商標異議申立
2022-900373
ホボカニ、ホボ
- 審判番号
- 2022-900373
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2021-086412
- 登録番号
- 6575670
- 請求日
- 2022年08月30日
- 審決日
- 2023年08月07日
- 公報発行日
- 2023年10月27日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】日清食品株式会社
- 【権利者代理人】香原 修也
- 【権利者代理人】古井 かや子
- 【異議申立人】カネテツデリカフーズ 株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 高野 和行
- 審判官 大森 友子
- 審判官 飯田 亜紀
- 分類
- T1651.271-Z (W30)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法4条1項19号商標法43条の3第2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第19号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6575670号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6575670号商標の商標登録を取り消す。
理由
理 由
1 本件商標
本件登録第6575670号商標(以下「本件商標」という。)は、「ほぼカニ」の文字を標準文字で表してなり、令和3年7月9日に登録出願、第30類に属する別掲1のとおりの商品を指定商品として、同4年5月24日に登録査定され、同年6月22日に設定登録されたものである。
2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録第5700298号商標(以下「引用商標」という。)は、「ほぼカニ」の文字を標準文字で表してなり、平成26年3月4日に登録出願、第29類に属する別掲2のおりの商品を指定商品として、同年9月5日に設定登録されたものであり、その商標権は現に有効に存続しているものである。
3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第116号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)引用商標の周知著名性
商標法第4条第1項第15号及び同項第19号における周知度、周知性について、商標審査基準に沿って、以下検討する。
ア 引用商標の構成及び態様
引用商標は「ほぼカニ」(標準文字)というわずか4文字からなる。「ほぼ」は、「全部あるいは完全にではないが、それに近い状態であるさま」「だいたい」「およそ」という意味で(甲3、甲4)、「ほぼ」には、本物でないことを緩やかに伝える効果がある一方で、限りなく本物に近いというニュアンスもあり、「ほぼ」というワードのユルさがポイントになっている(甲5)。また、「ほぼ」という形容詞の持つ響き、微妙な意味合い、少しユーモアを含んだ表現は、実に興味を惹きつけるフレーズであると分析されている(甲6)。
このように、「ほぼ」という形容詞が食材名と結合することによって、本物ではないが、限りなく本物に近いカニであるという意味合いを看取者に認識させ、識別力を発揮し得る構成となっている。
イ 商標の使用態様、使用数量(生産数、販売数等)、使用期間及び使用地域
(ア)商標の使用態様、使用期間
引用商標は、カニに見立てたカニ風味かまぼことカニ酢が詰め込まれた商品に付されている(以下、引用商標が付された「カニ酢付きカニ風味かまぼこ」を「使用商品」という。)。
使用商品は2014年3月に発売されたところ、そこには、パッケージごとにシールが貼られており、当該シールの中央上部には、申立人の社名の一部を表す「かねてつ」、その直下には他の文字よりも大きく、太字で目立つように引用商標「ほぼカニ」の文字が縦書きに記載されていた(甲7~甲9)。
2019年8月31日に使用商品がリニューアルされたが、シールの中央上部に「カネテツ」という社名の一部が記載され、その直下に「ほぼカニ」の文字が縦書きに太字で他の文字よりも大きく記載されるという点に何ら変化はなく、2022年9月現在も同様である(甲7、甲10、甲11)。
このように、申立人は、2014年3月の発売以来8年以上にわたり、引用商標と社名の位置を近接させることで、「ほぼカニ」といえば申立人の製造する商品であると公衆が連想できるような態様で一貫して継続してきた。
(イ)使用数量、使用期間、使用地域
