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商標異議申立

2022-900521

ファイブリングス

審判番号
2022-900521
法域
商標
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
商願2022-049038
登録番号
6625317
請求日
2022年12月16日
審決日
2025年03月12日
公報発行日
2025年05月30日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社iCARE
  • 【異議申立人】コミッティー インターナショナル オリンピック
  • 【異議申立人代理人】田中 尚文
  • 【異議申立人代理人】岡田 淳
  • 【異議申立人代理人】渡部 彩
審判長/審判官
  • 審判長 板谷 玲子
  • 審判官 小田 昌子
  • 審判官 鈴木 雅也
分類
T1651.21 -Y (W09353841424445) / T1651.261-Y (W09353841424445) / T1651.262-Y (W09353841424445) / T1651.263-Y (W09353841424445) / T1651.22 -Y (W09353841424445) / T1651.271-Y (W09353841424445)
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第4条第1項第6号、商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

登録第6625317号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。

結論

結 論 登録第6625317号商標の商標登録を維持する。

理由

理 由 第1 本件商標 本件登録第6625317号商標(以下「本件商標」という。)は、「ファイブリングス」の片仮名を標準文字により表してなり、令和4年4月27日に登録出願、別掲1に示した第9類、第35類、第38類、第41類、第42類、第44類及び第45類に属する商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同年9月22日に登録査定され、同年10月7日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議の申立ての理由に該当するとして引用する登録商標は、以下の2件の商標であり、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。 1 国際登録第788585号商標(以下「引用商標1」という。) 商標の構成:別掲2のとおり 国際商標登録出願日(事後指定):2019年(令和元年)6月26日 設定登録日:令和4年5月13日 指定商品・指定役務:第1類ないし第45類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務 2 登録第6118624号商標(以下「引用商標2」という。) 商標の構成:五輪(標準文字) 登録出願日:平成29年12月19日 設定登録日:平成31年2月1日 指定商品・指定役務:第1類、第3類、第9類、第11類、第12類、第14類、第16類、第18類、第21類、第24類、第25類、第28類、第30類、第32類、第35類、第36類、第38類、第39類、第41類ないし第43類及び第45類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務 なお、上記の引用商標1及び引用商標2を、まとめて「引用商標」という場合がある。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第6号、同項第7号、同項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第123号証(枝番号を含む。なお、枝番号を全て表示する場合は、枝番号を省略する。)を提出した。 1 商標法第4条第1項第6号について (1)申立人について 申立人は、近代オリンピックの創始者であるフランス人、ピエール・ド・クーベルタン男爵の提唱で1894年6月23日に設立された、オリンピック競技大会を運営・統括する国際的な非政府の団体であり、オリンピックの理念であるオリンピズムを具現化し、次の世代へと受け継いでいく様々な活動たるオリンピック・ムーブメントを統括する最高機関として、オリンピック憲章に従い、オリンピズムを普及させる役割を担っている(甲4)。 (2)オリンピック・シンボル標章の著名性及び公益性について オリンピック憲章第1章の8によれば、「オリンピック・シンボル」(別掲3)は、単色又は5色の同じ大きさの結び合う5つの輪(オリンピック・リング)からなり、オリンピック・ムーブメントの活動を表すとともに、五つの大陸の団結、さらにオリンピック競技大会に全世界の選手たちが集うことを表現したものである(甲4。以下、当該標章を「オリンピック・シンボル標章」という。また、この5つの輪の標章を、便宜上「五輪マーク」ということがある。)。 オリンピック・シンボル標章については、近代オリンピック競技大会の誕生から間もない1914年にIOC設立20周年記念式典で発表されて以来、オリンピックの長きにわたる歴史とともに、オリンピック競技大会を表象する標章として全世界の人に親しまれ、現在に至るまで使用され続けており、オリンピック競技大会の世界的な認知度とともに、同競技大会にて使用されるオリンピック・シンボル標章が全世界で広く認知されている著名な標章であることは明らかである。 1914年から継続的に使用されているオリンピック・シンボル標章は、全世界で老若男女問わず、申立人がその運営・統括の中心となって開催するオリンピック競技大会やその関連活動等を広く示すものとして認識されており、その程度は極めて高く、世界でも最も著名な標章の一つであるとともに、公益性も非常に高いものであることは明白である。 オリンピック憲章では、申立人の使命として、「スポーツと文化および教育を融合させる活動を奨励し支援する」と規定されている(甲4)。かかる規定に基づき、申立人は、オリンピック・ムーブメントの一環として、様々な教育・文化活動を世界的規模で行い、オリンピック・シンボル標章は、これらの各種教育・文化活動についても広く用いられ、親しまれている。我が国では、日本オリンピック委員会(JOC)等がオリンピック・ムーブメントの普及・啓発事業として、各種の教育・文化活動を国内で精力的に行っている(甲67~甲119)。 (3)本件商標とオリンピック・シンボル標章について 本件商標は、「ファイブリングス」の標準文字をもって表されてなるものであるところ、2021年の第32回夏季オリンピック東京大会においては、開催期間中並びに当該期間の前後に行われた式典やイベント等を通じて、オリンピック・シンボル標章の別称として「ファイブリングス」の標章が広く使用され、同大会のメイン会場である新国立競技場及び日本オリンピックミュージアムをはじめとする都内外の各所に設置された同シンボルのモニュメントには、国内外から多くの人々が見物に訪れるとともに、インターネットやSNS等を通じて同シンボルの別称として当該標章が広く紹介されたため、申立人に係るオリンピック・シンボル標章の別称として「ファイブリングス」の標章が需要者の間に広く認識されるに至っていたことがうかがえ(甲123)、本件商標からは、「オリンピック・シンボル」の意味合いを容易に想起し得ると考えられるものである。 他方、申立人に係るオリンピック競技大会を表象するオリンピック・シンボル標章は、「五輪マーク」からなるものであるところ、本件商標と同様に「5つの輪」程度の意味合いが一義的に認識されるものである。 これに加え、本件商標の登録査定時においては、本件商標からは、「オリンピック・シンボル」の意味合いを容易に想起できたことからすると、本件商標とオリンピック・シンボル標章とは、その互いに観念を共通にするものといえ、両者は観念上相紛れるおそれが極めて高いと考えられるものである。 したがって、本件商標は、非営利団体である申立人が運営する公益に関する事業であって営利を目的としないオリンピック競技大会を表示する標章であって、著名な標章であるオリンピック・シンボル標章と類似の商標であるから、商標法第4条第1項第6号に該当する。 2 商標法第4条第1項第7号について (1)前述のとおり、オリンピック・シンボル標章は極めて公益性が高く、世界各国で著名に至っていることは明白であるから、これと同一又は類似、あるいは、これとの関連性を想起させるような商標の登録・使用が認められれば、スポーツによる教育、平和への貢献といったオリンピック・ムーブメントにより築き上げられた価値観が棄損され、公益に反する結果を招くことは想像に難くなく、特に、第32回夏季オリンピック東京大会では、新型コロナ・ウイルスの感染拡大によって開催が危ぶまれる中で、日本でもオリンピック・ムーブメントの公益的な目標の達成に向けて官民一体となって邁進したこと等をも鑑みると、本件商標の法第4条第1項第7号該当性の検討に際しては、オリンピック・シンボル標章及びこれの使用される各種活動の公益性という点が十分に考慮されるべきである。 (2)このように申立人は、オリンピズムの理念に基づいてオリンピック競技大会を頂点としたオリンピック・ムーブメントを永きにわたり主導的な立場で推進してきたが、申立人と何ら関わりのない本件商標は、著名なオリンピック・シンボル標章に便乗し、その信用、名声にあやかろうとする意図が明らかであって、申立人が推進してきたオリンピック・ムーブメントが阻害されるに他ならない。 本件商標と、著名な標章であるオリンピック・シンボル標章とを比較するに、前述のとおり、本件商標からは、「オリンピック・シンボル」の観念が容易に想起されるため、両者は観念を共通にし、相紛れるおそれが極めて高いというべきである。 また、上記のとおり、「ファイブリングス」の標章は、第32回夏季オリンピック東京大会の開催に際して、オリンピック・シンボル標章の別称として広く使用されていたことからすると、本件商標はオリンピック・シンボル標章に着想を得た名称であると容易に理解され、これに接する需要者等をしてオリンピック・シンボル標章との関連性を想起させるものである。 上述の諸点に鑑みると、本件商標は、オリンピック・シンボル標章に化体した信用にただ乗りし、不正な利益を得ようとしたものであって、スポーツを通じ、平和でよりよい世界の実現に貢献するという、正に公共の利益を追求するオリンピック競技大会の尊厳が害されるおそれがあるのみならず、オリンピック・シンボル標章の著名性にあやかって不正な利益を得ようとするものであり、公正な取引秩序を乱すばかりか、国際信義及び公序良俗にも反するものである。 したがって、本件商標のように申立人と何ら関係のない者が本件商標を独占して使用することは、オリンピック憲章に基づき開催されるオリンピック競技大会の権威を損なうおそれがあるばかりか、社会公共の利益に反し、公の秩序を乱すものと判断されるのが相当である。 そうすると、本件商標は、オリンピック・シンボル標章に化体した信用、名声及び顧客吸引力に便乗して不当な利益を得る等の目的をもって引用商標の特徴を模倣して出願し登録を受けたもので、商標を保護することにより、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護するという商標法の目的に反するものであり、公正な取引秩序を乱し、商道徳に反するものというべきである。 (3)小結 上述のとおり、本件商標は、申立人が運営・統括に携わるオリンピック競技大会やオリンピック・ムーブメント推進のための様々な式典やイベントで使用されている著名な標章であるオリンピック・シンボル標章に化体した信用にただ乗りし、あやかろうとした、あるいは、オリンピック競技大会との関連性を容易に想起させるべく採択されたものであり、社会公共の利益に反し、公の秩序を乱すことは明らかであって、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたことが明らかである。 3 商標法第4条第1項第11号について (1)本件商標は、「ファイブリングス」の標準文字をもって表されてなるものである。一方、申立人が証拠として引用する引用商標1は、別掲2の構成からなり、引用商標2は、「五輪」の標準文字をもって表されてなるものである。 (2)本件商標と引用商標1との類否については、上記のとおりであるところ、本件商標と引用商標2との類否についても触れると、本件商標からは、「オリンピック・シンボル」の観念が容易に想起されるのに対し、引用商標2を構成する「五輪」の文字は、具体的な取引実情を勘案しないとすれば本件商標と同一の「五つの輪」程度の意味合いが理解され、また、具体的な取引実情を考慮するのであれば、当該文字は、1930年代半ば頃よりオリンピックの略称として全国紙等の紙面等で使用されるようになり、以後、今日に至るまで申立人に係るオリンピック競技大会を表示するオリンピック標章の俗称として我が国の需要者の間に広く認識されるようになったことは顕著な事実であることから、引用商標2からは、「オリンピック競技大会の俗称」あるいは「オリンピック・シンボルの俗称」程度の意味合いで認識されていることは明白であり、ゆえに、両者はその意味合いが近似し、観念上相紛れるおそれが極めて高いというべきである。 また、本件商標と引用商標の指定商品(指定役務)は、同一又は類似のものである。 したがって、引用商標に係る出願日及び登録日のいずれもが本件商標に係る商標登録出願の出願日及び登録日に先立つものであることも考慮すると、本件商標は、引用商標との関係において、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。 