商標異議申立
2022-900448
エイエックスファーム、ファーム
- 審判番号
- 2022-900448
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2022-017562
- 登録番号
- 6602186
- 請求日
- 2022年10月25日
- 審決日
- 2023年08月30日
- 公報発行日
- 2023年09月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】高橋 裕太郎
- 【異議申立人】ジョルジオ アルマーニ エス.ピー.エー.
- 【異議申立人代理人】弁理士法人筒井国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 豊田 純一
- 審判官 杉本 克治
- 審判官 岩谷 禎枝
- 分類
- T1652.261-Y (W25) / T1652.262-Y (W25) / T1652.263-Y (W25) / T1652.25 -Y (W25) / T1652.271-Y (W25) / T1652.222-Y (W25) / T1652.4 -Y (W25)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項10号商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法4条1項19号商標法8条1項商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第10号、商標法第4条第1項第19号、商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第11号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6602186号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6602186号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6602186号商標(以下「本件商標」という。)は、「AX FARM」の文字を標準文字で表してなり、令和4年2月17日に登録出願、第25類及び第41類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務(別掲1)を指定商品及び指定役務として、同年8月5日に登録査定され、同月17日に設定登録されたものである。
第2 引用商標及び引用標章
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議の申立ての理由に該当するとして引用する登録商標及び標章は、以下の1ないし3のとおりである。
1 国際登録第1626068号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、2021年7月20日に国際商標登録出願、第9類、第14類、第18類、第25類及び第35類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品及び役務(別掲3)を指定商品及び指定役務として、令和5年3月10日に設定登録されたものであり、その商標権は、現に有効に存続しているものである。
2 国際登録第1018558号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲4のとおりの構成よりなり、2009年4月22日にSwitzerlandにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張して、2009年7月3日に国際商標登録出願、第3類、第9類、第12類、第14類、第16類、第18類、第24類ないし第26類、第28類及び第35類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成23年8月19日に設定登録され、その後、指定商品及び指定役務については、2019年7月2日に当該商標権の登録の一部抹消があった結果、その指定商品及び指定役務は、第3類、第9類、第14類、第18類、第24類ないし第26類及び第35類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品及び役務が指定商品及び指定役務となり(別掲5)、令和元年8月28日に登録されたものであり、その商標権は、現に有効に存続しているものである。
3 申立人が同人の取扱いに係る被服等に使用する標章は、「A|X」、「Armani Exchange」及び「アルマーニエクスチェンジ」の文字(以下、これらをまとめて「引用標章」という。)よりなり、申立人が本件商標の登録出願日より前に日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されていると主張するものである。
