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商標異議申立

2022-900374

ボルドーウエーブ、ウエーブ

審判番号
2022-900374
法域
商標
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
商願2021-159359
登録番号
6576001
請求日
2022年08月30日
審決日
2023年09月01日
公報発行日
2023年11月24日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】花王株式会社
  • 【異議申立人】アンスティテュ ナショナル ドゥ ロリジン エ ドゥ ラ カリテ
  • 【異議申立人代理人】弁理士法人大島・西村・宮永商標特許事務所
  • 【異議申立人】コンセイユ アンテルプロフェッショネル デュ ヴァン ドゥ ボルドー
  • 【異議申立人代理人】弁理士法人大島・西村・宮永商標特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 高野 和行
  • 審判官 小俣 克巳
  • 審判官 石塚 利恵
分類
T1651.22 -Z (W03)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
商標法4条1項7号商標法43条の3第2項
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第4条第1項第7号
データ出所
審決公報(XML)

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登録第6576001号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。

結論

結 論 登録第6576001号商標の商標登録を取り消す。

理由

理 由 第1 本件商標 本件登録第6576001号商標(以下「本件商標」という。)は、「ボルドー ウェーブ」の片仮名及び「BORDEAUX WAVE」の欧文字を上下2段に表してなり、令和3年12月22日に登録出願、第3類「せっけん類,化粧品,香料,薫料」を指定商品として、同4年6月2日に登録査定、同月22日に設定登録されたものである。 第2 登録異議の申立ての理由 登録異議申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当し、同法第43条の2第1号により取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第32号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 原産地統制名称「BORDEAUX」(ボルドー)について 登録異議申立人の一である「アンスティテュ ナショナル ドゥ ロリジンエ ドゥ ラ カリテ」(以下「申立人1」という。)は、日本語で「国立原産地・品質研究所」を意味する。申立人1は、2007年1月のフランスの法改正により、1935年に設立されたフランスの公法人である「アンスティテュ ナショナル デ ザペラシオン ドリジン」(日本語で「フランス国立原産地品質研究所」を意味する。)より組織変更されたものである。申立人1は、その設立以降、フランス国内及び国外においてフランスにおける原産地統制呼称の保護をその活動の大きな柱の一つとして取り組んでいる。 他方の登録異議申立人「コンセイユ アンテルプロフェッショネル デュ ヴァン ドゥ ボルドー」(以下「申立人2」という。また、申立人1と申立人2をあわせて「申立人」という。)は、日本語で「ボルドーワイン委員会」を意味し、フランス国ボルドー産のワインの保護及び育成を目的の一つとして設立された、ボルドーワインの生産者と輸出業者からなるフランス法人である。申立人2は、過去においても、原産地統制名称「BORDEAUX」に化体した高い評判・信用・名声を保護するために、「BORDEAUX」の文字を含み、当該原産地統制名称の有する高い名声・信用・評判を稀釈化する商標に対して商標登録異議の申し立て等を行うなど、日本国においても多大なる努力を尽くしている。 「BORDEAUX」(ボルドー)は、フランス南西部のジロンド県の県都で、ガロンヌ川に沿う港市であり、葡萄酒、ワインの集散地又は砂糖、ブランデー、綿織物などを産出する都市として世界的に有名である(甲2、甲3)。