4 商標法第4条第1項第15号について (1)オリンピック・シンボル標章の著名性について オリンピック・シンボル標章は、IOC設立20周年記念式典において発表されて以来、第32回夏季オリンピック東京大会に至るまでの100年以上の長期にわたり、世界の各都市を舞台として開催されてきたオリンピック競技大会やオリンピック・ムーブメントの普及・啓発事業を表象する標章として継続して使用され続けてきたものであり、我が国は当然として全世界で極めて著名性の高いものであることは、上記にて詳述したとおりである。 (2)出所の混同のおそれについて ア オリンピック・シンボル標章は、申立人が中心となって開催されるオリンピック競技大会やオリンピック・ムーブメントの普及・啓発事業にて長年にわたって使用され、著名であることは、疑いようのない事実である。 イ 申立人の使用に係るオリンピック・シンボル標章が、1914年から現在に至るまでおよそ100年以上にわたり、世界最大級のスポーツの祭典であるオリンピック競技大会を表象する標章として使用されており、オリンピック競技大会といったスポーツの興行の企画・運営にとどまらず、これに関連した極めて広範な商品や役務との関係で著名である。 また、本件商標とオリンピック・シンボル標章とは、その意味合いを共通にするものであり、観念上相紛れるおそれがあるとともに、オリンピック・シンボル標章の極めて高い著名性と相侯って、本件商標はオリンピック関連の一群の商標と認識され得るものである。 そして、申立人は、各企業とのスポンサーシップ契約を締結し、それらのスポンサーがオリンピック資産を利用した様々なマーケティング活動を行っているという実態からすれば、著名な標章であるオリンピック・シンボル標章との関係性を容易に想起させる本件商標が付された本件指定商品及び指定役務が実際の商取引に資された場合、これに接した需要者・取引者は、申立人あるいは日本オリンピック委員会と正式なスポンサー契約を締結した、オフィシャルスポンサーの業務に係る商品及び役務であるかのごとく、商品及び役務の出所について混同を生じるおそれがあることは明らかである。 (3)小結 したがって、申立人が中心となって開催されるオリンピック競技大会やオリンピック・ムーブメントの普及・啓発事業を表象するオリンピック・シンボル標章と密接な関連性を印象付ける本件商標は、これが使用された場合、オリンピック競技大会を容易に想起又は連想させ、申立人あるいは日本オリンピック委員会とスポンサー関係にある者の業務に係る商品及び役務であると商品及び役務の出所について混同を生じさせるおそれがあることから、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。 第4 当審の判断 1 本件商標について 本件商標は、上記第1のとおり、「ファイブリングス」の片仮名を標準文字により表してなるところ、構成各文字は、同書、同大、等間隔で全体としてまとまりよく表されており、これより生ずる「ファイブリングス」の称呼も無理なく一連に称呼し得るものである。 そして、本件商標は、構成中の「ファイブ」の文字が「5。いつつ。」の意味を、また、「リングス」の文字は「(複数の)輪。環。指輪。ロープで正方形に囲まれたボクシングやプロレスの試合場。」(いずれも広辞苑第7版の「ファイブ」及び「リング」の項参照)などの意味を理解させる語であり、構成文字全体としては、辞書等に載録されている成語ではなく、かつ、特定の意味合いをもって親しまれているような事情も見いだせないことから、その構成文字全体をもって、特定の観念を生じない一種の造語を表したものとして認識、把握されるとみるのが相当である。 そうすると、本件商標は、その構成文字全体に相応して「ファイブリングス」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 2 引用商標等について (1)引用商標1、オリンピック・シンボル標章 引用商標1は、別掲2のとおり、左から青色、黄色、黒色、緑色及び赤色の5つの輪を青色と黒色の輪の下方で黄色の輪を連鎖させ、黒色と赤色の輪の下方で緑色の輪を連鎖させて、5個の輪全体が連鎖するようにした図形をもって構成されるものであり、いわゆる「オリンピック・シンボル」として印象し記憶されるものである。 オリンピック・シンボル標章は、別掲3のとおり、引用商標1と同じ構成態様からなるものであり、単色又は引用商標1と同様に5色(左から順に青、黄、黒、緑、赤)の同じ大きさの結び合う5つの輪(オリンピック・リング)からなるものである(甲4)。 (2)引用商標2 引用商標2は、上記第2の2のとおり「五輪」の文字を標準文字により表してなるものであり、該文字に相応して「ゴリン」の称呼を生ずるものであって、該文字(語)は、我が国において「(五輪旗を用いるからいう)オリンピックの俗称」(広辞苑 第7版)として広く一般に親しまれているものである。 