発売当初の年間売上目標は180万パックであったが、2倍以上もの売上を達成した(甲12)。その後、使用商品は年間1000万パック程度が出荷され、看板商品となり、フル稼働生産により2017年頃から3年連続で売上20%増となり、2018年には全国展開に成功したと報道された(甲13、甲14)。
2019年8月31日には、2014年3月の発売以来、使用商品の累計販売数量が2200万個突破し、1パックあたり255円(参考税抜価格)で全国でリニューアル発売され(甲7)、同年9月期は前期の1.4倍のペースで売れ(甲15)、2021年には累計4000万パックに至った(甲16、甲17)。ほぼ24時間稼働で1日25万本を製造し、年間900万パックが売れている(甲17、甲18)。2021年の使用商品の売上は前年比の120%で(甲17)、2022年3月31日の神戸新聞NEXTでは累計販売数量5500万パックを突破しているとの記事が掲載された(甲21)。申立人の情報でも概ね同数である(甲19、甲20)。
2020年9月頃は、2億6000万本で、カニの脚に例えると2600万匹分であったが、2022年8月頃までに販売した使用商品を1本ずつ繋いだ長さは約3万3000kmで、3億6000万本に至り、これをカニの脚に例えると3600万匹分に相当する(甲22、甲23)。
上記販売数量と価格を単純に計算しても、売上総額は110億ないし165億円(=5500万パックX200円ないし300円)である。
日経新聞社が全国のスーパーから独自に収集したPOSデータを使用し、2021年5月の1か月間のカニ風味かまぼこの販売金額から上位20位の商品を調査したところ、第1位に使用商品が挙がり、2021年の一年間では3位であった。また、2022年1月から8月のカニ風味分野では、使用商品が連続して1位である(甲24、甲101)
申立人は、使用商品について日経POSセレクションで2021年地域売上No.1獲得企業に選出され、練り製品全体で売上ランキング1位となった(甲101、甲102)。
以上のように、使用商品は、8年間で日本全国で5500万パック以上を売り上げ、カニ風味分野でトップシェアを占めている。
ウ 広告宣伝の方法、期間、地域及び規模等
(ア)宣伝広告、CM等
申立人は2014年3月から使用商品のチラシ及びポスターを配布し(甲25~甲27)、7月から使用商品についてテレビCM第1弾を放送し、8月に第2弾を放送した(甲28、甲29)。
2019年8月30日付けリニューアルプレスでは、テレビCM第3弾「「ほぼカニ」カニ感アップ」篇が同年8月31日(土)から同年10月31日(木)まで関東及び関西を中心にオンエアされることが公表された(甲7)。同年12月にはテレビCM第4弾が放送された(甲30)。
2020年11月18日から、申立人は、数量限定で使用商品と本物のズワイガニを食べ比べできる「ほぼカニ&ボイルズワイガニ食べ比ベセット」を発売し、これを注文すると先着20名に「ほぼカニアプリケーター」(非売品)がプレゼントされた(甲31、甲32)。また、申立人は、認知拡大施策として、2020年12月に、約25万円を費やして「ほぼカニマスク」(非売品)を500枚配布した(甲32、甲33)。
(イ)マスメディア・雑誌・取材、インターネット情報等
使用商品は次のようなテレビ番組、雑誌などで紹介等された。
・2018年11月8日(木)「ひるおび!」(TBS)(甲34、甲17)
・2019年8月29日「森本毅郎・スタンバイ!」(TBSラジオ)(甲14)
・2019年9月3日(火)「マツコの知らない世界」(TBS)(甲35、甲99)
・2019年9月23日(月)「ミ社ラン」(TBS)(甲17、甲36、甲115)
・2020年2月5日(水)「魔法のレストラン」(毎日放送)(甲37、甲99、甲115)
・家電専門誌「家電批評」2020年8月号(甲38)
・2020年9月10日(木)「日本人の3割しか知らないこと くりぃむしちゅーのハナタカ!優越館」(テレビ朝日)(甲17、甲39、甲115)
・2020年9月29日(火)「芸能人格付けチェック 食と芸術の秋3時間スペシャル」(テレビ朝日)(甲40~甲42、甲23、甲17、甲115)
・2020年12月24日(木)「日本人の3割しか知らないこと くりぃむしちゅーのハナタカ!優越館」(テレビ朝日)(甲39、甲99)
・2021年1月1日「芸能人格付けチェック 2021年お正月スペシャル」(甲43、甲46、甲103、甲115)
・2021年5月4日(火)「潜入!リアルスコープ」(フジテレビ)(甲44、甲45、甲17、甲99、甲115)
・2021年5月15日(土)「NOと言わない!カレン食堂」(テレビ朝日)(甲47、甲17、甲99、甲115)
・2021年6月8日 ホットペッパーグルメのメシ通(甲48)
・2021年10月5日(火)「芸能人格付けチェック 食と芸術の秋3時間スペシャル」(甲49~甲51)。なお、放送翌日には品切れになる店舗が続出した(甲6)
