商標異議申立
2022-900452
ウンスク、アンスク、ユウエヌエスケイ
- 審判番号
- 2022-900452
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2022-020249
- 登録番号
- 6605023
- 請求日
- 2022年10月31日
- 審決日
- 2023年10月12日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】微納精工(蘇州)有限公司
- 【異議申立人】日本精工 株式会社
- 【異議申立人代理人】弁理士法人にじいろ特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 雅也
- 審判官 山田 啓之
- 審判官 藤村 浩二
- 分類
- T1651.271-Y (W07) / T1651.261-Y (W07) / T1651.262-Y (W07) / T1651.263-Y (W07)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第11号、商標法第3条第1項第5号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6605023号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6605023号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
1 本件商標
本件登録第6605023号商標(以下「本件商標」という。)は、「UNSK」の欧文字を横書きしてなり、令和4年2月23日に登録出願、第7類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同年7月20日に登録査定され、同年8月24日に設定登録されたものである。
2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は、次のとおりであり(以下、それらをまとめて「引用商標」という。)、いずれも「NSK」の欧文字を願書に記載のとおりの態様で表してなるものであって、それらの指定商品及び指定役務、登録出願日及び設定登録日は商標登録原簿に記載のとおりである。また、引用商標に係る商標権はいずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第193904号商標 (以下「引用商標1」という。)
(2)登録第339573号の11商標 (以下「引用商標2」という。)
(3)登録第453801号商標 (以下「引用商標3」という。)
(4)登録第405312号商標 (以下「引用商標4」という。)
(5)登録第672597号商標 (以下「引用商標5」という。)
(6)登録第1444366号商標 (以下「引用商標6」という。)
(7)登録第4839196号商標 (以下「引用商標7」という。)
(8)登録第4877777号商標 (以下「引用商標8」という。)
(9)登録第4877778号商標 (以下「引用商標9」という。)
(10)登録第4900655号商標 (以下「引用商標10」という。)
(11)登録第4900656号商標 (以下「引用商標11」という。)
(12)登録第5157230号商標 (以下「引用商標12」という。)
(13)登録第5879767号商標 (以下「引用商標13」という。)
(14)登録第5217249号商標 (以下「引用商標14」という。)
なお、引用商標6については、第4類、第6類、第12類、第17類及び第37類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務について防護標章登録されている。また、引用商標14の構成文字は赤色で表されている。
3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標の登録は商標法第4条第1項第15号及び同項第11号に違反してされたものであるから、同法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第14号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)本件商標の登録が商標法第4条第1項第15号に違反する理由
本号の趣旨は、商標が類似する典型的な場合以外(すなわち商標が非類似となるような場合)でも、出所の混同のおそれが生じ得ることから、そのような商標登録をも排除する趣旨の総括規定と解釈されている(「新・注解 商標法【上巻】」(甲3))。
そして、「特許庁編 商標審査基準〔改訂第15版〕」(甲4)には、取り扱いや判断要素などが示されている。
ア 申立人について
