商標異議申立
2022-900446
キングストロング、キング、ストロング
- 審判番号
- 2022-900446
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2022-019980
- 登録番号
- 6600382
- 請求日
- 2022年10月24日
- 審決日
- 2023年10月19日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】有限会社ジェイドインターナショナル
- 【異議申立人】プーマ エスイー
- 【異議申立人代理人】三上 真毅
- 審判長/審判官
- 審判長 豊田 純一
- 審判官 杉本 克治
- 審判官 岩谷 禎枝
- 分類
- T1651.25 -Y (W25) / T1651.261-Y (W25) / T1651.262-Y (W25) / T1651.263-Y (W25) / T1651.271-Y (W25)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項10号商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第10号、商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6600382号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6600382号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6600382号商標(以下「本件商標」という。)は、「KING STRONG」の文字を標準文字で表してなり、令和4年2月22日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下留め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊靴,運動用特殊衣服」(以下「本件商品」という。)を指定商品として、同年7月25日に登録査定、同年8月12日に設定登録されたものである。
第2 登録異議申立人が引用する商標及び標章
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由に該当するとして引用する登録商標及び標章は、以下の1ないし3のとおりである。
1 登録第5383602号商標(以下「引用商標1」という。)は、「KING」の文字を標準文字で表してなり、平成21年1月19日登録出願、第18類、第25類及び第28類に属する商標登録原簿に記載の商品(別掲1)を指定商品として、同23年1月14日に設定登録されたものであり、その商標権は、現に有効に存続しているものである。
2 国際登録第1494385号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、2019年7月31日国際商標登録出願、第18類、第25類及び第28類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品(別掲3)を指定商品として、令和4年2月25日に設定登録されたものであり、その商標権は、現に有効に存続しているものである。
3 申立人が、本件商標の登録出願日以前に、申立人の取り扱いに係るスポーツシューズを含む各種スポーツ用品及び申立人の子会社であるコブラ ゴルフ インコーポレーテッド(以下「コブラ社」という。)が国内外において製造及び販売するゴルフ用品(以下これらをまとめて「申立人等使用商品」という。)に使用し、日本国内における需要者の間に広く認識されていると主張する標章は、「KING」の欧文字からなるもの(以下「申立人等標章」という。)である。
なお、以下、「引用商標1」及び「引用商標2」をまとまていう場合は、「引用商標」といい、「引用商標」と「申立人等標章」をまとめていう場合は「申立人等商標及び標章」という。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第10号、同項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第63号証(枝番号を含む。)を提出した。
なお、甲各号証の表記にあたっては、甲第1号証を「甲1」のように省略して表示する場合があり、また、枝番号の全てを示すときは枝番号を省略する。
1 本件商標を商標法第4条第1項第11号により取り消すべき理由
(1)本件商標
本件商標は、標準文字で書された「KING」の文字と「STRONG」の文字の間に空白を備え、横一列に配した態様よりなる(甲1、甲2)。