・2021年10月11日(月)「10万円でできるかな」(テレビ朝日系列)(甲52、甲53、甲17、甲99、甲115)
・2021年11月25日(木)「よんチャンTV」の「ありがとう!縁の下のマイスター」(甲54、甲99)
・2021年12月30日 ORICON NEWS(甲55)
・2022年1月13日(木)「ハナタレナックス」の新企画「違いが分かる男選手権」(甲56)
・2022年3月22日 「芸能人格付けチェック BASIC~春の3時間スペシャル~」(テレビ朝日)(甲9、甲57、甲58)
・2022年3月26日(土)「ウラマヨ!」(関西テレビ)(甲59、甲99、甲115)
・2022年4月11日 FRIDAYデジタル(甲9)
・2022年4月19日(火)「家事ヤロウ!!!」(テレビ朝日)(甲17、甲60、甲99、甲115)
・2022年5月24日(火)「家事ヤロウ!!!」(テレビ朝日)(甲61)
・2022年8月16日「家事ヤロウ!!!」(テレビ朝日)(甲99)
上記の他、使用商品は、例えば以下の番組で取り上げられており、関連動画をピックアップした(甲116)。
・2017年11月15日 Nスタ(TBS)
・2017年2月18日 せやねん(毎日放送)
・2017年3月24日 よーいドン!(関西テレビ)
・2017年5月29日 きよし黒田の今日もへぇーほぉー(毎日放送)
・2017年11月7日 かんさい情報ネットten(読売テレビ)
・2017年11月12日 モノ知りSUNデー(サンテレビ)
・2018年3月13日 スーパーJチャンネル(テレビ朝日)
・2018年3月21日 キャスト(朝日放送)
・2018年9月18日 報道ランナー(関西テレビ)(甲99)
・2019年11月2日 おはよう朝日土曜日です(毎日放送)
新聞では次のとおりである。
・2018年10月27日の神戸新聞(甲100-1)
・2017年8月22日の毎日新聞(甲100-2)
・2022年7月付け朝日新聞デジタル(甲62)
・2022年8月5日(金)及び6日(土)の朝日新聞(甲63)
・2019年12月29日付けNIKKEI STYLE(甲104)
その他、使用商品は新聞等で多数取り上げられている(甲105~甲114)。
(ウ)ソーシャルメディア関係
申立人は、自社ウェブサイトのほか、facebook、Twitter、instagramで使用商品を宣伝している(甲64)。
使用商品に関するYouTubeでは(甲65)、例えば、「TBS NEWS」で8618回、「やる気!元気!森脇チャンネル」では4208回、「トータルテンボスのSUSHI」では41万回、「ホルモンしま田」で13万回、申立人の3分クッキングでは2851回視聴されるなど、多数のコーナーがYouTube上に挙げられ、視聴回数も非常に多い。
また、SNSを中心に使用商品名が紹介等され(甲12、甲16、甲17、甲66、甲67)、SNSは多数の者が利用するという性質上その反響は大きく、使用商品の認知度にも大きく影響している。
(エ)「ほぼ」シリーズのブランド化を通じた宣伝
申立人は、まるで本物のような味・食感・見た目を再現した新ジャンルの練り製品を「ほぼシリーズ」として発売している。
・2015年3月に「ほぼホタテ」(商標登録第5779630号)
・2016年9月に「ほぼエビフライ」(商標登録第6027143号)
・2017年9月に「ほぼカキフライ」(商標登録第6166375号)
・2018年6月に「ほぼうなぎ」(商標登録第6130546号)
・2018年9月に「ほぼタラバガニ」(商標登録第6166375号)
・2019年3に「大粒ほぼホタテ浜焼き風」「すごいほぼカニ」
・2020年に「サラダプラスほぼホタテ」「サラダプラスほぼ夕ラバガニ」
・2021年に「大粒ほぼカキフライ」
など、「ほぼ」と食材名を組み合わせた「ほぼ」シリーズを1年に1個のペースで新製品を発売し、ブランド化を構築している(甲22、甲7、甲55、甲68、甲9、甲17、甲37)。シリーズでも使用商品は売上がナンバーワンである(甲17)。
2022年3月のインターネットの投稿では、ほぼカニは有名であるが、他にもほぼシリーズの商品があると指摘している(甲69)。
以上のように、使用商品をきっかけに「ほぼシリーズ」が確立され、消費者やマスメディアに広く認知されるようになった。
(オ)コラボ商品
申立人は、永谷園とコラボし、「あんかけたっぷりかに玉」「かに味チャーハン」「ほぼカニチャーハン」を、リケンとコラボし「わかめスープ」を、みつかんとコラボし「ほぼカニのふわふわ酢納豆」等を発売している(甲70)。
(カ)受賞歴を利用した宣伝広告
使用商品は、2016年及び2017年の第68回及び第69回全国蒲鉾品評会で「栄誉大賞」(甲71)、2022年の第73回全国蒲鉾品評会では最優秀賞にあたる「農林水産大臣賞」を受賞し、報道関係者宛てにプレスリリースを行った(甲72、甲73)。
