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商標異議申立

2022-900496

ヒタシ

審判番号
2022-900496
法域
商標
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
商願2022-038869
登録番号
6621366
請求日
2022年11月29日
審決日
2023年10月16日
公報発行日
2024年03月29日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】王玉英
  • 【異議申立人】株式会社 日立製作所
  • 【異議申立人代理人】弁理士法人第一国際特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 豊田 純一
  • 審判官 杉本 克治
  • 審判官 小田 昌子
分類
T1651.261-Y (W21) / T1651.262-Y (W21) / T1651.263-Y (W21) / T1651.271-Y (W21)
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第11号
データ出所
審決公報(XML)

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登録第6621366号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。

結論

結 論 登録第6621366号商標の商標登録を維持する。

理由

理 由 第1 本件商標 本件登録第6621366号商標(以下「本件商標」という。)は、「hitasi」の文字を標準文字で表してなり、令和4年4月5日に登録出願、第21類「未加工又は半加工のガラス(建築用のものを除く。),かいばおけ,水飼い用おけ,電気式歯ブラシ,つめ用ブラシ,くし用容器,化粧用ブラシ,園芸用手袋,ガラス製アンプル型瓶,デカンター,魔法瓶,オーブンミトン,食卓マット(紙製又は織物製のものを除く。),飲物用ストロー,小鳥用水盤,観賞魚用水槽,台所用具及び清掃用具」を指定商品として、同年9月16日に登録査定され、同月29日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議の申立ての理由に該当するとして引用する登録商標及び標章は、以下の1及び2のとおりである。 1 申立人が、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録商標は、以下の(1)ないし(16)のとおりであり、その商標権はいずれも現に有効に存続しているものである。 (1)登録第645376号商標 商標の構成:HITACHI 登録出願日:昭和37年3月3日 設定登録日:昭和39年6月22日 書換登録日:平成17年1月12日 指定商品:第6類、第9類、第11類、第19類及び第21類に属する商標登録原簿に記載の商品 (2)登録第723441号商標 商標の構成:HITACHI 登録出願日:昭和35年7月19日 設定登録日:昭和41年10月20日 書換登録日:平成19年1月24日 指定商品:第5類、第9類、第10類、第16類、第17類、第20類ないし第22類、第24類及び第25類に属する商標登録原簿に記載の商品 (3)登録第745887号商標 商標の構成:HITACHI 登録出願日:昭和35年7月19日 設定登録日:昭和42年6月26日 書換登録日:平成19年8月29日 指定商品:第3類、第8類、第10類、第14類、第18類、第21類、第25類及び第26類に属する商標登録原簿に記載の商品 (4)登録第984592号商標 商標の構成:HITACHI 登録出願日:昭和43年7月24日 設定登録日:昭和47年10月11日 書換登録日:平成15年8月13日 指定商品:第4類ないし第6類、第8類、第10類、第11類、第14類、第16類、第18類ないし第21類、第24類及び第26類ないし第28類に属する商標登録原簿に記載の商品 (5)登録第1375212号商標 商標の構成:HITACHI 登録出願日:昭和35年7月19日 設定登録日:昭和54年3月23日 書換登録日:平成21年2月12日 指定商品:第6類、第16類ないし第18類、第20類ないし第22類及び第26類に属する商標登録原簿に記載の商品 (6)登録第1392809号商標 商標の構成:HITACHI 登録出願日:昭和49年7月31日 設定登録日:昭和54年9月28日 書換登録日:平成21年9月2日 指定商品:第6類、第16類ないし第18類、第20類ないし第22類及び第26類に属する商標登録原簿に記載の商品 (7)登録第1492488号商標 商標の構成:HITACHI 登録出願日:昭和43年3月27日 設定登録日:昭和56年12月25日 書換登録日:平成14年11月13日 指定商品:第7類ないし第12類、第17類及び第21類に属する商標登録原簿に記載の商品 (8)登録第1698222号商標 商標の構成:HITACHI 登録出願日:昭和52年3月25日 設定登録日:昭和59年6月21日 書換登録日:平成18年6月28日 指定商品:第6類ないし第9類、第11類、第12類、第15類ないし第17類、第19類ないし第21類、第26類及び第28類に属する商標登録原簿に記載の商品 (9)登録第1720572号商標 商標の構成:HITACHI 登録出願日:昭和56年6月3日 設定登録日:昭和59年10月31日 書換登録日:平成17年5月25日 指定商品:第3類、第6類、第8類、第11類、第14類、第16類ないし第18類、第20類、第21類及び第26類に属する商標登録原簿に記載の商品 (10)登録第4670241号商標 商標の構成:HITACHI 登録出願日:平成14年1月9日 設定登録日:平成15年5月9日 指定商品及び指定役務:第6類ないし第11類、第15類、第16類、第18類、第20類ないし第22類、第28類、第30類、第35類ないし第38類及び第40類ないし第42類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務 (11)登録第5123441号商標 商標の構成:HITACHI 登録出願日:平成19年4月1日 設定登録日:平成20年3月28日 指定役務:第35類に属する商標登録原簿に記載の役務 (12)登録第5123447号商標 商標の構成:HITACHI 登録出願日:平成19年4月1日 設定登録日:平成20年3月28日 指定役務:第35類に属する商標登録原簿に記載の役務 (13)登録第5123448号商標 商標の構成:HITACHI 登録出願日:平成19年4月1日 設定登録日:平成20年3月28日 指定役務:第35類に属する商標登録原簿に記載の役務 (14)登録第5123450号商標 商標の構成:HITACHI 登録出願日:平成19年4月1日 設定登録日:平成20年3月28日 指定役務:第35類に属する商標登録原簿に記載の役務 (15)登録第5123458号商標 商標の構成:HITACHI 登録出願日:平成19年4月1日 設定登録日:平成20年3月28日 指定役務:第35類に属する商標登録原簿に記載の役務 (16)登録第5227755号商標 商標の構成:HITACHI 登録出願日:平成19年4月1日 設定登録日:平成21年5月1日 指定役務:第35類に属する商標登録原簿に記載の役務 なお、以下、上記(1)ないし(16)の登録商標をまとめて「引用商標」という。 2 申立人が本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する商標は、申立人のハウスマーク及びそのグループ会社の冠ブランド名として、その業務に係る商品・役務について使用し、需要者の間に広く知られていると主張する「HITACHI」の欧文字を横書きしてなるもの(以下「申立人等使用商標」という。)である。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1項によって取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第22号証(枝番号を含む。以下、枝番号の全てを示すときは、枝番号を省略する。)を提出した。 以下、証拠の記載にあたっては、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載する。 1 商標法第4条第1項第11号について (1)本件商標について 本件商標は、「hitasi」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は、同じ書体、同じ大きさをもって、全体として一連にまとまりよく一体的に表されているものであって、一般の辞書等に載録されていないことから、一種の造語というべきものである(甲1)。 そうすると、本件商標は、全体として一体的に看取されるものであり、「ヒタシ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 (2)引用商標について 引用商標は、いずれも「HITACHI」の欧文字をゴシック体で横書きしてなるところ、当該文字は、全体として一連にまとまりよく一体的に表されているものであって、我が国においては、申立人のハウスマーク及びそのグループ会社の冠ブランド名として、著名なものである(甲2)。 そうすると、引用商標は、「ヒタチ」の称呼を生じ、「申立人及びそのグループ会社に係るブランド」の観念を生じるといえる。 (3)本件商標と引用商標との類否について ア 外観について 本件商標と引用商標とは、語頭の「hita(HITA)」と語尾の「i(I)」の5文字のつづりを共通にし、5文字目において「s」と「ch」の文字の差異を有する点及び本件商標が欧文字の小文字で表されているのに対し、引用商標は欧文字の大文字で表されている点において相違する。 しかしながら、両商標は5文字を共通にし「s」と「ch」の文字の差異が取引者、需要者の印象に残り難い中間に位置するものであって、かつ、欧文字の小文字と大文字で表されている点についても、両商標がいずれも一般的に用いられている字体であり取引者、需要者の注意をひく特徴を有しないものであるから、両商標は、外観が極めて近似するというべきである。 イ 称呼について 本件商標から生じる「ヒタシ」の称呼と引用商標から生じる「ヒタチ」の称呼とは、両称呼がいずれも3音で構成され、「シ」と「チ」の差異音を有するものの、当該差異音は取引者、需要者の印象に残り難い語尾に位置するものであり、かつ、母音「i」を共通にするから、それぞれを一連に称呼した場合には、全体の語調、語感が近似したものとなり、互いに聴き誤るおそれがあるというべきである。 