申立人は、1914年に日本精工合資会社を創業し、1916年に日本で初めて軸受の国産化・量産化を成功させた企業である。軸受(ベアリング)は、機械や設備一般の信頼性や効率を向上させ、エネルギーロスを削減させる重要な部品であり、幅広い産業分野で使用されるところ、申立人は、「産業機械軸受、自動車軸受、精機製品、ステアリング製品等」、世界初の革新的な製品等を生み出し、「鉄鋼設備、エ作機械、製紙機械、自動車、射出成形機、鉱山機械・建設機械等」の幅広い産業分野で、約105年以上にわたり日本及び世界の産業の発展に貢献してきた企業である(甲5)。
また、申立人ら(関連会社・現地法人を含む。以下同じ)は、日本はもとより、1947年からアジア諸国への軸受の輸出を開始し、欧米諸国に進出し、現在では、延べ国内外187か所の事業所(本社・事業部・支社・営業所・工場をいう。以下同じ。)からなる直営店の拠点を設け、延べ国内外414か所の事業所からなる正規販売店の拠点を設け、日本及び世界の幅広い産業分野のユーザーから高い評価と信頼を獲得するに至っている(甲5)。
イ 本件商標と引用商標の類似性の程度について
(ア)外観
本件商標は、「UNSK」の欧文字を太めの書体で横一連に表してなる。
これに対し、引用商標1は、「NSK」の大文字(「S」の左先端は若干延伸されている。)を太めの書体で、横一連に表してなる。引用商標2は、「NSK」の大文字を太めの書体で、各文字間の幅を広めに表してなる。引用商標3ないし引用商標13は、いずれも「NSK」の欧文字を太めの書体で、横一連に表してなる。引用商標14は、引用商標7ないし引用商標13と完全同一の「NSK」の欧文字を、赤色で横一連に表してなる。
本件商標と引用商標を対比すると、全体の文字が太めの書体で共通し、「U」以外の「NSK」の文字、文字種別及び文字順が全て一致し、色彩も引用商標14を除き、同一である。加えて、「NSK」の欧文字は、後述するとおり、申立人らの出所を表す強い識別力を備えた著名な標章である。
そのため、本件商標と引用商標の外観は、「U」の部分の有無により、判然と区別されるというよりも、強い出所識別機能を有する著名な「NSK」の部分が同一である印象をもって記憶されることになる。
したがって、本件商標と引用商標は、需要者が視覚を通じて認識する全体的印象が互いに紛らわしいものとなる。
(イ)観念
本件商標を構成する「UNSK」の欧文字は、親しまれた語又は略称等の既成語ではないため、造語と認識される。
これに対し、引用商標を構成する「NSK」の欧文字も、造語と認識される。
したがって、本件商標と引用商標は、いずれも造語と認識され、需要者が取引上自然に想起する意味合いは生じない。
(ウ)称呼
本件商標は、前述のとおり、「UNSK」の欧文字が親しまれた既成語ではなく、造語と認識されるため、各欧文字を1文字1文字発音した「ユーエヌエスケー」の称呼が生じる。
これに対し、引用商標は、前述のとおり、「NSK」の欧文字が造語と認識されるため、各欧文字を1文字1文字発音した「エヌエスケー」の称呼が生じる。
本件商標と引用商標を対比すると、「ユー」の音の有無において相違するが、「エヌエスケー」の大半の音(長音2音を含む8音中6音)が一致する。この「エヌエスケー」という一連の音は、後述のとおり、申立人らの出所を表す強い識別力を備えた著名な標章「NSK」を発音したものである。
そのため、本件商標の称呼は、平坦に「ユーエヌエスケー」と発音されるというよりも、「ユー・エヌエスケー」のように一呼吸おいて発音され、「エヌエスケー」の一連の音が容易に聴別されることになる。
したがって、本件商標と引用商標は、聴覚されるときに需要者に与える称呼の全体的印象が互いに紛らわしいものとなる。
(エ)取引の実情
欧文字の1字又は2字は、商品の品番・型番等を表した記号として一般的に使用されるものは「ありふれた標章」(商標法第3条第1項第5号)に当たるため、識別力がない(甲4)。
欧文字の「U」は、「U型、U字型、U字形」を意味する場合もあり、本件商標に係る指定商品を含む様々な商品の品番等を表す記号に広く用いられている(甲6)。
申立人の業務に係る商品においても、欧文字の「U」が商品の呼び番号・補助記号等に用いられている(甲7)。
欧文字の「U」については、商品の品番等を表す記号と判断されている審決例が多くある(甲8)。
また、本件商標を構成する「NSK」の欧文字部分は、後述するとおり、申立人らの出所を表す強い識別力を備えた著名な標章と認識される。
そして、申立人の業務に係る商品には、呼び番号・補助記号を表す識別力のない欧文字と、申立人らの出所を表示する「NSK」の欧文字が用いられている。
このようなことから、申立人らは、「型番使用のガイドライン」において、商品の型番等に用いられる欧文字の文字列が競合他社の略称等を表し、出所の混同を来し、需要者に混乱を与えないよう、例えば、「NTN」(NTN株式会社)、「SKF」(日本エスケイエフ株式会社)、「INA」(旧株式会社イナベアリング、合併後シェフラージャパン株式会社)等の文字列を商品の型番等に採択することを回避している。ベアリング業界において、申立人らの出所を表す「NSK」という文字列が競合他社の商品の型番等に採択される例をみない。
