商標異議申立
2022-900387
ユイシジコー、ユイニジコー、ベシキュアセラピューティクス、ベシキュアセラピューティックス、ユイジ、ユイニ、ジコー、ベシキュア、ベジキュア、セラピューティクス、セラピューティックス
- 審判番号
- 2022-900387
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2021-152580
- 登録番号
- 6584036
- 請求日
- 2022年09月13日
- 審決日
- 2023年04月19日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】蘇州唯思爾康科技有限公司
- 【権利者代理人】大上 寛
- 【異議申立人】アステラス製薬 株式会社
- 【異議申立人代理人】達野 大輔
- 【異議申立人代理人】竹中 陽輔
- 【異議申立人代理人】中山 真理子
- 【異議申立人代理人】松岡 龍生
- 審判長/審判官
- 審判長 旦 克昌
- 審判官 馬場 秀敏
- 審判官 茂木 祐輔
- 分類
- T1652.261-Y (WW0535) / T1652.262-Y (WW0535) / T1652.263-Y (WW0535) / T1652.271-Y (WW0535)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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登録第6584036号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6584036号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6584036号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、第5類、第10類、第35類、第42類及び第44類に属する別掲2に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、令和3年12月7日に登録出願、同4年6月2日に登録査定され、同年7月7日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において引用する登録第4438754号商標(以下「引用商標」という。)は、「Vesicare」の欧文字を横書きしてなり、平成11年12月29日に登録出願、第5類「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,耳帯」を指定商品として、同12年12月8日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第34号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標と引用商標との対比
ア 本件商標を構成する四角図形内の「唯思爾康」は中国語と思われるところ、日本では特定の観念を生じない造語と認識される。中央の「VESICURE」の文字部分は、辞書等にその意味合が掲載されていないため、特定の観念を生じない造語といえる。「Therapeutics」の文字部分は「治療学」の意味を有する語である。
イ そうすると、本件商標の構成においては、「唯思爾康」の文字を内包する四角図形、「VESICURE」の文字部分及び「Therapeutics」の文字部分がそれぞれ視覚上分離して看取されるものであって、かつ、観念上のつながりもないことから、これらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとはいい難い。そして、四角図形は一種の社印を想起させる装飾的なワンポイント図形として認識され、「Therapeutics」の文字部分も、上記意味合いからすれば、第5類の指定商品との関係において、自他商品の出所識別標識として強い印象を与える部分とはいい難い。
したがって、本件商標は、中央に大きく書された「VESICURE」の文字部分が、取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるといえるため、当該「VESICURE」のみを要部として抽出し、他人の商標と比較して、商標の類否を判断することも許されるというべきである。
ウ ここで、「VESICURE」の文字部分は、2文字目と8文字目の「E」の欧文字の縦線が省略され、4文字目の「I」が点線で表され、7文字目の「R」は上部の縦線が省略されているという図案化が施されている。しかしながら、近年は商品の広告、宣伝等において、商標の全部若しくは一部を図案化して、独自性をアピールする手法は一般に行われている(甲3~甲9)から、「VESICURE」の文字部分は、構成全体としてみれば、欧文字を表したものと容易に理解できる。
エ よって、本件商標の要部は「VESICURE」の文字部分であり、その構成部分に相応して「ベシキュア」又は「ベジキュア」の称呼が生じる。また、特定の観念は生じない。
オ 一方、引用商標は、申立人のニュースリリース、ウェブ記事及び一般社団法人・くすりの適正使用協議会が運営する医療用医薬品の情報サイト等において、「Vesicare」の欧文字とともに「ベシケア」という製品名で紹介され、実際に同名称で販売されているため(甲10~甲12)、「ベシケア」の称呼が生じる。また、「Vesicare」は辞書等にその意味合いが掲載されていないため、特定の観念を生じない造語といえる。
