商標異議申立
2022-900469
ボタニー
- 審判番号
- 2022-900469
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2021-039216
- 登録番号
- 6610710
- 請求日
- 2022年11月14日
- 審決日
- 2024年05月20日
- 公報発行日
- 2024年07月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】セントミハエルワインアンドスピリッツ株式会社
- 【権利者代理人】鶴若 俊雄
- 【異議申立人】シーエルエス レミー コアントロー
- 【異議申立人代理人】弁理士法人浅村特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 大森 友子
- 審判官 豊瀬 京太郎
- 審判官 小俣 克巳
- 分類
- T1651.261-Y (W33) / T1651.262-Y (W33) / T1651.263-Y (W33) / T1651.271-Y (W33)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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登録第6610710号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6610710号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6610710号商標(以下「本件商標」という。)は、「ボタニー」の文字を標準文字で表してなり、令和3年4月1日に登録出願、第33類「ジン,スピリッツ(蒸留酒),スピリッツ(飲料),消化促進酒(リキュール及びスピリッツ),洋酒,果実酒」を指定商品として、同4年7月7日に登録査定され、同年9月6日に設定登録されたものである。
第2 引用商標等
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標等は次のとおりである(以下、それらをまとめて「引用商標」という。)
1 国際登録第1072884号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様 別掲のとおり
指定商品 第33類「Gin.」
国際登録日 2011年(平成23年)3月14日
設定登録日 平成23年12月2日
なお、引用商標1は、その商標権者である「Bruichladdich Distillery Company Limited」(以下「引用商標権者」という。)が、商品「ジン」について使用し、日本における需要者の間に広く認識されているとするものであり、当該商標に係る商標権は、現に有効に存続している。
2 引用商標1の略称として、日本における需要者の間に広く認識されている「ボタニスト」の片仮名からなる商標又は標章(以下「引用商標2」という。)
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第39号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標について
本件商標は、「ボタニー」の文字からなる商標であり、英単語の「botany」の語の読み仮名となっている。一般に「植物学」との意味合いを有するものと理解される(甲4)。
(2)引用商標1について
申立人のグループ会社の所有に係る引用商標は、左横書きした欧文字「THE BOTANIST」の構成からなるものである(甲3)。「BOTANIST」は一般に「植物学者」との意味合いを有するものと理解される(甲5)。
ア 引用商標1中の「THE」の部分について
英語の定冠詞「THE」は特段の意味内容を有せず、自他商品識別機能を発揮しないものである。定冠詞「THE」はよく知られた単語であり、定冠詞はこれに続く語を強調するためのものであるとの役割も広く認識されているから、引用商標1に接する取引者、需要者は、引用商標1中の「THE」の部分を英語の定冠詞であると容易に認識し、それに続く「BOTANIST」の語に着目して取引にあたると考えるのが自然である。この構成からも、語義上からも、「THE」と「BOTANIST」を一体不可分に把握しなければならない特段の理由はないと解する。
したがって、引用商標1からは、「ボタニスト」の称呼も生ずるものと解する。
特許庁においても、英語の定冠詞「THE」の部分は、自他商品識別標識としての機能を果たさないから、「THE」に続く部分からの称呼をも生じることがある旨認定されている(甲6~甲8)。
以上から、引用商標1については「ザボタニスト」及び「ボタニスト」の称呼が生ずるというべきである。
イ 申立人が、我が国において販売している、引用商標1に係るジン「THE BOTANIST」(以下「申立人商品」という場合がある。)は、販売の実際においても、識別力を有しないか極めて弱い定冠詞「THE」を省略して流通し、販売され、また、取引者や需要者において認識されていることが複数の資料から理解される(甲9~甲13)。
(3)本件商標と引用商標1との類似性について
ア 本件商標から生ずる「ボタニー」の称呼と引用商標1から生ずる「ボタニスト」の称呼を比較すると、称呼における識別上重要な要素を占める語頭音を含めた3音「ボタニ」までを共通にし、語尾の「スト」の音が異なる。
この「ス」の音は無声摩擦音で、それ自体響きの弱い音といえる点に加え、「卜」の音は声帯の振動を伴わない無声音であって、明確に聴取され難いとともに、称呼識別上比較的明確に聴取され難い語尾に位置する。そのため、該音の有無が両称呼の全体に及ぼす影響については、慎重に検討されるべきであり、両称呼をそれぞれ一連に称呼するときは、全体の語感が近似したものとなり、聴き誤るおそれがある。
イ 本件商標は「ボタニー」から、「植物学」の意味が生ずる。引用商標1中の「THE」の部分は、上述のとおり英語の定冠詞であって、特別な意味を有するものではなく、また、特に訳することを必要とするものではないから、「THE」に続く「BOTANIST」から「植物学者」の意味が生ずる。