この「BORDEAUX」(ボルドー)との地名は、フランスの原産地統制名称法(A.O.C.法)により、原産地統制名称として定められており、厳格にその使用が統制されている。 原産地表示は、需要者・取引者にとって、商品の選択に際して極めて重大な意味を有することは言うまでもなく、パリ条約における原産地等の虚偽表示の取締に関する規定、及び誤認を生じさせる原産地表示の防止に関するマドリッド協定の精神は、最大限に尊重されなければならない。 一般に、酒類、食品、繊維製品等は、原産地によって大きくその品質が左右されるため、原産地表示が重要な意味を有する。フランスにおいては原産地表示が特に厳格に統制されており、その中核をなすのが、1935年に制定された「原産地統制名称法」である(甲4、甲11、甲13の2、甲13の7、甲13の14、甲14の1~甲14の6)。同法律は、優れた産地のワインを保護・管理することを目的とし、政府の機関である申立人1によって運用されている。 原産地統制名称法に基づいて製造されたワインは原産地統制名称ワイン(A.O.C.ワイン)と呼ばれ、このA.O.C.ワインは、原産地、品質、最低アルコール含有度、最大収穫量、醸造法等の様々な基準に合うように製造されなければならず、その基準に合格してはじめてA.O.C.名称を使用することができる。しかし、鑑定試飲会の際に不適当であるとみなされたものは、名称使用権利を失うことになっており、厳格な品質維持が要求されている。 原産地統制名称は、産地の名称を法律に基づいて管理し、生産者を保護することを第一の目標とし、また名称の使用に対する厳しい規制は、消費者に対して品質を保証するものとなっている。原産地統制名称を保護・統制することは、数々のルールや規制を自らに課し独特の製品を長年製造してきたその地域の生産者の利益を保護すると共に、消費者が製品の産地と品質について誤認混同させられることを避け、需要者の利益に資するものであり、商標法の目的に合致するものである。 「BORDEAUX」及び「ボルドー」は、同法による原産地統制名称に他ならず、ボルドー産のワインにのみ使用を許される名称である。この表示を付した商品は、日本国においても広く販売されており、ワイン・食品分野の取引者・需要者のみならず、その名称は産地を表示する標章の代表的なものの一つとして世界的な著名性を獲得している(甲2~甲20)。 2 商標法第4条第1項第7号該当性について (1)著名な原産地名称については保護すべきであることについて 「BORDEAUX(ボルドー)」は、上述したように著名なフランスの原産地統制名称として、その使用が厳格に管理・統制されているものであって、申立人による長年にわたる厳格な品質管理・品質統制の努力の結果、高い名声、信用、評判が形成されているものであり、ぶどう酒の商品分野に限られることなく一般消費者に至るまで、世界的に著名な原産地名称として広く知られている。 原産地名称は、商品が産出された土地の地理的名称をいい、商標とは地理的名称に限定されること及びその商品の品質、社会的評価、その他の特性が、産出地固有の気候、地味等の自然条件又は産出地の人々が有する伝来の生産技術、経験若しくは文化等の人的条件といった地理的要因に基づくこと等の点において異なるが、商標とは、商品の出所表示機能、品質保証機能及び広告機能を有する点において、共通しているものと考えられる。そうすると、原産地名称のうち、著名な標章については、著名商標の有するこれら機能が商標法によって保護されているのと同様に保護されることが望ましいというべきである(甲25の2)。 したがって、商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標」には、著名な原産地名称を含む表示からなる商標を同法第4条第1項第17号によって商標登録を受けることができないとされているぶどう酒又は蒸留酒以外の商品に使用した場合に、当該表示へのただ乗り(フリーライド)又は当該表示の稀釈化(ダイリューション)を生じさせるおそれがある等公正な取引秩序を乱すおそれがあると認められるものや国際信義に反すると認められるものも含まれると解すべきである。 故に、著名な原産地名称を原産地と離れた特定個人又は企業が自己の商標として登録し使用することは、商標法第4条第1項第7号に該当するものとして、認められるべきではなく、商標法の下、著名な原産地名称については保護されるべきである。 (2)本件商標について 本件商標は、「ボルドーウェーブ」の片仮名と「BORDEAUX WAVE」の欧文字を上下二段に配した構成よりなるものであり、これより「ボルドーウエーブ」の称呼が自然に生じるものであるところ、厳格に管理統制されている原産地統制名称として著名な標章「BORDEAUX」「ボルドー」をそっくりそのまま含むものである。本件商標は、このような著名な原産地統制名称を構成に含み、かつ、本件商標はその構成全体から、一般に親しまれた特定の観念を生ずるというような事実も見受けられず、これを一体不可分のものとして把握しなければならない格別の事情があるものとは認めがたいものである。それゆえに、上述したように原産地統制名称である「BORDEAUX」「ボルドー」が高度な著名性を有していることから、本件商標は、著名な原産地統制名称である「BORDEAUX」「ボルドー」の文字を含む商標という印象を強く与えるのみというべきである。したがって、本件商標は、当該原産地統制名称「BORDEAUX」「ボルドー」に化体した高い名声・信用・評判にフリーライドするというべきものである。 (3)本件商標が国際信義に反することについて 申立人は、国内外の需要者・取引者が想起する「BORDEAUX(ボルドー)」表示の信頼性や評判を損なわぬよう、ボルドー地方のぶどう生産者やぶどう製造業者を厳格に管理・統制し、厳格な品質管理・品質統制をし、これらの者と無関係の他人が「BORDEAUX(ボルドー)」を無断で使用ないし登録することで、申立人、そしてぶどう生産者やぶどう製造業者らの努力により蓄積・維持されてきた「BORDEAUX(ボルドー)」表示のイメージが毀損されることがないように活動を続けてきた。そのような申立人の努力により、「BORDEAUX(ボルドー)」は、現在まで長期にわたって著名性を保ち続け、高い名声、信用、評判を獲得してきたのであり、その結果、世界的に多大な顧客吸引力が化体するに至っている。該名称は、フランス国による原産地統制名称法に基づき指定されたぶどう酒として厳格にその使用を規制されているものであるが、申立人は、「BORDEAUX(ボルドー)」表示のイメージが毀損される可能性がある限り、「BORDEAUX(ボルドー)」の語をそっくりそのまま含むものはとくに、「BORDEAUX(ボルドー)」表示を軽蔑ないし嘲笑するがごときものとして、フランス国において、不快感などの国民感情を生じさせるおそれがあるため、当然に使用が規制されるべきものと考える。本件商標が登録された事実は、原産地表示に関してフランス政府が国を挙げて取り組んでいる統制ないし歴史を全く理解していないか、又は極めて軽視しているだけでなく、「BORDEAUX(ボルドー)」表示に対してフランス国民が抱いている誇りや名誉といった国民感情を蔑にするものといわざるを得ない。 したがって、本件商標は、上記原産地統制名称の稀釈化をきたすおそれがあり、また、フランス国民の不快感などの国民感情を生じさせるおそれもあるため、国際信義に反するといわざるを得ないものである。・ (4)異議決定及び無効審決 原産地統制名称の「BORDEAUX(ボルドー)」を含む商標については、その稀釈化を引き起こすおそれや公正な競業秩序を乱すおそれがあるとして、商標法第4条第1項第7号に該当すると判断された先例が多数存在する。 (5)「BORDEAUX(ボルドー)」以外の原産地統制名称に関する商標 原産地統制名称については、「BORDEAUX(ボルドー)」に限らず、これを構成中に有する商標、又はこれらをもじった商標が、商標法第4条第1項第7号に該当するものと判断されている。特に、「BORDEAUX(ボルドー)」と並ぶ著名な原産地統制名称である「CHAMPAGNE(シャンパン)」については、過去の裁判例、審決等において、商標法第4条第1項第7号に該当するものと判断された先例が多数存在する。 さらに、「ROMANEE-CONTI(ロマネコンチ)」(決定注:その構成中、6文字目の「E」の文字には、アクサン記号が付されている。)、「BEAUJOLAIS NOUVEAU(ボジョレーヌーボー)」、「CHABLIS(シャブリ)」といった原産地統制名称についても、これらをその構成中に有する商標、又はこれらをもじった商標が、商標法第4条第1項第7号に該当するものと判断されている。 これらの異議決定や審決は、いずれも、当該商標に含まれる原産地名称が、フランス国が国内法令を制定し、申立人1等が中心となって統制、保護を図ってきたものであること、当該原産地名称が著名性を獲得したものであることを理由に挙げており、さらに、当該商標をその指定商品等に使用するときは、著名な原産地名称の表示へのただ乗り(フリーライド)や同表示の希釈化(ダイリューション)を生じさせるおそれがあるばかりでなく、生産者及び製造者はもとより、国を挙げてぶどう酒の原産地名称又は原産地表示の保護に努めているフランス国民の感情を害するおそれがあるなどと判断している。 