加えて、本件商標を構成する「UNSK」の欧文字が、その文字全体で特定の意味合いを想起させたり、強い識別機能を発揮する等の事情もない。
これら取引の実情を考慮すれば、本件商標を構成する「U」の欧文字部分を、商品の品番、型番等を表した記号と認識し、本件商標を構成する著名な「NSK」の欧文字部分を、申立人の出所と認識することになる。
したがって、本件商標を構成する「UNSK」の欧文字に接する需要者は、常に、その構成全体で一体不可分の商標と認識するとは限らず、「U」と「NSK」の欧文字の結合からなる商標と認識し、「U」という記号の品番、型番等の「NSK(日本精工)」と理解するおそれがあるというべきである。
(オ)小括
以上のとおり、本件商標と引用商標は、外観上、強い出所識別機能を有する著名な「NSK」の部分が同一である印象をもって記憶され、需要者が視覚を通じて認識する全体的印象が互いに紛らわしく、観念上、いずれも造語と認識され、需要者が取引上自然に想起する意味合いが生じず、称呼上、「エヌエスケー」の一連の音が容易に聴別され、需要者に与える称呼の全体的印象が互いに紛らわしいものであって、上述した取引の実情も考慮される。
したがって、本件商標と引用商標は、その外観、観念又は称呼等によって需要者に与える印象、記憶、連想等を総合し、両商標における取引の実情を考慮して全体的に考察すれば、具体的出所混同を生じるおそれがある類似性の程度が高い商標であるというべきである
ウ 引用商標の周知度について
(ア)使用期間
引用商標を構成する「NSK」の欧文字は、1916年12月26日に、日本精工株式会社(NIPPON SEIKO KABUSHIKIKAISHA)の頭文字「NSK」をデザインしたシンボルロゴマークを使ってデザインした社章を制定してから、2022年現在に至るまで、約105年にわたり継続使用されている(甲5、甲9ほか)。
(イ)使用地域
申立人らは、延べ国内外187か所に及ぶ事業所からなる直営店の拠点を有し、これら拠点の周辺地域にわたって営業等が行われ、引用商標が使用されている(甲5、甲9ほか)。
また、申立人らは、延べ国内外414に及ぶ事業所からなる正規販売店の拠点を有する。これら正規販売店が所在するアメリカ・メキシコ・中国等13の国・地域及び日本国内の地域(44都道府県148市区町村)を拠点にし、これら拠点の周辺地域にわたって営業等が行われ、引用商標が使用されている(甲5、甲9ほか)。
(ウ)使用数量
a 売上高及び生産数
申立人らの引用商標が使用された商品等の連結売上高は、2000年度ないし2022年度において、毎年約5000億円から約1兆円である(甲9)。
申立人らが生産する軸受(ベアリング)の数は、1年間に約22億個である(甲5、甲9)。
b 市場シェア
申立人らの引用商標が使用された軸受の国内市場及び世界市場のシェアは、2012年から2021年まで連続して、国内シェア1位、世界シェア3位である(甲5、甲9)。
(エ)広告宣伝の方法、期間、地域及び規模
申立人らは、1917年から現在に至るまで、約105年にわたり、各種媒体(製品カタログ・パンフレット、製品パッケージ、製品包装紙・包装箱、印刷物、ウェブサイト等)や各種媒体物(オフィス、社用車、看板・サイン、展示会ブース・ショールーム、制服等)を通じて、日本全国及び世界中で広告宣伝を行ってきた(甲5、甲9、甲10ほか)。
(オ)需要者の認識度
引用商標を構成する「NSK」の欧文字からなる標章は、引用商標6の防護標章として登録が認められている(甲2)。
また、引用商標7から引用商標14と同一の商標は、日本有名商標集に掲載されている(甲11)。
そして、2018年1月12日付けで、中国商標評審委員会は「NSK」商標に中国馳名商標としての保護を与えるべきと認定した(甲11)。
これらのことは、引用商標が、防護標章登録出願の査定・審決時(2004年、2008年、2009年)及び各更新出願の査定時(2014年、2018年、2019年)において、日本国内はもとより、中国においても、需要者の間に広く認識されているにとどまらず、その商品や役務が類似していない場合であっても、なお商品役務の出所の混同を来すほどの強い識別力を備えていること、すなわち、そのような程度に至るまでの著名性を有していることを意味する(甲12)。
その他、多数の受賞歴の例が示すように、引用商標を使用する申立人らは、需要者から高い評価を受けている(甲13)。
(カ)小括
以上の各事実を総合勘案すれば、引用商標は、遅くとも本件商標の出願日以前において、申立人らの業務に係る商品等を表すものとして需要者の間に広く認識され、著名の程度に至っていたというべきである。
エ 引用商標が造語よりなるものであるかについて
引用商標「NSK」は、前述のとおり、親しまれた言語の既成語ではなく、造語よりなるものである。
この「N」「S」「K」の欧文字3字を選択し、この文字列の順序にあえて並べること(さらに太めの書体とすること)が一般にありふれたものであるはずがなく、引用商標及び引用商標を構成する「NSK」の欧文字は、独創性の程度が高いものである。