カ 以上を前提に、外観、称呼及び観念を対比しつつ、本件商標の要部である「VESICURE」と引用商標「Vesicare」の類似性について述べる。
(ア)外観を対比すると、図案化の有無、2文字目以降が大文字か小文字かの差異及び6文字目の綴りが「U」か「a」かの差異が認められる。この点、欧文字が様々な手法で図案化されて表記される事例が多く見られ(甲3~甲9)、商標の使用においては、商標の構成文字を同一の称呼が生じる範囲内で、大文字と小文字を使い分けたり、図案化したりすることが一般的に行われている取引の実情があることに鑑みれば、上記差異が、看者に対し、出所識別標識としての外親上の顕著な差異として強い印象を与えるとはいえない。そして、両者は、全8文字のうち7文字の構成文字を同一にし、かつ、前半の5文字目までのつづりが共通することから、時と処を異にして離隔的に観察した場合、外観上近似した印象を与えるものである。よって、両者は外観において紛れるおそれがある。
(イ)称呼を対比すると、「ベシキュア」と「ベシケア」では、ともに4音という音構成の中で、称呼の識別上、印象の強い語頭における「ベシ」、語尾における「ア」の音を共通にするものであり、差異は第3音における「キュ」と「ケ」の音のみである。当該差異音は、聴者への印象が弱い中間に位置するだけでなく、アクセントが置かれ強く発音される語頭音「ベシ」の直後の音として弱く発音され、かつ、語尾の「ア」に吸収されるように発音されるため、当該差異音が称呼全体に与える影響は小さい。さらに、当該差異音は、その子音の始まりの「k」の音が共通する。そうすると、それぞれを一連に称呼するときは、両称呼はその語調、語感が近似し、互いに相紛れるおそれがある。
(ウ)観念を対比すると、「VESICURE」と「Vesicare」はいずれも特定の観念を生じない造語と評価することができるため、両者は観念上、ただちに紛らわしいとはいえない。しかしながら、「cure」が「治療」等を意味する英語として、「care」が「世話、介護」等を意味する英語として我が国でも馴染みがあり、医療分野で使用される場合には、いずれの語も「病気から派生する問題を改善する」という根本的なイメージは共通する(甲13~甲15)。また、両語とも薬剤名の接尾語としてありふれたものである(甲16~甲22)。そうすると、本件商標の要部と引用商標をその指定商品又は指定役務に使用するときは、顕著性の乏しい接尾語を除いた語頭語「VESI(Vesi)」が商標の基幹部分として観念・連想され、これらに接する取引者、需要者は、「VESI(Vesi)から始まる、病気から派生する問題を改善する薬剤(又はこれに関連するサービス)」といった共通した意味合いを連想する。
よって、両商標は、観念において相紛らわしいものである。
(エ)以上に述べたように、本件商標と引用商標とは、外観及び称呼が類似し、全体から連想される観念においても類似性が高いため、看者の印象・記憶に共通した印象を与えるものである。したがって、外観、称呼、観念によって取引者、需要者に与える影響、記憶、連想等を総合的に勘案すれば、両商標は商品・役務の出所において混同を生ずるおそれのある類似の商標である。
(2)商品及び役務の類否
本件商標の指定商品・指定役務中、第5類の指定商品「錠剤,薬剤(人用のもの),鎮痛剤,中国伝統の薬草,薬剤用カプセル,薬剤(医薬用のもの),医療用化学剤,食餌療法用食品・飲料・薬剤,医療用栄養補助剤」及び第35類の指定役務「薬剤及び医療補助品の小売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,薬剤及び医療補助品の卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(以下「取消対象商品役務」という。)は、引用商標の第5類の指定商品「薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,耳帯」に類似する。
(3)小括
本件商標は、引用商標に類似し、かつ、その指定商品及び指定役務中、取消対象商品役務は、引用商標の指定商品に類似するから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであり、同法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきものである。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)引用商標の周知著名性について
ア 引用商標「Vesicare」(ベシケア)は、申立人の商品「過活動膀胱治療剤」(一般名:コハク酸ソリフェナシン)に付されて使用されており、当該商品は2006年6月8日に販売が開始された。その日本における売上高は、2011年は300億円、2015年から2017年にかけては260億円前後を推移しており(甲23、甲24)、グローバルの売上高をみれば、2008年に714億円、2012年には970億円、2018年には1000億円に達している(甲25~甲27)。