本件商標の構成中の「KING」の文字及び「STRONG」の文字は、それぞれ、「王。国王。君主。」及び「強い。健康な。影響力のある。強烈な。濃い。」等を意味する、我が国の一般消費者にとって馴染みある英単語の一つであることから(甲7、甲8)、本件商標は、「KING」の文字と「STRONG」の文字の2つの英単語を配したものと容易に看取される。
また、「王。国王。君主。」は、権力者であるところ、その存在、権限、影響力が強いことは世人の知るところであり、「KING」の文字よりは「STRONG」の意味合いが認識されるため、本件商標全体からは、「強い国王」の観念が容易に想起される。
本件商品は、人々が日常生活において着用するものであるところ、これら商品の効能(身体への締め付け効果)や品質(素材の伸縮性、サイズ、色合い)が「強い。強烈」ことを示す表示として、「ストロング(STRONG)」の語が使用されている実情が存在する(甲40~甲44)。
このため、本件商標の構成中の「STRONG」の文字は、本件商品が、他の通常の商品と異なる特徴を備えたものであることを指称する語と認識される(甲37~甲39)。
一方、「KING STRONG」の文字は、辞書等に載録された語ではない(甲7、甲8)。
このように、本件商標の構成中の「STRONG」の文字は、本件商品との関係において、商品の特徴が他の通常の商品とは異なることを直接的に表示する文字に該当することから、構成中の「KING」の文字と分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど強く結合しているものと認められない。
したがって、本件商標の要部は、その構成中の「KING」の文字といえる。
(2)引用商標
引用商標1は、標準文字で書された「KING」の文字よりなる(甲3、甲4)。
引用商標2は、別掲2のとおり、左右を切り欠いた横長の楕円(以下「欠損横長楕円」という。)の中に、ゴシック体で「KING」の欧文字が書された態様よりなる(甲5)。
そして、引用商標2の図形部分は、それ自体、さほど、特徴のある図形ではなく、中に描かれた「KING」の欧文字の外郭線(フレーム)とも看取されることから、引用商標2を目にした本件商品に係る需要者、取引者であれば、欧文字部分に着目して、引用商標2を認識する。
(3)申立人と「KING」商標
ア 申立人であり、引用商標の権利者であるドイツ法人Puma SE(以下「プーマ社」という。)は、スポーツシューズ、スポーツウェア、被服、バッグ等を世界的に製造販売している多国籍企業である(甲9~甲12)。
1920年にルドルフ・ダスラー及びアディ・ダスラーの兄弟が靴を販売する「ダスラー兄弟商会」を設立したのが始まりであり、その後、兄弟が1948年にそれぞれ独立し、兄ルドルフがプーマ社を設立した(甲12)。
我が国においては、1972年から、国内における代理店として「コサ・リーベルマン株式会社」が、申立人の業務に係る商品のうち、靴、バッグ、アクセサリーについて事業を展開し、2003年5月1日に、申立人の日本法人であるプーマジャパンが同事業を承継した。
そして、ウェアについては1972年から国内のライセンシーであるヒットユニオン株式会社(以下「ヒットユニオン社」という。)が製造・販売していたが、2006年1月に、引用商標を付したアパレル関連商品を生産する日本法人であるプーマ・アパレル・ジャパンが設立され、同社がヒットユニオン社から営業権を譲り受けた。
2010年に、プーマジャパンとプーマ・アパレル・ジャパンが合併し、現在のプーマジャパン(以下「プーマジャパン社」という。)となった(甲9~甲12)。
ネコ科の哺乳動物、ピューマから命名した「PUmA」の文字及びピューマのシルエット図形を付した申立人のブランド(ハウスマーク)は、我が国において長年にわたり人気を得ている。
申立人のサッカーシューズは、1958年にスウェーデンで開催されたサッカー・ワールドカップにおいて、唯一のドイツ製サッカーシューズであった(甲12)。
1960年代以降、著名なサッカー選手、2000年以降には世界的に著名な陸上選手等、各国のサッカーや陸上のトップアスリートがプーマ社のスポーツシューズを着用し(甲12)、多くの需要者に支持されたことで、世界的なスポーツブランドとして不動の地位を確立した。
プーマジャパン社の業務に係るスポーツ用品について、「スポーツ産業白書」(甲10)によると、国内での売上高及び企業別順位は、スポーツ用品メーカー(スポーツ関連売上高10億円以上)として、プーマジャパン社が9位にランキングされ、当該売上高は、約393.2億円(予測)であり、2017年は9位、2016年は7位の順位をキープしており、当該売上高は、2013年が431億2,100万円(6位)、2014年が425億2,300万円(7位)、2015年(見込)が431億2,100万円(7位)、2016年(予測)が約442億円と安定して推移しており、国内売上高は毎年ほぼ400億円を超えている。
