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商標異議申立

2022-900394

ヘアマスター、マスター

審判番号
2022-900394
法域
商標
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
商願2022-030564
登録番号
6584529
請求日
2022年09月16日
審決日
2023年07月03日
公報発行日
2023年08月25日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】岡田 稔
  • 【異議申立人】山岡 一幸
  • 【異議申立人代理人】井上 浩
審判長/審判官
  • 審判長 大森 友子
  • 審判官 小俣 克巳
  • 審判官 石塚 利恵
分類
T1652.25 -Y (W2635) / T1652.222-Y (W2635)
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第4条第1項第10号、商標法第4条第1項第19号、商標法第4条第1号、商標法第30条第4項、特許法第98条第1項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

登録第6584529号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。

結論

結 論 登録第6584529号商標の商標登録を維持する。

理由

理 由 1 本件商標 本件登録第6584529号商標(以下「本件商標」という。)は、「HAIR MASTER」の文字を標準文字で表してなり、令和4年3月3日に登録出願、第3類、第26類及び第35類に属する別掲1に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同年6月9日に登録査定、同年7月8日に設定登録されたものである。 2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は、別掲2のとおり、黒地に「HAIR MASTER」の欧文字を白抜きしてなる商標(以下「引用商標1」という。)及び「ヘアマスター」の片仮名からなる商標(以下「引用商標2」という。)であり、商品「ヘアパウダー,人工微髪毛」について使用し、需要者の間に広く知られているとするものである(以下、引用商標1及び引用商標2をまとめていうときは「引用商標」という。)。 なお、申立人の主張によっては、同人が引用する商標の特定が困難なところがあるが、当審は、同人の主張の全趣旨及び提出された甲各号証から、同人は上記商標を引用しているものと認めた。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標はその指定商品及び指定役務中、第26類「全指定商品」及び第35類「全指定役務」(以下「申立商品及び役務」という。)について、商標法第4条第1項第10号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第25号証を提出した。 (1)商標法第4条第1項第10号について 申立人は、「YM STORE JAPAN」という店舗名で、「Amazonショップ」にて、2016年2月から「HAIR MASTER」を商品名とするヘアパウダー及び人工微髪毛(以下「申立人商品」という場合がある。)の販売を行い、現在も申立人商品の販売を行っている。その販売実績は発売開始の2016年12月から途切れることなく現在まで販売数を伸ばしており、同年12月(1ヶ月)の販売実績数が25個であったことに対して、2021年(12ヶ月)の販売実績数は13,368個となり、本件商標の登録出願日前(2022年2月まで)のわずか5年あまりで、販売個数累計で55,565個、販売金額累計46,366,155円を売り上げている(甲2)。 また、本件商標の登録出願日前の直近1年間での延べ発注者数は、地域を限定せず全国の都道府県にわたって万遍なく拡がり、11,006人となっている(甲3)。 さらに、累計販売単価は、発売当初の1,620円から販売個数が伸びる毎に抑えていくという第1の戦略を採り、2018年6月には1,000円、2019年4月には900円を切っている。このような価格設定はヘアパウダーの生産コストが量の増加幅に比較して鈍いことに基づいている。 この第1の戦略が需要者(顧客)による買い求め易さにつながり、販売個数は2018年末からは毎月1,000個程度で安定しながら2021年末から2022年にかけて増加傾向にある(甲2)。 上記商品の主たる需要者は、薄毛に悩みながら恥ずかしさもあってなかなか積極的に商品を買い求めることができない中高年男性層であるため、顕在化するマーケットとしては小さいものであるものの、発売開始からの短期間で需要者(顧客)を獲得し、さらに年々増加させている。 