このように、「BORDEAUX(ボルドー)」以外の原産地名称を含む商標に対して下された裁判例、異議決定及び無効審決に照らしても、本件商標をその指定商品に使用した場合において、著名性を獲得した原産地名称である「BORDEAUX(ボルドー)」の表示へのただ乗り(フリーライド)及び同表示の稀釈化(ダイリューション)を生じさせるおそれがあることのみならず、本来、限定された発泡性ぶどう酒にのみ付されるべき同表示が、別の商品・役務に使用されることによって、同表示の汚染(ポリューション)を生じされるおそれがあり、また、国を挙げてぶどう酒の原産地名称または原産地表示の保護に努めているフランス国民の感情を害するおそれがあることは明らかというべきである。 したがって、本件商標を登録することは、公正な取引秩序を乱し、国際信義に反するものであるから、公の秩序を害するおそれがあると判断されるのが相当であり、商標法第4条第1項第7号により取り消すべきものである。 第3 当審における取消理由 当審において、本件商標権者に対し、「本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである」旨の取消理由を、令和5年6月20日付けで通知し、相当の期間を指定して意見を求めた。 第4 本件商標権者の意見 前記第3の取消理由の通知に対し、本件商標権者は、何ら意見を述べていない。 第5 当審の判断 1 「BORDEAUX」(ボルドー)について (1)申立人の提出に係る甲各号証によれば以下の事実が認められる。 ア 「広辞苑第六版」(甲2、株式会社岩波書店 2008年1月11日発行)の「ボルドー【Bordeaux】」の項には、「(1)フランス南西部、ガロンヌ川に沿う港市。葡萄酒の集散地。また、砂糖・ブランデー・綿織物などを産出する。・・・(2)ボルドー地方から産する葡萄酒。赤葡萄酒はクラレットとも呼ぶ。・・・」と記載されている。 イ 「コンサイス外国地名事典(改訂版)」(甲3、株式会社三省堂 1987年3月30日発行)の「ボルドー Bordeaux」の項には、「フランス南西部、ジロンド県の県都、港湾・工業都市。・・・ブドウ酒の輸出港として有名。・・・・」と記載されている。 ウ 「新版 世界の酒事典」(甲5、株式会社柴田書店 1982年5月20日発行)の「ボルドー(Bordeaux)」の項には、「フランスの代表的なぶどう酒の産地。・・・行政的にジロンド県産のものにかぎってゆるされる名称で、ジロンド県は最上級のぶどう酒を産するメドック、グラーブ、ソーテルヌ、サン・テミリヨンの四地区と、これにつぐポムロール、アントル・ドゥ・メール、コート、パリュスなどの地区に分かれている。・・・フランスのぶどう酒産出地域は、大きくボルドー、ブルゴーニュ、シャンパーニュの三地方に分けられるが、なかでもボルドー地方は量質ともに第1位で、フランス総生産量の実に3分の2を占め、年産約8,000万ガロンを産出している。この地方のぶどう酒は、ブケ(発酵と熟成過程でうまれる香り)、アロマ(ぶどうの品種による香り)、パルフュム(口にふくんだときの香り)がよく、酒質も色もひじょうにすぐれている。そのぶどう栽培地の土壌は、表面が粘土質で、その下に小石や砂の層があり、農作物の作付にはむかないが、ぶどうの栽培には最適の条件を備えている。」と記載されている。 エ 「洋酒小事典」(甲6、株式会社柴田書店 昭和56年6月15日発行)の「ボルドー Bordeaux」の項には、「フランス西部にある世界的に有名なワイン産地。赤、白のワインを産し、赤ワインをクラレットと呼ぶ場合が多い。・・・」と記載されている。 オ 「ワインの女王」(甲7、早川書房 1996年3月31日発行)には、その表紙に「・・・ワイン生産地としてボルドー最大の特色は「シャトー・ワイン」が特有の制度として確立している点にある。・・・肝心かなめの点は、シャトーの持主がシャトー周辺の自己所有畑で、自らぶどう栽培に当り、建物付属の醸造所でワインを造り、樽貯蔵し、自ら瓶詰めしたワインに限って、そのシャトー名を冠せるところにある。」、「ボルドーを知らずしてワインを語るなかれ!」、「繊細な香りと豊かなコク。酒の王にしてワインの女王。ボルドー・ワインに乾杯!」と記載され、その48頁には、「・・・名酒になるはずのワインに他の地方のワインや質のおちるぶどうからつくったワインを混ぜる不心得者が横行したし、今でもあとを絶たない。