商標異議申立
2022-900514
ポリスケープ、ポリースケープ、ポリ、ポリー、スケープ
- 審判番号
- 2022-900514
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2022-034082
- 登録番号
- 6621797
- 請求日
- 2022年12月08日
- 審決日
- 2023年07月18日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社Polyscape
- 【権利者代理人】弁理士法人六本木通り特許事務所
- 【異議申立人】ザ・マスワークス・インコーポレーテッド
- 【異議申立人代理人】中田 和博
- 【異議申立人代理人】青木 博通
- 審判長/審判官
- 審判長 冨澤 武志
- 審判官 馬場 秀敏
- 審判官 小林 裕子
- 分類
- T1651.261-Y (W09354142) / T1651.262-Y (W09354142) / T1651.263-Y (W09354142) / T1651.271-Y (W09354142)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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登録第6621797号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6621797号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
1 本件商標
本件登録第6621797号商標(以下「本件商標」という。)は、「Polyscape」の欧文字を標準文字で表してなり、令和4年3月24日に登録出願、第9類、第35類、第41類及び第42類に属する別掲のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同年8月22日に登録査定され、同年9月30日に設定登録されたものである。
2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録第5260743号商標(以下「引用商標」という。)は、「POLYSPACE」の欧文字を標準文字で表してなり、2008年3月13日にアメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、平成20年5月9日に登録出願、第9類、第16類、第41類及び第42類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同21年8月28日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2の規定により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第18号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号の該当性について
ア 指定商品・役務の類否
指定商品・役務の類似についてみると、本件商標の第9類、第35類、第41類及び第42類の指定商品・役務と引用商標の第9類、第16類、第41類及び第42類の指定商品・役務が同一又は類似することは、両者が類似群コードを共通にすることなどから明らかである。
イ 商標の類否
(ア)外観について
本件商標と引用商標では、「POLYS○A○E」の部分が共通しており、相違するのは、「C」と「P」を入れ替えた違いのみであり、「C」と「P」は、いずれも「S」、「A」、「E」の間にあり、当該文字列に埋没し、外観上区別がつかない。
しかも、9文字から構成するアルファベットでみると、本件商標及び引用商標ともに、「P」、「O」、「L」、「Y」、「S」、「C」、「A」、「P」、「E」で構成されている点で同じである。違いは、「C」と「P」の配置が入れ違っているだけである。
よって、時と所を違えて離隔的に観察した場合、外観上相紛れるおそれのあることは明らかである。よって、本件商標は引用商標に類似する。
最高裁も「大森林」と「木林森」は類似すると判断しており(平成4年9月22日判決 平3(オ)1805号)、知財高裁も「AROUSE」と「AROUGE」を外観上類似すると判断している。
(イ)観念について
本件商標及び引用商標とも特定の観念はないから、観念上の違いはない。
(ウ)称呼について
本件商標から「ポリスケープ」の称呼が、引用商標からは「ポリスペース」の称呼が生ずる。
両称呼を比較すると、聴者に強い印象を与える語頭の「ポリス」の部分が共通し、「ケ」と「ぺ」の違いも母音「E」が共通し、「プ」と「ス」の違いも母音「U」が共通するため、全体として称呼した場合には、語調語韻が同じものになり、誤認混同の可能性が高く、両商標は称呼上も類似することは明らかである。
ウ 総合判断
以上述べたとおり、本件商標と引用商標は、外観、観念、称呼において類似し、取引者・需要者に与える印象、記憶、連想が同じものであり、両商標が指定商品・役務に使用された場合には、商品・役務の出所について誤認混同を生ずるおそれがあることは明らかである。
よって、本件商標は、引用商標に類似し、指定商品・役務も類似するから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号の該当性について
ア 申立人の概要
申立人は、アメリカ合衆国に本社を置く、数学的計算ソフトウェアを開発するプライベートカンパニーである。主な製品は、POLYSPACE、MATLAB及びSimulinkである。世界の全従業員数が5,000人を超え、年間売上は、13.5億ドル(約1,822.7億円)である。
イ 引用商標の独創性
引用商標「POLYSPACE」は辞書に掲載されていない造語であり、独創性、唯一性が顕著である。
ウ 引用商標の周知・著名性、名声、顧客吸引力
引用商標「POLYSPACE」は、2007年8月1日より日本でコンピュータソフトウェアに使用され、周知・著名になっている(甲1~甲18)。
引用商標に係る商品「コンピュータソフトウェア」は、東京、大阪、名古屋で販売されており、日本での年間売上は、約100万ドル(約1.4億円)である。
引用商標に係る商品「コンピュータソフトウェア」は、東京大学、京都大学、早稲田大学、明治大学など100以上の大学で使用されており、トヨタ、日産、デンソー、リコーなど100以上の企業で使用されている。
例えば、日産自動車のソフトウェア品質グループのリーダーが、「「Polyspace」製品によって、高レベルなソフトウェアの信頼性を確保することができます。これは、業界内の他のツールにはできないことです。」と述べている(甲10)。
エ 商標の類似性
本件商標が引用商標に類似することは、上記(1)で述べたとおりである。
オ 業務関連性
引用商標の使用商品・役務はコンピュータソフトウェアであり、本件商標の指定商品・役務もコンピュータソフトウェアであり、同一の営業主が製造又は販売するものであるから、引用商標の使用商品・役務と本件商標の指定商品・役務は同一又は類似の関係にあり、業務も関連することは明らかである。