オ 引用商標がハウスマークであるかについて
引用商標は、申立人らのハウスマーク(社標)である(甲9、甲10)。
また、引用商標を構成する「NSK」の欧文字は、申立人の社名「日本精工株式会社、NSK Ltd」の略称でもある。
申立人らのハウスマーク及び「NSK」の略称は、申立人らの業務に係る各種媒体や各種媒体物に広く付され、使用されるものである(甲5、甲9、甲10ほか)。
カ 企業における多角経営の可能性
申立人らは、資本金672億円、従業員数(連結)30,577人、売上高(連結)8,652億円の企業規模を誇る日本及び世界を代表するグローバル大企業であり、幅広い産業分野の企業ユーザーを取引相手にすることから、世界経済の発展や顧客ニーズの変化に伴い、企業グループにおける多角経営が行われる可能性が当然にある(甲5)。
キ 商品間、商品と役務間の関連性について
本件商標の指定商品は、主に軸受関連の商品である。
これに対し、引用商標の指定商品及び指定役務の一部は、産業機械軸受・自動車軸受・精機製品・ステアリング製品などの軸受関連の商品及び小売等役務である。また、これら指定商品及び指定役務に使用される引用商標は、申立人らの業務に係る商品等として、長いもので創業以来の約105年にわたり、継続使用されてきたものである。
本件商標の指定商品と引用商標が使用される商品には、同一の範囲に属する商品が多く含まれる。そして、引用商標が使用される商品等の取引者及び需要者は、幅広い産業分野(鉄鋼設備、工作機械、製紙機械、自動車、射出成形機等)の企業ユーザーにわたるため、本件商標の指定商品の取引者及び需要者を全て含むものである(甲5)。
したがって、本件商標の指定商品と引用商標が使用される商品・小売等役務は、その多くが同一の範囲に属し、取引者及び需要者が共通することから、商品間、商品と役務間には強い関連性がある。
ク まとめ
以上の考慮事由に基づく事実を総合勘案して判断すれば、本件商標が、その指定商品に使用されたときには、その構成中に有する欧文字部分の「NSK」が需要者に印象付けられ、著名な引用商標を連想するというべきである。
したがって、本件商標は、申立人の業務に係る商品等又は申立人と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品等であると誤認し、その商品等の需要者が商品等の出所について混同するおそれがある。
よって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反する。
(2)参考裁判例・審決例
本件商標の登録が、商標法第4条第1項第15号に違反するべきものであることは、外観上一連の同文字種の文字から構成される商標中に、周知又は著名な商標を有してなる商標について、周知又は著名な商標を連想し、商品の出所について混同を生ずるおそれがある旨の判断がなされた次の掲げる裁判例・審決例の判旨からも妥当するというべきである(甲14)。
ア 東京高判平成11年12月21日(平成11年(行ケ)第217号)
本件商標:「ILANCELI」
引用商標:「LANCEL」
イ 東京高判平成10年9月29日(平成9年(行ケ)第278号)
本件商標:「ノエルヴォーグ\NOELVOGUE」
引用商標:「VOGUE」
ウ 東京高判平成2年1月23日(平成元年(行ケ)第54号)
本件商標:「東京電音株式会社」
引用商標:「DENON」
エ 平成11年審判第5934号審決
本件商標:「ICHANELI」
引用商標:「CHANEL」
オ 平成10年審判第35007号審決
本件商標:「アルディオール\ARDIOR」
引用商標:「DIOR」「ディオール」
カ 平成10年審判第18579号審決
本件商標:「pascadidas」
引用商標:「adidas」
キ 平成9年審判第16494号審決
本件商標:「フラボステン\FLAVOSTEN」
引用商標:「OSTEN\オステン」
(3)本件商標の登録が商標法第4条第1項第11号に違反する理由
本号における商標の類否判断については、「特許庁編 商標審査基準〔改訂第15版〕」では、総合的観察の方法により行われることや「需要者の間に広く認識された商標」を含む結合商標の類否判断についての基準が示されている(甲4)。
ア 本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標は、「(1)イ 本件商標と引用商標の類似性の程度について」で前述したとおり、外観上、強い出所識別機能を有する「NSK」の部分が同一である印象をもって記憶され、需要者が視覚を通じて認識する全体的印象が互いに紛らわしく、観念上、いずれも造語と認識され、需要者が取引上自然に想起する意味合いが生じず、称呼上、「エヌエスケー」の一連の音が容易に聴別され、需要者に与える称呼の全体的印象が互いに紛らわしいものである。
加えて、引用商標を構成する「NSK」の欧文字は造語であるから、既成語の一部となることもない。
