商標異議申立
2022-900436
ビイエイチピイ、ビイエッチピイ
- 審判番号
- 2022-900436
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2022-019821
- 登録番号
- 6598998
- 請求日
- 2022年10月17日
- 審決日
- 2023年08月29日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】シェンジェン ベーサス テクノロジー カンパニー リミテッド
- 【異議申立人】ビーエイチピー グループ リミテッド
- 【異議申立人代理人】城山 康文
- 【異議申立人代理人】岩瀬 吉和
- 【異議申立人代理人】横川 聡子
- 【異議申立人代理人】大島 良太
- 【異議申立人代理人】北口 貴大
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 雅也
- 審判官 小松 里美
- 審判官 渡邉 あおい
- 分類
- T1651.271-Y (W09)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項15号商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第15号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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登録第6598998号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6598998号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
1 本件商標
本件登録第6598998商標(以下「本件商標」という。)は、「BHP」の欧文字を標準文字で表してなり、令和4年2月22日に登録出願、第9類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同年8月1日に登録査定、同月9日に設定登録されたものである。
2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録商標(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)は、次のとおりであり、いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第4400405号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:「BHP」の文字を太字で横書きしてなるもの
登録出願日:平成8年8月19日
設定登録日:平成12年7月14日
指定商品:第6類に属する商標登録原簿に記載の商品
(2)国際登録第1358387号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:「BHP」の文字を横書きしてなるもの
国際商標登録出願日:2017年(平成29年)5月17日
設定登録日:平成30年11月9日
指定商品及び指定役務:第4類、第37類、第40類及び第42類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品及び役務
3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第46号証(枝番号を含む。以下、枝番号の全てを示すときは、枝番号を省略する。)を提出した。
(1)引用商標の周知著名性
ア 申立人の歴史
オーストラリア・メルボルンに本社を置く申立人は、鉄鉱石、銅、石油及びガス、ダイヤモンド、銀、鉛、亜鉛など様々な天然資源を開発・生産する企業である。申立人の前身であるブロークンヒル・プロプライエタリー・カンパニー(Broken Hill Proprietary Company)は、1885年に設立され、2001年に英国のビリトン(Billiton)と合併し、「ビーエイチピー ビリトン リミテッド」(BHP Billiton Limited)が誕生した。また、2018年11月に社名を現在の名称に変更した。現在、申立人は、英国のBHP Group Plc(前述した、旧ビリトン)と二元上場会社を形成するBHPグループ(以下「申立人グループ」という。)の中核である。申立人グループは世界最大の鉱業会社であり、そのグループの総称として「BHP」の文字商標を長年にわたり使用してきた(甲4~甲8)。
イ 申立人グループの業務に係る商品
申立人グループは、様々な天然資源を開発・生産等する企業であり、その代表的な商品として、鉄鉱石・銅・ニッケルなどが挙げられる。2019年度の生産量は、鉄鉱石が約248百万トンで世界市場シェア3位、銅が約1,220千トンで世界市場シェア3位、ニッケルが約80千トンで世界市場シェア3位である(甲9)。また、別の資料では、2021年度において、鉄鉱石が市場シェア15.8%で世界3位、銅が市場シェア7.73%で世界3位、ニッケルが市場シェア3.2%で世界5位であることがわかり(甲10~甲12)、いずれの商品も高い市場シェアを維持している。
なお、申立人グループは資源メジャー8社の中でも筆頭で紹介されていることからみても、申立人グループが業界におけるリーディングカンパニーとして日本国内及び外国において認識されていることがうかがえる(甲9)。
ウ 申立人グループの事業規模・業績
申立人グループは、鉱山事業を主にオーストラリア、北米(カナダ・メキシコ)、南米(ブラジル・チリ・コロンビア・ペルー)で展開し、石油事業を主に米国、オーストラリア、トリニダード・トバゴ、英国、アルジェリアで展開している(甲5、甲9)。
また、申立人グループは、2021年6月期決算において、純利益が約113億米ドル(約1兆2000億円)で、前年の約79億米ドルから42%増加しており、また、売上高については、約608億米ドルで、前年の約429億米ドルから42%増加している。特に、鉄鉱石が約344億米ドルで、前年の約207億米ドルから65%増加し、銅が約157億米ドルで、前年の106億米ドルから47%増加と、主力商品が売上高に貢献している(甲13~甲17)。なお、申立人グループの2022年6月期決算においては、純利益が309億米ドル(約4兆1000億円)にも上る(甲43)。