なお、以下、引用商標1及び引用商標2をまとめていう場合は、「引用商標」といい、引用商標と引用標章をまとめていう場合は、「申立人商標及び標章」という。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標はその指定商品及び指定役務中、第25類「全指定商品」(以下「異議申立対象商品」という。)について、商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号、同項第19号及び同法第8条第1項の規定に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第16号証(枝番号を含む。)を提出した。
以下、証拠の表記に当たっては、「甲第〇号証」を「甲〇」のように省略して記載し、枝番号のすべてを表示する場合は、枝番号を省略する。
1 申立人の周知・著名性について
申立人であるイタリアの法人、ジョルジオ アルマーニ エス.ピー.エー.(英文名称:Giorgio Armani S.P.A.)は、デザイナーであるジョルジオ・アルマーニ(Giorgio Armani)(以下「アルマーニ氏」という。)により1975年にイタリアのミラノに設立されたファッションハウス(最新の高級服のメーカー)であり、高級ホテル(アルマーニ ホテルズ)や高級リゾートのチェーンビジネスのみならず、世界中でカフェやバー、ナイトクラブの運営も行っている(甲3)。
「アルマーニ(Armani)」ブランドには、「ジョルジオ アルマーニ(Giorgio Armani)」、「エンポリオ アルマーニ(Emporio Armani)」、「アルマーニ コレツィオーニ(Armani Collezioni)」、「アルマーニ ジーンズ(Armani Jeans)」、「アルマーニ エクスチェンジ(Armani Exchange)」、「アルマーニカーサ(Armani/Casa)」、「アルマーニ ドルチ(Armani/Dolci)」、アルマーニ フィオリ(Armani/Fiori)」、「アルマーニ ホテルズ(Armani/Hotels)」などが含まれており、「アルマーニ エクスチェンジ」の商品は、31か国の270店舗とブランドのウェブサイトにおいて、限定で販売されている(甲3)。
Wikipedia(日本語)のウェブサイトによれば、アルマーニブランドは、ファッション業界で最も権威のあるブランドと紹介され、メインブランド「ジョルジオ アルマーニ」のほか、複数の姉妹ブランド、化粧品、リゾート、高級レストランなど多彩な事業を展開して「アルマーニ」と総称されると記載されている(甲4の1)。
2 申立人の創立者アルマーニ氏について
申立人は、イタリアのファッションデザイナーであるアルマーニ氏により1975年に設立されたものである(甲3~甲5)。
1987年に、アルマーニ氏はアーティストとして既に、シャネル(Chanel)、ディオール(Dior)、バレンシアガ(Balenciaga)、サンローラン(Saint Laurent)、その他の人物と並んで、ファッション界のパンテオンに含められていた(甲4)。
アルマーニ氏は、イタリアを代表するファッションデザインナーである、ジャンフランコ・フェッレ(Gianfranco Ferre)氏、ジャンニ・ヴェルサーチ(Gianni Versace)氏とともに、「ミラノの3G」と呼ばれ、その一翼を担い、世界中で知られており、その知名度を表す最たるものとして、ファッションデザイナーとしては2人目として、アメリカの「Time」誌の表紙を1982年に飾り、1940年代のクリスチャン・ディオール以来約40年ぶりにファッションデザイナーとして表紙を飾り、イタリア人としては、ノーベル賞受賞劇作家のルイジ・ピランデルロに次いで2人目である(甲5)。
また、数々の受賞歴があり、1981年のGQ誌の「メンズ・スタイル・アウォード・フォー・ベスト・ファッションデザイナー賞」を皮切りに、1985年にはイタリア政府から、イタリア共和国功労勲章、1986年にはその最高位を、1987年には「共和国功績勲章」、「大騎士賞」、1988年にはスペイン国王から、世界最高のファッションデザイナーに贈られる「クリストバル・バレンシアガ賞」を、1989年には我が国でも「繊研賞」を授与された(甲5)。
その名が世界中にとどろくこととなったのは、1980年の映画で衣装協力をしたことがきっかけであり、その後、数々の映画衣装を担当し、映画のクレジットに、2005年時点で300回登場した(甲5)。
このような映画とのつながりのため、申立人の顧客リストには、ハリウッドを代表する俳優達が名を連ねており(甲5)、その結果、アルマーニ氏及びそのメイン・ブランドであるジョルジオアルマーニの衣装や商品はメディアに数多く登場し、需要者にも広く知られることとなった。
アルマーニ氏の自身の評伝として2007年に「ジョルジオ・アルマーニ 帝王の美学」が日本経済新聞社から発行されているほか、同年に日本ファッション・エディターズ・クラブにより「FEC デザイナー・オブ・ザ・イヤー」に選出された(甲5)。