また、プーマジャパン社の業務に係るスポーツジュースについて、「スポーツシューズビジネス」(甲9の1~甲9の5)によると、国内での出荷額、企業別順位、市場占有率は、2013年は179億5,500万円、6位、5.9%、2014年は177億8,000万円、6位、5.4%、2015年は184億4,000万円、6位、5.2%であり、出荷額は毎年170億円を超え、5%を超える市場占有率を有している。
さらに、「スポーツアパレル市場動向調査」(甲11)によると、スポーツアパレルのブランド別国内出荷金額ランキングでは、2012年は第4位、2013年ないし2017年は第5位であり、2018年は第8位と順位を若干落としているが、2018年出荷金額(見込)は、約231.6億円(市場占有率4.2%)と、前年(2017年は約214億円)より金額は増えている。
申立人は、1958年から60年以上にわたり、各種スポーツ用品・アパレル商品を世界各国で販売し、とりわけ、サッカーシューズにおいて、1966年より、プーマサッカースパイクのモデル名の一つとして「KING」を長年にわたり使用している。
甲第13号証は、2008年に、「KING」シリーズの発売40周年を記念し、プーマ社が制作した「KING 1968-2008」と題するパンフレットである。
甲第14号証は、1970年以降、プーマ社が制作した「KING」サッカースパイクの広告である。
プーマ社の「KING」サッカーシューズは、サッカー界のレジェンドをはじめ各国の数多の名サッカー選手に愛され続け、特別モデルまで存在する、プレミアムなプーマ社のサッカースパイクの名称として、サッカー界では非常に高い評価を得ている(甲15~甲17)。
今日においては、サッカーシューズのみならず、プーマ社の各種スポーツ用品(ゴールキーパー用グローブ、スポーツバッグ、トレーニングウェア、サッカーボール)に「KING」商標は使用されている(甲18、甲54~甲57、甲63)。
「KING」サッカー用品の国内売上げは、2020年が1.1億円(小売価格ベース)、2021年が2.4億円となっている。
このように、プーマ社は、同社のサッカー用品を指称するブランドの一つとして「KING」商標を長年にわたり使用し(甲12~甲18、甲54~甲57、甲63)、また、2013年ないし2017年における申立人の取扱いに係る商品の売上高も堅調に推移しており、「スポーツシューズメーカー別国内出荷金額」及び「スポーツアパレルのブランド別国内出荷金額ランキング」においても常に上位に位置していることから(甲9~甲11)、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人等商標及び標章は、申立人の業務に係るスポーツシューズを含む各種スポーツ用品を表示する商標として、我が国の取引者、需要者の間で広く認識されている。
イ 申立人は、2010年3月10日、世界有数のゴルフクラブメーカーであったコブラ社(1973年創設。)を買収し(甲19)、同社の「KING」ブランドを残しつつ、ゴルフ事業に本格的に参入した。
コブラ社のゴルフ用品は、「ヴィクトリアゴルフ」、「スーパースポーツゼピオ」、「PGA ツアースーパーストア」、「ゴルフパートナー」及び「つるやゴルフ」といった大手ゴルフ用品店(甲20~甲21)の店頭やオンラインショップにおいて販売されており、国内での取扱店数は、120店近くある。
また、ゴルフ専門店での店頭販売に限らず、アマゾンジャパン、楽天市場、Yahoo!ショッピングといった大手ネット通販サイトやゴルフ用品通販サイト(甲22~甲25)においても多数販売されている。
コブラ社のゴルフ用品を代表するブランドの一つが「KING」であり、1990年代後半、有名プロゴルファーが使用していたことがゴルフ業界で話題となり、「パワーヒッター御用達」として知られるようになった(甲26)。
甲第27号証は、2016年のコブラ社のゴルフ用品カタログ「KING 2016 PRODUCT GUIDE」であり、「KING」の文字が、ドライバーやアイアンのヘッドに目立つ態様で刻印されている。
また、現在のコブラ社の日本語ウェブサイトでも、同様に、「KING」の文字が大きく表示されている(甲28)。
コブラ社の「KING」ゴルフ用品がゴルフ通の間で人気を博していることから、新たな「KING」モデル商品が発売される度、ゴルフ雑誌等のメディアやプロゴルファーらが、新モデルの性能や特徴を紹介、評価する記事を掲載している(甲29~甲31)。
また、「KING」モデルの販促も積極的に行っており、YouTube広告(甲32)や日本最大級のゴルフポータルサイト「GDO」でのバナー広告(甲33)、ゴルフ雑誌「ALBA」への広告(甲34)等を行っている。
コブラ社の人気モデル「KING F9」の国内でのプロモーション活動を紹介した資料(甲35)及び2021年1月ないし2022年3月にかけて、ゴルフ雑誌等に掲載された「KING」に関する記事、掲載内容の一覧(甲36)を提出する。