イ また、市場占有率については、2008年に、日本における過活動膀胱治療剤のシェア1位を達成し、2012年においてもシェア1位を維持している(甲25、甲26)。さらに、日経メディカルが日経メディカルOnlineの医師会員を対象に行った調査によれば、2019年及び2021年において、過活動膀胱治療剤のうち最も処方頻度の高い薬剤は「Vesicare」(ベシケア)であることがわかる(甲28、甲29)。
ウ これは、申立人が当該商品を含む自社商品について、積極的かつ継続的に宣伝広告を行った成果であるともいえる。実際に、商品別の宣伝費用は開示されていないものの、日経広告研究所が発表した企業別広告宣伝費ランキングによれば、申立人の2011年度の広告宣伝費は約260億円で国内の全企業中第7位、2012年度は約230億円で第10位となっている(甲30、甲31)。
エ このように、申立人の商品は売上が大きく、過活動膀胱治療剤の分野においてシェア(市場占有率)1位を獲得しており、かつ、日本経済新聞のような全国紙において継続的にその名称が取り扱われていることを鑑みれば、引用商標は、本件商標の出願時及び登録査定時のいずれの時点においても、取引者・需要者の間で周知・著名であったものと考えられる。
(2)出所混同の可能性について
ア 本件商標の要部と引用商標は、上記1(1)のとおり、外観、称呼及び観念において近似した印象を与えるため、商品・役務の出所において混同を生ずるおそれのあるほど類似性が高いものである。
イ この点、医療用医薬品を取り扱う分野の取引者、需要者は医薬の知識を有する専門家であり、高い注意力をもっていることから、本件においては出所の混合が生じないとの反諭も考えられる。しかしながら、引用商標は過活動膀胱治療剤の分野で著名性を獲得していると考えられる点、本件商標の要部と引用商標は類似性の度合いが極めて高い点を考慮すれば、たとえ注意力の高い取引者、需要者であったとしても、本件商標に係る商品が引用商標のシリーズ商品であると誤認したり、本件商標を使用した薬剤を申立人と資本関係あるいは業務提携関係にある会社の業務に係る商品と混同するおそれがある。むしろ、医療用医薬品は、ヒトの命にかかわる商品であるため、絶対に混同を生じさせてはならないものである。そうとすれば、医療の現場において、これだけ類似性が高く、これだけ混同のおそれの強い二つの商標を併存させておくべきではない。
ウ 以上より、本件商標を、取消対象商品役務に使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、当該商品が申立人の取り扱う商品・役務であるかの如く誤認し、その出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
エ 裁判例・審決例について
なお、本件商標の要部及び引用商標の語頭語「VESI(Vesi)」が商標の基幹部分として観念・連想されるという申立人の主張については、「ALINA(アリナ)」を商標の基幹部分と認定した判決(甲32)、「メバロ」、「MEVALO」をそれぞれ看者の注意を惹く特徴的な部分と認定した判決(甲33)、「カプト」、「CAPTO」をそれぞれ商標の基幹部分と認定した審決(甲34)が存在することからも妥当である。
(3)小括
引用商標は、本件商標の出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品「過活動膀胱治療剤」を表示するものとして、取引者及び需要者の間に広く認識されている著名な商標であり、引用商標と類似性の極めて高い本件商標を、取消対象商品役務について使用をするときには、その出所につき混同を生じさせるおそれがあるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであり、同法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきものである。
第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標について
本件商標は、別掲1に記載のとおり、特殊な字体の漢字とおぼしき4文字を白抜きで表した赤色長方形図形(以下「図形部分」という。)と、その右側には、一見して判読し難いものの、「VESICURE」とも認識できる欧文字を、ひときわ大きく青文字で横書きし、その右下には、小さく青文字で「Therapeutics」の欧文字を横書きして配してなるものである。なお、上記のとおり、「VESICURE」の文字は一見して判読し難いものの、容易に判読可能な文字はすべて欧文字で構成されていること、判読しやすい「R」の文字についても軽微な図案化が施されていること、2文字目及び8文字目の形状が欧文字の「E」の形状と、4文字目の形状が欧文字の「I」の形状と、それぞれ構成において共通性があること、子音と母音の文字の一般的な配列パターンなどからすれば、上記「VESICURE」の欧文字を表したものと認識できるものである。
そして、図形部分に内包されている文字は、我が国で一般に使用されている漢字とはいえないものであり、また、図形部分全体としても印判の一種と認識され得るものであるから、図形部分から特定の称呼、観念は生じないものである。また、「Therapeutics」の文字部分は、「治療学[術]」の意味を有する英語(「ジーニアス英和辞典第5版」株式会社小学館発行。以下「ジーニアス」という。)であって、取消対象商品役務との関係において、自他商品又は自他役務の識別標識としての機能が強いとはいい難い。