さらに、申立人グループは、世界のトップ企業、時価総額ランキングにおいて、2021年度では約1,630億ドルで67位、2022年12月末時点では、約1,570億ドルで62位と、いずれもトップ100に名を連ね(甲14、甲15)、また、世界的な経済誌である「Forbes」が発表する「The Global 2000 2022」によれば、75位に位置する(甲16)。すなわち、申立人グループは、現在、世界全ての業種・分野の中で好業績を誇る、世界で有名な企業グループの一つであって、申立人グループのハウスマークである「BHP」が業種・分野を超えて、世界で著名な商標の一つであることは疑いない。
エ 日本国内における申立人グループの認知度
上述したとおり、申立人グループの事業規模が非常に大きいことから、その事業や業績を紹介・賞賛する多数の特集記事が「日本経済新聞」、「朝日新聞」等の専門紙及び一般紙の記事、並びに雑誌又はインターネット等における記事で、しばしば掲載、紹介されている(甲17~甲43)。そのうち、日本経済新聞では、2022年の1年間だけでも、44件もの掲載記事が検出されている(甲38)。これらの記事や見出しには、申立人グループを指し示すために、一様に「BHP」と表示されていることが認められる
また、2022年10月22日、日本の岸田文雄内閣総理大臣がオーストラリアを訪問した際、オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相とともに、申立人グループの精錬所の一つであるBHPニッケル・ウェスト・クウィナナ・ニッケル精錬所(以下「ニッケル精錬所」という。)を視察したことが報じられている(甲37)。また、外務省のウェブサイトでは、ニッケル精錬所が、「クリーンエネルギー分野における日豪連携を象徴する場所」であることが紹介されており、申立人グループが日本とオーストラリアの協力関係を構築する上で重要な存在であることがうかがえる(甲39)。なお、ニッケル精錬所の訪問には、関係日本企業として、プライムプラネットエナジー&ソリューションズ及び豊田通商が参加している。
さらに、申立人グループの日本法人は、「赤い羽根 新型コロナ感染下の福祉活動応援 全国キャンペーン」募金で寄付を行ったことにより、感謝状を授与されている(甲40)。また、NPO法人CLACKが行う「使用済みPC寄贈プロジェクトPass the Baton」において、同日本法人がPC37台を寄贈したことにより、感謝状を授与されている(甲41)。このように、申立人グループは、日本国内において社会貢献活動に参加しており、日本における認知度を高めていることがうかがえる。なお、記事においては、申立人グループについて、「世界的な資源会社であるBHP」、「世界有数の資源会社BHP」と記載しており、BHPが世界的に有名な申立人グループの略称であると認識していることがうかがえる。
以上より、引用商標が日本国内外で周知著名であることは明らかである。
オ 申立人グループと異業種との関連性
日本経済新聞の記事によれば、2021年10月4日、申立人グループは、日本の豊田通商と協業することが発表された(甲18)。申立人グループは、上述した、申立人グループのオーストラリアにあるニッケル精錬所で生産する硫酸ニッケルを日本のトヨタ自動車とパナソニックが出資する電池会社プライムプラネットエナジー&ソリューションズに供給し、電池のリサイクルや供給網の温暖化ガス排出削減をめざすというものである。申立人グループの生産するニッケルは、電池や電気自動車(EV)、デジタル機器などの素材として使用される。また、申立人グループが生産する銅などの非鉄金属は、情報通信機器、電子機器、輸送用機器、建設資材、医療用器材、包装材、インフラなどの分野において、社会のあらゆる場面で使用されている素材であり、銅は電線やケーブルの素材として使用される(甲44)。
したがって、申立人グループの業務に係る商品たる素材は、異業種の各製品機器に使用されるものであり、「素材と製品」という密接な関連性を有する。
(2)商標法第4条第1項第15号の該当性
ア 本件商標と引用商標の類似性について
本件商標及び引用商標は、互いに「BHP」の欧文字3文字からなるものである。いずれも「ビーエイチピー」の称呼が生じるものであり、辞書に記載のない造語であることから、観念については比較できない。してみれば、本件商標及び引用商標は、外観・称呼・観念のいずれの点においても相紛らわしい商標といわざるを得ず、両商標は類似するものである。
イ 引用商標の周知著名性について
本件商標の登録出願の日より相当前から、現在まで継続して使用されているものであり、申立人グループの業務に係る商品を表示するもののみならず、申立人グループを指称するいわゆるハウスマークとして、我が国の需要者・取引者の間に広く認識されていることは、上述したとおりである。
ウ 引用商標の独創性について
「BHP」は、申立人の前身であるブロークンヒル・プロプライエタリー・カンパニー(Broken Hill Proprietary Company)の頭文字に由来し、何ら意味を有しない造語であり、商品の品質等を表すものではない。したがって、引用商標の独創性は高いというべきである。
エ 混同を生ずるおそれについて
上述したとおり、申立人グループの業務に係る商品たる資源は、異業種の製品機器に使用されるものであり、かかる製品機器とは、「素材と製品」という密接な関連性を有する。本件商標に係る指定商品には、充電器やケーブルなどが含まれ(甲1)、特に、充電器は、二次電池を充電するために使用する機器であり、ニッケル水素電池と密接な関連性を有し(甲45)、ニッケルの大手事業者である申立人グループと関連が深い。また、申立人が世界的なシェアを占める銅は、本件商標に係る指定商品であるケーブルの材料として使用されるものであることは周知の事実である(甲46)。
さらに、申立人グループが資源業界におけるリーディングカンパニーとして日本国内及び外国において認識されていることは、上述したとおりであり、申立人グループの事業規模が非常に大きいこと、引用商標が申立人グループのハウスマークとして使用されていること、及び引用商標の周知著名性とも相まって、申立人グループが使用する引用商標は、混同を生ずるおそれのある範囲が広く捉えられるべきである。