これらの営業活動、宣伝広告活動等により、コブラ社の「KING」ゴルフ用品の国内売上げは、2020年が8.6億円(小売価格ベース)、2021年が4.9億円となっている。
上記の国内売上げ自体は、国内のゴルフ用品市場規模からすると、やや小さい印象は否めないものの、海外の人気ゴルファーが愛用する「パワーヒッター御用達」ゴルフブランドとして、業界内において一定の認知度を獲得していることは、甲第20号証ないし甲第36号証から容易に推測される。
ウ 以上により、申立人等商標及び標章は、申立人等使用商品を表す出所標識として、本件商品中、第25類「履物,運動用特殊靴,運動用特殊衣服」に係る需要者、取引者の間で一定の認知度を獲得している。
(4)本件商標と引用商標1の対比
本件商標は、我が国の需要者、取引者において馴染みある英単語「KING」の文字と「STRONG」の文字との間に空白を備え、横一列に配した態様からなる。
本件商標の構成中、「KING」の文字と「STRONG」の文字とは、外観上、別々の英単語と認識される上、「STRONG」の文字は、本件商品が、他の通常の商品と異なる特徴を備えたものであることを表示する文字に該当し(甲40~甲44)、識別力の弱い語であることから(甲37~甲39)、これを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものではない。
このため、本件商標の構成中「KING」の文字は、独立して自他商品の出所識別機能を果たし得るものと認められ、当該文字に相応して「キング」の呼称を生じ、「王。国王。君主。」の観念を生じる。
現に、「KING」の文字に識別力の弱い語や図形要素が結合した商標について、商標構成中の識別力の弱い部分を捨象し、要部として「KING」の文字を抽出して引用商標との類否を判断することは認められるとした審査例や異議決定例がある(甲45~甲53)。
そこで、本件商標の要部である「KING」の文字と引用商標1とを対比すると、本件商標の要部である「KING」の文字は、引用商標1より生ずる「キング」の称呼、「王。国王。君主。」の観念において同一であることから、両商標は全体として類似する。
また、申立人等商標及び標章は、申立人等使用商品を表す出所標識として、本件商品に係る需要者、取引者の間で一定の認知度を獲得しているところ、本件商標は、需要者の間に広く認識された申立人等商標及び標章をその構成中に含むものである。
したがって、本件商標は、引用商標1と類似する。
なお、「KING STRONG」の文字は、辞書等に載録された語ではなく(甲7、甲8)、このため、引用商標「KING」は既成の語の一部には該当しない。
以上により、本件商標と引用商標1は、「STRONG」の語の有無において、外観上異なるものの、本件商標の要部である「KING」の文字において、称呼及び観念が一致しており、また、本件商標は、本件商品に係る需要者の間に広く認識された引用商標の後に、空白を設けて、本件商品の特徴を指称する「STRONG」の文字を配したものにすぎないことから、これらの事情を総合的に勘案すると、両商標は類似すると判断されてしかるべきである。
(5)本件商標と引用商標2との対比
引用商標2は、欠損横長楕円の中に、「KING」の欧文字がゴシック体で書された態様からなる(甲5)。
本件商標の構成中「KING」の文字は、独立して自他商品の出所識別機能を果たし得るものと認められ、当該文字に相応して「キング」の称呼を生じ、「王。国王。君主。」の観念を生ずる。
本件商標の要部「KING」の文字と引用商標2を対比すると、両商標は、引用商標2の「KING」の欧文字より生ずる「キング」の称呼、「王。国王。君主。」の観念において同一である。
引用商標2は、申立人のサッカーシューズ等において現に使用され(甲17、甲18、甲54~甲57、甲63)、申立人を表す出所標識として、本件商品に係る需要者、取引者の間で一定の認知度を獲得しており、このため、本件商標が本件商品中のサッカー靴、サッカー競技用シャツ・パンツ・靴下・ユニフォームに使用された場合、需要者及び取引者に与える印象が似通っていることから、本件商標と引用商標2とは類似する。
(6)本件商品と引用商標に係る指定商品との類否
引用商標に係る指定商品中、第25類及び第28類の指定商品は、本件商品と同一又は類似する(甲1~甲5)。
(7)小括
本件商標と引用商標とは類似しており、また、本件商品と引用商標に係る指定商品とは同一又は類似する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
2 本件商標を商標法第4条第1項第10号により取消すべき理由
(1)申立人等標章の認知度
コブラ社が、国内外において製造及び販売するゴルフ用品に使用する申立人等標章は、本件商標の登録出願前より、とりわけ、国内外のゴルフ業界の関係者やゴルフファンの間で広く認識されている事情が認められる(甲20~甲36)。