3 商標法第4条第1項第6号について (1)申立人提出の証拠によれば、オリンピック・シンボル標章(別掲3)は、単色又は5色(左から順に青、黄、黒、緑、赤)の同じ大きさの結び合う5つの輪(オリンピック・リング)からなり(甲4)、非営利公益団体である国際オリンピック委員会(申立人)により、4年に一度開催される近代オリンピック競技大会を指標する標章として長年にわたり使用されていることが認められ、公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章として、著名なものとなっていたと認められるものである。 (2)本件商標は、上記1のとおり、「ファイブリングス」の片仮名を横書きした構成からなるものであるのに対し、オリンピック・シンボル標章(別掲3)は、単色又は左から青色、黄色、黒色、緑色及び赤色の、5つの輪を青色と黒色の輪の下方で黄色の輪を連鎖させ、黒色と赤色の輪の下方で緑色の輪を連鎖させて、5個の輪全体が連鎖するようにした図形をもって構成されるものである。 (3)そこで、本件商標とオリンピック・シンボル標章とを対比すると、両者はそれぞれ文字のみ、図形のみからなるという相違が認められる。 そして、これらの相違はいずれも微差とはいい難いものであり、かかる相違によって、本件商標と引用商標は、明らかに異なったものとして受けとめられるというのが相当であって、互いに類似する商標とは認められないものである。 さらに、本件商標は、一連一体の造語として理解されるものというのが相当であって、直ちに「オリンピック」と結び付けて看取される構成態様のものとはいえないものである。 (4)してみると、オリンピック・シンボル標章が、上記(1)のとおり、公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章として著名なものであったとしても、本件商標はオリンピック・シンボル標章に類似する商標と認めることはできないものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第6号に該当するものとはいえない。 (5)申立人の主張について 申立人は、同人に係るオリンピック・シンボル標章の別称として「ファイブリングス」の標章が需要者の間に広く認識されるに至っていた旨、また、申立人に係るオリンピック競技大会を表象するオリンピック・シンボル標章を便宜上「五輪マーク」というとして、本件商標と同様に「5つの輪」程度の意味合いが一義的に認識されるものである旨主張している。 しかしながら、申立人提出に係る証拠(甲123)によれば、第32回夏季オリンピック東京大会の開催に際して、東京お台場、東京日本橋、水戸駅南口に設置したオリンピック・リングのオブジェや東京スカイツリーのレーザーマッピングに関するウェブサイト記事などにおいて、「オリンピックシンボル(ファイブリングス)」といった文字で表現している例が認められるものの、当該各記事は、上記オリンピック東京大会の前後における一時的なものであり、記事数もそれほど多くなく、それ以外に、「ファイブリングス」の文字からなる商標の周知著名性を具体的に立証する証拠の提出はない。 そして、オリンピック憲章第1章の8(甲4)によれば、「オリンピック・シンボルは、単色または5色の同じ大きさの結び合う5つの輪(オリンピック・リング)からなり、単独で使用されるものを指す」と定義されているところ、この5つの輪で構成されるオリンピック・シンボルにちなんで近代オリンピックを「五輪」(ごりん)と呼ぶことが多いとされており(weblio辞書等)、いわゆるオリンピックマーク、「オリンピック・シンボル」として親しまれているものであり、また、「五輪」は「(五輪旗を用いるからいう)オリンピックの俗称。」の意味を有する語として辞書(広辞苑 第7版)に掲載されている我が国で親しまれた成語である。 してみると、「五輪」の文字(語)は、一義的にはオリンピックを理解させるか、オリンピックと結び付けて認識、把握されるものと判断するのが相当であって、単に「5つの輪」程度の意味合いを認識させるものではない。 他方、「ファイブリングス」の文字(語)は、先に認定したとおりであって、「5つの輪」の意味のみを理解させるものではない。 加えて、当審において職権により調査するも、本件商標の登録査定時において「ファイブリングス」の文字(語)が、オリンピック又は「五輪マーク」を表すものとして、広く一般に知られていると認めることができるような事情は見いだせなかった。 