ウ 観念について 本件商標は、特定の観念が生じないことから、引用商標とは比較することができないものである。 エ 指定商品・役務について 本件商標の指定商品と引用商標の指定商品及び指定役務とは、類似する。 (4)その他 申立人は、引用商標のほかにも、本件商標の指定商品と指定商品及び指定役務が類似する「HITACHI」の文字と他の要素を組み合わせた商標、「日立」、「ヒタチ」又は「ひたち」の文字を配した等の51件の登録商標を有している。 (5)小括 以上よりすると、本件商標と引用商標とは、観念は比較することができず、外観が極めて近似し、称呼も近似することを踏まえれば、相紛れるおそれのある類似の商標というべきあって、両商標の指定商品も同一又は類似するものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 2 商標法第4条第1項第15号について (1)申立人について 申立人は、1910年に創業した総合電機メーカーであり、創業当初から発電機などの国産化を目指して電機メーカーとして発展してきた。1924年には国産初の大型電気機関車を完成、1932年には電気冷蔵庫第1号を完成、1942年には国産電子顕微鏡第1号製品を完成させるなどした。 また、1950年代からコンピューターの開発に着手し、1960年代には他社に先駆けてコンピューター事業を本格化し、1965年には国産コンピューター「HITAC5020システム」、1975年には大型コンピューター「HITAC Mシリーズ」を完成させるなどした。結果、我が国を代表する電機メーカーとなった(甲3)。 申立人の2021年度の売上収益は10兆2,646億円、従業員数は約35万人、会社数は854社(国内158社、海外696社)に及ぶ(甲4)。 申立人の2021年度の売上高は、我が国の上場会社で第9位、10兆2,646億円であり、業種が電気機器としては第1位である(甲5)。 したがって、申立人及びそのグループ会社(以下「申立人等」という。)は、我が国有数の企業であることは明らかである。 現在の申立人等の業務範囲は、非常に広範囲に及んでおり、「デジタル」、「グリーン」及び「イノベーション」の3つを成長の柱として、グローバルで社会イノベーショ事業のさらなる進化と成長をめざしている。 主な製品・サービスは、「デジタルシステム&サービス」では、フロントビジネスとして金融機関、官公庁・自治体、社会インフラなどミッションクリテイカル領域のIT/デジタルシステム、ITサービスとしてDXソリューション・サービス、サービス&プラットフォームとしてデザイン、デジタルエンジニアリング、データアナリティクス、クラウドサービス、ITプロダクツ、「グリーンエナジー&モビリティ」では、エネルギーソリューション(パワーグリッド、原子力、再生可能エネルギー、分散型電源)、鉄道システム(車両、信号・制御、サービス・保守、スマートモビリティ、ターンキー)、「コネクティブインダストリーズ」では、アーバンGr. として昇降機・ビルサービス(エレベーター・エスカレーターなど)、家電・空調システム、アドバンストテクノロジ一Gr.としてヘルスケア(生化学免疫分析装置、細胞自動培養装置、粒子線治療システムなど)、計測・分析(半導体計測評価装置、電子顕微鏡など)、インダストリーGr.として産業・流通ソリューション、ロボティクスS1、上下水道・ユーティリティソリューション、産業用機器、「オートモティブシステム事業」では、パワートレイン、シャシー、先進運転支援、二輪車機器を提供している(甲4)。 (2)申立人等使用商標の著名性 ア 申立人等は、我が国において、遅くとも1914年より、申立人等使用商標を様々な商品及び役務について使用を開始しており、以降、現在に至るまで、申立人のハウスマーク及びそのグループ会社の冠ブランド名として、その業務に係る商品・役務について継続して使用している(甲6~甲8)。 イ 申立人等の業務に係る商品は、2020年において、業務用エアコン(業務用冷暖房装置)の分野で業界シェアが第3位、家庭用エアコンのランキングでは第20位までに3つの機器がランクイン(2位、12位、18位)、及び冷蔵庫・洗濯機ほか白物家電の売れ筋ランキングでは3位、4位、10位、14位、17位にランクインしている(甲9~甲11)。 また、家電業界売上ランキング(2021~2022年)において5位、売上高は3,966億円にのぼる(甲12)。 ウ 申立人等は、以下のとおり、申立人等に係る商品及び役務の宣伝広告をしている。 (ア)テレビ広告 申立人等は、広告媒体としてテレビを積極的に活用しており、例えば、TBS系列で毎週土曜日21時00分から21時54分に放送されている「日立 世界・ふしぎ発見」は、申立人等がメインスポンサーとなり、1986年から30年以上にわたって放送されている長寿番組であり、全国31局で放映されている(甲13、甲14)。 申立人等は、上記テレビ番組を含め多くのテレビCMを放送しており、その冒頭に申立人等使用商標を表示している(甲15)。 (イ)新聞による広告 申立人等は、近年においては広告をデジタルシフトしているため、数は少なくなっているものの、例えば、日本経済新聞に2015年から2018年にかけて総計25回の広告を掲載している(甲16)。 (ウ)商品カタログ 申立人等が製作するカタログ等には、必ずその表紙に「HITACHI」の文字を表示している(甲8)。 (エ)プロサッカークラブのメインスポンサー 申立人等は、プロサッカークラブ「柏レイソル」のメインスポンサーであり、柏レイソルは、申立人の本社サッカ一部が前身であり、1993年に「日立FC柏レイソル」とクラブ名を変更し、その後1996年にチーム名を「柏レイソル」に変更し、歴代のユニホームには、当初から現在に至るまで、その胸部分に申立人等使用商標が表示されている(甲17~甲19)。 エ 申立人に係る防護標章登録 申立人は、本件商標の指定商品に類似する商品について、「HITACHI」の文字からなる登録第433710号商標及び登録第1492488号商標に係る防護標章登録を有している。 オ まとめ 以上のとおり、申立人等使用商標は、申立人のハウスマーク及びそのグループ会社の冠ブランド名として、非常に幅広い商品・役務について使用されており、我が国において著名であることは明らかである。 (3)混同を生ずるおそれの有無 ア 本件商標と申立人等使用商標の類否 申立人等使用商標は、欧文字の大文字で「HITACHI」と書してなるものである。 そうすると、本件商標と申立人等使用商標とは、観念上は比較することができないものであって、外観上は極めて近似し、称呼も近似することを踏まえれば、両商標の類似性は極めて高いというべきである。 イ 申立人等使用商標の周知著名性及び独創性の程度 申立人等使用商標は、申立人のハウスマーク及びそのグループ会社の冠ブランド名として、我が国において著名であることは明らかである。 欧文字で表した「HITACHI」の文字を遅くとも1914年より長年にわたり申立人等が一貫して使用してきたことを踏まえれば、申立人等使用商標は、相当程度独創性が高いというべきである。 ウ 本件商標の指定商品と申立人等の業務に係る商品等との関連性の程度 (ア)本件商標は、第21類に属する商品を指定商品とするものである。 (イ)一方、申立人等は、総合電機メーカーとしての技術を基礎として幅広い事業を行い、現在、申立人等使用商標を使用し、本件商標の指定商品を含め、幅広い分野の事業を行っている。 特に、本件商標の指定商品中「電気式歯ブラシ」は、化粧用具の一種であるとともに衛生用の家庭用電熱用品であり、申立人等の主力商品の一つである電気製品である(甲20)。 (ウ)申立人等は、過去において商品「電気式歯ブラシ」を販売しており、現在においても、衛生用の家庭用電熱用品として、「ヘアドライヤー」、「電気式髭剃り(シェーバー)」を販売している。 また、本件商標の指定商品中「つめ用ブラシ,くし用容器,化粧用ブラシ」は、主に化粧の際に使用される非電気式の道具であって、家庭内の鏡台又は洗面台等において電気式の「ヘアドライヤー」と共に使用される場合が多い商品であることから、その用途を共通にする。 加えて、本件商標の指定商品中「魔法瓶」、「台所用品」及び「清掃用具」には電気式ものが含まれないとしても、一般的にその用途を共通にする電気式の商品が販売されていることは周知の事実であり、申立人等も多くのそれらの電気式の商品を販売している。 さらに、申立人等は、本件商標の指定商品中「台所用品」に属する商品「釜」について、クッキングヒーター用の商品として鍋、フライパン等を販売している(甲21)。 (エ)以上よりすると、本件商標の指定商品と申立人等が販売する商品は、その用途を共通にすることが多いことから、密接な関連性が高い商品であることは明らかである。 エ 商品の取引者及び需要者の共通性 本件商標の指定商品は、そのほとんどが家庭内で使用されるものであるから、一般消費者を対象としている商品である。 一方、申立人等の業務に係る商品は、一般消費者を対象としている商品を多く含むから、本件商標の指定商品と申立人等の業務に係る商品とは、その取引者、需要者を共通にする。 そして、本件商標の指定商品はその多くについて購入する者が特別の知識を有しない一般消費者であることを考慮すると、需要者全体の注意力が高いと直ちに認めることはできないのであって、本件商標と申立人等使用商標とを直接対比した場合に外観及び称呼上の印象を異にすると考えられる差異についても、需要者の注意が向けられないままに商品の選択、購入がされる場合が少なくないものと考えられる。 (4)小括 以上のとおり、申立人等使用商標「HITACHI」は、申立人のハウスマーク及びそのグループ会社の冠ブランド名として、本件商標の指定商品を含め、幅広い商品・役務について使用されており、我が国において著名なものである。 そして、本件商標は、申立人等使用商標と極めて類似性の高い商標であること、申立人等使用商標が相当程度独創性の高い商標であること、本件商標の指定商品は申立人及びそのグループ会社が使用する商品と用途を共通する商品を含み、かつ、関連性の高い商品であること、また、その需要者が共に一般消費者であること、などを併せ考慮すると、本件商標をその指定商品について使用するときは、その取引者、需要者に申立人等使用商標を想起、連想させ、当該商品が、申立人等との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある者の業務に係る商品であると誤信され、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるというべきである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号にいう混同を生じるおそれがある商標に該当するというべきである。 (5)その他 ア 知財高裁判決について 申立人は、第三者に係る第11類を指定商品とする登録第6280832号商標「hihachi」について商標登録異議申立てを行い、当該登録商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するとして取り消された。 当該異議事件は知財高裁でも争われたが、知財高裁は、申立人等の業務に係る商品であると混同するおそれがある旨判示している(甲22)。 イ 商標法第4条第1項第15号の規定及び防護標章の登録制度の存在意義について 申立人は、我が国有数の企業である。 そして、申立人等使用商標は、申立人のハウスマーク及びそのグループ会社の冠ブランド名として使用され、著名なものである。 本件商標は、商品の出所について混同を生じさせ登録が取り消されるべきものであって、その登録が維持されるとすれば、我が国有数の企業のハウスマーク及び冠ブランド名と類似する商標を関連性の高い商品に認めることとなり、商標法第4条第1項第15号を空文化し、防護標章の登録制度の存在意義を失わせるものと考える。 第4 当審の判断 1 申立人等使用商標の周知著名性について (1)申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、次の事実を認めることができる。 ア 申立人は、1910年に創業した総合電機メーカーであり、創業以来、電動機、電気機関車、家庭用電気機器、電子顕微鏡、通信機器、電子計算機などの多種の商品を取り扱い(甲3、甲6、甲7)、現在では、その業務範囲は、申立人のグループ会社を含め、IT/デジタルシステム、エネルギーソリューション、鉄道システムの提供など広範囲に及んでいる(甲4)。 イ 申立人等の2021年度の売上収益は10兆2,646億円であり、我が国の上場会社で第9位、電気機器の業種では第1位である(甲4、甲5)。 また、日本国内における申立人等の2021年度の売上収益は4兆1,870億円であり、グループ会社の数は158社である(甲4、甲5)。 ウ 申立人等の業務に係る商品は、2020年において、「おすすめBEST」と称するウェブサイトで業務用エアコンが業界シェア第3位(甲9)、「価格.com」と称するウェブサイトの「エアコン・クーラー 人気売れ筋ランキング」で2位、12位、18位(甲10)、「Amazon.co.jp 売れ筋ランキング」の「冷蔵庫・洗濯機ほか白物家電の売れ筋ランキング」で3位、4位、10位、14位、17位(甲11)であり、「業界動向 SEARCH.COM」と称するウェブサイトの「家電業界 売上高ランキング(2021~2022年)」で5位、売上高は3,966億円(甲12)とされている。 エ 申立人等は、我が国において、遅くとも1914年から申立人等使用商標の使用を開始し、現在に至るまで、申立人等の業務に係る様々な商品(家庭用電気機器、通信機器、電子計算機など)について継続して使用している(甲6~甲12)。 オ 申立人等は、1986年から現在に至るまで全国31局で放映されているテレビ番組「日立 世界・ふしぎ発見」におけるCMやその他のCMにおける申立人等使用商標の表示や、1995年からプロサッカーリーグに昇格したサッカークラブ「柏レイソル」のユニフォームの胸部分に、現在に至るまで申立人等使用商標を表示し、自社の広告宣伝において、申立人等使用商標を表示している(甲13~甲15、甲17~甲19)。 また、申立人等使用商標は、遅くとも2018年以降、申立人等の商品カタログの表紙に表示され(甲8、甲21)、申立人のウェブサイトにも表示されている(甲8)。 (2)上記(1)のとおり、申立人等の2021年度の売上収益は、10兆2,646億円であり、これは我が国の上場会社において第9位、電気機器の会社において第1位、日本国内での売上収益は4兆1,870億円であり、申立人等は1914年から現在まで継続して申立人等の業務に係る商品(家庭用電気機器、通信機器、電子計算機など)について申立人等使用商標を使用し、また、申立人等は1986年頃からテレビCM等で申立人等使用商標を表示した申立人等又は申立人等の取り扱いに係る商品の宣伝広告をし、さらに、申立人等使用商標は申立人等の商品カタログの表紙や申立人のウェブサイトに表示されていることなどからすれば、申立人等使用商標は、本件商標の登録出願の日前から、登録査定日はもとより現在においても継続して、申立人等の業務に係る商品を表示するものとして及び申立人等のハウスマークとして需要者の間に広く認識されているものと認めるのが相当である。 2 商標法第4条第1項第11号について (1)本件商標について 本件商標は、上記第1のとおり「hitasi」の文字を標準文字で表してなるものであるから、その構成文字に相応して「ヒタシ」の称呼を生じ、当該文字は、辞書等に特定の意味を有する語として載録されている等の事実は認められない。 したがって、本件商標は、その構成文字に相応して、「ヒタシ」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。 (2)引用商標について 引用商標は、上記第2の1のとおり、「HITACHI」の欧文字を横書きしてなるものであるから、その構成文字に相応して「ヒタチ」の称呼を生じるものである。 