ・イヤー賞を、また、米国アクセサリー協会からは2008年ACEブランド賞を、ニューヨークのフットウエア・ニュースからは2008年ブランド・オブ・ザ・イヤー賞を受賞した(甲11、甲20、甲21、甲24等)。
(2)シューズを中心とした申立人の「JIMMY CHOOブランド」の商品のグローバルストアネットワークは200店舗以上に及び、世界各地の直営店舗や世界中で最も有名な百貨店、セレクトショップで販売され、我が国においては、2006年に我が国初の直営店が表参道ヒルズ内にオープンし(甲21)、「GINZA SIX」のほか、複数の直営店舗及び百貨店で取り扱われており(甲8、甲9、甲18、甲21、甲23~甲32)、「高島屋」や「三越伊勢丹」のオンラインショップ(甲10~甲13)及び「JIMMY CHOO」の公式サイト(甲14~甲17、甲19)においても「JIMMY CHOO」の表示とともに、商品「靴、バッグ、財布」等が掲載された。
(3)2019年4月25日より、引用商標3及び引用商標4を付したスニーカーが、申立人の直営店及び公式オンラインブティックで発売され(甲18)、引用商標6をオードパルファム(香水)の外箱に付して使用している(甲22)。
2 上記1のとおり、申立人は、1996年より「JIMMY CHOOブランド」を継続して使用し、我が国においては、2006年以降、現在も全国の直営店舗、百貨店及びオンラインショップ等で「JIMMY CHOOブランド」の靴、バッグなどの商品が取り扱われている。
しかしながら、引用商標については、引用商標3及び引用商標4が単独で使用されている証拠として、商品「スニーカー」についての使用例を1件提出したのみであり、また、引用商標6をオードパルファム(香水)に使用している(甲22)としても、その商品の、申立人ウェブサイトにおける掲載日は不明であり、当該ウェブサイトの出力日と認められる2023年3月31日は本件商標の登録査定後の日付であって、そのほかに、本件商標の登録出願時及び登録査定時より以前において、引用商標を使用した証拠は見いだせない。
そして、引用商標の周知性を判断するための、引用商標を使用した商品の我が国における売上額などの販売実績や市場シェア、広告宣伝の規模等を示す証拠は、いずれも見いだせない。
そうすると、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
3 本件商標と引用商標の類似性及びその程度について
(1)本件商標について
本件商標は、別掲1のとおりの構成よりなるところ、その構成中「FASHION」の欧文字の上部に記載された部分は、欧文字2文字「ch」に続く記載がいかなるものであるのかが判別できないことから、これは全体として「ch」をモチーフとした図形(以下「図形」という。)を表したものと看取されるといえる。
また、図形の上部及び「FASHION」の欧文字の下部には、星形図形を先端に半楕円状に描かれた曲線(以下「半円弧状曲線」という。)が描かれているが、図形、「FASHION」の欧文字及び半円弧状曲線は、いずれも重なることなく配置されており、それぞれが、視覚上、分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているとはいえないものである。
そして、図形及び半円弧状曲線は、本件商標の指定商品との関係において、商品の品質等を表示するものと判断するべき特別な事情はない。
また、図形及び半円弧状曲線が、我が国において、特定の事物又は意味合いを表すものとして認識され、親しまれているというべき事情は認められないことから、これらよりは、特定の称呼及び観念は生じないものである。
他方、「FASHION」の欧文字は、「流行」等(「ジーニアス英和辞典 第5版」大修館書店発行)の意味を有する親しまれた英語であり、本件商標の指定商品との関係においては、「流行の商品」等の意味合いを理解させるものであって、自他商品の識別標識としての機能を有しないか、極めて弱い部分として認識し把握されるものであるから、本件商標は、「FASHION」の欧文字のみをもって取引に資されることはないというべきである。
そうすると、本件商標は、引用商標との類否を判断するに当たり、その構成中の「FASHION」の欧文字を捨象し、図形又は半円弧状曲線のみを本件商標の要部として抽出し、この部分のみを引用商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである。
したがって、本件商標は、その構成全体及び要部より、特定の称呼及び観念が生じないものである。
(2)引用商標について
ア 11号引用商標について
11号引用商標は、別掲2ないし別掲5のとおり、ややデザイン化した「CHOO」の欧文字を横書きしてなるものであり、その構成文字に相応して「チュー」又は「チョー」の称呼を生じ、当該文字は、一般の辞書等に載録されている既成の語ではないから、特定の意味を有しない一種の造語として理解されるとみるのが相当である。
そうすると、11号引用商標は、それぞれの構成文字に相応して、「チュー」又は「チョー」の称呼を生じるが、特定の観念を生じない。