そして、引用商標は、「(1)ウ 引用商標の周知度について」で前述したとおり、需要者の間に広く認識され、多大な信用が化体された著名商標であって、ベアリング業界における取引の実情を考慮すれば、本件商標の外観構成がまとまりよく一体に表されていたとしても、本件商標に接する需要者は、識別力がない「U」と識別力が強く著名な「NSK」の欧文字の結合からなる商標と容易に認識し、「NSK」の部分に着目することになる。
また、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品・役務は、通常同一営業主により製造・販売又は提供されている等の事情により、本件商標及び引用商標に係る指定商品・役務に類似の商標を使用するときは、同一営業主の製造・販売又は提供に係る商品・役務と誤認されるおそれがある。
イ まとめ
したがって、本件商標と引用商標は、その外観、観念又は称呼等によって需要者に与える印象、記憶、連想等を総合し、取引の実情を考慮して全体的に考察すれば、一般的出所混同を生じるおそれがある互いに類似する商標である。
また、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品及び指定役務は、互いに同一又は類似の関係にあるものである。
そして、引用商標の各出願日及び各登録日は、いずれも本件商標の出願日及び登録日の前であり、引用商標の各権利者と本件商標の権利者は、他人である。
よって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反する。
4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人提出の甲各号証、同人の主張及び職権調査(インターネット情報、商標登録原簿情報など)によれば、申立人は、創立当初の1916年から現在に至るまで「NSK」の欧文字を使用し、「ベアリング(軸受)」の製造、販売を行っていること(甲5、甲9、職権調査)、申立人及びその関連会社(以下、両者をあわせて「申立人等」という。)は、2022年3月末時点において、31か国・地域に200か所の生産拠点・販売拠点などを有し、我が国、米州、欧州、中国などで「NSK」の欧文字を使用した商品「ベアリング(軸受)」(以下「申立人商品」という。)の製造、販売を行っていること(甲9の3)、申立人商品等の売上高は、2018年3月期(2017年度)ないし2022年3月期(2021年度)において、各期7,476億円ないし1兆203億円であり、そのうち、自動車軸受及び産業機械軸受を合わせたベアリングの売上は54%ないし63%程度であること(甲9の3~7)、申立人商品の売上高は、2022年3月期において自動車軸受が2,596億円、産業機械軸受が2,835億円であり、2013年3月期から2022年3月期まで10年連続して、国内シェア1位、世界シェア3位であること(甲9の3~12)及び引用商標6については防護標章登録がなされており、当該登録に基づく権利の存続期間の更新登録の出願に係る登録査定が令和元年6月19日にされていること(甲2の18、職権調査)などが認められる。
イ 上記アのとおり、申立人は、1916年から現在に至るまで100年以上申立人商品の製造、販売を行っており、申立人商品の売上高は、2022年3月期において自動車軸受が2,596億円、産業機械軸受が2,835億円であり、2013年3月期から2022年3月期まで10年連続して、国内シェア1位、世界シェア3位であることなどが認められることから、申立人商品及びそれに使用されている標章「NSK」は、本件商標の登録出願の時及び登録査定時において、申立人等の業務に係る商品として及び同商品を表示するものとして、いずれも需要者の間に広く認識されているものといえる。
そうすると、「NSK」の欧文字からなり、「軸受」を指定商品に含むと認められる引用商標1、3ないし6、8及び9は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人等の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものというのが合理的である。
また、それ以外の引用商標2、7及び10ないし14は、本件商標の登録出願の時及び登録査定時において、申立人等の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認め得る証左は見いだせないから、そのようなものと認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標
本件商標は、上記1のとおり「UNSK」の欧文字を横書きしてなり、該文字に相応し「ユーエヌエスケー」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
イ 引用商標
引用商標は、上記2のとおりいずれも「NSK」の欧文字からなるものであり、該文字に相応し「エヌエスケー」の称呼を生じるものである。