他方、本件商標の大部分を占めるほど大きく表された「VESICURE」の文字は、辞書等に載録がなく、また、特定の語義を有するものとして使用されている実情もないから、特定の意味合いを有しない造語の一種と認識されるものである。
以上を踏まえると、本件商標を構成する図形部分、「VESICURE」の文字部分、「Therapeutics」の文字部分は、視覚上分離して看取されるうえ、観念上の繋がりもないものである。
そうすると、本件商標の構成中、顕著に表された「VESICURE」の文字部分が、自他商品又は自他役務の識別標識としての機能を強く発揮する部分といえるから、当該文字部分を要部として抽出し、他人の商標と比較し、その類否を判断することが許されるというべきである。そして、当該文字について、特定の意味を有さない欧文字は、ローマ字風の読み又は我が国において親しまれた英語風の読みに倣って称呼されるのが一般的といえることから、本件商標は「ベジキュア」又は「ベシキュア」の称呼が生じる。
また、本件商標は、特定の観念を生じないものであるが、「VESICURE」の文字を構成する「CURE」の文字部分は、「治療する、治す」等の意味を有する英語(ジーニアス)として、我が国において広く一般に慣れ親しまれたものであるから、本件商標が「VESI」の文字と「治療する、治す」等の意味を有する英語である「CURE」の文字からなるもの程度の漠然とした印象は想起し得るものである。
(2)引用商標について
引用商標は、上記第2のとおり、「Vesicare」の欧文字を横書きしてなるところ、当該文字は、辞書等に載録されている成語ではなく、また、特定の語義を有するものとして使用されている実情もないから、特定の意味合いを有しない造語の一種と認識されるものである。
そして、特定の意味を有さない欧文字は、ローマ字風の読み又は我が国において親しまれた英語風の読みに倣って称呼されるのが一般的といえることから、引用商標は「ベジケア」又は「ベシケア」の称呼が生じる。
また、引用商標は、特定の観念を生じないものであるが、構成中の「care」の文字部分は、「世話、介護、手入れ、ケア」等の意味を有する英語(ジーニアス)として、我が国において広く一般に慣れ親しまれたものであるから、引用商標が「Vesi」の文字と「世話、介護、手入れ、ケア」等の意味を有する英語である「care」の文字からなるもの程度の漠然とした印象は想起し得るものである。
(3)本件商標と引用商標の類否について
ア 外観について
本件商標の要部である「VESICURE」の文字部分は、上記(1)のとおり、一見して判読し難いほど特徴的な字体で構成されているのに対し、引用商標は一般的な書体で構成されており、両者は明らかに構成態様が異なるものであって、判然と区別できるものである。加えて、両者を構成する文字にしても、本件商標の要部が、上記(1)のとおり英語の「CURE」を構成中に有しているのに対し、引用商標は、上記(2)のとおり英語の「care」を構成中に有しており、いずれも我が国において広く慣れ親しまれたものであるから、それぞれ異なる語によって構成されたものであることは明確に看取できるため、両者が外観上紛れるおそれはない。
イ 称呼について
本件商標の要部から生じる「ベジキュア」又は「ベシキュア」の称呼と、引用商標から生じる「ベジケア」又は「ベシケア」の称呼は、第3音の「キュ」の音と「ケ」の音が相違するところ、両音はともにカ行の音ではあるものの、それぞれの母音である「エ」の音と「ウ」の音は口の開き具合や舌の置き方が異なり、異なる音質として発音されるものであることに加え、カ行が破裂音で強く発音されるものであるから、4音という短い音構成において、その差異音は明瞭に聴取されるというべきである。してみれば、両称呼は、紛れるおそれはなく、十分に聴別可能である。
ウ 観念について
本件商標の要部と引用商標は、ともに特定の観念は生じないものではあるが、上記(1)及び(2)のとおり、「VESI(Vesi)」の文字と、「治療する、治す」等の意味を有する「CURE」の文字又は「世話、介護、手入れ、ケア」等の意味を有する「care」の文字から構成されている程度の漠然とした印象を想起し得るものであるから、観念上類似するとはいえない。
なお、申立人は、「cure」と「care」の語は、ともに「病気から派生する問題を改善する」という意味合いを想起させるから観念において類似する旨主張するが、上記(1)及び(2)のとおり、いずれの語も我が国において広く一般に慣れ親しまれた英語であるから、医療分野において一定程度の関連性があるとしても、別異の語であることは明確かつ容易に理解されるものである。
エ 上記アないしウよりすると、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼、観念のいずれにおいても紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
なお、仮に取引者、需要者が、例えば本件商標の4文字目を、欧文字の「I」ではなく何らかの記号として認識した場合には、本件商標と引用商標が非類似であることは明らかである。
その他、本件商標と引用商標とが類似するというべき特段の事情は見いだせない。
したがって、本件商標と引用商標とは非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
(4)小括