つまり、アルマーニ氏は、20世紀で最も成功したデザイナーであり、著名な番付「フォーブズ(Forbs)」の世界長者番付にもランクインされている(甲5)。
上述したことは、ファッション業界で知名度の高い雑誌「VOGUE」の記事においても同様に記載されている(甲6)。
3 申立人に関する事業について
2016年に、ジョルジオ アルマーニ財団は設立され、「ジョルジオ アルマーニ(Giorgio Armani)」、「エンポリオ アルマーニ(Emporio Armani)」、「アルマーニ エクスチェンジ(Armani Exchange)」の3つのブランドを中心に展開している(甲7の1)。
引用商標に係るブランド「Armani Exchange」のコンセプトとしては、「A|X アルマーニ エクスチェンジの物語は、ちょうど30年前にボルトとナットの驚くべきイメージから始まりました。要素のすべての構成と連結の基礎は、私たちを導く原則です。それは、その個性に従って簡単に組み立てられる服を作成することです。」ということを申立人のホームページに掲載している(甲14の1)。
創設者でありデザイナーのアルマーニ氏は、「1991年に直感があり、それをA|Xと名付けました。ストリートの現実を見て、それが単なる流行になる前に、若い世代や若い考え方を持つ人々のために、手頃な価格のメトロポリタンな服をすばやく作成しました。この精神は今日もアパレルやアクセサリーに受け継がれ、GA DNAの本質的な楽さとアクティブな姿勢を保ちながら、都会的なドラムに向かってスピードを上げています。」と宣言している(甲14の2)。
1975年に、アルマーニ氏とセルジオ ガレオッティがジョルジオアルマーニS.p.A.を設立し、1991年に、「A|X」(アルマーニ エクスチェンジ)ラインを発表し、第1号店をニューヨークのソーホーにオープンした。
2022年に、「A|X」(アルマーニ エクスチェンジ)の第1号店をミラノにオープンした(甲7の2)。
2020年まで、アルマーニグループの流通ネットワークは、他の小売業者との連携に加えて、申立人が所有及び運営する623箇所の店舗で構成されている(甲7の3)。
4 申立人の我が国での事業について
申立人は、1987年にGiorgio Armani Japan株式会社を設立したのが我が国でのビジネスの始まりであり、この時に、西武デパートの池袋店、渋谷店に店舗をオープンさせ、その翌年の1988年に旗艦店を東京都千代田区紀尾井町にオープンしたほか、デパートの伊勢丹新宿や名古屋、神戸にも店舗をオープンさせ、その後1989年ないし1997年にかけて、Giorgio ArmaniとセカンドラインのEmporio Armaniのブランドの店舗の出店を続け、現在は日本全国に69店舗を出店しており、1999年に大阪御堂筋、2001年に東京・表参道に路面店をオープンした。
2005年にジョルジオ・アルマーニ展を六本木ヒルズ、森アートギャラリーで開催し、アルマーニ氏も来日して聖徳記念絵画館前でショーを開催したほか、オートクチュールラインArmani Priveを我が国で発表し、1987年の日本進出から20年目の2007年、東京・銀座にArmani Towerをオープンし(2016年に東急プラザ銀座へ移転)、日本武道館でイベントを開催し、2009年にGiorgio Armani六本木店をオープンし、2013年にはEmporio Armani Caffeを日本初でオープンした(甲7の2、甲8の1)。
以上のとおり、日本進出から30年を経過した現在でも、我が国で認知される高級ブランドの1つとして、東京の銀座や青山のみならず日本各地で出店を続け、現在では日本国内で69店舗を擁しており、申立人のブランドの日本国内での知名度が高いことがうかがえる(甲7の4)。
昨今では、東京都内にある小学校の制服のデザインをしたことが全国のテレビ局により報道されたが、これも、ジョルジオ アルマーニが日本全国で高級ブランドであることが広く知られているからに他ならない。
申立人は「A|X」(アルマーニ エクスチェンジ)について、千葉県、埼玉県、大阪府、宮城県、愛知県、東京都、沖縄県、神奈川県、福岡県に19の店舗を有している(甲8の2~甲8の6)。
5 申立人商標及び標章の周知・著名性について
申立人とそのブランドであるGiorgio Armaniは40年以上も世界各国で広く事業活動を行っている。
引用商標も1991年からアルマーニグループの3つのブランドの1つとして世界各国で展開に際して使用されている。
したがって、その保有するブランド(商標)と引用商標は、我が国のみならず、世界各国で周知・著名なものとして認知されていることに疑いはない。
また、「A|X」ブランドは、2017年より、Georgio Armani及びEmporio Armaniブランドとともに、申立人の3大注力ブランドの1つとなっている。
そのうち、「A|X」ブランドが、若者を中心に人気を博し、「アルマーニ・エクスチェンジ」の店舗数は、アルマーニグループ内でも最多となり、世界中で馴染みあるブランドラインと認識されている(甲6)。