したがって、本件商標は、引用商標1と観念においても近似したものとなり、需要者において相紛らわしい関係にあるといえる。
ウ 以上から、両商標は類似するものである。
(4)指定商品の類似性について
本件商標の指定商品(以下「本件指定商品」という。)は、引用商標1の指定商品(以下「引用指定商品」という。)と類似する。
(5)小括
上記のとおりであるから、本件商標は、引用商標1と類似し、かつ、本件指定商品と引用指定商品も類似するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標権者が扱うジン製品は、2011年から日本において販売が開始され、現在に至るまで一貫して同商標を使用してきた(甲14)。
ア 受賞歴
その高い品質により、引用商標権者が扱うジン製品は以下のような国際的な賞を受賞し続けている(甲15、甲16)。
イ カクテルコンペティションの開催など
日本において引用商標権者が扱うジン製品の知名度を高めるべく、定期的に当該ジン製品を用いたカクテルコンテストを開催している。当該コンテストにおいては、「その土地の伝統や食材、文化、生産者に敬愛の念を忘れることなく、自らの手で摘んだボタニカルと共に、創造性(クリエイテイビティ)を最大限に発揮させたカクテルを創りだすことを通して」多くの需要者、取引者に当該ジン製品の使用の促進を図っている(甲17)。
また、現在は、コロナ禍において開催が途切れてしまってはいるものの、毎年東京インターナショナルバーショウに出展し、当該ジン製品の普及に努めてきた(甲18)。
さらに、有名ホテルと共催したカクテル提供キャンペーンを実施した(甲21)。
ボタニストのジン製品に関するセミナーも開催(甲22)し、ブランドアンバサダーがプロ向けセミナーとしてボタニストの詳細な造り方を説明し、日本のバーテンダーのクリエイテイヴィティを高め、同時にブランド価値を高める活動を行った。
同じくYOUTUBE上でもブランドアンバサダーが普及に努める動画を配信している(甲37)。
ウ コロナ禍の困難な状況ではあったが、有名レストレランBillsにおいて、ボタニストがハウスジンに採用されるなどの営業活動も行い、周知性を高める活動を行ってきた(甲23、甲36)。
エ SNS等での需要者の認識について
こうした結果、多くの需要者においてボタニストが認知されていることがSNS等においても確認できる(甲24~甲33)。
そして、インスタグラムの記事からは、コロナ禍において、いわゆる家飲みのスタイルが広がっていることがうかがわれる中、そうした状況でも、引用商標権者の営業活動とボタニストが高品質であることを理由に、需要者において確実に認知度が高まっていることが理解できる。
ボタニストが高品質であることは、雑誌Forbes等の記事でも紹介されている(甲38、甲39)。
オ 特許庁商標審査基準第4条第1項第15号で準用される第3条第2項の2.(3)における取引書類について、引用商標権者の製品に関する、請求書及びオーダー確認リストにより、当該製品が我が国において広く認識されていることを立証する(甲34、甲35)。
(2)商標の類似性について
本件商標と引用商標1は、称呼上及び観念上の類似性の程度は高いといわなければならない。語頭の強い出所識別機能を有する「ボタニ」が共通するものであり、これを前提に出所混同のおそれの存否が判断されるべきである。
(3)指定商品の関連の程度、需要者の共通性について
本件指定商品と、引用指定商品は類似関係にあるところ、現在、本件商標を用いた製品が、複数の洋酒の通信販売サイトにおいて、引用商標権者の製品と上下に並んで販売されている状況が発生している(甲19、甲20)。
(4)小括
以上のとおり、申立人は、その売上規模において世界の蒸留酒産業におけるトップ10に入り、全世界で事業を展開している広く知られた企業体であり、そのグループ会社にあたる、引用商標権者も「ウィスキーの聖地」とされるスコットランドアイラ島の蒸留所「ブルックラディ」として我が国の蒸留酒の需要者、取引者においては広く知られている。
申立人は、引用商標1に係るジン製品を我が国においても広く知らしめるため上述のとおり様々な営業、宣伝活動を行ってきた。
このように、申立人のグループ会社である引用商標権者に係る商標「THE BOTANIST」に類似する本件商標が、「ジン,スピリッツ(蒸留酒),スピリッツ(飲料),消化促進酒(リキュール及びスピリッツ),洋酒,果実酒」について使用された場合、あたかも引用商標権者又はその企業グループの取り扱いに係る商品であるような誤解を招いてしまうため、取引者、需要者間において、出所混同、品質の誤認を招くおそれが生ずる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、申立人のグループ会社である引用商標権者又はレミーコワントロージャパン株式会社(甲14)が取り扱う申立人商品は、遅くとも2013年(平成25年)には、我が国で販売され(甲13)、2021年(令和3年)にかけて、国内外における複数の賞を受賞していること(甲16)、申立人商品に係るカクテルコンペティション、セミナー、キャンペーンを開催していること(甲17、甲21、甲22)、国内に8店舗を有するレストランのハウスジンとして採用されたこと(甲23、甲36)などがうかがえる。
また、申立人商品は、SNSや雑誌等において、紹介されており、当該紹介においては「ボタニスト」の文字(引用商標2)も使用されていることがうかがえる(甲24~甲33、甲37)。
しかしながら、申立人商品についての、我が国における販売実績(売上高、業界シェア等)や広告実績(広告の時期、期間、回数、宣伝広告費等)などを客観的に把握できる証拠は確認することができず、引用商標の周知性を推し量ることができない。
その他、申立人の提出に係る甲各号証を総合してみても、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間で広く認識されていたものと認めるに足りる事実は見いだせない。
そうすると、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標について