(2)本件商標と申立人等標章との類否
本件商標は、我が国の需要者、取引者において馴染みある英単語「KING」の欧文字と「STRONG」の欧文字との間に空白を備え、横一列に配した態様からなるところ、本件商標の構成中の「KING」の文字と「STRONG」の文字とは、外観上、別々の英単語と認識される上、「STRONG」の文字は、本件商品が、他の通常の商品と異なる特徴を備えたものであることを表示する文字に該当し(甲37~甲44)、両語を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものではないことから、本件商標の構成中の「KING」の文字は、独立して自他商品の出所識別機能を果たし得るものと認められ、当該文字部分に相応して、「キング」の称呼を生じ、「王。国王。君主。」の観念を生ずる。
そこで、本件商標の構成中の「KING」の文字と、コブラ社がゴルフ用品に使用する申立人等標章を対比すると、本件商標の構成中の「KING」の文字と申立人等標章とは、これらより生ずる「キング」の称呼及び「王。国王。君主。」の観念において同一である。
また、申立人等標章は、コブラ社のゴルフ用品を表す出所標識として、本件商品に係る需要者、取引者の間で一定の認知度を獲得しているところ(甲20~甲36)、本件商標は、需要者の間に広く認識された申立人等標章をその構成中に含むものである。
なお、「KING STRONG」の文字は、辞書等に掲載された語ではなく(甲7、甲8)、このため、申立人等標章は既成の語の一部には該当しない。
以上により、本件商標と申立人等標章は、外観において異なるものの、本件商標の要部である「KING」の文字において、称呼及び観念が一致しており、また、本件商標の文字部分は、本件商品に係る需要者の間に広く認識された申立人等標章の後に、空白を設けて、本件商品の特徴を指称する「STRONG」の欧文字を配したものにすぎないことから、これらの事情を総合的に勘案すると両商標は類似すると判断されて然るべきである。
(3)本件商品とコブラ社のゴルフ用品との類否
本件商品のうち「運動用特殊靴,運動用特殊衣服」は、コブラ社のゴルフ用品と同一又は類似する。
(4)小括
本件商標と申立人等標章とは類似しており、本件商品のうち「運動用特殊靴,運動用特殊衣服」とコブラ社のゴルフ用品とは同一又は類似する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
3 本件商標を商標法第4条第1項第15号により取消すべき理由
(1)本件商標と申立人等商標及び標章との類似性の程度
本件商標は、我が国の需要者、取引者において馴染みある英単語「KING」の欧文字と「STRONG」の欧文字の間に空白を備え、横一列に配した態様からなるところ、本件商標の構成中、前半の「KING」の欧文字と後半の「STRONG」の欧文字とは、外観上、別々の英単語と認識される上、「STRONG」の欧文字は、本件商品が、他の通常の商品と異なる特徴を備えたものであることを表示する文字に該当(甲37~甲44)し、これらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものではないことから、本件商標の構成中、「KING」の欧文字部分は独立して自他商品の出所識別機能を果たし得るものと認められ、当該文字部分に相応して、「キング」の称呼を生じ、「王。国王。君主。」の観念を生ずる。
引用商標1は、「KING」の文字を標準文字で表してなり(甲3、甲4)、引用商標2は、欠損横長楕円の中に、「KING」の欧文字をゴシック体で書した態様からなる(甲5)。
また、申立人及びコブラ社が、申立人等使用商品に使用する申立人等商標及び標章は、「KING」の欧文字からなる(甲12~甲36、甲54~甲57)。
本件商標の構成中「KING」の文字と申立人等商標及び標章を対比すると、外観において異なるものの、「キング」の称呼、「王。国王。君主。」の観念において一致しており、また、本件商標の「KING」の文字は、本件商品、とりわけ、サッカー用品及びゴルフ用品に係る需要者の間に広く認識された申立人等商標及び標章の後に、識別力の弱い「STRONG」の文字を配した商標にすぎないことから、これらの事情を総合的に勘案すると両商標の類似性の程度は比較的高いものといえる。
(2)申立人等商標及び標章の周知著名性及び独創性の程度
「KING」の語は、「王。国王。君主。」を意味する基本的な英単語であるため(甲7、甲8)、申立人等商標及び標章の独創性の程度は高いとはいい得ないものの、申立人等商標及び標章は、とりわけ、国内外のサッカー業界及びゴルフ業界の関係者や熱狂的なファンの間で広く認識されている事情が認められる(甲12~甲36、甲54~甲57)。
(3)本件商品と申立人等使用商品との関連性
本件商品のうち「運動用特殊靴,運動用特殊衣服」は、申立人等使用商品と同一又は類似する。