また、申立人は、2022年に一般社団法人日本記念日協会から、4月1日は「ほぼカニの日」と認定を受け(甲74、甲21)、宣伝広告を行っている(甲75)。
(キ)広告宣伝の方法などのまとめ
以上のように、申立人による宣伝広告、ほぼシリーズのブランド化、コラボ商品化及び受賞歴に基づくアピール並びにマスメディアやSNS等による紹介、報道等により、引用商標を付した使用商品は、全国に広く浸透した。特に、数年にわたって視聴率が高くなる午後7時から11時の時間帯に番組で継続的・連続的に取り上げられた事実は、それだけで使用商品を取り上げる価値が高いと評価されたことの証左であるが、これにとどまらずその影響がSNSやインターネット等へ波及し、使用商品及びほぼシリーズに係る情報が全国へ伝播した。
エ 申立人以外の者による本件商標と同一又は類似する標章の使用の有無及び使用状況
使用商品を使った料理、例えば、「ほぼカニボナーラパスタ」などがレシピとともに挙げられている(甲76、甲77)。
このように、「ほぼカニ」を含めた料理名も存在する。ただし、申立人が知る限り、使用商品以外の商品について引用商標が使用された情報は皆無である。
オ 商品の性質その他の取引の実情
(ア)商品
使用商品は、2014年3月に発売された申立人の看板商品であり、1パックあたり98gのものや業務用1kgのものがある(甲7、甲8、甲11、甲13)。前述イ(ア)のとおり、発売以来8年以上にわたり、引用商標と社名の位置を近接させる態様で累計5500万パックもの使用商品を発売し、消費者・取引業者は使用商品に長期間接している。
使用商品は、「世界一ズワイガニに近いカニ風味かまぼこ」というコンセプトの下、2012年に使用商品の開発を開始し、100回近くの試作を重ねて味を再現し、2年後の2014年に発売された(甲8、甲62、甲68)。味や感触の再現度が高く、リピーターが増える結果につながり(甲1)、申立人は「農林水産大臣賞」を受賞した(甲72、甲73)。
2017年には新宿屋台村でカニカマファンクラブが発足し、また、ちくわやかまぼこ類の生産量は2018年比で2.5%増加するなど(甲17)、カニカマは良質なタンパク質がとれるヘルシーな食材として人気が高まった(甲66、甲78)。これが使用商品が人気となった要因の一つでもある。
2022年7月11日(月)、申立人の社長を含む兵庫県蒲鉾組合連合会加盟企業が、兵庫県知事と面会し、知事は使用商品を試食し、カニの再現の高さや味について高い評価をした(甲79)。
また、練り製品の主な購入層は60代以上の高年齢層が多いのが通常であるが、使用商品は20~30代の若い世代にもヒットし、(甲12、甲16、甲52)、幅広い世代に受け入れられている。
(イ)販売態様
申立人は自社ウェブサイト上にオンラインストアを設け、使用商品を販売している(甲80)。また、使用商品は、Amazon、楽天市場、Yahooショッピングなどのオンライン通信販売のほか(甲10、甲11、甲81)、イオン、マックスバリュ、ライフ、西友、イトーヨーカドー等の全国のスーパー、量販店で販売されている(甲69)。
このように、使用商品は、老若男女問わず、誰でもいつでも購入できる状況である。
(ウ)消費者等の反応
一般消費者はカニの再現度の高さについてコメントしている(甲82、甲83)。これは一例にすぎないため、実際は、使用商品は多数の消費者に受け入れられているといえる。
また、週刊女性PRIME2022年4月26日号では、使用商品を含むカニカマ料理のレシピ15品が挙げられ(甲78)、クックパッドではレシピが39品、Rakutenレシピでは31品が挙げられている(甲76、甲77)。
このように、使用商品を使用したレシピも多数挙げられており、使用商品が知られていることを示している。
カ アンケート
申立人が、2022年6月頃に男女621人を対象に申立人の各商品に関する認知度調査を行ったところ、約88%が使用商品を「知っている」と回答、「食べたことがある」と回答した者が約73%であった(甲84)。
キ 小括
以上、8年以上もの間同じ態様で引用商標が付された使用商品は、多数のテレビ、インターネット、SNS等に取り上げられ、自社の宣伝広告や販促効果も奏功して全国の幅広い世代に浸透した結果、カニ風味の分野ではシェアトップを継続し、5500万パックの売上を記録し、その売上額はおよそ110億円ないし165億円にも達する。
したがって、引用商標は、申立人の出所表示として使用商品の需要者間の間で全国的に認識されているといえるものであり、その程度は高度、すなわち著名である。
(2)商標法第4条第1項第11号
ア 商標
本件商標と引用商標は、いずれも標準文字「ほぼカニ」であり、同一である(甲1、甲2)。
イ 指定商品