してみると、「ファイブリングス」の文字からは、「5つの輪」ほどの意味合いを想起させる場合があるとしても、直ちに、オリンピック又はオリンピック・シンボル標章と結び付けて認識、理解されるとまではいうことができない。 よって、この点に関する申立人の主張は、採用することができない。 4 商標法第4条第1項第11号について 本件商標は、上記1のとおり、「ファイブリングス」の片仮名を横書きした構成からなるものであるのに対し、引用商標1は、上記2(1)のとおり、左から青色、黄色、黒色、緑色及び赤色の、5つの輪を青色と黒色の輪の下方で黄色の輪を連鎖させ、黒色と赤色の輪の下方で緑色の輪を連鎖させて、5個の輪全体が連鎖するようにした図形をもって構成されるものであって、いわゆる「オリンピック・シンボル」として印象し記憶されるものであり、また、引用商標2は、上記2(2)のとおり、「五輪」の文字を標準文字により表してなるものであり、該文字に相応して「ゴリン」の称呼を生ずるものであって、該文字(語)は我が国において「(五輪旗を用いるからいう)オリンピックの俗称」として広く一般に親しまれているものである。 そこで、本件商標と引用商標1とを対比すると、両者はそれぞれ文字のみ、図形のみからなるという相違があり、上記3におけるオリンピック・シンボル標章と同様に、両商標は類似する商標と認めることはできない。また、本件商標と引用商標2とを対比すると、両者は構成文字及び構成文字数等の明らかな相違が認められ、称呼において紛れないものであり、本件商標から特定の観念を生じないことにより観念においても紛れないものであるから、両商標は、非類似の商標というべきである。 したがって、本件商標の指定商品及び指定役務と、引用商標の指定商品及び指定役務が同一又は類似するとしても、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当しない。 5 商標法第4条第1項第15号について オリンピック・シンボル標章は、上記3(1)のとおり、著名なものと認められ、また、申立人提出の証拠によれば、申立人及び許諾を受けた者によって、各種の商品及び役務等について使用がされていることをうかがい知ることができる。 しかしながら、本件商標がオリンピック・シンボル標章と類似するものとは認められないことは、上述したとおりであり、本件商標とオリンピック・シンボル標章とは別異の出所を表すものとして看取されるというべきものである。 してみると、本件商標をその指定商品及び指定役務に使用したとしても、これに接する需要者がオリンピック・シンボル標章を想起し連想して、当該商品及び役務を申立人の業務に係る商品及び役務、あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品及び役務であるかのように誤信するとは認め難いから、本件商標の登録出願時及び査定時において、商品及び役務の出所について混同を生じさせるおそれがあったとすることはできないというべきである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものとはいえない。 6 商標法第4条第1項第7号について 上記のとおり、本件商標は、オリンピック・シンボル標章とは非類似の商標であり、別異の商標であるから、オリンピック・シンボル標章を剽窃したとは認め難いものであり、オリンピック・シンボル標章に関連して、その信用や名声等に故なく依拠し、あるいは信用や名声等を毀損するなどの不正の目的をもって使用するものであると断ずることはできないものである。 そして、本件商標は、その構成からみて、きょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような構成のものでないことは明らかであり、また、その使用が、法的に禁じられているとか、公正な取引秩序を乱すおそれがあったり、国際信義に反するとすべき明確な理由は見いだせない。 してみると、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標に当たるとは認められないものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものとはいえない。 7 まとめ 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第6号、同項第7号、同項第11号及び同項第15号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-900521

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