(1)全世界での売上高(1ユーロ139.42円で換算)
2014年の申立人のアニュアルレポートによれば、売上高は、2012年は29億2,840万ユーロ(約4,082億円)、2013年は30億4,720万ユーロ(約4,288億円)、2014年は31億3,580万ユーロ(約4,372億円)である(甲9の1)。
2015年ないし2021年までの各年の申立人のアニュアルレポートによれば、全世界での「アルマーニ」ブランド商品の販売額は、2015年は40億1,150万ユーロ(約5,593億円)、2016年は39億4,040万ユーロ(約5,494億円)、2017年は39億2,660万ユーロ(約5,474億円)、2018年は38億600万ユーロ(約5,306億円)、2019年は41億5,700万ユーロ(約5,796億円)、2020年は32億7,800万ユーロ(約4,571億円)、2021年は40億5,600万ユーロ(約5,655億円)であり、前年より23.7%相当額の増加を達成した(甲9の2~甲9の8)。
上記金額を見ても、申立人ブランドの、世界での市場規模は大きく、ブランドの持つ価値が高く、申立人の商標及びブランドが需要者に周知されていることが分かる。
(2)我が国での売上高(1ユーロ139.42円で換算)
2015年ないし2021年の我が国における引用商標を付した被服類商品の売上高は、2015年は2,010万ユーロ(約28億円)、2016年は2,391万ユーロ(約33億円)、2017年は2,300万ユーロ(約32億円)、2018年は2,600万ユーロ(約36億円)、2019年は2,700万ユーロ(約37億円)、2020年は2,100万ユーロ(約29億円)、2021年は2,025万ユーロ(約28億円)であり、いずれの年も売上げは28億円から37億円以上に達している。
(3)広告宣伝費(1ユーロ139.42円で換算)
申立人が我が国において費やした「A|X」(アルマーニ エクスチェンジ(Armani Exchange))ブランドに関する2017年ないし2021年の広告宣伝費は、2017年は105万6千ユーロ(約1億4,822万8千円)、2018年は40万ユーロ(約5,568万円)、2019年は28万2千ユーロ(約3,931万6千円)、2020年は40万1千ユーロ(約5,590万7千円)、2021年は54万ユーロ(約7,528万7千円)であり、いずれの年も、最低3,932万円以上、最高時は1億4千万円以上の広告宣伝費をかけており、申立人がその所有するブランドの育成と価値の向上に力を入れていることが分かる。
(4)引用商標が広告・宣伝を目的に使用された例
申立人の日本向けインターネットホームページの写し(甲10)によれば、引用商標が複数のページに表示され、商品にも、引用商標がよく表され、申立人のビジネスと引用商標とが密接に関わっており、引用商標が国内外の消費者の目に触れる機会が多いことが分かる。
(5)日本国内での雑誌等への掲載事例
申立人は、日本国内で、雑誌等へ引用商標が付された商品の広告掲載を多数行っており(甲11)、我が国の需要者に引用商標が認知されているといえる。
(6)世界各国での引用商標の商標登録例
申立人は、78か国を指定した、マドリッド協定議定書に基づく国際登録商標を所有し、引用商標の世界的な法的保護を確保の上、使用しているほか、国際分類第25類の指定商品について、「A|X」、「A|X Armani Exchange」、「Armani Exchange」に関連する38か国における74件の商標登録がある(甲12)。
(7)Brand Financeによる評価
英国に拠点を持つ、世界のブランドの評価を行う事業者Brand Finance社は、2017年のイタリアのブランドトップ50を分析しており、申立人のブランドの総称である「Armani」について、第10位にランク付けしている。金融商品の格付と同様の評価体系を有しており、最高ランクAAA+であるところ、ArmaniブランドはAA+の評価を得ている(甲13)。
6 商標法第4条第1項第10号、同項第11号及び同法第8条第1項について
(1)本件商標と引用商標との類似性
引用商標は、ファッション業界において世界的に周知・著名であるといえる。
また、申立人の店舗、商品、雑誌の多くに、引用商標は目立つように表示されている(甲8、甲10、甲11)。
引用商標に係るブランドは、アルマーニのブランド群の中でも、3大重要ブランドであるため、引用商標は申立人にとって極めて重要であり、よく使用される商標である。
したがって、引用商標は、国内の需要者の目にも触れる機会は多く、申立人の商標として認知され、服飾・身の回り品関連の商品等に「A|X」が付されていた場合には、容易に引用商標が想起され、記憶の中で対比されることとなる。
商標の類否判断は、外観・称呼・観念をバランス良く対比しながらなされるところ、本件商標「AX FARM」は、「AX」の語と「FARM」の語の組合せからなり、これら2語の間には空欄が入っている。