また、本件商品に含まれる「被服,ガーター,靴下留め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服」は、申立人等使用商品とは非類似とはいえ、スポーツをする際や運動の前後に利用し、一般消費者が日常生活において着用するものであることから、需要者は共通しており、また、カジュアルウェア大手のユニクロがスポーツユーティリティウェアを販売する等(甲60)、スポーツウェアがカジュアルウェアと同じ店舗において販売されている取引の実情において、本件商品と申立人等使用商品との関連性は高い。
(4)取引者及び需要者の共通性その他取引の実情
本件商品と申立人等使用商品とは明らかに同一又は類似、若しくは関連性が高く、また、両商品の主たる需要者は、スポーツの愛好家を始めとして、広く一般の消費者を含むものということができる。
そして、このような一般の消費者には、必ずしも商標やブランドについて正確又は詳細な知識を持たない者も多数含まれているといえ、商品の購入に際し、メーカー名やハウスマークなどについて常に注意深く確認するとは限らず、小売店の店頭などで短時間のうちに購入商品を決定するということも少なくないと考えられることから、商品の選択・購入に際して払う注意力が高いとはいえない一般消費者を需要者とする点で共通する。
また、スポーツ用品を扱う店舗だけでなく、アパレル商品を取り扱う店舗においても、ゴルフやサッカー、ヨガ等のスポーツを行う際に利用する商品が多数販売され(甲61)、同様に、スポーツ用品を扱う店舗においても、Tシャツ等のカジュアルウェアも多数販売されている(甲62)。
さらに、本件商品の効能(身体への締め付け効果)や品質(素材の伸縮性、サイズ、色合い)が「強い。強烈」ことを示す表示として、「ストロング(STRONG)」の語が使用されている実情が存在するだけでなく(甲40~甲44)、申立人が販売するサッカーシューズ「KING」シリーズには、その種類や用途、品質に応じて、「キング ヒーロー」、「キング プロ」、「キング トップ」、「キング プラチナム」、「キング ミライ」の名称が付されており(甲63)、シリーズ化されるに至った人気商品において、主たる商標の後に、シリーズ商品同士を区別するためにサブブランドを付すことは、我が国の取引において極めて顕著な事実といえる。
(5)混同を生ずるおそれ
上記の事情を総合すると、本件商標と申立人等商標及び標章は、「STRONG」の文字の有無により、外観構成に差異が存在するとしても、本件商標の構成中の「KING」の文字において申立人等商標及び標章の称呼及び観念と一致しており、また、「STRONG」の文字は、本件商品が、他の通常の商品と異なる特徴を備えたものであることを指称する語と認識され、自他識別力が弱いことから、本件商標が申立人等使用商品と同一又はこれと深く関連する本件商品(とりわけ、サッカー靴やゴルフ靴、サッカー競技用シャツ・パンツ・靴下・ユニフォーム、ゴルフ用の運動用特殊衣服)に付して使用された場合、一般消費者の注意力などをも考慮すると、これに接する取引者、需要者は、本件商標の構成中の「KING」の文字部分に着目し、サッカー業界及びゴルフ業界において広く認識された申立人等商標及び標章を連想、想起して、当該商品が申立人又は申立人との間に緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある者の業務に係る商品であると誤信するおそれがあるものというべきである。
(6)小括
以上を案ずるに、本件商標が本件商品に使用された場合、これに接する取引者、需要者は、本件商標の登録出願前から、申立人及びコブラ社の業務に係る申立人等使用商品を表示する商標として、我が国の需要者の間で広く認識された申立人等商標及び標章を連想、想起し、当該商品が申立人及びコブラ社又は申立人及びコブラ社と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
第4 当審の判断
1 申立人等商標及び標章の周知性について
(1)申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、申立人等商標及び標章について、次の事実が認められる。
ア 申立人は、ドイツ法人であり、スポーツシューズ、スポーツウェア、被服、バッグ等を世界的に製造販売している多国籍企業である。
イ 申立人は、1966年頃から「プーマキング」や「キングモデル」と称するサッカーシューズを販売したこと(甲12)が認められる。