「YM STORE JAPAN」の販売商品は当初から申立人商品のみであり、商品のバリエーションはブラック(甲4、甲9、甲13)とダークブラウン(甲5、甲13)の色違いの2種類で、現在も含めてその他の商品の取り扱いはない。 なお、これらの2つの商品の「Amazonショップ」での取り扱い開始日は2016年11月11日である旨の表記がある(甲4、甲5)。 申立人商品は、その特性から需要者が対面の店舗で購入するよりも、インターネットで購入する場合が主流であると考えられるが、「Amazonショップ」において商標「HAIR MASTER」及びその称呼である「ヘアマスター」を検索すると最上位にヒットするのが申立人商品である(甲6~甲9)。 また、申立人商品は「Amazonおすすめ」に指定されていた時期がある(甲9)。この表示は「Amazonの説明によると、Amazonおすすめの対象商品は「すぐに発送ができて、評価が高く、お求めやすい価格の商品」のようです。商品の評価が良い、価格が安い、即発送可能(FBA)な商品であるとAmazon側の判断(アルゴリズム)で決められている」(甲10)とのことである。この「Amazonおすすめ」や「ベストセラー」という表示もこれまで複数回にわたって経験があり、このことからも申立人商品の需要者からの評価が高いことが理解できる。 その他の「楽天ショップ」や「Yahooショップ」でも、検索時にはPR(広告)商品を除いて増毛パウダー商品に限定すれば最上位にヒットしている(甲11、甲12)。 さらに、インターネット検索においても商標「HAIR MASTER」の称呼である「ヘアマスター」を検索すると最上位にヒットするのが申立人商品である(甲13)。 このようにインターネットショッピングサイトやインターネット検索において最上位にヒットする要因は、インターネットショッピングサイトでの評価・評判の高さである。具体的には、「Amazonショップ」におけるカスタマーレビューのページに示されたヘアマスターダークブラウンの星の数は、5つが43%、4つが32%、3つが14%、2つと1つがそれぞれ6%となっており高い評価を得ている(甲14)。 そのうえ、「Amazonショップ」における申立人の評価管理のページでは、2022年10月7日付けではあるが、星の評価は平均4.7となっており、顧客満足度が非常に高いことが明白である(甲15)。 このような高評価の要因として挙げられるのは、申立人商品は専用の容器にヘアパウダーを封入して販売するのではなく、専用容器を持たず、最初から詰め替え用の容器に他社商品の3倍程度の量のヘアパウダーを封入して販売し、買い替え回数と送料も減らすことを可能とする第2の戦略を採っている点である。 上記した第2の戦略を採ることで、需要者に割安感と環境配慮感を同時に与えることが可能であり、微量で高額、そして高コストで立派な容器に封入されたヘアパウダーに比べて、品質や効果に遜色なく同様に使えることで圧倒的な支持を得ているのである。 次に、2022年6月14日付けであるが、「Amazonショップ」における「増毛ケア用品の売れ筋ランキング」で申立人のヘアマスターダークブラウンが第8位にランクされている(甲16)。しかもシャンプーやヘアコンディショナー類を除くと、他社商品に続いて第4位である。なお、このランキングで申立人商品よりも上位にランクされている他社商品は専用容器にヘアパウダーが30g封入されて3,000円前後の価格であり、前述の第2の戦略を引き立たせていることが理解できる。 また、申立人と何ら関係のない第三者によるインターネット記事「薄毛隠しにおすすめの増毛パウダー10選」(記事作成日 2020.12.20)に申立人商品が「おすすめ2」として取り上げられている。第三者的な評価事業者によるおすすめ記事であることから需要者にとっては公平性と信頼性を担保するものであり、説得力がある。しかも、申立人商品はその特性から前述のとおり需要者を限定するものであるため、その限られた需要者内での高い評価・評判はより大きな影響力を需要者に与え、商品の周知性にも大きく反映されるものと考えられる(甲17)。 さらに、別の第三者的な評価事業者によるインターネット記事「【2022年】増毛パウダーのおすすめ人気ランキング」(2022年7月14日更新)に申立人商品が1位に輝いている(甲18)。当該評価事業者の株式会社マイベストは、様々なジャンルの商品やサービスを専門家監修の下、実際にスタッフが調査・検証しランキング化し、大手インターネットショッピング(EC)サイトと接続して価格比較サービスを提供することを特徴としている。 このマイベストにおけるランキングは専門家が監修することで評価の公平性と信頼性がより強く担保され、しかも最安値に関する情報も得られるため需要者にとって必須の情報源になっていると考えるのが合理的である。