これを防ぐために、フランスではAC(Appellation Controllee(決定注:「Controllee」の文字中、6文字目の「o」及び9文字目の「e」の各文字の上部には、アクサン記号が付されている。以下同じ。))制度が生れ、現在では他の国も見習いだしている。「原産地名統制呼称」とも訳されているこの制度は、一定の地域で、それぞれ法令の要求する条件(使うぶどうとか最大生産量など)を守ったものだけに、その地域名を名乗ることを認めるというものである。・・・」と、その69頁には、「・・・フランス・ワインのラベルを見てみると、たいていAppellation Controlleeという文句が刷られているはずである。・・・ラベルに、この表示を地方名と組み合わせて表示することが-場合によっては表示してはならないことが-フランスではワイン生産者に義務づけられているが、この表示するしくみが、アペラシオン・コントローレ(Appellation d‘Origine Controllee、略してAOCまたはAC)制度である。日本では「原産地名統制呼称」とか「原産地名管理呼称」制度と訳している。・・・」と、その71頁には、「・・・これをボルドーでみてみると、まずAC「ボルドー・ワイン」がある。これは・・・ボルドー市を中心にしたジロンド県内の広大な地域である。・・・」と、それぞれ記載されている。 カ 「世界のワインカタログ1999 by Suntory」(甲8、サントリー株式会社 1998年12月1日発行)には、その81頁に「ボルドー」の見出しの下、「ボルドーの葡萄酒は、ジロンド河の両岸と、ガロンヌ河、ドルドーニュ河の両岸に広がっており、銘醸地がひしめくフランスの中でも、質・量とも群を抜いて名高い地域です。ボルドーワインは恵まれた自然風土の中で育まれた複数の葡萄品種の組み合わせから生まれ、長い熟成期間を経て、繊細な風味と香りを身につけていきます。文字どおり、“ワインの女王”にふさわしい優雅な個性です。・・・ボルドーのワインは、原産地呼称統制ワイン-AOCが多く、フランス全体のAOC生産量の2割強を占めています。世界のワイン産地の中で最も名高いボルドーといわれるゆえんです。・・・」と記載され、ボルドーのAOCワインを産出している代表的ワインの地区として、その81頁から82頁にかけて「メドック地区」、「グラーヴ地区」、「ソーテルヌ地区」、「サンテミリオン地区」、「ポムロール地区」、「フロンサック地区」及び「アントル・ドゥー・メール地区」が紹介されている。 キ 「田崎真也のフランスワイン&シャンパーニュ事典」(甲9、日本経済新聞社 1996年9月30日発行)には、「●PART3 ボルドー BORDEAUX」の見出しの下、「・・・ボルドーのワインについて語るならば、シャトーについて触れなくてはならない。ボルドーのシャトーは、文字通りの絢爛豪華な城館もあるが、ごく普通のワイン農家といった建物もあり、醸造所と考えた方がいい。シャトーが所有する畑から穫れたぶどうを自分のシャトーでワインにする。すなわちシャトー元詰めがボルドーワインの基本的考え方だ。・・・」と記載され、その118頁ないし127頁には、「Chateau(決定注:3文字目の「a」の文字の上部には、アクサン記号が付されている。以下同じ。) Lafite-Rothschild/シャトー・ラフィット・ロートシルト」、「Chateau Margaux/シャトー・マルゴー」、「Chateau Mouton Rothschild/シャトー・ムートン・ロートシルト」、「Chateau Lagrange/シャトー・ラグランジュ」及び「Chateau Beychevelle/シャトー・ベイシュヴェル」が紹介されている。 ク 「ワールドアトラス・オブ・ワイン」(甲10、ネスコ(日本映像出版株式会社) 1991年5月27日発行)には、その80頁に「Bordeaux ボルドー」の見出しと地図が掲げられ、その81頁には、「ボルドーはこの世で最大の上質ワイン産出区域だ。ジロンド県全体がワインづくりにかかわり、全部がボルドーなのだ。産出量はブルゴーニュをはるかにしのぎ、1983年には5億1,000万lを産した。・・・」と、その82頁には、「ボルドー:品質決定要因」の見出しの下、「ぶどう栽培・ワイン醸造にとってボルドー地方がもっている利点を数え上げるのは簡単だ。海に近く、河川が縫うように走っているため、気候が温和で安定し、大西洋側に森林があって強い潮風を遮り、降雨が少なく、基盤岩が豊富に無機物を含んでいる反面、表土は全般に全くやせており、多くの場合、非常に分厚い。・・・」と記載されている。 