そして、観念については、上記(1)のとおり引用商標1、3ないし6、8及び9は、申立人等の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものであるから「軸受のブランド」の観念を生じ、それ以外の引用商標2、7及び10ないし14は、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
ウ 本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標の類否を検討すると、外観においては、本件商標の構成文字「UNSK」と引用商標の構成文字「NSK」の比較において、両者は文字商標における外観の識別上重要な要素である語頭において、「U」の文字の有無という差異を有し、その差異が4文字又は3文字という少ない文字構成である両商標の外観全体から受ける視覚的印象に与える影響は大きく、両者を離隔的に観察しても、相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。
次に、本件商標から生じる「ユーエヌエスケー」の称呼と引用商標から生じる「エヌエスケー」の称呼を比較すると、両者は称呼の識別上重要な要素である語頭部において、「ユー」の音の有無という差異を有し、その差異が称呼全体に与える影響は小さくはなく、両者をそれぞれ一連に称呼しても語調語感が異なり、相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。
さらに、観念においては、本件商標が特定の観念を生じないものであるのに対し、引用商標は「軸受のブランド」の観念を生じるもの又は特定の観念を生じないものであるから、両者は相紛れるおそれがないか、比較できないものである。
そうすると、本件商標と引用商標は、外観、称呼において相紛れるおそれがなく、観念において相紛れるおそれがないか、比較できないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
エ 申立人の主張について
申立人は、本件商標と引用商標は外観上、強い出所識別機能を有する著名な「NSK」の部分が同一である印象をもって記憶され、需要者が視覚を通じて認識する全体的印象が互いに紛らわしく、観念上、いずれも造語と認識され、需要者が取引上自然に想起する意味合いが生じず、称呼上、「エヌエスケー」の一連の音が容易に聴別され、需要者に与える称呼の全体的印象が互いに紛らわしいものであるなどとして、両商標は、具体的出所混同を生じるおそれがある類似性の程度が高い商標である旨主張している。
しかしながら、本件商標は、上記アのとおり「UNSK」の欧文字を横書きしてなるものであり、その構成は欧文字4文字が同書同大同間隔で軽重の差なく一体に表され、これから生じる「ユーエヌエスケー」の称呼も無理なく一連に称呼し得るものである。
そうすると、本件商標のかかる構成及び称呼からすれば、上記(1)のとおり引用商標1、3ないし6、8及び9は申立人等の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められ、本件商標の構成中に「NSK」の文字が存するとしても、本件商標「UNSK」は、これに接する取引者、需要者をして、「NSK」の文字が出所識別標識として強く支配的な印象を与えることなく、その構成全体の中に埋没した一体不可分のものとして認識、把握させるものと判断するのが相当である。
したがって、申立人のかかる主張は採用できない。
その他、本件商標と引用商標が類似するというべき事情は見いだせない。
オ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、両商標の指定商品及び指定役務が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものといえない。
(3)商標法第4条第1項第15号について
上記(1)のとおり引用商標1、3ないし6、8及び9は申立人等の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められるものの、引用商標2、7及び10ないし14は申立人等の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているもの認められないものであり、加えて、上記(2)のとおり本件商標は、引用商標と相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異の商標というべきものであるから、引用商標の独創性の程度、本件商標の指定商品と申立人商品との関連性の程度、需要者の共通性などを考慮しても、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものといえない。
(4)むすび
以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-900452