そして、申立人商品も「たっぷり使えるお得な詰め替え用」、「リーズナブル」及び「コスパ重視の方におすすめ」等、前述の第1の戦略と第2の戦略の相乗効果によって高い評価を得て、需要者の信頼を獲得しているものと考えられる。 以上述べたとおり、申立人は大手インターネットショッピングサイトでのみ商品を販売しているものの、申立人による第1及び第2の戦略の相乗効果が全国の需要者に訴求し、購入者評価が高く、ショッピングサイト内でもおすすめ商品として表示されている。さらに、専門家を含む第三者による高い評価も得ることで、益々需要者から高い信頼性(信用)を得ており、これが商品の求心力を高めて商標の周知性も高めているといえる。 したがって、本件商標(決定注:引用商標の誤記と認める。)は、申立人商品の商標として、需要者の間に広く知られているので、本件商標は、商標法第4条第1号第10号に該当するものである。 (2)商標法第4条第1項第19号について 本件商標権者が代表者を務める有限会社アシスコーポレーション(以下「アシス社」という。)が運営する「増毛ショップヘアーマスター」(「楽天ショップ」)のトップページには、「増毛ショップヘアーマスター」と「Hair Master」の表示がある(甲19)。また、会社概要(甲20)には運営会社としてアシス社の表示があり、その代表者として本件商標権者の名前がある。 アシス社が運営する「増毛ショップヘアーマスター」における商品は「FULL HAIR」「フルヘアー」である(甲21)。また、この商品は専用容器に封入された35gのヘアパウダーであり、価格は3本セットで9,219円である(甲21)。 ここで、本件商標権者は本件商標の登録に先立ち、「へアマスター」の片仮名からなる商標(登録第6512854号、以下「本件関連商標」という。)の登録を行っており、本件関連商標についても商標権者となっている(甲22、甲23)。 そして、2022年6月10日付けで申立人に対して書留内容正面郵便物として通知書を郵送し、本件関連商標の商標権について専用使用権を与えられたアシス社からの請求事項として、販売商品につき販売及び発送の中止等を求めている(甲24)。 しかし、この本件関連商標はアシス社が運営する増毛ショップの名称(「増毛ショップヘアーマスター」)と同一ではない。 本件商標権者は「ヘアーマスター」ではなく「ヘアマスター」を商標登録し、申立人に対し通知書(甲24)にて「2 貴殿は、上記の販売商品において、その商品名及び商品の包装に「ヘアマスター」と同一の表示やこれに類似する「HAIR MASTER」の表示を付しています。」と主張している(申立人注:甲第24号証では「HIAR MASTER」と表記されていたが誤記と認められるので正しいつづりに修正。)。 本来であれば本件商標権者は「ヘアーマスター」を商標登録すべきであるところ、「ヘアマスター」を登録し、本件関連商標の商標公報の発行日(令和4年2月22日)直後で、本件商標の登録査定時期に合わせて申立人に通知書を郵送している(甲22、甲23)。 このことから、自己として使用意思がないにもかかわらず、他人(申立人)が使用して日本国内で周知となり信用が化体した商標を出願、登録し、その他人による商標の使用を阻止することで損害を与えるものである。 しかも、アシス社は、本件関連商標の専用使用権者として通知書を申立人に郵送するが、本件関連商標の商標登録原簿(甲23)にも商標権に対する専用使用権の設定登録はなく、商標登録原簿への設定登録を効力発生要件とする専用使用権の効力の発生は認められるものではない(商標法第30条第4項で準用する特許法第98条第1項第2号)。 なお、本件商標の商標登録原簿(甲25)にも商標権に対する専用使用権の設定登録はなく、本件商標に係る商標権についての専用使用権の効力の発生も認められない。 したがって、本件商標は、申立人が大手インターネットショッピングサイト上で運営する店舗「YM STORE JAPAN」の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって取得されたものであるから、取り消されるべきである。 4 当審の判断 (1)引用商標の周知性について ア 申立人の提出した甲各号証及び同人の主張によれば、以下のとおりである。 (ア)申立人は、インターネットショッピングサイト「Amazon」(以下「Amazon」という。)において、「YM STORE JAPAN」と称する店舗名で、「ヘアマスター ブラック」及び「ヘアマスター ダークブラウン」と称する「ヘアパウダー,人工微髪毛」(申立人商品)を販売しており、Amazonにおける申立人商品の取り扱い開始日として、「2016/11/11」の記載がある(申立人の主張、甲4、甲5、甲9)。 また、Amazonにおける「YM STORE JAPAN」に係る評価管理のページにおいて、2022年10月7日の時点で、評価の平均は4.7(最高は5)である(甲15)。 (イ)申立人商品は、インターネットショッピングサイト「楽天市場」及び「YAHOO!JAPANショッピング」(以下、それぞれ「楽天市場」、「YAHOO!JAPANショッピング」という。)