横書きの商標は、左から読み起こし理解するため、語頭の「AX」の方が、語尾の「FARM」よりも目立ち、需要者に注視される部分である。
また、国内外で周知・著名なブランドであるジョルジオ アルマーニの重要なブランド「Armani Exchange」のロゴ「A|X」として認知及び想起し得る。引用商標「A|X」と構成する文字がAとXから成る点で共通しているほか、上記のとおり引用商標は、我が国で周知な表示であることから、「AX」と「A|X」とで対比され、外観・称呼(エイエックス)の点で共通し、類似する商標である。
本件商標の構成中「FARM」の欧文字は、英語で「農場、農園」として、我が国において幼児、小学生でも認識できるほど需要者に良く知られた語である(甲15)。「AX」の後に「FARM」を配した本件商標を看取する需要者は、「AXの農場」や「AXを作る農場」と観念を把握するが、「AX」とは何を指すのかという疑問が生じる。
本件商標の指定商品が服及び履物であることにかんがみて、需要者は、周知商標である引用商標を想起することは容易であるため、「A|Xの農場」や「A|Xと関係のある農場」なる観念を想起する。
そうすると、被服ブランドとして周知・著名である申立人の事業とビジネス上関連のある農業・農園ではないか、と需要者は想像するのであり、本件商標にかかる商品・役務は、引用商標と事業上関連のある者により提供されたものとして需要者に認識され、狭義・広義の出所の混同を生ずるおそれが存在する。
したがって、本件商標は、引用商標と観念上類似する表示である。
さらに、本件商標の権利者(以下「本件商標権者」という。)は、YouTubeに田舎の中古住宅のリフォーム工事の動画の投稿及び中古住宅リフォーム用の道具の紹介を事業の中心として行っている(甲16)ことから、本件商標を看取する需要者は、本件商標のうち「FARM」の部分について、田舎の農場、農園と認識することが必然であり、当該文字部分は、指定商品等の製造や提供の場所・品質や質・内容を表す語であるから、自他商品の識別力を有さず、「AX」の欧文字が自他商品の識別力を有する部分として把握する。
しかも、引用商標自体は周知・著名な商標であるから、外観と称呼が近似している本件商標に接した需要者は、本件商標から、AXからなるモノグラムを配した、つまり、アルマーニ エクスチェンジの意味からなるロゴと想起することが容易に想像できる。
したがって、本件商標の構成中の「AX」の欧文字は申立人の引用商標と外観上極めて近似しているだけではなく、称呼上も同一であるため、外観上・称呼上、類似の表示といえる。
以上により、本件商標と引用商標とは、外観上極めて紛らわしく、称呼・観念上も類似しているため、商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあることは否定できないから、本件商標と引用商標とは類似するというべきである。
(2)商品の類似性
異議申立対象商品と引用商標の指定商品及び指定役務中の第25類の指定商品は、同一又は類似である。
(3)小括
よって、本件商標は、引用商標と外観・称呼・観念上類似し、周知な引用商標と出所の混同を生ずるおそれがあることから、引用商標1との関係で商標法第4条第1項第10号に該当し、同法第8条第1項の要件に該当するものであって、引用商標2との関係で同法第4条第1項第11号に該当する。
7 商標法第4条第1項第15号について
本件商標と引用商標とが類似するとはいい得ないとした場合であっても、引用商標が申立人の商標として日本国内において周知・著名であることからすると、本件商標が異議申立対象商品に使用されたときには、需要者・取引者をして、その出所について誤認混同を招くことは明らかである。
異議申立対象商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似の商品を指定商品としている。
ファッション業界では、統一したブランドイメージに基づき、服(第25類)のみならず、ファッションに関係する他の国際分類に属する商品、例えば、かばん、腕時計、サングラスや眼鏡、ブレスレットやカフス、キーホルダーなどの商品も、まとまりのあるデザインを施して、同一の店舗やそれぞれの商品が属する専門ないし複合商品の店舗で販売される(甲8、甲10)ことから、被服や身回り品に関連する商品のすべての周知・著名性は発揮され、商品等の出所の混同のおそれが生じることとなる。
したがって、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当しないとした場合であっても、本件商標は同項第15号に該当する。
8 商標法第4条第1項第19号について
引用商標は、申立人の周知・著名な商標として世界各国で認識されることからすると、これと類似する本件商標を異議申立対象商品に使用する場合には、ファッション業界において周知・著名な「A|X」、「ARMANI EXCHANGE」商標に化体した知名度にフリーライドして、不正の利益を得る目的のもと、使用することになる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