さらにまた、申立人グループは、我が国において日本の大手企業と協働して事業を行っており、かかる事実は広く報道されている。
したがって、このような取引の実情を考慮すれば、本件商標をその指定商品について使用すると、取引者及び需要者において、同商品が申立人又は申立人グループと何らかの関係を有する者の提供する商品であると、混同を生ずるおそれがあるというべきである。
(3)小括
以上のとおり、申立人グループが長年にわたり使用してきた「BHP」商標が、本件商標の登録出願前から、取引者及び需要者に熟知されており、また、引用商標の周知著名性等を斟酌すれば、少なくとも広義の混同のおそれが生じるものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 「BHP」の文字及び引用商標の周知性について
(ア)申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
申立人は、1885年に設立された天然資源を取り扱う企業であって、英国のBHP Group Plcと協業し、これらグループ(申立人グループ)の総称(ハウスマーク)として「BHP」を使用している(甲4~甲8)。
そして、申立人グループは2017年6月時点で世界に6万人を超える従業員等を有する大手企業であること(甲7)、2019年度における申立人グループの資源生産量は、鉄鉱石が約248百万トン、銅が約1,220千トン、ニッケルが約80千トンでいずれも世界市場シェアが第3位であること(甲9)、申立人グループの2021年度又は2020年度における市場シェアは、鉄鉱石が15.8%、銅が7.73%で世界3位、ニッケルが3.2%で世界5位であることが認められる(甲10~甲12)。
また、申立人グループに関する事業や業績についての特集記事が経済専門紙、雑誌、インターネット等において掲載され、申立人グループを「BHP」又は「BHPグループ」と表記して掲載されたことが認められる(甲17~甲43)。
(イ)上記(ア)によれば、申立人グループは、「BHP」をハウスマークとする天然資源を生産する会社であって、2019年ないし2021年の鉄鉱石や銅の生産量や世界シェアは上位を占めていることから、我が国の資源業界において、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、「BHP」の文字からなる引用商標が申立人又は申立人グループの業務に係る商品を表示するものとして相当程度知られていることがうかがえる。
しかしながら、申立人グループを特集する上記記事は、鉱業生産に係る分野を中心とした経済的、専門的なものが主であって、これらの記事によって「BHP」の文字に接する取引者、需要者の範囲は限定的といわざるを得ないから、「BHP」の文字及び引用商標が、我が国における一般の需要者の間において、申立人又はその業務に係る商品を表示するものとして、広く認識されているものと認めることはできない。
イ 本件商標と引用商標の類似性の程度について
本件商標は、前記1のとおり、「BHP」の欧文字を標準文字で表してなり、一方、引用商標は、前記2のとおり、いずれも「BHP」の欧文字を書してなるものである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、構成文字のつづりを同一にするものであるから、その類似性の程度は高いものといえる。
ウ 本件商標の指定商品と引用商標が使用される商品との関連性について
申立人グループの業務に係る商品「鉄鉱石、銅、ニッケル等」は、未加工の金属類であって、用途が限定されていない状態で流通し、その後様々な用途に利用される商品であり、一般の需要者とは関係を見いだせない特殊な分野の商品である。
一方、本件商標の指定商品は、電気の配給や電気通信等に用いられるものであって、その需要者も、幅広く一般的な需要者をも含むものであるから、両商品の需要者の範囲は異なるものというべきである。
その他、申立人グループの業務に係る商品と本件商標の指定商品とは、その生産者、販売者、品質等のいずれにおいても明確に異なるものであり、その関連性は低いものである。
なお、申立人は、申立人グループの業務に係る商品は、異業種の各製品機器に使用される素材であり、「素材と製品」という密接な関連性を有する旨主張するが、本件においては、生産部門、販売部門、品質、需要者の範囲等がいずれも異なっていることを総合的に考慮すれば、上記のとおり判断するのが相当である。
エ 独創性について
引用商標は、「BHP」の文字からなるものであり、造語であるとしても、単に欧文字3文字を連ねた構成であり、構成上顕著な特徴を有するものではないから、格別独創性がある語とは認め難いものである。
オ ハウスマークであるかについて
引用商標は、申立人グループの名称の略称として使用されており、申立人のハウスマークともいうべきものである。
カ 本件商標の出所の混同のおそれについて
上記アないしオのとおり、引用商標は、我が国における一般の需要者の間において、申立人又はその業務に係る商品を表示するものとして、広く認識されているものと認めることはできないものであって、本件商標の指定商品と引用商標に係る商品との関連性は低く、独創性が高いとはいえないことからすれば、引用商標が申立人のハウスマークであること及び本件商標と引用商標の類似性の程度が高いことを考慮してもなお、本件商標に接する取引者、需要者が、申立人の業務に係る引用商標を連想又は想起するものということはできない。
そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして、引用商標を連想又は想起することはなく、その商品が他人(申立人グループ)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
キ 小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(2)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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