商品の類否について、判決(最高裁昭和33年(オ)第1104号同36年6月27日第三小法廷判決・民集15巻6号1730頁、最高裁昭和39年(行ツ)第54号同43年11月15日第二小法廷判決・民集22巻12号2559頁、東京高平成7年(行ケ)第161号判決、知財高裁平成27年(行ケ)第10134号判決)及び商標審査基準に沿って、以下検討する。
また、類似群コードが異なる場合において、商品や役務が類似するとした判決(知財高裁平成17年(行ケ)第10763号)、審決(無効2004-89090、無効2005-89082)がある。
(ア)商品の品質及び用途、並びに需要者の共通性
本件商標に係る指定商品は、即席又は調理済みの麺類又は米飯類(チルド、冷凍を含む。)、お好み焼き及びたこ焼き(冷凍を含む。)、餃子、シュウマイ等であり、手軽に調理して食することができる食品・食材である。
即席麺(商標権者の商品に限らない。)を例に挙げると、袋めんやカップ麺は、15~24歳の男女、小学生以下の子供がいる女性、60~74歳の男女でも月1回は食べられており(甲85)、日常的に食されている。
また、つゆやスープは醤油等を原材料として調理に用いられ(甲86、甲89)、調味料や香辛料も調理に用いられる。パン、すし等その他の指定商品も日常的に一般消費者の食に供される食品である。
一方、引用商標に係る指定商品には使用商品のような食品・食材が含まれる。20代から60代を対象とした調査結果によれば、月間推定摂取日数では、ちくわ4.1日、カニカマ3.8日とされ(甲87)、幅広い世代に食されている。
カレーのもとには即席カレー等が含まれるところ、原材料は小麦粉であり(甲88)、スープのもとに関する商品には小麦を含んだ醤油等を原材料とする(甲90)。
このように、誰でも購入して日常生活の食事や調理に供することができる手軽な食品や調味料等であることからすれば、需要者は相当広範囲にわたって共通する。
(イ)商品の提供手段及び提供者の共通性
カップ入りラーメンや冷凍お好み焼き等の本件商標に係る指定商品は、スーパーや量販店等のほか、Amazon等のオンラインショッピングで全国的に販売されている(甲91、甲92)。
一方、練り物製品や即席スープなど引用商標に係る指定商品は、スーパーや量販店のほか、楽天市場等のオンラインショッピングで全国的に販売されている(甲93、甲94、甲88)。
このように、両指定商品は食料品店等の一般消費者等に向けて流通する商品であり、提供手段ないし販売方法は大部分が共通するから、提供者も大部分において共通する。
(ウ)両指定商品が類似すること
以上からすれば、本件商標及び引用商標に係る指定商品は、商品の用途、販売店舗、販売方法が共通し、需要者及び取引者の範囲が広範囲にわたって共通するから、類似する商品である。
(エ)誤認混同を生ずるおそれがあること
本件商標及び引用商標に係る指定商品は、共通する店舗で販売される食品・食材・調味料等であり、特に一般消費者は十分な注意を払わずに購入する場合が多いことを踏まえると、これらの商品に同一商標が付された場合、取引者や需要者は出所について誤認混同を生ずるおそれがあることは明らかである。
ウ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標は完全同一であり、本件商標と引用商標に係る指定商品は類似である。
したがって、本件商標を指定商品に使用した場合には、引用商標と相紛れるおそれがあり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号
本号の該当性について、判決(最判平成10年(行ヒ)第85号同12年7月11日第三小法廷判決・民集54巻6号1848頁、東京高平成9年(行ケ)第323号判決)及び商標審査基準に沿って、以下検討する。
ア 本件商標と引用商標との類似性の程度
本考慮要素は最高裁判所が一番目に挙げたものであるから、「混同を生ずるおそれ」の判断に最も影響を及ぼす重要な要素であるということができるところ、両商標は完全同一であり、類似の最たるものである。
イ 引用商標の周知著名性の程度
前述(1)のとおり、周知性の程度は高く、著名である。
ウ 引用商標の独創性の程度
申立人は、2014年に使用商品を発売するとともに(甲7、甲8等)、引用商標を2014年3月4日に商標登録出願し(甲2)、その後、2015年に「ほぼホタテ」の商標登録出願を行った(商願2015-016727)。
一方、商標権者は、2016年に「ほぼ肉」の商標登録出願を行った(商願2016-075704)。
このように、引用商標を日本で最初に使用し、商標登録出願をしたのは申立人である。
引用商標は、より本物に近いカニ風味かまぼこであることを表現する商品名について申立人が社内でアイデアを出し合った結果のネーミングであるから(甲68)、造語である。
わずか4文字であるにもかかわらず、本物ではないが本物に近いという二面的な概念を有する「ほぼ」という言葉に食材名を連結させる手法により、どの程度本物に近いのかを看取者に興味を抱かせ、おもしろさというインパクトを与えた。