そして、「HITACHI」の欧文字は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において申立人等の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものであるから、引用商標は、「(申立人等のブランドとしての)HITACHI」の観念を生じるものと判断するのが相当である。 したがって、引用商標は、その構成文字に相応して、「ヒタチ」の称呼を生じ、「(申立人等のブランドとしての)HITACHI」の観念を生じるものである。 (3)本件商標と引用商標の類否 本件商標と引用商標の類否を検討すると、外観においては、本件商標の構成文字「hitasi」と引用商標の構成文字「HITACHI」のつづりの比較において、両者は5文字目又は6文字目に「s」と「CH」の欧文字の差異を有し、この差異が6文字又は7文字という比較的少ない文字構成からなる両商標の外観全体の視覚的印象に与える影響は小さいとはいえず、これらは、外観において、相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。 次に、本件商標より生じる「ヒタシ」の称呼と引用商標より生じる「ヒタチ」の称呼を比較すると、両者は語尾において「シ」と「チ」の音の差異を有し、この差異が共に3音という短い音構成からなる両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は小さいとはいえず、両者をそれぞれ一連に称呼しても、聴別し得るものであるから、これらは、称呼において、相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。 さらに、本件商標が特定の観念を生じないのに対し、引用商標は「(申立人等のブランドとしての)HITACHI」の観念を生じるものであるから、これらは、観念において、相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。 そうすると、本件商標と引用商標は、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は非類似の商標である。 その他、本件商標と引用商標が類似するというべき事情は見いだせない。 (4)小括 以上のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標である。 したがって、本件商標の指定商品と引用商標に係る指定商品又は指定役務が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第15号について (1)申立人等使用商標の周知著名性について 上記1のとおり、申立人等使用商標は、本件商標の登録出願の日前から、登録査定日はもとより現在においても継続して、申立人等の業務に係る商品を表示するものとして及び申立人等のハウスマークとして需要者の間に広く認識されているものと認められる。 (2)本件商標と申立人等使用商標の類似性の程度について 申立人等使用商標は、引用商標と同様に「HITACHI」の欧文字を横書きしてなるところ、上記2(3)のとおり、本件商標と申立人等使用商標は、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は非類似の商標であって、別異の商標であって、類似性の程度は低いといえる。 (3)本件商標の指定商品と申立人等の業務に係る商品の関連性、需要者の共通性について 本件商標の指定商品と申立人等の業務に係る商品は、商品の関連性を有し、その需要者が共通する場合があるものである。 (4)出所の混同のおそれについて 上記(1)のとおり、申立人等使用商標は、申立人等の業務に係る商品を表示するものなどとして需要者の間に広く認識されているものであるが、上記(2)のとおり、本件商標は、申立人等使用商標と相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異の商標というべきものであるから、本件商標の指定商品と申立人等の業務に係る商品との関連性の程度、需要者の共通性などを考慮しても、本件商標は、本件商標の権利者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして申立人等使用商標又は申立人等を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人等)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。 その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 (5)小括 したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当しない。 4 むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも該当するものではないから、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものとはいえず、ほかに同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-900496

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