カ 取引者又は需要者の共通性
上記オで述べたように、本件商標と引用商標の商品・役務は関連するので、取引者又は需要者が共通することも明らかである。
キ 取引の実情
ソフトウェアは、基本となる商標のスペルを少し変えて、商標をシリーズ化する取引の実情がある。
例えば、マイクロソフトの「Visual C#」「Visual FoxPro」「Visual J++Visual J#」「Visual Studio Code」「Photo Story」「Photosynth」といったシリーズ化した商標がある。
ク 本号の判断基準(最高裁判決)
レールデュタン事件判決(平成12年7月11日最高裁判決)において、最高裁は本号の趣旨、混同の意味、混同の判断手法について、詳細に検討している。
ケ 出所の混同
上記レールデュタン最高裁判決で示された規範を本件についてみると、上述のとおり、(ア)引用商標は、辞書には掲載されていない、生来的な出所識別力の強い独創的な語であり、(イ)引用商標は周知・著名であり、品質・性能のよさから名声を博し、強力な顧客吸引力を有しており、(ウ)引用商標と本件商標が類似し、(エ)業務も、申立人の業務と指定商品・役務とが共通し、(オ)取引者及び需要者も一致しており、(カ)ソフトウェアは、基本となる商標のスペルを少し変えて、商標をシリーズ化する取引の実情がある。
よって、本件商標が指定商品・役務に使用された場合には、当該商品・役務が申立人の商品・役務に係るものであると誤信させるおそれ(狭義の混同)、又は、当該商品・役務が申立人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品・役務であると誤信されるおそれ(広義の混同)があることは明らかであり、本件商標は、仮に商標法第4条第1項第11号に該当しなくても同項第15号に規定する「他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標」に該当する。
4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、申立人は米国マサチューセッツ州に本社を置く企業であり、1999年より、引用商標(「Polyspace」と表記されているものを含む。以下同じ。)を使用した、ソフトウェアの欠陥の検出・解析等を行うコンピュータソフトウェア「Polyspace」(以下「申立人商品」という。)を製品化したこと(甲1、甲4、甲5)、申立人商品は我が国において、遅くとも2011年頃には利用されていたこと(甲14)などがうかがえる。
しかしながら、引用商標に係る申立人商品についての、我が国における販売実績(売上高、業界シェア等)や広告実績(広告の時期、期間、回数、宣伝広告費等)などを客観的に把握できる証拠は確認することができず、引用商標の周知性を推し量ることができない。
その他、申立人の提出に係る甲各号証を総合してみても、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間で広く認識されていたものと認めるに足りる事実は見いだせない。
そうすると、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標
本件商標は、上記1のとおり「Polyscape」の欧文字を標準文字で表してなるところ、この文字は、辞書類に載録されている語ではなく、特定の意味合いをもって親しまれている語でもないことから、特定の観念を生じない一種の造語として認識、把握されるものである。
そして、欧文字からなる特定の観念を生じない造語にあっては、我が国において親しまれているローマ字又は英語の読みに倣って称呼するのが自然である。
そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して「ポリスケープ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標
引用商標は、上記2のとおり「POLYSPACE」の欧文字を標準文字で表してなるところ、この文字は、辞書類に載録されている語ではなく、特定の意味合いをもって親しまれている語でもないことから、特定の観念を生じない一種の造語として認識、把握されるものである。
そして、欧文字からなる特定の観念を生じない造語にあっては、我が国において親しまれているローマ字又は英語の読みに倣って称呼するのが自然である。
そうすると、引用商標は、その構成文字に相応して「ポリスペース」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
ウ 本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標を比較すると、外観については、本件商標「Polyscape」と引用商標「POLYSPACE」は、6文字目に「c」と「P」、8文字目に「p」と「C」の文字の差異を有するところ、この差異が両者の外観全体に与える影響は決して小さくないというべきであるから、両者は外観において相紛れるおそれはない。
次に、称呼については、本件商標から生じる「ポリスケープ」の称呼と引用商標から生じる「ポリスペース」の称呼は、共に6音からなるものであって、後半部に「ケープ」と「ペース」の音の差異を有するところ、さほど冗長とはいえない6音の音構成において、この差異が両称呼全体の語調、語感に及ぼす影響は大きく、両者をそれぞれ一連に称呼しても、明確に聴別できるものであるから、両者は称呼においても相紛れるおそれはない。
さらに、観念については、両商標は共に特定の観念を生じないものであるから、両者は観念において比較することができない。
そうすると、本件商標と引用商標は、観念において比較することができないとしても、外観及び称呼において相紛れるおそれがないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
エ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、両商標の指定商品及び指定役務が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号について
上記(1)のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、また、上記(2)のとおり、本件商標は、引用商標と相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものであるから、両者の類似性の程度は低いものである。
そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品及び指定役務について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品及び役務が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(4)むすび
以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-900514