ケ 「「世界の名酒事典」別冊 世界の名ワイン事典」(甲12、株式会社講談社 昭和63年5月17日発行)には、その2葉目に「世界のワインの指標」の見出しの下、「ワイン大国フランスで昔から銘醸の地として名高い、ボルドーとブルゴーニュを取り上げ、両地方の歴史から、気候風土の違い、そして名酒選びまでを紹介した。」と、その3葉目には、「なぜボルドーとブルゴーニュか」の見出しの下、「このようなワインの王国でも、その代表格となると、やはり、ボルドーとブルゴーニュになってしまうのである。この二つの地方は、世界のワインの最高峰と目される極上物を頂点に、中級から下級に至るワインを産出しているが、・・・これら二つの地方はその赤ワインのタイプが際立った対照をなしていて、「ワイン」そのものの指標的存在となっているということである。また、白ワインも同様にブルゴーニュは辛口、ボルドーは甘口が世界の模範的存在になっている。」と記載されている。 コ 「世界の名酒事典’80改訂版」(甲13の1、株式会社講談社 昭和55年5月30日発行)には、その2葉目に「ボルドー・ワインの特徴」の見出しの下、「ボルドー・ワインとは、ジロンド県内の十三のぶどう栽培地域のいずれかで、A・O・Cの規定にもとづいてつくられたワインをいう。それ以外の地域でつくられたワインをブレンドしたものは、ボルドー・ワインを名のることはできない。十三のぶどう栽培地域は、(1)メドック、(2)グラーヴ、(3)ソーテルヌ、(4)サンテミリオン、(5)ポムロール、・・・なかでも(1)~(5)の地区が優秀で、ボルドーが世界に誇るワインのほとんどは、ここで生産される。・・・」と記載され、その3葉目には、メドック地区の格付け特選銘柄の一覧表等が記載されている。そして、ほぼ同様の内容が、同社発行「世界の名酒事典」の’82-’83年度版(甲13の2)に、また、ボルドーワインの格付け等が’84-’85年度版、’87-’88年版、’90年版ないし’99年版、2000年版ないし2006年版、2008年-09年版、2010-11年版、2012年版ないし2014年版(甲13の3~甲13の26)にも記載されている。 サ 「The一流品 決定版」(甲17、読売新聞社 1986年4月17日発行)の250頁ないし253頁には、「FRENCH WINE/フランスワイン」、「ボルドー地区」の見出しの下、「ボルドー地区は、大西洋に面した南西フランスに位置し、世界でも最も広大なぶどう栽培地帯である。ジロンド河、ガロンヌ河、ドルドーニュ河の両岸に広がっており、ここでできる赤ワインは“クラレット”とよばれワインの女王と称賛される。鮮やかな紅色が特徴。ボルドーワインで登場するのがシャトー。城というより、ぶどう園全体を指している。一八五五年に地域、畑(シャトー)別に格付けが決められ、今日に至っている。」の記載とともに、同地区の各シャトーのワインが紹介されている。そして、ほぼ同様の内容が、同社発行「The一流品」の「決定版PART2」(1987年4月20日発行)、「PART3」(1988年5月6日発行)及び「PART4」(1989年6月16日発行)にも記載されている(甲18~甲20)。 (2)上記(1)において認定した事実によれば、「ボルドー」の語は、その原語である「BORDEAUX」を含め、遅くとも1980年以降、我が国において、フランス南西部にある代表的なぶどう酒の産地を表す地名であり、かつ、同地で造られるぶどう酒をも指称する語として、我が国において、一般に広く知られるに至っているといえ、また、当該「BORDEAUX」の語は、生産地域、製法、生産量等の所定の条件を備えたぶどう酒についてのみ使用できるフランスの原産地統制名称であることも相当程度知られているといえる。 そうすると、「ボルドー」及び「BORDEAUX」の各語は、本件商標の登録出願時及び登録査定時には既に、「フランスの代表的なぶどう酒の産地」及び「フランスのボルドー地方で(のみ)造られるぶどう酒」を意味するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたというべきである。 2 「BORDEAUX」及び「ボルドー」の名称の保護に関して (1)「フランスのワインとスピリッツ」(甲4)において、「ワインの分類」の見出しの下、ワインは、EC(欧州共同体)の規則に従って、テーブルワインとV.Q.P.R.D.(指定地域優良ワイン)の2つの等級に分類され、さらに、フランスでは、この2つの等級がそれぞれ2分され、(i)A.O.C.(原産地統制名称ワイン)、(ii)V.D.Q.S.