上記(3)のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標であるから、本件商標の指定商品及び指定役務と引用商標の指定商品が類似するとしても、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)引用商標の周知著名性について
ア 申立人主張の主張及び提出された証拠によれば、以下のとおりである。
(ア)申立人は、過活動膀胱治療薬に「ベシケア」又は「Vesicare(VESIcare)」の名称(以下、これらをまとめていうときは、「使用標章」という。)を付し(甲10、甲11、甲23~甲29)、2006年6月に販売を開始したとされる(以下、使用標章を使用した過活動膀胱治療薬を「申立人商品」という。)。
(イ)日本の売上高は、2011年度はおよそ300億円が達成見込みと紹介されていた(甲23)とともに、2016年3月期は265億円である(甲24)、また、世界の売上高は、2008年に714億円、2012年には970億円、2018年には1000億円である(甲25~甲27)。さらに、市場占有率については、2008年に、日本における過活動膀胱治療剤のシェア1位となり、2012年においても同シェア1位となっている(甲25、甲26)。
(ウ)第24号証によれば、2016年3月期における申立人の「疾患領域別の事業概況」(1頁、43頁、44頁)のうち、「泌尿器疾患および腎疾患領域」として、「ベシケア」が紹介され、その売上高は、1,356億円、日本での売上高は265億円、約80の国と地域で販売されている一方で、ほかに、「ベタニス/ミラべトリック/ベットミガ」及び「ハルナール/オムニック」も紹介されており、前者の売上高は817億円、日本での売上高は212億円、約50の国と地域で販売、後者の売上高は534億円、日本での売上高は127億円、約100の国と地域で販売されている。
(エ)第24号証によれば、2016年3月期における申立人の「地域別主要製品の売上高」(1頁、51頁)において、日本の売上高をみると、全21の銘柄中、「ベシケア」より高い銘柄は、6銘柄ある。
(オ)日経メディカルが日経メディカルOnlineの医師会員を対象に行った調査によれば、過活動膀胱治療剤のうち最も処方頻度の高い薬剤は、2019年は、1位が「ベシケア」で37.5%、2位が「ベタニス」で23%、3位が14.1%、4位が12%であり、2021年は、1位が「ベシケア」で34.7%、2位が「ベタニス」で28.5%、3位が11.2%となっている(甲28、甲29)。
(カ)日経広告研究所が発表した企業別広告宣伝費ランキングによれば、申立人の2011年度の広告宣伝費は約260億円で国内の全企業中第7位、2012年度は約230億円で第10位であるが、企業全体のものであって、個別の商品に対する宣伝費用は記載されていない(甲30、甲31)。
イ 上記アよりすると、申立人商品の売り上げやシェアは過活動膀胱治療薬の市場において1位となる時期があり、使用商標が同治療薬の分野において一定程度認知されていることはうかがえる。
しかしながら、上記ア(ウ)からすると、申立人の疾患領域別の事業概況のうち、「泌尿器疾患および腎疾患領域」において申立人商品が突出して高い売上高や販売地域を有しているといえるような状況ではなく、また、上記ア(エ)からすると、申立人の21の銘柄中、日本での売上高は7位である。さらに、上記(オ)からすると、日経メディカルOnlineの医師会員を対象に行った、過活動膀胱治療剤のうち最も処方頻度の高い薬剤の調査結果によれば、2019年と2021年ともに申立人商品が1位であるものの、2位以下と比較して突出して高い割合といえないばかりか、上記2年間で1位と2位の差は縮小している。これらに加え、申立人商品に対する宣伝広告の費用は不明である。
以上の状況よりすれば、使用標章は、過活動膀胱治療薬の分野において、ある程度知られているとしても、同治療薬の分野を超えて、引用商標の指定商品の分野における取引者、需要者の間に広く認識されていると認めることはできない。加えて、使用標章は、多くが片仮名の「ベシケア」のみの表示であり(甲23~甲29)、引用商標と異なる構成態様である。
したがって、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたということはできない。
(2)類似性の程度について
本件商標と引用商標は、上記1(3)のとおり、非類似の商標であるから、類似性の程度は低いものである。
(3)出所の混同のおそれについて
上記(1)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたとはいえず、また、上記(2)のとおり、本件商標と引用商標は、類似性の程度は低いものである。
そうすると、本件商標を取消対象商品役務に使用しても、取引者、需要者において、申立人の取り扱う商品及び役務を連想、想起するということはできず、よって、その商品及び役務が引用商標権者と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品及び役務であるかのように、商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれがある商標ということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反してされたものではなく、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-900387