他方、わかりやすい商品名であることが、記憶に定着する要因にもなっている。
このように、「ほぼ」と食材名を組み合わせた商標を最初に創造したのは申立人である。このことは前記出願の時系列に照らしても明らかである。すなわち、申立人は「ほぼ」シリーズを立ち上げた先駆者なのである。
したがって、独創性の程度が極めて高いことは明白である。
エ 本件商標の指定商品と他人(申立人)の業務に係る商品との間の性質、用途又は目的における関連性の程度
(ア)審判決例
「エナジードリンク」と「スープ」は、飲食料品店を通じて一般消費者に向けて流通することから、販売部門や流通経路に関連性があり、したがって需要者層も一部重複すると判断された異議決定(異議2018-900035)及び「清涼飲料」と「アイスクリーム」について、その性質・用途・目的において一定程度の関連性があり、同一店舗で扱われることも多く、その需要者も、年齢や性別を問わず、広く消費者一般であって、相当程度共通するとして、両商品間の関連性を肯定した知財高裁判決(甲95)がある。
(イ)本件
使用商品は、前述(1)オのとおり、幅広い世代の一般消費者が、スーパー等の食料品店やオンラインショッピングで比較的安価で購入でき、日常的に消費される食品・食材である。
一方、本件商標の指定商品は、前述(2)イのとおり、麺類(チルド、冷凍を含む。)、カップ麺類、即席米飯類、冷凍お好み焼き、しゅうまい、調味料等であり、一般消費者により日常的に使用される食品や調味料である。
このように、使用商品も本件商標の指定商品も、日常的に購入する食品・食材・調味料等で、同一店舗で扱われることも多く、食料品店等を通じて一般消費者に向けて流通する商品であるから、両商品は、販売部門や流通経路に相当程度強い関連性がある。
以上より、食事の用に供される商品であるなど、性質、用途又は目的において相当程度強い関連性を有している。
オ 商品等の取引者及び需要者の共通性
使用商品の取引者は、前述(1)オのとおり、スーパーやAmazon、楽天市場等のオンラインストアないし通販業者である。需要者は一般消費者である。
一方、商標権者の取引者も、前述(2)イのとおり、スーパー、Amazonや楽天市場等のオンラインストアないし通販業者であり、需要者も一般消費者である。
このように、取引者及び需要者は相当広範囲にわたり共通する。
カ 取引の実情
(ア)前述(1)イのとおり、使用商品は、パッケージのほぼ正面に引用商標を付し、8年以上もの間、その態様に変化はない。
(イ)2018年11月、ほぼウニの文字が表示された商標権者のカップヌードルリッチについて、ネーミングセンスが使用商品と同じであるとコメントされている(甲96)。2020年10月にリニューアルされた商標権者の「カップヌードル シーフードヌードル」に「ほぼイカ&イカ」が表示されると、コメント欄では「カネテツの「ほぼ」シリーズじゃないの?」「「ほぼカニ」の次は・・・「ほぼイカ」が来た一ッ?!」などとコメントされた(甲97、甲98)。
これらは、「ほぼ」と食材が組み合わされた名前が商標権者の商品に使用されると、消費者は使用商品のシリーズであると連想することを端的に物語っている。
キ 混同を生ずるおそれがあること
これらの事情を総合考慮すると、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者・需要者が、著名な商標である引用商標を連想・想起して、当該指定商品が申立人との間に緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある者の業務に係る商品であると誤認するおそれがある。取引者及び需要者(特に消費者は十分な注意を払わずに食料品を購入する傾向が高い。)は、引用商標が有する力強いイメージに誘引されて、取引を行うことが十分に考えられるから、当該指定商品に本件商標が使用されれば、引用商標の持つ顧客吸引力ヘのただ乗りやその希釈化を招く結果を生じることは容易に想定される。
ク 小括
以上より、本件商標は、本号の要件を満たすから、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第19号
本号の該当性について、商標審査基準に沿って、以下検討する。
ア 周知性及び商標の同一性
引用商標は、前述(1)のとおり、申立人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内における需要者の間に広く認識されている商標であり、かつ、本件商標と同一である。
イ 不正の目的があること
(ア)本件商標は、前述のとおり、日本国内で全国的に知られている引用商標と同一で、当該引用商標は造語よりなるものであるから、商標審査基準のとおり、不正の目的をもって使用するものと推認される。