(上質限定ワイン)、(iii)ヴァン・ド・ペイ(地酒)、(iv)ヴァン・ド・ペイを除いたテーブルワイン、の4つに分けられること、V.D.Q.S.(上質指定ワイン)は、原産地名称国立研究所(I.N.A.O.)による厳しい規制に合格したものに限られ、その製造の条件は、地域ごとに厳密に定められ、法令化されていること、A.O.C.(原産地統制名称ワイン)は、その製造が、V.D.Q.S.ワインに適用される規制より更に厳格な規則を充たすものでなければならず、原産地、品種、最低アルコール含有度、最大収穫量、栽培法、剪定、醸造法、及び場合によっては、熟成条件等の規準が決定されており、その原産地域がV.D.Q.S.ワインの場合よりさらに厳しく限定されていること、その原産地統制名称を使用するためには、様々な規準に合うように製造され、かつ、鑑定試飲会において、不適当とみなされない必要があることなどが記載されている。 また、上記「フランスのワインとスピリッツ」の「産地別A.O.C.ワイン一覧表」中には、「フランス西南部(ボルドー含む)」が記載されている。 (2)1987年発行のフランス食品振興会(SOPEXA)による「1985年、制定50周年を迎える原産地統制名称(AOC)」に係るパンフレット(甲11)、「フランス原産地統制名称の国際的保護のためのINAOアクションに関するメモ」(甲15)及び1935年7月30日付けの原産地統制呼称に係るフランス国政令抜粋(甲16)によれば、フランスでは、1935年に原産地統制名称法令が制定され、また、原産地名称国立研究所(INAO)は、原産地統制名称のぶどう酒が満たすべき生産区域、ブドウ品種、生産高、最低天然アルコール純度、栽培方法、醸造方法、蒸留方法などの条件を定めることができるとともに、当該名称の擁護を目的として結成された各種組合協力しフランス国内及び国外で原産地統制名称を擁護するための活動をしているなどとされている。 3 本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性について 本件商標は、上記第1のとおり、「ボルドー ウェーブ」の片仮名と「BORDEAUX WAVE」の欧文字を上下2段に表してなるところ、上段の片仮名は、下段の欧文字の読みを表したものと理解されるものであるから、「ボルドーウエーブ」の称呼が自然に生じるものであるが、その構成中に「ボルドー」及び「BORDEAUX」の語を含むものである。 そして、上記1のとおり、「ボルドー」及び「BORDEAUX」の各語は、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、「フランスの代表的なぶどう酒の産地及び「フランスのボルドー地方で(のみ)造られるぶどう酒」を意味するものとして我が国の需要者の間に広く認識されていたことからすれば、その構成中に当該語を含み、「ボルドー」の音を含む本件商標は、構成や称呼を考慮すると、当該ぶどう酒ないしその産地を連想、想起させる場合も少なからずあるとみるのが相当である。 また、上記1及び2のとおり、フランスのボルドー地方では、ぶどう生産者及びぶどう酒製造者が長年その土地の気候、風土を利用して優れた品質のぶどう酒生産に努めており、また、同国においては、国内法令を制定し、1935年以降、原産地名称国立研究所が中心となって「BORDEAUX」を含む原産地統制名称の厳格な統制、保護をしてきており、その結果として「BORDEAUX」についての著名性が確立されているものといえる。 そうすると、本件商標をその指定商品について使用するときは、我が国において需要者の間で広く認識されている「ボルドー」及び「BORDEAUX」の語へのただ乗り(フリーライド)や希釈化(ダイリューション)を生じさせるおそれがあるばかりでなく、ボルドー地方のぶどう生産者及びぶどう酒製造者はもとより、国を挙げてぶどう酒の原産地統制名称の厳格な統制、保護をしているフランス国民の感情を害するおそれがあるというべきである。 したがって、本件商標は、公正な取引秩序を乱し、国際信義に反するものであるから、公の秩序を害するおそれがある商標であり、商標法第4条第1項第7号に該当する。 4 むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当し、その登録は、同項の規定に違反してされたものであるから、本件商標は、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-900374

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