イ 引用商標5及び引用商標6について
引用商標5は、「IWANTCHOO」の欧文字を横書きしてなり、引用商標6は、ややデザイン化された「I WANT CHOO」の欧文字を横書きしてなるところ、これらは、いずれもまとまりよく一体的に表されており、構成中のいずれかの文字が自他商品又は役務の識別力を有しないというべき事情も見いだせないから、引用商標5及び引用商標6は、構成全体として一体不可分のものとして看取されるというべきである。
また、引用商標5及び引用商標6は、その構成全体に相応して「アイウォントチュー」又は「アイウォントチョー」の称呼が生じるが、これらは、よどみなく一連に称呼し得るものである。
さらに、「IWANTCHOO」の欧文字及び「I WANT CHOO」の欧文字は、一般の辞書等に掲載されている既成の語ではないから、特定の意味を有しない一種の造語として理解されるとみるのが相当である。
したがって、引用商標5及び引用商標6は、構成全体に相応して「アイウォントチュー」又は「アイウォントチョー」の称呼が生じ、特定の観念は生じないものである。
(3)本件商標と引用商標の類似性及びその程度について
ア 本件商標と11号引用商標の類似性及びその程度について
本件商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、11号引用商標は、ややデザイン化した「CHOO」の欧文字を横書きしてなるものであるから、これらの商標は、外観全体の視覚的印象が著しく相違し、外観上、判然と区別し得る。
また、本件商標は、特定の称呼が生じないものであるから、11号引用商標との称呼を比較することはできない。
さらに、本件商標と11号引用商標は、いずれも特定の観念が生じないものであるから、観念を比較することはできない。
そうすると、本件商標と11号引用商標は、称呼及び観念において比較することができないとしても、外観において判然と区別し得るものであるから、これらの商標は、非類似の商標であり、その類似性の程度は低いものである。
イ 本件商標と引用商標5及び引用商標6の類似性及びその程度について
本件商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、引用商標5は、「IWANTCHOO」の欧文字を横書きしてなり、引用商標6は、ややデザイン化された「I WANT CHOO」の欧文字を横書きしてなるものであるから、これらの商標は、外観全体の視覚的印象が著しく相違し、外観上、判然と区別し得る。
また、本件商標は、特定の称呼が生じないものであるから、引用商標5及び引用商標6との称呼を比較することはできない。
さらに、本件商標と引用商標5及び引用商標6は、いずれも特定の観念が生じないものであるから、観念を比較することはできない。
そうすると、本件商標と引用商標5及び引用商標6は、称呼及び観念において比較することができないとしても、外観において判然と区別し得るものであるから、これらの商標は、非類似の商標であり、その類似性の程度は低いものである。
ウ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標は、称呼及び観念において比較することができないとしても、外観において判然と区別し得るものであるから、これらの商標は、非類似の商標であり、その類似性の程度は低いものである。
4 商標法第4条第1項第11号該当性について
上記3(3)のアのとおり、本件商標と11号引用商標は、非類似の商標である。
したがって、本件商標の指定商品と11号引用商標の指定商品が、同一又は類似するものであるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第15号該当性について
上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものとは認めることはできないものであり、上記3(3)のとおり、本件商標と引用商標は、非類似の商標であり、その類似性の程度は低いものである。
そうすると、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品又は指定役務は、ファッション関連分野の取引者、需要者であるという共通性を有するものの、本件商標は、これを商標権者がその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者が引用商標を連想又は想起して、その商品が他人(申立人)又は同人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、その商品の需要者が商品の出所について混同を生じるおそれはないというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
6 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-900531