(イ)同業者であれば、一般消費者の間でも広く認知されている商標の周知性を認識しているのが通常である。商標権者は食品関係の製造等を業とする点で申立人と同業といえ、引用商標の周知度も当然認識していたということができる。
そうすると、同一の商標で、引用商標に係る指定商品と異なる商品を指定して本件商標を取得した点は、引用商標に係る指定商品以外の商品について商標登録がされていないことを奇貨としたといえ、引用商標に化体した顧客吸引力を利用する目的があったものと推察されるから、不正の目的がより強く推認される。(知財高裁平成28年(行ケ)第10052号判決)
(ウ)総合考慮
引用商標は造語で周知度は極めて高く、本件商標はそのような引用商標と同一である。
これらの事情及び不正の目的が推認されることに加え、引用商標に係る指定商品以外の商品を選択した状況を併せ考えると、本件商標は、引用商標に化体された顧客吸引力等にフリーライドする目的が強く推認されるから、不正の目的があると言わざるを得ない。
ウ 小括
以上より、本号の要件を満たすから、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当する。
4 取消理由の通知
当審において、商標権者に対し、期間を指定し「本件に係る商標登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものであるから、同法第43条3第2項の規定により取り消すべきものである。」旨の取消理由を令和5年5月23日付けで通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えた。
5 商標権者の意見
商標権者は、上記第4の取消理由に対して、指定した期間内に意見を述べていない。
6 当審の判断
(1)本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 引用商標の周知性について
申立人提出の甲各号証及び同人の主張、並びに職権調査(別掲3)によれば、以下の事実が認められる。
(ア)引用商標は、申立人の製造にかかるかに風味かまぼこ(以下「申立人商品」という。)に使用されており、2014年3月に発売され、2022年9月現在まで継続して販売されている(甲7、甲10、甲11、別掲3(4)、(5))。
(イ)申立人商品は、2018年には全国販売が開始され、同年頃から3年連続で売上20%増となり、2019年以降、年間約600万から1000万パック程度が出荷されている(甲13、甲19)。
(ウ)申立人商品の累計販売数量は、2019年8月には約2200万パック(甲7、別掲3(3)、(4))、2021年には約4000万パック(甲16、甲17)、2022年8月には約5200万パックであり(甲19、甲20)、売上総額は104億ないし156億円(=5200万パックX200円ないし300円)であることが推認される。
(エ)日本経済新聞社が全国のスーパーから独自に収集したPOSデータによれば、2021年5月のカニ風味かまぼこの販売金額は、申立人商品が1位であり、2021年「かまぼこ、ちくわ、水産練り製品・流し物、水産練り製品・揚げ物、ちくわぶ、きんちゃく、おでん、おでんセット、おでん用昆布、おでん用つゆ」カテゴリーの一年間の販売金額は、申立人商品が3位である。また、2022年1月から8月のカニ風味分野の販売金額は、申立人商品が連続して1位である(甲24、甲101)。申立人商品は、日経POSセレクションで2021年地域売上No.1獲得企業に選出され、練り製品全体で売上ランキング1位となった(甲101、甲102)。
(オ)申立人商品は、2014年7月から2019年12月までに4回テレビCMが放送された(甲7、甲28、甲29、甲30)。
(カ)申立人商品は、2017年2月から本件商標の登録査定前までに28回テレビ番組やラジオ番組に取り上げられ(甲9、甲14、甲17、甲23、甲34、甲35、甲37、甲39、甲44、甲45、甲47、甲50、甲53、甲54、甲56、甲57、甲59、甲99、甲115、甲116)、2020年8月から本件商標の登録査定前までに、少なくとも12回新聞、雑誌等に取り上げられた(甲9、甲13、甲21、甲38、甲48、甲100の2、甲105、甲107、甲109、甲110の2、甲112、別掲3)。
(キ)申立人は、株式会社Mizkan Holdingsとコラボレーションした「味ぽんでほぼかにしゃぶしゃぶ鍋」の提案や、敷島製パン株式会社とコラボレーションした「超熟でほぼカニトースト」などの食べ方を提案している(別掲3(6))。
(ク)申立人商品は、2016年及び2017年の第68回及び第69回全国蒲鉾品評会で「栄誉大賞」(甲71)を受賞している。