ウ 1974年12月号の雑誌「サッカーマガジン」において、「キングペレ」と称するサッカーシューズが紹介されたこと(甲15)、2018年4月25日付けのウェブサイトの記事において、「プーマ・キング」と称するサッカーシューズが紹介されたこと(甲16)、2021年3月時点において、「KING」の文字を使用したサッカーシューズ、キーパーグローブ、シャツ、パンツ、ジャケットを販売していたこと(甲17、甲18)、1968年頃から「KING」の欧文字をサッカーシューズの広告に使用していたこと(甲13、甲14)から、雑誌等の記事でプーマ社のサッカーシューズが取り上げられてことは、推認できるものの、当該雑誌の発行部数やその他広告の頻度及びその方法は不明である。
エ コブラ社の2016年の商品カタログにおいて、申立人等商標及び標章が付されたゴルフクラブ等が掲載されていること(甲27)、2016年7月4日付け、2019年3月22日付け、2019年4月25日付け及び2019年11月21日付けのウェブサイトの記事(甲26、甲28~31)並びに2021年1月から2022年3月にかけての各種ゴルフ雑誌において、申立人等商標及び標章が付されたゴルフクラブが掲載されていること(甲36)、2021年3月時点において、オンラインショッピングサイトにおいて申立人等商標及び標章が付されたゴルフクラブが販売されていること(甲20~甲25)から、雑誌等の記事でコブラ社のゴルフ用品が取り上げられてことは推認できるものの、コブラ社の商品カタログの発行数や頒布先は不明であり、また当該雑誌の発行部数は不明である。
オ 申立人は、プーマ社が申立人等商標及び標章を使用したサッカー用品の国内売上げが2020年に1.1億円、2021年に2.4億円である旨を、コブラ社が申立人等商標及び標章を使用したゴルフ用品の国内売上げが2020年に8.6億円、2021年に4.9億円である旨を主張しているが、これらを裏付ける証左の提出はない。
(2)判断
上記(1)によれば、申立人は、スポーツシューズ、スポーツウェア、被服、バッグ等を世界的に製造販売している多国籍企業であり、1966年頃から「プーマキング」や「キングモデル」と称するサッカーシューズを販売したこと、雑誌等の記事でプーマ社のサッカーシューズやコブラ社のゴルフクラブが取り上げられていることは推認できる。
しかしながら、申立人等使用商品の我が国における売上高については、それを裏付ける証拠の提出もない。
また、申立人等使用商品が紹介されている雑誌又はウェブサイトの掲載例はわずかであり、そのほかに申立人等使用商品の販売数、宣伝広告の程度等を示す証拠の提出もない。
そうすると、申立人の主張及び同人提出の証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人等商標及び標章が、プーマ社及びコブラ社又は申立人等使用商品を表示するものとして、我が国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
したがって、申立人等商標及び標章は、本件商標の登録出願の時及び登録査定時において、プーマ社及びコブラ社又は申立人等使用商品を表示するものとして、我が国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、「KING STRONG」の文字を標準文字で表してなるところ、「KING」の文字と「STRONG」の文字の間に一文字分の空白があるとしても、これらは同じ大きさ、同じ書体でまとまりよく一体的に表してなるものである。
また、本件商標の構成文字に相応して生じる「キングストロング」の称呼は、よどみなく一連で称呼し得るものである。
そして、本件商標の構成中の「KING」の文字は、「王。国王。」等を意味する英語であり、また、「STRONG」の文字は「(力の)強い。力持ちの。」等を意味する英語(いずれも「ベーシックジーニアス英和辞典 第2版」株式会社大修館書店)であり、いずれも親しまれた英語であるところ、これらを結合してなる本件商標は、構成全体として「強い王」といった観念が生じ、本件商品との関係において、自他商品の識別標識としての機能を有さないと判断するべき特別な事情は見当たらない。
したがって、本件商標は、その構成文字に相応して、「キングストロング」の称呼及び「強い王」の観念が生じるものである。
なお、申立人は、本件商標の構成中の「STRONG」の文字は、本件商品が、他の通常の商品と異なる特徴を備えたものであることを指称する語と認識されるにとどまり、本件商品との関係において、識別力の弱い語であることから、本件商標の要部は、「KING」の文字である旨主張する。
しかしながら、申立人が示す「商品の効能(身体への締め付け効果)や品質(素材の伸縮性、サイズ、色合い)が「強い。強烈」であることを示す表示として、「ストロング(STRONG)」の語が使用されている実情」とは、「ストロングレッド」(甲40)、「ストロングショート」(甲41)など、「ストロング」の語と他の語が結合しており、当該意味合いを直ちに理解、認識させるとはいい難く、そのほか、本件商標の構成中の「STRONG」の文字が、本件商品との関係において、商品の品質を表示する語である等の特別な事情はないことから、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るというのが相当である。