第4 当審の判断
1 申立人商標及び標章の周知性について
(1)申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、申立人商標及び標章について、次の事実が認められる。
ア 申立人は、デザイナーであるアルマーニ氏により1975年にイタリアで設立された高級服のメーカーである。
イ 申立人の業務に係る「Armani(アルマーニ)」ブランドには、「Giorgio Armani(ジョルジオ アルマーニ)」、「Emporio Armani(エンポリオ アルマーニ)」及び「Armani Exchange(アルマーニ エクスチェンジ)」などがあり、特にこの3つを中心にブランド展開を行っている(甲3、甲4の1、甲7の1)。
ウ 申立人は、1991年に「A|X アルマーニ エクスチェンジ ライン」を発表し第1号店をニューヨークのソーホーにオープン、2022年に「A|X アルマーニ エクスチェンジ」の第1号店をミラノにオープンした(甲4の1、甲7の2)。
エ 申立人は、「A|X」ブランドが、若者を中心に人気を博し、「アルマーニ・エクスチェンジ」の店舗数は、アルマーニグループ内でも最多となり、世界中で馴染みあるブランドラインと認識され(甲6)、31か国の270店舗とブランドのウェブサイトにおいて限定で販売されている(甲3)と主張している。
オ 申立人商標及び標章を付した店舗は、我が国において、千葉県、埼玉県、大阪府、宮城県、愛知県、東京都、沖縄県、神奈川県及び福岡県に19店が展開されている(甲8の2~甲8の6)。
カ 申立人は、2014年ないし2021年までのアニュアルレポートを提出し、全世界での「アルマーニ(Armani)」ブランドの売上高及び販売額を主張するが、その詳細は不明である(甲9)。
キ 申立人は、2015年ないし2021年の我が国における申立人商標及び標章を付した同人の取扱いに係る被服等(以下「申立人商品」という。)の売上高及び我が国における申立人商標及び標章に関する広告宣伝費などを主張するが、それらを客観的に裏付ける証拠の提出はない。
ク 申立人商品を販売する日本向けウェブサイトには、引用商標が複数のページに掲載されているが、それらが掲載された時期は確認できない(甲10)。
ケ 申立人商品は、少なくとも2016年11月頃から2021年11月頃までに、我が国において発行された各種雑誌で相当数の広告が掲載されたが、それらの発行部数や普及度は不明である(甲11)。
(2)まとめ
上記(1)によれば、申立人商品は、1991年に米国ニューヨークで販売が開始され、その後、31か国の270店舗とウェブサイトにおいて販売され、我が国においては2015年頃から販売され、複数の雑誌等で紹介され、19の店舗やウェブサイトにおいて販売されていることは認められる。
しかしながら、申立人商品について、我が国における売上高や市場シェアなどの事業規模、宣伝広告の程度などを具体的に把握し得る証拠の提出は認められず、本件商標の登録出願時及び登録査定時における申立人商標及び標章の周知性の程度を推しはかることはできないため、申立人商標及び標章が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人又は申立人商品を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
その他、申立人提出の証拠及び同人の主張によっても、申立人商品及びそれに使用されている申立人商標及び標章が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人又は申立人商品を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
2 本件商標と申立人商標及び標章の類似性について
(1)本件商標について
本件商標は、上記第1のとおり「AX FARM」の文字を標準文字で表してなり、構成文字に相応して「エイエックスファーム」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。
(2)申立人商標及び標章について
ア 引用商標について
引用商標は、別掲1及び別掲2のとおり、いずれも「A|X」の文字からなり、構成文字に相応して「エイエックス」の称呼を生じ、特定の観念を生じない。
イ 引用標章について
引用標章は、上記第2のとおり、「A|X」、「Armani Exchange」及び「アルマーニエクスチェンジ」の文字を横書きしてなるから、その構成文字に相応して、「エイエックスアルマーニエクスチェンジ」の称呼が生じ、特定の観念を生じない。
(3)本件商標と申立人商標及び標章の類否について
ア 外観について
本件商標は、上記(1)のとおりの構成よりなり、申立人商標及び標章は、上記(2)のとおりの構成よりなるところ、本件商標と引用商標とは、「A」と「X」の文字を有する点において共通するとしても、「|」の記号及び「FARM」の文字の有無の差異を有するものであり、その構成が明らかに相違する。