(ケ)申立人商品は、自社ウェブサイト上のオンラインストア(甲80)のほか、Amazon、楽天市場、Yahooショッピングなどのオンライン通信販売(甲10、甲11、甲81)、イオン、マックスバリュ、ライフ、西友、イトーヨーカドー等の全国のスーパー、量販店で販売されている(甲69)。
イ 判断
前記アにより認定した事実によれば、申立人は、申立人商品を2014年3月に販売開始、2018年に全国販売が開始され、2022年9月現在まで継続して販売されていること、申立人商品の累計販売数量は、2019年8月には約2200万パック、2021年には約4000万パック、2022年8月には約5200万パックであること、また、その売上総額は104億ないし156億円(=5200万パックX200円ないし300円)と推認されること、2021年5月のカニ風味かまぼこの販売金額1位は申立人商品であり、2021年「かまぼこ、ちくわ、水産練り製品・流し物、水産練り製品・揚げ物、ちくわぶ、きんちゃく、おでん、おでんセット、おでん用昆布、おでん用つゆ」カテゴリーの一年間の申立人商品の販売金額は3位であること、2022年1月から8月のカニ風味分野での販売金額は申立人商品が連続して1位であること、申立人商品は2014年7月から2019年12月までに4回テレビCMが放映されていること、申立人商品は2017年2月から本件商標の登録査定前までに28回テレビ番組やラジオ番組に取り上げられていること、申立人商品は2020年8月から本件商標の登録査定前までに12回新聞、雑誌等に取り上げられていること、申立人商品が2016年及び2017年の第68回及び第69回全国蒲鉾品評会で「栄誉大賞」を受賞していることからすると、引用商標は、本件商標の登録出願の日前から、申立人商品を表示するものとして、当該商品の需要者の間に広く認識され、その状況は本件商標の登録査定の日(令和4年5月24日)においても継続しているものであって、その周知性の程度は高いものと判断するのが相当である。
ウ 本件商標と引用商標との類似性の程度について
本件商標及び引用商標は、前記1及び2のとおり、いずれも「ほぼカニ」の文字を標準文字で表してなる同一の商標であるから、外観及び「ホボカニ」の称呼を同じくするものであり、観念についても、両商標は構成文字を同一にするものであるから、生じる観念が異なることはない。
そうすると、本願商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのある同一の商標であって、その類似性の程度は極めて高いものと判断するのが相当である。
エ 本件商標の指定商品と引用商標が使用される商品の関連性の程度
本件商標の指定商品は、別掲1のとおりである。
他方、引用商標が使用される商品(申立人商品)は、前記ア(ア)のとおり「かに風味かまぼこ」である。
そうすると、本件商標の指定商品は、申立人商品(かに風味かまぼこ)が原材料として使用されることもあり、また、当該商品と、申立人商品(かに風味かまぼこ)とは、幅広い世代の一般消費者が、スーパー等の食料品店やオンラインショッピングで購入することのできる一般的な食品であるから、関連性の程度は高く、需要者を共通にする。
オ 混同を生ずるおそれについて
前記イないしエのとおり、本件商標と引用商標との類似性の程度は極めて高く、引用商標がその指定商品である「かに入り、かにエキス入り又はかに風味の加工水産物」の範疇である「かに風味かまぼこ」に使用する申立人の商標として、当該商品の需要者の間において広く認識されており、周知著名性の程度は高いといえ、また、申立人商品と本件商標の指定商品とは、関連性の程度は高く、需要者を共通にすること、さらに、申立人商品と他社製品とのコラボレーションした食べ方の提案などが現実に存在していることなどを合わせ考慮すれば、本件商標は、その登録出願時及び登録査定時において、商標権者がこれを本件商標の指定商品に使用した場合、これに接する需要者が引用商標を想起、連想し当該商品を申立人又は同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務にかかる商品であるかのように誤認し、その出所について混同を生ずるおそれがあるものと判断するのが相当である。
カ 小括
以上のとおりであるから、本件商標は、その指定商品について、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(2)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当し、その登録は同項の規定に違反してされたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。
なお、当審は、本件商標について、申立人が主張する商標法第4条第1項第11号及び同項第19号には該当しないものと判断する。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-900373