本件商標は、上記第1のとおり「ボタニー」の片仮名を標準文字で表きしてなるところ、当該文字は「植物学」の意味を有する英語の「botany」(出典:「weblio英和辞典」)の表音を表したものであることから、「ボタニー」の称呼を生じ、「植物学」の観念を生じるものである。
(2)引用商標1について
引用商標1は、別掲のとおり「THE BOTANIST」の欧文字を横書きしてなるところ、当該文字は、英語の定冠詞である「THE」と、「植物学者」(出典:同上)の意味を有する英語の「BOTANIST」の文字との間に、1文字分の空白を介して表されているものの、その構成文字は同じ書体、同じ大きさでまとまりよく一体に表されており、その構成文字全体に相応して生じる「ザボタニスト」の称呼も、格別冗長というべきものでなく無理なく一連に称呼し得るものである。
そうすると、引用商標は、その構成文字相応して、「ザボタニスト」の称呼を生じ、「植物学者」ないしは「その植物学者」ほどの観念を生じるものである。
(3)本件商標と引用商標1の類否について
ア 外観について
本件商標と引用商標1の外観を比較すると、両者の上記(1)及び(2)のとおりの外観は、片仮名と欧文字における文字種の相違、及び全体の文字数において差異を有し、これらの差異が両者の外観全体の視覚的印象に与える影響は小さいものとはいえないことから、両者は、外観上、見誤るおそれはなく、判然と区別し得るものである。
イ 称呼について
本件商標と引用商標1の称呼を比較すると、本件商標から生ずる「ボタニー」の称呼と引用商標1から生ずる「ザボタニスト」の称呼の比較において、両者は「ボタニ」の音を共通にするものの、語頭における「ザ」の音の有無及び語尾における「(ニ)ー」と「スト」の音の差異を有し、これらの差異が4音と6音という短い音構成からなる両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は小さいものとはいえないことから、両者をそれぞれ一連に称呼しても、かれこれ聞き誤るおそれはなく、明瞭に聴別し得るものである。
ウ 観念について
本件商標と引用商標1の観念を比較すると、本件商標から生ずる観念「植物学」が、植物を研究対象とする学問の一分野を表すのに対し、引用商標1から生ずる観念「(その)植物学者」が、植物学を研究する人物である学者を表すものであるから、両者は、観念上、相違するものである。
エ 商標の類否のまとめ
上記アないしウのとおり、本件商標と引用商標1とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれはないから、両者の外観、称呼、観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
その他、本件商標と引用商標1が類似するというべき事情は見いだせない。
(4)小括
以上のとおり、本件商標と引用商標1は非類似の商標であるから、本件指定商品と引用指定商品が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものといえない。
3 商標法第4条第1項第15号について
本件商標と引用商標の類似性の程度について
ア 本件商標と引用商標1の類否について
上記2のとおり、本件商標と引用商標1は相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異の商標というべきものであるから、類似性の程度は低い。
イ 本件商標と引用商標2の類否について
(ア)外観について
本件商標と引用商標2の外観を比較すると、両者の上記のとおりの外観は、文字種が片仮名である点については共通するものの、全体の文字数において差異を有し、これらの差異が4文字と5文字という短い文字構成からなる両者の外観全体の視覚的印象に与える影響は小さいものとはいえないことから、両者は、外観上、見誤るおそれはなく、判然と区別し得るものである。
(イ)称呼について
本件商標と引用商標2の称呼を比較すると、本件商標から生ずる「ボタニー」の称呼と引用商標2から生ずる「ボタニスト」の称呼の比較において、両者は「ボタニ」の音を共通にするものの、語尾における「(ニ)ー」と「スト」の音の差異を有し、これらの差異が4音と5音という短い音構成からなる両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は小さいものとはいえないことから、両者をそれぞれ一連に称呼しても、かれこれ聞き誤るおそれはなく、明瞭に聴別し得るものである。
(ウ)観念について
本件商標と引用商標2の観念を比較すると、本件商標から生ずる観念「植物学」が、植物を研究対象とする学問の一分野を表すのに対し、引用商標2から生ずる観念「植物学者」が、植物学を研究する人物である学者を表すものであるから、両者は、観念上、相違する。
(エ)商標の類似性の程度について
上記(ア)ないし(ウ)のとおり、本件商標と引用商標2とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれはないから、両者の外観、称呼、観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものであるから、類似性の程度は低い。
その他、本件商標と引用商標2が類似するというべき事情は見いだせない。
(2)混同のおそれについて
上記1のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、上記(1)のとおり、本件商標は引用商標と相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異の商標というべきものであるから、類似性の程度は低いものであり、本件指定商品と申立人商品との関連性の程度、需要者の共通性などを考慮しても、本件商標は、商標権者がこれを本件指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものといえない。
3 むすび
以上のとおりであるから、本件商標についての登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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