また、本件商標と引用標章とは、構成文字が明らかに相違するものである。したがって、本件商標と申立人商標及び標章は、外観において、互いに紛れるおそれはない。
イ 称呼について
本件商標から生じる「エイエックスファーム」の称呼と引用商標から生じる「エイエックス」の称呼を比較すると、両者は語尾において「ファーム」の音の有無という明らかな差異を有し、構成音数が相違する。また、本件商標の称呼と引用標章から生じる「エイエックスアルマーニエクスチェンジ」の称呼とは、構成音が明らかに相違する。したがって、本件商標と申立人商標及び標章は、称呼において、明瞭に聴別し得るものである。
ウ 観念について
観念においては、本件商標も申立人商標及び標章のいずれも特定の観念を生じないものであるから、比較することができない。
エ 小括
以上のとおり、本件商標と申立人商標及び標章とは、観念において比較することができないものであり、外観及び称呼において、相紛れるおそれのないことが明らかなものであるから、両商標は、非類似の商標及び標章であって、別異のものというのが相当である。
その他、本件商標と申立人商標及び標章とが類似するというべき特段の事情は見いだせない。
3 商標法第4条第1項第10号について
引用標章は、上記1のとおり、申立人又は申立人商品を表すものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認められないものであり、上記2のとおり、本件商標と引用標章とは、相紛れるおそれのない非類似の商標及び標章である。
したがって、異議申立対象商品と申立人商品とは、同一又は類似するものであるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第11号及び同法第8条第1項について
上記2のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標であるから、異議申立対象商品と引用商標の指定商品が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当せず、同法第8条第1項の要件に該当しない。
5 商標法第4条第1項第15号について
上記1のとおり、申立人商標及び標章は、本件商標の登録出願時及び査定時において、申立人又は申立人商品を表示するものとして我が国における需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、また、上記2のとおり、本件商標は、申立人商標及び標章と相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異の商標というべきものである。
そうすると、本件商標は、申立人商標及び標章の独創性の程度や本件商標の異議申立対象商品と申立人商品との関連性の程度、需要者の共通性などを考慮しても、本件商標を異議申立対象商品について使用した場合、これに接する取引者、需要者が、申立人商標及び標章を連想又は想起し、他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であると誤認し、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
6 商標法第4条第1項第19号について
上記1のとおり、申立人商標及び標章は、申立人又は申立人商品を表示するものとして我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、また、上記2のとおり、本件商標と申立人商標及び標章とは、相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異の商標であり、さらに、上記5のとおり、本件商標は、申立人商標及び標章を連想又は想起させるものでもない。
また、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、本件商標権者が、申立人商標及び標章に化体した知名度にフリーライドするなど不正の目的をもって本件商標を使用するものと認めるに足りる証拠は見いだせない。
そうすると、申立人提出に係る証拠からは、本件商標権者が申立人商標及び標章に化体した信用、名声、顧客吸引力を利用して不正の利益を得る目的、申立人商標及び標章に化体した信用、名声、顧客吸引力を毀損させるなど申立人に損害を与える目的その他の不正の目的をもって使用をするものとはいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
7 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号、同項第15号、同項第19号及び同法第8条第1項の規定のいずれにも違反してされたものではなく、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2022-900448