(2)引用商標について
引用商標1は、上記第2の1のとおり、「KING」の文字を標準文字で表してなり、当該文字に相応し「キング」の称呼を生じ、「王。国王。」(前掲書)の観念を生じるものである。
引用商標2は、別掲2のとおり、欠損横長楕円中に「KING」の欧文字を表してなり、欠損横長楕円と「KING」の欧文字は、重なることなく配置されていることから、視覚上分離して観察されるものといえ、これらを分離して観察することが、取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているものではない。
そして、欠損横長楕円は、我が国において特定の事物又は意味合いを表すものとして認識され親しまれているというべき事情は認められないため、特定の称呼及び観念は生じないものである。
そうすると、引用商標2は、欠損横長楕円と「KING」の欧文字とを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとは認められないものであるから、引用商標2の構成中の「KING」の欧文字を要部として抽出し、この部分のみを本件商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである。
したがって、引用商標2は、「KING」の欧文字に相応して「キング」の称呼が生じ、「王。国王。」(前掲書)の観念を生じるものである。
(3)本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標の類否を検討すると、両者の外観は、上記のとおり、その構成文字及び構成態様が明らかに異なり、相紛れるおそれのないものである。
次に、本件商標から生じる「キングストロング」の称呼と引用商標から生じる「キング」の称呼を比較すると、両者は語尾部における「ストロング」の音の有無という差異を有し、聞き誤るおそれのないものである。
さらに、観念においては、本件商標からは「強い王」の観念が生じるのに対し、引用商標は「王」の観念を生じるものであるから、相紛れるおそれのないものである。
そうすると、本件商標と引用商標は、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
その他、本件商標と引用商標が類似するというべき事情は見いだせない。
(4)小括
以上のとおり、本件商標と引用商標は非類似の商標であるから、両商標の指定商品が同一又は類似する商品であるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第10号について
上記1のとおり、申立人等標章は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、プーマ社及びコブラ社又は申立人等使用商品を表示するものとして、我が国における需要者の間に広く認識されていると認められないものである。
また、申立人等標章は「KING」の欧文字よりなるものであるから、本件商標と申立人等標章は、上記2(3)と同様に、非類似の商標及び標章である。
したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標とは認められないことから、本件商品中の「運動用特殊靴,運動用特殊衣服」とコブラ社の取扱いに係るゴルフ用品が同一又は類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第15号について
上記1のとおり、申立人等商標及び標章は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、プーマ社及びコブラ社又は申立人等使用商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、また、上記2及び3のとおり、本件商標は、申立人等商標及び標章と非類似の商標であって、別異の商標というべきものであり、さらに、「KING」の語が我が国で親しまれた英単語であることをあわせ考慮すれば、本件商品と申立人等使用商品との関連性の程度、需要者の共通性などを考慮しても、本件商標の権利者が、本件商標を本件商品に使用しても、これに接する取引者、需要者が、プーマ社及びコブラ社又は申立人等商標及び標章を連想又は想起させることはなく、その商品が他人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように誤認し、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
5 むすび
以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-900446