においても販売されている(申立人の主張、甲11、甲12)。 (ウ)Amazon、楽天市場、YAHOO!JAPANショッピング、及びインターネット検索エンジン「Google」において、「ヘアマスター」又は「HAIR MASTER」の文字を検索すると、申立人商品が上位に表示される(甲6~甲9、甲11~甲13)。 (エ)「HAIR MASTER販売実績(2016年11月~2022年2月)」とする表(甲2)には、2016年11月ないし2022年2月までの販売実績として、販売個数累計は「55,565」、販売金額累計は「46,366,155」と記載されている。 なお、これらの販売実績を裏付ける客観的な証拠の提出はない。 (オ)「Hair Master のべ発注者数 期間:2021年3月~2022年2月」とする表(甲3)には、「北海道・東北地方」は「1,278」、「関東地方」は「4,090」、「中部地方」は「1,579」、「関西地方」は「1,901」、「中国地方」は「544」、「四国地方」は「324」、「九州地方」は「1,290」及び「合計 11,006」の記載がある。 なお、これらの発注者数を裏付ける客観的な証拠の提出はない。 (カ)「KASHI KARI」と称するウェブサイトにおいて、「薄毛隠しにおすすめの増毛パウダー10選」(記事作成日:2020.12.20)の見出しの下、「おすすめ2ヘアマスター ブラック」として申立人商品が掲載されている(甲17)。 イ 判断 上記アによれば、申立人は、Amazon、楽天市場及びYAHOO!JAPANショッピングにおいて、「ヘアマスター ブラック」及び「ヘアマスター ブラウン」と称する「ヘアパウダー,人工微髪毛」(申立人商品)を2016年11月頃から2022年2月まで継続して販売し、該商品はAmazonにおいて、一定の評価を得ていることは認められる。 しかしながら、上記ア(エ)及び(オ)における販売個数累計、販売金額累計及び発注者数の数値を裏付ける客観的な資料の提出がないことに加え、申立人商品を取り扱う業界の市場規模、申立人商品の市場占有率(シェア)などの証拠の提出及び主張がないことからすれば、その多寡を確認することができない。 また、インターネットショッピングサイト及びインターネット検索エンジンにおいて、「ヘアマスター」又は「HAIR MASTER」の文字の検索結果として、上位に申立人商品が表示され、申立人商品がAmazonにおいて一定の評価を得ているとしても、これらが引用商標の周知性に直ちに結びつくものではない。 そうすると、申立人の提出した証拠及び同人の主張によっては、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人又は申立人商品を表示するものとして、我が国の需要者に認識されていたとは認めることはできない。 (2)商標法第4条第1項第10号該当性について 上記(1)イのとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人及び申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間において、広く認識されていたと認めることはできない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号を適用するための要件を欠くものといわざるを得ず、本件商標と引用商標が類似し、かつ、申立商品及び役務と申立人商品が同一又は類似するとしても、同号に該当しない。 (3)商標法第4条第1項第19号該当性について 商標法第4条第1項第19号は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもって使用するもの」と規定している。 しかし、上記(1)イのとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人及び申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間において、広く認識されていたと認めることはできない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号の要件を欠くものであるから、本件商標と引用商標が類似し、かつ、申立商品及び役務と申立人商品が同一又は類似するとしても、不正の目的について検討するまでもなく、同号に該当しない。 (4)むすび 以上のとおり、本件商標は、その指定商品及び指定役務中、申立商品及び役務について、商標法第4条第1項第10号及び同項第19号に該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持する。 よって、結論のとおり決定する。

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